説明

携帯電子機器

【課題】十分なアンテナの利得を維持することができる携帯電子機器を提供する。
【解決手段】不平衡給電アンテナと無線回路部72とを接続した第1状態と、平衡給電アンテナと無線回路部72とを接続した第2状態とを有し、無線回路部72で処理される信号の強度に基づいて、前記第1状態と第2状態のいずれか一方を選択する。また、筐体の開閉状態を検出する開閉検出部73を有し、その検出結果に基づいて、前記第1状態と第2状態のいずれか一方を選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンテナにより外部機器と通信を行う携帯電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
2つの不平衡給電アンテナから一つの不平衡給電アンテナを選択して通信を行う携帯無線機が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−167912号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、平衡給電アンテナは、筐体の周囲の環境変化に応じて、アンテナの利得が変化しやすい。したがって、特許文献1の技術では、筐体周囲の環境が不平衡給電アンテナの利得を維持する上で適していない状況下では、2つの不平衡給電アンテナから一つの不平衡給電アンテナを選択しても、十分なアンテナの利得を維持することができない、という課題があった。
【0005】
そこで本発明は、十分なアンテナの利得を維持することができる携帯電子機器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る携帯電子機器は、筐体と、前記筐体に配置され、所定の周波数帯の信号に共振する不平衡給電アンテナと、前記筐体に配置され、前記所定の周波数帯の信号に共振する平衡給電アンテナと、前記筐体に配置され、前記所定の周波数帯の信号を処理する信号処理部と、前記不平衡給電アンテナと前記信号処理部とを接続した第1状態と、前記平衡給電アンテナと前記信号処理部とを接続した第2状態とを選択する選択部と、を有する。
【0007】
好適には、前記第1状態において前記信号処理部により処理される信号の強度および前記第2状態において前記信号処理部により処理される信号の強度に基づいて前記第1状態と前記第2の状態のいずれか一方を選択する制御部を有する。
【0008】
好適には、前記平衡給電アンテナは、前記筐体の一端部に配置され、前記不平衡給電アンテナは、前記筐体の他端部に配置される。
【0009】
好適には、前記筐体の一端部には、操作部が配置される。
【0010】
好適には、前記筐体は、開状態と閉状態との間を移動可能に連結される第1筐体と第2筐体とを有し、前記開状態及び前記閉状態を検出する検出部を有し、前記制御部は、前記検出部により前記開状態が検出されると前記選択部により前記第1状態を選択し、前記検出部により前記閉状態が検出されると前記選択部により前記第2状態を選択する。
【0011】
好適には、前記第1筐体に配置された第1導電部と、前記第2筐体に配置された第2導電部と、前記信号処理部に接続された給電部及びグランド部と、を有し、前記不平衡給電アンテナは、前記第1導電部と前記第2導電部のいずれか一方と前記グランド部とを電気的に接続すると共に前記第1の導電部と前記第2の導電部のいずれか他方と前記給電部とを電気的に接続することにより形成されるアンテナである。
【0012】
好適には、前記平衡給電アンテナは、前記第1導電部と前記第2導電部のいずれか一方の導電部における端部であって前記第1筐体と前記第2筐体とが連結される側とは反対側の端部に対応して、前記第1筐体と前記第2筐体のいずれか一方に配置される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、十分なアンテナの利得を維持することができる携帯電子機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本実施形態に係る携帯電子機器の外観を示す図である。
【図2】本実施形態に係る携帯電子機器を示す図で、(a)は開状態を示す図、(b)は閉状態を示す図である。
【図3】本実施形態に係る携帯電子機器の構成を示す機能ブロック図である。
【図4】本実施形態に係る携帯電子機器の構成を示す機能ブロック図である。
【図5】本実施形態に係る携帯電子機器の変形例を示す図で、(a)は開状態を示す図、(b)は閉状態を示す図である。
【図6】不平衡給電アンテナのインピーダンス特性を模式的に示す図である。
【図7】本実施形態に係る携帯電子機器の外観を示す図である。
【図8】本実施形態に係る携帯電子機器の内部を示す概念図である。
