説明

撥水はつ油防汚剤組成物およびこれを用いて処理された物品

【課題】撥水はつ油性および防汚性の両方に優れるとともに、化合物中のR基が短鎖であり環境への負荷が低減された、撥水はつ油防汚剤組成物を提供する。
【解決手段】単量体(a)単位、単量体(b)単位と、単量体(c)単位を有し、フッ素原子含量が15質量%以上45質量%未満である重合体(A);単量体(a)単位、単量体(b)単位、単量体(c)単位を有し、フッ素原子含量が45質量%以上である重合体(B);単量体(a)単位、単量体(d)単位を有する重合体(C)を含有し、質量比((A)/(B))が10/90〜95/5、質量比({(A)+(B)}/(C))が5/95〜95/5である撥水はつ油防汚剤組成物。単量体(a):炭素数4〜6のR基を有する単量体。単量体(b):炭素数が12以上のアルキル基を有する単量体。単量体(c):塩化ビニルまたは塩化ビニリデン。単量体(d):親水性基を有する単量体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撥水はつ油防汚剤組成物、および該撥水はつ油防汚剤組成物を用いて処理された物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば衣料の撥水はつ油加工、防汚加工の加工剤として、目的に応じた種々の組成物が提供されている。作業着のようなワークウェア、レンタルシーツのようなリネン等では汚れがつきにくくするための撥水はつ油性と、一旦付着した汚れが拭き洗いや洗濯等で簡単に落ちやすくする防汚性(ソイルリリース性、SR性ともいう)を兼ね備えた撥水はつ油防汚剤組成物がよく用いられる。
例えば、下記特許文献1には、撥水はつ油性に優れ良好な防汚性を付与するフルオロアルキル化合物と、撥水はつ油性を有するとともに、付着した汚れを洗濯処理等により除去し易くする親水基含有フルオロアルキル化合物を混合して用いる方法が記載されている。
【特許文献1】特開昭60−104576号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来用いられているフルオロアルキル化合物におけるポリフルオロアルキル基(以下、ポリフルオロアルキル基をR基と記すこともある。)は、主に炭素数が8以上である。
しかし最近、EPA(米国環境保護庁)によって、炭素数が8以上のR基を有する化合物は、環境、生体中で分解し、分解生成物が蓄積する点、すなわち環境負荷が高い点が指摘されている。そのため、化合物中のR基を炭素数6以下の短鎖とすることが推奨されており、R基が短鎖でありながら、撥水はつ油性および防汚性の両方の性能に優れた撥水はつ油防汚剤組成物が要求されている。
【0004】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、撥水はつ油性および防汚性の両方に優れるとともに、化合物中のR基が短鎖であり環境への負荷が低減された、撥水はつ油防汚剤組成物を提供することを目的とする。
また本発明は、該撥水はつ油防汚剤組成物を用いて処理された物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために本発明の撥水はつ油防汚剤組成物は、下記単量体(a)に基づく構成単位と、下記単量体(b)に基づく構成単位と、下記単量体(c)に基づく構成単位とを有し、重合体(A)(100質量%)中のフッ素原子の割合が15質量%以上45質量%未満である重合体(A);下記単量体(a)に基づく構成単位と、下記単量体(b)に基づく構成単位と、下記単量体(c)に基づく構成単位とを有し、重合体(B)(100質量%)中のフッ素原子の割合が45質量%以上である重合体(B);および下記単量体(a)に基づく構成単位と、下記単量体(d)に基づく構成単位を有する重合体(C)を含有し、前記重合体(A)と前記重合体(B)との質量比((A)/(B))が、10/90〜95/5であり、かつ前記重合体(A)および前記重合体(B)の合計{(A)+(B)}と、前記重合体(C)との質量比({(A)+(B)}/(C))が、5/95〜95/5であることを特徴とする撥水はつ油防汚剤組成物。
単量体(a):フッ素原子が結合している炭素原子の数が4〜6のポリフルオロアルキル基(ただし、該ポリフルオロアルキル基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)を有する単量体。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が12以上のアルキル基を有する単量体。
単量体(c):塩化ビニルまたは塩化ビニリデン。
単量体(d):ポリフルオロアルキル基を有さず、アルキレンオキシド基、アミノ基、ヒドロキシ基、アクリルアミド基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン基からなる群から選ばれる一種以上の親水性基を有する単量体。
【0006】
前記重合体(A)、前記重合体(B)、および前記重合体(C)のうち少なくとも1つの重合体が、下記単量体(e)に基づく構成単位をさらに有することが好ましい。
単量体(e):ポリフルオロアルキル基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体。
【0007】
前記重合体(C)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアルキレンオキシド基を有する単量体(d’)に基づく構成単位を有することが好ましい。
前記単量体(d’)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアルキレンオキシド基を有し、該アルキレンオキシド基がエチレンオキシド基である単量体(d1)であって、下記式(2)で表わされる化合物、または該アルキレンオキシド基が同側鎖中に存在するエチレンオキシド基とテトラメチレンオキシドである単量体(d2)であって、下記式(3)で表される化合物であることが好ましい。
CH=CR−G−(CO)q1−R…(2)。
(式中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、q1は1〜50の整数を示す。Gは−COO(CHr1−または−COO(CHt1−NHCOO−(r1は0〜4の整数、t1は1〜4の整数。)を示す。)
CH=CR−G−(CO)q2−(CO)q3−R…(3)。
(式中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、q2、q3は1〜50の整数を示す。Gは−COO(CHr2−または−COO(CHt2−NHCOO−(r2は0〜4の整数、t2は1〜4の整数。)を示す。)
前記重合体(C)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアミノ基を有する単量体(d3)に基づく構成単位を有することが好ましい。
前記重合体(C)が、主鎖末端にアニオン性基を有すること好ましい。
【0008】
本発明の撥水はつ油防汚剤組成物は、さらに、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤およびオキサゾリン系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含有することが好ましい。
項に記載の撥水はつ油防汚剤組成物を用いて処理された物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明の撥水はつ油防汚剤組成物は、物品の表面に優れた撥水はつ油性および防汚性を付与できるとともに、化合物中のR基が短鎖であり環境への負荷が低い。
本発明の物品は、環境への負荷が低い撥水はつ油防汚剤組成物で処理されており、表面の撥水はつ油性および防汚性に優れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本明細書においては、式(1)で表される化合物を化合物(1)と記す。他の式で表される化合物も同様に記す。また、本明細書においては、式(2)で表される基を基(2)と記す。他の式で表される基も同様に記す。
本明細書における(メタ)アクリレートは、アクリレートまたはメタクリレートを意味する。
本明細書における単量体は、重合性不飽和基を有する化合物を意味する。
本明細書におけるR基は、アルキル基の水素原子の一部またはすべてがフッ素原子に置換された基であり、R基は、アルキル基の水素原子のすべてがフッ素原子に置換された基である。
【0011】
本発明において、重合体(A)および(B)それぞれにおけるフッ素原子の割合は、分析化学Vol.26、No.10、第721〜723頁、「含フッ素有機化合物のフッ素の定量」(1977年、社団法人日本分析化学会発行)に記載されている石英管酸素燃焼ガス捕集法に基づいた、以下の方法で測定して得られる値である。
図1は、本測定方法に用いる分解・吸収装置を模式的に示した概略構成図である。図中符号1は酸素ボンベ、2はフローメーター、3は水、3aは水蒸気供給フラスコ、4は水蒸気供給炉、5は温度計、7は石英管、8はサンプルボート、9aはサンプル炉、9bは分解炉、10はシリカウール、11は冷却器、12は吸収用三角フラスコをそれぞれ示す。
この図の装置において、試料はサンプル炉9aで燃焼分解され、生じたフッ素はフッ化物としてシリカウール10と反応する。それが、水蒸気供給炉4により加熱された水3から供給される水蒸気でピロヒドロリシスによって追い出され、吸収用三角フラスコ12内の水に捕集される。
【0012】
まず、試料(重合体)の10mgをサンプルボート8に量りとり、これを石英管7内のサンプル炉9aの位置に挿入する。サンプルボートしては白金ボートを用いる。このときサンプル炉9aは室温とする。
また、吸収用三角フラスコ12に蒸留水50mlを入れセットする。水蒸気供給フラスコ3a内に水3を入れてセットし、水蒸気供給フラスコ3a内の温度計5が200℃となるように水蒸気供給炉4で加熱する。分解炉9bを1140℃に設定する。
次いで、酸素ボンベ1から、酸素を20ml/分の流量で供給しつつ、サンプル炉9aを室温から20分で600℃に昇温し、600℃で30分間保持する。
その後、吸収用三角フラスコ12内の水(測定水溶液)について、以下のF電極法により定量を行う。
【0013】
定量には、フッ化物イオン電極(HORIBA社製、製品名:#6561−10C F)およびイオン/PHメーター(HORIBA社製、製品名:F−23)を使用する。
予めフッ化物イオン標準溶液(関東化学社製、化学分析用、F:1000ppm)を適宜希釈した希釈液について測定を行い、検量線を作成しておく。
測定水溶液およびフッ化物イオン標準水溶液は同量のTISAB水溶液(関東化学社製、フッ素イオン電極用)を添加してイオン強度を調整し、上記フッ化物イオン電極およびイオン/PHメーターにて測定する。この方法でのフルオロ安息香酸のF回収率は84%である。上記フッ化物イオン電極およびイオン/PHメーターの測定値を、上記フルオロ安息香酸の回収率で補正して、フッ素原子の割合を算出する。
【0014】
<撥水はつ油防汚剤組成物>
本発明の撥水はつ油剤組成物は、重合体(A)、重合体(B)、および重合体(C)を必須成分として含む。
【0015】
<重合体(A)>
重合体(A)は、単量体(a)に基づく構成単位と、単量体(b)に基づく構成単位と、単量体(c)に基づく構成単位を有する共重合体である。重合体(A)は、後述の単量体(d)に基づく構成単位を有しない。
重合体(A)(100質量%)中のフッ素原子の割合は、15質量%以上45質量%未満である。重合体(A)(100質量%)中のフッ素原子の割合は、25質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましい。
重合体(A)(100質量%)中のフッ素原子の割合は、重合体(A)の製造に用いる単量体の組成によって調整できる。
【0016】
[単量体(a)]
単量体(a)は、フッ素原子が結合している炭素原子の数が4〜6のR基(ただし、該R基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)を有する単量体である。
単量体(a)としては、たとえば、化合物(1)が挙げられる。
(Z−Y)X ・・・(1)。
【0017】
Zは、炭素数が4〜6のR基(ただし、該R基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)、または基(2)である。
2i+1O(CFXCFO)CFX− ・・・(2)。
ただし、iは、1〜6の整数であり、jは、0〜10の整数であり、XおよびXは、それぞれ独立にフッ素原子またはトリフルオロメチル基である。
基としては、R基が好ましい。R基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよく、直鎖状が好ましい。
Zとしては、下記の基が挙げられる。
F(CF−、
F(CF−、
F(CF−、
(CFCF(CF−、
2k+1O[CF(CF)CFO]−CF(CF)−等。
ただし、kは、1〜6の整数であり、hは0〜10の整数である。
【0018】
Yは、2価有機基または単結合である。なお、式(1)において、ZとYの境界は、Zの炭素数が最も少なくなるように定める。
2価有機基としては、アルキレン基が好ましい。アルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。アルキレン基は、−O−、−NH−、−CO−、−SO−、−S−、−CD=CD−(ただし、D、Dは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基である。)等を有していてもよい。
【0019】
Yとしては、下記の基が挙げられる。
−CH−、
−CHCH
−(CH−、
−CHCHCH(CH)−、
−CH=CH−CH−等。
【0020】
nは、1または2である。
Xは、nが1の場合は、基(3−1)〜基(3−5)のいずれかであり、nが2の場合は、基(4−1)〜基(4−4)のいずれかである。
【0021】
−CR=CH ・・・(3−1)、
−COOCR=CH ・・・(3−2)、
−OCOCR=CH ・・・(3−3)、
