説明

携帯電話機

【課題】 レシーバが発生する弱磁界の検出によって、折り畳み検出を確実にする。
【解決手段】 第1の筺体1にレシーバ6の磁束を検出するホールIC7を設けて、第2の筺体2が第1の筺体1に折り畳まれると、第2の筺体2に設けた磁性材料により、レシーバ6からホールIC7に通過する磁束密度を変化させる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、折り畳み状態を検出する機能を有する折り畳み式の携帯電話機に関する。
【0002】
【従来の技術】携帯電話機では、これの小形化、軽量化および操作性の改善を図るため、今日まで、構造および機能について多種多様の工夫、開発がなされている。その一つに、筺体を二分割することによって折り畳み可能にし、バッグやポケットへの収納、携帯を容易にした折り畳み式の携帯電話機がある。
【0003】また、このような折り畳み式の携帯電話機の中には、折り畳みを検出する折り畳み検出手段を有するものがあり、折り畳まれているときには、LCDなどの表示部や回路各部(タイマ回路等の一部の回路ょ除く)への電力供給を自動停止して電力消費を抑え、一方、開放された場合には直ちに表示部を点灯し、回路各部が作動を開始させるように構成されている。
【0004】そして、前記折り畳み検出手段としては、例えばヒンジを介して連結された一方の筺体にマグネットを取り付け、他方の筺体にそのマグネットの磁束に応動するリードスイッチを設けたものや、一方の筺体に機械スイッチを取り付け、他方の筺体にその機械スイッチを押圧する突起を設けたものなどがある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、かかる従来の携帯電話機において、マグネットとリードスイッチを折り畳み検出手段として使用するものにあっては、リードスイッチの動作を確実とするため、あるレベル以上の磁界の強さを持つマグネットが必要になり、これが電話機本体内の回路部品、音響部品に影響を与える場合があるという問題があった。例えば、マイクおよびレシーバの近くでは、音声信号とマグネットの磁力によりマイクおよびレシーバに振動が起き、その振動をマイクが拾って音声として通話相手に出力されたり、レシーバからノイズが出力される現象が発生している。また、機械スイッチと突起を折り畳み検出手段として使用するものでは、電話機本体を床に落した場合などに突起が折れて、折り畳み検出動作が不能に陥るという問題があった。
【0006】本発明は前記のような課題を解決するものであり、電話機が本来有するレシーバが発生する弱磁界の検出によって、折り畳み検出を簡単な構成にて確実に行える携帯電話機を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】前記目的達成のために、請求項1の発明ににかかる携帯電話機は、レシーバを有する第1の筺体と、該第1の筺体に対してヒンジ部で互いに折り畳み可能に連結された第2の筺体とを備えた携帯電話機であって、前記第1の筺体に前記レシーバの磁束を検出するホールICを設け、前記第2の筺体が前記第1の筺体に折り畳まれると、前記第2の筺体に設けた磁性材料により、前記レシーバからホールICを通過する磁束密度を変化させるようにしたものである。これにより、ホールICを通過する磁束密度を低減させて、ホールICが発生する電圧の低下にもとづき、前記両筺体が閉じられていることを確実に検出することができる。
【0008】また、請求項2の発明ににかかる携帯電話機は、レシーバを有する第1の筺体と、該第1の筺体に対してヒンジ部で互いに折り畳み可能に連結された第2の筺体とを備えた携帯電話機であって、前記第1の筺体に前記レシーバの磁束を検出するホールICを設け、前記第2の筺体が前記第1の筺体に折り畳まれると、前記第2の筺体に設けたマグネットにより、前記レシーバからホールICを通過する磁束密度を変化させるようにしたものである。これにより、ホールICを通過する磁束密度を大きく変化させて、両筺体が閉じられたことを確実に検出することができる。
【0009】また、請求項3の発明ににかかる携帯電話機は、前記マグネットを、前記レシーバからの前記ホールICを通過する磁力線とは逆方向の磁力線を前記ホールICに通過させるマグネットとしたものである。これにより、両筺体が閉じられたときホールICを通過する磁束密度を大きく低下させることができ、これにより両筺体が閉じられたことを確実かつ容易に把握することができる。
【0010】また、請求項4の発明ににかかる携帯電話機は、前記マグネットを、前記レシーバからの前記ホールICを通過する磁力線とは同方向の磁力線を前記ホールICに通過させるマグネットとしたものである。これにより、両筺体が閉じられたときホールICを通過する磁束密度が増加したことを確実に検出でき、これにより、両筺体の開閉状況を容易に把握することができる。
【0011】また、請求項5の発明ににかかる携帯電話機は、前記第2の筺体が第1の筺体に折り畳まれたとき、前記磁性材料が前記ホールICを通過する磁束の磁界内に配置されるようにしたものである。これにより、ホールICを通過する磁束を磁性材料によって確実に減らすことができる。
