説明

摩擦低減用添加剤、それを含む潤滑油組成物及び摩擦低減用添加剤の製造方法

【課題】他の添加剤との相互作用が小さく、優れた摩擦低減効果を発揮すると共に、良好な熱安定性付与効果を有し、かつコスト的にも有利な摩擦低減用添加剤、及びこのものを含む潤滑油組成物を提供する。
【解決手段】オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とする摩擦低減用添加剤、及び基油と、前記摩擦低減用添加剤を含み、かつ臭素価が0.1〜10gBr2/100gであることを特徴とする潤滑油組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦低減用添加剤、それを含む潤滑油組成物及び前記摩擦低減用添加剤の製造方法に関する。さらに詳しくは、本発明は、各種の潤滑油用として有用な、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とする、他の添加剤との相互作用が小さく、優れた摩擦低減効果を発揮すると共に、良好な熱安定性付与効果を有し、かつコスト的にも有利な摩擦低減用添加剤、このものを含む潤滑油組成物、及び前記摩擦低減用添加剤を効率よく製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、軸受油、油圧作動油、ギヤ油、摺動面油、冷凍機油、エンジン油、自動変速機油、アルミの圧延油・プレス油等の塑性加工油、切削油などの潤滑油には、摩擦を低減する方法として、基油にフリクションモディファイア(FM)と呼ばれる摩擦調整剤を加える方法がある。そして、このFMとして、一般的には有機モリブデン化合物、リン系化合物、アミン、アミド、エステル、アルコールなどが知られている。
これらFMは、単独では熱安定性が悪い、あるいは摩擦低減効果が小さいなどの欠点があり、また、他の添加剤との相互作用が強く、酸化安定性、清浄性、耐摩耗性に及ぼす影響を充分に検討する必要がある。また、一般的には高価であることも問題である。
【0003】
特許文献1には、飽和炭化水素の冷媒としての特性を維持しつつ摺動特性を向上させるために不飽和炭化水素の含有量が0.001〜1.0質量%の範囲が好ましく、より好ましい範囲は0.01〜0.1質量%の冷媒が記載されている。そして、上記不飽和炭化水素として、プロピレン、ブテン、ブチンなどの単独使用あるいは混合使用が例示されている。しかしながら、このような低分子化合物は、冷媒には有効であるかもしれないが、一般的な潤滑油基材としては、蒸発性や引火点の問題などから、使用することはできない。
特許文献2には、塑性加工用潤滑油剤として、炭素数6〜40の置換オレフィン及び分岐オレフィン・その水素化物を用いると、加工性向上、加工工具の寿命延長、製品の表面仕上げ状態の向上に効果があることが記載されているが、摩擦の低減や熱安定性については言及していない。
さらに、特許文献3には、潤滑油基油として、1−アルケン(炭素数4〜24)の2量体以上のオリゴマーを用いた潤滑油組成物が記載されているが、熱安定性や蒸発性に関する記載はあるものの、オリゴマー自体の摩擦低減効果にまでは言及していない。
ところで、精製度の低い鉱油系基油には元々オレフィン成分が含まれているが、そのオレフィン成分による摩擦低減効果について、これまで言及したものはない。熱安定性、酸化安定性向上の観点から、完全水素添加処理等によってオレフィン成分は除去されるのが一般的である。
【0004】
【特許文献1】特開平8−176536号公報
【特許文献2】特公平7−78226号公報
【特許文献3】特開2004−51720号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような状況下で、従来の摩擦低減剤が有する欠点を解消し、他の添加剤との相互作用が小さく、優れた摩擦低減効果を発揮すると共に、良好な熱安定性付与効果を有し、かつコスト的にも有利な摩擦低減用添加剤、及びこのものを含み、優れた摩擦低減性と良好な熱安定性を有する潤滑油組成物を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物が、意外にも、他の添加剤との相互作用が小さく、潤滑油に対して、優れた摩擦低減効果と、良好な熱安定性を付与し得ることを見出した。また、基油と、前記未水添不飽和炭化水素化合物を含み、かつ臭素価が特定の範囲にある潤滑油組成物が、優れた摩擦低減性と良好な熱安定性を有することを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、
[1]オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とする摩擦低減用添加剤、
[2]オレフィンオリゴマーが、炭素数12以上のものである上記[1]に記載の摩擦低減用添加剤、
[3]オレフィンオリゴマーが、炭素数3〜24のオレフィンモノマーを酸触媒を用いて重合してなるものである上記[1]又は[2]に記載の摩擦低減用添加剤、