−OCH−φ−CR=CH ・・・(3−4)、
−OCH=CH ・・・(3−5)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、φはフェニレン基である。
【0022】
−CH[−(CHCR=CH]− ・・・(4−1)、
−CH[−(CHCOOCR=CH]− ・・・(4−2)、
−CH[−(CHOCOCR=CH]− ・・・(4−3)、
−OCOCH=CHCOO− ・・・(4−4)。
ただし、Rは、水素原子、メチル基またはハロゲン原子であり、mは0〜4の整数である。
【0023】
化合物(1)としては、他の単量体との重合性、重合体の皮膜の柔軟性、物品に対する重合体の接着性、媒体に対する溶解性、乳化重合の容易性等の点から、炭素数が4〜6のR基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
化合物(1)としては、Zが炭素数4〜6のR基であり、Yが炭素数1〜4のアルキレン基であり、nが1であり、Xが基(3−3)である化合物が好ましい。
【0024】
[単量体(b)]
単量体(b)は、R基を有さず、炭素数が12以上のアルキル基を有する単量体である。単量体(b)は親水性基を有さない。アルキル基の炭素数が12以上であれば、撥水性および基材への密着性が向上する。
単量体(b)としては、(メタ)アクリレート類、ビニルエーテル類、またはビニルエステル類が挙げられる。
【0025】
単量体(b)としては、炭素数が12〜36のアルキル基を有する単量体が好ましく、炭素数が12〜24のアルキル基を有する(メタ)アクリレートがより好ましく、ステアリル(メタ)アクリレートまたはベヘニル(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0026】
[単量体(c)]
単量体(c)は、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンである。単量体(c)としていずれか一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。単量体(c)は、良好なはつ油性、洗濯耐久性および防汚性に寄与する。
【0027】
[単量体(e)]
重合体(A)は、さらに、R基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体(e)を有してもよい。
重合体(A)が単量体(e)に基づく構成単位を有することにより、洗濯耐久性がより向上する。
後述の単量体(d)に含まれるものは、単量体(e)に含まれないものとする。
【0028】
架橋しうる官能基としては、重合体内の自己架橋構造、ある重合体と別の重合体との分子間の架橋構造、または基材に存在する反応基との架橋構造を形成できる官能基が好ましい。
該官能基としては、イソシアネート基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基、アルコキシメチルアミド基、エポキシ基、オキサゾリン基、カルボジイミド基等が好ましく、エポキシ基、ブロックドイソシアネート基、アルコキシシリル基またはアルコキシメチルアミド基が特に好ましい。
【0029】
単量体(e)としては、(メタ)アクリレート類、アクリルアミド類、ビニルエーテル類、またはビニルエステル類が好ましい。
単量体(e)としては、下記の化合物が挙げられる。
【0030】
2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレート、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレート、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレート、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体。
【0031】
3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、3−イソシアナトプロピル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの2−ブタノンオキシム付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートの3−メチルピラゾール付加体、4−イソシアナトブチル(メタ)アクリレートのε−カプロラクタム付加体。
【0032】
メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、エトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、トリメトキシビニルシラン、ビニルトリメトキシシラン。
グリシジル(メタ)アクリレート、2−ビニル−2−オキサゾリン、2−ビニル−4−メチル−(2−ビニルオキサゾリン)。
【0033】
トリ(メタ)アリルイソシアヌレート(T(M)AIC、日本化成社製)、トリアリルシアヌレート(TAC、日本化成社製)、3−(メチルエチルケトオキシム)イソシアナトメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシル(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)シアナート(テックコートHE−6P、京絹化成社製)。
【0034】
単量体(e)としては、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−イソシアナトエチル(メタ)アクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体、グリシジルメタクリレート、テックコートHE−6P(京絹化成社製)が好ましい。
【0035】
[その他の単量体(f)]
重合体(A)は、単量体(a)〜(e)を除くその他の単量体(f)に基づく構成単位を有していもてよい。単量体(f)はフッ素原子が結合している炭素原子の数が7以上のポリフルオロアルキル基を有しないことが好ましい。
単量体(f)としては、下記の化合物が挙げられる。
メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、ブテン、イソプレン、ブタジエン、エチレン、プロピレン、ビニルエチレン、ペンテン、エチル−2−プロピレン、ブチルエチレン、シクロヘキシルプロピルエチレン、デシルエチレン、ドデシルエチレン、ヘキセン、イソヘキシルエチレン、ネオペンチルエチレン、(1,2−ジエトキシカルボニル)エチレン、(1,2−ジプロポキシカルボニル)エチレン、メトキシエチレン、エトキシエチレン、ブトキシエチレン、2−メトキシプロピレン、ペンチルオキシエチレン、シクロペンタノイルオキシエチレン、シクロペンチルアセトキシエチレン、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ヘキシルスチレン、オクチルスチレン、ノニルスチレン、クロロプレン、テトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン。
【0036】
ビニルアルキルエーテル、ハロゲン化アルキルビニルエーテル、ビニルアルキルケトン、ベンジル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、デシルメタクリレート、シクロドデシルアクリレート、3−エトキシプロピルアクリレート、メトキシ−ブチルアクリレート、2−エチルブチルアクリレート、1、3−ジメチルブチルアクリレート、2−メチルペンチルアクリレート。
【0037】
[重合体(A)の製造方法]
重合体(A)は、たとえば、下記の方法で製造できる。
界面活性剤、重合開始剤の存在下、媒体中にて単量体(a)〜(c)および必要に応じて単量体(e)および/または(f)を含む単量体成分(X)を重合して重合体(A)の溶液、分散液またはエマルションを得る方法。
重合法としては、分散重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。また、一括重合であってもよく、多段重合であってもよい。
【0038】
重合体(A)の製造方法としては、界面活性剤、重合開始剤の存在下、水系媒体中で単量体成分(X)を乳化重合して重合体(A)のエマルションを得る方法が好ましい。
重合体(A)の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体、界面活性剤および水系媒体からなる混合物を前乳化することが好ましい。たとえば、単量体、界面活性剤および水系媒体からなる混合物を、ホモミキサーまたは高圧乳化機で混合分散する。
【0039】
重合開始剤としては、熱重合開始剤、光重合開始剤、放射線重合開始剤、ラジカル重合開始剤、イオン性重合開始剤等が挙げられ、水溶性または油溶性のラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系重合開始剤、レドックス系開始剤等の汎用の開始剤が、重合温度に応じて用いられる。ラジカル重合開始剤としては、アゾ系化合物が特に好ましく、水系媒体中で重合を行う場合、アゾ系化合物の塩がより好ましい。重合温度は20〜150℃が好ましい。
重合開始剤の添加量は、単量体成分(X)100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0040】
単量体成分(X)の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調節剤としては、芳香族系化合物、メルカプトアルコール類、メルカプトカルボン酸類またはメルカプタン類が好ましく、メルカプトカルボン酸類またはアルキルメルカプタン類が特に好ましい。分子量調整剤としては、メルカプトエタノール、メルカプトプロピオン酸、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタン、α−メチルスチレンダイマ(CH=C(Ph)CHC(CHPh、Phはフェニル基である。)等が挙げられる。
分子量調節剤の添加量は、単量体成分(X)100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0041】
単量体(a)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(X)(100質量%)中、30〜80質量%が好ましく、40〜80質量%がより好ましい。
単量体(b)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(X)(100質量%)中、2〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
単量体(c)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(X)(100質量%)中、2〜30質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。
単量体(e)の割合は、撥水はつ油性および洗濯耐久性の点から、単量体成分(X)(100質量%)中、0〜20質量%が好ましく、0.1〜10質量%がより好ましい。
【0042】
重合体(A)のゲルパーミッションクロマトグラフィー(GPC)による数平均分子量は5000〜150000が好ましく、8000〜40000がより好ましい。質量平均分子量は10000〜300000が好ましく、15000〜80000がより好ましい。
重合体(A)の分子量が上記範囲の上限値以下であると分散安定性に優れ、下限値以上であると基材との密着性に優れる。
【0043】
<重合体(B)>
重合体(B)は、単量体(a)に基づく構成単位と、単量体(b)に基づく構成単位と、単量体(c)に基づく構成単位を有する共重合体である。重合体(B)は、後述の単量体(d)に基づく構成単位を有しない。
重合体(B)(100質量%)中のフッ素原子の割合は45質量%以上であり、49質量%以上がより好ましい。また、重合体(B)(100質量%)中のフッ素原子の割合の上限は、60質量%以下が好ましく、58質量%以下がより好ましい。
重合体(B)(100質量%)中のフッ素原子の割合は、重合体(B)の製造に用いる単量体の組成によって調整できる。
【0044】
[単量体(a)]
単量体(a)は、フッ素原子が結合している炭素原子の数が4〜6のR基(ただし、該R基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)を有する単量体である。
単量体(a)としては、重合体(A)を構成する単量体(a)と同様のもの(たとえば、化合物(1)等。)が挙げられる。
【0045】
化合物(1)としては、他の単量体との重合性、重合体の皮膜の柔軟性、物品に対する重合体の接着性、媒体に対する溶解性、乳化重合の容易性等の点から、炭素数が4〜6のR基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
化合物(1)としては、Zが炭素数4〜6のR基であり、Yが炭素数1〜4のアルキレン基であり、nが1であり、Xが基(3−3)である化合物が好ましい。
【0046】
[単量体(b)]
単量体(b)は、R基を有さず、炭素数が12以上のアルキル基を有する単量体である。単量体(b)は良好な撥水性および摩擦耐久性に寄与する。単量体(b)は親水性基を有さない。
単量体(b)としては、重合体(A)を構成する単量体(b)と同様のものが挙げられる。
【0047】
[単量体(c)]
単量体(c)は、塩化ビニルまたは塩化ビニリデンである。単量体(c)としていずれか一方を用いてもよく、両方を用いてもよい。単量体(c)は、良好なはつ油性、洗濯耐久性および防汚性に寄与する。
【0048】
[単量体(e)]
重合体(B)は、さらに、R基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体(e)を有してもよい。重合体(B)が単量体(e)に基づく構成単位を有することにより、洗濯耐久性がより向上する。
単量体(e)としては、重合体(A)を構成する単量体(e)と同様のものが挙げられる。
【0049】
