説明

撮像システム、情報処理装置及び情報処理方法

【課題】カメラの駆動機構が寿命に達していることをユーザに知らせることができるようにする。
【解決手段】撮像装置と、前記撮像装置に対して撮影方向を移動させるよう指示する情報処理装置とがネットワークに接続されて構成される撮像システムであって、撮像装置は、撮像手段により生成された映像データを送信するとともに、前記撮像手段の撮影方向を移動させる駆動手段の駆動数の情報を前記情報処理装置に送信する。一方、情報処理装置は、
前記撮像装置から映像データを受信するとともに、前記駆動数の情報を受信し、前記受信された映像データに係る映像を表示するとともに、前記駆動数に関わる情報を表示部に表示する。このとき、前記駆動数が所定値に達したことを示す表示を前記表示部に表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に監視カメラの撮影方向を自動調整するために用いて好適な撮像システム、情報処理装置、情報処理方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ネットワークや専用線を介して、遠隔操作によりカメラを制御し、映像を監視する監視カメラシステムが知られている。このような監視カメラシステムによれば、監視カメラのフォーカス、ズームを調整した上で、パン角度、チルト角度等を調整することにより撮影方向を設定することができるため、監視カメラは主に監視用途として天井や壁面等に設置されている。
【0003】
監視カメラには、撮像装置と撮影部を保護するドームとが一体化されているドーム型のカメラが数多く存在する。ドーム型の監視カメラは、パン、チルト、ローテーション(以下、PTRと記述する、Pはパン、Tはチルト、Rはローテーションを表す)を手動で調整することによって、壁掛けや天井に設置した際に撮影方向を自由に設定することが可能である。そして、監視カメラを設置する際にユーザ自身が撮影方向を決定し、設置後は撮影方向を変更することなく、固定カメラ装置として利用される。
【0004】
例えば、特許文献1には、ビデオカメラ装置の製品寿命を延ばすために、アイリス動作やオートフォーカス動作の終了後はアイリスモータやフォーカスモータの駆動をロックし、フォーカスモータやアイリスモータの寿命を長くするための技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−245724号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のドーム型の監視カメラは、前述したように、手動によって設置されるが、監視カメラを手動で設置するたびにユーザは映像を見ながら調整する必要があり、設置作業が非常に煩わしい。そこで、この問題点を解決するために、電動制御によりPTR制御を行う監視カメラを導入することが考えられる。
【0007】
PTRを電動で駆動させる場合に、前述した特許文献1に開示された技術をPTR駆動用のモータに適用すると、PTR駆動用のモータの寿命を長くするができる。ところが、モータ駆動信号を通す細線同軸が撮像部と撮影方向の可動部との間に配線されているため、撮影方向を変更すると、カメラ内の回転機構部分が回転することによってモータ駆動信号を通すための細線同軸にねじれが発生する。その結果、細線同軸、あるいは細線同軸の接点に大きなストレスがかかってしまう。
【0008】
以上のように細線同軸を用いると、PTRが駆動可能な上限回転数は100回転程度であるが、監視カメラを設置するときのみPTRを駆動させる場合には十分な回転数であると考えられる。ところが、特許文献1に開示された技術ではモータ駆動信号を通すための細線同軸の寿命は一切考慮されていない。このため、PTR駆動の回転数が上限回転数を超えると、モータそのものの寿命が尽きる前に細線同軸が断線し、PTRの駆動機構が制御不能になってしまう。
【0009】
このような事態を防止するために、PTRを駆動する各モータの駆動回数に上限を設け、細線同軸が断線する前に駆動機構が寿命に到達するようにした製品仕様とすることが望ましい。ところが、PTRが突然駆動しなくなったときに原因が分からず、ユーザが混乱してしまう恐れがある。また、監視カメラを電動制御するために配線をフラットケーブルにすると、従来のドーム型の監視カメラに使用されている細線同軸などの電線に比べ、コストが大きく上昇してしまうことから細線同軸を用いることが望ましい。
【0010】
