説明

携帯情報端末

【課題】バイブレーション機能を利用することによって机上等において携帯情報端末を回転させる。
【解決手段】筐体12に振動を与える振動素子52と、筐体12に設けられた突起50とを有し、振動素子52により筐体12に振動を与えることによって、人が筐体12に触れない状況下において突起50を中心軸として筐体12を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、携帯情報端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バイブレーション機能やデジタルスチルカメラ等の撮像手段を備えた携帯用電話機が普及している。
【0003】
例えば、カメラ付携帯電話の撮像手段と通信手段とを利用して、携帯用電話機を遠隔から操作し、防災や防犯のための監視装置として利用しようとする技術も開示されている(特許文献1〜3等参照)。
【0004】
【特許文献1】特開2008−118600号公報
【特許文献2】特開2007−104363号公報
【特許文献3】特開2006−279327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、携帯用電話機では、バイブレーション機能を利用して着信等を振動によってユーザに知らせている。しかしながら、机の上等に携帯用電話機を置いたような状態では、ユーザが携帯用電話機に直接触れておらず、バイブレーション機能による振動だけでは着信等に気付き難い場合がある。
【0006】
また、監視カメラのように監視目的に特化された装置では、撮像手段を回転させて広い監視範囲を対象として画像を撮像することができるが、駆動機構を搭載する必要があることから販売価格が高くなり、汎用性も低いので普及率は低く留まっている。特に、就寝中や旅行中だけ自宅の監視をしたい等、監視期間が限定されている場合に設備コストが割高になる。
【0007】
一方、カメラ付携帯電話や通信機能付デジタルカメラ等のような携帯用電気機器は安価であるが、一般的には撮像素子を回転させる手段が搭載されておらず、広い監視範囲を対象とすることができない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの態様は、筐体に振動を与える振動素子と、前記筐体に設けられた突起と、を有し、前記振動素子により前記筐体に振動を与えることによって、人が前記筐体に触れない状況下において前記突起を中心軸として前記筐体が回転することを特徴とする携帯情報端末である。
【0009】
ここで、前記筐体は長辺及び短辺並びに前記長辺及び前記短辺より小さい厚みを有する形状であり、前記振動素子は、前記筐体内部の前記短辺に沿った位置に配置されていることが好適である。また、前記振動素子は、前記短辺に沿った中央の位置に配置されていることが好適である。
【0010】
この場合、前記突起は、前記突起が設置平面に触れるように前記筐体を設置したときに、前記短辺の少なくとも一部が当該設置平面に触れる位置に設けられていることが好適である。
【0011】
また、前記筐体は長辺及び短辺並びに前記長辺及び前記短辺より小さい厚みを有する形状であり、前記振動素子は、前記筐体内部の前記長辺に沿った位置に配置されていることも好適である。また、前記振動素子は、前記長辺に沿った中央の位置に配置されていることがより好適である。
【0012】
この場合、前記突起は、前記突起が設置平面に触れるように前記筐体を設置したときに、前記長辺の少なくとも一部が当該設置平面に触れる位置に設けられていることが好適である。
【0013】
また、前記突起は、前記突起が設置平面に触れるように前記筐体を設置したときに前記長辺又は前記短辺から当該設置平面に掛かる荷重が30g以上50g以下となる位置に配置されていることが好適である。
【0014】
また、前記突起の高さは、0.5mm以上3mm以下であることが好適である。
【0015】
また、前記筐体の外面において前記振動素子が配置された位置から50mm以上100mm以下離れた位置に突起が設けられていることが好適である。
【0016】
また、前記振動素子は、平面型振動モータ、シリンダ型振動モータ及びアクチュエータの少なくとも1つを備えることが好適である。
【0017】
また、前記振動素子を駆動させることで前記筐体に振動を与えることによって前記筐体が回転し、前記振動素子の回転軸が当該回転の回転円周方向と一致しないことが好適である。
【0018】
また、撮像素子を備え、人が前記筐体に触れない状況下において、前記振動素子を駆動させることによって前記筐体に振動を与え、その後、人が前記筐体に触れない状況を維持しつつ前記撮像素子により撮像を行う処理を行うことが好適である。
【0019】
また、前記筐体外部から無線信号を受信する受信手段を備え、前記受信手段で駆動制御信号を受けることによって前記振動素子を駆動させ、前記受信手段で撮像制御信号を受けることによって前記撮像素子による撮像を行うことが好適である。
