説明

摩擦伝動ベルト及びそれを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置

【課題】ベルト走行時における異音の発生を抑制する効果の極めて優れる摩擦伝動ベルトを提供する。
【解決手段】摩擦伝動ベルトBは、ゴム製のベルト本体10の少なくともプーリ接触部分13表面に露出するように短繊維14及びカーボンブラック18が分散して配されている。短繊維14は、JIS L 1013に準じて測定される初期引張抵抗度が100cN/dtex以上である主鎖に芳香族を含まないポリマーで形成された高弾性短繊維を含み、且つ、カーボンブラック18は、JIS K 6217−1に準じて測定されるよう素吸着量が40g/Kg以下、及び/又は、JIS K 6217−2に準じて測定される窒素吸着比表面積が40m/g以下である大粒径カーボンブラックを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベルト本体の少なくともプーリ接触部分がゴム組成物で形成された摩擦伝動ベルト及びそれを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ローエッジタイプのVベルトやVリブドベルトのようにプーリ接触部分である圧縮ゴム層がゴム組成物で形成された摩擦伝動ベルトにおいて、その圧縮ゴム層に用いるゴム組成物にカーボンブラックを配合することは公知技術である。
【0003】
例えば、特許文献1には、Vリブドベルトの圧縮ゴム層を、ゴム100重量部に対して(イ)窒素吸着比表面積が70m/g以上且つジブチルフタレート吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを20〜60重量部、(ロ)窒素吸着比表面積が70m/g未満且つジブチルフタレート吸油量が100cm/100g未満のカーボンブラックを15〜55重量部の割合で含有するゴム組成物で構成することが開示されており、これによって耐摩耗性、耐久性、及び耐発音性を改良することができる、と記載されている。
【0004】
特許文献2には、伝動ベルトの圧縮ゴム層を、ゴム100重量部に対してカーボンブラックが50重量部以上含まれ、且つそのカーボンブラックによう素吸着量40mg/g以下の大粒子カーボンブラックがゴム100重量部に対して30重量部以上含まれたエチレン−α−オレフィン共重合ゴム組成物で構成することが開示されており、これによって寿命低下を抑止しつつ、向上させた騒音抑止効果を長期にわたり維持させることができる、と記載されている。
【0005】
また、摩擦伝動ベルトにおいて、圧縮ゴム層に用いるゴム組成物に短繊維を配合することもまた公知技術である。
【0006】
例えば、特許文献3には、伝動ベルトの圧縮ゴム層における補強用短繊維の配合量をゴム100質量部に対して15〜30質量部とすると共に、ビニロン短繊維の配合量をナイロン繊維の配合量の1〜4倍とすることが開示されており、これによってゴムの加工性を低下させずに、伝動ベルトの動的疲労寿命の向上、さらには摩擦係数の安定化を図ることができる、と記載されている。
【0007】
特許文献4には、Vリブドベルトの圧縮ゴム層にナイロン短繊維、ビニロン短繊維等を配合し、短繊維をベルト表面に突出し且つ繊維断面積が大きくなるような状態で配設することが開示されており、これによってスティックスリップによる異音の発生を防止することができる、と記載されている。
【0008】
特許文献5には、Vリブドベルトの圧縮ゴム層にアラミド短繊維及び非アラミド短繊維を両方配合し、アラミド短繊維のみ、その一部をベルト表面から突出させ、そして、そのアラミド短繊維の埋没を抑止するように、非アラミド短繊維の一部をベルト表面に露出させることが開示されており、これによってベルト走行の経時に伴い発生するベルトの摩耗現象及びスリップ現象という全く異なる課題を解決することができる、と記載されている。
【0009】
特許文献6には、Vリブドベルトの圧縮ゴム層に水溶性短繊維を配合することが開示されており、これによってベルトのスリップ率を低減し、そしてベルト走行時の騒音を軽減することができる。
【0010】
特許文献7には、Vリブドベルトの圧縮ゴム層にRFL処理したゲル化可能なポリビニルアルコール繊維の短繊維を配合することが開示されており、これによって伝動ベルトの注水時のスリップによる伝動能力の低下と異音の発生を有効に防止することができる、と記載されている。
【特許文献1】特開2006−183805号公報
【特許文献2】特開2006−316812号公報
【特許文献3】特開平10−213184号公報
【特許文献4】特開平03−219147号公報
【特許文献5】特開平07−004470号公報
【特許文献6】特開2003−314624号公報
【特許文献7】特開2006−118661号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、エンジンルームのコンパクト化の要請から、自動車の補機駆動ベルト伝動装置として、クランクシャフトプーリ(駆動リブプーリ)及びパワーステアリングプーリ、エアコンプーリ等(従動リブプーリ)の3つ以上のプーリに1本のVリブドベルトが巻き掛けられたサーペンタインドライブ方式のものが広く普及している。
【0012】
しかしながら、自動車の高機能化に伴ってエンジンルームの収容部品が増加し、補機駆動ベルト伝動装置のプーリレイアウトにも、例えば、相互に隣接してVリブドベルトが巻き掛けられた一対のプーリのベルトスパン長を狭くせざるを得ない。或いは、プーリのアライメントの公差を大きくせざるを得ないといった制約が生じてきた。そして、そのために補機駆動ベルト伝動装置における相互に隣接してVリブドベルトが巻き掛けられた一対のリブプーリのミスアライメント量が大きくなり、その結果、ミスアライメントに起因する異音の発生が顕著になるという問題がある。
【0013】
本発明の目的は、ベルト走行時における異音の発生を抑制する効果の極めて優れる摩擦伝動ベルト及びそれを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するための本発明の摩擦伝動ベルトは、ゴム製のベルト本体の少なくともプーリ接触部分表面に露出するように短繊維及びカーボンブラックが分散して配されたものであって、
上記短繊維は、JIS L 1013に準じて測定される初期引張抵抗度が100cN/dtex以上である主鎖に芳香族を含まないポリマーで形成された高弾性短繊維を含み、かつ、
上記カーボンブラックは、JIS K 6217−1に準じて測定されるよう素吸着量が40g/Kg以下、及び/又は、JIS K 6217−2に準じて測定される窒素吸着比表面積が40m/g以下である大粒径カーボンブラックを含む。
【0015】
本発明の自動車の補機駆動ベルト伝動装置は、Vリブドベルトが一対のリブプーリを含む3つ以上のプーリに巻き掛けられたものであって、
上記Vリブドベルトは、ベルト内周側に、各々、ベルト長さ方向に延びる複数のVリブがベルト幅方向に並設されたゴム製のVリブドベルトを有すると共に、該Vリブドベルト本体の少なくともプーリ接触部分表面に露出するように短繊維及びカーボンブラックが分散して配されており、
上記短繊維は、JIS L 1013に準じて測定される初期引張抵抗度が100cN/dtex以上である主鎖に芳香族を含まないポリマーで形成された高弾性短繊維を含み、且つ、
上記カーボンブラックは、JIS K 6217−1に準じて測定されるよう素吸着量が40g/Kg以下、及び/又は、JIS K 6217−2に準じて測定される窒素吸着比表面積が40m/g以下である大粒径カーボンブラックを含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ゴム製のベルト本体の少なくともプーリ接触部分表面に露出するように分散して配された短繊維及びカーボンブラックに、特定の高弾性短繊維及び大粒径カーボンブラックが組み合わされて含まれているので、これらの高弾性短繊維及び大粒径カーボンブラックのうちいずれか一方だけの場合では得ることのできない極めて優れたベルト走行時における異音発生抑制効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0018】