[4]炭素数3〜24のオレフィンモノマーが、炭素数6〜16のα−オレフィンモノマーである上記[3]に記載の摩擦低減用添加剤、
[5]基油と、上記[1]〜[4]のいずれかに記載の摩擦低減用添加剤を含み、かつ臭素価が0.1〜10gBr2/100gであることを特徴とする潤滑油組成物、
[6]臭素価が1〜4gBr2/100gである上記[5]項に記載の潤滑油組成物、
[7]オレフィンオリゴマーの水素添加処理物が、基油と摩擦低減用添加剤を兼備してなる上記[5]又は[6]に記載の潤滑油組成物、
[8]さらに、無灰清浄分散剤、金属系清浄剤、他の潤滑性向上剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を含む上記[5]〜[7]のいずれかに記載の潤滑油組成物、
[9]酸触媒の存在下、オレフィンモノマーを重合させて炭素数12以上のオレフィンオリゴマーを得たのち、部分水素添加処理し、未水添不飽和炭化水素化合物を含むオレフィンオリゴマーの水素添加処理物を得ることを特徴とする、上記[1]に記載の摩擦低減用添加剤の製造方法、及び
[10]オレフィンモノマーが、炭素数3〜24のオレフィンモノマーである上記[9]に記載の摩擦低減用添加剤の製造方法、
を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、各種の潤滑油用として有用な、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とする、他の添加剤との相互作用が小さく、優れた摩擦低減効果を発揮すると共に、良好な熱安定性付与効果を有し、かつコスト的にも有利な摩擦低減用添加剤、このものを含む潤滑油組成物、及び前記摩擦低減用添加剤を効率よく製造する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
まず、本発明の摩擦低減用添加剤について説明する。
本発明の摩擦低減用添加剤は、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とすることを特徴とする。
前記オレフィンオリゴマーとしては、その水素添加処理物を潤滑油組成物の成分として使用した場合に、蒸発による損失を抑制する観点から、炭素数12以上のものが好ましく、24以上のものがより好ましい。炭素数の上限に特に制限はないが、炭素数が多すぎると摩擦低減効果が小さくなる傾向があり、したがって炭素数の上限は、通常100以下、好ましくは50程度である。
また、当該オレフィンオリゴマーは、酸触媒を用いて、炭素数3〜24のオレフィンモノマーを重合して得られたものが好ましく、特に炭素数6〜16のα−オレフィンモノマーを重合して得られたものが好ましい。ここで、炭素数6〜16のα−オレフィンモノマーとしては、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセンなどを挙げることができる。
当該オレフィンオリゴマーは、オレフィンモノマーを1種用い、重合して得られたものでもよいし、2種以上を組み合わせて用い、重合して得られたものであってもよい。
【0010】
前記オレフィンモノマーの重合において用いられる酸触媒としては特に制限はなく、例えば三フッ化ホウ素錯体、三酸化アルミニウムなどのルイス酸触媒;ゼオライト、白土などの固体酸触媒等を好ましく挙げることができる。
これらの酸触媒を使用し、前記オレフィンモノマーを重合させて、当該オレフィンオリゴマーを製造する際の好ましい態様を以下に示す。
酸触媒として、三フッ化ホウ素錯体を用いてオレフィンモノマーを重合させる場合、該触媒の使用量は、重合性、後処理性及び経済性などのバランスの観点から、使用するオレフィンモノマーに対して、0.1〜20質量%が好ましく、1.0〜10質量%がより好ましい。また、重合温度は、重合速度及び異性化抑制などの観点から、0〜100℃が好ましく、50〜80℃がより好ましい。
一方、酸触媒として、ゼオライトや白土を用いてオレフィンモノマーを重合させる場合、該触媒の使用量は、重合性、後処理性及び経済性などのバランスの観点から、使用するオレフィンモノマーに対して、1〜50質量%が好ましく、10〜30質量%がより好ましい。また、重合温度は、重合速度及び異性化抑制の観点から、50〜250℃が好ましく、80〜180℃がより好ましい。
このようにして得られた反応生成物は、触媒を除去したのち、蒸留処理を行い、炭素数12未満、好ましくは炭素数24未満のオレフィン類及び炭素数48以上の高沸点分を除くことが望ましい。
【0011】
本発明においては、前記のようにして得られたオレフィンオリゴマーを部分水素添加処理し、未水添不飽和炭化水素化合物を含むオレフィンオリゴマーの水素添加処理物を製造する。
この部分水素添加処理に用いる水素化触媒に特に制限はないが、ニッケル系(ラネーニッケル、ニッケル担持型)触媒、パラジウム及び白金などの貴金属触媒(パラジウムブラック、水酸化パラジウム、酸化白金、パラジウム担持型、白金担持型)触媒が一般的である。担持型触媒の担体としては活性炭、アルミナ、シリカアルミナ、シリカなどが用いられる。
