説明

摩擦減衰ストラット

インナー減衰部材(20)はアウターハウジングに軸方向に係合する。アウターハウジング(10)はテンショナアーム(11)に連結される。移動不能な取付部材(40)に連結された楔部材(30)は、インナー減衰部材の内部に軸方向に係合する。アウターハウジングは楔部材に関して軸方向に移動可能である。バネ(50)はアウターハウジングに係合し、端部キャップ(60)から離れるように付勢する。端部キャップはロッド(70)を有し、ロッドは楔部材の中において軸方向に延び、そしてインナー減衰部材に連結された端部を有する。ロッドは端部キャップからインナー減衰部材にバネ負荷力を伝達し、これによりインナー減衰部材はバネ負荷力に応じてアウターハウジングに対して半径方向に拡張し、これによりインナー減衰部材とアウターハウジングの間に、バネ力に比例したアウターハウジングの移動を減衰させる摩擦力を発生させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は減衰ストラットに関し、特に、移動を減衰させるために負荷バネに協働的に連結された摩擦楔部材を有する減衰ストラットに関する。
【背景技術】
【0002】
ショックアブソーバーおよびストラット、特に摩擦減衰ストラットは、多くのアプリケーションにおいて振動を吸収し、減衰させるために用いられる。アプリケーションは、繰り返す往復運動と振動を受ける車両および機械を含む。一般に、負荷はバネにより吸収され、一方振動は協働する部材の粘性あるいは摩擦運動により減衰される。
【0003】
摩擦減衰ストラットアセンブリはテンショナアセンブリの中に組み入れられてもよい。テンショナは、ベルトの動作時に、動作効率を最大化し、かつノイズと振動を最小化するためにエンジン駆動ベルトに予負荷をかけるために用いられてもよい。
【0004】
従来技術の代表はボーデンステイナー(Bodensteiner)に付与されたヨーロッパ特許第812999B1号(2002年)であり、これは、凸状楔形面を備えた減衰要素を有する二重バネテンションユニットを開示し、凸状楔形面はプランジャ上の同様な面に接触する。
【0005】
減衰ストラットを開示する、2001年9月17日に出願された係属中の米国特許出願第09/954,993も参照される。
【0006】
必要なものは、対応した摩擦減衰を発生するために半径方向に拡張可能な摩擦減衰部材に協働的に連結されたバネを有する減衰ストラットである。本発明はこのニーズに合致する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の特徴は、対応した摩擦減衰を発生するために半径方向に拡張可能な摩擦減衰部材に協働的に連結されたバネを有する減衰ストラットを提供することである。
【0008】
本発明の他の特徴は、本発明の後述の説明と添付画面により示され、明らかにされる。
【0009】
本発明は摩擦減衰ストラットを備える。インナー減衰部材はアウターハウジングに軸方向に係合する。アウターハウジングはテンショナアームに連結される。移動不能な取付部材に連結された楔部材は、インナー減衰部材の内部に軸方向に係合する。アウターハウジングは楔部材に関して軸方向に移動可能である。バネはアウターハウジングに係合し、端部キャップから離れるように付勢する。端部キャップはロッドを有し、ロッドは楔部材の中において軸方向に延び、そしてインナー減衰部材に連結された端部を有する。ロッドは端部キャップからインナー減衰部材にバネ負荷力を伝達し、これによりインナー減衰部材はバネ負荷力に応じてアウターハウジングに対して半径方向に拡張し、これによりインナー減衰部材とアウターハウジングの間に、バネ力に比例したアウターハウジングの移動を減衰させる摩擦力を発生させる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
明細書に組み込まれて明細書の一部を構成する添付図面は、本発明の好ましい実施形態を示し、記述とともに、本発明の原理を説明するために役立つ。
【0011】
図1はストラットの断面斜視図である。本発明のストラット100はインナー減衰部材20を備える。インナー減衰部材20は外面21を備える。外面21は所定の摩擦係数を有する。インナー減衰部材は、例えばPTFEのようなプラスチックを備えてもよい。インナー減衰部材は、従来知られている他の様々な適切な摩擦部材、あるいは摩擦部材の組み合わせであってもよい。
