説明

撥水剤組成物

【解決手段】式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
(XはC6-18の1価炭化水素基、R1、R2は1価炭化水素基、mは1又は2、nは0又は1、m+nは1又は2)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を含む有機ケイ素化合物原料を、加水分解、重縮合することによって得られる環状体オルガノポリシロキサンとリニア体オルガノポリシロキサンを含有するオルガノポリシロキサンであって、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における式(1)で表される化合物由来のピークのアルコキシ基が2つ加水分解縮合し、シロキサン単位となった成分(T2)において、環状体成分を表すピーク成分(T2a)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b)との比率(T2a/T2b)が0.9以上であるオルガノポリシロキサン、
揮発性の有機溶剤
を含有する撥水剤組成物。
【効果】本発明は撥水性及び撥水接続性に優れたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両や建築物等のガラスや繊維用品、多孔質材料などに撥水性を付与する撥水剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスや繊維製品などに撥水性を付与するものとして、種々のフッ素系材料を用いた撥水剤組成物が利用されてきた。このようなフッ素系材料としては、例えば分子内にパーフルオロ基又はフルオロアルキル基を含有するモノマーの重合物、あるいはこれらモノマーと他のモノマーとの共重合物等が用いられている。
【0003】
しかしながら、このようなフッ素系の重合物を用いた撥水剤組成物は、撥水効果は良好であるが、希釈用の溶剤として、大気のオゾン層破壊の一因として挙げられ、地球環境保護の見地からその使用が制限されているようなフッ素系溶剤を使用せざるを得ないという問題があった。また、このような問題のない代替溶剤の検討もなされているが、未だ満足すべき結果は得られていない。
【0004】
そこで、最近では、オゾン層破壊を引き起こすような溶剤を使用する必要がない、シリコーン系材料を用いた撥水剤組成物の検討が行われている。
【0005】
シリコーン系材料を用いた撥水剤組成物としては、例えば、特定の有機溶剤可溶性シリコーン樹脂及び/又は有機溶剤可溶性シリコーングラフトアクリル樹脂と、金属アルコキシドと、オルガノポリシロキサンとからなる撥水剤成分に、有機溶剤と噴射ガスとが配合されたエアゾール型撥水処理剤(特許文献1:特開2000−186279号公報参照)、両末端がアルコキシ基で封鎖されたポリオルガノシロキサンと、金属アルコキシド又はその部分加水分解縮合物と、エタノール又はイソプロパノールとが配合された撥水剤組成物(特許文献2:特許第3496976号公報参照)が提案されている。また、特定のポリオルガノシロキサン樹脂と、直鎖状ジポリオルガノシロキサンと、有機チタン酸エステル又は有機ジルコニウム酸エステル又は有機ゲルマニウム酸エステルなどと、第4級アンモニウム塩基を有する抗菌性シランと、溶剤とを含有する撥水処理剤組成物(特許文献3:特許第3187445号公報参照)、特定のポリオルガノシロキサン樹脂と、アルキル−アルコキシポリシロキサン樹脂と、縮合触媒と、芳香族系溶剤とからなる撥水剤(特許文献4:特開昭63−170484号公報参照)が提案されている。
【0006】
しかしながら、シリコーン系材料を用いた撥水剤組成物は、一般に、フッ素系材料を用いた撥水剤組成物よりも撥水性や撥水持続性が不十分である場合が多く、これら特許文献に記載の撥水剤組成物を使用しても、十分な撥水性や撥水持続性が必ずしも得られない場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−186279号公報
【特許文献2】特許第3496976号公報
【特許文献3】特許第3187445号公報
【特許文献4】特開昭63−170484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、シリコーン系材料を用いた撥水剤組成物において、優れた撥水性と撥水持続性とを付与でき、しかも環境的に安全な溶剤系で使用できる撥水剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討を重ねた結果、
[(A)オルガノポリシロキサン]
下記一般式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
(式中、Xは置換又は非置換の炭素原子数6〜18の1価炭化水素基、R1は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基、R2は炭素原子数1〜3の1価炭化水素基であり、mは1又は2、nは0又は1、m+nは1又は2である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、又は
これと、下記一般式(2)
Z−Y−Si(R2p(OR13-p・・・(2)
〔式中、R1及びR2は上記と同じであり、Yは2価の有機基、又は−R4s−(OSi(R32rO−R4s−基であり、ここでR3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、R4は炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、rは1〜40の整数、sは0又は1である。Zは(OR13-q(R2qSi−基であり、qは0、1、2又は3であり、また、pは0、1、2又は3、p+qは0〜4である。〕
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と
を含む有機ケイ素化合物原料を、加水分解、重縮合することによって得られる環状体オルガノポリシロキサンとリニア体オルガノポリシロキサンを含有するオルガノポリシロキサンであって、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物由来のピークのアルコキシ基が2つ加水分解縮合し、シロキサン単位となった成分(T2成分)において、環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)が0.9以上であるオルガノポリシロキサン、
[(B)溶剤成分]
揮発性の有機溶剤