本発明は前述の問題点に鑑み、カメラの駆動機構が、所定回、駆動されたことをユーザに知らせることができるようにすることを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の撮像システムは、撮像装置と、前記撮像装置に対して撮影方向を移動させるよう指示する情報処理装置とがネットワークに接続されて構成される撮像システムであって、前記撮像装置は、被写体を生成して映像データを生成する撮像手段と、前記情報処理装置からの指示に応じて、前記撮像手段の撮影方向を移動させる駆動手段と、前記駆動手段の駆動数を計数する計数手段と、前記計数手段によって計数された駆動数の情報を記憶する記憶手段と、前記撮像手段により生成された映像データを送信するとともに、前記記憶手段に記憶された駆動数の情報を前記情報処理装置に送信する送信手段とを備え、前記情報処理装置は、前記送信手段により送信された映像データを受信するとともに、前記駆動数の情報を受信する受信手段と、前記受信手段によって受信された映像データに係る映像を表示するとともに、前記駆動数に関わる情報を表示部に表示する表示制御手段とを備え、前記表示制御手段は、前記駆動数が所定値に達したことを示す表示を前記表示部に表示することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ユーザはカメラの駆動機構が、所定回、駆動されたことを認識することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】PTRの耐久状況を表示する手順の一例を示すフローチャートである。
【図2】第1のクライアント端末の表示部に表示される画面の一例を示す図である。
【図3】実施形態に係る監視カメラを含むシステム全体の構成例を示す図である。
【図4】第1のカメラの詳細な構成例を示すブロック図である。
【図5】第1のクライアント端末の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図6】制御権を付与するまでの処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図7】制御権を取得する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図8】図1のステップS108の処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図9】PTRの耐久状況を通知する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【図10】回転数を累積する処理手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図3は、本実施形態に係る監視カメラを含む撮像システム全体の構成例を示す図である。
図3において、第1のカメラ301及び第2のカメラ302は、被写体を撮影し、その映像データを配信するためのネットワークカメラであり、PTR(パン、チルト、ローテーション)制御機能を有するものである。そして、第1のカメラ301及び第2のカメラ302で生成した映像データを、ネットワーク303を介して配送している。
【0015】
情報処理装置として機能する第1のクライアント端末304及び第2のクライアント端末305は、具体的には、第1のカメラ301から送信された映像データを受信して、その映像を表示するパーソナルコンピュータ(PC)である。また、第1のカメラ301、第1のクライアント端末304及び第2のクライアント端末305はそれぞれ、LANやインターネット等のネットワーク303に接続されている。このように第1のクライアント端末304及び第2のクライアント端末305は、ネットワーク303を介してカメラ301から配送される映像データを受信する。さらに、第2のカメラ302など複数のカメラをネットワーク303に接続することによって、複数の遠隔地の映像データを第1のクライアント端末304及び第2のクライアント端末305で受信し、その映像を表示することができる。
【0016】
録画サーバ306は、第1のカメラ301及び第2のカメラ302から受信した映像データを記録するためのサーバである。ユーザは通常、第1のクライアント端末304や第2のクライアント端末305を操作することによってネットワーク303に接続されている第1のカメラ301や第2のカメラ302に指示を出す。これにより第1のカメラ301や第2のカメラ302で撮影された画像をユーザは見ることができる。なお、カメラの台数、クライアント端末の数、および録画サーバの台数は、図3に示した数に限られるものではなく、任意に数を増減することが可能である。
【0017】
次に、本実施形態の第1のカメラ301の動作について、図4を参照しながら詳細に説明する。
図4(A)は、本実施形態における第1のカメラ301の詳細な構成例を示すブロック図である。なお、第2のカメラ302の構成は、第1のカメラ301の構成と同様であるため、説明は省略する。
図4(A)において、通信I/F401、CPU402、記憶部403、撮像制御部404、PTR制御部405、及びPTR回転数カウント部406がバス407に接続されている。
【0018】
