説明

携帯端末、携帯端末の情報記憶方法及びプログラム

【課題】ユーザ個々の電池の使用状況・環境状況を記録保存する。
【解決手段】電源を供給する電池と、電池の各種情報を検出するタイミングを計測する時間計測手段と、所定時間毎に各種情報を検出する検出手段と、検出手段による検出値を使用しているユーザが識別できるように記憶する記憶手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各ユーザの使用環境をそれぞれ識別して保存可能な携帯端末、その情報記憶方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯端末は、さらなる小型化が進む一方、ユーザの使い勝手を向上するために電池の長寿命化が求められている。しかしながら、小型化と電池の長寿命化は、技術的に相反するものであり、電池の高密度エネルギー化を進めるがあまり、様々な課題が発生している。
【0003】
例えば、ノートPCや携帯電話の電池の発熱・発煙が、しばしば市場で発生しており、PL(Product Liability)の観点からも対策が強く求められている。
【0004】
また、近年、SIM(Subscriber Identity Module)カードやUSIM(Universal Subscriber Identity Module)カードといったICカードを接続可能な携帯端末が普及している。
【0005】
SIMカードは、GSM(Global System for Mobile Communication)標準規格として採用されている小型ICカードであり、フラッシュメモリからなる記憶部と、CPU(Central Processing Unit)により構成された中央演算処理部とを備えている。
【0006】
USIMカードは、W−CDMA(Wideband-Code Division Multiple Access)方式を採用した携帯電話機のように、IMT(International Mobile Telecommunication)−2000の標準規格として採用されているSIMカードの互換ICカードである。
【0007】
USIMカードは、記憶部を保持しており、該記憶部には移動体通信無線プロトコルの動作に必要な情報(例えば、無線区間での移動端末制御に用いられる移動機識別番号(IMSI;International Mobile Subscriber Identity)、自局電話番号等の加入者情報、端末位置情報、暗証番号等のセキュリティ情報)、及び各種ユーザ情報(例えば課金情報、電話帳、発着信履歴)が必須情報として保存されている。
【0008】
また、USIMカードには、移動通信網からの認証要求に対する認証の値を計算する機能や、SMSと呼ばれるショートメッセージサービスを利用して電子商取引などを行うアプリケーションUSAT(USIM Application Toolkit)が任意機能として用意されている。ユーザは、自分専用のUSIMカードを所有し、複数の携帯端末に選択的に装着することで、複数の携帯端末を使い廻すことが可能となり、利便性が大幅に向上している。
【0009】
従来における携帯端末は、図7に示すように、電源部21の電池22の電圧・電流・温度などの使用状況及び環境状況は、電池検出部23により読み出され、読み出した情報を信号線を介して、携帯端末本体25の制御部26で読み出し、逐次本体メモリ27へ保存格納していた。
【0010】
これは電池の安全性の向上のために様々な取り組みのうちの一つの施策例であり、安全性向上のために、電池22がユーザ個々でいかなる動作・環境で使用されているかを把握することを目標としている。
【0011】
例えば、個々のユーザによる使用環境下で、無線部などを含む機能部28の負荷が異常な状況へ至ったり、電源部21の故障などにより発熱の事象が発生した場合、前記ユーザがいかなる動作・環境で電池22を使用していたかを本体メモリ27から読み出し、把握することにより迅速な原因究明が可能となり、ひいては同様な事象が同機器を使用している他のユーザにて発生することを未然に防ぐことが可能となる。
【0012】
例えば特許文献1には、定期的に駆動中におけるバッテリパックの残容量、電池温度、電池電圧、充放電電流を取り出し、そのデータを基に特性グラフを作成・表示するとともに、メモリ上のファイルに書き込む技術について開示されている。
【特許文献1】特開平10−149842号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、特許文献1に記載される技術などでは、例えば機種変更などにより、複数のユーザが同一の携帯端末を使用した場合、本体メモリ7には複数のユーザの電池使用状況・環境状況が切れ目なく蓄積されてしまい、個々のユーザによる電池2の使用状況・環境状況が正確に判断できなくなってしまっていた。
