説明

撮像システム

【課題】広い撮像対象エリアを確保しつつ、撮像画像に含まれる各種物体の正確な認識が可能な撮像システムを提供する。
【解決手段】本発明に係る撮像システム(1)は、広角レンズを有し、予め設定された所定の方向を撮像するように固定された固定撮像手段(5)と、広角レンズの光軸の結像側の延長線を中心に回動可能に設置され、固定撮像手段より画角の小さいレンズを有する可動撮像手段(6)とを備えており、特に可動撮像手段は、固定撮像手段の撮像画角と可動撮像手段の撮像画角とが少なくとも部分的に重複するように設置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異なる画角を有する複数の撮像手段を備えてなる撮像システムの技術分野に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば店舗内やビル・マンション等のエントランス等の特定のエリア内において、異常発生や不審者の有無等を監視することを目的として、いわゆる監視カメラが一般的に普及している。このような監視カメラは、監視対象エリアの広さをもれなくカバーするために、エリアの広さに応じた台数が適宜配置される。一方、監視カメラの設置台数が多くなると、その分コストアップにつながるため、実際には、画角(撮像範囲)の広い監視カメラを導入することによって、コスト効率の改善が図られている。
【0003】
このように広い画角を有する監視カメラを導入した場合、一台当たりの監視カメラの撮像範囲は広くなるものの、その分撮像画像に映る監視対象エリア内の各種物体の大きさが小さくなるため、物体の認識が困難になってしまうという問題がある。このような問題に対し、固定カメラで被写体の全体像を撮像しつつ、可動カメラを用いて被写体の一部を拡大して詳細な画像が得られるように複数台の監視カメラからなる監視カメラシステムが考案されている。
【0004】
例えば特許文献1では、固定カメラから得た被写体の全体像に基づいて、オペレータが可動カメラを操作することによって被写体の一部を詳細に監視可能な監視カメラシステムが開示されている。また特許文献2には、可動カメラを予め設定された動作モードで駆動制御することにより、固定カメラで得た車両全体の画像から、車両ナンバーを識別可能な監視カメラシステムが開示されている。また特許文献3には、固定カメラで撮像した被写体の全体像から特定部分の動き及び位置を検出し、該検出した特定部分の動き及び位置を追尾するように可動カメラを制御可能な監視カメラシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開平01−137674号公報
【特許文献2】特開平11−252535号公報
【特許文献3】特開2005−260778号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1〜3では、固定カメラとして広い画角を有する監視カメラを用いている。そのため、固定カメラの撮像画像は中心部付近では歪が少ないため、物体の認識が可能であるが、周辺領域になるに従い撮像画像に含まれる物体の形状が歪み、物体の正確な認識が困難になってしまうという問題点がある。この傾向は、固定カメラにてより広い領域を撮像するために、より画角の広いレンズ、例えば画角が150°を超えるような魚眼レンズを用いると周辺領域における歪も大きくなるため、より顕著となる。
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、広い撮像対象エリアを確保しつつ、撮像画像に含まれる各種物体の正確な認識が可能な撮像システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る監視カメラシステムは上記課題を解決するために、複数の撮像手段を備えてなる撮像システムにおいて、広角レンズを有し、予め設定された所定の方向を撮像するように固定された固定撮像手段と、前記広角レンズの光軸の結像側の延長線を中心に回動可能に設置され、前記固定撮像手段より画角の小さいレンズを有する可動撮像手段とを備え、前記可動撮像手段は、前記固定撮像手段の撮像画角と前記可動撮像手段の撮像画角とが少なくとも部分的に重複するように設置されていることを特徴とする。