図1は、本実施形態に係るVリブドベルトBを示す。このVリブドベルトBは、例えば、自動車のエンジンルーム内に設けられる補機駆動ベルト伝動装置に用いられるものであり、ベルト周長700〜3000mm、ベルト幅10〜36mm、及びベルト厚さ4.0〜5.0mmに形成されている。
【0019】
このVリブドベルトBは、ベルト外周側の接着ゴム層11とベルト内周側の圧縮ゴム層12との二重層に構成されたVリブドベルト本体10を備えており、そのVリブドベルト本体10のベルト外周側表面に補強布17が貼設されている。また、接着ゴム層11には、ベルト幅方向にピッチを有する螺旋を形成するように設けられた心線16が埋設されている。
【0020】
接着ゴム層11は、断面横長矩形の帯状に形成され、例えば、厚さ1.0〜2.5mmに形成されている。接着ゴム層11は、原料ゴム成分に種々の配合剤が配合されたゴム組成物で形成されている。接着ゴム層11を構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリルニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。これらのうち、環境に対する配慮や耐摩擦性、耐クラック性などの性能の観点から、エチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましい。配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラックなどの補強剤、充填剤等が挙げられる。なお、接着ゴム層11を形成するゴム組成物は、原料ゴム成分に配合剤が配合されて混練された未加硫ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤より架橋させたものである。
【0021】
圧縮ゴム層12は、プーリ接触部分を構成する複数のVリブ13がベルト内周側に垂下するように設けられている。これらの複数のVリブ13は、各々がベルト長さ方向に延びる断面略三角形の突状に形成されていると共に、ベルト幅方向に並設されている。各Vリブ13は、例えば、リブ高さが2.0〜3.0mm、基端間の幅が1.0〜3.6mmに形成されている。また、リブ数は、例えば、3〜6個である(図1では、リブ数が6)。
【0022】
圧縮ゴム層12は、原料ゴム成分に種々の配合剤が配合されたゴム組成物で形成されている。圧縮ゴム層12を構成するゴム組成物の原料ゴム成分としては、例えば、エチレン・プロピレンゴム(EPR)やエチレンプロピレンジエンモノマーゴム(EPDM)などのエチレン−α−オレフィンエラストマー、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、水素添加アクリルニトリルゴム(H−NBR)等が挙げられる。これらのうち、環境に対する配慮や耐摩擦性、耐クラック性などの性能の観点から、エチレン−α−オレフィンエラストマーが好ましい。原料ゴム成分がエチレン−α−オレフィンエラストマーの場合には、エチレン結晶性の高いものを用いたり、結晶性ポリマーと非結晶性ポリマーとをブレンドして併用することにより、摩擦係数、耐摩擦性、耐粘着摩耗性を調整することができる。配合剤としては、例えば、架橋剤(例えば、硫黄、有機過酸化物)、老化防止剤、加工助剤、可塑剤、カーボンブラック18を含む補強剤、短繊維14等が挙げられる。なお、圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物は、原料ゴム成分に配合剤が配合されて混練された未加硫ゴム組成物を加熱及び加圧して架橋剤より架橋させたものである。
【0023】
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物には短繊維14が配合されているが、その短繊維14は、ベルト幅方向に配向するように設けられている。短繊維14のうち一部分は、プーリ接触部分表面、つまり、Vリブ13表面に分散して露出している。Vリブ13表面に露出して短繊維14は、Vリブ13表面から突出していてもよい。
【0024】
短繊維14は、例えば、レゾルシン・ホルマリン・ラテックス水溶液(以下、「RFL水溶液」という)等に浸漬した後に加熱する接着処理が施された長繊維を長さ方向に沿って所定長に切断して製造される。短繊維14は、例えば、長さが0.2〜5.0mmである。短繊維14は、例えば、繊維径が10〜50μmである。
【0025】
短繊維14は、ゴム成分100質量部に対する配合量が30質量部以下である。
【0026】
短繊維14は、JIS L 1013に準じて測定される初期引張抵抗度が100cN/dtex以上である主鎖に芳香族を含まないポリマーで形成された高弾性短繊維を含む。
【0027】
かかる高弾性短繊維としては、例えば、上記条件を満足するポリビニルアルコール短繊維、ポリアセタール短繊維、超高分子量ポリエチレン短繊維(重量平均分子量100万以上)、ポリケトン短繊維、ポリプロピレン短繊維、高強度ナイロン短繊維等が挙げられる。
【0028】
高弾性短繊維は、長さが0.1mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましく、また、5mm以下であることが好ましく、3mm以下であることがより好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。高弾性短繊維は、繊維系が1〜50μmであることが好ましく、5〜40μmであることがより好ましい。
【0029】
高弾性短繊維は、原料ゴム成分100質量部に対する含有量が1〜50質量部であることが好ましく、3〜30質量部であることがより好ましい。
【0030】
短繊維14は、その他に、例えば、上記条件を満足しない綿短繊維、p−アラミド短繊維、m−アラミド短繊維、アクリル短繊維、ナイロン短繊維、ポリ塩化ビニリデン短繊維、ポリプロピレン(PP)短繊維、ポリエチレン(PE)短繊維、レーヨン短繊維、ポリエチレンナフタレート(PEN)短繊維、ポリエチレンテレフタラート(PET)短繊維、ポリブチレンテレフタラート(PBT)短繊維、ポリトリメチレンテレフタラート(PTT)短繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)短繊維、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール(PBO)短繊維、ポリベンズイミダゾール(PBI)短繊維、ポリイミド(PI)短繊維、ポリアリレート短繊維、ポリジイミダゾピリジニレンジヒドロキシフェニレン(PIPD)短繊維、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)短繊維、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)短繊維、メラミン短繊維等を含んでいてもよい。
【0031】
圧縮ゴム層12を形成するゴム形成物にはカーボンブラック18が配合されている。カーボンブラック18の一部分は、プーリ接触部分表面、つまり、Vリブ13表面に分散して露出している。
【0032】
カーボンブラック18は、例えば、平均粒径が49〜500μmである。
【0033】
カーボンブラック18は、JIS K 6217−1に準じて測定されるよう素吸着量が40g/Kg以下、及び/又は、JIS K 6217−2に準じて測定される窒素吸着比表面積が40m/g以下である大粒径カーボンブラックを含む。
【0034】
かかる大粒径カーボンブラックとしては、例えば、上記条件を満足するFEF−HS、GPF、SRF、SRF−HS、SRF−LSなどのファーネスブラック、FT、MTなどのサーマルブラック等が挙げられる。
【0035】
大粒径カーボンブラックは、JIS K 6217−1に準じて測定されるよう素吸着量が40g/Kg以下、及び/又は、JIS K 6217−2に準じて測定される窒素吸着比表面積が40m/g以下であるが、よう素吸着量は、3g/Kg以上であることが好ましく、5g/Kg以上であることがより好ましく、また、35g/Kg以下であることが好ましく、30g/Kg以下であることがより好ましく、そして、窒素吸着比表面積は、3m/g以上であることが好ましく、5m/g以上であることがより好ましく、また、35m/g以下であることが好ましく、32m/g以下であることがより好ましい。