を含有する撥水剤組成物を用いることにより、基材に対し良好な撥水性能と撥水持続性を付与でき、環境にも優しく、更に撥水剤組成物の保存安定性にも優れることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0010】
従って、本発明は、下記の撥水剤組成物を提供する。
〔請求項1〕
(A)下記一般式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
(式中、Xは置換又は非置換の炭素原子数6〜18の1価炭化水素基、R1は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基、R2は炭素原子数1〜3の1価炭化水素基であり、mは1又は2、nは0又は1、m+nは1又は2である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、又はこの有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、下記一般式(2)
Z−Y−Si(R2p(OR13-p・・・(2)
〔式中、R1及びR2は上記と同じであり、Yは2価の有機基、又は−R4s−(OSi(R32rO−R4s−基であり、ここで、R3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、R4は炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、rは1〜40の整数、sは0又は1である。Zは(OR13-q(R2qSi−基であり、qは0、1、2又は3であり、また、pは0、1、2又は3、p+qは0〜4である。〕
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と
を含む有機ケイ素化合物原料を、加水分解、重縮合することによって得られる環状体オルガノポリシロキサンとリニア体オルガノポリシロキサンを含有するオルガノポリシロキサンであって、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物由来のピークのアルコキシ基が2つ加水分解縮合し、シロキサン単位となった成分(T2成分)において、環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)が0.9以上であるオルガノポリシロキサン、
(B)溶剤成分として揮発性の有機溶剤
を含有することを特徴とする撥水剤組成物。
〔請求項2〕
(A)成分であるオルガノポリシロキサンを製造する際に該オルガノポリシロキサン組成物と分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を使用することを特徴とする請求項1記載の撥水剤組成物。
〔請求項3〕
加水分解縮合触媒が、尿素塩酸塩であることを特徴とする請求項2記載の撥水剤組成物。
〔請求項4〕
(B)成分である揮発性の有機溶剤が、パラフィン系炭化水素及び/又はシリコーンオイルを主剤とする有機溶剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の撥水剤組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明の撥水剤組成物は撥水性及び撥水接続性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】合成例2で得られたオルガノポリシロキサン1のケイ素核磁気共鳴スペクトルである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明につき更に詳しく説明する。
[(A)成分]
本発明の撥水剤組成物の主剤となる(A)オルガノポリシロキサン成分は、上述したように下記一般式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、又は
これと、下記一般式(2)
Z−Y−Si(R2p(OR13-p・・・(2)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物とを含む有機ケイ素化合物原料を加水分解縮合したものであり、生成するオルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を使用して加水分解、重縮合することにより得られるオルガノポリシロキサンを使用することが特徴である。
【0014】
式(1)におけるXは、置換又は非置換の炭素原子数6〜18の1価炭化水素基であり、アルキル基、特に直鎖状のアルキル基であることが好ましく、また置換基としては、炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子で置換した基が挙げられ、好ましくは非置換の基である。例えば、C613−基、C817−基、C1021−基、C1225−基、C1429−基、C1633−基、C1837−基等が挙げられる。R1は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等が挙げられ、メチル基、エチル基が好ましい。R2は炭素原子数1〜3の1価炭化水素基であり、メチル基、エチル基、プロピル基等が挙げられ、メチル基が好ましい。また、mは1又は2、nは0又は1、m+nは1又は2である。好ましくは、mが1、nが0、m+nは1である。
【0015】
このような化合物の例としては、C613Si(OCH33、C613SiCH3(OCH32、C613Si(OCH2CH33、C613SiCH3(OCH2CH32、C817Si(OCH33、C817SiCH3(OCH32、C817Si(OCH2CH33、C817SiCH3(OCH2CH32、C1021Si(OCH33、C1021SiCH3(OCH32、C1021Si(OCH2CH33、C1021SiCH3(OCH2CH32、C1225Si(OCH33、C1225SiCH3(OCH32、C1225Si(OCH2CH33、C1225SiCH3(OCH2CH32、C1429Si(OCH33、C1429SiCH3(OCH32、C1429Si(OCH2CH33、C1429SiCH3(OCH2CH32、C1633Si(OCH33、C1633SiCH3(OCH32、C1633Si(OCH2CH33、C1633SiCH3(OCH2CH32、C1837Si(OCH33、C1837SiCH3(OCH32、C1837Si(OCH2CH33、C1837SiCH3(OCH2CH32等が挙げられる。
【0016】