【図9】本実施形態に係る携帯電子機器の構成を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。図1は、携帯電子機器の外観を示す図である。図2(a)は携帯電子機器の開状態を示し、図2(b)は携帯電子機器の閉状態を示す。
【0016】
携帯端末1(携帯電話装置)は、第1筐体2(筐体)と、第2筐体3(筐体)と、を含む。第1筐体2は、第1表面部20を含む。第1表面部20は、操作キー群21(操作部)と、マイク22とを備えても良い。マイク22は、携帯端末1の使用者が通話時に発した音声が入力される。操作キー群21は、機能設定操作ボタン23、入力操作ボタン24及び決定操作ボタン25を含む。機能設定操作ボタン23は、各種設定や電話帳機能やメール機能等の各種機能を動作させる。入力操作ボタン24は、電話番号の数字やメール等の文字等を入力する。決定操作ボタン25は、各種操作における決定やスクロール等を行う。
【0017】
第2筐体3は、第2表面部30を含む。第2表面部30は、ディスプレイ31、音声出力部32、撮像部33及びスピーカ34を備えても良い。ディスプレイ31は、各種情報を表示できる。音声出力部32は、通話の相手側の音声を出力する。撮像部33は、被写体を撮像するCCDカメラ等を含む。スピーカ34は、音楽等を外部に出力する。
【0018】
携帯端末1は、ヒンジ部4を含む。ヒンジ部4は、第1筐体2の上端部と第2筐体3の下端部とを連結する。ヒンジ部4を基点として第1筐体2と第2筐体3とを相対的に回転することにより、第1筐体2と第2筐体3とが互いに開かれた状態(開状態)と、第1筐体2と第2筐体3とが折り畳まれた状態(閉状態)にすることができる。
【0019】
図3は、携帯電子機器の構成を示すブロック図である。
【0020】
第2筐体3は、第2導電部6を含む。第2導電部6は、例えば、図示しない回路基板のグランドパターン、シールドケース、第2筐体3を形成する導電部材等を含む。
【0021】
第1筐体2は、第1導電部5と回路部7と、導電部材8とを備えても良い。
【0022】
第1導電部5は、例えば、図示しない回路基板のグランドパターン、シールドケース、第1筐体2を形成する導電部材等を含む。
【0023】
回路部7は、グランド部70と、給電部71と、信号処理部となる無線回路部72と、制御部75と、検出部となる開閉検出部73と、第1選択部74a(選択部)、と第2選択部74b(選択部)とを含む。
【0024】
グランド部70は、第1選択部74aを介して第1導電部5に接続できる。給電部71は、第2選択部74bを介して第2導電部6あるいは導電部材8に接続し、給電できる。この給電部71は、ヒンジ部4付近にあっても良い。しかし、給電部71の位置は、ヒンジ部4付近に限られない。
【0025】
図4は、携帯電子機器の構成を示すブロック図である。
【0026】
無線回路部72は、アンテナから受信される信号を処理する。この無線回路部72は、平衡不平衡変換回路部720と、第1調整部721aと、第2調整部721bと、RF回路722とを有する。平衡不平衡変換回路部720は、平衡信号を受信した場合(後述する第2アンテナにより信号の受信がされた場合)に、この平衡信号を不平衡信号に変換する。第1調整部721aは、導電部材8から受信される信号のインピーダンスを調整する。第2調整部721bは、第2導電部6から受信される信号のインピーダンスを調整する。開閉検出部73は、携帯端末1の開状態と閉状態とを検出する。
【0027】
制御部75は、開閉検出部73、第1選択部74a、第2選択部74b、及び無線回路部72に接続されて、開閉検出部73により検出された携帯端末1の開状態又は閉状態の検出に基づいて第1選択部74a及び第2選択部74bを制御し、無線回路部72が生成した信号データを通話の処理に供する。
【0028】
導電部材8は、第2選択部74bを介して、給電部71に接続し、給電部71から給電が可能となる。この導電部材8は、コイル部材等によりループ状に形成されている。給電部71により給電されると、導電部材8はループアンテナ(平衡給電アンテナ)として機能する。この導電部材8は、第1筐体2の端部、すなわち、第1筐体2における給電部71が配置されるヒンジ部4側とは反対側の端部に配置される。ただし、導電部材8の配置は、この配置に限定されるものではない。
【0029】
第1選択部74aは、開閉検出部73の検出結果に基づいた制御部75からの指示により、第1導電部5とグランド部70との接続と切断を行う。第2選択部74bは、開閉検出部73の検出結果に基づいた制御部75からの指示により、第2導電部6と導電部材8との接続の切り替えを行う。第1選択部74a及び第2選択部74bは、第2導電部6と給電部71とを接続させ、第1導電部5とグランド部70とを接続させた状態と、導電部材8と給電部71とを接続させ、第1導電部5とグランド部70との接続を解除した状態とを選択することが可能である。