【0036】
大粒径カーボンブラックは、平均粒径が45〜500μmであることが好ましく、55〜500μmであることがより好ましい。
【0037】
大粒径カーボンブラックは、原料ゴム成分100質量部に対する含有量が20〜100質量部であることが好ましく、40〜80質量部であることがより好ましい。
【0038】
カーボンブラック18は、その他に、例えば、上記条件を満足しないSAF、ISAF、HAF等を含んでいてもよい。
【0039】
圧縮ゴム層12を形成するゴム組成物は、その他に、ポリテトラフルオロエチレン粉末、超高分子量ポリエチレン粉末(重量平均分子量100万以上)、二硫化モリブデン粉末、グラファイト粉末などの減摩剤、炭酸カルシウム、シリカ、水酸化アルミニウムなどの被水時のスリップを抑制する充填剤等を含んでいてもよい。
【0040】
接着ゴム層11と圧縮ゴム層12とは、別々のゴム組成物で形成されていても、また、全く同じゴム組成物で形成されていても、いずれでもよい。
【0041】
補強布17は、例えば、綿、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、アラミド繊維などの糸で形成された平織、綾織、朱子織などに製織した織布17’で構成されている。補強布17は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬して加熱する接着処理及び/又はVリブドベルト本体10側となる表面にゴム糊をコーティングして乾燥させる接着処理が施されている。なお、補強布17の代わりにベルト外周側表面部分がゴム組成物で構成されていてもよい。また、補強布17は、編物で構成されていてもよい。
【0042】
心線16は、ポリエステル繊維(PET)、ポリエチレンナフタレート繊維(PEN)、アラミド繊維、ビニロン繊維、ポリケトン繊維等の撚り糸16’で構成されている。心線16は、Vリブドベルト本体10に対する接着性を付与するために、成形加工前にRFL水溶液に浸漬した後に加熱する接着処理及び/又はゴム糊に浸漬した後に乾燥させる接着処理が施されている。
【0043】
以上の構成のVリブドベルトBによれば、Vリブ13表面に露出するように分散して配された短繊維14及びカーボンブラック18に、特定の高弾性短繊維及び大粒径カーボンブラックが組み合わされて含まれているので、これらの高弾性短繊維及び大粒径カーボンブラックのうちいずれか一方だけの場合では得ることができない極めて優れたベルト走行時における異音発生抑制効果を得ることができる。
【0044】
具体的には、例えば、ベルト伝動装置における相互に隣接してVリブドベルトBが巻き掛けられた一対のリブプーリのミスアライメント量が大きくても、ミスアライメントに起因する異音の発生を極めて小さく抑えることができる。また、プーリとの間に水が存在するような使用条件下においても異音の発生を極めて小さく抑えることができる。
【0045】
それに加えて、上記の圧縮ゴム層13のゴム配合では、ベルト走行に伴う摩擦係数の経時的変化が少ない上に、粘着摩耗も少なくて耐摩擦性も良好であり、また、ベルト走行時における圧縮ゴム層12の発熱が小さいことから、熱による心線16の接着力の低下に起因する心線16の分離(心線セパレーション)も生じがたく、そのため安定した動力伝達を行うことができる。
【0046】
次に、上記リブドベルトBの製造方法を、図2に基づいて説明する。
【0047】
VリブドベルトBの製造では、外周に、ベルト背面を所定形状に形成する形成面を有する内金型と、内周に、ベルトの圧縮ゴム層を所定形状に形成する成形面を有するゴムスリーブとが用いられる。
【0048】
まず、内金型の外周を補強布17となる織布17’で被覆した後、その上に、接着ゴム層11の外側部分11bを形成するための未加硫ゴムシート11b’を巻き付ける。
【0049】
次いで、その上に、心線16となる撚り糸16’を螺旋状に巻き付けた後、その上に、接着ゴム層11の内側部分11aを形成するための未加硫ゴムシート11a’を巻き付け、さらにその上に、圧縮ゴム層12を形成するための未加硫ゴムシート12’を巻き付ける。このとき、圧縮ゴム層12を形成するための未加硫ゴムシート12’として、巻き付け方向に直交する方向に配向した短繊維14が配合されたものを用いる。この未加硫ゴムシート12’は、原料ゴム成分100質量部に対して短繊維が50質量部以下配合され、その短繊維14のうちJIS L 1013に準じて測定される初期引張抵抗度が100cN/dtex以上である短繊維が原料ゴム成分100質量部に対して1質量部以上配合されたものである。
【0050】
しかる後、内金型上の成形体にゴムスリーブを被せてそれを成形釜にセットし、内金型を高熱の水蒸気などにより加熱すると共に、高圧をかけてゴムスリーブを半径方向内方に押圧する。このとき、原料ゴム成分が流動すると共に架橋反応が進行し、加えて、撚り糸16’及び織布17’のゴムへの接着反応も進行する。そして、これによって、筒状のベルトスラブ(ベルト本体前駆体)が成形される。
【0051】
そして、内金型からベルトスラブを取り外しそれを長さ方向に数個に分割した後、それぞれの外周を研削砥石で研磨切削してVリブ13、つまりプーリ接触部分を形成する。このとき、プーリ接触部分表面に露出する短繊維14は、プーリ接触部分表面、つまりVリブ13表面から突出した形態となっていてもよい。なお、研磨切削するゴム組成物が上記特定の高弾性短繊維及び大粒径カーボンブラックが組み合わされて含まれたものであるので、摩擦による発熱が小さく、そのため従来に比べて研削砥石の使用可能期間が長くなる。
【0052】
最後に、分割されて外周にVリブ13が形成されたベルトスラブを所定幅に幅切りし、それぞれの表裏を裏返すことによりVリブドベルトBが得られる。
【0053】
次に、上記VリブドベルトBを用いた自動車のエンジンルームに設けられる補機駆動ベルト伝動装置30について説明する。
【0054】
図3は、その補機駆動ベルト伝動装置30のプーリレイアウトを示す。この補機駆動ベルト伝動装置30は、4つのリブプーリ及び2つのフラットプーリの6つのプーリに巻き掛けられたサーペンタインドライブ方式のものである。
【0055】
この補機駆動ベルト伝動装置30のレイアウトは、最上位置のパワーステアリングプーリ31、そのパワーステアリングプーリ31の下方に配置されたACジェネレータプーリ32、パワーステアリングプーリ31の左下方に配置された平プーリのテンショナプーリ33と、そのテンショナプーリ33の下方に配置された平プーリのウォーターポンププーリ34と、テンショナプーリ33の左下方に配置されたクランクシャフトプーリ35と、そのクランクシャフトプーリ35の右下方に配置されたエアコンプーリ36とにより構成されている。これらのうち、平プーリであるテンショナプーリ33及びウォーターポンププーリ34以外は全てリブプーリである。そして、VリブドベルトBは、Vリブ13側が接触するようにパワーステアリングプーリ31に巻き掛けられ、次いで、ベルト背面が接触するようにテンショナプーリ33に巻き掛けられた後、Vリブ13側が接触するようにクランクシャフトプーリ35及びエアコンプーリ36に順に巻き掛けられ、さらに、ベルト背面が接触するようにウォーターポンププーリ34に巻き掛けられ、そして、Vリブ13側が接触するようにACジェネレータプーリ32に巻き掛けられ、最後にパワーステアリングプーリ31に戻るように設けられている。
【0056】
以上のような構成の補機駆動ベルト伝動装置30では、上記VリブドベルトBを用いているので、特に、大きなミスアライメントが生じやすいベルトスパン長が90mm以下である相互に隣接してVリブドベルトBが巻き掛けられた、少なくとも一方がリブプーリである一対のプーリを含む場合、或いは、実際にミスアライメント量が2.70°よりも大きい相互に隣接してVリブドベルトBが巻き掛けられた、少なくとも一方がリブプーリである一対のプーリを含む場合でも、ミスアライメントに起因する異音の発生を小さく抑えることができる。