式(2)中のR1、R2は式(1)と同じである。また、Yはハロゲン原子を含んでもよい炭素原子数1〜20のアルキレン基等の2価の有機基、又は−R4s−(OSi(R32rO−R4s−基である(ここで、R3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等のアルキル基が挙げられ、特にメチル基が好ましい。また、R4は炭素原子数1〜6の2価炭化水素基であり、具体的には−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−等のアルキレン基が挙げられる。rは1〜40の整数、sは0又は1である。)。具体的には下記のものを例示することができるが、これに限定されるものではない。
【0017】
−CH2−、−CH2CH2−、−CH2CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、
−CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2−、
−CH248CH2−、−CH2612CH2−、
−(OSi(CH322O−、−(OSi(CH324O−、
−(OSi(CH326O−、−(OSi(CH328O−、
−(OSi(CH3210O−、−(OSi(CH3220O−、
−(OSi(CH3230O−、−(OSi(CH322O−CH2−、
−(OSi(CH324O−CH2−、−(OSi(CH326O−CH2−、
−(OSi(CH328O−CH2−、−(OSi(CH3210O−CH2−、
−(OSi(CH3220O−CH2−、−(OSi(CH3230O−CH2−、
−(OSi(CH322O−CH2CH2−、
−(OSi(CH324O−CH2CH2−、
−(OSi(CH326O−CH2CH2−、
−(OSi(CH328O−CH2CH2−、
−(OSi(CH3210O−CH2CH2−、
−(OSi(CH3220O−CH2CH2−、
−(OSi(CH3230O−CH2CH2−、
−CH2CH2−(OSi(CH322O−CH2CH2−、
−CH2CH2−(OSi(CH324O−CH2CH2−、
−CH2CH2−(OSi(CH326O−CH2CH2−、
−CH2CH2−(OSi(CH328O−CH2CH2−、
−CH2CH2−(OSi(CH3210O−CH2CH2−、
−CH2CH2−(OSi(CH3220O−CH2CH2−、
−CH2CH2−(OSi(CH3230O−CH2CH2−。
【0018】
pとしては0、1、2又は3、好ましくは0又は1であり、特に撥水性を高めるにはp=0が好ましい。
また、Zは(OR13-q(R2qSi−基であり、R1、R2は式(1)と同じである。
qは0、1、2又は3、好ましくは0又は1であり、特にq=0が好ましい。
(2)で表される有機ケイ素化合物は、撥水持続性等の特性を優れたものとするために、分子中に2つ以上のアルコキシ基を有する必要があるため、p+qは0〜4であり、好ましくは0〜2である。
【0019】
これらを満たす有機ケイ素化合物の具体例としては、
(CH3O)3SiCH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(OCH33
(CH3O)2(CH3)SiCH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)3SiCH2CH248CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2612CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2816CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH21020CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH248CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2612CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH2816CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)2(CH3)SiCH2CH21020CH2CH2Si(CH3)(OCH32
(CH3O)3Si(OSi(CH32)OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH322OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH324OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH326OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH328OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH3210OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH3220OSi(OCH33
(CH3O)3Si(OSi(CH3230OSi(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH322Si(CH32CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH324Si(CH32CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH326Si(CH32CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH328Si(CH32CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH3210Si(CH32CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH3218Si(CH32CH2CH2Si(OCH33
(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH3228Si(CH32CH2CH2Si(OCH33
