説明

撥水フィルタの取付構造および撥水フィルタを備えた電子装置

【課題】 通気口を有する樹脂カバーに防水用の撥水フィルタを取り付けてなる撥水フィルタの取付構造において、撥水フィルタを熱溶着および超音波溶着のどちらでも溶着可能とし、かつ、部品点数の少ない構造を実現する。
【解決手段】 通気口51を有する樹脂カバー50に撥水フィルタ70を取り付けてなる撥水フィルタの取付構造において、樹脂カバー50の内側には、通気口51と連通する内側開口部52が設けられ、撥水フィルタ70は、内側開口部52を覆うように、樹脂カバー50の内側から樹脂カバー50に対向して配置されており、撥水フィルタ70における樹脂カバー50との対向面71のうち外周部のみに不織布80が取り付けられ、撥水フィルタ70の外周部と樹脂カバー50の内側開口部52における開口縁部52aとが不織布80を介して溶着されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂カバーの内外を連通する通気口に撥水(はっ水)フィルタを取り付けてなる撥水フィルタの取付構造、および、そのような撥水フィルタが取り付けられた樹脂カバーによって電子部品を収納するケースを封止してなる撥水フィルタを備えた電子装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の撥水フィルタの取付構造としては、内側と外側とを連通する通気口を有する樹脂カバーに撥水フィルタを取り付け、当該通気口からの樹脂カバーへの水の浸入を撥水フィルタによって防止するようにしたものが一般的である。
【0003】
このような取付構造において、樹脂カバーに通気口を設けている理由は、樹脂カバーの内部の環境が、高温多湿等の悪環境にならないようにするために、樹脂カバーの内側と外側とで空気を流通させる必要があることによる。
【0004】
そして、樹脂カバーの通気口に撥水フィルタを介在させることで、樹脂カバーの内部への水の浸入防止を図っている。ここで、撥水フィルタは、空気は通すが水は通さないようになっているものである。
【0005】
そして、このような撥水フィルタが取り付けられた樹脂カバーを用いた電子装置においては、電子部品が収納されたケースを封止するように、当該樹脂カバーを当該ケースに対して設け、それによって、樹脂カバーの通気口からのケースへの水の浸入を、撥水フィルタによって防止するようにしている。
【0006】
図3は、従来の一般的な撥水フィルタの取付構造を示す概略断面図である。図3に示されるように、樹脂カバー50には、当該樹脂カバー50の内側と外側とを連通する通気口51が設けられている。
【0007】
そして、撥水フィルタ70は、この通気口51を覆うように樹脂カバー50の外側から、熱溶着あるいは超音波溶着により溶着され接合されている。
【0008】
ここにおいて、撥水フィルタ70の裏面、すなわち溶着が行われる溶着面の全体には、不織布80が貼り付けられており、撥水フィルタ70は、この不織布80を介して樹脂カバー50の外側から溶着されている。
【0009】
このように不織布80を介して撥水フィルタ70と樹脂カバー50とを溶着するのは、撥水フィルタ70の溶着による接合強度を向上させるためである。不織布80を介て溶着した場合には、溶着した樹脂が不織布80に溶け込むことにより、撥水フィルタ70の接合強度が十分に確保される。
【0010】
ここで、不織布は周知のものであり、たとえば、非特許文献1に記載されているように、「短繊維またはフィラメントを機械的、熱的、化学的な手段を用いて接着または交絡させて作るシート状またはウェブ構造のもので、繊維集合体から糸の段階を経ず直接布状とする」ものである。
【0011】
また、この場合、撥水フィルタ70の表面、すなわち溶着面である裏面とは反対側の面が外部に向いているが、この撥水フィルタ70の表面が、泥水などの被水によって目詰まりしたりすることを防止する必要がある。
【0012】
そのために、従来においては、図3に示されるように、さらに、この樹脂カバー50にキャップ200を取り付け、このキャップ200によって、撥水フィルタ70を保護している。なお、キャップ200は、樹脂カバー50の内部を気密に封止するものではなく、空気の流通を確保すべく樹脂カバー50との間に隙間を形成するように、取り付けられている。
【0013】
しかしながら、このように、さらに別部材としてのキャップ200を設けることは、コストの増大を招く。そのため、このようなキャップ200を省略し、部品点数の少ない構造を実現することが要望されている。
【0014】
一方、従来より、少ない部品点数で防水構造を形成する目的で、撥水フィルタの位置決め用の突起部を超音波溶着にて溶かすことにより、撥水フィルタと樹脂カバーとを固定する方法が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平11−111381号公報