【0057】
ここで、ベルトスパン長とは、相互に隣接してVリブドベルトBが巻き掛けられた一対のプーリにおける共通接線の接点間距離である(養賢堂発行「新版 ベルト伝動・精密搬送の実用設計 ベルト伝動技術懇話会編」第39頁)。
【0058】
また、ミスアライメントは、一対のリブプーリP1、P2の一方の他方に対する図4に示すようなプーリずれや図5(a)及び(b)に示すようなプーリ倒れが原因となって生じる。ミスアライメント量αは、図6に示すように、リブプーリP、PにVリブドベルトBを巻き掛けて所定軸加重を与えた状態でそれらの軸間位置Cを測定すると共に、軸位置における一方のリブプーリP1に対する他方のリブプーリP2の前後方向のずれΔCを測定し、α=tan−1(ΔC/C)として求められる(養賢堂発行「新版 ベルト伝動・精密搬送の実用設計 ベルト伝動技術懇話会編」第64頁及び第65頁)。
【0059】
なお、本実施形態では、圧縮ゴム層12全体が単一のゴム組成物で形成されたものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、Vリブ13表面の少なくともプーリ接触部分が上記ゴム組成物で形成されていればよい。
【0060】
また、本実施形態では、高弾性短繊維が圧縮ゴム層を形成するゴム組成物に配合されたものとしたが、特にこれに限定されるものではなく、ベルト成形前後のいずれかに高弾性短繊維がVリブ13表面に接着させたものであってもよい。
【0061】
また、本実施形態では、4つのリブプーリを有する補機駆動ベルト伝動装置30としたが、一対のリブプーリを含む3つ以上であれば特にこれに限定されるものではなく、さらに多くのリブプーリを有するものであってもよい。
【実施例】
【0062】
Vリブドベルトについて行った試験評価について説明する。
【0063】
(試験評価用ベルト)
試験評価用のVリブドベルトの圧縮ゴムを形成するゴム組成物として以下の基本配合1〜10を用いた。配合の詳細は表1にも示す。
【0064】
−基本配合1−
ゴム成分をEPDM(エチレンプロピレンジエンモノマーゴム)(1)(JSR社製 商品名:EP43)とし、そのゴム成分100質量部に対して、パラフィン系オイル(日本サン石油社製 商品名:サンパー2280)15質量部、酸化亜鉛(堺化学工業社製 商品名:亜鉛華3種)5質量部、ステアリン酸(新日本理化社製 商品名:ステアリン酸50S)1質量部、老化防止剤(1)(大内新興化学社製 商品名:ノクラック224)0.5質量部、老化防止剤(2)(大内新興化学社製 商品名:ノクラックMB)1.5質量部、有機過酸化物(日本油脂社製 商品名:パークミルD−40)8質量部、及び硫黄(鶴見化学工業社製 商品名:オイル硫黄)0.2質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合1とした。
【0065】
−基本配合2−
ゴム成分をEPDM(2)(JSR社製 商品名:EP24)とし、そのゴム成分100質量部に対して、パラフィン系オイル15質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、老化防止剤(1)2質量部、硫黄2質量部、及び加硫促進剤(1)(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーMSA)4質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合2とした。
【0066】
−基本配合3−
ゴム成分をEOM(エチレンオクテンモノマーゴム)(The Dow Chemical Company社製 商品名:Engage8180)とし、そのゴム成分100質量部に対して、パラフィン系オイル15質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、老化防止剤(1)0.5質量部、老化防止剤(2)1.5質量部、有機過酸化物8質量部、及び硫黄0.2質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合3とした。
【0067】
−基本配合4−
ゴム成分をEBM(エチレンブテンモノマーゴム)(The Dow Chemical Company社製 商品名:Engage7447)とし、そのゴム成分100質量部に対して、パラフィン系オイル15質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、老化防止剤(1)0.5質量部、老化防止剤(2)1.5質量部、有機過酸化物8質量部、及び硫黄0.2質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合4とした。
【0068】
−基本配合5−
ゴム成分をNR(天然ゴム)(Thai Thevee Rubber社製 商品名:RSS3)とし、そのゴム成分100質量部に対して、アロマ系オイル(神戸油化学工業社製 商品名:アロマックスBK)10質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、老化防止剤(1)1質量部、硫黄0.5質量部、加硫促進剤(2)(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーTT)0.5質量部、及び、加硫促進剤(3)(大内新興化学社製 商品名:ノクセラーD)1.5質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合5とした。
【0069】
−基本配合6−
ゴム成分をBR(ブタジエンゴム)(JSR社製 商品名:BR01)とし、そのゴム成分100質量部に対して、アロマ系オイル10質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、老化防止剤(1)1質量部、硫黄0.5質量部、加硫促進剤(2)0.5質量部、及び加硫促進剤(3)1.5質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合6とした。
【0070】
−基本配合7−
ゴム成分をCR(クロロプレンゴム)(昭和ネオプレン社製 商品名:ショウプレンGS)とし、そのゴム成分100質量部に対して、アロマ系オイル5質量部、酸化亜鉛5質量部、酸化マグネシウム(協和化学工業社製 商品名:キョウマグ150)4質量部、及びステアリン酸1質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合7とした。
【0071】
−基本配合8−
ゴム成分をACSM(アルキル化クロロスルホン化ポリエチレンゴム)(東ソー社製 商品名:エクストスET−8010)とし、そのゴム成分100質量部に対して、可塑剤(旭電化工業社製 商品名:アデカサイザーRS107)10質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、及び有機過酸化物8質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合8とした。
【0072】
−基本配合9−
ゴム成分をNBR(ニトリルゴム)(日本ゼオン社製 商品名:Nipol1041)とし、そのゴム成分100質量部に対して、可塑剤10質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、老化防止剤(1)1.5質量部、硫黄0.5質量部、加硫促進剤(2)0.5質量部、及び加硫促進剤(3)1.5質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合9とした。
【0073】
−基本配合10−
ゴム成分をH−NBR(水素化ニトリルゴム)(日本ゼオン社製 商品名:Zetpol2020)とし、そのゴム成分100質量部に対して、可塑剤10質量部、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、及び有機過酸化物8質量部を配合すると共に、所定のカーボンブラック及び短繊維のそれぞれを所定量配合するゴム配合を基本配合10とした。