記憶部403は、第1のカメラ301を識別するための識別IDを記憶するための不揮発性メモリであり、さらにパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411の駆動数(累積回転数)の情報を記憶する。撮像制御部404は撮像部408を制御するものであり、PTR制御部405は、パン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411を制御するものである。このように撮像部408、パン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411を制御することにより、第1のカメラ301の撮影方向を決定することができる。PTR回転数カウント部406は、パン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411に使用されている各モータの回転数を計数する。また、撮像制御部404、PTR制御部405、及びPTR回転数カウント部406は、CPU402によって制御される。
【0019】
次に、第1のクライアント端末304の動作について、図5を参照しながら詳細に説明する。
図5は、第1のクライアント端末304の詳細な構成例を示すブロック図である。なお、第2のクライアント端末305の構成は、第1のクライアント端末304の構成と同様であるため、説明は省略する。
【0020】
図5において、通信I/F501、CPU502、記憶部503、カメラ操作部504、及びPTR駆動表示部505がバス506に接続されている。第1のカメラ301及び第2のカメラ302から送られた映像データは、ネットワーク303を介して通信I/F501に入力される。
【0021】
記憶部503は、第1のカメラ301(第2のカメラ302)のパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411を駆動するために使用されている各モータの累積回転数の情報を記憶する。また、記憶部503は、第1のクライアント端末304から操作可能なカメラの識別IDも記憶し、第1のクライアント端末304と同一の識別IDを有するカメラのみカメラ操作部504からカメラを操作することができる。
【0022】
表示部507はタッチパネル等で構成されており、カメラ操作部504とPTR駆動表示部505とが含まれている。カメラ操作部504は、第1のカメラ301(第2のカメラ302)の撮像部408、パン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411を駆動させる指示を送るための操作部である。カメラ操作部504を操作することにより出力された制御命令は、CPU502により通信I/F501、ネットワーク303を介して第1のカメラ301、あるいは第2のカメラ302に送信される。そして、第1のカメラ301のCPU402は、撮像制御部404、及びPTR制御部405のうち、第1のクライアント端末304から送られた制御命令を実行するために必要な制御部へ前記制御命令を送る。また、PTR駆動表示部505は、第1のカメラ301(第2のカメラ302)の撮像部408、パン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411の耐久状況を表示するものである。
【0023】
図6は、第1のカメラ301により第1のクライアント端末304へ制御権を付与するまでの処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図6に示す各処理は、CPU402の制御により行われる。
まず、通信I/F401を介して第1のクライアント端末304から第1のカメラ301の制御権の取得要求を受信するまで待機する(ステップS601)。そして、第1のカメラ301に対する制御権の取得要求を受信すると、通信I/F401を介して第1のクライアント端末304から識別IDを受信するまで待機する(ステップS602)。ここで、識別IDとは、第1のクライアント端末304が固有に持つ識別IDを表し、第1のカメラ301も同様に固有の識別IDを持っている。
【0024】
そして、第1のクライアント端末304から識別IDを受信すると、第1のクライアント端末304が持つ識別IDと第1のカメラ301が持つ識別IDとを比較する。そして、両者の識別IDが一致するか否かを判定する(ステップS603)。この判定により両者の識別IDが一致した場合にのみ第1のクライアント端末304は第1のカメラ301の制御権を取得することができる。なお、クライアント端末側やカメラ側に付与する識別IDは、MACアドレスやシリアル番号などカメラやクライアント端末を識別することが可能な固定IDであればよい。
【0025】
ステップS603の判定の結果、第1のカメラ301の識別IDと第1のクライアント端末304の識別IDとが一致した場合は、第1のクライアント端末304に第1のカメラ301の制御権を付与する(ステップS604)。具体的には、第1のクライアント端末304に通信I/F401を介して制御を許可する通知を送信する。