【非特許文献1】高橋清 外3名監修、「工業材料大辞典」、初版、株式会社工業調査会、1997年11月20日、P1149
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、上記特許文献1に記載されている方法では、撥水フィルタと樹脂カバーとの固定を、超音波溶着によって溶着することで実現できるものの、熱溶着による固定を適用することができない。
【0016】
そのため、撥水フィルタを樹脂カバーに取り付けてなる取付構造を製造するにあたって、製造可能な製造ラインが限られたり、あるいは、新たな製造設備の投資が必要になるなど、製造上の制約が多くなる。
【0017】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、通気口を有する樹脂カバーに防水用の撥水フィルタを取り付けてなる撥水フィルタの取付構造において、撥水フィルタを熱溶着および超音波溶着のどちらでも溶着可能とし、かつ、部品点数の少ない構造を実現することを目的とする。
【0018】
また、本発明のもう一つの目的は、撥水フィルタが取り付けられた樹脂カバーによって電子部品を収納するケースを封止してなる撥水フィルタを備えた電子装置において、撥水フィルタを熱溶着および超音波溶着のどちらでも溶着可能とし、かつ、部品点数の少ない構造を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、内側と外側とを連通する通気口(51)を有する樹脂カバー(50)に撥水フィルタ(70)を取り付け、通気口(51)からの樹脂カバー(50)の内側への水の浸入を撥水フィルタ(70)によって防止するようにした撥水フィルタの取付構造において、次のような点を特徴とする取付構造が提供される。
【0020】
・樹脂カバー(50)の内側には、通気口(51)と連通する内側開口部(52)が設けられており、撥水フィルタ(70)は、内側開口部(52)を覆うように、樹脂カバー(50)の内側から樹脂カバー(50)に対向して配置されていること。
【0021】
・撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)のうち外周部のみに不織布(80)が取り付けられており、撥水フィルタ(70)の外周部と樹脂カバー(50)の内側開口部(52)における開口縁部(52a)とが不織布(80)を介して溶着されていること。本発明の取付構造は、これらの点を特徴としている。
【0022】
それによれば、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)すなわち溶着面(71)の外周部のみに不職布(80)を取り付けているから、撥水フィルタ(70)の通気性が増すとともにフィルタサイズを小さくすることができ、また、撥水フィルタ(70)の溶着面(71)も撥水性を有するものとなるため、設計の自由度が増す。
【0023】
また、撥水フィルタ(70)と樹脂カバー(50)とを不職布(80)を介して溶着するようにしているから、熱溶着、および、超音波溶着のどちらによっても信頼性の高い接続を行うことができる。
【0024】
また、撥水フィルタ(70)を樹脂カバー(50)の内側から取り付けているため、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)を、樹脂カバー(50)にて覆う構造とすることができ、撥水フィルタ(70)の目詰まりを防止できる。つまり、従来のようなキャップを不要にすることができる。
【0025】
よって、本発明によれば、通気口(51)を有する樹脂カバー(50)に防水用の撥水フィルタ(70)を取り付けてなる撥水フィルタの取付構造において、撥水フィルタ(70)を熱溶着および超音波溶着のどちらでも溶着可能とし、かつ、部品点数の少ない構造を実現することができる。
【0026】
また、請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の撥水フィルタの取付構造において、樹脂カバー(50)の外側の部位には、内側開口部(52)を覆うように、ひさし(53)が設けられており、ひさし(53)とそれに対向する樹脂カバー(50)の外面との隙間が通気口(51)として構成されていることを特徴としている。
【0027】
それによれば、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)を樹脂カバー(50)にて覆う構造として、本発明のような具体的な構造を提供することができる。
【0028】
また、請求項3に記載の発明では、請求項1または請求項2に記載の撥水フィルタの取付構造において、樹脂カバー(50)の通気口(51)が天地方向における地方向へ向いた状態となっていることを特徴としている。
【0029】