【0014】
そこで本発明は、上記問題点に鑑みてなされたもので、ユーザ個々の電池の使用状況・環境状況を記録保存することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を解決するため、本発明における携帯端末は、電源を供給する電池と、電池の各種情報を検出するタイミングを計測する時間計測手段と、所定時間毎に各種情報を検出する検出手段と、検出手段による検出値を使用しているユーザが識別できるように記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする。
【0016】
また、本発明における携帯端末の情報記憶方法は、電源を供給する電池の各種情報を検出するタイミングを計測する時間計測ステップと、所定時間毎に各種情報を検出する検出ステップと、検出ステップによる検出値を使用しているユーザが識別できるように記憶する記憶ステップと、を備えることを特徴とする。
【0017】
また、本発明におけるプログラムは、電源を供給する電池の各種情報を検出するタイミングを計測する時間計測処理と、所定時間毎に各種情報を検出する検出処理と、検出処理による検出値を使用しているユーザが識別できるように記憶する記憶処理と、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明により、ユーザ個々の電池の使用状況・環境状況をユーザ別に保存することで、各ユーザがいかなる動作・環境で使用していたかを把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、発明を実施するための最良の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0020】
図1は、本発明の実施形態における携帯端末の構成図であり、電源部1と、携帯端末本体5と、で構成されている。
【0021】
電源部1は、電池2と、検出部3と、を有して構成される。検出部3は、電圧・電流・温度などを検出する。
【0022】
また、携帯端末本体5は、制御部6と、本体メモリ7と、制御部8と、SIM IF10と、を有して構成され、本体メモリ7に格納されたプログラムにより制御部6は機能部8を制御して様々な動作を実行する。なお、制御部6は、USIMカード11をSIM IF10を介して制御する。
【0023】
図2は、検出部3にて検出される電圧・電流・温度などの検出例である。制御部6は、図2に示すような検出要素を、あらかじめ決められたプログラムに従って読み取り、図3に示すように本体メモリ7へと格納する。本体メモリ7に保存格納された前記情報は、USAT機能を使用してUSIMカードに保存される。なお、直接USIMカードなどの外部記憶媒体へと記憶しても良い。
【0024】
図2において、検出IDnは、検出部で検出される要素を示し、例えば、ID1は電圧、ID2は電流などと記号化して保持される。
【0025】
ここで、要素の最大数はNとし、その要素の記号はIDNとする。これら要素をあらかじめ決められた時間間隔Δtごとに検出し、その積算時間をtで示し、検出した値を図3で示すように本体メモリ空間(IDn,t)へマッピングする。
【0026】
次に、図4に示すフローチャートを参照して、本発明の実施形態における携帯端末の具体的な動作について詳細に説明する。
【0027】
まずΔtと、積算時間tの最大値Tと、検出要素最大値Nと、をそれぞれ設定する(ステップS1)。次に、n=1として検出要素ID1を指定し(ステップS2)、t=0として開始時間を設定する(ステップS3)。
【0028】
time=0としてタイマを起動し(ステップS4)、時間間隔Δtとなるまで論理判定を繰り返す(ステップS5)。時間経過し、時間間隔Δtになると、時間tが最大値Tであるか論理判定する(ステップS6)。時間tが最大値Tへ至らない場合は、次に検出要素数が最大値Nへ至っているかを論理判定する(ステップS7)。検出要素数が最大値Nへ至っていない場合は、IDnを検出機から検出し(ステップS9)、本体メモリ空間(IDn,t)へ保存する(ステップS10)。
【0029】
次に、nをプラス1だけ加算し(ステップS11)、次の検出要素IDnを検出する。これをnが最大値Nになるまで繰り返し、次々にIDnを検出する。
【0030】
一方、ステップS7にてnが最大値Nへ至った場合は、時間をプラス1だけ進め(ステップS8)、再度タイマーを起動し、時間間隔Δt後に再度IDnの検出を繰り返す(ステップS4、ステップS5)。