【0074】
【表1】

【0075】
<実施例1>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF(東海カーボン社 商品名:シーストV よう素吸着量26g/Kg及び窒素吸着比表面積27m2/g 平均粒子径62nm)60質量部、及び、短繊維としてビニロン短繊維(ユニチカ社製 商品名:HM1 初期引張抵抗度215cN/dtex 繊維長1mm 主鎖芳香族:無し)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを実施例1とした。
【0076】
なお、接着ゴム層をEPDMのゴム組成物、補強布をナイロン繊維製の織布、心線をポリエチレンナフタレート繊維(PEN)製の撚り糸でそれぞれ構成し、ベルト周長を1210mm、ベルト幅を21.4mm及びベルト厚さを4.3mmとし、そして、リブ数を6個とした。
【0077】
<実施例2>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックSRF(東海カーボン社 商品名:シーストS、よう素吸着量26g/Kg及び窒素吸着比表面積27m2/g、平均粒子径66nm)65質量部、及び、短繊維としてビニロン短繊維10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを実施例2とした。
【0078】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0079】
<実施例3>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックMT(Degussa Engineered Carbons, LP社製 商品名:N−990、よう素吸着量8.7g/Kg)80質量部、及び、短繊維としてビニロン短繊維10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを実施例3とした。
【0080】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0081】
<実施例4>
ビニロン短繊維の配合量を18質量部として混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを実施例4とした。
【0082】
<実施例5>
ビニロン短繊維の配合量を16質量部とし、さらにナイロン短繊維(旭化成社製 商品名:レオナ66 初期引張抵抗度44cN/dtex 繊維長1mm 主鎖芳香族:無し)4質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて実施例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを実施例5とした。
【0083】
<実施例6>
ビニロン短繊維の配合量を10質量部及びナイロン短繊維の配合量を16質量部として混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて実施例5と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを実施例6とした。
【0084】
<実施例7>
さらに超高分子量ポリエチレンパウダー(三井化学社製 商品名:ハイゼックスミリオン240S)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて実施例6と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを実施例7とした。
【0085】
<実施例8〜16>
上記基本配合2〜10のそれぞれにおいて、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、並びに、短繊維としてビニロン短繊維10質量部及びナイロン短繊維16質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これらを実施例8〜16とした。
【0086】
なお、接着ゴム層を圧縮ゴム層と同種のゴム組成物、補強布をナイロン繊維製の織布、心線をポリエチレンナフタレート繊維(PEN)製の撚り糸でそれぞれ構成し、ベルト周長を1210mm、ベルト幅を21.4mm及びベルト厚さを4.3mmとし、そして、リブ数を6個とした。
【0087】
<実施例17>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維としてポリアセタール繊維(旭化成社製 商品名:テナックSD 初期引張抵抗度141cN/dtex 繊維長1mm 主鎖芳香族:無し)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを実施例17とした。
【0088】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0089】
<実施例18>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維としてポリプロピレン繊維(1)(宇部日東化成社製 商品名:シムテックスHM 初期引張抵抗度100〜140cN/dtex 繊維長1mm 主鎖芳香族:無し)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを実施例18とした。
【0090】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0091】
<比較例1>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックFEF(東海カーボン社 商品名:シーストSO、よう素吸着量44g/Kg及び窒素吸着比表面積42m/g、平均粒子径43nm)50質量部、及び、短繊維としてビニロン短繊維18質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例1とした。なお、これは特許文献3の仕様である。
【0092】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0093】
<比較例2>
ビニロン短繊維の配合量を16質量部とし、さらにナイロン短繊維4質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて比較例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例2とした。なお、これも特許文献3の仕様である。
【0094】
<比較例3>
ビニロン短繊維の配合量を10質量部及びナイロン短繊維の配合量を16質量部として混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて比較例1と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例3とした。なお、これも特許文献3の仕様である。
【0095】
<比較例4>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックHAF(東海カーボン社 商品名:シースト3 よう素吸着量80g/Kg及び窒素吸着比表面積79m2/g 平均粒子径28nm)20質量部及びカーボンブラックGPF55質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例4とした。なお、これは特許文献1と同等の仕様である。
【0096】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0097】
<比較例5>
カーボンブラックHAFの配合量を60質量部及びカーボンブラックGPFの配合量を15質量部として混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて比較例4と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例5とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0098】