それによれば、水が重力に逆らって樹脂カバー(50)の通気口(51)から浸入しにくくなるため、撥水フィルタ(70)が被水しにくいものとすることができ、また、通気口(51)に浸入した水も通気口(51)から抜けやすくでき、好ましい。
【0030】
さらに、請求項4に記載の発明のように、請求項1〜請求項3に記載の撥水フィルタの取付構造においては、不織布(80)は、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)の外周部において、連続した環状に配置されたものにすることが好ましい。
【0031】
また、請求項5に記載の発明のように、請求項1〜請求項4に記載の撥水フィルタの取付構造において、樹脂カバー(50)は、被水が起こる環境にて使用されるものであれば、上記した請求項1〜請求項4の発明の効果が有効に発揮される。
【0032】
請求項6に記載の発明では、電子部品(20)が収納されたケース(10)と、ケース(10)を封止するように設けられた樹脂カバー(50)と、樹脂カバー(50)に設けられケース(10)の内側と外側とを連通する通気口(51)と、樹脂カバー(50)に取り付けられ通気口(51)からのケース(10)への水の浸入を防止するための撥水フィルタ(70)とを備える電子装置において、次のような点を特徴とする電子装置が提供される。
【0033】
・樹脂カバー(50)の内側には、通気口(51)と連通する内側開口部(52)が設けられており、撥水フィルタ(70)は、内側開口部(52)を覆うように、樹脂カバー(50)の内側から前記樹脂カバー(50)に対向して配置されていること。
【0034】
・撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)のうち外周部のみに不織布(80)が取り付けられており、撥水フィルタ(70)の外周部と樹脂カバー(50)の内側開口部(52)における開口縁部(52a)とが不織布(80)を介して溶着されていること。本発明の電子装置は、これらの点を特徴としている。
【0035】
それによれば、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)すなわち溶着面(71)の外周部のみに不職布(80)を取り付けているから、撥水フィルタ(70)の通気性が増すとともにフィルタサイズを小さくすることができ、また、撥水フィルタ(70)の溶着面(71)も撥水性を有するものとなるため、設計の自由度が増す。
【0036】
また、撥水フィルタ(70)と樹脂カバー(50)とを不職布(80)を介して溶着するようにしているから、熱溶着、および、超音波溶着のどちらによっても信頼性の高い接続を行うことができる。
【0037】
また、撥水フィルタ(70)を樹脂カバー(50)の内側から取り付けているため、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)を、樹脂カバー(50)にて覆う構造とすることができ、撥水フィルタ(70)の目詰まりを防止できる。つまり、従来のようなキャップを不要にすることができる。
【0038】
よって、本発明によれば、撥水フィルタ(70)が取り付けられた樹脂カバー(50)によって電子部品(20)を収納するケース(10)を封止してなる撥水フィルタを備えた電子装置において、撥水フィルタ(70)を熱溶着および超音波溶着のどちらでも溶着可能とし、かつ、部品点数の少ない構造を実現することができる。
【0039】
また、請求項7に記載の発明では、請求項6に記載の電子装置において、樹脂カバー(50)の外側の部位には、内側開口部(52)を覆うように設けられたひさし(53)が設けられており、ひさし(53)とそれに対向する樹脂カバー(50)の外面との隙間が通気口(51)として構成されていることを特徴としている。
【0040】
それによれば、上記請求項2に記載の発明と同様に、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)を樹脂カバー(50)にて覆う構造として、本発明のような具体的な構造を提供することができる。
【0041】
また、請求項8に記載の発明では、請求項6または請求項7に記載の電子装置において、樹脂カバー(50)の通気口(51)が天地方向における地方向へ向いた状態で使用されるものであることを特徴としている。
【0042】
それによれば、上記請求項3に記載の発明と同様の理由から、撥水フィルタ(70)が被水しにくいものとすることができ、また、通気口(51)に浸入した水も通気口(51)から抜けやすくでき、好ましい。
【0043】
さらに、請求項9に記載の発明のように、請求項6〜請求項8に記載の電子装置においては、不織布(80)は、撥水フィルタ(70)における樹脂カバー(50)との対向面(71)の外周部において、連続した環状に配置されたものにすることが好ましい。
【0044】
また、請求項10に記載の発明のように、請求項6〜請求項9に記載の電子装置を、被水が起こる環境にて使用されるものとすれば、上記した請求項6〜請求項9の発明の効果が有効に発揮される。
