説明

携帯通信機器、受信回路及び放送受信プログラム

【課題】携帯通信機器において、TV放送を受信している場合に、無線信号の送信による影響を除去するためのフィルタがTV放送の信号に対しても影響を与えてしまうのを極力抑える。
【解決手段】携帯電話機100に、TV放送受信アンテナ131とワンセグ用TVチューナ134の間にフィルタ130を設け、受信した放送信号をフィルタ130を経由させてワンセグ用TVチューナ134に供給する経路と、受信した放送信号をフィルタ130を経由させずにワンセグ用TVチューナ134に供給する経路とを切り替えるスイッチ132、133を設ける。そして制御部170は、通信部110に無線信号の送信の実行を指示する際に、スイッチをフィルタ130に接続する側に切り替え、TV放送の受信信号をフィルタ130を経由させてワンセグ用TVチューナに供給させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送波の放送信号、例えばTV(テレビ)放送の放送信号を受信することが可能な携帯通信機器及びその受信回路に関し、特に自機から送信する無線信号の放送信号に対する影響を除去する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TV放送を受信する機能を有する携帯電話機が普及しつつある。携帯電話機では、TV放送の放送信号を受信している間にも、自機から無線信号を送信することがある。この無線信号は受信する放送信号に影響を与える妨害波となることがある。例えば、携帯電話機は基地局に対して位置登録を実行する。ユーザが携帯電話機でTV放送を視聴しながら移動していた場合でも、携帯電話機は位置登録のために無線信号を送信する。すると当該無線信号が妨害波となりTV放送の受信を妨げる。
【0003】
そこで、図6に示すように、携帯電話機600にアンテナ631とワンセグ用TVチューナ634の間にフィルタ630を設ける。そして、TV放送の受信信号をTVチューナに伝達する前に、一度、フィルタ630にかけて、上述した妨害波を抑制する。ここで、「ワンセグ」とは、「携帯電話・移動体端末向けの1セグメント部分受信サービス」の略称のことである。
【0004】
ところで、最近では、電話通信に用いる通信周波数と、地上デジタルテレビ放送の受信周波数とが非常に近づいてきている。図7には、地上デジタルテレビ放送に用いる周波数と、CDMA通信で通話に用いる周波数を模式的に示した。図7に示すように両者の周波数帯域は、CDMA通信の下限の中心周波数が824MHz、地上デジタルテレビの放送に用いられる周波数の上限の中心周波数が765.25MHzと近寄っており、基地局との通信に用いる信号が、TV放送の受信信号に対して影響を与えやすくなってきている。
【0005】
そこで、上述したようにフィルタを介した受信信号をTVチューナに伝達することになるが、CDMA通信に用いる周波数の下限と地上デジタルテレビに用いる周波数の上限とが近寄ったことにより、今度は逆にこのフィルタのせいで、例えば、図8に示すように、TV放送の受信信号も減衰させてしまうという問題がある。図8において実線がフィルタを通過したTV放送の受信信号を模式的に示したものであり、破線がフィルタを通さなかった場合、あるいは理想的なフィルタを通過させた場合のTV放送の受信信号を模式的に示したものである。本来ならば破線の状態の信号を受信してTV放送を復調したいところが、フィルタ630の影響により、減衰して実線の状態の信号を受信してしまったためにTV放送を正確に復調できないことがある。
【0006】
この問題に鑑みて、以下の特許文献1に示す技術を応用することが考えられる。特許文献1には、妨害波が受信周波数に影響を与える場合に、TV放送受信時に通過させるフィルタの周波数特性を変化させる技術が開示されており、この技術を用いて、フィルタが、受信するTV放送の信号に対して影響を与える場合に、フィルタの周波数特性を変化させ、カットする周波数の下限を上げてやれば、妨害波を除去するためのフィルタがTV放送の受信信号を減衰させてしまうことを防げる。
【特許文献1】特開2006−128757号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1のようにフィルタの周波数特性を変化させるためには、周波数特性を変化させるための専用の機構を備える必要がある。
そこで、本発明においては、妨害波の影響を除去しつつも、フィルタの周波数特性を変えることなくなるべくTV放送の受信信号をフィルタにより減衰させずにTV放送を受信できる受信回路と携帯通信機器とを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明に係る携帯通信機器は、放送信号を受信することが可能な携帯通信機器であって、放送信号が送信される周波数と異なる周波数を用いて無線信号を送信するための送信手段と、前記送信手段が無線信号の送信に用いる周波数の信号を抑制するフィルタ手段と、受信した放送信号から所望のチャネルの信号を抽出する選局手段と、前記送信手段が無線信号を送信する場合には、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