[その他の単量体(f)]
重合体(B)は、単量体(a)〜(e)を除くその他の単量体(f)に基づく構成単位を有していもてよい。単量体(f)としては、重合体(A)における単量体(f)と同様のものが挙げられる。
【0050】
[重合体(B)の製造方法]
重合体(B)は、たとえば、下記の方法で製造できる。
界面活性剤、重合開始剤の存在下、媒体中にて単量体(a)〜(c)および必要に応じて単量体(e)および/または(f)を含む単量体成分(Y)を重合して重合体(B)の溶液、分散液またはエマルションを得る方法。
重合法としては、分散重合法、乳化重合法、懸濁重合法等が挙げられる。また、一括重合であってもよく、多段重合であってもよい。
【0051】
重合体(B)の製造方法としては、界面活性剤、重合開始剤の存在下、水系媒体中で単量体成分(Y)を乳化重合して重合体(B)のエマルションを得る方法が好ましい。
重合体(B)の収率が向上する点から、乳化重合の前に、単量体、界面活性剤および水系媒体からなる混合物を前乳化することが好ましい。たとえば、単量体、界面活性剤および水系媒体からなる混合物を、ホモミキサーまたは高圧乳化機で混合分散する。
【0052】
重合開始剤としては、重合体(A)の製造に用いたものと同様のものが挙げられる。
重合開始剤の添加量は、単量体成分(Y)100質量部に対して、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0053】
単量体成分(Y)の重合の際には、分子量調整剤を用いてもよい。分子量調節剤としては、重合体(A)の製造に用いたものと同様のものが挙げられる。
分子量調節剤の添加量は、単量体成分(Y)100質量部に対して、0.01〜5質量部が好ましく、0.1〜3質量部がより好ましい。
【0054】
単量体(a)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(Y)(100質量%)中、70〜100質量%が好ましく、75〜100質量%がより好ましい。
単量体(b)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(Y)(100質量%)中、1〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
単量体(c)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(Y)(100質量%)中、1〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
単量体(e)の割合は、撥水はつ油性および洗濯耐久性の点から、単量体成分(Y)(100質量%)中、0〜10質量%が好ましく、0〜5質量%がより好ましい。
【0055】
重合体(B)のGPCによる数平均分子量は5000〜300000が好ましく、10000〜50000がより好ましい。質量平均分子量は10000〜600000が好ましく、15000〜100000がより好ましい。
重合体(B)の分子量が上記範囲の上限値以下であると分散安定性に優れ、下限値以上であると基材との密着性に優れる。
【0056】
[媒体]
重合体(A)および重合体(B)の製造に用いる媒体としては、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテル、ハロゲン化合物、炭化水素、ケトン、エステル、エーテル、窒素化合物、硫黄化合物、無機溶剤、有機酸等が挙げられる。なかでも、溶解性、取扱いの容易さの点から、水、アルコール、グリコール、グリコールエーテルおよびグリコールエステルからなる群から選ばれた1種以上の媒体が好ましい。
【0057】
アルコールとしては、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、2−メチルプロパノール、1,1−ジメチルエタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、2−メチル−1−ブタノール、3−メチル−1−ブタノール、1,1−ジメチルプロパノール、3−メチル−2−ブタノール、1,2−ジメチルプロパノール、1−ヘキサノール、2−メチル−1−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、2−エチル−1−ブタノール、1−へプタノール、2−へプタノール、3−へプタノール等が挙げられる。
【0058】
グリコール、グリコールエーテルとしては、エチレングリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセタート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセタート、プロピレングリコール、グリコールエーテルとしては、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコール、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコール、ヘキシレングリコール等が挙げられる。
【0059】
ハロゲン化合物としては、ハロゲン化炭化水素、ハロゲン化エーテル等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素としては、ハイドロクロロフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロブロモカーボン等が挙げられる。
【0060】
ハロゲン化エーテルとしては、ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。
ハイドロフルオロエーテルとしては、分離型ハイドロフルオロエーテル、非分離型ハイドロフルオロエーテル等が挙げられる。分離型ハイドロフルオロエーテルとは、エーテル性酸素原子を介してR基またはパーフルオロアルキレン基、および、アルキル基またはアルキレン基が結合している化合物である。非分離型ハイドロフルオロエーテルとは、部分的にフッ素化されたアルキル基またはアルキレン基を含むハイドロフルオロエーテルである。
【0061】
炭化水素としては、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等が挙げられる。
脂肪族炭化水素としては、ペンタン、2−メチルブタン、3−メチルペンタン、ヘキサン、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン、ヘプタン、オクタン、2,2,4−トリメチルペンタン、2,2,3−トリメチルヘキサン、デカン、ウンデカン、ドデカン、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン、トリデカン、テトラデカン、ヘキサデカン等が挙げられる。
脂環式炭化水素としては、シクロペンタン、メチルシクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等が挙げられる。
芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0062】
ケトンとしては、アセトン、メチルエチルケトン、2−ペンタノン、3−ペンタノン、2−ヘキサノン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
エステルとしては、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ペンチル等が挙げられる。
エーテルとしては、ジイソプロピルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0063】
窒素化合物としては、ピリジン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。
硫黄化合物としては、ジメチルスルホキシド(DMSO)、スルホラン等が挙げられる。
無機溶剤としては、液体二酸化炭素が挙げられる。
有機酸としては、酢酸、プロピオン酸、りんご酸、乳酸等が挙げられる。
【0064】
媒体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。媒体を2種以上混合して用いる場合、水と混合して用いることが好ましい。混合した媒体を用いることにより、共重合体の溶解性、分散性の制御がしやすく、加工時における物品に対する浸透性、濡れ性、溶媒乾燥速度等の制御がしやすい。
【0065】
(界面活性剤)
重合体(A)および重合体(B)の製造に用いる界面活性剤としては、炭化水素系界面活性剤またはフッ素系界面活性剤が挙げられ、それぞれ、アニオン性界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、または両性界面活性剤が挙げられる。
界面活性剤としては、分散安定性の点から、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤または両性界面活性剤との併用、または、アニオン性界面活性剤の単独が好ましく、ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との併用が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との比(ノニオン性界面活性剤/カチオン性界面活性剤)は、97/3〜40/60(質量比)が好ましい。
ノニオン性界面活性剤とカチオン性界面活性剤との特定の組み合わせにおいては、共重合体(100質量%)に対する合計量を、5質量%以下にできるため、物品の撥水性への悪影響を低減できる。
【0066】
ノニオン性界面活性剤としては、界面活性剤s〜sからなる群から選ばれる1種以上が好ましい。
【0067】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルカポリエニルエーテル、またはポリオキシアルキレンモノポリフルオロアルキルエーテルである。
界面活性剤sとしては、ポリオキシアルキレンモノアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンモノアルケニルエーテル、またはポリオキシアルキレンモノポリフルオロアルキルエーテルが好ましい。界面活性剤sは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0068】
アルキル基、アルケニル基、アルカポリエニル基またはポリフルオロアルキル基(以下、アルキル基、アルケニル基、アルカポリエニル基およびポリフルオロアルキル基をまとめてR基と記す。)としては、炭素数が4〜26の基が好ましい。R基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。分岐状のR基としては、2級アルキル基、2級アルケニル基または2級アルカポリエニル基が好ましい。R基は、水素原子の一部または全てがフッ素原子で置換されていてもよい。
【0069】
基の具体例としては、オクチル基、ドデシル基、テトラデシル基、ヘキサデシル基、ステアリル基(オクタデシル基)、ベヘニル基(ドコシル基)、オレイル基(9−オクタデセニル基)、ヘプタデシルフルオロオクチル基、トリデシルフルオロヘキシル基、1H,1H,2H,2H−トリデシルフルオロオクチル基、1H,1H,2H,2H−ノナフルオロヘキシル基等が挙げられる。
【0070】
ポリオキシアルキレン(以下、POAと記す。)鎖としては、ポリオキシエチレン(以下、POEと記す。)鎖および/またはポリオキシプロピレン(以下、POPと記す。)鎖が2個以上連なった鎖が好ましい。POA鎖は、1種のPOA鎖からなる鎖であってもよく、2種以上のPOA鎖からなる鎖であってもよい。2種以上のPOA鎖からなる場合、各POA鎖はブロック状に連結されることが好ましい。
【0071】
界面活性剤sとしては、化合物(s11)がより好ましい。
10O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)H ・・・(s11)。
ただし、R10は、炭素数が8以上のアルキル基または炭素数が8以上のアルケニル基であり、rは、5〜50の整数であり、sは、0〜20の整数である。R10は、水素原子の一部がフッ素原子に置換されていてもよい。
【0072】
rが5以上であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、撥水はつ油剤組成物の物品への浸透性が良好となる。rが50以下であれば、親水性が抑えられ、撥水性が良好となる。
sが20以下であれば、水に可溶となり、水系媒体中に均一に溶解するため、撥水はつ油剤組成物の物品への浸透性が良好となる。
【0073】
rおよびsが2以上である場合、POE鎖とPOP鎖とはブロック状に連結される。
10としては、直鎖状または分岐状のものが好ましい。
rは、10〜30の整数が好ましい。
sは、0〜10の整数が好ましい。
【0074】
化合物(s11)としては、下記の化合物が挙げられる。ただし、POE鎖とPOP鎖とはブロック状に連結される。
1837O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)30H、
1835O−(CHCHO)30H、
1633O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)20H、
1225O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
(C17)(C13)CHO−(CHCHO)15H、
1021O[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
13CHCHO−(CHCHO)15H、
13CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H、
CHCHO[CHCH(CH)O]−(CHCHO)15H。
【0075】
界面活性剤s
界面活性剤sは、分子中に1個以上の炭素−炭素三重結合および1個以上の水酸基を有する化合物からなるノニオン性界面活性剤である。