【0030】
このように、給電部71により第2導電部6に給電した場合には、この給電された第2導電部6とグランド部70に接続される第1導電部5が電気的に接続されることにより、第2導電部6が第1アンテナの放射素子として機能し、第1導電部5がアンテナの第1グランドとして機能することで、第1アンテナとなる。この第1アンテナは、所定の周波数帯の信号に共振するダイポールアンテナ(不平衡給電アンテナ)であり、無線回路部72に接続された状態(第1状態)となる。
【0031】
第1アンテナの放射素子側(第2筐体3側)から受信された信号は、無線回路部72の調整部721により、信号のインピーダンスが調整される。次に、RF回路722により、データとして利用可能な状態に信号が調整される。次に、調整された信号は、制御部75により、通話の処理に供される。
【0032】
一方、給電部71により導電部材8に給電した場合には、導電部材8が第2アンテナの放射素子として機能することで、第2アンテナとなる。この第2アンテナは、所定の周波数帯の信号に共振するループアンテナ(平衡給電アンテナ)を構成し、無線回路部72に接続された状態(第2状態)となる。
【0033】
第2アンテナの放射素子側(第1筐体2側)から受信された信号は、無線回路部72の平衡不平衡変換回路部720により、平衡信号が不平衡信号に変換される。次に、調整部721により、信号のインピーダンスが調整される。次に、RF回路722により、データとして利用可能な状態に信号が調整される。次に、調整された信号は、制御部75により、通話の処理に供される。
【0034】
携帯端末1は、2つのアンテナを含み、携帯端末1の開閉状態に応じて、以下のように動作する。以下、動作の例として、<動作1>および<動作2>をそれぞれ示す。
<動作1>
携帯端末1が開状態の時には、第1アンテナにより通信が行われる。詳細には、開状態が開閉検出部73により検出され、制御部75により、第1選択部74a及び第2選択部74bを第1状態に切り替える。選択部74が第1状態に切り替えられると、給電部71と第2導電部6、及びグランド部70と第1導電部5が接続される。そして、給電部71により給電された第2導電部6とグランド部70に接続された第1導電部5とが電気的に接続され、第1アンテナにより信号の受信が可能となる。
【0035】
携帯端末1が閉状態の時には、第1アンテナと第2アンテナとから受信する信号の強度を比較し、強度が高いアンテナで通信が行われる。
【0036】
詳細には、閉状態を検知した開閉検出部73による状態検知結果に基づいて、制御部75が、まず、第1選択部74a及び第2選択部74bを第1状態に切り替える。よって、給電部71及び第2導電部6、並びにグランド部70及び第1導電部5が接続される。次に、給電部71により給電された第2導電部6とグランド部70に接続された第1導電部5とが電気的に接続され、第1アンテナが信号を受信する。
【0037】
また、制御部75は、第1選択部74a及び第2選択部74bを第2状態に切り替える。第2状態に切り替えられることにより、給電部71と導電部材8とが接続され、第1導電部5とグランド部70との接続が解除される。そして、給電部71と導電部材8とが電気的に接続され、第2アンテナが信号を受信する。
【0038】
第1アンテナと第2アンテナから受信された信号は、無線回路部72において処理され、制御部75により、受信の信号の強度が比較される。
【0039】
もし、第2アンテナからの受信の信号の強度が強い場合には、制御部75が第1選択部74a及び第2選択部74bを第2状態に切り替える。第2状態に切り替えられることにより、給電部71と導電部材8とが接続され、第1導電部5とグランド部70との接続が解除される。そして、給電部71と導電部材8とが電気的に接続され、第2アンテナにより信号が受信される。
【0040】
もし、第1アンテナからの受信の信号の強度が強い場合には、制御部75が選択部74を第1状態に切り替える。そして、給電部71により給電された第2導電部6とグランド部70に接続された第1導電部5とが電気的に接続され、第1アンテナにより信号が受信される。
<動作2>
携帯端末1が開状態の時には、第1アンテナにより通信が行われる。詳細には、開閉検出部73により開状態が検出されると、制御部75により、第1選択部74a及び第2選択部74bが制御され、第1状態が選択される。第1状態が選択されると、給電部71と第2導電部6とが接続されると共に、グランド部70と第1導電部5とが接続される。これにより、給電部71により給電された第2導電部6と、グランド部70に接続された第1導電部5とが、無線回路部72に接続され、第1アンテナを構成する。第1アンテナは、所定の周波数帯の信号(通話信号)の送受信を可能とする。