【0026】
次に、第1のクライアント端末304から第1のカメラ301のPTRの各駆動部におけるモータの回転数(累積回転数)の情報の要求を受信するまで待機する(ステップS605)。そして、各モータの回転数の情報の要求を受信すると、通信I/F401を介してパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411の各モータの回転数の情報を第1のクライアント端末304に送信する(ステップS606)。
【0027】
一方、ステップS603の判定の結果、第1のカメラ301の識別IDと第1のクライアント端末304の識別IDとが一致しない場合は、通信I/F401を介してカメラ操作の不許可通知を第1のクライアント端末304に送信する(ステップS607)。
【0028】
図7は、第1のクライアント端末304による第1のカメラ301に対する制御権を取得する処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図7に示す各処理は、CPU502の制御により行われる。
まず、ユーザがカメラ操作部504を操作することにより第1のカメラ301に対する制御権の取得指示があるまで待機する(ステップS701)。第1のカメラ301に対する制御権の取得指示を受けると、通信I/F501を介して第1のカメラ301の制御権の取得要求を第1のカメラ301に送信する(ステップS702)。
【0029】
次に、第1のカメラ301から制御権取得の可否を受信するまで待機する(ステップS703)。そして、制御権取得の可否を受信すると、受信した結果が第1のカメラ301の制御を許可する通知であるか否かを判定する(ステップS704)。この判定の結果、制御を許可する通知である場合は、通信I/F501を介してPTRの各駆動部の回転数の要求を第1のカメラ301に送信する(ステップS705)。
【0030】
次に、第1のカメラ301からPTRの各駆動部におけるモータの回転数(累積回転数)の情報を受信するまで待機する(ステップS706)。そして、PTRの各駆動部におけるモータの回転数の情報を受信すると、受信したPTRの各駆動部におけるモータの回転数の情報を記憶部503に記憶する(ステップS707)。そして、第1のカメラ301を操作することが可能であることをユーザに通知する(ステップS708)。
【0031】
一方、ステップS704の判定の結果、第1のカメラ301から制御を許可しない通知である場合は、第1のカメラ301を操作することが不可であることをユーザに通知する(ステップS709)。
【0032】
ステップS708及びS709において、カメラ制御の可否をユーザに知らせる具体的な方法として、表示部507にカメラ制御が可能か否かを表示する方法がある。また、表示部507とは別にダイアログボックスを立ち上げてカメラ制御が可能か否かを表示したり、カメラ制御に必要なボタンをカメラ操作部504上で非表示にしたりするなどの方法もある。
【0033】
図1は、第1のクライアント端末304により第1のカメラ301の駆動機構の耐久状況を表示する処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図1に示す各処理は、CPU502の制御により行われる。
まず、ユーザがカメラ操作部504を操作することにより第1のカメラ301のパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411のいずれかの駆動指示を受けるまで待機する(ステップS101)。そして、駆動指示を受けると、通信I/F501を介して第1のカメラ301へ駆動要求を送信する(ステップS102)。
【0034】
次に、通信I/F501を介して第1のカメラ301のPTRの各駆動部が駆動するモータの回転数の上限値の情報の要求を第1のカメラ301に送信する(ステップS103)。そして、第1のカメラ301からPTRの各駆動部が駆動するモータの回転数の上限値の情報を受信するまで待機する(ステップS104)。PTRの各駆動部が駆動するモータの回転数の上限値の情報を受信すると、通信I/F501を介してPTRの駆動を開始した後の各モータの回転数の情報の要求を第1のカメラ301に送信する(ステップS105)。
【0035】
次に、PTRの駆動を開始した後の各モータの回転数(累積回転数)の情報を受信するまで待機する(ステップS106)。そして、PTRの駆動を開始した後の各モータの回転数の情報を受信すると、ステップS104及びS106で受信したPTRを駆動させる各モータの回転数の上限値とPTRを駆動後の各モータの回転数との情報を記憶部503に記憶する(ステップS107)。そして、ステップS104及びS106で受信した2つの情報をもとに、PTRの耐久状況を算出してPTR駆動表示部505に表示する(ステップS108)。