前記水素化触媒の使用量は、水素添加速度及び反応制御性の観点から、使用するオレフィンオリゴマーに対し、0.1〜50質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。
反応温度は、水素添加速度及び反応制御性の観点から、通常0〜200℃程度、好ましくは20〜180℃である。反応圧力は、水素添加速度及び反応制御性の観点から通常常圧ないし10MPa程度、好ましくは1〜5MPaである。反応時間は、触媒量、反応温度、反応圧力などに左右され、一概に決めることはできないが、通常1分ないし24時間程度、好ましくは1〜3時間である。
このようにして得られた反応生成物は、触媒を分離後、必要に応じ、蒸留処理して精製を行ってもよい。
【0012】
このようにして、未水添不飽和炭化水素化合物を含むオレフィンオリゴマーの水素添加処理物が得られる。
本発明者らは、前記水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物が、意外にも、他の添加剤との相互作用が小さく、潤滑油に対して、優れた摩擦低減効果と良好な熱安定性を付与し得ることを見出し、本発明を完成したものである。
前記オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中の未水添不飽和炭化水素化合物の含有量は、臭素価換算量で、通常0.1〜10gBr2/100g程度、好ましくは1〜4gBr2/100gである。なお、臭素価は、JIS K 2605−1996に準拠して測定した値である。
また、前記の部分水素添加処理中に、オレフィンオリゴマーに一部異性化が起こるが、この異性化後、水素添加されずに残留しているオレフィン成分は、前記未水添不飽和炭化水素化合物の中の一成分として好ましい成分である。
このようにして、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とする、本発明の摩擦低減用添加剤が得られる。
本発明はまた、酸触媒の存在下、オレフィンモノマーを重合させて炭素数12以上のオレフィンオリゴマーを得たのち、部分水素添加処理し、未水添不飽和炭化水素化合物を含むオレフィンオリゴマーの水素添加処理物を得ることを特徴とする、前述した摩擦低減用添加剤の製造方法をも提供する。この製造方法におけるオレフィンモノマーの重合反応操作、及びオレフィンオリゴマーの部分水素添加処理操作については、前述で説明したとおりである。
【0013】
本発明の摩擦低減用添加剤は、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とするものであって、他の添加剤との相互作用が小さく、優れた摩擦低減効果を発揮すると共に、良好な熱安定性付与効果を有し、かつコスト的にも有利である。
本発明の摩擦低減用添加剤においては、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物が有効成分として働く。例えば、後で説明するように基油と、本発明の摩擦低減用添加剤を含む潤滑油組成物において、該組成物の臭素価が特定の範囲(すなわち、前記未水添不飽和炭化水素化合物の含有量が特定の範囲)にある場合、優れた摩擦低減効果と良好な熱安定性付与効果が発揮される。
しかし、本発明の摩擦低減用添加剤の代わりに、オレフィンオリゴマーとオレフィンオリゴマーの完全水素添加物とのブレンド品を用いた場合、潤滑油組成物の臭素価が、本発明の摩擦低減用添加剤を用いた場合の最適臭素価と同じ値であっても、摩擦低減効果又は熱安定性付与効果のいずれか一方が劣り、両方を充分に満足させることができない。
本発明の摩擦低減用添加剤は、前記のような優れた性能を有することから、各種の潤滑油、例えば軸受油、油圧作動油、ギヤ油、摺動面油、冷凍機油、エンジン油、自動変速機油、アルミの圧延油・プレス油等の塑性加工油、切削油などに用いることができる。
【0014】
次に、本発明の潤滑油組成物について説明する。
本発明の潤滑油組成物は、基油と、前述した本発明の摩擦低減用添加剤を含み、かつ臭素価が0.1〜10gBr2/100gであることを特徴とする。
前記臭素価が0.1gBr2/100g未満では摩擦低減効果が充分に発揮されず、10gBr2/100gを超えると熱安定性に劣る。好ましい臭素価は1〜4gBr2/100gの範囲である。
なお、本発明の潤滑油組成物には、後で説明するように、本発明の摩擦低減用添加剤以外に、各種の潤滑油用添加剤を含有させることができる。この潤滑油用添加剤を含有させた場合、その種類によっては、潤滑油組成物の臭素価が上昇することがある。
したがって、本発明においては、前記臭素価は、基油と本発明の摩擦低減用添加剤を含む混合油について測定した値とする。
本発明の潤滑油組成物に用いられる基油としては、摩擦低減効果が大きく発現するものが好ましく、例えば鉱物油、α−オレフィンオリゴマーの完全水素添加物、アルキルベンゼン、アルキルナフタレンなどの炭化水素系油を挙げることができる。その他、エステル類、ポリアルキレングリコールなどの極性基油においても、幾分摩擦低減効果が認められる。
【0015】