(CH33Si(OSi(CH324OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH326OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH328OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH329OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3210OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3220OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3230OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3240OSi(OCH33
(CH33Si(OSi(CH323OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
(CH33Si(OSi(CH325OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
(CH33Si(OSi(CH327OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
(CH33Si(OSi(CH328OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
(CH33Si(OSi(CH329OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3219OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3229OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
(CH33Si(OSi(CH3239OSi(CH32SiCH2CH2(OCH33
等が挙げられる。
【0020】
上記有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を加水分解、縮合する場合において、各有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物のモル比は特に限定されない。式(1)の化合物単独でもよいが、撥水特性、特に撥水維持性や耐久性を付与する目的で式(2)の化合物を加えた方がより好ましい。その際のモル比は、式(1)の化合物1モルに対して式(2)の化合物を0〜0.5モルが好ましく、より好ましくは0.01〜0.3モル、特に好ましくは0.02〜0.2モルである。この式(2)の比率が0.5以上となると撥水性能がやや悪くなる場合がある。
【0021】
また、本発明の効果を損なわない範囲で、式(1),(2)以外のシラン、シロキサン化合物を必要に応じて使用してもよい。
【0022】
本発明の(A)オルガノポリシロキサンを製造する際には、生成するオルガノポリシロキサン組成物と分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を使用するのが好ましい。このようなオルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解触媒は、特に限定されないが、特に尿素と塩酸との塩である尿素塩酸塩が好ましく、更に好ましくは尿素塩酸塩のアルコール溶液が好ましい。使用されるアルコールは、特に限定されないが、例えばメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等が挙げられる。
【0023】
本発明に用いる加水分解縮合触媒の使用量も特に限定されないが、式(1)の化合物1molに対し、又は式(1)と(2)の化合物のトータル1molに対し、0.001mol以上加えればよく、好ましくは0.01〜20mol程度であり、より好ましくは0.1〜5mol程度である。少なすぎると、加水分解縮合に時間がかかり、またモノマー残存量が多くなることがあり、多すぎると、オルガノポリシロキサン組成物と分離状態が悪くなったり、また経済的にも不利である。
【0024】
アルコール添加量も任意であるが、加水分解縮合触媒とアルコールとの合計量中に1〜99質量%程度であり、特に10〜60質量%程度が好ましい。
【0025】
特に好ましく使用する触媒である尿素塩酸塩の調製方法は、特に限定されないが、尿素をアルコール中に分散させ、濃塩酸あるいは塩酸水を加えて調製した尿素塩酸塩の含水アルコール溶液を使用してもよく、またハロゲノシランと尿素を分散させた中に、アルコールを加えてハロゲノシランをアルコキシ化し、その際に生成する尿素塩酸塩をそのまま加水分解縮合触媒として使用してもよく、また、このようにして調製した尿素塩酸塩を分離し、本発明で使用する有機ケイ素化合物の加水分解縮合触媒として使用することも可能である。
【0026】
(A)成分のオルガノポリシロキサンを製造する際の加水分解、重縮合に使用する水の使用量は、生成させるオルガノポリシロキサン混合物にはモノマーを含まず、なるべく重合度が高くなることが好ましく、使用する有機ケイ素化合物の加水分解可能な全アルコキシ基1molに対して、水を0.3〜5モル使用することが好ましく、より好ましくは0.5〜3mol、特に好ましくは0.8〜2.0molである。
この量が少なすぎると分子量が上がらず、撥水性能や撥水持続性が不十分な場合がある。またこの量が多すぎると保存安定性が悪くなる場合がある。
【0027】
加水分解反応を行う際の水の添加方法は任意であり、例えば、有機ケイ素化合物と無水状態の加水分解縮合触媒存在下に、水を加えて加水分解反応を行えばよく、その際アルコール等の溶剤に希釈して加えてもよい。
【0028】
また、前述したように尿素と濃塩酸あるいは塩酸水を混合することで加水分解縮合触媒を調製した場合には、有機ケイ素化合物に調製した含水加水分解縮合触媒を加えることで反応を行ってもよい。
【0029】
また、調製した含水加水分解縮合触媒中に有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物を加えて、加水分解、縮合反応を行ってもよい。
【0030】