【0041】
携帯端末1が閉状態の時には、第2アンテナにより通信が行われる。詳細には、閉状態が開閉検出部73により検出されると、制御部75により、第1選択部74a及び第2選択部74bが制御され、第2状態が選択される。第2状態が選択されると、給電部71に接続された導電部材8が無線回路部72に接続され、第1導電部5とグランド部70との接続が解除され、第2アンテナを構成する。第2アンテナは、所定の周波数帯の信号(通話信号)の送受信を可能とする。
【0042】
また、携帯端末1は、開状態の時に、第1アンテナと第2アンテナとから受信する信号の強度を比較し、強度が高いアンテナで通信が行うように構成してもよい。
【0043】
詳細には、開状態を検知した開閉検出部73による状態検知結果に基づいて、制御部75が、まず、第1選択部74a及び第2選択部74bを制御して、第1状態を選択する。よって、給電部71と第2導電部6とが接続され、グランド部70と第1導電部5とが接続され、第1アンテナが信号を受信する。無線回路部72は、第1アンテナにより受信された信号を処理する。
【0044】
その後、制御部75は、第1選択部74a及び第2選択部74bを制御して、第2状態を選択する。よって、給電部71と導電部材8とが接続され、第1導電部5とグランド部70との接続が解除され、第2アンテナが信号を受信する。無線回路部72は、第2アンテナにより受信された信号を処理する。
【0045】
無線回路部72において処理された第1アンテナにより受信された信号及び第2アンテナにより受信された信号は、制御部75により、信号の強度が比較される。
【0046】
もし、第1アンテナからの受信の信号の強度が強い場合には、制御部75は第1選択部74a及び第2選択部74bを制御して、第1状態を選択する。すなわち、第1アンテナにより信号が受信される。
【0047】
一方、第2アンテナからの受信の信号の強度が強い場合には、制御部75は第1選択部74a及び第2選択部74bを制御して第2状態を選択する。すなわち、第2アンテナにより信号を受信する。
【0048】
このように、携帯端末1は、制御部75による制御によって、開閉検出部73が開状態を検出すると、第1状態を選択し、開閉検出部73が閉状態を検出すると第2状態を選択する。
【0049】
開状態では、第1アンテナを利用できるため、第1筐体2に配置された第1の導電部5及び第2筐体3に配置された第2の導電部6を有効活用して信号の受信が可能となる。
【0050】
また、閉状態では、第2アンテナを利用できるため、第1筐体2に高周波電流が流れに難くなる。よって、第1筐体2と第2筐体3に流れる高周波電流の打ち消し合いを低くすることができるため、閉状態においてアンテナの利得を良好に保つことができる。
【0051】
また、制御部75が、第1状態における無線回路部72により処理される信号の強度と第2状態における無線回路部72により処理される信号の強度を比較し、その結果に基づいて、第1状態と第2状態との選択を制御するため、アンテナの利得をさらに良好に保つことができる。
【0052】
携帯端末1は、平衡給電アンテナとして機能する導電部材8を、第1導電部5の端部であって第1筐体2と第2筐体3とが連結されるヒンジ部4側とは反対側の端部に配置しても良い。
【0053】
図5は、不平衡給電アンテナのインピーダンス特性を模式的に示す。図5で、実線は、図中の携帯電話装置1の長さ方向の位置に対応する電圧の分布を示している。破線は、図中の携帯電話装置1の長さ方向の位置に対応する電流の分布を示している。また、実線および下線と、携帯電話装置1との間に示された図は、携帯電話装置1の長さ方向における電気回路のイメージを示すものである。第1のアンテナを使用する場合、第2の導電部6と第1の導電部5とを電気的に接続して信号を受信する。つまり、ダイポールアンテナとして機能するために、アンテナのインピーダンスの特性については、不平衡給電アンテナのインピーダンスの特性を有する。
【0054】
不平衡給電アンテナでは、給電部71のインピーダンスに対して、第1アンテナを構成する要素(第1アンテナの放射素子、あるいは第1アンテナのグランド)の開放端におけるインピーダンスが高い状態になることにより、定在波が形成されて、アンテナの利得を良好に保てる。しかし、給電部71のインピーダンスに対して、第1アンテナの放射素子、あるいは第1グランドの先端におけるインピーダンスが低い状態になると、アンテナの利得が低下する。
【0055】