本発明においては、前記基油は1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、臭素価が0.1gBr2/100g未満の基油を用いることが肝要である。
また、本発明の潤滑油組成物においては、前述のオレフィンオリゴマーの水素添加処理物が、基油と本発明の摩擦低減用添加剤を兼備することができる。この場合、好ましくは炭素数20以下、より好ましくは炭素数24未満の成分を除いておくことが、蒸発量抑制の観点から、有利である。
さらに、本発明の潤滑油組成物においては、当該オレフィンオリゴマーの水素添加物から、有効成分(未水添不飽和炭化水素化合物)を分離し、前記基油に添加してもよい。この場合、基油と有効成分を含む混合油の臭素価は、当然のことながら、0.1〜10gBr2/100g、好ましくは1〜4gBr2/100gに調整する。
本発明の潤滑油組成物には、必要に応じ、無灰清浄分散剤、金属系清浄剤、他の潤滑性向上剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を含有させることができる。
【0016】
無灰清浄分散剤としては、例えばコハク酸イミド類、ホウ素含有コハク酸イミド類、ベンジルアミン類、ホウ素含有ベンジルアミン類、コハク酸エステル類、脂肪酸あるいはコハク酸で代表される一価又は二価カルボン酸アミド類などが挙げられ、金属系清浄剤としては、例えば中性金属スルホネート、中性金属フェネート、中性金属サリチレート、中性金属ホスホネート、塩基性スルホネート、塩基性フェネート、塩基性サリチレート、過塩基性スルホネート、過塩基性サリチレート、過塩基性ホスホネートなどが挙げられる。これらの配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.1〜20質量%、好ましくは0.5〜10質量%である。
【0017】
他の潤滑性向上剤としては、他の極圧剤、耐摩耗剤、油性剤が挙げられ、例えばリン酸エステル、チオリン酸エステル、亜リン酸エステル、アルキルハイドロゲンホスファイト、リン酸エステルアミン塩、亜リン酸エステルアミン塩などのリン系化合物が挙げられる。これらの配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.1〜3質量%程度である。また、ジチオリン酸亜鉛(ZnDTP)、ジチオカルバミン酸亜鉛(ZnDTC)、硫化オキシモリブデンオルガノホスホロジチオエート(MoDTP)、硫化オキシモリブデンジチオカルバメート(MoDTC)などの有機金属系化合物が挙げられる。これらの配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜3質量%である。
さらに、硫化油脂、硫化脂肪酸、硫化エステル、硫化オレフィン、ジヒドロカルビルポリサルファイド、チアジアゾール化合物、アルキルチオカルバモイル化合物、トリアジン化合物、チオテルペン化合物、ジアルキルチオジプロピオネート化合物などの硫黄系極圧剤が挙げられる。これらの配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.05〜2質量%である。
さらに、ステアリン酸、オレイン酸などの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸、ダイマー酸、水添ダイマー酸などの重合脂肪酸、リシノレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸などのヒドロキシ脂肪酸、ラウリルアルコール、オレイルアルコールなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアルコール、ステアリルアミン、オレイルアミンなどの脂肪族飽和及び不飽和モノアミン、ラウリン酸アミド、オレイン酸アミドなどの脂肪族飽和及び不飽和モノカルボン酸アミドなどの油性剤が挙げられる。これらの油性剤の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜5質量%である。
【0018】
酸化防止剤としては、従来潤滑油に使用されているアミン系酸化防止剤、フェノール系酸化防止剤及び硫黄系酸化防止剤を使用することができる。これらの酸化防止剤は、一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。アミン系酸化防止剤としては、例えば、モノオクチルジフェニルアミン、モノノニルジフェニルアミンなどのモノアルキルジフェニルアミン系化合物、4,4’−ジブチルジフェニルアミン、4,4’−ジペンチルジフェニルアミン、4,4’−ジヘキシルジフェニルアミン、4,4’−ジヘプチルジフェニルアミン、4,4’−ジオクチルジフェニルアミン、4,4’−ジノニルジフェニルアミンなどのジアルキルジフェニルアミン系化合物、テトラブチルジフェニルアミン、テトラヘキシルジフェニルアミン、テトラオクチルジフェニルアミン、テトラノニルジフェニルアミンなどのポリアルキルジフェニルアミン系化合物、α−ナフチルアミン、フェニル−α−ナフチルアミン、ブチルフェニル−α−ナフチルアミン、ペンチルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘキシルフェニル−α−ナフチルアミン、ヘプチルフェニル−α−ナフチルアミン、オクチルフェニル−α−ナフチルアミン、ノニルフェニル−α−ナフチルアミンなどのナフチルアミン系化合物が挙げられる。