界面活性剤sとしては、分子中に1個の炭素−炭素三重結合、および1個または2個の水酸基を有する化合物からなるノニオン性界面活性剤が好ましい。
界面活性剤sは、分子中にPOA鎖を有してもよい。POA鎖としては、POE鎖、POP鎖、POE鎖とPOP鎖とがランダム状に連結された鎖、またはPOE鎖とPOP鎖とがブロック状に連結された鎖が挙げられる。
【0076】
界面活性剤sとしては、化合物(s21)〜(s24)が好ましい。
HO−C(R11)(R12)−C≡C−C(R13)(R14)−OH ・・(s21)、
HO−(AO)−C(R11)(R12)−C≡C−C(R13)(R14)−(OA−OH
・・・(s22)、
HO−C(R15)(R16)−C≡C−H ・・・(s23)、
HO−(AO)−C(R15)(R16)−C≡C−H ・・・(s24)。
【0077】
〜Aは、それぞれアルキレン基である。
uおよびvは、それぞれ0以上の整数であり、(u+v)は、1以上の整数である。
wは、1以上の整数である。
u、v、wが、それぞれ2以上である場合、A〜Aは、それぞれ同一であってもよく、異なっていてもよい。
POA鎖としては、POE鎖、POP鎖、またはPOE鎖とPOP鎖とを含む鎖が好ましい。POA鎖の繰り返し単位の数は、1〜50が好ましい。
【0078】
11〜R16は、それぞれ水素原子またはアルキル基である。
アルキル基としては、炭素数が1〜12のアルキル基が好ましく、炭素数が1〜4のアルキル基がより好ましい。アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソブチル基等が挙げられる。
【0079】
化合物(s22)としては、化合物(s25)が好ましい。
【0080】
【化1】

【0081】
ただし、xおよびyは、それぞれ0〜100の整数である。
化合物(s25)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
化合物(s25)としては、xおよびyが0である化合物、xとyとの和が平均1〜4である化合物、またはxとyとの和が平均10〜30である化合物が好ましい。
【0082】
界面活性剤s
界面活性剤sは、POE鎖と、炭素数が3以上のオキシアルキレンが2個以上連続して連なったPOA鎖とが連結し、かつ、両末端が水酸基である化合物からなるノニオン性界面活性剤である。
該POA鎖としては、ポリオキシテトラメチレン(以下、POTと記す。)および/またはPOP鎖が好ましい。
【0083】
界面活性剤sとしては、化合物(s31)または化合物(s32)が好ましい。
HO(CHCHO)g1(CO)(CHCHO)g2H ・・・(s31)、
HO(CHCHO)g1(CHCHCHCHO)(CHCHO)g2H ・・・(s32)。
【0084】
g1は、0〜200の整数である。
tは、2〜100の整数である。
g2は、0〜200の整数である。
g1が0の場合、g2は、2以上の整数である。g2が0の場合、g1は、2以上の整数である。
−CO−は、−CH(CH)CH−であってもよく、−CHCH(CH)−であってもよく、−CH(CH)CH−と−CHCH(CH)−とが混在したものであってもよい。
POA鎖は、ブロック状である。
【0085】
界面活性剤sとしては、下記の化合物が挙げられる。
HO−(CHCHO)15−(CO)35−(CHCHO)15H、
HO−(CHCHO)−(CO)35−(CHCHO)H、
HO−(CHCHO)45−(CO)17−(CHCHO)45H、
HO−(CHCHO)34−(CHCHCHCHO)28−(CHCHO)34H。
【0086】
界面活性剤s
界面活性剤sは、分子中にアミンオキシド部分を有するノニオン性界面活性剤である。
界面活性剤sとしては、化合物(s41)が好ましい。
(R17)(R18)(R19)N(→O) ・・・(s41)。
【0087】
17〜R19は、それぞれ1価炭化水素基である。
本発明においては、アミンオキシド(N→O)を有する界面活性剤をノニオン性界面活性剤として扱う。
化合物(s41)は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0088】
化合物(s41)としては、共重合体の分散安定性の点から、化合物(s42)が好ましい。
(R20)(CHN(→O) ・・・(s42)。
【0089】
20は、炭素数が6〜22のアルキル基、炭素数が6〜22のアルケニル基、炭素数が6〜22のアルキル基が結合したフェニル基、炭素数が6〜22のアルケニル基が結合したフェニル基、または炭素数が6〜13のフルオロアルキル基である。R20としては、炭素数が8〜22のアルキル基、または炭素数が8〜22のアルケニル基、または炭素数が4〜9のポリフルオロアルキル基が好ましい。
【0090】
化合物(s42)としては、下記の化合物が挙げられる。
[H(CH12](CHN(→O)、
[H(CH14](CHN(→O)、
[H(CH16](CHN(→O)、
[H(CH18](CHN(→O)、
[F(CF(CH](CHN(→O)、
[F(CF(CH](CHN(→O)。
【0091】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルの縮合物またはポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルからなるノニオン性界面活性剤である。
置換フェニル基としては、1価炭化水素基で置換されたフェニル基が好ましく、アルキル基、アルケニル基またはスチリル基で置換されたフェニル基がより好ましい。
【0092】
界面活性剤sとしては、ポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテルの縮合物、ポリオキシエチレンモノ(アルケニルフェニル)エーテルの縮合物、ポリオキシエチレンモノ(アルキルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(アルケニルフェニル)エーテル、またはポリオキシエチレンモノ[(アルキル)(スチリル)フェニル〕エーテルが好ましい。
【0093】
ポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルの縮合物またはポリオキシエチレンモノ(置換フェニル)エーテルとしては、ポリオキシエチレンモノ(ノニルフェニル)エーテルのホルムアルデヒド縮合物、ポリオキシエチレンモノ(ノニルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(オクチルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ(オレイルフェニル)エーテル、ポリオキシエチレンモノ[(ノニル)(スチリル)フェニル]エーテル、ポリオキシエチレンモノ[(オレイル)(スチリル)フェニル]エーテル等が挙げられる。
【0094】
界面活性剤s
界面活性剤sは、ポリオールの脂肪酸エステルからなるノニオン性界面活性剤である。
ポリオールとは、グリセリン、ソルビタン、ソルビット、ポリグリセリン、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンエーテル、ポリオキシエチレンソルビットエーテルを表わす。
【0095】
界面活性剤sとしては、ステアリン酸とポリエチレングリコールとの1:1(モル比)エステル、ソルビットとポリエチレングリコールとのエーテルとオレイン酸とのl:4(モル比)エステル、ポリオキシエチレングリコールとソルビタンとのエーテルとステアリン酸との1:1(モル比)エステル、ポリエチレングリコールとソルビタンとのエーテルとオレイン酸との1:1(モル比)エステル、ドデカン酸とソルビタンとの1:1(モル比)エステル、オレイン酸とデカグリセリンとの1:1または2:1(モル比)エステル、ステアリン酸とデカグリセリンとの1:1または2:1(モル比)エステルが挙げられる。
【0096】
界面活性剤s
界面活性剤がカチオン性界面活性剤を含む場合、該カチオン性界面活性剤としては、界面活性剤sが好ましい。
界面活性剤sは、置換アンモニウム塩形のカチオン性界面活性剤である。
【0097】
界面活性剤sとしては、窒素原子に結合する水素原子の1個以上が、アルキル基、アルケニル基または末端が水酸基であるPOA鎖で置換されたアンモニウム塩が好ましく、化合物(s71)がより好ましい。
[(R21]・X ・・・(s71)。
【0098】
21は、水素原子、炭素数が1〜22のアルキル基、炭素数が2〜22のアルケニル基、炭素数が1〜9のフルオロアルキル基、または末端が水酸基であるPOA鎖である。
4つのR21は、同一であってもよく、異なっていてもよいが、4つのR21は同時に水素原子ではない。
21としては、炭素数が6〜22の長鎖アルキル基、炭素数が6〜22の長鎖アルケニル基、または炭素数が1〜9のフルオロアルキル基が好ましい。
21が長鎖アルキル基以外のアルキル基の場合、R21としては、メチル基またはエチル基が好ましい。
21が、末端が水酸基であるPOA鎖の場合、POA鎖としては、POE鎖が好ましい。
【0099】
は、対イオンである。
としては、塩素イオン、エチル硫酸イオン、または酢酸イオンが好ましい。
【0100】
化合物(s71)としては、モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリド、モノステアリルジメチルモノエチルアンモニウムエチル硫酸塩、モノ(ステアリル)モノメチルジ(ポリエチレングリコール)アンモニウムクロリド、モノフルオロヘキシルトリメチルアンモニウムクロリド、ジ(牛脂アルキル)ジメチルアンモニウムクロリド、ジメチルモノココナッツアミン酢酸塩等が挙げられる。
【0101】
界面活性剤s
界面活性剤が両性界面活性剤を含む場合、該両性界面活性剤としては、界面活性剤sが好ましい。
界面活性剤sは、アラニン類、イミダゾリニウムベタイン類、アミドベタイン類または酢酸ベタインである。
【0102】
疎水基としては、炭素数が6〜22の長鎖アルキル基、炭素数が6〜22の長鎖アルケニル基、または炭素数が1〜9のフルオロアルキル基が好ましい。
界面活性剤sとしては、ドデシルベタイン、ステアリルベタイン、ドデシルカルボキシメチルヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ドデシルジメチルアミノ酢酸ベタイン、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。
【0103】
界面活性剤s
界面活性剤として、界面活性剤sを用いてもよい。
界面活性剤sは、親水性単量体と炭化水素系疎水性単量体および/またはフッ素系疎水性単量体との、ブロック共重合体、ランダム共重合体、または親水性共重合体の疎水性変性物からなる高分子界面活性剤である。
【0104】
界面活性剤sとしては、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートと長鎖アルキルアクリレートとのブロックまたはランダム共重合体、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートとフルオロ(メタ)アクリレートとのブロックまたはランダム共重合体、酢酸ビニルと長鎖アルキルビニルエーテルとのブロックまたはランダム共重合体、酢酸ビニルと長鎖アルキルビニルエステルとのブロックまたはランダム共重合体、スチレンと無水マレイン酸との重合物、ポリビニルアルコールとステアリン酸との縮合物、ポリビニルアルコールとステアリルメルカプタンとの縮合物、ポリアリルアミンとステアリン酸との縮合物、ポリエチレンイミンとステアリルアルコールとの縮合物、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース等が挙げられる。
【0105】
界面活性剤sの市販品としては、クラレ社のMPポリマー(商品番号:MP−103、MP−203)、エルフアトケム社のSMAレジン、信越化学社のメトローズ、日本触媒社のエポミンRP、セイミケミカル社のサーフロン(商品番号:S−381、S−393)等が挙げられる。
【0106】
界面活性剤sとしては、媒体が有機溶剤の場合または有機溶剤の混合比率が多い場合、界面活性剤s91が好ましい。
界面活性剤s91:親油性単量体とフッ素系単量体とのブロック共重合体またはランダム共重合体(そのポリフルオロアルキル変性体)からなる高分子界面活性剤。
【0107】
界面活性剤s91としては、アルキルアクリレートとフルオロ(メタ)アクリレートとの共重合体、アルキルビニルエーテルとフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体等が挙げられる。
界面活性剤s91の市販品としては、セイミケミカル社のサーフロン(商品番号:S−383、SC−100シリーズ)が挙げられる。
【0108】
界面活性剤の組み合わせとしては、撥水はつ油剤組成物の撥水性、耐久性に優れる点、得られた乳化液の安定性の点から、界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせ、または界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせ、または界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sと界面活性剤sとの組み合わせが好ましく、界面活性剤sが化合物(s71)である上記の組み合わせがより好ましい。
界面活性剤の合計量は、共重合体(100質量部)に対して1〜6質量部がより好ましい。
【0109】
<重合体(C)>
重合体(C)は、単量体(a)に基づく構成単位と、単量体(d)に基づく構成単位を有する共重合体である。
【0110】
[単量体(a)]
単量体(a)は、フッ素原子が結合している炭素原子の数が4〜6のR基(ただし、該R基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)を有する単量体である。
単量体(a)としては、重合体(A)を構成する単量体(a)と同様のもの(たとえば、化合物(1)等。)が挙げられる。
【0111】
化合物(1)としては、他の単量体との重合性、重合体の皮膜の柔軟性、物品に対する重合体の接着性、媒体に対する溶解性、重合の容易性等の点から、炭素数が4〜6のR基を有する(メタ)アクリレートが好ましい。