加水分解、縮合反応の際、必要に応じてアルコール類、エーテル類、エステル類、ケトン類、脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素類等の有機溶媒を使用してもよい。これらの有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール類、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、アセト酢酸エチル等のエステル類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等が挙げられる。但し、これらの溶媒を加えた場合も有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物から得られるポリシロキサンと加水分解縮合触媒とが分離状態となっている必要があるため、このような溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、デカン等の脂肪族炭化水素類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類等がより好ましい。
【0031】
加水分解、縮合反応は−10〜150℃の温度範囲で実施すればよいが、一般的には、0℃より低い温度では反応の進行が遅くなるため実用的でなく、また高温すぎる場合もゲル状物となったり、有機官能基への悪影響が発生するため、0〜130℃の温度範囲とすることが好ましく、更に好ましくは10〜100℃の温度範囲である。
【0032】
反応後、使用した触媒は分離して除去すればよく、また加水分解して生成したアルコール類、あるいは使用した溶剤、低沸点類の留去などによる精製工程を行った後、触媒を分離してもよい。
【0033】
本発明における(A)成分を得るための加水分解、縮合反応は、加水分解縮合触媒と生成したオルガノポリシロキサンとが分離状態となることが重要であり、これにより加水分解縮合触媒の溶液に溶解しやすいモノマーあるいは低分子量体が優先的に加水分解されることでモノマーあるいは低分子量体成分含有量が少なくなり、高分子量体を得ることができる。一般的に炭化水素基が長くなるにつれて、有機ケイ素化合物の加水分解性は悪くなり、モノマーが残存したり、分子量が上がらない傾向があり、そのようなものを撥水剤組成物として使用しても良好な撥水性能を得ることが今まではできなかったが、この方法ではモノマーを残存させずに容易に高分子化することが可能である。
【0034】
また、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物由来のピークのアルコキシ基が2つ加水分解縮合しシロキサン単位となった成分(T2成分)において、環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)が0.9以上となり、環状体成分量の多いポリシロキサン混合物が得られることもこの方法の特徴であり、このようなものを撥水剤組成物として使用することにより、良好な撥水性能と撥水維持性、耐久性、また安定性にも優れることが特徴である。
【0035】
[(B)成分]
(B)成分は、上述の(A)成分を溶解する溶媒として使用されるものであり、揮発性の有機溶剤であれば特に限定はされないが、環境保全性、安全性の面から、特にパラフィン系炭化水素及び/又はシリコーンオイルを主剤とする揮発性の有機溶剤系が好ましい。なお、主剤とは(B)成分中50質量%以上、特に80質量%以上含有することをいう。パラフィン系炭化水素としては、特にイソパラフィン、即ち8〜16の炭素原子を含有する分岐アルカンであるものが好ましい。例えば、”Isopar”の商品名で販売されているもの、ペルメチル製品、特にイソドデカン(2,2,4,4,6−ペンタメチルヘプタンとしても知られている)である。いうまでもなく、このようなイソパラフィンの混合物も使用可能である。他の揮発性炭化水素ベースのオイル、例えば、石油精製物、特に、”Shell”社から”Shell Solt”の商品名で販売されているものもまた使用可能である。
【0036】
また、シリコーンオイルとしては、例えば、環状の揮発性シリコーンや直鎖状の揮発性シリコーンが挙げられ、環状の揮発性シリコーンとしては、例えば、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ヘキサデカメチルシクロヘキサシロキサン等が挙げられ、直鎖状の揮発性シリコーンとしては、例えば、オクタメチルトリシロキサン、ヘプタメチルヘキシルトリシロキサン、ヘプタメチルオクチルトリシロキサン等が挙げられる。
【0037】
撥水剤組成物として、上記(A)成分と(B)成分との混合割合は、特に限定されないが、(A):(B)=0.1〜30:99.9〜70(質量%比)が好ましい。特に好ましくは0.5〜10:99.5〜90(質量%比)である。この時の(A)の比率が0.1より少ないと撥水性能が弱い場合がある。
【0038】
また、本発明の撥水剤組成物は、(A),(B)成分の他に従来撥水剤組成物やコーティング剤組成物の添加剤として公知の添加剤等の任意成分を撥水性能や安定性を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0039】
本発明の撥水剤組成物の対象物としてはなんら限定されないが、自動車、航空機、電車等の車両用ガラス基材、建築・建材のガラス基材や外壁、衣類や皮革等の繊維製品、紙またコンクリートやレンガ、石、陶器、瓦、木材のような多孔質基材などに使用可能である。
【0040】
塗布方法や容器も特に限定されないが、塗布方法としては、刷毛塗り、ディッピング、スポンジ塗りなど一般的な方法で差し支えない。また適当な容器に封入し、スプレー塗りなども可能である。
【0041】
このような方法で基材に対してフッ素系材料並みの撥水性、撥水維持性、耐久性を付与でき、また保存安定性にも優れており、環境保全性にも優れているという特徴を有するものである。
【実施例】
【0042】
以下、本発明を合成例、実施例及び比較例により更に具体的に説明するが、実施例は本発明の単なる例示を意図するものに過ぎない。本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例によって限定されることはない。
【0043】
なお、実施例で得られたオルガノポリシロキサンの分析は、以下に示した方法で実施した。
(1)オルガノポリシロキサンの平均分子量であるポリスチレン換算分子量における重量平均分子量(Mw)をポリスチレン標準サンプルから作成した検量線を基準として算出した。
(2)ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析におけるアルコキシ基が2つ加水分解縮合し、シロキサン単位となった成分(T2成分)は、例えば官能基がアルキル基の場合、−55〜−61ppmのピークであり、