【0019】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェノールなどのモノフェノール系化合物、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)などのジフェノール系化合物が挙げられる。
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(4,6−ビス(オクチルチオ)−1,3,5−トリアジン−2−イルアミノ)フェノール、五硫化リンとピネンとの反応物などのチオテルペン系化合物、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネートなどのジアルキルチオジプロピオネートなどが挙げられる。
これらの酸化防止剤の配合量は、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.03〜5質量%である。
【0020】
防錆剤としては、金属系スルホネート、コハク酸エステルなどを挙げることができる。これら防錆剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.05〜5質量%である。
金属不活性化剤としては、ベンゾトリアゾール、チアジアゾールなどを挙げることができる。これら金属不活性化剤の好ましい配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、通常0.01〜10質量%程度であり、好ましくは0.01〜3質量%である。
粘度指数向上剤としては、例えば、ポリメタクリレート、分散型ポリメタクリレート、オレフィン系共重合体(例えば、エチレン−プロピレン共重合体など)、分散型オレフィン系共重合体、スチレン系共重合体(例えば、スチレン−ジエン水素化共重合体など)などが挙げられる。
これら粘度指数向上剤の配合量は、配合効果の点から、潤滑油組成物全量基準で、通常0.5〜35質量%程度であり、好ましくは1〜15質量%である。
【0021】
流動点降下剤としては、重量平均分子量が5万〜15万程度のポリメタクリレートなどを用いることができる。
消泡剤としては、高分子シリコーン系消泡剤が好ましく、この高分子シリコーン系消泡剤を含有させることにより、消泡性が効果的に発揮される。
前記高分子シリコーン系消泡剤としては、例えばオルガノポリシロキサンを挙げることができ、特にトリフルオロプロピルメチルシリコーン油などの含フッ素オルガノポリシロキサンが好適である。この高分子シリコーン系消泡剤は、消泡効果及び経済性のバランスなどの点から、組成物全量に基づき、0.001〜0.1質量%程度含有させることが好ましく、0.005〜0.01質量%含有させることがより好ましい。
【実施例】
【0022】
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、各例における諸特性は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)試料油の動粘度及び粘度指数
JIS K 2283に準拠して測定した。
(2)試料油中のオレフィン含有量
試料油中のオレフィン含有量は、JIS K 2605−1996(石油製品−臭素価試験方法−電気滴定法)に準拠した臭素価換算量で表示した。
(3)潤滑油組成物の摩擦係数
図1に示す含油軸受摩擦係数測定装置を用い、下記に示す方法により、摩擦係数を測定した。
両端に支持軸受け1a、1bを有する回転シャフト2の中央部に試料油を含浸した試験軸受3をセットし、これに分銅4を用いて荷重を加える。モーター5でシャフト2を回転させた時に生ずる摩擦力をロードセル6で計測して摩擦係数を求める。
軸受材質:銅合金系 シャフト材質:ステンレス系
面圧:0.42MPa 回転数:4500rpm,400rpm
(4)潤滑油組成物の熱安定性
熱安定性及び蒸発量の評価は、JIS K 2540−2000(石油製品−潤滑油−熱安定度試験方法)に準拠して下記の方法により実施した。熱安定性や酸化安定性が悪い場合は、析出物が生成したり、蒸発量が著しく多くなったりする。
<測定方法>
試料油10gをガラス製容器に取り、酸化劣化触媒として銅線(1.6φ×40mm×3本)を入れ、140℃の恒温槽の回転盤上に置く。240時間試験した後に、析出物の有無と蒸発による質量減を調べる。
【0023】
製造例1
(1)重合