【0020】
また、前記筐体外部に無線信号を送信する送信手段を備え、前記送信手段によって、前記撮像素子によって撮像された画像を前記筐体外部へ送信することが好適である。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、携帯情報端末のバイブレーション機能を利用することによって、机上等において携帯情報端末を回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態における携帯用情報端末としてカメラ付携帯用電話機を例に説明を行うが、これに限定されるものではなく、通信機能付デジタルカメラ等の他の電気機器であってもよい。
【0023】
図1及び図2は、携帯情報端末100の外部斜視図である。図1は携帯情報端末100の筐体を閉じた状態を示し、図2は携帯情報端末100の筐体を開いた状態を示している。
【0024】
携帯情報端末100は、図1及び図2に示すように、上部筐体10、下部筐体12、ヒンジ部14、撮像用カメラ16、照明用光源18、ディスプレイ20、操作ボタン22、マイクロフォン24及びスピーカ26を含んで構成される。この携帯情報端末100は、いわゆる折り畳み式のカメラ付携帯電話機である。
【0025】
また、図3は、携帯情報端末100のシステム構成を示す図である。携帯情報端末100は、CPU30、記憶部32、操作部34、出力部36、通信部38、撮像部40及び振動部42を含んで構成される。CPU30、記憶部32、操作部34、出力部36、通信部38、撮像部40及び振動部42は情報伝達可能に接続される。また、携帯情報端末100の各部の機能や処理はCPU30において制御プログラムを実行することによって制御される。
【0026】
上部筐体10は、短辺10a及び長辺10b並びに短辺10a及び長辺10bより小さな厚さ10cを有し、直方体状に形成される。下部筐体12は、短辺12a及び長辺12b並びに短辺12a及び長辺12bより小さな厚さ12cを有し、直方体状に形成される。上部筐体10と下部筐体12がヒンジ部14を介して連結され、図1に示すように上部筐体10および下部筐体12の筐体面を対向させるように折り畳んだ状態、図2に示すように上部筐体10および下部筐体12の筐体面が対向しないように開いた状態とすることができる。
【0027】
ヒンジ部14による上部筐体10と下部筐体12との開閉角度を調整することによって、下部筐体12を床や机のうえに置いた状態で撮像用カメラ16によって撮像できる空間を調整することができる。
【0028】
記憶部32は、携帯情報端末100で使用されるプログラム、ユーザインターフェース画面の画像データ、撮像部40で撮像された画像データ等の各種情報を格納及び保持するために用いられる。記憶部32は、例えば、半導体メモリ、フラッシュメモリ、ハードディスク等を含んで構成することができ、上部筐体10又は下部筐体12の内部に配置される。
【0029】
操作部34は、操作ボタン22を含んで構成される。操作ボタン22は、上部筐体10と下部筐体12とを折り畳んだ状態において下部筐体12の上部筐体10に対向する面に設けられる。操作部34は、携帯情報端末100に対してユーザからの指示、電話番号、メールのメッセージ等を入力するために用いられる。操作部34から入力された情報はCPU30へ送信される。
【0030】
出力部36は、ディスプレイ20を含んで構成される。ディスプレイ20は、上部筐体10と下部筐体12とを折り畳んだ状態において上部筐体10の下部筐体12に対向する面に設けられる。ディスプレイ20は、携帯情報端末100におけるユーザインターフェース画面、通信情報を呈示する画面、撮像部40で撮像された画像等を表示するために用いられる。ディスプレイ20は、例えば、LCDユニット、表示用メモリ、表示制御部を含み、CPU30からの表示指示信号を受けて、記憶部32等から送信された画像データを表示用メモリに格納し、表示制御部によりその画像データをLCDユニットに表示させる。LCDの代わりに有機EL(Electro Luminescence)などを用いてもよい。
【0031】
通信部38は、電話回線やインターネット等の情報網を利用して、携帯情報端末100による無線通信を行うために設けられる。通信部38は、マイクロフォン24、スピーカ26、アナログ/デジタル変換回路、デジタル/アナログ変換回路、変調・復調回路、アンプ、アンテナ等を含んで構成される。マイクロフォン24は、上部筐体10と下部筐体12とを折り畳んだ状態において下部筐体12の上部筐体10に対向する面に設けられる。スピーカ26は、上部筐体10と下部筐体12とを折り畳んだ状態において上部筐体10の下部筐体12に対向する面に設けられる。また、通信部38の他の構成要素は、上部筐体10又は下部筐体12の内部に配置される。
【0032】