【0012】
インナー減衰部材20はアウターハウジング10に対して同軸的に係合する。アウターハウジング10は実質的に円筒形であり、内面12を備える。アウターハウジング10はテンショナアーム11に連結可能である。図4参照。
【0013】
内面12は所定の摩擦係数を有し、例えばPTFEのようなプラスチック材料を備えてもよい。内面は従来知られている他の様々な適切な摩擦材料、あるいは摩擦材料の組み合わせであってもよい。
【0014】
内面12は外面21に摺動的かつ摩擦的に係合する。内面12および外面21は協働的な輪郭を有し、これは、例えば円形、星形、ひだ(プリーツ)付き、あるいは摺動係合になじむ他の形状である。図1に示される例の形状はひだ付きである。
【0015】
楔部材30はインナー減衰部材20のインナー円錐面22に同軸的に係合する。楔部材30は実質的に円筒形で、アウターハウジング10に対して同軸的に整列する。楔部材30の端部32は不動取付部材40に固定され、これにより楔部材30はアウターハウジング10に関して移動不能になる。取付部材40は、ねじ付き締め具41により、エンジンブロック(図示せず)のような面に取付けられる。ダストキャップ13および14は、内面12および外面21の汚染を防止する。
【0016】
楔部材30の端部31は、インナー円錐部221に協働的に係合する先細すなわち円錐形状を有する。端部31は円錐部221の内部に移動可能に係合する。
【0017】
トーションバネ50はアウターハウジング10と端部キャップ60に係合する。アーム11はアウターハウジング10に固定される。バネ50は、ストラットがその一部であるベルトシステムのベルト(図示せず)に負荷を与える。図6参照。バネ50は、楔部材30および端部キャップ60から軸方向に離れるようにアウターハウジング10を付勢するように作用する。端部キャップ60はロッド70に連結される。ロッド70は楔部材30のボアを通って同軸的に延びる。ロッド70は、端部71においてインナー減衰部材20に連結される。端部71は、インナー減衰部材20を端部71と先細端部31の間に拘束する。ロッド70と端部キャップ60は、楔部材30を介して取付部材40に移動自在に係合する。リム61、端部キャップ60、およびロッド70に作用するバネ50は、端部31に対してインナー減衰部材20を押圧する。
【0018】
インナー減衰部材20、端部71、およびロッド70は、鋳造される単一の部材であってもよい。その単一の部材は楔部材30に簡単に挿入されて貫通し、組み立て工程において、簡単に圧入され、あるいは端部キャップ60に連結される。
【0019】
動作中、ベルト負荷がプーリ201に架け回されたベルトによって部材11に付与される。図6参照。ベルト負荷は、リム61および端部キャップ60においてバネ負荷力を付与するバネ50の圧縮荷重の結果である。トーションバネの特性は従来公知である。
【0020】
ロッド70は、インナー減衰部材20が楔部材の端部31に対して軸方向に圧縮されるように、端部キャップ60からインナー減衰部材20に向かってバネ負荷力を伝達する。インナー減衰部材20が端部31に対して圧縮されるので、インナー減衰部材はアウターハウジングの内面12に対して径方向に広がり、インナー減衰部材の外面21とアウターハウジングの内面12の間に摩擦力を発生させる。外面21と内面12の間に発生した摩擦力はアウターハウジングの動きを減衰させる。
【0021】
摩擦減衰力は、バネ力すなわちベルト負荷に比例する。これは、インナー減衰部材の半径方向の拡張の程度および、これによる内面12と外面21の間の摩擦力の大きさが、ロッド70を介してインナー減衰部材20に付与されるバネ負荷力に比例するからである。ベルト負荷とバネ負荷力が増加すると、インナー減衰部材20に作用する軸方向圧縮力は同じ量だけ増加する。これは、延いては外面21により内面12に及ぼされる垂直力(N)を増加させるインナー減衰部材の半径方向の拡張を増加させる。図3参照。結果として生じる摩擦力したがって減衰力は、内面および外面の摩擦係数と垂直力(N)との積である。バネ力つまりベルト負荷が増加すると、アウターハウジングに作用する減衰力が増加する。バネ力つまりベルト負荷が減少すると、アウターハウジングに作用する減衰力が減少する。