環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)はT2成分のうちの前半部分のピークであり、例えば官能基がアルキル基の場合、−55〜−59ppmの範囲のピークの積分値であり、リニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)は−59〜−61ppmの範囲のピークの積分値である。このT2成分のピーク範囲は官能基の種類によって異なるが、全体のピーク形状からどの位置がT2成分であり、そのうちの前半部分がT2a成分であることは判断可能である(図1を参考例として示す)。
【0044】
[合成例1]
触媒の調製
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量300mLのフラスコに、メタノール60g(1.875mol)、尿素66g(1.1mol)を仕込み、内温22℃にて、濃塩酸(塩酸濃度35質量%)100gをゆっくり滴下した。溶液は発熱し、35℃まで上昇した。滴下終了後、撹拌を続けたところ、30分で25℃まで温度が低下したことから撹拌を停止し、尿素塩酸塩の含水メタノール溶液を得た。
【0045】
[合成例2]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、C1225Si(OCH33 145g(0.5mol)及びC1429Si(OCH33 160g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、合成例1にて調製した尿素塩酸塩の含水メタノール溶液62.6g(水1.0mol)をゆっくり滴下した。滴下には30分を要した。滴下終了後、70〜65℃にて3時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、生成したポリシロキサンと尿素塩酸塩触媒層は分離状態であった。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン1は266gであった。
このもののキャノンフェンスケ粘度計による(以下同じ)25℃における粘度は50.5mm2/sであり、25℃における比重は0.924であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,360であり、図1のケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は3.6であった。
【0046】
[合成例3]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225SiCl3 152g(0.5mol)及びC1429SiCl3 167g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、メタノール64g(2.0mol)を滴下し、脱塩酸反応を行った。その後、尿素を66g(1.1mol)添加し、撹拌を続けた。更に、65℃にて、メタノール38.4g(1.2mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、更に65℃にて、2時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、フラスコ内は、メトキシ化して生じた、C1225Si(OCH33 145g及びC1429Si(OCH33と発生した塩酸により生成した尿素塩酸塩が分離した状態であることが確認できた。この反応液を再度撹拌し、65℃にて、水54g(3mol)をゆっくり滴下した。滴下には15分を要した。滴下終了後、65℃にて3時間撹拌を続けた。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン2は251gであった。
このものの25℃における粘度は239mm2/sであり、25℃における比重は0.948であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,778であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は5.5であった。
【0047】
[合成例4]
合成例3における水の量を108g(6.0mol)とし、他は同様に操作を行ったところ、オルガノポリシロキサン3を267g得た。
このものの25℃における粘度は251mm2/sであり、25℃における比重は0.94であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,796であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は8.6であった。
【0048】
[合成例5]
合成例2におけるC1225Si(OCH33及びC1429Si(OCH33を、C1021Si(OCH33 262g(1.0mol)とし、合成例1にて調製した尿素塩酸塩の含水メタノール溶液を93.8g(水1.5mol)とした他は同様に操作を行ったところ、オルガノポリシロキサン4を203g得た。
このものの25℃における粘度は93.0mm2/sであり、25℃における比重は0.941であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,430であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は2.3であった。
【0049】
[合成例6]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225SiCl3 152g(0.5mol)及びC1429SiCl3 167g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、メタノール64g(2.0mol)を滴下し、脱塩酸反応を行った。その後、尿素を66g(1.1mol)添加し、撹拌を続けた。更に、65℃にて、メタノール38.4g(1.2mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、更に65℃にて、2時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、フラスコ内は、メトキシ化して生じた、C1225Si(OCH33 145g及びC1429Si(OCH33と発生した塩酸により生成した尿素塩酸塩が分離した状態であることが確認できた。ここに、(CH33Si(OSi(CH329OSi(OCH33 8.8g(0.01mol)を添加し、再度撹拌し、65℃にて、水54g(3mol)をゆっくり滴下した。滴下には15分を要した。滴下終了後、65℃にて3時間撹拌を続けた。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン5は260gであった。