電話機能を利用する場合、操作部34から入力された電話番号等の接続先情報を受けたCPU30は通信部38に対して電話回線を接続するように接続指示を出力する。通信部38は、最寄りの基地局を検出し、通話先と電話回線を接続するとマイクロフォン24から入力された音声をアナログ/デジタル変換回路によりデジタル信号に変換し、変調・復調回路で変調させ、アンプ及びアンテナを介して基地局へ送信する。また、基地局から送られてきた信号をアンテナで受信し、その信号を変調・復調回路において復調し、デジタル/アナログ変換回路でアナログ信号に変換してスピーカ26から音声として出力する。
【0033】
インターネット等のネットワークを介して情報を送信する場合は、CPU30により記憶部32に保持されているデータを読み出し、読み出されたデータを変調・復調回路において変調し、アンプ及びアンテナを介して送信先に送信する。また、インターネット等のネットワークを介して情報を受信する場合は、アンテナで無線信号を受信し、受信された信号を変調・復調回路において復調してCPU30に送信する。CPU30は、受信したデータに基づいて携帯情報端末100を制御する処理を行ったり、受信したデータを記憶部32に格納及び保持させる処理を行ったりする。通信のプロトコルとしては、例えば、TCP/IP等の既存のプロトコルを用いることができる。
【0034】
なお、通信部38における通信方法については従来の携帯用電話機で用いられている様々な通信方法を適用してもよい。
【0035】
撮像部40は、撮像用カメラ16及び照明用光源18を含んで構成される。撮像用カメラ16及び照明用光源18は、図1に示すように、上部筐体10と下部筐体12とを折り畳んだ状態において上部筐体10の下部筐体12に対向する面とは反対の外面に設けられている。
【0036】
撮像用カメラ16は、光学系、撮像素子等を含んで構成され、CPU30からの撮影指示信号を受けてレンズが向けられた方向の空間の像を撮像する。光学系は、カバーガラス、レンズ等を含んで構成される。撮像素子は、例えば、画素に対応する光電変換素子が行列状に配置されたCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)とすることができる。撮像素子は、レンズ等を介して外部から入射した光を各画素で電気信号に変換して画像データとして出力する。撮像された画像データはCPU30に送信され、記憶部32に格納及び保持される。画像データは、BMPファイルやJPEGファイル等のファイルフォーマットで保存することができる。
【0037】
照明用光源18は、CPU30からの照明指示信号を受けて、撮像用カメラ16で撮像を行う際に撮像用カメラ16の撮像方向の空間を照明する。ただし、これに限定されるものではなく、例えば、さらに輝度センサ等を設け、撮像対象となる空間の明るさが十分でない場合に自動的に照明を行うものとしてもよい。
【0038】
振動部42は、振動素子を含んで構成される。振動素子は、例えば、平面型振動モータ、シリンダ型振動モータ及びアクチュエータの少なくとも1つとすることができる。振動素子は、下部筐体12の内部に配置される。振動素子は、CPU30からの振動制御信号を受けると、5000回転/分から15000回転/分程度の回転数で回転して下部筐体12を振動させる。振動部42は、パルス幅変調等により振動素子へ供給する電圧を調整できる構成としてもよい。
【0039】
<回転機能>
本発明の実施の形態における携帯情報端末100は、下部筐体12に突起を設けることによって、バイブレーション機能を利用して回転させることができる点に特徴を有する。
【0040】
図4は、上部筐体10と下部筐体12とを折り畳んだ状態において下部筐体12の上部筐体10に対向する面とは反対の裏面12dを示した平面図である。図4には、下部筐体12の内部に配置された振動素子52の位置も一緒に示している。
【0041】
突起50は、上部筐体10と下部筐体12とを折り畳んだ状態において下部筐体12の上部筐体10に対向する面とは反対の裏面12dの表面に設けられる。突起50は、携帯情報端末100の下部筐体12を成形する際に下部筐体12の外形と共に成形して設けてもよいし、シール状の突起物を下部筐体12の裏面12dに貼り付けることによって設けてもよい。
【0042】
突起50の形状は、図5の側面拡大図に示すように、突起50と平面200とを接触させるように携帯情報端末100を平面200上に置いたときに、突起50の先端部が平面200に接触するような曲面を有することが好適である。例えば、突起50の先端部が半球状、円錐状に成形されていることが好適である。
【0043】