【0036】
図2は、CPU502の表示制御により第1のクライアント端末304の表示部507に表示される画面の一例を示す図である。
図2に示すように、カメラを設置する時に、ユーザは第1のカメラ301から配信される映像206を見ながら、操作ボタン201〜205を操作して撮影方向を決定する。
【0037】
PTR駆動表示部207は、図5に示すPTR駆動表示部505に該当し、第1のカメラ301のPTRを駆動するために使用されているモータの累積回転数から算出されるPTRの耐久状況によって段階的に青→緑→黄→赤と表示色が変更される。すなわち、モータの累積回転数が多くなるにつれて、青色から緑色、緑色から黄色、黄色から赤色へと表示色が変化し、表示色が変化するに従って第1のカメラ301の駆動機構の可動回数が少なくなっていることを表している。
【0038】
また、PTR駆動表示部207が赤色になると、PTRの各駆動部の可動回数の上限に達していることを表している。なお、PTR駆動表示部207の表示色を青色から緑色、緑色から黄色、黄色から赤色へそれぞれ変更するタイミングは、PTRの各駆動部に使用されている3軸のモータのうち、最も累積回転数の多いモータの駆動回転数によって決まる。
【0039】
例えば、PTRの各駆動部の累積回転数が上限値(所定値)に達した時は、PTR駆動表示部207の表示色を赤色に変更する。そして、PTRの各駆動部の累積回転数が上限値の2/3以上に達した時は、PTR駆動表示部207の表示色を黄色に変更し、PTRの各駆動部の累積回転数が上限値の1/3以上に達した時は、PTR駆動表示部207の表示色を緑色に変更する。また、PTRの各駆動部の累積回転数が上限値の1/3未満である場合は、PTR駆動表示部207の表示色を青色とする。
【0040】
PTR駆動表示部207の表示色を変更するタイミングは、PTRの各駆動部の耐久性や製品仕様によって自由に変更することが可能である。なお、PTR駆動表示部207の表示態様は前述した方法に限らず、PTRの各駆動部の累積回転数をインクリメント、あるいはデクリメントした数値を表示する方法であってもよい。また、PTRの各駆動部の累積回転数を表示バーで表し、インクリメント、あるいはデクリメントする表示方法であってもよい。また、上限値に達したことを示すメッセージを表示してもよい。そのメッセージを音声で出力してもよい。
【0041】
図8は、ステップS108におけるPTRの耐久状況を表示する処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、PTRの耐久状況を表示する方法としては、図2に示したように表示色を変化させる例について説明する。また、図8に示す各処理は、CPU502の制御により行われる。
まず、PTRの各駆動部に使用されている3軸のモータのうち、最も累積回転数の多いモータを判定する(ステップS801)。そして、判定した最も累積回転数の多いモータについて累積回転数がPTR駆動表示部207の表示色が赤色となる回転数(上限値)に達しているか否かを判定する(ステップS802)。この判定の結果、表示色が赤色となる回転数に達している場合は、PTR駆動表示部207の表示色を赤色に変更する(ステップS803)。
【0042】
一方、ステップS802の判定の結果、表示色が赤色となる回転数に達していない場合は、PTR駆動表示部207の表示色が黄色となる回転数(例えば、上限の2/3以上)に達しているか否かを判定する(ステップS804)。この判定の結果、表示色が黄色となる回転数に達している場合は、PTR駆動表示部207の表示色を黄色に変更する(ステップS805)。
【0043】
一方、ステップS804の判定の結果、表示色が黄色となる回転数に達していない場合は、PTR駆動表示部207の表示色が緑色となる回転数(例えば、上限の1/3以上)に達しているか否かを判定する(ステップS806)。この判定の結果、表示色が緑色となる回転数に達している場合は、PTR駆動表示部207の表示色を緑色に変更する(ステップS807)。一方、ステップS806の判定の結果、表示色が緑色となる回転数に達していない場合は、PTR駆動表示部207の表示色を青色とする(ステップS808)。以上のように、図8では、累積回転数が所定の回転数(所定値)に達するごとに、表示色を変えるようにしている。累積回転数が上限値に達すると、上限値に達したことを示す赤色の表示をする。
【0044】
図9は、第1のカメラ301により第1のクライアント端末304にPTRの各駆動部の耐久状況を通知する処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、図9に示す各処理は、CPU402の制御により行われる。