【0009】
本発明によれば、固定撮像手段と可動撮像手段とを含む複数の撮像手段を備え、固定撮像手段の撮像画角と前記可動撮像手段の撮像画角とが少なくとも部分的に重複するように設置する。固定撮像手段は広角レンズを有するため、その撮像画像は中心部から離れるに従い歪が大きくなり物体の認識が困難になるが、このように画角が小さく歪の少ない可動撮像手段によって重複的に撮像することにより、固定撮像手段による撮像画像の歪が多い領域においても正確な物体の認識が可能となる。その結果、固定撮像手段による撮像画像の歪が多い周辺領域を、歪の少ない可動撮像手段の撮像画像によって把握が可能となるため、広い撮像エリアと物体の正確な認識とを両立可能な撮像システムを実現することができる。
【0010】
好ましくは、前記可動撮像手段は、その撮像範囲に前記固定撮像手段の撮像範囲より外側の領域を含むように設置されているとよい。この態様によれば、可動撮像手段の撮像範囲を固定カメラの撮像範囲より外側に亘るようにすることで、撮像システム全体の撮像対象エリアを拡張することができる。
【0011】
また、前記可動撮像手段を回動させる駆動手段を更に備え、該駆動手段は、前記可動撮像手段を周期的に回動させてもよい。この態様によれば、可動撮像手段を周期的に駆動することによって、固定撮像手段による撮像画像の歪が多い周辺領域を、歪の少ない可動撮像手段の撮像画像によって周期的に把握できるため、広い監視対象エリアにおいて正確に物体を認識でき、監視用途に適した撮像システムを実現することができる。
【0012】
また、前記可動撮像手段を回動させる駆動手段と、前記駆動手段に前記可動撮像手段を回動操作するための操作信号を送信する操作手段とを更に備えてもよい。この態様では、操作手段から送信された操作信号に基づいて駆動手段で可動撮像手段を回動できるので、可動撮像手段をオペレータの意図に沿って操作することができる。
【0013】
また、前記可動撮像手段を回動させる駆動手段と、前記固定撮像手段の撮像画像を画像解析する画像解析手段とを更に備え、前記駆動手段は、前記画像解析手段の解析結果に応じて前記可動撮像手段を回動させてもよい。この態様によれば、固定撮像手段の撮像画像の画像解析結果に基づいて、可動撮像手段を自動的に回動させることができるので、オペレータの操作負担の少ない撮像システムを構築することができる。
【0014】
また、前記固定撮像手段の撮像画像と前記可動撮像手段の撮像画像とを合成する画像合成手段を更に備えてもよい。複数の撮像手段を備える場合、オペレータは各々の撮像画像をそれぞれ監視する必要があるが、本態様では各撮像手段における撮像画像を合成することにより、オペレータが監視すべき撮像画像の数を抑えることができる。このように、本態様によれば、オペレータにとって監視負担の少ない撮像システムを構築することができる。
【0015】
また、前記可動撮像手段のズーム倍率を調整する倍率調整手段を更に備えてもよい。この態様では、可動撮像手段のズーム倍率を指定することによって、適切な倍率で固定撮像手段による撮像画像の歪が多い周辺領域を、適切な倍率で、歪の少ない可動撮像手段の撮像画像によって把握できるため、より監視用途に適した撮像システムを実現することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、固定撮像手段と可動撮像手段とを含む複数の撮像手段を備え、固定撮像手段の撮像画角と前記可動撮像手段の撮像画角とが重複するように設置する。固定撮像手段は広角レンズを有するため、その撮像画像は中心部から離れるに従い歪が大きくなり物体の認識が困難になるが、このように画角が小さく歪の少ない可動撮像手段によって重複的に撮像することにより、固定撮像手段による撮像画像の歪が多い領域においても正確な物体の認識が可能となる。その結果、固定撮像手段による撮像画像の歪が多い周辺領域を、歪の少ない可動撮像手段の撮像画像によって把握が可能となるため、広い撮像エリアと物体の正確な認識とを両立可能な撮像システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る撮像システムの全体構成を水平方向から透過的に見た透過側面図である。