このものの25℃における粘度は200mm2/sであり、25℃における比重は0.940であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,987であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は3.6であった。
【0050】
[合成例7]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225SiCl3 152g(0.5mol)及びC1429SiCl3 167g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、メタノール64g(2.0mol)を滴下し、脱塩酸反応を行った。その後、尿素を66g(1.1mol)添加し、撹拌を続けた。更に、65℃にて、メタノール38.4g(1.2mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、更に65℃にて、2時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、フラスコ内は、メトキシ化して生じた、C1225Si(OCH33 145g及びC1429Si(OCH33と発生した塩酸により生成した尿素塩酸塩が分離した状態であることが確認できた。ここに、(CH33Si(OSi(CH3230OSi(OCH33 26.2g(0.01mol)を添加し、再度撹拌し、65℃にて、水54g(3mol)をゆっくり滴下した。滴下には15分を要した。滴下終了後、65℃にて3時間撹拌を続けた。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン6は272gであった。
このものの25℃における粘度は257mm2/sであり、25℃における比重は0.944であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は2,282であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は3.6であった。
【0051】
[合成例8]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225SiCl3 152g(0.5mol)及びC1429SiCl3 167g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、メタノール64g(2.0mol)を滴下し、脱塩酸反応を行った。その後、尿素を66g(1.1mol)添加し、撹拌を続けた。更に、65℃にて、メタノール38.4g(1.2mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、更に65℃にて、2時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、フラスコ内は、メトキシ化して生じた、C1225Si(OCH33 145g及びC1429Si(OCH33と発生した塩酸により生成した尿素塩酸塩が分離した状態であることが確認できた。ここに、(CH3O)3SiCH2CH2Si(CH32(OSi(CH328OSi(CH32CH2CH2Si(OCH33 7.8g(0.01mol)を添加し、再度撹拌し、65℃にて、水54g(3mol)をゆっくり滴下した。滴下には15分を要した。滴下終了後、65℃にて3時間撹拌を続けた。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン7は257gであった。
このものの25℃における粘度は263mm2/sであり、25℃における比重は0.940であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,944であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は3.6であった。
【0052】
[比較合成例1]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量1Lのフラスコに、C1021Si(OCH33 262g(1.0mol)及びメタノール772g(24.1mol)を仕込み、25℃にて、5%塩酸水56.8g(水3mol)を滴下し、加水分解反応を行った。更に65℃にて、3時間撹拌を続けた。その後、冷却を行い、90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン8は164gであった。
このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は710であった。本合成方法では、モノマー成分であるフェニルトリメトキシシランが15.6%含まれていた。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は0.79であった。
【0053】
[比較合成例2]
撹拌装置、冷却コンデンサー、温度計、滴下ロートを取り付けた容量2Lのフラスコに、C1225SiCl3 152g(0.5mol)及びC1429SiCl3 167g(0.5mol)を仕込み、65℃にて、メタノール64g(2.0mol)及び水54g(3mol)を滴下し、脱塩酸加水分解反応を行った(尿素塩酸塩が存在しない状態での加水分解縮合反応)。その後、尿素を66g(1.1mol)添加し、撹拌を続けた。更に、65℃にて、メタノール38.4g(1.2mol)をゆっくり滴下した。滴下終了後、更に65℃にて、2時間撹拌を続けた。撹拌を停止すると、フラスコ内は、メトキシ化して生じた、C1225Si(OCH33 145g及びC1429Si(OCH33と発生した塩酸により生成した尿素塩酸塩が分離した状態であることが確認できた。その後、冷却を行い、トルエン200gを加えて静置し、下層の触媒層を分離した。得られた上層を90℃、減圧度0.7kPaにて減圧濃縮を行い、更に濾過による精製を行ったところ、得られたオルガノポリシロキサン9は232gであった。
このものの25℃における粘度は110mm2/sであり、25℃における比重は0.941であった。また、このもののゲルパーミエーションクロマトグラフィー分析における重量平均分子量(Mw)は1,720であった。
更に、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)は0.81であった。