【0031】
ステップS6にて時間tが最大値Tへ至った場合は、t=0として時間0へ再度設定する(ステップS3)。すなわち、時間Tまで至った場合は、再度t=0へ戻し、時間0から時間Tまでの動作を繰り返し、検出した値を本体メモリ空間(IDn,t)へ上書きをする。すなわち本体メモリ空間(IDn,t)は常に時間t=0から時間t=Tの動作を繰り返すため、最新の値が継続して本体メモリへ記録保存できることになる。
【0032】
図5は、携帯端末本体5とUSIMカード11との間の動作シーケンスを示す図であり、USAT機能を使用してメモリ7に整理保存された情報をUSIMカード11へ書き込み記録保存する手順を示している。
【0033】
ユーザは、携帯端末のSIM I/F10に、自身のUSIMカード11を接続する。そしてこの状態で携帯端末5の電源を投入すると(ステップS21)、SIM I/Fを介してUSIMカードに動作電源電圧が供給される。
【0034】
動作状態になると携帯端末5は、USIMカード11との間で先ずGeneric Commandsによる必須情報の読み込み処理を以下のように実行する。すなわち、電源が供給されるとUSIMカードは、先ずUSIMカード11が備える基本能力、例えばデータの転送ビットレートや転送プロトコルを示す情報ATRを携帯端末5へ送信する(ステップS22)。
【0035】
携帯端末5の制御部6は、USIMカード11から送られた情報ATRをもとにUSIMカードの基本能力を認識する。次に、上記基本能力を認識すると携帯端末5の制御部6は、USIMカード11が記憶する必須情報を読み込むために、情報要素ごとに読出要求Read EF_xxをUSIMカードに送る。例えば、情報要素が5個ある場合には、読出要求Read EF_01〜Read EF_5を順次USIMカード11へ送信する(ステップS23〜ステップS25)。
【0036】
USIMカード11は、上記読出要求Read EF_01〜Read EF_XXを受信するごとに、応答データResを携帯端末5へ送信する(ステップS24〜ステップS26)。かくしてGeneric Commandsによる必須データの読み込みがなされる。
【0037】
次に、携帯端末5の制御部6は、USATコマンドによる任意情報の読み込み処理を次のように実行する。すなわち制御部6は、先ず携帯端末5におけるUSATコマンドのサポート能力を表す情報Terminal ProfileをUSIMカードに通知する(ステップS27)。
【0038】
USIMカードは上記Terminal Profileを受信すると、その応答Resを返送する(ステップS28)。続いて制御部6は、USIM内メモリへの保存を実施するコマンドをUSIMカード11から発行する契機を与えためにコマンドFetchをUSIMカードへ送信する(ステップS29)。これに対し、USIMカード11はUSIMカード11内メモリへ保存を実施するコマンドGet Memoryを携帯端末5へ送信する(ステップS32)。コマンドGet Memoryは図6の通り、該コマンドを識別するためのコマンド識別子とアドレス範囲とデータサイズをパラメータとして含む。
【0039】
携帯端末5の制御部6は、コマンドGet Memoryを受信すると、パラメータの識別子とアドレス範囲から該コマンドが電池の情報IDnの送出要求であることを判別し、図3に示した本体メモリ7空間の情報をコマンドTerminal ResにてUSIMカード11へ送信する(ステップS33)。
【0040】
コマンドTerminal Resは図6の通り、パラメータとしてパラメータ識別子とデータサイズとデータそのものを含んでおり、コマンドTerminal Resを受信したUSIMカード11は、パラメータ識別子から求める電池の情報IDnであることを判別し、データを受信し前記アドレス範囲に保存する。
【0041】
次にIDnを保存した旨を携帯端末へコマンドResで返信する(ステップS34)。また、携帯端末5はステップS29にてコマンドFetchを発行した後、すみやかにタイマをtime=0へ設定し、タイマを起動後(ステップS30)、時間Δtだけ待機し(ステップS31)、次のコマンドFetchを発行する。このような動作を繰り返すことにより、次々に最新の本体メモリ空間の情報をUSIMカード11へ送信することができ、USIMカード11は電池の最新の検出要素を記録保存することができる。
【0042】
本実施形態では、USIMカードを使用し、USAT機能を利用した簡便な方法を示しているが、もちろん他の外部記憶カードを使用し、USAT機能を利用せず、IFを規定しコマンドを一つ一つ実装した構成としてもよい(特に図示せず)。なお、他の外部記憶カードや本体メモリ自体に保持しておく場合には、USIMなどより、ユーザ個別の情報を取得し、前記情報と関連づけて記憶する。