このような不平衡給電アンテナの特性に鑑みて、携帯端末1は、アンテナのグランドとなる第1導電部5の端部に平衡給電アンテナの放射素子となる導電部材8を配置した。これにより、第1アンテナの要素の開放端に不平衡給電アンテナに比べて、インピーダンスが高い特性がある平衡給電アンテナの放射素子が配置されているために、第1アンテナのグランドの開放端をインピーダンスが高い状態にしておける。よって、開状態において、第1アンテナを利用した場合のアンテナの利得を向上できる。
【0056】
上記で、給電部71はヒンジ部4にあるが、これに限られない。給電部71は、アンテナの放射素子と位置関係により、アンテナの利得を考慮して有効的な位置に配置すれば良い。例えば、第2アンテナの利得を重視する場合には、第2アンテナの放射素子である導電部材8に、より近い位置にあっても良い。
【0057】
上記で、不平衡給電アンテナと平衡給電アンテナによる通信を、ダイバシティ方式の1態様である、アンテナの利得を考慮して選択的に行ったが、これに限られない。通信方式は、2つのアンテナによる信号受信を有効に行うように構成されれば良く、例えば、不平衡給電アンテナと平衡給電アンテナにより受信した信号を合成し、信号を調整して通信を行うようにしても良い。
【0058】
上記で、平衡給電アンテナとなる第2アンテナを、導電部材8をループ状に形成したループアンテナとしたが、これに限られない。平衡給電アンテナとして機能すればよく、例えば、折り返しダイポールアンテナ等であっても良い。
【0059】
上記で、給電部71、グランド部70及び無線回路部72を第1筐体2に配置したが、第2筐体3に配置しても良い。
【0060】
上記で、平衡給電アンテナの放射素子である導電部材8を第1筐体2に配置したが、第2筐体3に配置しても良い。さらに、給電部71、グランド部70及び無線回路部72と同一の筐体に配置しなくても良い。
【0061】
上記で、第1アンテナは、給電部71により給電された第2導電部6と、グランド部70に接続された第1導電部5とを有するアンテナであったが、給電部71により給電された第1導電部5と、グランド部70に接続された第2導電部6とを有するアンテナであってもよい。
【0062】
上記で、通話の処理に供する周波数帯の信号を受信したが、これに限られない。受信される信号は、メールに利用する信号や、地上デジタル放送に利用される信号であっても良い。
【0063】
図6(a)及び(b)は、携帯電子機器101を示す。具体的には、図6(a)は携帯電子機器101の開状態を示し、図6(b)は携帯電子機器の閉状態を示す。
【0064】
携帯端末101は、スライド方式である。スライド方式では、第1筐体2の第1表面部20が露出した状態(図6(a))と、第1筐体2の第1表面部20が第2筐体3に覆われた閉状態(図6(b))とを遷移できる。
【0065】
本スライド方式の携帯端末101において、第1筐体2が給電部71と導電部材8を含む。図示してないが、図1乃至図5と同じように、第1アンテナと第2アンテナとを含む。そして、閉状態では、第2アンテナが使用され、開状態では第2アンテナが使用される。
【0066】
上記で、携帯端末1は、折り畳み方式又はスライド方式であったが、これに限られない。携帯端末1は、第1筐体の表面が第2筐体から露出したり、覆われたりする形態に変化可能であれば良く、例えば、第1筐体2と第2筐体3との重ね合わせに沿う軸線を中心に一方の筐体を回転させるようにした回転方式等であっても良い。
【0067】
携帯電子機器の一例として携帯端末1を適用したが、これに限定されるものではなく、例えば、PHS、PDA、ポータブルナビゲーション装置、ノートパソコン等であっても良い。
【0068】
次に、本発明に係る第2の実施形態について説明する。図7及び図8により、携帯電子機器としての携帯電話機1000における基本構造について説明する。なお、上述の実施形態における構成と同一のものについては、上述の実施形態と同一の名称および同一の符号を用いて、以下の実施形態を説明するものとする。
【0069】
図7は、携帯電話機における正面側を説明するための斜視図である。図8は、携帯電話機1000の内部構造を説明するための概念図である。
【0070】
図7及び図8に示すように、携帯電話機1は、筐体200を備える。
【0071】
図7に示すように、携帯電話機1は、筐体200の前面に配置される操作部110と、表示部210と、マイク220、スピーカ230と、とを備える。
【0072】
操作部110は、複数のキーを有して構成される。操作部110は、各種設定機能や辞書機能やメール機能等の各種機能を作動させるための機能設定操作キー130と、数字や文字を入力するための入力操作キー140と、各種操作における決定やスクロール等を行う決定操作キー150とを有して構成される。操作部110を構成するキー群は、筐体200における該筐体2の長手方向Yにおける一端部に配置される。操作部11は、各種入力を検知する。