信手段が無線信号を送信していない場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達するように構成された伝達手段とを備えることを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る携帯通信機器は、放送信号を受信することが可能な携帯通信機器であって、放送信号が送信される周波数と異なる周波数を用いて無線信号を送信するための送信手段と、前記送信手段が無線信号の送信に用いる周波数の信号を抑制するフィルタ手段と、受信した放送信号から所望のチャネルの信号を抽出する選局手段と、前記送信手段が無線信号を送信し、且つ、所定の条件が満たされる場合には、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信手段が無線信号を送信していない場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達するように構成された伝達手段とを備えることを特徴としている。
【0010】
本発明に係る受信回路は、放送信号を受信する機能と、受信された放送信号から所望のチャネルの信号を抽出する選局手段と、放送信号が送信されてくる周波数とは異なる周波数を用いて無線信号を送信する無線送信機能とを有する機器に具備される受信回路であって、前記無線送信機能が無線信号を送信する際に用いる周波数の信号を抑制するフィルタ手段と、前記送信手段が無線信号を送信する場合又は前記送信手段が無線信号を送信し、且つ、所定の条件が満たされる場合には、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記無線送信機能により前記機器が無線信号を送信していない場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達する伝達手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0011】
上述のような構成によって、本発明に係る携帯通信機器は、無線信号の送信していないタイミングではフィルタ手段を経由させずに受信した放送信号を チューナに伝達するので、フィルタ手段により減衰されていない受信信号を選局手段に伝達することができる。これにより、例えば、TV放送の所望のチャネルの番組を正しく復号することができる。
また、所定の条件を満たす場合、例えば無線信号の送信を所定の周波数以下で実行する場合などにおいては、フィルタ手段を経由させるので、無線信号の妨害波としての影響が大きい場合には、それを除去することができる。
【0012】
また、前記所定の条件は、前記送信手段が無線信号を所定の閾値以上の電力レベルで送信することであり、前記伝達手段は、前記送信手段が、無線信号を所定の閾値以上の電力レベルで送信するときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信手段が無線信号を所定の閾値未満の電力レベルで送信するときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達することとしてよい。
【0013】
これにより、携帯通信機器は、所定の電力レベル以上で無線信号を送信する場合に、フィルタ手段を経由させた信号を選局手段に供給し、それ以外の場合では、フィルタ手段を経由させないので、受信した放送信号がフィルタ手段により減衰することが少なくなる。送信する無線信号が妨害波として作用するのは、出力レベルを高くして無線信号を送信する場合となるので、その場合にのみフィルタ手段を経由する構成とすることで、フィルタ手段の放送信号に対する影響を軽減することができ、かつ無線送信が影響を与える場合には、その影響を除去することができる。
【0014】
また、前記所定の条件は、受信された放送信号の受信強度が所定の閾値未満であることであり、前記伝達手段は、受信されたの放送信号の受信強度が前記所定の閾値未満であるときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、受信した放送信号の受信強度が前記所定の閾値以上であるときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達することとしてよい。
【0015】
これにより、携帯通信機器は、受信している受信強度が一定の受信強度に満たない場合には、妨害波の影響を受けやすいので、フィルタ手段を通すことでその影響を除去でき、また、それ以外の場合においてはフィルタ手段を通さないので、フィルタ手段が、受信した放送信号を必要以上に減衰させて復号できなくなる事態を回避できる。
また、前記所定の条件は、無線信号の送信に用いる送信周波数が所定の閾値未満であることであり、前記携帯通信機器は、更に、前記送信手段に、無線信号の送信に用いる前記送信周波数を指定する送信周波数指定手段を備え、前記伝達手段は、前記送信周波数が前記所定の閾値未満である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信周波数が前記所定の閾値以上である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達することとしてよい。