【0043】
本発明の実施形態によれば、例えば個々のユーザの使用下で発熱の事象が発生した場合、該ユーザのUSIMカードから電池使用・環境状況を把握でき、迅速な原因究明が可能となる。ひいては同様な事象が同機器を使用している他のユーザで発生することを未然に防ぐことが可能となる効果がある。
【0044】
また上述したようにUSAT機能は、携帯端末とUSIMカードとの間の情報授受について規定しているため、図5で示すようにUSAT機能を利用して、図6のようなコマンドを追加使用することにより、比較的簡単に本構成を実装できる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施の形態により本発明を説明した。ここでは特定の具体例を示して本発明を説明したが、特許請求の範囲に定義された本発明の広範囲な趣旨および範囲から逸脱することなく、これら具体例に様々な修正および変更が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0046】
電池を使用し、USIMカードを使用している携帯端末の機能に本構成を付与することで、電池の発熱・発煙に対する対策・管理を強化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の実施形態に係る携帯端末の構成図である。
【図2】検出要素の一例を示す図である。
【図3】メモリ空間へのマッピング例を示す図である。
【図4】本発明の実施形態に係る携帯端末のフローチャート図である。
【図5】携帯端末本体とUSIMカードとの間の動作シーケンス図である。
【図6】各コマンドの有するパラメータの例である。
【図7】従来における携帯端末の構成図である。
【符号の説明】
【0048】
1 電源部
2 電池
3 検出部
5 携帯端末本体
6 制御部
7 メモリ
8 機能部
10 SIM IF
11 USIM

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源を供給する電池と、
前記電池の各種情報を検出するタイミングを計測する時間計測手段と、
所定時間毎に前記各種情報を検出する検出手段と、
前記検出手段による検出値を使用しているユーザが識別できるように記憶する記憶手段と、を備えることを特徴とする携帯端末。
【請求項2】
前記記憶手段は、本体メモリに記憶後、外部記憶媒体へと前記検出値を記憶することを特徴とする請求項1記載の携帯端末。
【請求項3】
前記記憶手段は、USIMカードに記憶することを特徴とする請求項2記載の携帯端末。
【請求項4】
前記記憶手段は、USAT機能を使用して記憶することを特徴とする請求項3記載の携帯端末。
【請求項5】
前記記憶手段は、前記各種情報と、一定時間毎にリセットする時間と、を関連づけて記憶することを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の携帯端末。
【請求項6】
電源を供給する電池の各種情報を検出するタイミングを計測する時間計測ステップと、
所定時間毎に前記各種情報を検出する検出ステップと、
前記検出ステップによる検出値を使用しているユーザが識別できるように記憶する記憶ステップと、を備えることを特徴とする携帯端末の情報記憶方法。
【請求項7】
前記記憶ステップは、本体メモリに記憶後、外部記憶媒体へと前記検出値を記憶することを特徴とする請求項6記載の携帯端末の情報記憶方法。
【請求項8】
前記記憶ステップは、USIMカードに記憶することを特徴とする請求項7記載の携帯端末の情報記憶方法。
【請求項9】
前記記憶ステップは、USAT機能を使用して記憶することを特徴とする請求項8記載の携帯端末の情報記憶方法。
【請求項10】
電源を供給する電池の各種情報を検出するタイミングを計測する時間計測処理と、
所定時間毎に前記各種情報を検出する検出処理と、
前記検出処理による検出値を使用しているユーザが識別できるように記憶する記憶処理と、をコンピュータに実行させるプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−130589(P2010−130589A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−305663(P2008−305663)
【出願日】平成20年11月28日(2008.11.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】