【図2】図1に示す撮像システムの全体構成を下方から透過的に見た透過平面図である。
【図3】本発明に係る撮像システムにおける固定カメラ及び可動カメラのそれぞれの撮像範囲を水平方向から示す模式図である。
【図4】図3に示す撮像システムにおいて固定カメラによる撮像画像の一例を示す模式図である。
【図5】本発明に係る撮像システムの全体構成を示すブロック図である。
【図6】本発明に係る撮像システムの動作フローを示すフローチャートである。
【図7】第1変形例に係る撮像システムの全体構成を示すブロック図である。
【図8】第2変形例に係る撮像システムの全体構成を水平方向から透過的に見た透過側面図である。
【図9】第2変形例に係る撮像システムにおける固定カメラ及び可動カメラのそれぞれの撮像範囲を水平方向から示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は本発明に係る撮像システム1の全体構成を水平方向から透過的に見た透過側面図であり、図2は図1に示す撮像システム1の全体構成を下方から透過的に見た透過平面図である。撮像システム1は、監視対象エリアたる室内の天井2に板状のベース部材3が面するように取り付けられており、ベース部材3から室内空間側を覆う外装カバー4の内部に固定カメラ5と可動カメラ6とが収納されて構成されている。固定カメラ5及び可動カメラ6は、被写体(室内空間)からの光線を撮像レンズを介して取り込み、CCDやCMOSなどの撮像素子で撮像する撮像手段である。
【0019】
固定カメラ5は、天井2に面するように設置されたベース部材3上に鉛直下方に向って立設された支柱7の先端に固定されている。一方、可動カメラ6は、支柱7にその一端を符号aで示す方向(固定カメラ5の光軸Aを中心とする回転方向)に回転可能に取り付けられた支持部材8の他端に取り付けられている。支持部材8は図不示のアクチュエータが外部機器から送られた制御信号に基づいて、支柱7を中心に回動され、支持部材8の先端に取り付けられた可動カメラ6の撮像方向(光軸Bの向き)を可変に制御可能に構成されている。
【0020】
固定カメラ5は撮像レンズとして広角レンズ又は魚眼レンズのような超広角系レンズを有しており、その光軸Aが鉛直下方を向くように配置することにより、監視対象エリアを広範囲に亘って撮像できるように設置されている。一方の可動カメラ6は、撮像レンズとして固定カメラ5が有する撮像レンズに比べて画角が小さい、例えば望遠系レンズやズームレンズを有している。そのため可動カメラ6はパン・チルト・ズーム操作を行うことによって、固定カメラ5の撮像範囲の少なくとも一部を、適宜拡大縮小して撮像することができるようになっている。
【0021】
図3は本発明に係る撮像システム1における固定カメラ5及び可動カメラ6のそれぞれの撮像範囲を水平方向から示す模式図であり、図4は図3に示す撮像システム1において固定カメラ5による撮像画像の一例を示す模式図である。尚、図3では固定カメラ5にも可動カメラ6にも映らない領域(いわゆる死角)を斜線で示している。
【0022】
図3において、固定カメラ5の画角は符号5aで示した範囲であり、可動カメラ6の画角は符号6aで示した範囲である。固定カメラ5は前述の通り広角レンズを有しているため、狭角レンズを有している可動カメラ6の画角6aより広い画角5aを有している。本実施例では特に、画角5a及び6aは互いに少なくとも部分的に重複するように設けられており、これにより、固定カメラ5によって監視対象エリアを広範囲に亘って撮像しつつ、その一部を可動カメラ6によって重複して撮像することができるようになっている。
【0023】
監視対象エリアである室内空間には、監視対象となる同形状の物体9a、9b、9cがそれぞれ配置されている。物体9aは固定カメラ5の光軸A上に配置されており、物体9b及び9cはそれぞれ次第に光軸Aから離れるように順次配置されている。このように室内空間に配置された物体は、固定カメラ5の撮像画像において図4に示す如く表示される。例えば固定カメラ5の光軸A上に配置されている物体9aは、歪みが少なく原型を保った像10aとして表示されている。一方、物体9b及び9cは、光軸Aから離れるに従って、固定カメラ5が有する広角レンズによる歪みによって形状が原型から変形し、像10b及び10cの如く表示されている。特に、固定カメラ5の撮像範囲の縁近傍に位置する周辺領域11にある物体9cに対応する像10cは、原型の判別が困難になるほど変形が進行している。