【0045】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各図相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0047】
図1は、本発明の実施形態に係る撥水フィルタを備えた電子装置100の概略断面構成を示す図である。また、図1においては、電子装置100における樹脂カバー50に撥水フィルタ70が取り付けられてなる撥水フィルタの取付構造の概略断面構成が示されている。
【0048】
また、図2は、図1における樹脂カバー50の一部を左方から視たときの概略平面図である。この電子装置100は、たとえば、自動車のエンジンルームなどの温度変化が大きく且つ被水が起こる環境にて搭載され、使用されるものである。
【0049】
図1に示されるように、本実施形態の電子装置100においては、ケース10の内部には、電子部品20が収納されている。また、ケース10の一側の開口部には、放熱フィン30が接着剤などを介して固定されており、それによって、ケース10の一側の開口部は放熱フィン30により覆われている。
【0050】
ここでは、放熱フィン30に配線基板40が接着剤などを介して固定されており、電子部品20は、この配線基板40に実装されたものとなっている。限定するものではないが、たとえば、電子部品20は、はんだ付け、導電性接着剤やワイヤボンディングなどにより、配線基板40と電気的に接続されている。
【0051】
それによって、電子部品20は、ケース10と放熱フィン30によって区画形成された空間に収納されるとともに、電子部品20や配線基板40にて発生する熱は、放熱フィン30から外部へと放熱されるようになっている。
【0052】
ここで、ケース10は、たとえばPPS(ポリプロピレンサルファイド)やPBT(ポリブチレンテレフタレート)などの樹脂材料などを成型することにより作られたものである。また、放熱フィン30は、アルミニウムや銅などの放熱性に優れた材料などからなるものである。
【0053】
また、電子部品20としては、ICチップ、モールドICパッケージ、パワー素子などの発熱素子、抵抗あるいはコンデンサなどの実装部品を採用することができる。また、配線基板40としては、プリント配線基板やセラミック配線基板などを採用することができる。
【0054】
また、ケース10には、外部との電気的な接続を行うためのコネクタ部11が設けられている。このコネクタ部11は、外部の配線部材などと接続可能な図示しないピンを有するものである。なお、このピンは、ケース10を構成する材料を用いてインサート成形などを行うことにより、ケース10に一体に固定されている。
【0055】
また、図1に示されるように、本電子装置100においては、ケース10の他側の開口部を覆うように、ケース10に対して樹脂カバー50が固定されており、この樹脂カバー50により、ケース10の内部が封止されている。
【0056】
ここでは、ケース10と樹脂カバー50とは、エポキシ系樹脂やシリコーン系樹脂などの接着剤60を介して接合され、固定されている。なお、ケース10と樹脂カバー50との固定は、接着に限定されるものではなく、締結手段など、その他の固定方法を用いるようにしてもよい。
【0057】
この樹脂カバー50は、たとえばPPSやPBTなどの樹脂材料などを成型することにより作られたものである。そして、図1、図2に示されるように、樹脂カバー50には、当該樹脂カバーの内側と外側とを連通する、すなわちケース10の内側と外側とを連通する通気口51が設けられている。
【0058】
また、樹脂カバー50の内側には、通気口51と連通する内側開口部52が設けられている。そして、樹脂カバー50の外側の部位には、この内側開口部52を覆うように、ひさし53が設けられており、ひさし53とそれに対向する樹脂カバー50の外面との隙間が通気口51として構成されている。
【0059】
ここでは、図2に示されるように、内側開口部52は円形状の開口部をなしており、通気口51は、この内側開口部52の周辺部から外部へ延びる通路形状をなしている。そして、ケース10の内側と外側との空気の流通は、この通気口51および内側開口部52を介して行われるようになっている。
【0060】
また、本実施形態の電子装置100においては、通気口51からの樹脂カバー50の内側への水の浸入、すなわち、通気口51からのケース10への水の浸入を防止するための撥水フィルタ70が、樹脂カバー50に取り付けられている。
【0061】
この撥水フィルタ70は、通常の撥水フィルタと同様に、たとえばポリエステルなどからなる撥水性を有するフィルタであり、空気は通すが水は通さないようになっているものである。
【0062】