【0022】
図2はストラットの端部の斜視図である。図2では、端部キャップ60は除かれている。リム61はバネ50の端部を受ける。ロッド70の端部は楔部材30の端部32から突出して示されている。端部32は取付け部材40に固定して連結される。
【0023】
ロッド70、端部キャップ60(図1参照)およびリム61は、外面21が使用により摩耗すると、方向Mにおいて軸方向に移動可能になる。つまり外面21が内面12との摩擦係合により摩耗したとき、ロッド70は、外面21の摩耗の量に対応して、方向Mにおいてわずかに移動する。ロッド70の移動量は約5mmまでの範囲にある。このようなロッド70の移動は、ストラットの負荷耐久性能にあまり影響しない。
【0024】
図3はストラットの詳細部分の断面図である。初めて使用されるとき、クリアランス(C)がリム61と取付部材40の間に存在する。端部キャップ60は実際、取付部材40の底部であってもよい。インナー減衰部材20が摩耗するにしたがって、クリアランス(C)は徐々に減少する。カラー62は、端部キャップ60とロッド70を、楔部材30の端部32の中に適切に整列させて維持する。
【0025】
図4はインナー減衰部材の平面図である。インナー減衰部材20は半径方向に延びる複数のデルタ形状部材251を備える。外面21(図1参照)は、内面12の協働面に係合する面214を備える。スロット250は、インナー減衰部材20の実質的部分にわたって軸方向および半径方向に延びる。スロット250は、楔部材30の端部31に押し付けられたとき、インナー減衰部材20が半径方向に広がることを許容する。
【0026】
図5は、図4における5−5線でのインナー減衰部材の横断面図である。円錐部221は楔部材30の端部31に係合する。ロッド70は穴252を貫通して延びる。円錐部221は約5°から50°の範囲の角度αを有する。スロット250は、インナー減衰部材において半径方向および軸方向に延び、インナー減衰部材20の半径方向の拡張を容易にする。
【0027】
図6はテンショナとともに使用されるストラットの斜視図である。アーム11の端部は、ピボット203においてテンショナアーム204に回動自在に連結される。アーム204は、ピボット202においてベース200に回動自在に連結される。ベース200は、例えば、図示しないエンジンブロックのようないずれかの面に取付け可能である。プーリ201はアーム204に軸支される。プーリ201は、図6に示される平らな断面形状のように、いかなる所望のベルト受け面を備えていてもよい。ベルトドライブシステム(図示せず)におけるベルトは、典型的にはプーリ201の周りに架け回される。本発明のストラットはベルトおよびテンショナアームの振動を減衰させると同時に、ベルトに負荷をかける。
【0028】
図7はインナー減衰部材の平面図である。スロット250は、円錐部221から径方向に延び、インナー減衰部材の半径方向の拡張を許容する。
【0029】
本発明の形態が記載されたが、ここに記載された発明の精神と範囲から逸脱しない範囲において、構成と関連部分に変形が施されることは当業者にとって自明である。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】ストラットの断面斜視図である。
【図2】ストラットの端部の斜視図である。
【図3】ストラットの詳細部分の断面図である。
【図4】インナー減衰部材の平面図である。
【図5】図4の5−5線におけるインナー減衰部材の横断面図である。
【図6】テンショナとともに用いられるストラットの斜視図である。
【図7】インナー減衰部材の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面を有する第1部材と、
前記第1部材に関して移動不能に固定された楔部材とを備え、
前記楔部材は先細の端部を有し、
前記内面と前記先細の端部に摩擦係合し、半径方向に拡張可能な第2部材と、
前記第1部材および端部部材の間に係合するバネとを備え、
前記端部部材は前記第2部材に連結され、これによりバネ力が前記内面に対して前記第2部材を半径方向に拡張させ、これにより第1部材の移動を対応して減衰させる
ストラット。
【請求項2】
前記第1部材が実質的に円筒形である請求項1に記載のストラット。
【請求項3】
前記内面がひだ付きの形状を有する請求項1に記載のストラット。