化合物(1)としては、Zが炭素数4〜6のR基であり、Yが炭素数1〜4のアルキレン基であり、nが1であり、Xが基(3−3)である化合物が好ましい。
【0112】
[単量体(d)]
単量体(d)は、ポリフルオロアルキル基を有さず、アルキレンオキシド基、アミノ基、ヒドロキシ基、アクリルアミド基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン基からなる群から選ばれる一種以上の基を有する単量体である。アミノ基は水素原子が置換されていてもよい。これらの基はいずれも親水性基である。塩として存在でき得る基は、塩を形成していてもかわまわない。
単量体(d)は重合体(C)に対して、防汚(水洗濯による汚れ除去性)性の発現を付与することができる。単量体(d)は上記親水性基を有する(メタ)アクリレートがより好ましい。
上記に挙げた親水性基のうち、アルキレンオキシド基、ヒドロキシ基、カルボキシ基またはアミノ基が好ましく、アルキレンオキシド基またはアミノ基が特に好ましい。
【0113】
[単量体(d’)]
単量体(d)は、親水性基としてアルキレンオキシド基を有する単量体(d’)が好ましい。すなわち、重合体(C)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアルキレンオキシド基を有する単量体(d’)に基づく構成単位を有することが好ましい。
アルキレンオキシド基としては、エチレンオキシド基(−CO−)、プロピレンレ基(−CO−)、テトラメチレンオキシド基(−CO−)が好ましい。
アルキレンオキシド基を有する単量体(d’)として、アルキレンオキシド基がエチレンオキシド基である単量体(d1)、または同側鎖中に存在するエチレンオキシド基とテトラメチレンオキシド基を有する単量体(d2)が好ましい。
【0114】
[単量体(d1)]
単量体(d1)は、ポリフルオロアルキル基を有さずアルキレンオキシド基を有し、該アルキレンオキシド基がエチレンオキシド基である単量体であり、好ましくは化合物(2)である。
CH=CR−G−(CO)q1−R…(2)。
式中のR、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基であり、メチル基が好ましい。q1は1〜50の整数であり、2〜20が好ましい。Gは−COO(CHr1−または−COO(CHt1−NHCOO−(r1は0〜4の整数、t1は1〜4の整数。)であり、−COO(CHr1−(r1は0〜4の整数。)が好ましい。
【0115】
単量体(d1)としては、ポリエチレンオキシドモノアクリレート(CH=CHCOO(EO)q1H)、ポリエチレンオキシドモノメタクリレート(CH=C(CH)COO(EO)q1H)、メトキシポリエチレンオキシドモノアクリレート(CH=CHCOO(EO)q1CH)、メトキシポリエチレンオキシドモノメタクリレート(CH=C(CH)COO(EO)q1CH)が好ましく、メトキシポリエチレンオキシドメタクリレートがより好ましい。
【0116】
[単量体(d2)]
単量体(d2)は、同側鎖中に存在するエチレンオキシド基とテトラメチレンオキシド基を有する。単量体(d2)は同側鎖中に存在するエチレンオキシド基およびテトラメチレンオキシド基以外の親水性基(アミノ基を除く)を有していてもよい。単量体(d2)中のアルキレンオキシド基が、同側鎖中に存在するエチレンオキシド基とテトラメチレンオキシド基からなることが好ましい。
単量体(d2)は、好ましくは化合物(3)である。
CH=CR3−G−(CO)q2−(CO)q3−R4…(3)。
式中、R、Rは、それぞれ独立して水素原子またはメチル基である。Rはメチル基が好ましく、Rは水素原子が好ましい。q2は1〜50の整数であり、2〜20が好ましい。q3は1〜50の整数であり、2〜20が好ましい。Gは−COO(CHr2−または−COO(CHt2−NHCOO−(r2は0〜4の整数、t2は1〜4の整数。)であり、−COO(CHr2−(r2は0〜4の整数。)が好ましい。
【0117】
単量体(d2)において、エチレンオキシド基(−CO−、以下EOと記載することもある。)とテトラメチレンオキシド基(−CO−、以下TOと記載することもある)の共重合鎖は、ランダム共重合鎖であってもよく、ブロック共重合鎖であってもよい。
【0118】
単量体(d2)としては、ポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノアクリレート(CH=CHCOO−[(EO)q2−(TO)q3]−H)、ポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノメタアクリレート(CH=C(CH)COO−[(EO)q2−(TO)q3]−H)、メトキシポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノアクリレート(CH=CHCOO−[(EO)q2−(TO)q3]−CH)、メトキシポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノメタクリレート(CH=C(CH)COO−[(EO)q2−(TO)q3]−CH)、ポリテトラメチレンオキシドモノアクリレート(CH=CHCOO−(TO)q3−H)、ポリテトラメチレンオキシドメタクリレート(CH=C(CH)COO−(TO)q3−H)、メトキシポリテトラメチレンオキシドモノアクリレート(CH=CHCOO−(TO)q3−CH)、メトキシポリテトラメチレンオキシドモノメタクリレート(CH=C(CH)COO−(TO)q3−CH)が好ましく、ポリ(エチレンオキシド−テトラメチレンオキシド)モノメタクリレートがより好ましい。
【0119】
[単量体(d3)]
単量体(d)として、ポリフルオロアルキル基を有さず、アミノ基(水素原子が置換されていてもよい。)を有する単量体(d3)も好ましい。単量体(d3)は、好ましくは化合物(4−1)または化合物(4−2)である。
CH=CR5−M−Q−NR67…(4−1)。
CH=CR5−M−Q−N(O)R67…(4−2)。
式中、R5は水素原子またはメチル基であり、Mは−COO−(エステル結合)または−CONH−(アミド結合)であり、Qは炭素数2〜4のアルキレン基または水素原子の一部または全部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキレン基であり、R6、R7はそれぞれ独立に、ベンジル基、炭素数1〜8のアルキル基または水素原子の一部が水酸基で置換された炭素数2〜3のアルキル基である。R6、R7および窒素原子がピペリジノ基またはピロリジニル基を形成してもよく、R6、R7、酸素原子および窒素原子がモルホリノ基を形成していてもよい。
Mとしては−COO−(エステル結合)が好ましく、Qとしては炭素数2〜4のアルキレン基が好ましく、R、Rとしては炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。
【0120】
単量体(d3)としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルペピリジン、N,N−ジメチルアミノオキシドエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノオキシドエチル(メタ)アクリレートが好ましく、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレートがより好ましい。
【0121】
重合体(C)において、単量体(d)としては、単量体(d1)と単量体(d2)を組合せて用いるのが好ましく、さらには、単量体(d1)と、単量体(d2)と、単量体(d3)とを組合せて用いることが好ましい。
特に、単量体(d1)と単量体(d2)を組み合わせて用いることにより、単量体(d1)だけを用いる場合、または従来のフッ素系防汚加工剤によく用いられている、単量体(d1)とプロピレンオキシド鎖を側鎖に含む単量体を組み合わせて用いる場合に比べて洗濯耐久性が向上し、撥水撥油性および防汚性も良好となる。これは、TOを含む構成単位(d2)を用いたことにより、撥水はつ油防汚剤組成物の基材への接着性が効果的に向上するためと考えられる。その理由はEOとTOを含んだ単量体がEOだけの単量体およびプロピレンオキシドだけの単量体よりも低Tg(ガラス転移点)であり、結果的に重合体(C)のTgが下がり、より造膜性が向上するためと考えられる。また、EOとTOを含む単量体(d2)はプロピレンオキシドを含む単量体よりも疎水性でありながら疎油性でもあるため、撥水はつ油性能を阻害しないと考えられる。
さらに、単量体(d3)を含むことにより、水性媒体への分散性の向上に寄与する。水性媒体への分散性が良好であると撥水はつ油防汚剤組成物中の揮発性有機溶媒の含有量を抑えることができ、環境的に好ましい。また、単量体(d3)のアミノ基により、重合体(C)がカチオン性を有し、その表面電荷が弱アニオン性である繊維基材に対する均一な付着性も向上する。
【0122】
[単量体(e)]
重合体(C)は、さらに、R基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体(e)を有してもよい。重合体(C)が単量体(e)に基づく構成単位を有することにより、洗濯耐久性がより向上する。
単量体(e)としては、重合体(A)を構成する単量体(e)と同様のものが挙げられる。
【0123】
[その他の単量体(f)]
重合体(C)は、単量体(a)、(d)、(e)を除くその他の単量体(f)に基づく構成単位を有していもてよい。重合体(C)は単量体(b)および(c)を有しない。
単量体(f)としては、重合体(A)における単量体(f)と同様のものが挙げられる。
【0124】
[末端アニオン性基]
重合体(C)は主鎖末端にアニオン性基を有することが好ましい。重合体(C)の主鎖とは、単量体の重合性不飽和基が開裂して形成される原子連鎖を意味する。
重合体(C)中におけるアニオン性基の存在量は、該アニオン性基による効果を充分に得るために、重合体(C)100質量%とするとき0.1質量%以上が好ましく、0.3質量%以上がより好ましい。該アニオン性基の存在量の上限値は、重合体(C)におけるイオン性バランスを考慮して決めることが好ましい。例えば3.0質量%以下が好ましく、2.0質量%以下がより好ましい。
【0125】
本発明におけるアニオン性基とは、水中で電離してアニオンとなり得る基であり、具体的にはカルボキシ基、スルホン酸基、リン酸基、塩素酸基、硝酸基、マンガン酸基からなる群から選ばれる1種以上の酸基が好ましい。特にカルボキシ基が好ましい。これらの酸基は塩またはエステルを形成していてもよい。1分子の重合体(C)中に2種以上のアニオン性基が存在していてもよい。
重合体(C)の主鎖末端に、アニオン性基を導入する方法は特に限定されない。簡便な方法としては、単量体を共重合させる際に、アニオン性基を有する重合開始剤および/またはアニオン性基を有する連鎖移動剤を用いる方法が挙げられる。該重合開始剤および/または連鎖移動剤に含まれるアニオン性基は、酸性度の関係から弱酸性であるカルボキシ基(塩またはエステルを形成していてもよい)が好ましい。
アニオン性基を有する重合開始剤としては、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のカルボキシ基を有するアゾ化合物、ジコハク酸パーオキサイド、過硫酸塩などが好ましい。これらのうちでカルボキシ基を有するアゾ化合物がより好ましく、特に4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)が好ましい。
アニオン性基を有する連鎖移動剤としては、3,3´−ジチオ−ジプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトプロピオン酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオグリコール酸などが好ましい。これらのうちで、カルボキシ基を有する3−メルカプトプロピオン酸がより好ましい。
【0126】
特に重合体(C)が、単量体(d3)に基づく構成単位を有する場合は、主鎖末端にアニオン性基を有することが好ましい。
重合体(C)にアミノ基を有する単量体(d3)に基づく構成単位を有するを導入すると、該重合体(C)の水性媒体への分散性、および繊維基材に対する均一な付着性が向上する。一方、アミノ基はカチオン性であるため汚れ成分を吸着しやすく、その結果、汚れ除去性(SR性)を低下させる傾向がある。これに対して、重合体(C)の主鎖末端にアニオン性基を導入することにより、かかる汚れ成分の吸着を抑えて汚れ除去性(SR性)が向上できると考えられる。
また、カルボキシ基との強い反応性を有する架橋剤を併用した場合、その架橋部位が主鎖末端となるため主鎖の流動性を阻害せず、汚れ除去性に必要な分子運動性が保たれ、結果として良好な汚れ除去性と洗濯耐久性を両立することが可能となる。
【0127】
[重合体(C)の製造方法]
重合体(C)は、たとえば、下記の方法で製造できる。
重合体(C)は、公知の方法を用いて、重合溶媒中で単量体(a)、(d)および必要に応じて単量体(e)、(f)を含む単量体成分(Z)の重合反応を行うことにより得られる。
重合溶媒としては、上記重合体(A)の製造に用いられる媒体として挙げた有機溶媒を用いることができる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類:メタノール、2−プロピルアルコール等のアルコール類;酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、またはジプロピレングリコールのエチルエーテルまたはメチルエーテル等のグリコールエーテル類およびその誘導体、脂肪族炭化水素類;芳香族炭化水素類;パークロロエチレン、トリクロロ−1,1,1−エタン、トリクロロトリフルオロエタン、ジクロロペンタフルオロプロパン等のハロゲン化炭化水素類;ジメチルホルムアミド;N−メチル−2−ピロリドン;ブチロアセトン;ジメチルスルホキシド(DMSO)等が好ましく用いられる。重合溶媒は2種以上混合して用いてもよい。
【0128】