【0016】
これにより、携帯通信機器は、無線信号の送信に用いる周波数が所定の周波数以下である場合に、受信した放送信号をフィルタ手段を経由させて選局手段に伝達することができる。無線信号の送信に用いる周波数が所定の周波数以下である場合とは即ち、無線信号の送信に用いる周波数が、放送の送信に放送局が用いる周波数に近いことを示す。このとき、送信する無線信号が放送信号に対する影響も与えやすい。そこで、本構成により、携帯通信機器は、無線信号の送信に用いる周波数が放送の受信周波数に近い場合に無線信号の影響をフィルタ手段で除去し、それ以外の場合についてはフィルタ手段を経由させないことで、受信信号の減衰を防ぐことができる。
【0017】
また、前記所定の条件は、受信するチャネルの周波数が所定の閾値以上であることであり、前記携帯通信機器は、更に、受信するチャネルの受信周波数を指定する受信周波数指定手段とを備え、前記伝達手段は、前記受信周波数が前記所定の閾値以上である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記受信周波数が前記所定の閾値未満である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達することとしてよい。
【0018】
これにより、携帯通信機器は、受信するチャネルの周波数が所定の周波数以上である場合に、受信した放送信号をフィルタ手段を経由させて選局手段に伝達することができる。受信する周波数が高いということは、それだけ、無線信号の送信による影響を受けやすくなり、この場合には、フィルタ手段による受信信号の減衰よりも、無線信号の送信による影響の方が大きくなるので、フィルタ手段を通すことで無線信号の送信による影響を除去する。
【0019】
また、前記伝達手段は、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達する第1経路と、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させない前記選局手段に伝達する第2経路とを切り替えるスイッチング回路を備えることとしてよい。
これにより、携帯電話機は、予め二つの経路を備え、トランジスタなどにより実現されるスイッチ回路などにより、受信した信号をフィルタ手段を経由させるか否かの機構を容易、且つ、安価に実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る携帯通信機器の一実施形態である携帯電話機について図面を用いて説明する。
<実施の形態1>
<構成>
まず、本発明に係る携帯電話機100の機能構成を図1を用いて説明する。図1は、携帯電話機100の機能構成を示した機能ブロック図である。図1に示すように、携帯電話機100は、通信部110と、通信用アンテナ111と、音声処理部120と、マイク121と、スピーカ122と、フィルタ130と、TV放送受信アンテナ131と、スイッチ132と、スイッチ133と、ワンセグ用TVチューナ134と、表示部140と、操作部150と、記憶部160と、制御部170とを含んで構成される。
【0021】
通信部110は、通信用アンテナ111から受け取った受信信号を受話音声信号及び受信データ信号に復調し、復調した受話音声信号や、受信データ信号を制御部170に出力する機能を有する。また、通信部110は、音声処理部120でA/D変換された送話音声信号、及び制御部170から与えられる電子メールなどの送信データ信号を変調し、通信用アンテナ111から出力する機能を有する。
【0022】
音声処理部120は、通信部110から出力された受話音声信号をD/A変換してスピーカ122に出力する機能と、マイク121から取得した送話音声信号をA/D変換し、変換された信号を制御部170に出力する機能を有する。また、制御部170からの伝達された音声信号、例えば、ワンセグ用TVチューナから出力された受信した放送に係る音声をスピーカ122から出力する機能も有する。
【0023】
フィルタ130は、通信用アンテナ111から送信される無線信号の周波数帯域の信号を抑制する機能を有するフィルタである。フィルタ130は、例えば、ローパスフィルタにより実現される。
スイッチ132とスイッチ133とは、制御部170からの指示により切り替わるスイッチであり、例えばトランジスタ素子により実現される。トランジスタ素子は制御部170から制御用電流の供給を受けるか否かで、スイッチのON、OFFを切り替える。制御部170からの指示がない限りは、スイッチ132とスイッチ133とは、図1に示すようにフィルタ130を経由しない側の経路との接続状態を保ち、TV放送受信アンテナ131で受信した信号をワンセグ用TVチューナ134に伝達させる。そして制御部170からの指示があった場合に、スイッチ132とスイッチ133とは、接続端子をフィルタ130を経由する側の経路に切り替えて、TV放送受信アンテナ131で受信した信号をフィルタ130を経由させてワンセグ用TVチューナ134を介して伝達させる。なお、以下において、スイッチ132とスイッチ133とをフィルタ130を経由する側の経路への接続に切り替えることを、「スイッチをONにする」と記載し、スイッチ132とスイッチ133とをフィルタ130側を経由しない側の経路への接続に切り替えることを、「スイッチをOFFにする」と記載する。