【0024】
広角レンズを有する固定カメラ5は、室内空間のより広い範囲を撮像するために極力広い画角を有する撮像レンズを用いることが好ましいが、その一方で、画角の広い撮像レンズを用いると撮像画像の周辺領域11における歪みが大きくなり、当該周辺領域11に位置する物体の判別が困難になってしまう問題が従来ではあった。一方、本発明では、このような従来の問題は、固定カメラ5と一体的に外装カバー3内に収納され、且つ固定カメラ5の光軸の結像側延長線を中心に回動制御可能な可動カメラ6によって、周辺領域11にある物体9を撮像することによって、物体9の正確な認識が可能となる。すなわち、可動カメラ6は固定カメラ5より画角の狭い撮像レンズを用いているため撮像画像における歪みが少なく、これによって固定カメラ5の歪みが大きい周辺領域11を重複的に撮像することによって、固定カメラ11では歪みによって判別が困難な物体9cを可動カメラ6によって正確にとらえることが可能となる。
【0025】
続いて図5は本発明に係る撮像システム1の全体構成を示すブロック図である。まず撮像システム1は固定カメラ5にて撮像画像を取り込み、固定カメラ5は撮像画像に対応する画像信号を出力し、物体認識回路12に入力する。物体認識回路12では、図6を参照して後述する物体認識処理によって固定カメラ5の撮像画像に可動カメラ6で撮像すべき監視対象の物体の有無及びその位置を特定し、可動カメラ6を回動させるためのPTZ信号を出力する。可動カメラ6は受信したPTZ信号に基づいて、図不示のアクチュエータを駆動することにより指定された位置に回動される。そして、可動カメラ6にて撮像画像を取り込み、可動カメラ6は撮像画像に対応する画像信号を出力する。
【0026】
可動カメラ6から出力された画像信号は、固定カメラ5から物体認識回路12を介して出力された画像信号と画像合成回路13にて合成されて出力画像信号が生成される。出力画像信号はディスプレイなどの表示装置14に送信され、画面上に画像として表示される。その結果、本撮像システム1のオペレータは該表示装置14の画面を介して、固定カメラ5と可動カメラ6の撮像画像の合成画像を見ることができるようになっている。
【0027】
尚、上述の物体認識回路12や画像合成回路13は、データ転送の効率化や自動化による無人化等のためのアプリケーションとして機能するため、回路として備えられていない場合でもソフトウェア的に導入されていてもよい。
【0028】
続いて図6を参照して、物体認識回路12において行われる自動追尾制御の具体的内容について説明する。図6は本発明に係る撮像システム1の動作フローを示すフローチャートである。
【0029】
まず撮像システム1は固定カメラ5から撮像画像を取り込み(ステップS101)、該固定カメラ5の撮像画像に経時的な変化が有るか否かを判定する(ステップS102)。この判定は上述の物体認識回路12にて行われ、画像解析を行うことにより固定カメラ5の撮像画像に監視対象となる物体の有無が判定される。撮像画像に変化が有ると判定された場合(ステップS102:YES)、撮像システム1は固定カメラ5の撮像画像から該変化が有った領域を検出し(ステップS103)、該変化があった領域の方向へ可動カメラ6を回動させるべく、PTZ信号を可動カメラ6に出力する(ステップS104)。これにより、ステップS102にて検知した監視対象となる物体が存在する方向に可動カメラ6を回動させ、その詳細を可動カメラ6で撮像可能な状態に制御することができる。尚、ステップS102にて固定カメラ5の撮像画像に変化が無いと判定された場合は(ステップS102:NO)、処理をステップS101に戻し、同様の処理が繰り返される。
【0030】
このように可動カメラ6が回動されると、可動カメラ6は撮像画像を取り込み(ステップS105)、ステップS102にて検知した監視対象となる物体の詳細な画像を取得する。その後、撮像を停止する旨の指令の有無を確認し(ステップS106)、処理を終了する。
【0031】