このとき、下部筐体12を形作る短辺12a又は長辺12bの一部と突起50以外が設置平面200と接触しないように、下部筐体12の裏面12dの突起50以外の面を平坦に形成することが好適である。また、突起50は、設置平面200に置かれた携帯情報端末100がぐらつかない程度の大きさ及び高さとすることが好適である。例えば、突起50の高さtは、図5の側面拡大図に示すように、裏面12dから0.5mm以上3mm以下とすることが好適である。また、突起50の直径Lは50mmφ以下とすることが好適である。
【0044】
また、突起50の材質は、携帯情報端末100を突起50と平面200とを接触させるように平面200上に置いたときに、平面200に対して滑りにくい材質とすることが好適である。例えば、シリコンゴム等の弾力部材とすることが好適である。
【0045】
このような構成を有する携帯情報端末100を、突起50が平面200に接するように平面200上に置き、携帯情報端末100に振動制御信号を送信して振動部42を振動させることによって、図6の平面図に示すように、突起50を回転軸中心として携帯情報端末100を平面200上で回転させることができる。
【0046】
ここで、下部筐体12が一般的な携帯用電話機のように短辺12a,長辺12b及び短辺より小さい厚み12cを有する形状である場合、図7に示すように、振動素子52は、下部筐体12の内部の短辺12aに沿った位置A,B,Cのいずれかに配置することが好適である。特に、振動素子52は、短辺12aに沿った中央の位置Bに配置することが好適である。また、突起50は、突起50が設置平面200に触れるように携帯情報端末100を設置平面200に置いたときに、短辺12aの少なくとも一部が設置平面に触れる位置a,b,c,dのいずれかに設けることが好適である。
【0047】
特に、突起50は、突起50が設置平面200に触れるように携帯情報端末100を設置したときに、設置平面に接触している短辺12aから設置平面200に掛かる荷重が30g以上50g以下となる位置とすることが好適である。
【0048】
このように突起50及び振動素子52の位置を決めることによって、携帯情報端末100を突起50と平面200とを接触させるように置いたときに、短辺12aの少なくとも一部が設置平面200に触れた状態となり、振動部42を振動させることによる回転速度をより大きくすることができる。
【0049】
具体的には、一般的な携帯用電話機のバイブレーション機能を利用した場合、360°の回転に掛かる時間は10秒から数分程度に調節することができる。
【0050】
一方、図7における位置e,fに突起50を設けた場合、突起50と平面200とを接触させるように携帯情報端末100を平面200上に置いたときに、携帯情報端末100の平面200上でのバランスが悪くなり、うまく回転させることができない場合がある。
【0051】
また、一般的な携帯用電話機では、突起50は、下部筐体12の外面において振動素子52が配置された位置から50mm以上100mm以下離れた位置に設けることが好適である。すなわち、回転中心となる突起50と回転外周となる短辺12aとがなす回転半径が50mm以上100mm以下となるように突起50を設けることが好適である。50mm以下では、突起50の位置が携帯情報端末100の重心位置に近づき過ぎて、平面20上に置いたときにバランスが悪くなる。また、100mm以上では、回転半径が大きくなり、回転速度が遅くなってしまう。
【0052】
また、図8に示すように、振動素子52は、下部筐体12の内部の長辺12bに沿った位置D,E,Fに配置してもよい。特に、振動素子52は、長辺12bに沿った中央の位置Eに配置することが好適である。また、突起50は、突起50が設置平面200に触れるように携帯情報端末100を設置平面200に置いたときに、長辺12bの少なくとも一部が設置平面200に触れる位置g,h,iのいずれかに設けることが好適である。
【0053】
特に、突起50は、突起50が設置平面200に触れるように携帯情報端末100を設置したときに、設置平面200に接触している長辺12bから設置平面200に掛かる荷重が30g以上50g以下となる位置とすることが好適である。
【0054】
このように突起50及び振動素子52の位置を決めることによって、突起50と平面200とを接触させるように携帯情報端末100を平面200上に置いたときに、長辺12bの少なくとも一部が平面200に触れた状態となり、振動部42を振動させることによって回転を安定に行うことができる。
【0055】
一方、図8における位置j,kに突起50を設けた場合、突起50と平面200とを接触させるように携帯情報端末100を平面200上に置いたときに、携帯情報端末100の平面200上でのバランスが悪くなり、うまく回転させることができない場合がある。
【0056】
また、一般的な携帯用電話機では、突起50は、下部筐体12の外面において振動素子52が配置された位置から50mm以上100mm以下離れた位置に設けることが好適であるが、振動素子52を長辺12bに沿って配置した場合にはこの条件を満たすことが難しいので、振動素子52が配置された長辺12bに対向する長辺12bに沿って突起を設けることが好適である。