まず、第1のクライアント端末304から送信されるパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411の駆動要求を受信するまで待機する(ステップS901)。そして、上記駆動要求を受信すると、第1のクライアント端末304からの要求に従ってPTR制御部405よりパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411を駆動する(ステップS902)。
【0045】
次に、PTR回転数カウント部406により、パン駆動部409、チルト駆動部410、ローテーション駆動部411で使用されている各モータの累積回転数を求め、求めた累積回転数の情報を記憶部403に記憶する(ステップS903)。
【0046】
ここで、PTRの各駆動部に使用されているモータの累積回転数の求め方について説明する。例えば、PTRの各駆動部に減速比が1:aであり、1ステップ当たり駆動角度がb°のステッピングモータ使用した場合、モータを1回転駆動するために必要なステップ数は、360/bステップある。したがって、PTRの各駆動部を1回転駆動させるために必要なステップ数はa×360/bステップとなる。また、モータを駆動するために与えるパルス数の総カウント値がcである場合、PTRの各駆動部の回転数は、c÷(a×360/b)となる。
【0047】
次に、第1のクライアント端末304から送信されるPTRの各駆動部の回転数の上限値の情報の要求を受信するまで待機する(ステップS904)。そして、回転数の上限値の情報の要求を受信すると、通信I/F401を介してパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411の回転数の上限値の情報を第1のクライアント端末304に送信する(ステップS905)。
【0048】
次に、第1のクライアント端末304から送信されるPTRの各駆動部の回転数(累積回転数)の情報の要求を受信するまで待機する(ステップS906)。そして、回転数の情報の要求を受信すると、通信I/F401を介してパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411を駆動した後の各モータの回転数の情報を第1のクライアント端末304に送信する(ステップS907)。
【0049】
次に、パン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411のうち少なくとも1つが寿命となる回転数に達しているか否かを判定する(ステップS908)。この判定の結果、PTRの各駆動部の少なくとも1つが寿命となる回転数に達している場合は、PTR制御部405によりパン駆動部409、チルト駆動部410、ローテーション駆動部411をロックして駆動しないようにする(ステップS909)。一方、ステップS908の判定の結果、PTRの各駆動部のいずれも寿命となる回転数に達していない場合は、ステップS901へ戻る。
【0050】
以上のように、第1のカメラ301側でパン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411で使用されている各モータの累積回転数を検出する。そして、その情報を第1のクライアント端末304に送信する。一方、第1のクライアント端末304側では、前記検出結果をもとにPTR駆動表示部207の表示色を段階的に変更することによって駆動機構の上限を視覚的にユーザに知らせることができる。また、第1のカメラ301側では、前記駆動機構が寿命に達した時に駆動しないようにロックをかけることによって、前記駆動機構を保護することができる。
【0051】
なお、本実施形態において、PTRの各駆動部の回転数を加算する際に、PTRに使用されているモータに与えるステップ数をもとに、PTRの移動量によって回転数を累積したが、PTRの移動回数を回転数として累積してもよい。
【0052】
(第2の実施形態)
以下、本発明の第2の実施形態について図面を参照しながら説明する。本実施形態における全体構成は、第1の実施形態で説明した図3に示す構成と同様であるため、同様の個所についての説明を省略する。また、第1のクライアント端末304の構成についても第1の実施形態と同様であるため、説明は省略する。また、第1のカメラ301による、第1のクライアント端末304が第1のカメラ301の制御権を取得するまでの処理手順は図6と同様であり、第1のクライアント端末304による処理手順は図7と同様であるため、説明を省略する。
【0053】
図4(B)は、本実施形態における第1のカメラ301の構成例を示すブロック図である。なお、図4(B)において、第1の実施形態で説明した図4(A)と同一の部分には同一の符号を付し、説明は省略する。
図4(B)において、PTR移動量検出部451は、パン駆動部409、チルト駆動部410、及びローテーション駆動部411に使用されている各モータの移動量を検出する。PTR移動量検出部451は、エンコーダのようにPTRの各駆動部が回転することによって発生する各駆動部の移動量を検出することが可能な手段であれば何でもよい。