重合体(C)を得る重合反応において、重合開始剤を用いるのが好ましい。重合開始剤としては、ベンジルパーオキシド、ラウリルパーオキシド、スクシニルパーオキシド、tert−ブチルパーピバレート等の過酸化物;アゾ化合物等が好ましい。溶媒中の重合開始剤の濃度は単量体成分(Z)100質量部に対して0.1〜1.5質量部が好ましい。
重合開始剤の具体例としては、2,2´−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、ジメチル−2,2´−アゾビスイソブチレート、2,2´−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2イル)プロパン]、2,2´−アゾビス(4−メトキシ−2、4−ジメチルバレロニトリル)、1、1´−アゾビス(2シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2´−アゾビス(2、4−ジメチルバレロニトリル)、1、1´−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチルアゾビスイソブチレート、4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等が好ましい。
4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)はアニオン性基になりうるカルボキシ基を有するため、これを重合開始剤として用いることにより主鎖末端にアニオン性を導入することができる。
【0129】
重合体(C)の重合度(分子量)を調節するために、重合反応において連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤を用いることにより溶媒中の単量体の濃度の合計を高められる効果もある。連鎖移動剤としては、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンなどのアルキルメルカプタン;アミノエタンチオール、メルカプトエタノール、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸、3,3´−ジチオ−ジプロピオン酸、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸n−ブチル、チオグリコール酸メトキシブチル、チオグリコール酸エチル、2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン、四塩化炭素等が好ましい。
これらの中で、アニオン性基になるうるカルボキシ基を有する点で、3−メルカプトプロピオン酸、2−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、チオグリコール酸、3,3´−ジチオ−ジプロピオン酸が好ましく、3−メルカプトプロピオン酸が特に好ましい。連鎖移動剤の使用量は、単量体成分(Z)100質量部に対して0〜2質量部が好ましい。
【0130】
重合反応における反応温度は、室温から反応混合物の沸点までの範囲が好ましい。重合開始剤を効率良く使う観点からは重合開始剤の半減期温度付近が好ましく、30〜90℃がより好ましい。
【0131】
本発明の撥水はつ油防汚剤組成物を、重合体(A)〜(C)を水性媒体に分散させた水性分散体とする場合には、重合体(C)の重合反応後に、水性媒体を加え、必要に応じて重合溶媒を除去する処理を行う。重合溶媒の除去は、例えばストリッピング(揮散)処理により行う。また、このストリッピング(揮散)処理を行う工程において時間効率の短縮のために、少量の水系消泡剤を用いてもよい。
本明細書における水性媒体は、水を含み、揮発性有機溶媒の含有量が1質量%以下である液体を意味する。具体的には水または水を含む共沸混合物が好ましい。
本発明の撥水はつ油防汚剤組成物が水性分散体である場合、揮発性有機溶媒の含有量は1質量%以下が好ましく、ゼロが最も好ましい。本明細書において、撥水はつ油防汚剤組成物中の揮発性有機溶媒とは、撥水はつ油防汚剤組成物を常温で保存したときに揮発する有機溶媒を意味しており、具体的には1×10Paにおける沸点(以下、単に「沸点」という。)が100℃以下である有機溶媒である。高沸点溶媒であるジプロピレングリコールやトリプロピレングリコールなどは含まない。なお、水と共沸混合物を作る溶媒は該揮発性有機溶媒には含まれないものとする。
【0132】
重合体(C)を水性媒体に分散させるために、重合体(C)はアミノ基を有する構成単位を含むことが好ましい。また重合溶媒としては、重合反応後の処理の作業性が良い点から、上記に挙げた重合溶媒のうち、比較的低沸点(例えば、沸点が80℃以下)の溶媒または水との共沸組成を有する溶媒を用いることが好ましい。比較的低沸点の溶媒の例としては、アセトン、メタノールが挙げられる。水との共沸組成を有する溶媒としてはメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、2−プロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。アセトンがより好ましい。
【0133】
重合体(c)がアミノ基を有する構成単位を含む場合、単量体の重合反応により重合体(C)を得た後、該重合体(C)中のアミノ基をアミン塩化することが好ましい。これにより該重合体(C)の水性媒体への分散性が向上する。
アミン塩化には酸等を用いるのが好ましく、解離定数または一次解離定数が10−5以上である酸を用いるのがより好ましい。酸としては、塩酸、臭化水素酸、スルホン酸、硝酸、リン酸、酢酸、ギ酸、プロピオン酸または乳酸等が好ましく、酢酸がより好ましい。
また、酸を用いて重合体(C)のアミノ基をアミン塩化する代わりに、ヨウ化メチル、ヨウ化エチル、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸、ベンジルクロライド、トリチルリン酸、メチルp−トルエンスルホン酸等を用いて第四級アンモニウム塩に変換(四級塩化ともいう。)してもよい。
【0134】
単量体(a)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
単量体(d)の割合は、撥水はつ油性および防汚性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、30〜70質量%が好ましく、40〜60質量%がより好ましい。
単量体(e)の割合は、撥水はつ油性および洗濯耐久性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、0〜5質量%が好ましく、0.5〜4質量%がより好ましい。
【0135】
単量体(d)が単量体(d1)と、単量体(d2)とからなる場合、単量体(d1)の割合は、防汚性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、15〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。
単量体(d2)の割合は、洗濯耐久性および防汚性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、15〜30質量%が好ましく、8〜25質量%がより好ましい。
【0136】
また、単量体(d)が単量体(d1)と、単量体(d2)と、単量体(d3)からなる場合、単量体(d1)の割合は、防汚性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、15〜40質量%が好ましく、20〜35質量%がより好ましい。
単量体(d2)の割合は、洗濯耐久性および防汚性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、5〜30質量%が好ましく、10〜20質量%がより好ましい。
単量体(d3)の割合は、分散安定性および基材への均一な吸着性の点から、単量体成分(Z)(100質量%)中、0.5〜6質量%が好ましく、1〜5質量%がより好ましい。
【0137】
重合体(C)のGPCによる数平均分子量は3000〜30000が好ましく、6000〜20000がより好ましい。質量平均分子量は6000〜60000が好ましく、10000〜40000がより好ましい。
重合体(C)の分子量が上記範囲の上限値以下であると分散安定性に優れ、下限値以上であると撥水はつ油性および基材との密着性に優れる。
【0138】
[撥水はつ油防汚剤組成物の調製]
本発明の撥水はつ油防汚剤組成物は、たとえば、重合体(A)のエマルションと、重合体(B)のエマルションと、重合体(C)の水性分散体を所定の割合にて混合することによって調製できる。
混合する重合体(A)、重合体(B)、および重合体(C)のうち少なくとも1つ以上が、単量体(e)に基づく構成単位を有していることが好ましい。
重合体(A)(固形分)と重合体(B)(固形分)との質量比((A)/(B))は、撥水はつ油性、防汚性および洗濯耐久性の点から、10/90〜95/5が好ましく、10/90〜70/30が好ましい。
重合体(A)(固形分)および重合体(B)(固形分)の合計の質量と、重合体(C)(固形分)の質量との比({(A)+(B)}/(C))は、撥水はつ油性および防汚性の点から、5/95〜95/5が好ましく、10/90〜90/10がより好ましい。
【0139】
こうして得られる撥水はつ油防汚剤組成物は、そのまま物品の加工処理に適用する処理液として用いることができる。または撥水はつ油防汚剤組成物を適度の固形分濃度に希釈したものを物品に適用してもよい。
物品の加工処理に適用する際の撥水はつ油防汚剤組成物(100質量%)の固形分濃度は0.2〜5質量%が好ましく、0.5〜3質量%がより好ましい。
なおエマルション、水性分散体、または撥水はつ油剤組成物における固形分濃度は、加熱前の質量と、120℃の対流式乾燥機にて4時間乾燥した後の質量とから計算される。
【0140】
撥水はつ油防汚剤組成物には、基材と架橋することで基材との接着性を向上させるための架橋剤、触媒等を含有させてもよい。
該架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤およびオキサゾリン系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤が好ましい。
イソシアネート系架橋剤の具体例としては、芳香族ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、脂肪族ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、芳香族非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、脂肪族非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤などが挙げられる。これらのイソシアネート系架橋剤は界面活性剤により乳化された水分散型か、または親水基を有した自己水分散型などが好ましい。
メラミン系架橋剤の具体例としては尿素またはメラミンホルムアルデヒドの縮合物または予備縮合物、メチロール−ジヒドロキシエチレン−尿素およびその誘導体、ウロン、メチロール−エチレン−尿素、メチロール−プロピレン−尿素、メチロール−トリアゾン、ジシアンジアミド−ホルムアルデヒドの縮合物、メチロール−カルバメート、メチロール−(メタ)アクリルアミド、これらの重合体などが挙げられる。
カルボジイミド系架橋剤は分子中にカルボジイミド基を持ったポリマーであり、基材または該撥水はつ油防汚染剤中のカルボキシ基、アミノ基、活性水素基と優れた反応性を示す架橋剤である。
オキサゾリン系架橋剤は分子中にオキサゾリン基を持ったポリマーであり、基材または該撥水はつ油防汚剤中のカルボキシ基と優れた反応性を示す架橋剤である。
また、その他の架橋剤としては、ジビニルスルホン、ポリアミドおよびそのカチオン誘導体、ジグリシジルグリセロール等のエポキシ誘導体、(エポキシ−2,3−プロピル)トリメチルアンモニウムクロライド、N−メチル−N−(エポキシ−2,3−プロピル)モルホリニウムクロライド等のハライド誘導体、エチレングリコールのクロロメチルエーテルのピリジニウム塩、ポリアミン−ポリアミド−エピクロヒドリン樹脂、ポリビニルアルコールまたはその誘導体、ポリアクリルアミドまたはその誘導体、グリオキサール樹脂系防しわ剤などが挙げられる。
【0141】
撥水はつ油防汚剤組成物に、メラミン系架橋剤またはグリオキサール樹脂系防しわ剤を含有させる場合は、触媒を含有させることが好ましい。好ましい触媒としては、無機アミン塩類および有機アミン塩類などが挙げられる。無機アミン塩類としては、塩化アンモニウムなどが挙げられる。有機アミン塩類としては、アミノアルコール塩酸塩、セミカルバジド塩酸塩などが挙げられる。アミノアルコール塩酸塩としては、モノエタノールアミン塩酸塩、ジエタノールアミン塩酸塩、トリエタノール塩酸塩、2−アミノ−2−メチルプロパノール塩酸塩等が挙げられる。
【0142】
撥水はつ油防汚剤組成物には、公知の各種添加剤が含まれてもよい。該添加剤としては、本発明に含まれないフッ素系重合体、非フッ素系重合体ブレンダー、水溶性高分子樹脂(たとえば親水性ポリエステルおよびその誘導体、または親水性ポリエチレングリコールおよびその誘導体等)、浸透剤(例えば、アセチレン基を中央に持ち左右対称の構造をした非イオン性界面活性剤など)、消泡剤、造膜助剤、防虫剤、難燃剤、帯電防止剤、防しわ剤、柔軟剤、pH調整剤等が挙げられる。
【0143】
<物品>
本発明の物品は、本発明の撥水はつ油防汚剤組成物を用いて処理された物品である。
本発明の撥水はつ油防汚剤組成物を用いて処理される物品としては、例えば繊維、繊維織物、繊維編物、不織布、ガラス、紙、木、皮革、人工皮革、石、コンクリート、セラミックス、金属および金属酸化物、窯業製品、プラスチックス等が挙げられる。
処理方法は、撥水はつ油防汚剤組成物を物品に付着できる方法であればよく特に限定されない。例えば塗布、含浸、浸漬、スプレー、ブラッシング、パディング、サイズプレス、ローラー等の公知の被覆加工法により基材の表面に付着させて乾燥する方法が好ましい。乾燥は常温で行っても加熱してもよく、加熱することが好ましい。加熱する場合には、40〜200℃程度が好ましい。また、撥水はつ油防汚剤組成物が架橋剤を含有する場合、必要であれば、該架橋剤の架橋温度以上に加熱してキュアリングを行うことが好ましい。