攪拌モーター、温度計を取り付けた1000mL3口フラスコに1−テトラデセン 393g(2モル)、塩化アルミニウム2.7g(0.02モル)を計量、投入し攪拌した。発熱を伴い反応が進行したが、フラスコを水浴にて冷却し100℃以下に保った。発熱が収まった後も1時間攪拌を続けた。反応物を洗浄槽に移し、アルカリ水で洗浄し、次いで蒸留水で洗浄した。洗浄後の有機相を減圧蒸留し1−テトラデセンダイマー(C2856)に相当する留分110gを分取した。MS分析により分子量は392であることを確認した。
(2)水素化
展開済みラネーニッケル触媒を50g(含水状態での質量)をフラスコに採取し、脱水エタノール100gを加え攪拌した。触媒が沈降した後、上澄み液をデカンテーションで除いた。この操作を3回繰り返した。
1Lオートクレーブに、上記エタノールで置換したラネーニッケル触媒10g(エタノールを含んだ質量)とイソオクタン200g、上記(1)で得た1−テトラデセンダイマー100gを加え、水素圧力3MPa、140℃にて1時間攪拌した。反応終了後室温まで冷却した。次いで、反応混合物より触媒をろ過で除き、ロータリーエバポレーターで溶媒(イソオクタン)等を除き油状物からなるテトラデセンダイマー水素化混合物98gを得た。
このテトラデセンダイマー水素化混合物(以下、TDD水素化混合物1と略記する。)は、臭素化が0.2gBr2/100g、密度が0.816g/mL、40℃動粘度が13.74mm2/s、100℃動粘度が3.43mm2/s、粘度指数が127であった。
なお、密度は、温度25℃における値である。以下、同様
【0024】
製造例2
1Lオートクレーブにニッケル珪藻土10g、イソオクタン200gをいれ、水素圧力3MPa、140℃にて1時間攪拌した。反応終了後室温まで冷却することにより、触媒の活性化処理を行った。
次に、この触媒に製造例1(1)と同様にして得た1−テトラデセンダイマー100gを加え、水素圧力3MPa、140℃にて1時間攪拌した。反応終了後室温まで冷却した。次いで、反応混合物より触媒をろ過で除き、ロータリーエバポレーターで溶媒(イソオクタン)等を除き油状物からなるテトラデセンダイマー水素化混合物98gを得た。
このテトラデセンダイマー水素化混合物(以下、TDD水素化混合物2と略記する。)は、臭素化が1.3gBr2/100g、密度が0.815g/mL、40℃動粘度が12.66mm2/s、100℃動粘度が3.22mm2/s、粘度指数が122であった。
【0025】
製造例3
圧力計、安全弁付き攪拌式SUS製反応器(容積250mL)に製造例1(1)と同様にして得た1−テトラデセンダイマー80g、溶媒として3,5,5−トリメチルヘキサン20mL、5質量%パラジウム/アルミナ触媒(和光純薬製)0.8gを加え、水素ガスで充分置換した後、水素ガス圧を0.9MPaにし、容器内温度80℃に設定、加熱、攪拌を行った。
圧力が0.6MPaになると、再度0.9MPaに昇圧することを、圧力の低下が認められなくなるまで繰り返した。
反応後、自然濾過にて触媒を除去した。得られた溶液を減圧蒸留して原料、軽質分を除去し釜残より目的物のテトラデセンダイマー水素化混合物80gを得た。MS分析の結果、分子量は394であり、一部392のオレフィンピークが認められた。主成分はC28パラフィンで、一部未水添のC28オレフィンが含まれていた。
このテトラデセンダイマー水素化混合物(以下、TDD水素化混合物3と略記する。)は、臭素化が4.0gBr2/100g、密度が0.816g/mL、40℃動粘度が12.82mm2/s、100℃動粘度が3.23mm2/s、粘度指数が120であった。
【0026】
製造例4
(1)重合
攪拌モーター、温度計を取り付けた1000mL3口フラスコに1−テトラデセン393g(2モル)、活性白土(水沢製)39.3gを計量、投入し、160℃で10時間加熱、攪拌した。得られた反応物をアスピレーターにより減圧濾過し反応溶液を得た。濾別した活性白土にヘキサン200mLを加えて洗浄濾過し、ヘキサン溶液を得た。反応溶液とヘキサン溶液を混合し、溶媒を留去した後、減圧蒸留し1−テトラデセンダイマー(C2856)に相当する留分90gを分取した。MS分析により分子量は392であることを確認した。このテトラデセンダイマー(以下、TDD−4と略記する。)の臭素価は42gBr2/100g、密度は0.820g/mL、40℃動粘度は12.63mm2/s、100℃動粘度は3.26mm2/s、粘度指数は130であった。
(2)水素化
圧力計、安全弁付き攪拌式SUS製反応器(容積250mL)に上記(1)で得た1−テトラデセンダイマー80g、溶媒として3,5,5−トリメチルヘキサン20mL、5質量%パラジウム/アルミナ触媒(和光純薬製)0.8gを加え、水素ガスで充分置換した後、水素ガス圧を0.5MPaにし、容器内温度80℃に設定、加熱、攪拌を行った。
圧力が0.4MPaになると、再度0.5MPaに昇圧することを、圧力の低下が認められなくなるまで繰り返した。
反応後、自然濾過にて触媒を除去した。得られた溶液を減圧蒸留して原料、軽質分を除去し釜残より目的物のテトラデセンダイマー水素化混合物60gを得た。MS分析の結果、分子量は394であり、一部392のオレフィンピークが認められた。主成分はC28パラフィンで、一部未水添のC28オレフィンが含まれていた。