【0054】
本実施形態において、第1のカメラ301が第1のクライアント端末304にPTRの各駆動部の耐久状況を通知する処理手順は図9とほぼ同様である。異なる点としては、ステップS903においてPTRを駆動した後の回転数の求める際に、PTRの各駆動部の移動量としてPTR移動量検出部451にて検出した移動ステップ数によって累積する回転数に重み付けを行う。
【0055】
図10は、ステップS903において、PTR移動量検出部451によるPTRの何れかの駆動部が駆動した際に回転数を累積する処理手順の一例を示すフローチャートである。なお、本実施形態では、何れかの駆動部の移動ステップ数がα未満である場合、α以上β未満である場合、β以上である場合の3つのケースに分けて、回転数の加算方法に重み付けを行うこととする。また、α及びβは正の整数であり、α<βとする。
【0056】
まず、移動ステップ数がα未満であるか否かを判定する(ステップS1001)。この判定の結果、移動ステップ数がα未満である場合は、PTR移動量検出部451にて検出したステップ数をそのままステップ数とする(ステップS1005)。一方、ステップS1001の判定の結果、移動ステップ数がα以上である場合は、移動ステップ数がα以上かつβ未満であるか否かを判定する(ステップS1002)。この判定の結果、移動ステップ数がα以上かつβ未満である場合は、PTR移動量検出部451にて検出したステップ数の2倍をステップ数とする(ステップS1003)。
【0057】
一方、ステップS1002の判定の結果、移動ステップ数がβ以上である場合は、PTR移動量検出部451にて検出したステップ数の3倍をステップ数とする(ステップS1004)。そして、決定したステップ数を用いて各駆動部の回転数を求める(ステップS1005)。駆動部の回転数の求め方については、第1の実施形態で説明した方法と同様の方法で求めることができる。
【0058】
ドーム型カメラの構造上、PTRの各駆動部は移動量が大きくなるほど、モータ駆動信号を通す細線同軸、あるいは細線同軸の接点にストレスがかかりやすくなり、早く寿命に達することになる。そこで、1回のカメラ操作におけるPTRのいずれかの駆動部の移動量が大きくなる場合は重み付けをすることにより、回転数を多く累積している。具体的な移動ステップ数の場合分けや重み付けについては前述の方法に限ることなく、カメラの構造や細線同軸の耐性によって自由に変更することが可能である。また、PTRの各駆動部が回転した回転角度が少ない場合は細線同軸にストレスがあまりかからないため、所定値以下である場合は回転数を加算しないようにしてもよい。
【0059】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。即ち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(またはCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0060】
405 PTR制御部
406 PTR回転数カウント部
408 撮像部
409 パン駆動部
410 チルト駆動部
411 ローテーション駆動部
504 カメラ操作部
505 PTR駆動表示部
507 表示部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置と、前記撮像装置に対して撮影方向を移動させるよう指示する情報処理装置とがネットワークに接続されて構成される撮像システムであって、
前記撮像装置は、
被写体を生成して映像データを生成する撮像手段と、
前記情報処理装置からの指示に応じて、前記撮像手段の撮影方向を移動させる駆動手段と、
前記駆動手段の駆動数を計数する計数手段と、
前記計数手段によって計数された駆動数の情報を記憶する記憶手段と、
前記撮像手段により生成された映像データを送信するとともに、前記記憶手段に記憶された駆動数の情報を前記情報処理装置に送信する送信手段とを備え、
前記情報処理装置は、
前記送信手段により送信された映像データを受信するとともに、前記駆動数の情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された映像データに係る映像を表示するとともに、前記駆動数に関わる情報を表示部に表示する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記駆動数が所定値に達したことを示す表示を前記表示部に表示することを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記表示制御手段は、前記駆動数に応じた表示態様により前記駆動数に関わる情報を表示することを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