【0024】
ワンセグ用TVチューナ134は、制御部170から指定された特定のチャネルの信号をスイッチ133から伝達された放送信号から抽出し、復調し、制御部170に出力する機能を有する。ワンセグ用TVチューナ134の詳細については後述する。
表示部140は、LCD(Liquid Crystal Display)などによって実現されるディスプレイを含み、制御部170の指示による画像をディスプレイに表示する機能を有する。例えば、ワンセグ用TVチューナ134から出力されたTV放送の信号に係る画像を表示する機能を有する。
【0025】
操作部150は、テンキー群、オンフックキー、オフフックキー、方向キー、決定キー、メールキーなどを含み、ユーザの操作を受け付け、受け付けた操作内容を制御部170に伝達する機能を有する。受け付ける操作内容としては、例えば、ユーザが視聴したいTV放送のチャネルの指定などがある。
記憶部160は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)を含んで構成され、小型ハードディスクや不揮発性メモリなどによって実現される。記憶部160は、携帯電話機100の動作上必要な各種データやプログラムの他、音楽データや画像データなどを記憶する機能を有する。
【0026】
制御部170は、携帯電話機100の各部を制御する機能を有する。また、制御部170は、通信部110に対して無線信号を送信する場合に、スイッチ132とスイッチ133をONにする機能を有する。そして、制御部170は、無線信号を送信しない場合には、スイッチ132とスイッチ133とをOFFにする機能を有する。
以上が、携帯電話機100の各部の機能である。
【0027】
続いて、ワンセグ用TVチューナ134について説明する。ワンセグ用TVチューナ134は、従来からあるTVチューナと基本的に同様の構成と機能を有する。
図2は、ワンセグ用チューナ134の内部構成を示した機能ブロック図である。図2に示すように、ワンセグ用TVチューナ134は、チューナ制御部200と、RF(Radio frequency)部201と、ADC(Analog Digital Converter)202と、FFT(Fast Fourier Transform)203と、復号部204と、DAC(Digital Analog Converter)205とを含んで構成される。
【0028】
チューナ制御部200は、ワンセグ用TVチューナ134のシステム制御を行う機能を有する。チューナ制御部200は、RF部201に対して、AGC(Automatic Gain Control)の設定と周波数の設定とを行う機能を有する。また、チューナ制御部200は、FFT203に対して、ガードインターバルの範囲内において、FFT解析区間の位置を調整する機能を有する。
【0029】
RF部201は、チューナ制御部200により設定されたAGCと周波数の設定に基づいて物理チャネルを選択する。そしてRF部201は、信号増幅を行って、ADC202にベースバンド信号を出力する機能を有する。
ADC202は、RF部201から受け取ったベースバンド信号を、アナログ信号からデジタル信号に変換してデジタルベースバンド信号をFFT203に出力する機能を有する。
【0030】
FFT203は、チューナ制御部200に設定されたFFT窓位置に基づいて、ADC203から出力されてきたデジタルベースバンド信号を復調してストリーム信号に変換する機能を有する。
復号部204は、FFT203から出力されてきたストリーム信号をMPEG2復号し、デジタルビデオ信号を出力する機能を有する。
【0031】
DAC205は、復号部204から出力されてきたデジタルビデオ信号をアナログ変換し、制御部170に対して出力する機能を有する。
RF部201、ADC202、FFT203、復号部204、DAC205を経て、ワンセグ用TVチューナ134に入力された信号から、所望のチャネルの信号が復号されて出力される。そして、表示部140で画像を表示され、音声処理部120のスピーカ122から音声が出力される。
【0032】
次いで、RF部201について、説明する。
図3は、RF部201の機能構成を示した機能ブロック図である。図3に示すように、RF部201は、BPF(Band Pass Filter)301と、LNA(Low Noise Amplifier)302と、MIX(MIXer)303と、LPF(Low Pass Filter)と、AMP(AMPlifier)305と、VCO(Voltage Controlled Oscillator)306と、PLL(Phase Locked Loop)307とを含んで構成される。
【0033】
BPF301は、地上デジタル放送以外の信号を取り除く機能を有する。
LNA302は、RF信号を低雑音で増幅する機能を有する。増幅度は、チューナ制御部200により設定されるAGCにより決定される。