<比較例6>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックISAF(東海カーボン社 商品名:シースト6 よう素吸着量121g/Kg及び窒素吸着比表面積119m/g 平均粒子径22nm)20質量部及びカーボンブラックGPF50質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例6とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0099】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0100】
<比較例7>
カーボンブラックISAFの配合量を55質量部及びカーボンブラックGPFの配合量を15質量部として混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて比較例6と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例7とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0101】
<比較例8>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックISAF20質量部及びカーボンブラックSRF50質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例8とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0102】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0103】
<比較例9>
カーボンブラックISAFの配合量を50質量部及びカーボンブラックSRFの配合量を15質量部として混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて比較例8と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例9とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0104】
<比較例10>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックHAF20質量部及びカーボンブラックSRF55質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例10とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0105】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0106】
<比較例11>
カーボンブラックHAFの配合量を60質量部及びカーボンブラックSRFの配合量を15質量部として混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したことを除いて比較例10と同一構成のVリブドベルトを作製し、これを比較例11とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0107】
<比較例12>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックHAF45質量部及びカーボンブラックGPF30質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例12とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0108】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0109】
<比較例13>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例13とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0110】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0111】
<比較例14>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックHAF15質量部及びカーボンブラックGPF60質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例14とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0112】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0113】
<比較例15>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF55質量部及びカーボンブラックSRF15質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例15とした。なお、これも特許文献1の仕様である。
【0114】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0115】
<比較例16〜24>
上記基本配合2〜10のそれぞれにおいて、カーボンブラックとしてカーボンブラックFEF50質量部、並びに、短繊維としてビニロン短繊維10質量部及びナイロン短繊維16質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これらを比較例16〜24とした。
【0116】
なお、接着ゴム層を圧縮ゴム層と同種のゴム組成物、補強布をナイロン繊維製の織布、心線をポリエチレンナフタレート繊維(PEN)製の撚り糸でそれぞれ構成し、ベルト周長を1210mm、ベルト幅を21.4mm及びベルト厚さを4.3mmとし、そして、リブ数を6個とした。
【0117】
<比較例25〜33>
上記基本配合2〜10のそれぞれにおいて、カーボンブラックとしてカーボンブラックHAF20質量部及びカーボンブラックGPF55質量部、並びに、短繊維としてナイロン短繊維25質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これらを比較例25〜33とした。
【0118】
なお、接着ゴム層を圧縮ゴム層と同種のゴム組成物、補強布をナイロン繊維製の織布、心線をポリエチレンナフタレート繊維(PEN)製の撚り糸でそれぞれ構成し、ベルト周長を1210mm、ベルト幅を21.4mm及びベルト厚さを4.3mmとし、そして、リブ数を6個とした。
【0119】
<比較例34>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維としてナイロン短繊維10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例34とした。
【0120】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0121】
<比較例35>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維としてポリプロピレン繊維(2)(宇部日東化成社製 商品名:シムテックスHT 初期引張抵抗度65〜100cN/dtex 繊維長1mm 主鎖芳香族:無し)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例35とした。
【0122】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0123】