【0057】
また、図9に示すように、短辺12aに沿って振動素子52を配置し、突起50を位置bに配置した場合、振動素子52の回転軸を短辺12aの方向と一致する方向(図中矢印方向)に向けると携帯情報端末100の回転が不十分になる場合がある。そこで、振動素子52は、振動素子52の回転軸が携帯情報端末100の回転円周方向と一致しない向きに配置することが好適である。
【0058】
また、振動素子52の振動が大きすぎる場合、携帯情報端末100のとびはね、異常共振、中心軸の移動、ビリつき等が生ずるおそれがある。このような場合、振動素子52の回転数をパルス幅変調(PWM)等で下げたり、突起50の位置を調整して回転半径を調節したり、ウエイトを付加して重量バランスを調整することも好適である。
【0059】
また、回転方向が異なる振動素子52を複数設けることによって回転方向を制御することも可能である。また、振動素子52を1つだけ設けた場合においても回転速度等を制御することによって回転方向を制御することも可能である。
【0060】
<撮像機能>
上記回転機能を遠隔操作により発揮させることによって、携帯情報端末100を監視カメラとして利用することができる。すなわち、人が前記筐体に触れない状況下において、振動素子を駆動させることによって携帯情報端末100を回転させ、その後、人が前記筐体に触れない状況を維持しつつ撮像素子により撮像を行う処理を行うことによって監視カメラとして機能させる。
【0061】
監視処理は図10のフローチャートに沿って行うことができる。監視処理は、携帯情報端末100とネットワーク等を介して接続される外部の操作端末を用いて携帯情報端末100を外部からコントロールすることによって行われる。操作端末は、他の携帯情報端末100でもよいし、パーソナルコンピュータ等であってもよい。
【0062】
監視処理を行う際には、監視したい空間に撮像用カメラ16が向き、突起50が設置平面に接触するように携帯情報端末100を設置平面上に置いた状態にセットする。例えば、図2に示すように、携帯情報端末100の上部筐体10と下部筐体12とを開いた状態で、上部筐体10に設けられた撮像用カメラ16が監視対象空間に向き、下部筐体12の裏面12dに設けられた突起50が平らな机上や床面に接するように携帯情報端末100をセットする。
【0063】
ステップS10では、操作端末と携帯情報端末100との起動接続処理を行う。ユーザが操作端末から携帯情報端末100へセッションの開始を示す起動信号を送信する、又は、携帯情報端末100から操作端末へ自動で起動信号を送信することによって操作端末と携帯情報端末100とを接続する。
【0064】
例えば、携帯情報端末100に固有に割り付けられたネットワークアドレスを指定して操作端末から携帯情報端末100へ起動指示信号を送信することによって、インターネットや電話回線を介して、操作端末から携帯情報端末100を起動することができる。
【0065】
ステップS12では、携帯情報端末100から操作端末へ情報を送信する。ここで、送信される情報は、携帯情報端末100の現在の状態を示すステータス、撮像可能な画像の種類、データサイズ等を示す情報を含む。携帯情報端末100のCPU30は、送信する情報を通信部38へ送り、通信部38ではステップS10において取得した操作端末のネットワークアドレスを付加したパケットを生成して、無線信号としてネットワークに送出する。
【0066】
ステップS14では、操作端末において情報を取得する。操作端末は、ネットワークを介して自己のネットワークアドレスが付加されたパケットを受信し、パケットに含まれている情報を取得する。
【0067】
ステップS16では、操作端末から携帯情報端末100に対して撮像指示コマンドを送信する。操作端末は、携帯情報端末100に対する撮像指示コマンドを含み、携帯情報端末100のネットワークアドレスが付されたパケットを生成しネットワークに送出する。
【0068】
ステップS18では、携帯情報端末100において撮像指示コマンドを取得する。通信部38は、携帯情報端末100から送信された自己のネットワークアドレスが付されたパケットを受信し、パケットに含まれている撮像指示コマンドを取得する。撮像指示コマンドは、通信部38からCPU30に送信される。
【0069】
ステップS20では、撮像指示コマンドに応じて撮像が行われる。CPU30は、ステップS18において取得された撮像指示コマンドに応じて、撮像部40に撮像指示信号を出力する。撮像部40は、撮像用カメラ16が向けられた方向の空間の像を撮像する。撮像で得られた画像データはCPU30に送信され、記憶部32に格納及び保持される。
【0070】
ステップS22では、携帯情報端末100から操作端末へ画像データを送信する。携帯情報端末100のCPU30は、ステップS20で得られた画像データを通信部38へ送り、通信部38ではその画像データに操作端末のネットワークアドレスを付加したパケットを生成して、無線信号としてネットワークに送出する。