【0054】
[実施例1〜8、比較例1,2]
上記のように合成したオルガノポリシロキサン及び溶剤を表1に示す割合で混合し撥水剤を得た。その撥水剤を、ガラス基材や綿布に処理し、その撥水性、耐久性を評価した。
その方法は以下の通りである。
【0055】
基材:ガラスの場合
処理方法)
ガラス板(縦150mm×横50mm×1.5mm)を市販の油膜とり剤により汚れを取り除き、よく乾燥させた。そこに表1の撥水剤をスポイドで3滴垂らし、ティッシュにてよく塗りこみ処理をした。
【0056】
撥水性評価)
常温で30分放置後、協和界面化学社製DM701機により水の接触角及び滑落角の測定を行った。
【0057】
撥水持続性評価)
新東化学社製のScratching Intensity Tester HEIDON−18機により、ネル布を用いて、荷重1kgで耐磨耗耐久試験を行った。1万回往復磨耗後の水の接触角と滑落角を測定した。
【0058】
基材:綿布の場合
処理方法)
撥水剤に試験布(200mm×200mm)を浸漬し、マングルで絞り、20℃、50%RHの室内で1日乾燥し、処理を行った。
【0059】
撥水性評価)
撥水性試験:得られた処理布を用い、JIS L 1092のスプレー法によって撥水性を評価した。即ち、処理布を直径約15cmの枠にしわが生じないように取り付け、水平面に対し45度の角度で保持し、そこへ撥水処理済み試験布中心から15cmの高さに設置したスプレーノズルから、27±1℃のイオン交換水250mLを処理布へ散布した。次に、枠を台上から取り外し、枠の一端を持ち、表面を下向きにして他端を叩いて余分な水滴を落とした後、処理布の濡れの状態を以下の判定標準により評価した。撥水性は該試験法に基づく下記評価基準により判定した。
撥水性:
100・・・表面に付着湿潤のないもの
90・・・表面に僅かに付着湿潤を示すもの
80・・・表面に水滴状に湿潤を示すもの
70・・・表面にかなり部分湿潤を示すもの
60・・・70と50の中間の湿潤を示すもの
50・・・表面全体に湿潤を示すもの
0・・・表裏に湿潤を示すもの
【0060】
撥水持続性評価)
処理布にイオン交換水を10L連続して散布した。その後、20℃、50%RHの室内で1日乾燥させ、更にイオン交換水を10L連続して散布後、上記撥水性試験の判定基準により評価した。
【0061】
基材:モルタルの場合
処理方法)
吸水防止性能JISモルタル(50×50×25mm)の全面に撥水剤が100g/m2になるように刷毛塗りし、50%RHの雰囲気下で7日間養生させた。
【0062】
評価方法)
表面状態:
目視にてこのものの表面状態を観察した。評価基準は下記の通りである。
表面状態評価基準
○:濡れ色なし、×:濡れ色あり
【0063】
吸水率:
この撥水剤処理モルタルを水道水中に28日間浸漬させ、次式にて吸水率を算出した。
吸水率(%)=〔{(吸水後のモルタル質量)−(吸水前のモルタル質量)}/
(吸水前のモルタル質量)〕×100
【0064】
浸透深さ:
養生した撥水剤処理サンプルを2つに切断(縦断)し、切断面に水をかけて硬化層を見易くし、表面からの浸透深さを測定した。
【0065】
撥水性:
養生した撥水剤処理サンプルの表面に0.5ccの水滴を落し、状態観察を行った。評価基準は次の通りである。
評価基準
○:接触角大(撥水性良好)、△:接触角中、×:吸水される
【0066】
【表1】

*)組成の数値は質量%を示す。
【0067】
表の結果から明らかなように、各実施例によれば、撥水性と撥水持続性とを付与できる撥水剤組成物が提供できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記一般式(1)
m(R2nSi(OR1(4-m-n)・・・(1)
(式中、Xは置換又は非置換の炭素原子数6〜18の1価炭化水素基、R1は炭素原子数1〜4の1価炭化水素基、R2は炭素原子数1〜3の1価炭化水素基であり、mは1又は2、nは0又は1、m+nは1又は2である。)
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物、又はこの有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と、下記一般式(2)
Z−Y−Si(R2p(OR13-p・・・(2)
〔式中、R1及びR2は上記と同じであり、Yは2価の有機基、又は−R4s−(OSi(R32rO−R4s−基であり、ここで、R3は炭素原子数1〜6の1価炭化水素基、R4は炭素原子数1〜6の2価炭化水素基、rは1〜40の整数、sは0又は1である。Zは(OR13-q(R2qSi−基であり、qは0、1、2又は3であり、また、pは0、1、2又は3、p+qは0〜4である。〕
で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物と
を含む有機ケイ素化合物原料を、加水分解、重縮合することによって得られる環状体オルガノポリシロキサンとリニア体オルガノポリシロキサンを含有するオルガノポリシロキサンであって、ケイ素核磁気共鳴スペクトル分析における式(1)で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解縮合物由来のピークのアルコキシ基が2つ加水分解縮合し、シロキサン単位となった成分(T2成分)において、環状体成分を表すピーク成分(T2a成分)とリニア体成分を表すピーク成分(T2b成分)との比率(T2a成分/T2b成分)が0.9以上であるオルガノポリシロキサン、
(B)溶剤成分として揮発性の有機溶剤
を含有することを特徴とする撥水剤組成物。
【請求項2】
(A)成分であるオルガノポリシロキサンを製造する際に該オルガノポリシロキサンと分離状態となる液状の加水分解縮合触媒を使用することを特徴とする請求項1記載の撥水剤組成物。
【請求項3】
加水分解縮合触媒が、尿素塩酸塩であることを特徴とする請求項2記載の撥水剤組成物。
【請求項4】
(B)成分である揮発性の有機溶剤が、パラフィン系炭化水素及び/又はシリコーンオイルを主剤とする有機溶剤であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の撥水剤組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−26402(P2011−26402A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−172018(P2009−172018)
【出願日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】