MIX303は、特定の物理チャネルだけを増幅する機能を有する。具体的には、LNA302から出力された信号と、VCO303から出力された信号とを合成しえられた信号をLPF304に出力する機能を有する。
【0034】
LPF304は、MIX303から出力された信号から不要な物理チャネルの信号を除去する機能を有する。
AMP305は、ADC202に入力可能な電圧まで増幅する機能を有する。
VCO306は、特定の物理チャネルを発生する機能を有する周波数発生器である。
PLL307は、チューナ制御部200から指定された周波数に基づいて、VCO306が発生させる周波数を設定し、その周波数を一定に保つための周波数制御の機能を有する。
【0035】
BPF301、LNA302、MIX303、LPF304、AMP305の各部を経て、入力された信号から所望のチャネルの信号部分が抽出、増幅されてRF部201からADC202に出力される。
以上が、携帯電話機100の各部の説明である。従来においては、図6に示したように受信したTV放送の放送信号を必ずフィルタを通過させていた。しかし、本実施の形態においては、TV放送の放送信号がフィルタ130を通過する経路と通過しない経路とを設けている。そして、携帯電話機100は、放送信号を、無線信号を送信するタイミングにおいてスイッチを切り替えてフィルタ130を通過させ、無線信号を送信しないタイミングではフィルタ130を通過させない仕様になっている。これにより、フィルタ130が必要なTV放送の放送信号を抑制することをなるべく抑えることができる。
<動作>
では、本実施の形態の携帯電話機100の動作を図4に示すフローチャートを用いて説明する。
【0036】
まず、操作部150でユーザからTV放送の表示の操作を受け付けた携帯電話機の制御部170は、DTV(Digital TV)の受信を開始する(ステップS401)。
制御部170は、操作部150から伝達された入力内容に基づき、受信チャネルをワンセグ用TVチューナ134に伝達し、ワンセグ用TVチューナ134は受信チャネルを設定する(ステップS403)。
【0037】
そして、その後に制御部170は、例えば基地局からビーコン信号に対する応答信号を無線送信する場合などに、CDMA送信回路を起動する場合(ステップS405のYES)、スイッチ132とスイッチ133をONにする(ステップS407)。すると、受信されたTV放送の放送信号はフィルタ130を経由する。これにより、無線信号を送信することにより発生する影響を抑制することができる。
【0038】
制御部170は、送信すべき無線信号を送信した後に、通信部110のCDMA送信回路をOFFにする指示を出力し、通信部110はCDMA送信回路をOFFにする(ステップS409のYES)。なお、無線信号の送信を続けている間は(ステップS409のNO)、スイッチ132とスイッチ133はONの状態になっている。
通信部110に対し、CDMA回路をOFFにする指示を出力した後、制御部170は、スイッチ132とスイッチ133とをOFFにする(ステップS411)。
【0039】
以下、ステップS405から、ステップS411にかけての動作は、デジタルテレビの受信中は繰り返される。
上記動作を実行することにより、携帯電話機は、従来のように、無線信号を送信していないときでもフィルタ130を経由させることがないので、必要以上にTV放送の受信信号を抑制することなく、チューナは放送を復調できる。
<実施の形態2>
上記実施の形態1においては、単純に携帯電話機100は、無線信号を送信するときに、受信したTV放送の信号をフィルタ130を通過させてワンセグ用TVチューナに供給することとした。本実施の形態においては、単純に無線信号を送信する場合にフィルタ130を通過させるのではなく、そこに各種の条件を加味してもよいことを示す。なお、本実施の形態においては、実施の形態1と異なる部分について記載し、共通する部分については、省略若しくは簡略化する。
<構成>
まず、携帯電話機100の機能について、実施の形態1に追加される機能について説明する。
【0040】
アンテナ131は、受信した信号の受信強度を検出するための検出部を含み、検出した受信強度を制御部170に伝達する機能を有する。
記憶部160は、予め、無線信号を送信する際の出力レベルと比較するための出力レベル閾値と、受信した放送信号の受信強度と比較するための受信強度閾値と、受信するTVチャネルの中心周波数と比較するための受信周波数閾値と、無線信号を送信するのに用いる周波数と比較するための送信周波数閾値とを記憶している。
【0041】
制御部170は、アンテナ131から伝達された受信強度と、記憶部160が記憶している受信強度閾値との大小を比較する機能を有する。制御部170は、通信部110に対して伝達する信号送信の出力レベルを決定し、その出力レベルと出力レベル閾値との大小を比較する機能を有する。制御部170は、操作部150から伝達された受信チャネルの周波数と、受信周波数閾値との大小を比較する機能を有する。制御部170は、無線信号の送信を実行する周波数を決定し、当該周波数と送信周波数閾値との大小を比較する機能を有する。
【0042】