<比較例36>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維として綿(橋本株式会社製 商品名:デニムチョッパー5 初期引張抵抗度60〜82cN/dtex 繊維長5mm 主鎖芳香族:無し)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例36とした。
【0124】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0125】
<比較例37>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維としてp−アラミド短繊維(帝人社製 商品名:テクノーラ 初期引張抵抗度520cN/dtex 繊維長1mm 主鎖芳香族:有り)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例37とした。
【0126】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0127】
<比較例38>
上記基本配合1において、カーボンブラックとしてカーボンブラックGPF60質量部、及び、短繊維としてm−アラミド短繊維(帝人社製 商品名:コーネックス 初期引張抵抗度64cN/dtex 繊維長1mm 主鎖芳香族:有り)10質量部を配合して混練した未架橋ゴム組成物から圧縮ゴム層を形成したVリブドベルトを作製し、これを比較例38とした。
【0128】
なお、接着ゴム層等その他の構成は実施例1と同一である。
【0129】
(試験評価方法)
図7は、試験評価に用いたベルト走行試験機70のプーリのレイアウトを示す。
【0130】
このベルト走行試験機70は、最上位に設けられたプーリ径61mmの第1従動リブプーリ71と、第1従動リブプーリ71の右斜め下に設けられたプーリ径61mmの第2従動リブプーリ72と、第2従動リブプーリ72の右斜め下に設けられたプーリ径101mmの駆動リブプーリ73と、駆動リブプーリ73の左側に設けられたプーリ径80mmの第1アイドラプーリ74と、第1アイドラプーリ74の左側に設けられたプーリ径120mmの第3従動リブプーリ75と、第3従動リブプーリ75の右斜め上で且つ第1従動リブプーリ71の左斜め下に設けられたプーリ径61mmの第2アイドラプーリ76と、を備え、VリブドベルトBが第1従動リブプーリ71、第2従動リブプーリ72、駆動リブプーリ73、第1アイドラプーリ74、第3従動リブプーリ75、及び第2アイドラプーリ76の順に巻き掛けられるようになっている。また、第1従動リブプーリ71は上下可動となっており、VリブドベルトBにデッドウェイトを負荷できるようになっている。第3従動リブプーリ75と第1アイドラプーリ74との間のベルトスパン長は90mmである。
【0131】
<異音発生時ミスアライメント量>
実施例1〜18及び比較例1〜38のそれぞれについて、上記ベルト走行試験機70にセットし、第1アイドラプーリ74との間のミスアライメント量が0.00°となるように第3従動リブプーリ75を調整し、その状態で第1従動プーリ71に300N(1Vリブ当たり50N)のデッドウェイトを負荷し、雰囲気温度5℃の下、駆動リブプーリを1500rpmで回転させて時計回りにベルト走行させた。このとき、第1従動プーリ71、第2従動プーリ72及び第3従動プーリ75のいずれにも負荷トルクを付与しなかった。
【0132】
そして、第3従動リブプーリ75のオフセット量、つまり、ミスアライメント量を4.00°まで段階的に変量し、下記の評価基準における異音が発生したときのミスアライメント量を異音発生時ミスアライメント量とした。異音発生の評価基準として、第3従動リブプーリ75から30cm離れた場所に騒音計を設置し、計測される騒音の強さがミスアライメント量が0.00°の時から3dB大きくなった時をもって、異音が発生したと判断する方法を用いた。
【0133】
なお、ミスアライメント量は、図6に示すように、リブプーリP、PにVリブドベルトBを巻き掛けて所定軸加重を与えた状態でそれらの軸間位置Cを測定すると共に、軸位置における一方のリブプーリPに対する他方のリブプーリPの前後方向のずれΔCを測定し、ミスアライメント量α=tan−1(ΔC/C)として求められるものである。
【0134】
<異音発生走行時間>
実施例1〜7、実施例17〜18、比較例1〜15及び比較例34〜38のそれぞれについて、上記ベルト走行試験機70にセットし、第1アイドラプーリ74との間のミスアライメント量が2.00°となるように第3従動リブプーリ75を手前側にオフセットしてプーリずれによるミスアライメントを生じさせ、雰囲気温度5℃の下、駆動リブプーリを1500rpmで回転させて、上記評価基準における異音が発生するまで時計回りにベルト走行させた(ただし、比較例1は試験開始直後から異音が発生したため、ベルト走行を行っていない。)。このとき、第1従動プーリ71、第2従動プーリ72及び第3従動プーリ75のいずれにも負荷トルクを付与しなかった。そして、その異音が発生するまでのベルト走行時間を異音発生走行時間とした。なお、ベルト走行時間が300時間を越えたときには、そこで試験を打ち切った。
【0135】
<摩擦係数変化・ベルト質量変化>
実施例1〜7及び比較例1〜15のそれぞれについて、圧縮ゴム層表面の摩擦係数及びベルト質量を測定した後、上記ベルト走行試験機70にセットし、第1アイドラプーリ74との間のミスアライメント量が0.00°となるように第3従動リブプーリ75を調整し、第1従動プーリ71には300N(1リブあたり50N)のデッドウェイトを負荷し、第3従動プーリ75には1リブあたり5Nmの負荷トルクを付与した状態で、雰囲気温度80℃の下、駆動リブプーリを4500rpmで回転させて50時間時計回りにベルト走行させた。
【0136】
そして、ベルト走行後に再び圧縮ゴム層表面の摩擦係数及びベルト質量を測定し、摩擦係数の変化量及びベルト質量の変化割合(摩耗率)を計算した。
【0137】
<伝動面ベルト温度>
実施例1〜7及び比較例1〜15のそれぞれについて、上記圧縮ゴム層表面の摩擦係数及びベルト質量の測定の後、再び、上記ベルト走行試験機70にセットし、第1アイドラプーリ74との間のミスアライメント量が0.00°となるように第3従動リブプーリ75を調整し、第1従動プーリ71には300N(1リブあたり50N)のデッドウェイトを負荷し、第3従動プーリ75には1リブあたり5Nmの負荷トルクを付与した状態で、雰囲気温度80℃の下、駆動リブプーリを4500rpmで回転させて時計回りにベルト走行させた。
【0138】
そして、ベルト走行時間が100時間のときの伝動面である圧縮ゴム層の温度を非接触型温度計で測定した。
【0139】
<心線セパレーション発生時間>
圧縮ゴム層の温度測定の後、心線の分離(心線セパレーション)が発生するまでベルト走行を継続し、そのときのベルト走行時間を心線セパレーション発生時間とした。なお、ベルト走行時間が300時間を越えたときには、そこで試験を打ち切った。
【0140】
<被水時の異音発生有無>
実施例1〜7及び比較例1〜15のそれぞれについて、自動車の補機駆動ベルト伝動装置に装着し、エンジンをかけ、エアコン及びヘッドライトをONの状態で10分間アイドリング運転を行った後、Vリブドベルトに約100mlの水道水を注いだとき、上記評価基準における異音が発生するか否かを観測した。
【0141】
<研削加工時のベルト表面温度>
実施例1〜7及び比較例1〜15のそれぞれについて、研削砥石によるVリブの研削加工において、研削砥石に研削された後30cm移動した位置でのベルト表面の温度を非接触型温度計で測定した。
【0142】
(試験評価結果)
表2〜5は試験評価結果を示す。
【0143】
【表2】

【0144】
【表3】

【0145】
【表4】

【0146】
【表5】

【0147】
<異音発生時ミスアライメント量>