【0144】
本発明によれば、特定の構成単位を有し、かつフッ素原子の割合が少ない重合体(A)と、特定の構成単位を有し、かつフッ素原子の割合が多い重合体(B)と、親水性基を有する重合体(C)をブレンドすることにより、組成物中のR基が短鎖でありながら、物品の表面に優れた撥水はつ油性と防汚性の両方を付与できる撥水はつ油防汚剤組成物が得られる。
【0145】
また本発明の物品は、組成物中のR基が短鎖でありながら、物品の表面に優れた撥水はつ油性と防汚性の両方を付与できる撥水はつ油防汚剤組成物を用いているため、環境負荷が低く、良好な撥水はつ油性と防汚性を有する。
また、本発明の撥水はつ油防汚剤組成物は、炭素原子の数が4〜6のポリフルオロアルキル基を有する単量体に基づく構成単位を有する重合体を主成分とするので、環境への影響が懸念される、パーフルオロオクタン酸(PFOA)、パーフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)およびこれらの誘導体の含有量を検出下限以下にできる。
【実施例】
【0146】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において「%」は特に断りのない限り「質量%」である。また、アルキレンオキシド鎖を含む化合物を表わす化学式において、アルキレンオキシド鎖長の値は平均値である。
また、本発明において、重合体(A)および(B)それぞれにおけるフッ素原子の割合の値は、上述した測定方法により得られる測定値であるが、以下においては便宜上、単量体の仕込み組成から算出した計算値を用いた。また該測定値と該計算値との誤差は±1%以内であることを確認した。
【0147】
性能評価は、以下の方法で行った。
[試験布の作製:基材布に対する処理方法]
下記の各例で得られた処理液(撥水はつ油防汚剤組成物)の150gに、基材布(未加工布)を浸漬後、マングルで絞り、ウェットピックアップを60〜90%とした。次に110℃で90秒間乾燥し、さらに170℃で60秒間キュアリング熱処理を行い試験布を得た。
基材布(未加工布)としては(1)無染色のポリエステルからなるトロピカル布(以下PETと示す)、(2)無染色のポリエステル/綿が65/35の比率で混紡されたブロード布(以下TCと示す)、および(3)無染色の綿100%からなるブロード布(以下Cと示す)の3種類を使用した。
【0148】
[撥水性の評価方法:撥水性等級(WR)]
上記の方法で作成した試験布について、JIS L1092−98 6.2に記載のスプレー法にしたがって撥水性を評価した。撥水性は、表1に示す等級で表した。この撥水性等級が大きいほど撥水性が高いことを示す。ただし、撥水性等級に+(−)を記したものはそれぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。以下、この撥水性等級を「WR」と示す。
【0149】
【表1】

【0150】
[はつ油性の評価方法:はつ油性等級(OR)]
上記の方法で作製した試験布について、AATCC規格−TM118法ではつ油性を評価し、表2に示すはつ油性等級で表した。このはつ油性等級は、表面張力の異なる8種類の炭化水素系溶媒(試験液)の布に対する濡れ性を基準としている。このはつ油性等級が大きいほどはつ油性が高いことを示す。ただし、はつ油性等級に+(−)を記したものはそれぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。以下、このはつ油性等級を「OR」と示す。
【0151】
【表2】

【0152】
[汚れ除去性(SR性)の評価方法]
上記の方法で作製した試験布について、AATCC規格−TM130法に準ずる汚れ除去性を評価した。具体的な評価方法は以下の通りである。水平に敷いた吸い取り紙の上に試験布を広げ、以下に示す2種の汚れ液を5滴(約0.2ml)滴下し、その上に7.6cm×7.6cmのグラシン紙をかけ、更にその上に2.27kgの錘をのせ60秒後に錘とグラシン紙を取り除いた。室温で20分放置した後、試験布にバラスト布を加えて1.8kgとし、AATCC標準洗剤100g、浴量64リットル、浴温40℃にて洗濯を行った。洗濯後の汚れ除去性を以下に示す方法で評価した。
判定は、汚れ液の除去の度合いを目視で観察し、表3に示す等級で表した。等級が大きいほど汚れ除去性が高いことを示す。なお、汚れ液の除去度合いの等級に+(−)を記したものはそれぞれの性質がわずかに良い(悪い)ことを示す。
上記試験の汚れ液として、使用済みエンジンオイルにカーボンブラックを0.1質量%加えた汚れ液を用いた評価を以下「DMO」と示し。コーン油に油性色素であるスダンIII(ソルベントレッド23)を0.1質量%加えた汚れ液を用いた評価を以下「コーン油」と示す。
【0153】
【表3】

【0154】
[洗濯耐久性]
耐久性を確認するための洗濯はJIS 1092:1998 5.2a)3)法に従って行った。洗濯後の評価は試験布を25℃、湿度50RH%の恒温恒湿室にて一晩風乾したものにて行った。この洗濯を行っていないものの評価結果を「初期」の欄に示し、同じ洗濯方法を5回繰り返した後の評価結果を「HL5」の欄に示し、同じ洗濯方法を20回繰り返した後の評価結果を「HL20」の欄に示す。
【0155】
<合成例1〜5>
表4に示す単量体組成(単位:質量部)で、重合体A〜Cを合成した。表4における単量体の略号はそれぞれ以下の化合物を示す。
単量体(a):
・C6FMA:C13OCOC(CH)=CH(純度99.7質量%)。
単量体(b):
・VMA:ベヘニルメタクリレート。
・STA:ステアリルアクリレート。
単量体(c):
・VCM:塩化ビニル。
単量体(d1):
・MEO400M:CH=C(CH)COO(EO)CH
単量体(d2):
・MEOTO800:CH=C(CH)COO−(−(EO)10−(TO)−)−H(EOとTOはランダムに含まれる。)
単量体(d3):
・DM:N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート。
単量体(e):
・iso:2−イソシアネートエチルメタクリレートの3,5−ジメチルピラゾール付加体(化合物(5))。
【0156】
【化2】

【0157】
下記合成例で用いた化合物は以下の通りである。
重合開始剤:
・ACP:4,4´−アゾビス(4−シアノ吉草酸)。
・VA−061A:2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン](和光純薬社製、VA−061)の酢酸塩の10質量%水溶液。
・2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)。
連鎖移動剤:
・3MP:3−メルカプトプロピオン酸。
・StSH:ステアリルメルカプタン。
・DoSH:n−ドデシルメルカプタン。
【0158】
界面活性剤s
・PEO−30:ポリオキシエチレンオレイルエーテル(エチレンオキシド約26モル付加物。)の10質量%水溶液。
界面活性剤s
・AGE−10:アセチレングリコールエチレンオキシド付加物(エチレンオキシド付加モル数は10モル。)の10質量%水溶液。
界面活性剤s
・EPO−40:エチレンオキシドプロピレンオキシド重合物(エチレンオキシドの割合は40質量%。)の10質量%水溶液。
界面活性剤s
・ATMAC:モノステアリルトリメチルアンモニウムクロリドの10質量%水溶液。
媒体:
・アセトン。
・ジプロピレングリコール。
・水:イオン交換水。
【0159】
[合成例1:重合体(C)(SR−1)の合成]
100mLのガラス製容器に、C6FMAの11.0g(52質量部)、MEO400Mの6.3g(30質量部)、MEOTO800の3.0g(14質量部)、DMの0.6g(3質量部)、isoの0.2g(1質量部)、アセトン48.5g、ACPの0.2g(1質量部)、および3MPの0.1g(0.5質量部)を仕込み、窒素雰囲気下で振とうしつつ、65℃で20時間重合を行い、固形分濃度30.4質量%の淡黄色溶液(重合体溶液)を得た。
得られた重合物の分子量をGPCにて確認したところ、数平均分子量11000、質量平均分子量24000であった。また本測定にて単量体由来のピークが存在しないことも確認した。
得られた重合体溶液の50gに、水の50gと酢酸の0.26g(DMの1.5倍モル等量)を添加し、攪拌してアミン塩化処理を行った。この後、減圧条件下にて60℃でアセトンを除去し、淡黄色透明な水性分散体を得た後、イオン交換水を加えて固形分濃度が20質量%とした。得られた水性分散体をキャピラリーガスクロマトグラフィーにて測定したところ、アセトン含有量が1質量%以下であることを確認した。
【0160】
[合成例2:重合体(C)(SR−2)の合成]
100mLのガラス製容器に、C6FMAの13.5g(54質量部)、MEO400Mの6.5g(26質量部)、MEOTO800の3.7g(15質量部)、DMの0.8g(3質量部)、isoの0.5g(2質量部)、重合溶媒としてアセトン39.7g、およびジプロピレングリコール5.0g、ACPの0.2g(0.8質量部)、および3MPの0.15g(0.6質量部)を仕込み、窒素雰囲気下で振とうしつつ、65℃で15時間重合を行い、固形分濃度36.6質量%の淡黄色溶液(重合体溶液)を得た。
得られた重合物の分子量をGPCにて確認したところ、数平均分子量14000、質量平均分子量28000であった。また本測定にて単量体由来のピークが存在しないことも確認した。
得られた重合体溶液に対して合成例1と同様の処理を施して固形分濃度が20質量%である水性分散体を得た。得られた水性分散体をキャピラリーガスクロマトグラフィーにて測定したところ、アセトン含有量が1質量%以下、ジプロピレングリコール含有量が4質量%以下であることを確認した。
【0161】
[合成例3:重合体(A)(WOR−1)の合成]
ガラス製ビーカーに、C6FMAの89.3g(74質量部)、STAの8.5g(7質量部)、isoの4.8g(4質量部)、PEO−30の30.2g、EPO−40の6.0g、ATMACの6.0g、水の144.4gおよびジプロピレングリコールの36.2g、DoSHの1.2gを入れ、60℃で30分間加温した後、ホモミキサー(日本精機製作所社製、バイオミキサー)を用いて混合して混合液を得た。
得られた混合液を、60℃に保ちながら高圧乳化機(APVラニエ社製、ミニラボ)を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液の300gをステンレス製反応容器に入れ、40℃以下となるまで冷却した。VA061Aの5.2gを加えて、気相を窒素置換した後、VCMの18.1g(15質量部)を導入し、撹拌しながら60℃で15時間重合反応を行い、固形分濃度34.5%の重合体エマルションを得た。この重合体固形(100質量%)中のフッ素原子の割合は42.3質量%であった。
また得られた重合体の分子量をGPCにて確認したところ、数平均分子量16000、質量平均分子量28000であった。また本測定にて単量体由来のピークが存在しないことも確認した。
【0162】
[合成例4:重合体(A)(WOR−2)の合成]
ガラス製ビーカーに、C6FMAの89.3g(74質量部)、STAの13.6g(13質量部)、isoの4.8g(4質量部)、PEO−30の30.2g、EPO−40の6.0g、ATMACの6.0g、水の144.4g、ジプロピレングリコールの36.2g、DoSHの1.2gを入れ、60℃で30分間加温した後、ホモミキサーを用いて混合して混合液を得た。
得られた混合液を、60℃に保ちながら高圧乳化機を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液の300gをステンレス製反応容器に入れ、40℃以下となるまで冷却した。VA061Aの5.2gを加えて、気相を窒素置換した後、VCMの12.0g(9質量部)を導入し、撹拌しながら60℃で15時間重合反応を行い、固形分濃度34.7%の重合体エマルションを得た。この重合体固形(100質量%)中のフッ素原子の割合は42.3質量%であった。
また得られた重合体の分子量をGPCにて確認したところ、数平均分子量15000、質量平均分子量27000であった。また本測定にて単量体由来のピークが存在しないことも確認した。
【0163】
[合成例5:重合体(B)(WOR−3)]
ガラス製ビーカーに、C6FMAの98.6g(90質量部)、VMAの5.5g(5質量部)、AGE−10の32.8g、水の141.5g、ジプロピレングリコールの11g、StSHの0.5gを入れ、60℃で30分間加温した後、ホモミキサーを用いて混合して混合液を得た。
得られた混合液を、60℃に保ちながら高圧乳化機を用いて、40MPaで処理して乳化液を得た。得られた乳化液の250gをステンレス製反応容器に入れ、2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)の0.3gを加えて、30℃以下に冷却した。気相を窒素置換した後、VCMの5.5g(5質量部)を導入し、撹拌しながら65℃で15時間重合反応を行い、固形分濃度34.2質量%の重合体エマルションを得た。この重合体固形(100質量%)中のフッ素原子の割合は51.5質量%であった。
また得られた重合体の分子量をGPCにて確認したところ、数平均分子量29000、質量平均分子量65000であった。また本測定にて単量体由来のピークが存在しないことも確認した。
【0164】
【表4】

【0165】
[実施例および比較例]
上記合成例1,2で得た重合体(C)の水性分散体、合成例3、4で得た重合体(A)のエマルション、および合成例5で得た重合体(B)のエマルションを、表5〜8の重合体組成に示す組み合わせで用いて撥水はつ油防汚剤組成物を調製した。撥水はつ油防汚剤組成物には表5〜8に示す架橋剤および必要に応じて架橋触媒を、該表に示す添加量(質量%)で添加した。また、撥水はつ油防汚剤組成物(100質量%)中における各重合体の固形分濃度が表5〜8に示す濃度となるように、必要に応じてイオン交換水を添加した。