そして、制御部170は、TV放送を受信チャネルの周波数が所定の閾値以上で受信しており、その受信強度が所定の受信レベル未満の場合において、無線信号の送信を、所定の周波数未満の周波数で、かつ、所定の送信レベル以上で、実行する場合に、スイッチ132とスイッチ133とをONにする機能を有する。
ここで、各閾値の定め方について説明しておく。各閾値は、携帯電話機100の筐体のどこに、通信用アンテナ111とTV放送受信用アンテナ131とを配置するかによって異なってくる。
【0043】
そこで、携帯電話機100の実器に相当する機器を作成し、当該実機で、TV放送を受信し、無線信号を送信しているときと、していないときとで、TV放送の受信信号を比較し、影響のあるなしを検出する。
例えば、出力レベルの閾値については、最低レベルの出力レベルから出力レベルを漸次上げていく。そして、TV放送の受信信号に対して影響を与えて、信号を復号して、表示するのに差しさわりが出るレベルを、例えば表示されている画像の状態を目視するなどして検出する。検出した当該レベルを出力レベル閾値として記憶部160に設定する。
【0044】
受信強度閾値については、同様に、受信した放送信号が無線信号の送信の影響を受けるかどうかを、受信した受信強度ごとに調べる。そして、無線信号の送信の影響を受けたとしても放送信号を復号できる受信強度を検出し、受信強度閾値として記憶部160に設定する。
受信周波数閾値については、TV放送の各種のチャネルを受信し、その時に無線信号を送信して、無線信号の送信による影響がでるチャネルを検出し、受信周波数閾値として記憶部160に設定する。
【0045】
送信周波数閾値についても、TV放送を受信し、その時に無線信号の送信を各種の周波数で実行する。そして、無線信号の送信の影響がでる送信周波数を検出し、送信周波数閾値として記憶部160に設定する。
<動作>
では、実施の形態2における携帯電話機100の動作を、図5に示したフローチャートを用いて説明する。なお、図5に示したフローチャートにおいて、図4に示したフローチャートと同様の内容である場合には、図4に示したステップ番号と同じステップ番号を付している。
【0046】
まず、操作部150でユーザからTV放送の表示の操作を受け付けた携帯電話機の制御部170は、DTV(Digital TV)の放送信号の受信を開始する(ステップS401)。
制御部170は、操作部150から伝達された入力内容に基づき、受信チャネルをワンセグ用TVチューナ134に伝達し、ワンセグ用TVチューナ134は受信チャネルを設定する(ステップS403)。
【0047】
そして制御部170は、受信チャネルの周波数が記憶部160に設定されている受信周波数閾値以上かどうかを判断する(ステップS501)。
受信チャネルの周波数が受信周波数閾値以上である場合には(ステップS501のYES)、制御部170は次に、無線信号を送信する場合に用いる周波数が記憶部160に記憶されている送信周波数閾値未満であるかどうかを判定する(ステップS503)。
【0048】
無線信号の送信に用いる周波数が送信周波数閾値未満である場合には(ステップS503)、制御部170は、TV放送受信アンテナ131で受信している信号の受信強度が記憶部160に記憶されている受信強度閾値以上かどうかを判断する(ステップS505)。
受信しているTV放送の受信信号の受信強度が受信強度未満である場合に(ステップS505のYES)、制御部170は、無線信号を送信するのに用いる送信電力が記憶部160に記憶されている出力レベル閾値以上であるかどうかを判定する(ステップS507)。
【0049】
そして、制御部170は、通信部110に対してCDMA送信回路をONにする指示を出し、無線信号の送信を指示した場合に、それと同時に、スイッチ132とスイッチ133とをONにする(ステップS407)。すると、受信されたTV放送の放送信号はフィルタ130を経由し、無線信号を送信することにより発生する妨害波を抑制することができる。
【0050】
制御部170は、送信すべき無線信号を送信した後に、通信部110のCDMA送信回路をOFFにする指示を出力し、通信部110はCDMA送信回路をOFFにする(ステップS409のYES)。なお、無線信号の送信を続けている間は(ステップS409のNO)、スイッチ132とスイッチ134はONの状態になっている。
通信部110に対し、CDMA回路をOFFにする指示を出力した後、制御部170は、スイッチ132とスイッチ133とをOFFにする(ステップS411)。
【0051】
以下、ステップS405から、ステップS411にかけての動作は、デジタルテレビの受信中は繰り返される。
以上、本実施の形態においては、無線信号を送信する場合においても、フィルタを通過させる場合と通過させない場合の条件づけを行うことを示した。
<補足>
上記実施の形態において、本発明の実施の手法について説明してきたが、本発明がこれに限られないことは勿論である。以下、上記実施の形態以外に本発明の思想として含まれる各種の変形例について説明する。
(1)本発明は、上記実施の形態において示したTV放送の受信方法であってもよく、また、この受信方法を実現するために携帯電話機に搭載されるコンピュータに読み込まれ実行されるコンピュータプログラムであってもよい。
【0052】