【0071】
ステップS24では、操作端末において情報を取得する。操作端末は、ネットワークを介して自己のネットワークアドレスが付加されたパケットを受信し、パケットに含まれている画像データを取得する。
【0072】
ステップS26では、操作端末において取得された画像データを表示する。操作端末は、取得した画像データをディスプレイ上に表示する。画像データの表示は既存のコンピュータにおける表示方法と同様に行うことができる。これにより、ユーザは携帯情報端末100で撮像された画像データを受けて、画像データから携帯情報端末100が置かれた場所の周囲の状況を知ることができる。
【0073】
ステップS28では、操作端末においてコマンド入力が行われたか否かを判断する。操作端末の操作部、すなわち操作ボタン、キーボード、マウス等の入力手段によってユーザから携帯情報端末100への操作コマンドの入力が行われたか否かを判断する。コマンドが入力された場合にはステップS30に処理を進め、そうでない場合にはステップS34に処理を進める。
【0074】
例えば、ユーザが携帯情報端末100を回転させて次の撮像を行いたい場合には、操作端末のユーザインターフェースを用いて回転を指示する操作コマンドを入力する。また、携帯情報端末100により再度撮像を行う場合には撮像を指示する操作コマンド等が入力される。このようなコマンドが入力された場合にはステップS30に処理を進める。また、携帯情報端末100での監視処理を終了する場合には終了を指示する操作コマンドを入力する。
【0075】
ステップS30では、操作端末において動作コマンドを生成する。操作端末は、ステップS28で入力された操作コマンドを携帯情報端末100で処理可能な動作コマンドに変換する。例えば、携帯情報端末100を回転させるコマンドが入力された場合、操作端末のCPUは、その操作コマンドに応じて携帯情報端末100に対応したフォーマットの回転指示コマンドに変換する。携帯情報端末100の撮像部40に対して撮像機能を動作させるための操作コマンドが入力された場合、操作端末のCPUはその操作コマンドを携帯情報端末100に対応したフォーマットの撮像指示コマンドに変換する。携帯情報端末100での監視処理を終了するための操作コマンドが入力された場合、操作端末のCPUはその操作コマンドを携帯情報端末100に対応したフォーマットの終了指示コマンドに変換する。
【0076】
ステップS32では、操作端末から携帯情報端末100へ動作コマンドを送信する。操作端末は、ステップS28で入力された操作コマンドに応じてステップS30で生成された動作コマンドを含み、携帯情報端末100のネットワークアドレスが付されたパケットを生成しネットワークに送出する。
【0077】
ステップS34では、操作端末で終了指示コマンドが入力されたか否かを判定する。操作端末のCPUは、ステップS28においてユーザから終了指示コマンドが入力されていればステップS46に処理を移行させ、そうでなければステップS14に処理を戻す。
【0078】
ステップS36では、携帯情報端末100において動作コマンドを取得する。通信部38は、携帯情報端末100から送信された自己のネットワークアドレスが付されたパケットを受信し、ステップS32で送信されたパケットに含まれている動作コマンドを取得する。動作コマンドは、通信部38からCPU30に送信される。
【0079】
ステップS38では、動作コマンドが回転指示コマンドであるか否かを判断する。携帯情報端末100のCPU30は、ステップS34で取得された動作コマンドが回転指示コマンドであればステップS40に処理を移行させ、そうでない場合にはステップS42に処理を移行させる。
【0080】
ステップS40では、携帯情報端末100の回転処理が行われる。携帯情報端末100のCPU30は、回転指示コマンドを受けると、振動部42に振動指示信号を送出する。振動部42は、振動指示信号を受けると、平面型振動モータ、シリンダ型振動モータ、アクチュエータ等の振動素子52によって下部筐体12を振動させる。この振動によって、下部筐体12の裏面12dに設けられた突起50を回転中心として携帯情報端末100が設置面に対して回転する。
【0081】
なお、携帯情報端末100を振動させる時間を調整することによって、一回の回転指示コマンドに対する回転角を調整することができる。回転制御を行った後、ステップS12に処理を戻す。例えば、一回の回転指示コマンドに応じた振動時間を携帯情報端末100が90°回転する時間に設定することによって、携帯情報端末100を設置面上で90°ずつ回転させながら画像を撮像することができる。
【0082】
ステップS42では、動作コマンドが終了コマンドであるか否かを判断する。携帯情報端末100のCPU30は、ステップS34で取得された動作コマンドが終了指示コマンドであればステップS48に処理を移行させ、そうでない場合にはステップS44に処理を移行させる。