記駆動数に応じて前記駆動数に関わる情報の表示色を段階的に変更することを特徴とする請求項2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記送信手段は、前記駆動手段が駆動するたびに、前記駆動手段の駆動数の情報を前記情報処理装置に送信することを特徴とする請求項1〜3の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記駆動手段の駆動数を示す表示バーを表示し、前記受信手段によって受信された駆動数の情報に応じて前記表示バーをインクリメント、あるいはデクリメントすることを特徴とする請求項1または2に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記計数手段は、前記駆動手段の駆動数としてモータの累積回転数を計数することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記計数手段は、前記駆動手段を駆動させるときに必要なステップ数に基づいて前記累積回転数を計数することを特徴とする請求項6に記載の撮像システム。
【請求項8】
前記計数手段は、前記駆動手段を駆動させたときの移動量が所定値以下であるときは、前記駆動手段の累積回転数に加算しないようにすることを特徴とする請求項6または7に記載の撮像システム。
【請求項9】
前記計数手段は、前記駆動手段の移動回数を前記累積回転数として計数することを特徴とする請求項6に記載の撮像システム。
【請求項10】
前記撮像装置は、前記情報処理装置の識別IDが一致した場合に、前記情報処理装置からの指示を許可する許可手段をさらに備えることを特徴とする請求項1〜9の何れか1項に記載の撮像システム。
【請求項11】
ネットワークに接続された撮像装置に対して撮影方向を移動させるよう指示する情報処理装置であって、
前記撮像装置から映像データを受信するとともに、前記撮影方向を移動させる駆動手段の駆動数の情報を受信する受信手段と、
前記受信手段によって受信された映像データに係る映像を表示するとともに、前記駆動数に関わる情報を表示部に表示する表示制御手段とを備え、
前記表示制御手段は、前記駆動数が所定値に達したことを示す表示を前記表示部に表示することを特徴とする情報処理装置。
【請求項12】
被写体を生成して映像データを生成する撮像手段と、情報処理装置からの指示に応じて前記撮像手段の撮影方向を移動させる駆動手段とを備えた撮像装置と、前記撮像装置に対して撮影方向を移動させるよう指示する情報処理装置とがネットワークに接続されて構成される撮像システムにおける情報処理方法であって、
前記駆動手段の駆動数を計数する計数工程と、
前記撮像手段により生成された映像データを送信するとともに、前記計数工程において計数された駆動数の情報を前記情報処理装置に送信する送信工程と、
前記送信工程において送信された映像データを受信するとともに、前記駆動数の情報を受信する受信工程と、
前記受信工程において受信された映像データに係る映像を表示するとともに、前記駆動数に関わる情報を表示部に表示する表示制御工程とを備え、
前記表示制御工程においては、前記駆動数が所定値に達したことを示す表示を前記表示部に表示することを特徴とする情報処理方法。
【請求項13】
ネットワークに接続された撮像装置に対して撮影方向を移動させるよう指示する情報処理装置における情報処理方法であって、
前記撮像装置から映像データを受信するとともに、前記撮影方向を移動させる駆動手段の駆動数の情報を受信する受信工程と、
前記受信工程において受信された映像データに係る映像を表示するとともに、前記駆動数に関わる情報を表示部に表示する表示制御工程とを備え、
前記表示制御工程においては、前記駆動数が所定値に達したことを示す表示を前記表示部に表示することを特徴とする情報処理方法。
【請求項14】
ネットワークに接続された撮像装置に対して撮影方向を移動させるよう指示する情報処理装置を制御するためのプログラムであって、
前記撮像装置から映像データを受信するとともに、前記撮影方向を移動させる駆動手段の駆動数の情報を受信する受信工程と、
前記受信工程において受信された映像データに係る映像を表示するとともに、前記駆動数に関わる情報を表示部に表示する表示制御工程とをコンピュータに実行させ、
前記表示制御工程においては、前記駆動数が所定値に達したことを示す表示を前記表示部に表示することを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−70281(P2012−70281A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−214429(P2010−214429)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】