【0073】
表示部210は、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electroluminescence)ディスプレイ等から構成される。表示部21は、筐体2の長手方向Yにおける他端部に配置される。表示部210は、操作部110を構成するキー群と長手方向Yにおいて並んで配置される。
【0074】
表示部210は、通話の相手側の電話番号やメールアドレス、及びメールの内容等の各種情報(文字情報や画像情報)を表示する。
【0075】
マイク220は、筐体2の長手方向Yにおける一端部に配置される。マイク220は、携帯電話機1000の使用者が通話時に発した音声を入力するために用いられる。
【0076】
スピーカ230は、筐体2の長手方向Yにおける他端側に配置される。スピーカ230は、通話の相手側の音声を出力する。
【0077】
図8に示すように、携帯電話機1000は、筐体200の内部に、不平衡給電アンテナの一例であるモノポールアンテナ70と、平衡給電アンテナの一例であるループアンテナ80と、を備える。
【0078】
モノポールアンテナ70は、筐体200の長手方向Yにおける他端部に配置される。また、モノポールアンテナ70は、筐体200の厚さ方向Zにおいて、表示部210に対向して配置される。また、モノポールアンテナ70は、所定の周波数帯の信号に共振する。
【0079】
ループアンテナ80は、筐体200の長手方向Yにおける一端部に配置される。また、ループアンテナ70は、筐体200の厚さ方向Zにおいて、操作部110に対向して配置される。また、ループアンテナ80は、所定の周波数帯の信号に共振する。
【0080】
図9は、携帯電子機器の構成を示すブロック図である。筐体200は、回路部700を有する。回路部700は、信号処理部を構成する無線回路部7200と、制御部750と、検出部730と、第3選択部740a(選択部)、と第4選択部740b(選択部)とを含む。
【0081】
無線回路部7200は、アンテナから受信される信号を処理する。この無線回路部7200は、上述の実施携帯における無線回路部72と同様に、平衡不平衡変換回路部720と、第1調整部721aと、第2調整部721bと、RF回路722とを有する。平衡不平衡変換回路部720は、平衡信号を受信した場合(ループアンテナ80により信号の受信がされた場合)に、この平衡信号を不平衡信号に変換する。
【0082】
検出部730は、無線回路部7200によって処理される信号であってモノポールアンテナ70により受信されたものの強度および無線回路部7200によって処理される信号であってループアンテナ80により受信されたものの強度を検出する。
【0083】
制御部750は、検出部730、第3選択部740a、第4選択部740b、及び無線回路部7200に接続されて、検出部730により検出された信号の強度に基づいて、第3選択部740a及び第4選択部740bを制御し、無線回路部7200が生成した信号データを通話等の通信処理を行う。
【0084】
第3選択部740aは、検出部730の検出結果に基づいた制御部750からの指示により、モノポールアンテナ70と無線回路部720との接続又は切断を行う。
【0085】
第4選択部740bは、検出部73の検出結果に基づいた制御部750からの指示により、ループアンテナ80と無線回路部720との接続又は切断を行う。
【0086】
したがって、第3選択部740a及び第4選択部740bは、制御部750の制御のもと、モノポールアンテナと無線回路部720とを接続させた状態(第1状態)と、ループアンテナ80と無線回路部720とを接続させた状態(第2状態)とを選択することが可能である。
【0087】
第1の状態が選択された場合には、モノポールアンテナ70により信号が受信され、受信された信号は、調整部721により、信号のインピーダンスが調整される。次に、RF回路722により、データとして利用可能な状態に信号が調整される。次に、調整された信号は、制御部750により、通話等の通信処理に供される。
【0088】
一方、第2の状態が選択された場合には、ループアンテナ80により信号が受信され、受信された信号は、平衡不平衡変換回路部720により、平衡信号が不平衡信号に変換される。次に、調整部721により、信号のインピーダンスが調整される。次に、RF回路722により、データとして利用可能な状態に信号が調整される。次に、調整された信号は、制御部750により、通話等の通信処理に供される。
【0089】
このように、携帯電話機1000は、モノポールアンテナ70とループアンテナ80とを有し、制御部750の制御のもと、以下のように動作する。
【0090】