表2〜4によれば、圧縮ゴム層を構成するゴム組成物に特定の高弾性短繊維及び大粒径カーボンブラックが組み合わされて含まれる実施例1〜16は、それらの両方が含まれない場合或いはそれらのうち一方のみが含まれる場合である比較例1〜33に比べて、異音発生時ミスアライメント量が非常に高いことが分かる。つまり、実施例1〜16によれば、比較例1〜33に比べて、ミスアライメント量が大きいプーリレイアウトにおいて、異音の発生を効果的に抑えることができる。具体的には、実施例1〜16によれば、ミスアライメント量が2.70°よりも大きい場合であっても、ミスアライメント量が4°を超えベルトがプーリを乗り越えて評価が続行できなくなるまで、ミスアライメントによる異音が発生しない、卓越した異音発生防止効果を得ることができる。
【0148】
表5によれば、実施例1、17及び18は、初期引張抵抗度が100cN/dtex以下である短繊維を配合したゴム組成物でベルトを形成した比較例34〜36に比べて、異音発生時ミスアライメント量が非常に高いことが分かる。つまり、実施例1、17及び18によれば、比較例34〜36に比べて、ミスアライメント量が大きいプーリレイアウトにおいて、異音の発生を効果的に抑えることができる。具体的には、実施例1、17及び18によれば、ミスアライメント量が2.70°よりも大きい場合であっても、ミスアライメント量が4°を超えベルトがプーリを乗り越えて評価が続行できなくなるまで、ミスアライメントによる異音が発生しない、卓越した異音発生防止効果を得ることができる。
【0149】
<異音発生走行時間>
表2及び3によれば、実施例1〜7は、比較例1〜15に比べて、異音発生走行時間が著しく長いことが分かる(30倍以上)。つまり、実施例1〜7によれば、比較例1〜15に比べて、使用初期段階だけではなく、長期に亘って永続的に異音の発生を効果的に抑えることができる。
【0150】
表5によれば、実施例1、17及び18は、初期引張抵抗度が100cN/dtex以下である短繊維を配合したゴム組成物でベルトを形成した比較例34〜36及び主鎖に芳香族を含むポリマーである短繊維を配合したゴム組成物でベルトを形成した比較例37〜38に比べて、異音発生走行時間が非常に長いことが分かる。つまり、実施例1〜7によれば、比較例1〜15に比べて、使用初期段階だけではなく、長期に亘って永続的に異音の発生を効果的に抑えることができる。特に、実施例1によれば、その異音発生抑制の効果は顕著である。
【0151】
<摩擦係数変化・ベルト質量変化>
表2及び3によれば、実施例1〜7は、比較例1〜15に比べて、摩擦係数変化が非常に小さいことが分かる。また、実施例1〜7は、比較例1〜15に比べて、ベルト質量変化が同等乃至小さいことが分かる。つまり、実施例1〜7によれば、比較例1〜15に比べて、安定した動力伝達を行うことができる。
【0152】
<伝動面ベルト温度>
表2及び3によれば、実施例1〜7は、比較例1〜15に比べて、伝動面ベルト温度が同等乃至低いことが分かる。つまり、実施例1〜7は、比較例1〜15に比べて、ベルト走行時における圧縮ゴム層の発熱が相対的に小さい。
【0153】
<心線セパレーション発生時間>
表2及び3によれば、実施例1〜7は、比較例1〜15に比べて、心線セパレーション発生時間が非常に長いことが分かる。これは、実施例1〜7では、比較例1〜15に比べて、上記の通りベルト走行時における圧縮ゴム層の発熱が相対的に小さいことから、熱による心線の接着力の低下に起因する心線の分離(心線セパレーション)も生じがたいためであると考えられる。
【0154】
<被水時の異音発生有無>
表2及び3によれば、実施例1〜7は、上記評価基準における異音の発生がなかったにも関わらず、比較例1〜15では、いずれも異音が発生したことが分かる。つまり、実施例1〜7によれば、実車においても、また、水の存在下においても、異音の発生を効果的に抑えることができる。
【0155】
<研削加工時のベルト表面温度>
表2及び3によれば、実施例1〜7は、比較例1〜15に比べて、研削加工時のベルト表面温度が低いことが分かる。これも、実施例1〜7では、比較例1〜15に比べて、圧縮ゴム層の発熱が相対的に小さいことに起因するものであると考えられる。従って、研削砥石は、実施例1〜7の製造に使用される場合の方が比較例1〜15の製造に使用される場合よりも長寿命となる。
【産業上の利用可能性】
【0156】
以上説明したように、本発明は、ベルト本体の少なくともプーリ接触部分がゴム組成物で形成された摩擦伝動ベルト及びそれを用いた自動車の補機駆動ベルト伝動装置について有用である。
【図面の簡単な説明】
【0157】
【図1】Vリブドベルトの斜視図である。
【図2】Vリブドベルトの製造方法を示す説明図である。
【図3】補機駆動ベルト伝動装置のプーリのレイアウト図である。
【図4】プーリずれによるミスアライメントの説明図である。
【図5】(a)及び(b)はプーリ倒れによるミスアライメントの説明図である。
【図6】ミスアライメント量の求め方の説明図である。
【図7】ベルト走行試験機のプーリのレイアウト図である。
【符号の説明】
【0158】
B Vリブドベルト
10 Vリブドベルト本体
13 Vリブ(プーリ接触部分)
14 短繊維
31 パワーステアリングプーリ(リブプーリ)
32 ACジェネレータプーリ(リブプーリ)
35 クランクシャフトプーリ(リブプーリ)
36 エアコンプーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム製のベルト本体の少なくともプーリ接触部分表面に露出するように短繊維及びカーボンブラックが分散して配された摩擦伝動ベルトであって、
上記短繊維は、JIS L 1013に準じて測定される初期引張抵抗度が100cN/dtex以上である主鎖に芳香族を含まないポリマーで形成された高弾性短繊維を含み、且つ、
上記カーボンブラックは、JIS K 6217−1に準じて測定されるよう素吸着量が40g/Kg以下、及び/又は、JIS K 6217−2に準じて測定される窒素吸着比表面積が40m/g以下である大粒径カーボンブラックを含む摩擦伝動ベルト。
【請求項2】
請求項1に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
上記短繊維がポリビニルアルコール短繊維である摩擦伝動ベルト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
上記ベルト本体は、ベルト内周側に、各々、ベルト長さ方向に延びる複数のVリブがベルト幅方向に併設されたVリブドベルト本体である摩擦伝動ベルト。
【請求項4】
請求項3に記載された摩擦伝動ベルトにおいて、
用途が一対のリブプーリを含む3つ以上のプーリを備えた自動車の補機駆動ベルト伝動装置用である摩擦伝動ベルト。
【請求項5】
Vリブドベルトが一対のリブプーリを含む3つ以上のプーリに巻き掛けられた自動車の補機駆動ベルト伝動装置であって、
上記Vリブドベルトは、ベルト内周側に、各々、ベルト長さ方向に延びる複数のVリブがベルト幅方向に並設されたゴム製のVリブドベルトを有すると共に、該Vリブドベルト本体の少なくともプーリ接触部分表面に露出するように短繊維及びカーボンブラックが分散して配されており、
上記短繊維は、JIS L 1013に準じて測定される初期引張抵抗度が100cN/dtex以上である主鎖に芳香族を含まないポリマーで形成された高弾性短繊維を含み、且つ、
上記カーボンブラックは、JIS K 6217−1に準じて測定されるよう素吸着量が40g/Kg以下、及び/又は、JIS K 6217−2に準じて測定される窒素吸着比表面積が40m/g以下である大粒径カーボンブラックを含む自動車の補機駆動ベルト伝動装置。
【請求項6】
請求項5に記載された自動車の補機駆動ベルト伝動装置であって、
上記3つ以上のプーリは、ミスアライメント量が2.70°よりも大きい相互に隣接して上記Vリブドベルトが巻き掛けられた、少なくとも一方がリブプーリである一対のプーリを含む自動車の補機駆動ベルト伝動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−30728(P2009−30728A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−195679(P2007−195679)
【出願日】平成19年7月27日(2007.7.27)
【出願人】(000005061)バンドー化学株式会社 (429)
【Fターム(参考)】