また、本発明は、当該コンピュータプログラムが記憶されたFD(Flexible Disc)、MD(Magneto-optical Disc)、CD(Compact Disc)、BD(Blu-ray Disc)などの記録媒体であってもよい。
(2)上記実施の形態2においては、複数の条件を設けて、全ての条件をクリアした場合に、スイッチをONにする構成としたが、この条件設定はこれらの条件のうち1つだけであってもよく、また、これらの複数の条件のうちの2つだけであってもよい。
【0053】
例えば、制御部170は、無線信号を送信する場合の送信レベルが所定閾値以上という条件を満たすだけでスイッチ132とスイッチ133とをONにする構成であってもよいし、送信周波数が所定閾値未満で受信周波数が所定閾値以上であるという条件を満たす場合に、スイッチ132とスイッチ133とをONにする構成としてもよい。
(3)上記実施の形態においては、TVチューナとしては、ワンセグ用TVチューナを例に説明しているが、これはワンセグ用に限定するものではなく、ハイビジョン対応のTVチューナであってもよい。
(4)上記実施の形態においては、放送信号として、TV放送を例に示したが、これはTV放送の放送信号に限定するものではなく、例えば、ラジオ放送などであってもよい。
(5)上記実施の形態においては、携帯通信機器として携帯電話機を例に説明したが、これは携帯電話機に限定するものではなく、放送を受信し、また他の機器と通信を実行できる機器であればよく、例えば、放送を受信する機能と、他の機器と通信を実行できるPDA(Personal Digital Assistants)などであってもよい。
(6)上記実施の形態においては、フィルタ130としてローパスフィルタを一例に上げたが、これはローパスフィルタに限定するものではなく、無線信号の周波数の信号を抑制できるものであればよく、例えばBPFや、トラップフィルタなどであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明に係る携帯電話機は、自機で無線信号の送信を実行してもTV放送の受信の妨げとならない携帯電話機として活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】携帯電話機100の機能構成を示した機能ブロック図である。
【図2】ワンセグ用TVチューナ134の機能構成を示した機能ブロック図である。
【図3】RF部201の機能構成を示した機能ブロック図である。
【図4】実施の形態1に係る携帯電話機100の動作を示したフローチャートである。
【図5】実施の形態2に係る携帯電話機100の動作を示したフローチャートである。
【図6】従来の携帯電話機600の機能構成を示した機能ブロック図である。
【図7】地上デジタル放送とCDMA通信に用いる周波数帯域を模式的に示した図である。
【図8】TV放送の受信信号が、フィルタにより減衰することを模式的に示したグラフである。
【符号の説明】
【0056】
100 携帯電話機
110 通信部
111 通信用アンテナ
120 音声処理部
121 マイク
122 スピーカ
130 フィルタ
131 TV放送受信アンテナ
132、133 スイッチ
134 ワンセグ用TVチューナ
140 表示部
150 操作部
160 記憶部
170 制御部
200 チューナ制御部
201 RF部
202 ADC
203 FFT
204 復号部
205 DAC
301 BPF
302 LNA
303 MIX
304 LPF
305 AMP
306 VCO
207 PLL

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放送信号を受信することが可能な携帯通信機器であって、
放送信号が送信される周波数と異なる周波数を用いて無線信号を送信するための送信手段と、
前記送信手段が無線信号の送信に用いる周波数の信号を抑制するフィルタ手段と、
受信した放送信号から所望のチャネルの信号を抽出する選局手段と、
前記送信手段が無線信号を送信する場合には、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信手段が無線信号を送信していない場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達するように構成された伝達手段とを備える
ことを特徴とする携帯通信機器。
【請求項2】
放送信号を受信することが可能な携帯通信機器であって、
放送信号が送信される周波数と異なる周波数を用いて無線信号を送信するための送信手段と、
前記送信手段が無線信号の送信に用いる周波数の信号を抑制するフィルタ手段と、
受信した放送信号から所望のチャネルの信号を抽出する選局手段と、
前記送信手段が無線信号を送信し、且つ、所定の条件が満たされる場合には、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信手段が無線信号を送信していない場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達するように構成された伝達手段とを備える
ことを特徴とする携帯通信機器。
【請求項3】