【0012】また、請求項6の発明ににかかる携帯電話機は、前記マグネットに、前記レシーバとともに前記ホールICの出力変化を顕著にするために必要となる低レベルの磁界の強さを持たせたものである。これにより、音響部品などに影響を与えない小形のマグネットを利用して折り畳み状態を高感度に検出することができる。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の一形態を図について説明する。図2および図3は、折り畳み状態および開放状態の携帯電話機をそれぞれ概念的に示す斜視図であり、これが第1の筺体1および第2の筺体2をヒンジ部3にて開閉自在に連結したものからなる。第1の筺体1内には各種データを入力または選択するキーボード部4が設けられ、第2の筺体2には液晶表示部5が設けられている。第1の筺体1内には、図1に示すように、受話音を出力するレシーバ6が設けられている。このレシーバ6は、電磁石のコイルに流れる音声電流により振動板を振動させる音声出力装置であり、電磁石のコアは音声電流のないときでも残留磁気により帯磁状態にあって、所定の磁界の強さを持つ磁束を発生している。
【0014】また、第1の筺体1内には、前記レシーバ6が発生する磁束が通過する位置にホールIC7が設けられている。従って、ホールIC7はレシーバ6が発生する磁束を常時検出可能である。このホールIC7はホール素子とアンプ回路とをIC化したものであり、従って磁束の検出感度が極めて高いという特徴があり、前記レシーバ6が発生する磁束を高感度にて検出することができる。一方、このホールIC7に対し略垂直方向に対向する位置の第2の筺体2内には、磁性材料8が設けられている。この磁性材料8として、鉄、ニッケル、コバルトなどからなる合金や、酸化鉄やフェライトなどが用いられる。なお、ホールIC7には一方向の磁束に反応するものと、両方向の磁束に反応するものとがある。
【0015】従って、前記第1の筺体1に対して第2の筺体2を折り畳んだ場合には、後述のようにホールIC7に磁性材料8が近づくため、ホールIC7を通過する磁束が減少する。このため、この磁束の減少に応じて出力されるホールIC7の出力も減少し、この減少状態の検出により、第1の筺体1に対して第2の筺体2が折り畳まれているか否かを判定でき、この判定結果に従って、例えば液晶表示器への電源供給を自動制御することができる。なお、ホールIC7とレシーバ6の位置は、このレシーバ6が発生する磁界の強さとホールIC7の感度により決定される。いま、レシーバ6の一端からホールIC7の中心までの距離を、図4に示すようにXで表すと、この距離Xに対して、ホールIC7の磁束密度は、図5に示すように変化する。従って、ホールIC7が磁束密度αを検出できる距離は、D以下になる。
【0016】図6は第2の筺体7を第1の筺体に対し、折り畳んでいない状態において、レシーバ6が発生する磁力線のホールIC7に対する伝わり方を示している。これによれば、レシーバ6のN極から出たすべての磁力線がホールIC7を通過し、レシーバ6のS極へ戻る。従って、この状態では、ホールIC7は所定レベル以上の電圧を出力する。一方、第2の筺体2を第1の筺体1に対し折り畳むと、第2の筺体2内の磁性材料8が、第1の筺体1内のホールIC7に対し最接近することとなる。このとき、レシーバ6が発生する磁力線は、図7に示すようにその磁性材料8に引き寄せられ、従ってホールIC7を通過する磁力線の数が少なくなってしまう。つまり、ホールIC7に影響を及ぼす磁界の強さが弱くなる。従って、ホールIC7の出力電圧が低下し、第2の筺体2が第1の筺体1上に畳まれていることを検出でき、この検出結果に従って、例えば液晶表示器の点灯(照明)を自動停止させることができる。これにより、従来のように強力な磁力を持つマグネットの使用によって音響部品へ悪影響を及ぼすことを回避できる。
【0017】なお、前記実施の形態では、ホールIC7を通過する磁束密度を、磁性材料8の近接、開離により変化させた場合を示したが、その磁性材料8に代えて、磁界の強さが十分に低いマグネットを用いることにより、ホールIC7を通過する磁束を変化させることができる。図8はレシーバ6およびマグネット9の各N極およびS極を、逆向きに配置した例を示す。この場合には、マグネット9が発生する磁力線の方向が、レシーバ6から発生した磁力線の方向とは、互いに磁力を打ち消し合う方向、つまり逆方向となる。従って、第2の筺体2を第1の筺体1側に折り畳んで、マグネット9がホールIC7に近接したとき、このホールIC7を通過する磁束密度が小さくなり、ホールIC7の出力が低下またはオフとなる。従って、このホールIC7の出力の低下やオフを検出することにより、折り畳み状態か否かの判定を確実に行える。
【0018】また、図9はレシーバ6およびマグネット10の各N極およびS極を同一の向きに配置した例を示す。この場合には、マグネット10が発生する磁力線の方向がレシーバ6から発生した磁力線の方向とは、互いに磁力を増加させる方向、つまり同一方向となる。従って、第2の筺体2を第1の筺体1側に折り畳んで、マグネット10がホールIC7に近接したとき、このホールIC7を通過する磁束密度が大きくなり、ホールIC7が出力する電圧レベルが上昇する。従って、ホールIC7のこの出力電圧の上昇を検出することによって、折り畳み状態か否かの判定を確実に行える。なお、前記マグネット9およびマグネット10は音響部品などに影響を与えない、できるだけ小形のものを用いる必要がある。