携帯電話機1000は、定期的に(例えば、数十秒ごとに)、あるいはユーザによる操作部110への操作に応じて、制御部750が第3選択部740a及び第4選択部740bを介して、モノポールアンテナ70と無線回路部720とを接続させた状態(第1状態)と、ループアンテナ80と無線回路部720とを接続させた状態(第2状態)とを選択する。
【0091】
次に、制御部750は、第1状態と第2状態のそれぞれの状態のもとで、モノポールアンテナ70及びループアンテナ80とから信号を受信すると共に、検出部730により、それら受信した信号の強度を比較する。そして、信号の強度が高いアンテナが無線回路部720に接続された状態を選択し、その後、その選択されたアンテナを用いて通話等の通信処理を行う。
【0092】
詳細には、第1状態においてモノポールアンテナ70により受信されて無線処理部7200により処理される信号の強度が、第2状態においてループアンテナ80により受信されて無線処理部7200により処理される信号の強度よりも高い場合には、制御部750は、第3選択部740a及び第4選択部740bを介して第1状態を選択する。そして、モノポールアンテナ70によって受信された信号により通話等の通信処理を行う。
【0093】
一方、第2状態においてループアンテナ80により受信されて無線処理部7200により処理される信号の強度が、第1状態においてモノポールアンテナ70により受信されて無線処理部7200により処理される信号の強度よりも高い場合には、制御部750は、第3選択部740a及び第4選択部740bを介して第2状態を選択する。そして、ループアンテナ80によって受信された信号により通話等の通信処理を行う。
【0094】
このように、携帯電話機1000は、制御部750による制御によって、第1状態および第2状態を選択し、それぞれの状態において、通話等の通信処理を行うことができる。
【0095】
したがって、不平衡給電アンテナ及び平衡給電アンテナのいずれか一方のアンテナにより信号を受信することができ、アンテナ利得の維持を図りやすい。
【0096】
また、制御部750による制御によって、定期的に(例えば、数十秒ごとに)、あるいはユーザによる操作部110への操作に応じて、第1状態と第2状態を所定の条件に応じて選択し、第1状態及び第2状態のそれぞれの状態における
信号の強度に基づいて、第1状態と第2状態のいずれか一方を選択することができるため、アンテナ利得の維持をさらに図りやすくなる。
【0097】
また、制御部750は、第1状態及び第2状態のそれぞれの状態における信号のS/N比に基づいて、第1状態と第2状態のいずれか一方を選択するよう構成してもよい。
【0098】
また、筐体200が、上述の実施形態と同様に、開閉可能な複数の筐体を有する場合においては、制御部750が、筐体200の周囲の環境に変化の生じにくい開状態においては不平衡給電アンテナによる通信が可能な第1状態を選択し、筐体200の周囲の環境に変化の生じやすい閉状態においては平衡給電アンテナによる通信が可能な第2状態を選択するように構成してもよい。このような構成にすれば、開状態においては、広帯域にわたってアンテナの利得の維持を図ることができ、閉状態においては、周囲の環境の変化に伴ってアンテナの利得の低下が抑制される。
【0099】
また、モノポールアンテナ70とループアンテナ80とは、筐体200の長手方向Yにおける両端部にそれぞれ配置されているため、それぞれのアンテナと筐体200の内部に配置されるその他の部材(基板や電子部品)との距離が離間される。したがって、それぞれのアンテナの利得は確保されやすい。
【0100】
なお、同様の理由で、図9に示すように、モノポールアンテナ70とループアンテナ80とは、筐体200の幅方向Xにおける両端部にそれぞれ配置されていてもよいし、筐体200の厚さ方向Zにおける両端部にそれぞれ配置されていてもよい。
【0101】
また、操作時におけるユーザの手や、通話時におけるユーザの顔など、筐体200の長手方向Yにおける両端部におけるいずれか一方に人体が近接し、いずれか他方には、その一方に比べて人体が近接していない場合も想定される。その場合には、いずれか他方に配置されたアンテナにより信号を受信して通信処理を行うように構成すれば、人体に起因するアンテナの利得の低下が好適に抑制される。
【0102】
例えば、操作部11に対して操作がなされた場合には、操作部11が配置された筐体200の一端部に対して人体(手)が近接していることが想定されるため、制御部750が第3選択部740a及び第4選択部740bを制御して、第1状態を選択し、筐体200の他端部に配置されたモノポールアンテナ70により信号を受信して、その後の通信処理を行う構成が好ましい。
【0103】