表5〜8に示す架橋剤および架橋助剤は以下の通りである。
架橋剤:
・M3:メラミン系架橋剤、ベッカミンM−3(製品名)、大日本インキ化学工業社製。
・TP10:ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、メイカネートTP−10(製品名)、明成化学工業社製。
・WEB:ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、メイカネートWEB(製品名)、明成化学工業社製。
架橋触媒:
・ACX:メラミン系架橋剤M3の触媒、キャタリストACX(製品名)、大日本インキ化学工業社製。
・105:非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、アクアネート105(製品名)、日本ポリウレタン工業製。
・304:非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤、バイビジュール304(製品名)、住化バイエルウレタン社製。
・V02L2:カルボジイミド系架橋剤、カルボジライトV02−L2(製品名)、日清紡績社製。
・WS700:オキサゾリン系架橋剤、エポクロスWS−700(製品名)、日本触媒社製。
【0166】
(実施例1)
上記合成例1で得た重合体(SR−1)の水性分散体、合成例3で得た重合体(WOR−1)のエマルション、および合成例5で得た重合体(WOR−3)のエマルションを、各重合体の固形分濃度が表5に示す重合体組成(単位:質量%)となるように混合するとともに、試験布の材質がPETまたはTCの場合には、メラミン系架橋剤としてM3を濃度が0.3質量%となるように添加し、かつ架橋助剤としてACXを濃度が0.3質量%となるように添加した。試験布の材質がCの場合には、イソシアネート系架橋剤としてTP−10を濃度が1質量%となるように添加し、架橋助剤は使用しなかった。
こうして得られた撥水はつ油剤組成物を用い、上記の方法で試験布を作製し、上記の評価方法で撥水性、はつ油性、およびSR性を評価した。その結果を表5に示す。
【0167】
(比較例1〜3)
実施例1において、重合体組成を表5に示す通りに変更して撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表5に示す。
比較例1〜3では重合体(A)と重合体(B)のいずれか一方と、重合体(C)を用いた。
【0168】
【表5】

【0169】
(実施例2〜4)
実施例1において、重合体組成を表6に示す通りに変更して撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例1と同様にして評価を行った。その結果を表6に示す。
【0170】
(実施例5)
実施例1において、重合体組成、架橋剤および触媒を表6に示す通りに変更して撥水はつ油剤組成物を調製した。
すなわち、重合体(SR−2)の固形分濃度0.6質量%、重合体(WOR−1)の固形分濃度0.5質量%、重合体(WOR−3)の固形分濃度0.5質量%、メラミン系架橋剤としてベッカミンM−3の0.3質量%、触媒としてACXの0.3質量%、ブロックタイプイソシアネート系架橋剤としてTP−10の1質量%、およびイオン交換水を含有する撥水はつ油剤組成物を調製した。
こうして得られた撥水はつ油剤組成物を用い、実施例1と同様にして評価を行った。ただし、本例では試験布としてPETおよびTCのみを用いた。評価結果を表6に示す。
【0171】
(実施例6)
実施例5において、ブロックタイプイソシアネート系架橋剤をWEBに変えた以外は実施例5と同様にして撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例5と同様にして評価を行った。その結果を表6に示す。
【0172】
【表6】

【0173】
(比較例4〜6)
実施例2において、重合体組成を表7に示す通りに変更して撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例2と同様にして評価を行った。その結果を表7に示す。
比較例4〜6では重合体(A)と重合体(B)のいずれか一方と、重合体(C)を用いた。
【0174】
(比較例7)
実施例5において、重合体組成を表7に示す通りに変更して撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例5と同様にして評価を行った。その結果を表7に示す。
本例では重合体(A)と重合体(C)を用い、重合体(B)を用いなかった。
【0175】
(比較例8)
実施例6において、重合体組成を表7に示す通りに変更して撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例6と同様にして評価を行った。その結果を表7に示す。
本例では重合体(A)と重合体(C)を用い、重合体(B)を用いなかった。
【0176】
【表7】

【0177】
(実施例7)
実施例1において、重合体組成、架橋剤および触媒を表8に示す通りに変更して撥水はつ油剤組成物を調製した。
すなわち、重合体(SR−2)の固形分濃度0.6質量%、重合体(WOR−1)の固形分濃度0.5質量%、重合体(WOR−3)の固形分濃度0.5質量%、非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤として105の0.3質量%、およびイオン交換水を含有する撥水はつ油剤組成物を調製した。
こうして得られた撥水はつ油剤組成物を用い、実施例1と同様にして評価を行った。評価結果を表8に示す。
(実施例8)
実施例7において、非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤を304に変えた以外は実施例7と同様にして撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例7と同様にして評価を行った。その結果を表8に示す。
【0178】
(実施例9)
実施例7において、架橋剤をカルボジイミド系架橋剤であるV02L2の1.0質量%に変えた以外は実施例7と同様にして撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例7と同様にして評価を行った。その結果を表8に示す。
(実施例10)
実施例7において、架橋剤をオキサゾリン系架橋剤であるWS700の1.0質量%に変えた以外は実施例7と同様にして撥水はつ油剤組成物を調製し、実施例7と同様にして評価を行った。その結果を表8に示す。
【0179】
【表8】

【0180】
表5の結果より、重合体(A)、(B)、(C)を用いた実施例1は、重合体(A)と重合体(B)のいずれか一方を用いなかった比較例1〜3に比べて、撥水性、はつ油性、SR性がいずれも良好である。特に、重合体(B)を用いなかった比較例1、2は実施例1に比べてSR性が劣る。また重合体(A)を用いなかった比較例3は実施例1に比べて洗濯耐久性が劣る。
表6、7の結果より、重合体(A)、(B)、(C)を用いた実施例2は撥水性、はつ油性、SR性がいずれも良好である。特に実施例2に比べて、重合体(B)を用いなかった比較例4、5はSR性が劣し、比較例5は撥水性も劣っている。
また実施例2に比べて、重合体(A)を用いなかった比較例6は撥油性にやや劣るほか、特に洗濯回数の増加に伴う撥水性の低下が大きい。
重合体(A)、(B)、(C)を用いた実施例5は、重合体(B)を用いなかった比較例7に比べて、撥水性、はつ油性、SR性がいずれも良好である。
重合体(A)、(B)、(C)を用いた実施例6は、重合体(B)を用いなかった比較例8に比べて、撥水性、はつ油性、SR性がいずれも良好である。
また表6において、実施例2〜4を比較すると、重合体(B)の含有割合が少ない実施例3,4ではSR性がやや低下する傾向がある。架橋剤としてメラミン系架橋剤とイソシアネート系架橋剤TP−10を併用した実施例5は実施例2に比べて、特に試験布がTCの場合の撥水性が向上した。架橋剤としてメラミン系架橋剤とイソシアネート系架橋剤WEBを併用した実施例6は、実施例2に比べて試験布がTCの場合のはつ油性(OR)が向上し、試験布がPETの場合のコーン油に対するSR性がやや劣る傾向が見られた。
また表8において、架橋剤として非ブロックタイプイソシアネート系架橋剤を使用した実施例7、8では、良好な洗濯耐久撥水はつ油性を示すがSR性はやや低下する傾向がある。架橋剤としてカルボジイミド系架橋剤やオキサゾリン系架橋剤を使用した実施例9、10では、良好なSR性を示すが、洗濯耐久撥水はつ油性はやや低下する傾向があった。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】本発明におけるフッ素原子の割合の測定に用いられる装置を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0182】
1 酸素ボンベ
2 フローメーター
3 水
3a 水蒸気供給フラスコ
4 水蒸気供給炉
5 温度計
7 石英管
8 サンプルボート
9a サンプル炉
9b 分解炉
10 シリカウール
11 冷却器
12 吸収用三角フラスコ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記単量体(a)に基づく構成単位と、下記単量体(b)に基づく構成単位と、下記単量体(c)に基づく構成単位とを有し、重合体(A)(100質量%)中のフッ素原子の割合が15質量%以上45質量%未満である重合体(A)、
下記単量体(a)に基づく構成単位と、下記単量体(b)に基づく構成単位と、下記単量体(c)に基づく構成単位とを有し、重合体(B)(100質量%)中のフッ素原子の割合が45質量%以上である重合体(B)、および
下記単量体(a)に基づく構成単位と、下記単量体(d)に基づく構成単位を有する重合体(C)を含有し、
前記重合体(A)と前記重合体(B)との質量比((A)/(B))が、10/90〜95/5であり、かつ
前記重合体(A)および前記重合体(B)の合計{(A)+(B)}と、前記重合体(C)との質量比({(A)+(B)}/(C))が、5/95〜95/5であることを特徴とする撥水はつ油防汚剤組成物。
単量体(a):フッ素原子が結合している炭素原子の数が4〜6のポリフルオロアルキル基(ただし、該ポリフルオロアルキル基はエーテル性の酸素原子を含んでいてもよい。)を有する単量体。
単量体(b):ポリフルオロアルキル基を有さず、炭素数が12以上のアルキル基を有する単量体。
単量体(c):塩化ビニルまたは塩化ビニリデン。
単量体(d):ポリフルオロアルキル基を有さず、アルキレンオキシド基、アミノ基、ヒドロキシ基、アクリルアミド基、カルボキシ基、リン酸基、スルホン基からなる群から選ばれる一種以上の親水性基を有する単量体。
【請求項2】
前記重合体(A)、前記重合体(B)、および前記重合体(C)のうち少なくとも1つの重合体が、下記単量体(e)に基づく構成単位をさらに有する、請求項1記載の撥水はつ油防汚剤組成物。
単量体(e):ポリフルオロアルキル基を有さず、架橋しうる官能基を有する単量体。
【請求項3】
前記重合体(C)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアルキレンオキシド基を有する単量体(d’)に基づく構成単位を有する請求項1または2に記載の撥水はつ油防汚剤組成物
【請求項4】
前記単量体(d’)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアルキレンオキシド基を有し、該アルキレンオキシド基がエチレンオキシド基である単量体(d1)であって、下記式(2)で表わされる化合物である、請求項3に記載の撥水はつ油防汚剤組成物。
CH=CR−G−(CO)q1−R…(2)。
(式中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、q1は1〜50の整数を示す。Gは−COO(CHr1−または−COO(CHt1−NHCOO−(r1は0〜4の整数、t1は1〜4の整数。)を示す。)
【請求項5】
前記単量体(d’)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアルキレンオキシド基を有し、該アルキレンオキシド基が同側鎖中に存在するエチレンオキシド基とテトラメチレンオキシド基を有する単量体(d2)であって、下記式(3)で表わされる化合物である、請求項3に記載の撥水はつ油防汚剤組成物。
CH=CR−G−(CO)q2−(CO)q3−R…(3)。
(式中、R、Rは、それぞれ独立に水素原子またはメチル基を示し、q2、q3は1〜50の整数を示す。Gは−COO(CHr2−または−COO(CHt2−NHCOO−(r2は0〜4の整数、t2は1〜4の整数。)を示す。)
【請求項6】
前記重合体(C)が、ポリフルオロアルキル基を有さずアミノ基を有する単量体(d3)に基づく構成単位を有する請求項1〜5のいずれか一項に記載の撥水はつ油防汚剤組成物。
【請求項7】
前記重合体(C)が、主鎖末端にアニオン性基を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載の撥水はつ油防汚剤組成物。
【請求項8】
さらに、イソシアネート系架橋剤、メラミン系架橋剤、カルボジイミド系架橋剤およびオキサゾリン系架橋剤からなる群から選ばれる少なくとも1種の架橋剤を含有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の撥水はつ油防汚剤組成物。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の撥水はつ油防汚剤組成物を用いて処理された物品。

【図1】
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【公開番号】特開2009−215370(P2009−215370A)
【公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−58243(P2008−58243)
【出願日】平成20年3月7日(2008.3.7)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】