【0019】
【発明の効果】以上のように、本発明によれば第1の筺体にレシーバの磁束を検出するホールICを設け、第2の筺体が前記第1の筺体に折り畳まれると、前記第2の筺体に設けた磁性材料により、前記レシーバからホールICを通過する磁束密度を変化させるように構成したので、ホールICを通過する磁束密度の低減によるホールICの出力電圧の低下にもとづき、前記両筺体が閉じられていることを確実に検出できる。従って必要に応じこの検出信号を利用して、例えば液晶表示板の照明のオン、オフを自動的にコントロールすることができ、省エネルギに寄与できるという利点が得られる。
【0020】また、本発明は前記磁性材料に代えてマグネットを用いることで、ホールICを通過する磁束密度を大きく変化させて、両筺体が閉じられたことを確実に検出することができる。ここで、前記マグネットを、前記レシーバからの前記ホールICを通過する磁力線とは逆方向の磁力線を前記ホールICに通過させるマグネットとすれば、両筺体が閉じられたときホールICを通過する磁束密度を大きく低下させることができ、これにより確実かつ容易に両筺体の開閉状態を確実かつ容易に把握することができる。さらに、前記マグネットとレシーバの磁力線の方向を同一とした場合には、両筺体が閉じられたときホールICを通過する磁束密度が顕著に増加したことを検出でき、これにより、両筺体の開閉状況を確実かつ容易に把握することができるという効果が得られる。
【0021】また、第2の筺体が第1の筺体に折り畳まれたとき、前記磁性材料がホールICを通過する磁束の磁界内に配置されるようにしたので、ホールICを通過する磁束を磁性材料によって確実に減らすことができ、また、前記マグネットに、前記レシーバとともに前記ホールICの出力変化を顕著にするために必要となる低レベルの磁界の強さを持たせるようにしたので、音響部品などに影響を与えない小形のマグネットを利用して折り畳み状態を高感度に検出することができるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の一形態による携帯電話機の要部を概念的に示す断面図である。
【図2】 図1に示す携帯電話機を閉じた状態を示す斜視図である。
【図3】 図1に示す携帯電話機を開いた状態を示す斜視図である。
【図4】 図1に示すホールICとレシーバとの距離とレシーバの磁束密度との関係を示す説明図である。
【図5】 図1に示すホールICとレシーバとの距離とレシーバの磁束密度との関係を示す特性図である。
【図6】 図1に示すレシーバからの磁力線のホールICに対する通過状況を示す説明図である。
【図7】 図1に示すレシーバからの磁力線のホールICに対する通過状況が磁性材料によって変化する状況を示す説明図である。
【図8】 本発明において、ホールICを通過する磁力線を磁界の弱いマグネットによって低減またはオフにする状況を示す説明図である。
【図9】 本発明において、ホールICを通過する磁力線を磁界の弱いマグネットによって増大させる状況を示す説明図である。
【符号の説明】
1 第1の筺体
2 第2の筺体
3 ヒンジ部
6 レシーバ
7 ホールIC
8 磁性材料
9、10 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】 レシーバを有する第1の筺体と、該第1の筺体に対してヒンジ部で互いに折り畳み可能に連結された第2の筺体とを備えた携帯電話機において、前記第1の筺体に設けられて、前記レシーバの磁束を検出するホールICと、前記第2の筺体に設けられて、該第2の筺体が前記第1の筺体に折り畳まれると、前記レシーバからホールICを通過する磁束密度を変化させる磁性材料とを設けたことを特徴とする携帯電話機。
【請求項2】 レシーバを有する第1の筺体と、該第1の筺体に対してヒンジ部で互いに折り畳み可能に連結された第2の筺体とを備えた携帯電話機において、前記第1の筺体に設けられて、前記レシーバの磁束を検出するホールICと、前記第2の筺体に設けられて、該第2の筺体が前記前記第1の筺体に折り畳まれると、前記レシーバからホールICを通過する磁束密度を変化させるマグネットとを設けたことを特徴とする携帯電話機。
【請求項3】 前記マグネットが、前記レシーバからの前記ホールICを通過する磁力線とは逆方向の磁力線を前記ホールICに通過させるマグネットであることを特徴とする請求項2に記載の携帯電話機。
【請求項4】 前記マグネットが、前記レシーバからの前記ホールICを通過する磁力線とは同方向の磁力線を前記ホールICに通過させるマグネットであることを特徴とする請求項2に記載の携帯電話機。
【請求項5】 前記第2の筺体が第1の筺体に折り畳まれたとき、前記磁性材料が前記ホールICを通過する磁束の磁界内に配置されることを特徴とする請求項1に記載の携帯電話機。
【請求項6】 前記マグネットは、前記レシーバとともに前記ホールICの出力変化を顕著にするために必要となる低レベルの磁界の強さを持つことを特徴とすることを請求項2乃至請求項4のいずれかに記載の携帯電話機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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