また同様に、通話がなされている場合には、スピーカ230が配置された筐体200の他端部に対して人体(顔)が近接していることが想定されるため、制御部750が第3選択部740a及び第4選択部740bを制御して、第2状態を選択し、筐体200の一端部に配置されたループアンテナ700により信号を受信して、その後の通信処理を行う構成も好ましい。
【0104】
ところで、操作部11に対して操作がなされる頻度と、通話が行われる頻度とを比較すると、一般的には前者の頻度の方が後者の頻度に比べて高いと考えられる。したがって、人体が筐体200に近接する頻度は、操作部11が設けられた一端部の方が他端部に比べて高いものと想定される。そこで、携帯電話機1000は、筐体200の周囲の環境変化が生じやすい(人体が近接しやすい)一端部に、モノポールアンテナ70に比べて周囲の環境変化に比較的強いループアンテナ80を配置した。これにより、高頻度で操作部11がユーザにより操作された場合であっても、アンテナ利得の維持を図ることが容易となる。
【0105】
なお、本発明は、第2実施形態に開示の構成には限定されず、種々のバリエーションもその要旨に含む。たとえば、ループアンテナは平衡給電アンテナの一例であり、その他のアンテナであってもよい。また、モノポールアンテナ不平衡給電アンテナの一例であり、その他のアンテナ(ダイポールアンテナ、逆Fアンテナなど)であってもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 携帯電子機器(携帯電話装置)
2 第1筐体(操作部側筐体部)
3 第2筐体(表示部側筐体部)
5 第1導電部
6 第2導電部
70 グランド部
71 給電部
72 信号処理部(無線回路部)
73 検出部(開閉検出部)
74 選択部(第1選択部、第2選択部)
75 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体に配置され、所定の周波数帯の信号に共振する不平衡給電アンテナと、
前記筐体に配置され、前記所定の周波数帯の信号に共振する平衡給電アンテナと、
前記筐体に配置され、前記所定の周波数帯の信号を処理する信号処理部と、
前記不平衡給電アンテナと前記信号処理部とを接続した第1状態と、前記平衡給電アンテナと前記信号処理部とを接続した第2状態とを選択する選択部と、を有することを特徴とする携帯電子機器。
【請求項2】
前記第1状態において前記信号処理部により処理される信号の強度および前記第2状態において前記信号処理部により処理される信号の強度に基づいて前記第1状態と前記第2の状態のいずれか一方を選択する制御部を有する、ことを特徴とする請求項1に記載の携帯電子機器。
【請求項3】
前記平衡給電アンテナは、前記筐体の一端部に配置され、
前記不平衡給電アンテナは、前記筐体の他端部に配置される、ことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の携帯電子機器。
【請求項4】
前記筐体の一端部には、操作部が配置される、ことを特徴とする請求項3に記載の携帯電子機器。
【請求項5】
前記筐体は、開状態と閉状態との間を移動可能に連結される第1筐体と第2筐体とを有し、
前記開状態及び前記閉状態を検出する検出部を有し、
前記制御部は、前記検出部により前記開状態が検出されると前記選択部により前記第1状態を選択し、前記検出部により前記閉状態が検出されると前記選択部により前記第2状態を選択する、ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の携帯電子機器。
【請求項6】
前記第1筐体に配置された第1導電部と、
前記第2筐体に配置された第2導電部と、
前記信号処理部に接続された給電部及びグランド部と、を有し、
前記不平衡給電アンテナは、前記第1導電部と前記第2導電部のいずれか一方と前記グランド部とを電気的に接続すると共に前記第1の導電部と前記第2の導電部のいずれか他方と前記給電部とを電気的に接続することにより形成されるアンテナである、ことを特徴とする請求項5に記載の携帯電子機器。
【請求項7】
前記平衡給電アンテナは、前記第1導電部と前記第2導電部のいずれか一方の導電部における端部であって前記第1筐体と前記第2筐体とが連結される側とは反対側の端部に対応して、前記第1筐体と前記第2筐体のいずれか一方に配置される、ことを特徴とする請求項6に記載の携帯電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−252308(P2010−252308A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−39526(P2010−39526)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】