本実施形態では、図1、図2に示されるように、撥水フィルタ70は、内側開口部52を覆うように、樹脂カバー50の内側から樹脂カバー50に対向して配置されている。ここでは、撥水フィルタ70の平面形状は、内側開口部52の開口形状に対応した円形状であり、内側開口部52よりも一回り大きい円形をなしている。
【0063】
そして、この撥水フィルタ70における樹脂カバー50との対向面71のうち外周部のみに不織布80が取り付けられており、撥水フィルタ70の外周部と樹脂カバー50の内側開口部52における開口縁部52aとが不織布80を介して溶着されている。この不織布80は、上記特許文献1に記載されているようなものにできる。
【0064】
ここでは、不織布80は、撥水フィルタ70の対向面71における外周部において、連続した環状に配置されている。本例では、円形状の撥水フィルタ70に合わせて不織布80は連続した円環形状となっている。これら不織布80と撥水フィルタ70とは接着剤などを介して貼り付けられている。
【0065】
また、撥水フィルタ70の溶着は、内側通気口52を覆うように樹脂カバー50の内側に不織布80を介して撥水フィルタ70を配設し、この状態で、熱溶着あるいは超音波溶着を行うことにより行われている。
【0066】
上述したように、不織布80を介して撥水フィルタ70と樹脂カバー50を溶着することにより、溶着した樹脂カバー50が不織布80に溶け込み、それにより、撥水フィルタ70の接合強度が十分に確保される。
【0067】
このような電子装置100は、たとえば、次のようにして製造することができる。ケース10に放熱フィン30を固定するとともに、ケース10内に、電子部品20が実装された配線基板40を収納し固定する。
【0068】
一方で、樹脂カバー50に不織布80を介して撥水フィルタ70を溶着する。そして、この樹脂カバー50とケース10とを接着剤60を介して接合する、こうして、本実施形態の電子装置100ができあがる。
【0069】
そして、この電子装置100は、上述したように、自動車のエンジンルームなどに取り付けられ搭載されるが、ここにおいて、図1に示されるように、本電子装置100は、樹脂カバー50の通気口51が天地方向における地方向へ向いた状態で、搭載されて使用されるものとなっている。
【0070】
このような電子装置100においては、ケース10の内側と外側との空気の流通は、この通気口51、内側開口部52および通気性を有する撥水フィルタ70を介して行われるが、ケース10の外部からの水が、通気口51、内側開口部52を浸入してきても、撥水フィルタ70によって、それ以上の浸入を阻止される。
【0071】
そのため、樹脂カバー50の内部の環境すなわちケース10の内部の環境が、高温多湿等の悪環境にならず、また、ケース10の内部の電子部品20などを水の浸入から保護することができるようになっている。
【0072】
ところで、本実施形態によれば、電子装置100において、内側と外側とを連通する通気口51を有する樹脂カバー50に撥水フィルタ70を取り付け、通気口51からの樹脂カバー50の内側への水の浸入を撥水フィルタ70によって防止するようにした撥水フィルタの取付構造が提供される。
【0073】
また、本実施形態によれば、電子部品20が収納されたケース10と、ケース10を封止するように設けられた樹脂カバー50と、樹脂カバー50に設けられケース10の内側と外側とを連通する通気口51と、樹脂カバー50に取り付けられ通気口51からのケース10への水の浸入を防止するための撥水フィルタ70とを備える電子装置100が提供される。
【0074】
そして、本実施形態によれば、これらの撥水フィルタの取付構造および電子装置100において、次のような点を特徴としたものである。
【0075】
・樹脂カバー50の内側には、通気口51と連通する内側開口部52が設けられており、撥水フィルタ70は、内側開口部52を覆うように、樹脂カバー50の内側から樹脂カバー50に対向して配置されていること。
【0076】
・撥水フィルタ70における樹脂カバー50との対向面71のうち外周部のみに不織布80が取り付けられており、撥水フィルタ70の外周部と樹脂カバー50の内側開口部52における開口縁部52aとが不織布80を介して溶着されていること。
【0077】
これらの点を特徴としている本実施形態の取付構造および電子装置100によれば、撥水フィルタ70における樹脂カバー50との対向面71すなわち溶着が行われる溶着面71の外周部のみに不職布80を取り付けているから、撥水フィルタ70の通気性が増すとともにフィルタサイズを小さくすることができ、また、撥水フィルタ70の溶着面71も撥水性を有するものとなるため、設計の自由度が増す。
【0078】
また、撥水フィルタ70と樹脂カバー50とを不職布80を介して溶着するようにしているから、熱溶着、および、超音波溶着のどちらによっても信頼性の高い接続を行うことができる。
【0079】
また、撥水フィルタ70を樹脂カバー50の内側から取り付けているため、撥水フィルタ70における樹脂カバー50との対向面71を、樹脂カバー50にて覆う構造とすることができ、撥水フィルタ70の目詰まりを防止できる。つまり、従来のようなキャップを不要にすることができる。