このテトラデセンダイマー水素化混合物(以下、TDD水素化混合物4と略記する。)は、臭素化が9.0gBr2/100g、密度が0.818g/mL、40℃動粘度は12.75mm2/s、100℃動粘度は3.22mm2/s、粘度指数が120であった。
【0027】
製造例5
(1)重合
攪拌モーター、温度計を取り付けた1000mL3口フラスコに1−デセン280g(2モル)、活性白土(水沢製)39.3gを計量、投入し、160℃で10時間加熱、攪拌した。得られた反応物をアスピレーターにより減圧濾過し反応溶液を得た。濾別した活性白土にヘキサン200mLを加えて洗浄濾過し、ヘキサン溶液を得た。反応溶液とヘキサン溶液を混合し、溶媒を留去した後、減圧蒸留し1−デセントリマー(C3060)に相当する留分80gを分取した。MS分析により分子量は420であることを確認した。
(2)水素化
圧力計、安全弁付き攪拌式SUS製反応器(容積250mL)に上記(1)で得た1−デセントリマー80g、5質量%パラジウム/アルミナ触媒(和光純薬製)0.8gを加え、水素ガスで充分置換した後、水素ガス圧を0.9MPaにし、容器内温度100℃に設定、加熱、攪拌を行った。
圧力が0.6MPaになると、再度0.9MPaに昇圧することを、圧力の低下が認められなくなるまで繰り返した。
反応後、自然濾過にて触媒を除去した。得られた溶液を減圧蒸留して原料、軽質分を除去し釜残より目的物のデセントリマー水素化混合物80gを得た。MS分析の結果、分子量は422であり、一部420のオレフィンピークが認められた。主成分はC30パラフィンで、一部未水添のC30オレフィンが含まれていた。
このデセントリマー水素化混合物(以下、DT水素化混合物と略記する。)は、臭素化が2.0gBr2/100g、密度が0.817g/mL、40℃動粘度が14.91mm2/s、100℃動粘度が3.60mm2/s、粘度指数が127であった。
【0028】
比較製造例1
圧力計、安全弁付き攪拌式SUS製反応器(容積250mL)に製造例4(1)と同様にして得た1−テトラデセンダイマー80g、5質量%パラジウム/アルミナ触媒(和光純薬製)0.8gを加え、水素ガスで充分置換した後、水素ガス圧を0.9MPaにし、容器内温度60℃に設定、加熱、攪拌を行った。
圧力が0.6MPaになると、再度0.9MPaに昇圧することを、圧力の低下が認められなくなるまで繰り返した。
反応後、自然濾過にて触媒を除去した。得られた溶液を減圧蒸留して原料、軽質分を除去し釜残よりより目的物のテトラデセンダイマー水素化物80gを得た。MS分析の結果、分子量は394であり、一部392のオレフィンピークが認められた。主成分はC28パラフィンで、一部未水添のC28オレフィンが含まれていた。
このテトラデセンダイマー水素化混合物(以下、TDD水素化混合物5と略記する。)は、臭素化が16.5gBr2/100g、密度が0.818g/mL、40℃動粘度が11.86mm2/s、100℃動粘度が3.08mm2/s、粘度指数が120であった。
【0029】
比較製造例2
1Lオートクレープに製造例4(1)と同様にして得た1−テトラデセンダイマー160g、5質量%パラジウム/アルミナ触媒(和光純薬製)1.6gを加え、水素ガスで充分置換した後、水素ガス圧を3.0MPaにし、容器内温度100℃に設定、加熱、攪拌を行った。
反応後、自然濾過にて触媒を除去した。得られた溶液を減圧蒸留して原料、軽質分を除去し釜残より目的物のテトラデセンダイマー完全水素化物160gを得た。MS分析の結果、分子量は394でありオレフィンのピーク392は認められなかった。
このテトラデセンダイマー完全水素化物(以下、TDD完全水素化物と略記する。)は、臭素化が0.1gBr2/100g未満、密度が0.815g/mL、40℃動粘度が13.42mm2/s、100℃動粘度が3.38mm2/s、粘度指数が126であった。
【0030】
実施例1〜6及び比較例1〜6
第1表に示す組成の潤滑油組成物を調製し、摩擦係数及び熱安定性を求めた。その結果を第1表に示す。
【0031】
【表1】

【0032】
【表2】

【0033】
[注]
・酸化防止剤:オクチルフェニル−α−ナフチルアミン
・リン系摩耗剤:ジオレイルハイドロジェンホスファイト
・銅不活性化剤:1−[ジ−(2−エチルヘキシル)−アミノメチル]ベンゾト リアゾール
・TDD水素化混合物1:製造例1で得られたテトラデセンダイマー水素化混合物
・TDD水素化混合物2:製造例2で得られたテトラデセンダイマー水素化混合物
・TDD水素化混合物3:製造例3で得られたテトラデセンダイマー水素化混合物
・TDD水素化混合物4:製造例4で得られたテトラデセンダイマー水素化混合物
・TDD水素化混合物5:比較製造例1で得られたテトラデセンダイマー水素化混合物
・DT水素化混合物:製造例5で得られたデセントリマー水素化混合物
・PAO:ポリ−α−オレフィン完全水素化物[イノビーン社製、商品名「DURASYN164」]、臭素化0.1gBr2/100g未満、密度0.814g/mL、40℃動粘度17.31mm2/s、100℃動粘度3.94mm2/s、粘度指数125
・TDD完全水素化物:比較製造例2で得られたテトラデセンダイマー完全水素化物