尚、ステップS102やS103における撮像画像における監視対象となる物体の有無及びその領域の判定には、公知の各種物体認識ロジックが採用可能である。ここで固定カメラ5の画像範囲内に検出された物体が複数存在する場合には、所定の条件を設け、条件に合致した一つの物体を追尾するようにしてもよいし、所定の間隔で複数の物体を追尾もしくは静止画撮影を行うようにしてもよい。
【0032】
(第1変形例)
図7は第1変形例に係る撮像システム1´の全体構成を示すブロック図である。この例では上述の実施例(図5を参照)と基本的に同様の構成を有しているが、撮像システム1´のオペレータによって操作される入力装置を備えることによって、オペレータの意思に基づいた可動カメラ6の制御が可能である。尚、図7では前述の構成と同様箇所については共通の符号を付すことし、適宜詳細な説明を省略することとする。
【0033】
入力装置15は、オペレータが操作可能な例えばキーボードやジョイスティック等の入力手段である。オペレータはこの入力装置を操作することによって、PTZ制御可能な可動カメラ6の駆動内容について、直接的に指示(いわゆる手動操作)を行うことができる具体的には、オペレータは表示装置14において画像合成回路13で生成した固定カメラ5と可動カメラ6の合成画像を見ながら、当該合成画像のうち物体の認識が正確にできない領域(主に周辺領域11)に可動カメラ6の撮像範囲を含めるように、可動カメラ6を制御することで物体の正確な認識を可能とすることができる。
【0034】
尚、図7の例では、画像合成回路13は必ずしも備えていなくともよい。但し、画像合成回路13を備えない場合には、固定カメラ5や可動カメラ6で撮像したそれぞれの画像数に応じた表示装置14等を用意したり、表示装置14の画面を複数分割するための画面分割器や各カメラの撮像画像を切り替えるためのスイッチャー、多画面対応録画装置等を備えるようにするとよい。
【0035】
(第2変形例)
続いて図8及び図9を参照して、第2変形例に係る撮像システム1´´について説明する。第2変形例に係る撮像システム1´´は、前述の実施例に比べて、外装カバー3内に可動カメラ6が複数台収容されている点で異なっている。図8は第2変形例に係る撮像システム1´´の全体構成を水平方向から透過的に見た透過側面図であり、図9は、第2変形例に係る撮像システム1´´における固定カメラ5及び2台の可動カメラ6のそれぞれの撮像範囲を水平方向から示す模式図である。
【0036】
固定カメラ5は図1及び図2を参照して上述したように、撮像レンズとして広角レンズ又は魚眼レンズのような超広角系レンズを有しており、その光軸Aが鉛直下方を向くように配置することにより、監視対象エリアを広範囲に亘って撮像できるように設置されている。一方の可動カメラ6及び6´は、撮像レンズとして固定カメラ5が有する撮像レンズに比べて画角が小さい、例えば望遠系レンズやズームレンズを有しており、パン・チルト・ズーム操作によって、固定カメラ5の撮像範囲の少なくとも一部を、適宜拡大縮小して撮像することができるようになっている。
【0037】
可動カメラ6及び6´は、支柱7にその一端を符号a及びbで示す方向(固定カメラ5の光軸Aを中心とする回転方向)に回転可能に取り付けられた支持部材8及び8´の他端に取り付けられている。支持部材8及び8´は図不示のアクチュエータが外部機器から送られた制御信号に基づいて、支柱7を中心に回動され、支持部材8の先端に取り付けられた可動カメラ6及び6´の撮像方向(光軸Bの向き)を可変に制御可能に構成されている。
【0038】
このように本変形例に係る撮像システム1´´は可動カメラ6を複数台(本変形例では2台)搭載することによって、各可動カメラ6から同時に画像を取得することができるので、より優れた監視能力を発揮することができる。例えば、監視対象エリアの複数の場所を可動カメラ6で撮像したい場合に、可動カメラ6が単数しかない場合には該可動カメラ6を駆動して順に画像を取得する必要があるため、駆動速度を速くしても複数の場所について同時に画像を取得することはできないため、監視に漏れが生じていた。一方、本変形例のように複数の可動カメラ6を搭載することにより、同時に異なる場所について画像を取得することができるので、監視漏れの少ない撮像システムを構築することができる。
【0039】