前記所定の条件は、前記送信手段が無線信号を所定の閾値以上の電力レベルで送信することであり、
前記伝達手段は、
前記送信手段が、無線信号を所定の閾値以上の電力レベルで送信するときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信手段が無線信号を所定の閾値未満の電力レベルで送信するときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達する
ことを特徴とする請求項2記載の携帯通信機器。
【請求項4】
前記所定の条件は、受信された放送信号の受信強度が所定の閾値未満であることであり、
前記伝達手段は、
受信された放送信号の受信強度が前記所定の閾値未満であるときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、受信した放送信号の受信強度が前記所定の閾値以上であるときには、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達する
ことを特徴とする請求項2記載の携帯通信機器。
【請求項5】
前記所定の条件は、無線信号の送信に用いる送信周波数が所定の閾値未満であることであり、
前記携帯通信機器は、更に、
前記送信手段に、無線信号の送信に用いる前記送信周波数を指定する送信周波数指定手段を備え、
前記伝達手段は、前記送信周波数が前記所定の閾値未満である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記送信周波数が前記所定の閾値以上である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達する
ことを特徴とする請求項2記載の携帯通信機器。
【請求項6】
前記所定の条件は、受信するチャネルの周波数が所定の閾値以上であることであり、
前記携帯通信機器は、更に、
受信するチャネルの受信周波数を指定する受信周波数指定手段とを備え、
前記伝達手段は、前記受信周波数が前記所定の閾値以上である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記受信周波数が前記所定の閾値未満である場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達する
ことを特徴とする請求項2又は5記載の携帯通信機器。
【請求項7】
前記伝達手段は、
受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達する第1経路と、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させない前記選局手段に伝達する第2経路とを切り替えるスイッチング回路を備える
ことを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の携帯通信機器。
【請求項8】
放送信号を受信する機能と、受信された放送信号から所望のチャネルの信号を抽出する選局手段と、放送信号が送信されてくる周波数とは異なる周波数を用いて無線信号を送信する無線送信機能とを有する機器に具備される受信回路であって、
前記無線送信機能が無線信号を送信する際に用いる周波数の信号を抑制するフィルタ手段と、
前記送信手段が無線信号を送信する場合又は前記送信手段が無線信号を送信し、且つ、所定の条件が満たされる場合には、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達し、前記無線送信機能により前記機器が無線信号を送信していない場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達する伝達手段とを備える
ことを特徴とする受信回路。
【請求項9】
放送信号が送信されてくる周波数とは異なる周波数を用いて無線信号を送信する機能と、無線信号を送信する際に用いる周波数の信号を抑制するフィルタ手段と、受信された放送信号から所望のチャネルの放送信号を抽出する選局手段とを有する携帯通信機器のコンピュータに読み込ませて放送を受信する処理手順を示した放送受信プログラムであって、前記処理手順は、
前記送信手段が無線信号を送信する場合又は前記送信手段が無線信号を送信し、且つ、所定の条件が満たされる場合には、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させて前記選局手段に伝達される第1経路と、無線信号を送信していない場合に、受信された放送信号を前記フィルタ手段を経由させずに前記選局手段に伝達される第2経路との接続を切り替えるスイッチング回路を制御する制御ステップを含む
ことを特徴とする放送受信プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−252658(P2008−252658A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93022(P2007−93022)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】