【0083】
ステップS44では、携帯情報端末100において受信した動作コマンドに対応した処理が行われる。携帯情報端末100のCPU30は、ステップS36で受信した動作コマンドを受けると、その動作コマンドに応じた処理を行う。処理を行った後、ステップS12に処理を戻す。
【0084】
ステップS46及びS48では、操作端末及び携帯情報端末100において終了処理が行われる。ステップS46では、操作端末のCPUは、ユーザからの終了指示コマンドを受けて、携帯情報端末100との通信を切断する等の処理を行い、携帯情報端末100による監視処理を終了する。ステップS48では、携帯情報端末100のCPU30は、ステップS36で受信した終了指示コマンドを受けて、操作端末との通信を切断する等の処理を行い、監視処理を終了する。
【0085】
以上のように、本実施の形態における携帯情報端末100を用いることによって、バイブレーション機能及び撮像機能を利用して遠隔から監視を行うことができる。また、監視や防犯のための撮像装置のみならず、一般的なネットワークカメラ、テレビ電話用カメラ、ロボット用カメラ等にも適用可能である。
【0086】
なお、本実施の形態では遠隔操作によって携帯情報端末100の回転及び撮像の制御を行ったが、携帯情報端末100に一定時間毎に回転及び撮像を行わせるプログラムを予め組み込んでおき、そのプログラムを実行させることによって携帯情報端末100を一定時間毎に回転させながら監視空間を撮像させることもできる。撮像した画像データは自動で遠隔の端末に送信させてもよいし、携帯情報端末100の記憶部32に格納及び保持させてもよい。
【0087】
また、突起50による携帯情報端末100の傾きや上部筐体10と下部筐体12との開き角によって撮像用カメラ16と撮像空間との画角に補正が必要な場合、携帯情報端末100や操作端末において画像を補正してもよい。
【0088】
また、予め監視対象となる空間について360°の全方位について画像を撮像しておくことによって、新たに得られた画像データからその画像の撮像方向を知ることもできる。さらに、その撮像方向の情報を回転制御に用いることによって、高い精度で回転角の制御を行うこともできる。また、撮像された画像データから動体を検知し、その場合に通信部38の機能を利用して外部端末に異常を通知するようにしてもよい。
【0089】
また、携帯用電話機等、音声を取得するための通信部38を備える携帯情報端末100の場合、携帯情報端末100による音の検知に応じて携帯情報端末100を回転させ、撮像を行うようにすることも好適である。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】本発明の実施の形態における携帯情報端末の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態における携帯情報端末の外観を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態における携帯情報端末の構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態における下部筐体に設けられた突起及び振動素子を示す平面図である。
【図5】本発明の実施の形態における携帯情報端末の突起の外観を示す側面拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態における携帯情報端末の回転の様子を説明する図である。
【図7】本発明の実施の形態における携帯情報端末の突起及び振動素子の設置箇所を説明する図である。
【図8】本発明の実施の形態における携帯情報端末の突起及び振動素子の設置箇所を説明する図である。
【図9】本発明の実施の形態における携帯情報端末の振動素子の回転方向を説明する図である。
【図10】本発明の実施の形態における携帯情報端末を監視カメラとして利用する場合の処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0091】
10 上部筐体、10a 短辺、10b 長辺、10c 厚さ、12 下部筐体、12a 短辺、12b 長辺、12c 厚さ、12d 面、14 ヒンジ部、16 撮像用カメラ、18 照明用光源、20 ディスプレイ、22 操作ボタン、24 マイクロフォン、26 スピーカ、30 CPU、32 記憶部、34 操作部、36 出力部、38 通信部、40 撮像部、42 振動部、50 突起、52 振動素子、100 携帯情報端末、200 平面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体に振動を与える振動素子と、前記筐体に設けられた突起と、を有し、
前記振動素子により前記筐体に振動を与えることによって、人が前記筐体に触れない状況下において前記突起を中心軸として前記筐体が回転することを特徴とする携帯情報端末。