【0080】
よって、本実施形態によれば、撥水フィルタの取付構造および電子装置100において、撥水フィルタ70を熱溶着および超音波溶着のどちらでも溶着可能とし、かつ、部品点数の少ない構造を実現することができる。
【0081】
また、本実施形態では、撥水フィルタの取付構造および電子装置100において、樹脂カバー50の外側の部位には、内側開口部52を覆うように、ひさし53が設けられており、ひさし53とそれに対向する樹脂カバー50の外面との隙間が通気口51として構成されていることも特徴のひとつである。
【0082】
それによれば、撥水フィルタ70における樹脂カバー50との対向面71を樹脂カバー50にて覆う構造として、具体的な構造を提供することができ、上記した従来のようなキャップを不要にすることができる。
【0083】
また、本実施形態では、撥水フィルタの取付構造および電子装置100において、樹脂カバー50の通気口51が天地方向における地方向へ向いた状態となっていることも特徴のひとつである。
【0084】
それによれば、水が重力に逆らって樹脂カバー50の通気口51から浸入しにくくなるため、撥水フィルタ70が被水しにくいものとすることができ、また、通気口51に浸入した水も通気口51から抜けやすくでき、好ましい。
【0085】
さらに、本実施形態では、撥水フィルタの取付構造および電子装置100において、不織布80は、撥水フィルタ70における樹脂カバー50との対向面71の外周部において、連続した環状に配置されたものになっていることも特徴のひとつである。
【0086】
それによれば、撥水フィルタ70を熱溶着および超音波溶着のどちらで溶着した場合でも、撥水フィルタ70の接合強度(密着強度)を十分に確保するという効果を適切に発揮することができる。
【0087】
以上述べてきたように、本実施形態によれば、撥水フィルタの小型化と有効利用が図れるとともに、製造上の制約および部品点数の少数化を図ることができ、加工性および耐水性に優れ低コストで高い信頼性を有する撥水フィルタの取付構造および撥水フィルタを備えた電子装置100を提供することができる。
【0088】
(他の実施形態)
なお、上記図2に示される例では、樹脂カバー50の内側開口部52は、円形状の開口形状を有するものであったが、それ以外にも、内側開口部52の開口形状としては、たとえば四角形、三角形などとすることができ、特に限定されるものではない。また、撥水フィルタ70の平面形状は、内側開口部52の開口形状に対応したものとすることはもちろんである。
【0089】
また、上記実施形態では、樹脂カバー50の通気口51を、樹脂カバー50に設けたひさし53により構成したが、通気口の形状は、図示例に限定されるものではない。たとえば、水の浸入をより抑制するために迷路形状としてもよい。
【0090】
また、上記実施形態では、電子装置100は、放熱フィン30を有するものであったが、不要であれば、放熱フィンはないものであってもよい。
【0091】
また、上記実施形態では、電子装置100において、ケース10の内部に収納される電子部品20は配線基板40に実装された状態であったが、ケースに収納される電子部品の形態は、これに限定されるものではない。さらには、ケースには電子部品以外のものが収納されていてもよい。
【0092】
また、本発明の撥水フィルタの取付構造は、上記した樹脂カバー50に代表されるものであるが、この樹脂カバー50は、電子装置におけるケースのカバーとして用いられるものに限定されるものではなく、防水の必要な部材を被覆する樹脂カバーとしてならば、それ以外のものに対しても適用してよい。
【0093】
要するに、本発明は、通気口を有する樹脂カバーに防水用の撥水フィルタを取り付けてなる撥水フィルタの取付構造、または、そのような撥水フィルタが取り付けられた樹脂カバーによって電子部品を収納するケースを封止してなる撥水フィルタを備えた電子装置において、樹脂カバーの内側に通気口と連通する内側開口部を設け、内側開口部を覆うように撥水フィルタを樹脂カバーの内側に対向して配置し、さらに、撥水フィルタにおける樹脂カバーとの対向面のうち外周部のみに不織布を取り付け、撥水フィルタの外周部と樹脂カバーの内側開口部における開口縁部とを不織布を介して溶着したことを要部とするものであり、その他の部分については、適宜設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0094】
【図1】本発明の実施形態に係る撥水フィルタを備えた電子装置の概略断面図である
【図2】図1における樹脂ケースの一部の左視概略平面図である。
【図3】従来の一般的な撥水フィルタの取付構造を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0095】
10…ケース、20…電子部品、50…樹脂カバー、