【請求項4】
前記第2部材がひだ付きの形状を有し、前記内面に協働的に係合する請求項3に記載のストラット。
【請求項5】
前記端部部材を前記第2部材に連結するためのロッドをさらに備え、
前記ロッドが前記楔部材の中に同軸に配置され、
前記ロッドが前記楔部材に関して移動可能である
請求項1に記載のストラット。
【請求項6】
前記第2部材がさらに、少なくとも1つのスロットを備え、これにより前記第2部材が半径方向に拡張可能である請求項1に記載のストラット。
【請求項7】
内面を有する部材と、
前記内面および先細部材に同時に摩擦係合する減衰部材と、
前記減衰部材にバネ力を及ぼし、それにより前記減衰部材が半径方向に広がって部材の移動を減衰させるバネを備える
ストラット。
【請求項8】
前記先細部材が減衰部材に関して移動不能であり、
前記バネが前記部材と前記減衰部材に連結されている
請求項7に記載のストラット。
【請求項9】
前記内面がひだ付きの形状を有する請求項7に記載のストラット。
【請求項10】
前記減衰部材がさらに、少なくとも1つのスロットを備える請求項7に記載のストラット。
【請求項11】
バネと、
内部摩擦面を有する移動可能な円筒状第1部材と、
先細部材に係合する減衰部材であって、バネ力によって前記先細部材に向かって付勢されることにより前記内部摩擦面に対して半径方向に広がり、それにより第1部材の移動を減衰させる減衰部材と、
前記減衰部材に前記バネを連結するための手段とを備える
ストラット。
【請求項12】
前記内部摩擦面がひだ付き形状を有する請求項11に記載のストラット。
【請求項13】
前記先細部材が前記減衰部材に関して移動不能である請求項11に記載のストラット。
【請求項14】
前記減衰部材に前記バネを連結するための手段が前記先細部材と同軸的である請求項11に記載のストラット。
【請求項15】
前記減衰部材が前記第1部材と同軸的である請求項11に記載のストラット。
【請求項16】
前記バネが前記第1部材に連結される請求項11に記載のストラット。
【請求項17】
前記減衰部材がさらに、少なくとも1つのスロットを備える請求項11に記載のストラット。
【請求項18】
内面を有する第1部材と、
先細の端部を有する固定部材と、
前記内面に摩擦係合し、かつ前記先細の端部に協働的に結合する減衰部材であって、前記先細の端部への移動によって半径方向に拡張可能である減衰部材と、
前記減衰部材と前記第1部材の間に連結され、前記第1部材の軸方向の移動に抵抗する付勢部材であって、前記減衰部材を前記先細の端部に向かって付勢し、これにより前記減衰部材が第1部材の移動に対応して減衰する付勢部材とを備える
ストラット。
【請求項19】
前記減衰部材がさらに、少なくとも1つのスロットを備える請求項18に記載のストラット。
【請求項20】
取付面に連結可能な先細部材と、
前記先細部材に関して移動可能であり、かつ同軸的に整列した円筒部材と、
前記先細部材に係合する減衰部材であって、前記円筒部材に摩擦係合し、前記先細部材に向かって押圧されるとき半径方向に拡張可能な減衰部材と、
前記円筒部材を前記先細部材から離れるように軸方向に付勢するバネであって、前記先細部材に向かって前記減衰部材を押圧することにより、前記円筒部材の移動が対応して減衰するバネとを備える
減衰ストラット。
【請求項21】
前記減衰部材がさらに、少なくとも1つのスロットを備える請求項20に記載のストラット。
【請求項22】
前記減衰部材が、前記先細部材に係合するための円錐部をさらに備える請求項20に記載のストラット。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2006−507460(P2006−507460A)
【公表日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−555439(P2004−555439)
【出願日】平成15年11月13日(2003.11.13)
【国際出願番号】PCT/US2003/036242
【国際公開番号】WO2004/048801
【国際公開日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(504005091)ザ ゲイツ コーポレイション (103)
【Fターム(参考)】