【請求項2】
請求項1に記載の携帯情報端末であって、
前記筐体は長辺及び短辺並びに前記長辺及び前記短辺より小さい厚みを有する形状であり、
前記振動素子は、前記筐体内部の前記短辺に沿った位置に配置されていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項3】
請求項2に記載の携帯情報端末であって、
前記振動素子は、前記短辺に沿った中央の位置に配置されていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の携帯情報端末であって、
前記突起は、前記突起が設置平面に触れるように前記筐体を設置したときに、前記短辺の少なくとも一部が当該設置平面に触れる位置に設けられていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項5】
請求項1に記載の携帯情報端末であって、
前記筐体は長辺及び短辺並びに前記長辺及び前記短辺より小さい厚みを有する形状であり、
前記振動素子は、前記筐体内部の前記長辺に沿った位置に配置されていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項6】
請求項5に記載の携帯情報端末であって、
前記振動素子は、前記長辺に沿った中央の位置に配置されていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の携帯情報端末であって、
前記突起は、前記突起が設置平面に触れるように前記筐体を設置したときに、前記長辺の少なくとも一部が当該設置平面に触れる位置に設けられていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1つに記載の携帯情報端末であって、
前記突起は、前記突起が設置平面に触れるように前記筐体を設置したときに、前記長辺又は前記短辺から当該設置平面に掛かる荷重が30g以上50g以下となる位置に配置されていることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1つに記載の携帯情報端末であって、
前記突起の高さは、0.5mm以上3mm以下であることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1つに記載の携帯情報端末であって、
前記筐体の外面において前記振動素子が配置された位置から50mm以上100mm以下離れた位置に突起が設けられていることを特徴する携帯情報端末。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか1つに記載の携帯情報端末であって、
前記振動素子は、平面型振動モータ、シリンダ型振動モータ及びアクチュエータの少なくとも1つを備えることを特徴とする携帯情報端末。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の携帯情報端末であって、
前記振動素子を駆動させることで前記筐体に振動を与えることによって前記筐体が回転し、前記振動素子の回転軸が当該回転の回転円周方向と一致しないことを特徴とする携帯情報端末。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1つに記載の携帯情報端末であって、
撮像素子を備え、
人が前記筐体に触れない状況下において、前記振動素子を駆動させることによって前記筐体に振動を与え、その後、人が前記筐体に触れない状況を維持しつつ前記撮像素子により撮像を行う処理を行うことを特徴とする携帯情報端末。
【請求項14】
請求項13に記載の携帯情報端末であって、
前記筐体外部から無線信号を受信する受信手段を備え、
前記受信手段で駆動制御信号を受けることによって前記振動素子を駆動させ、
前記受信手段で撮像制御信号を受けることによって前記撮像素子による撮像を行うことを特徴とする携帯情報端末。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の携帯情報端末であって、
前記筐体外部に無線信号を送信する送信手段を備え、
前記送信手段によって、前記撮像素子によって撮像された画像を前記筐体外部へ送信することを特徴とする携帯情報端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−16750(P2010−16750A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176799(P2008−176799)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(899000057)学校法人日本大学 (650)
【Fターム(参考)】