51…樹脂カバーの通気口、52…樹脂カバーの内側開口部、
52a…内側開口部における開口縁部、53…樹脂カバーのひさし、
70…撥水フィルタ、71…撥水フィルタにおける樹脂カバーとの対向面、
80…不織布。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側と外側とを連通する通気口(51)を有する樹脂カバー(50)に撥水フィルタ(70)を取り付け、前記通気口(51)からの前記樹脂カバー(50)の内側への水の浸入を前記撥水フィルタ(70)によって防止するようにした撥水フィルタの取付構造において、
前記樹脂カバー(50)の内側には、前記通気口(51)と連通する内側開口部(52)が設けられており、
前記撥水フィルタ(70)は、前記内側開口部(52)を覆うように、前記樹脂カバー(50)の内側から前記樹脂カバー(50)に対向して配置されており、
前記撥水フィルタ(70)における前記樹脂カバー(50)との対向面(71)のうち外周部のみに不織布(80)が取り付けられており、
前記撥水フィルタ(70)の外周部と前記樹脂カバー(50)の前記内側開口部(52)における開口縁部(52a)とが前記不織布(80)を介して溶着されていることを特徴とする撥水フィルタの取付構造。
【請求項2】
前記樹脂カバー(50)の外側の部位には、前記内側開口部(52)を覆うように、ひさし(53)が設けられており、
前記ひさし(53)とそれに対向する前記樹脂カバー(50)の外面との隙間が前記通気口(51)として構成されていることを特徴とする請求項1に記載の撥水フィルタの取付構造。
【請求項3】
前記樹脂カバー(50)の前記通気口(51)が天地方向における地方向へ向いた状態となっていることを特徴とする請求項1または2に記載の撥水フィルタの取付構造。
【請求項4】
前記不織布(80)は、前記撥水フィルタ(70)における前記樹脂カバー(50)との対向面(71)の外周部において、連続した環状に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の撥水フィルタの取付構造。
【請求項5】
前記樹脂カバー(50)は、被水が起こる環境にて使用されるものであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の撥水フィルタの取付構造。
【請求項6】
電子部品(20)が収納されたケース(10)と、
前記ケース(10)を封止するように設けられた樹脂カバー(50)と、
前記樹脂カバー(50)に設けられ前記ケース(10)の内側と外側とを連通する通気口(51)と、
前記樹脂カバー(50)に取り付けられ前記通気口(51)からの前記ケース(10)への水の浸入を防止するための撥水フィルタ(70)とを備える電子装置において、
前記樹脂カバー(50)の内側には、前記通気口(51)と連通する内側開口部(52)が設けられており、
前記撥水フィルタ(70)は、前記内側開口部(52)を覆うように、前記樹脂カバー(50)の内側から前記樹脂カバー(50)に対向して配置されており、
前記撥水フィルタ(70)における前記樹脂カバー(50)との対向面(71)のうち外周部のみに不織布(80)が取り付けられており、
前記撥水フィルタ(70)の外周部と前記樹脂カバー(50)の前記内側開口部(52)における開口縁部(52a)とが前記不織布(80)を介して溶着されていることを特徴とする電子装置。
【請求項7】
前記樹脂カバー(50)の外側の部位には、前記内側開口部(52)を覆うように設けられたひさし(53)が設けられており、
前記ひさし(53)とそれに対向する前記樹脂カバー(50)の外面との隙間が前記通気口(51)として構成されていることを特徴とする請求項6に記載の電子装置。
【請求項8】
前記樹脂カバー(50)の前記通気口(51)が天地方向における地方向へ向いた状態で使用されるものであることを特徴とする請求項6または7に記載の電子装置。
【請求項9】
前記不織布(80)は、前記撥水フィルタ(70)における前記樹脂カバー(50)との対向面(71)の外周部において、連続した環状に配置されていることを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1つに記載の電子装置。
【請求項10】
被水が起こる環境にて使用されるものであることを特徴とする請求項6ないし9のいずれか1つに記載の電子装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−196596(P2006−196596A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−5336(P2005−5336)
【出願日】平成17年1月12日(2005.1.12)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】