またこのように複数台の可動カメラ6を外装カバー4内に収納しても、外部機器との入出力に関するケーブル類はまとめて配線することが可能である。そのため、監視対象エリア内の詳細画像をより多く得るために可動カメラ6の台数を増やしても、これらのカメラをシステム内に一体化することにより、外部機器と接続するための配線等をコンパクトにまとめることができるので、設置性を向上させることができる。
【0040】
以上説明したように、本発明によれば、固定カメラ5と可動カメラ6とを含む複数の撮像手段を備え、固定カメラ5の撮像画角と可動カメラ6の撮像画角とが重複するように設置する。固定カメラ5は広角レンズを有するため、その撮像画像は中心部から離れるに従い歪が大きくなり物体の認識が困難になるが、このように画角が小さく歪の少ない可動カメラ6によって重複的に撮像することにより、固定カメラ5による撮像画像の歪が大きい領域においても正確な物体の認識が可能となる。その結果、固定カメラ5による撮像画像の歪が多い周辺領域を、歪の少ない可動カメラ6の撮像画像によって把握が可能となるため、広い撮像エリアと物体の正確な認識とを両立可能な撮像システムを実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0041】
本発明は、異なる画角を有する複数の撮像手段を備えてなる撮像システムに利用可能である。
【符号の説明】
【0042】
1 撮像システム
2 天井
3 ベース部材
4 外装カバー
5 固定カメラ
6 可動カメラ
7 支柱
8 支持部材
9 物体
10 像
11 周辺領域
12 物体認識回路
13 画像合成回路
14 表示装置
15 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の撮像手段を備えてなる撮像システムにおいて、
広角レンズを有し、予め設定された所定の方向を撮像するように固定された固定撮像手段と、
前記広角レンズの光軸の結像側の延長線を中心に回動可能に設置され、前記固定撮像手段より画角の小さいレンズを有する可動撮像手段と
を備え、
前記可動撮像手段は、前記固定撮像手段の撮像画角と前記可動撮像手段の撮像画角とが少なくとも部分的に重複するように設置されていることを特徴とする撮像システム。
【請求項2】
前記可動撮像手段は、その撮像範囲に前記固定撮像手段の撮像範囲より外側の領域を含むように設置されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像システム。
【請求項3】
前記可動撮像手段を回動させる駆動手段を更に備え、
該駆動手段は、前記可動撮像手段を周期的に回動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項4】
前記可動撮像手段を回動させる駆動手段と、
前記駆動手段に前記可動撮像手段を回動操作するための操作信号を送信する操作手段と
を更に備えたことを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項5】
前記可動撮像手段を回動させる駆動手段と、
前記固定撮像手段の撮像画像を画像解析する画像解析手段と
を更に備え、
前記駆動手段は、前記画像解析手段の解析結果に応じて前記可動撮像手段を回動させることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像システム。
【請求項6】
前記固定撮像手段の撮像画像と前記可動撮像手段の撮像画像とを合成する画像合成手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から5のいずれか一項に記載の撮像システム。
【請求項7】
前記可動撮像手段のズーム倍率を調整する倍率調整手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の撮像システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−12849(P2013−12849A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−143385(P2011−143385)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】