・TDD−4:製造例4(1)で得られたテトラデセンダイマー
【0034】
第1表から、以下に示すことが分かる。
実施例1〜5は、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物が基油と摩擦低減用添加剤を兼備した例であり、実施例6は、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物が基油の半分と摩擦低減用添加剤を兼備すると共に、残りの基油として、市販のポリα−オレフィン完全水素化物(PAO)が加えられた例である。これらはいずれも、基油の臭素価が0.1〜10gBr2/100gの範囲にあり、摩擦係数が低く、かつ良好な熱安定性を有している。
一方、比較例1は、臭素価が10gBr2/100gよりも高いテトラデセンダイマー水素化混合物が基油と摩擦低減用添加剤を兼備した例であり、摩擦係数は低いものの、熱安定性に劣る。
比較例2は、テトラデセンダイマーの完全水素化物とテトラデセンダイマーの混合物を基油として用いた例であって、臭素価は実施例2と同様であるが、熱安定性は良好であるものの、摩擦係数が高い。
比較例3は、臭素価が42gBr2/100gと高いテトラデセンダイマーを基油として用いた例であり、熱安定性が極めて悪い上、摩擦係数が高い。
比較例4は、市販のポリα−オレフィン完全水素化物(PAO)とテトラデセンダイマーの混合物を基油として用いた例であり、熱安定性に劣る上、摩擦係数が高い。
比較例5は、臭素価が0.1gBr2/100g未満のテトラデセンダイマー完全水素化物を基油として用いた例であり、熱安定性は良好であるものの、摩擦係数が高い。
比較例6は、臭素価が0.1gBr2/100g未満である市販のポリα−オレフィン完全水素化物(PAO)を基油として用いた例であり、熱安定性に優れるものの、摩擦係数がかなり高い。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の摩擦低減用添加剤は、オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とし、他の添加剤との相互作用が小さく、優れた摩擦低減効果を発揮すると共に、良好な熱安定性付与効果を有し、かつコスト的にも有利であり、各種の潤滑油用として好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】含油軸受摩擦係数測定装置の概略図である。
【符号の説明】
【0037】
1a、1b 支持軸受け
2 回転シャフト
3 試験軸受
4 分銅
5 モーター
6 ロードセル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンオリゴマーの水素添加処理物中に存在する未水添不飽和炭化水素化合物を有効成分とする摩擦低減用添加剤。
【請求項2】
オレフィンオリゴマーが、炭素数12以上のものである請求項1に記載の摩擦低減用添加剤。
【請求項3】
オレフィンオリゴマーが、炭素数3〜24のオレフィンモノマーを酸触媒を用いて重合してなるものである請求項1又は2に記載の摩擦低減用添加剤。
【請求項4】
炭素数3〜24のオレフィンモノマーが、炭素数6〜16のα−オレフィンモノマーである請求項3に記載の摩擦低減用添加剤。
【請求項5】
基油と、請求項1〜4のいずれかに記載の摩擦低減用添加剤を含み、かつ臭素価が0.1〜10gBr2/100gであることを特徴とする潤滑油組成物。
【請求項6】
臭素価が1〜4gBr2/100gである請求項5に記載の潤滑油組成物。
【請求項7】
オレフィンオリゴマーの水素添加処理物が、基油と摩擦低減用添加剤を兼備してなる請求項5又は6に記載の潤滑油組成物。
【請求項8】
さらに、無灰清浄分散剤、金属系清浄剤、他の潤滑性向上剤、酸化防止剤、防錆剤、金属不活性化剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤及び消泡剤の中から選ばれる少なくとも1種を含む請求項5〜7のいずれかに記載の潤滑油組成物。
【請求項9】
酸触媒の存在下、オレフィンモノマーを重合させて炭素数12以上のオレフィンオリゴマーを得たのち、部分水素添加処理し、未水添不飽和炭化水素化合物を含むオレフィンオリゴマーの水素添加処理物を得ることを特徴とする、請求項1に記載の摩擦低減用添加剤の製造方法。
【請求項10】
オレフィンモノマーが、炭素数3〜24のオレフィンモノマーである請求項9に記載の摩擦低減用添加剤の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−94969(P2008−94969A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−278635(P2006−278635)
【出願日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【出願人】(000183646)出光興産株式会社 (2,069)
【Fターム(参考)】