説明

撮像モジュール、結像レンズ、およびコード読取方法

【課題】近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有し、かつ、簡単な構造の撮像モジュール等を実現する。
【解決手段】撮像モジュール1は、被写界深度が拡げられたと共に、像面湾曲が小さくされた結像レンズ10と、ひまわり5からの白色光に対する、結像レンズ10の最良像面の位置3から、木6からの白色光に対する、結像レンズ10の最良像面の位置4まで、の間に設けられたセンサ11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有するように構成された撮像モジュール、および、該撮像モジュールを実現するのに好適な結像レンズ、さらには、該撮像モジュールを用いて、QRコード(登録商標)をはじめとする、マトリクス型二次元コードの読取を行うための、コード読取方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、レンズに電界または磁界を印加して屈折率を変えることにより、レンズの焦点位置を変える、自動焦点調整装置が開示されている。
【0003】
特許文献2には、被写体までの距離に応じて得られた電気信号を圧電素子に供給し、圧電素子の厚みを変化させることにより、レンズの位置を制御する、光学機器の自動焦点調整方法が開示されている。
【0004】
特許文献3および4にはそれぞれ、調整レバーを回動させて、レンズの位置を移動させる調整機構を備えた、レンズ調整装置が開示されている。
【0005】
特許文献5には、透光板‐レンズ間にガスを注入することで、レンズの位置を移動させる、撮像装置が開示されている。
【0006】
特許文献1〜5に開示されている各技術では、レンズの位置、または、レンズの焦点位置を、被写体の位置に応じて変化させることにより、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有する、撮像モジュールを実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭59−022009号公報(1984年 2月 4日公開)
【特許文献2】特開昭61−057918号公報(1986年 3月25日公開)
【特許文献3】特開平10−104491号公報(1998年 4月24日公開)
【特許文献4】特開平10−170809号公報(1998年 6月26日公開)
【特許文献5】特開2003−029115号公報(2003年 1月29日公開)
【特許文献6】特開2004−064460号公報(2004年 2月26日公開)
【特許文献7】特開2004−301938号公報(2004年10月28日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜5に開示されている各技術では、レンズの位置、または、レンズの焦点位置を、被写体の位置に応じて変化させるための機構が必要であるため、撮像モジュールの構造が複雑になるという問題が発生する。
【0009】
本発明は、上記の問題に鑑みて為されたものであり、その目的は、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有し、かつ、簡単な構造の撮像モジュール、および、この撮像モジュールを実現するのに好適な結像レンズ、さらには、この撮像モジュールを用いて、マトリクス型二次元コードの読取を高解像力で行うための、コード読取方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の撮像モジュールは、上記の問題を解決するために、被写界深度が拡げられたと共に、像面湾曲が小さくされた結像レンズと、所定位置よりも近い被写体からの白色光に対する、上記結像レンズの最良像面の位置から、該所定位置よりも遠い被写体からの白色光に対する、上記結像レンズの最良像面の位置まで、の間に設けられた撮像素子と、を備えることを特徴としている。
【0011】
上記の構成によれば、結像レンズは、被写界深度が拡げられているため、近くから遠くまでの広い距離範囲に存在する、各被写体を結像した像に発生するボケが低減される。また、結像レンズは、像面湾曲が小さくされているため、像の全体において、ボケが低減される。このように、像のボケを低減するための工夫が十分に施された結像レンズを用いて、本撮像モジュールでは、撮像素子を上述の位置に設けている。これにより、本撮像モジュールでは、近い被写体を撮影する場合と、遠い被写体を撮影する場合との両方において平均的に、ボケの低減された像が撮影できるため、解像力をある程度良好にすることができる。
【0012】
本撮像モジュールは、結像レンズの位置、および、結像レンズの焦点位置の両方を固定しても、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有するものとすることができる。従って、本撮像モジュールは、レンズの位置、または、レンズの焦点位置を、被写体の位置に応じて変化させるための機構が不要であるため、撮像モジュールの構造が簡単になるという効果を奏する。
【0013】
また、本発明の撮像モジュールは、上記撮像素子は、緑の単色放射から得られた画素に関する情報のみを出力することが可能なものであることを特徴としている。
【0014】
上記の構成によれば、撮像素子が出力した、緑の単色放射から得られた画素に関する情報に基づいた読取処理により、マトリクス型二次元コードの読取が可能となる。
【0015】
また、本発明の撮像モジュールは、上記撮像素子は、上記所定位置よりも近い被写体からの上記緑の単色放射に対する、上記結像レンズの最良像面の位置に設けられたことを特徴としている。
【0016】
上記の構成によれば、撮像素子に対しては、細かい構造のマトリクス型二次元コードを認識させることが可能となる。このため、より細かな構造のマトリクス型二次元コードの読取が可能となる。
【0017】
また、本発明の撮像モジュールは、上記撮像素子は、画素のピッチが2.5μm以下であることを特徴としている。
【0018】
上記の構成によれば、高画素の撮像素子の性能を十分活かした撮像モジュールを実現することができる。
【0019】
また、本発明の撮像モジュールは、上記結像レンズは、上記撮像素子を保護するための保護部材を介して、該撮像素子に載せられていることを特徴としている。
【0020】
上記の構成によれば、本撮像モジュールは、結像レンズを収容するための筐体(筐枠)を省略することが可能になるため、該筐体を省略することにより、小型化および低背化、さらには低コスト化が実現可能となる。
【0021】
また、本発明の撮像モジュールは、上記結像レンズのFナンバーは、3以下であることを特徴としている。
【0022】
上記の構成によれば、受光光量を増大させることができるため、像を明るくすることが可能となる。さらに、色収差が良好に補正されるため、高い解像力を得ることができる。
【0023】
本発明の結像レンズは、上記の問題を解決するために、被写界深度が拡げられていると共に、像面湾曲が小さくされており、所定位置よりも近い物体からの白色光に対する最良像面の位置から、該所定位置よりも遠い物体からの白色光に対する最良像面の位置まで、の間において、物体の結像を行うものであることを特徴としている。
【0024】
上記の構成によれば、本結像レンズは、被写界深度が拡げられているため、近くから遠くまでの広い距離範囲に存在する、各物体を結像した像に発生するボケが低減される。また、本結像レンズは、像面湾曲が小さくされているため、像の全体において、ボケが低減される。このように、像のボケを低減するための工夫が十分に施された本結像レンズを用いて、物体の結像は、上述の位置にて行う。これにより、本結像レンズでは、近い物体を結像する場合と、遠い物体を結像する場合との両方において平均的に、ボケの低減された像が結像できるため、解像力をある程度良好にすることができる。
【0025】
本結像レンズは、位置および焦点位置の両方を固定しても、近い物体の結像と、遠い物体の結像と、の両方において、十分に良好な解像力を有するものとすることが可能なものである。従って、本結像レンズを用いて構成した撮像モジュールでは、レンズの位置、または、レンズの焦点位置を、被写体の位置に応じて変化させるための機構が不要であるため、撮像モジュールの構造が簡単になるという効果を奏する。換言すれば、本結像レンズは、本撮像モジュールを実現するのに好適であるという効果を奏する。
【0026】
本発明のコード読取方法は、上記の本撮像モジュールを使用して、緑の単色放射から得られた画素に基づいて、マトリクス型二次元コードを読み取るためのコード読取方法であって、上記緑の単色放射から得られた画素のピッチを用いて、上記結像レンズおよび上記撮像素子の各限界解像性能の値を求め、値の低いほうを上記撮像モジュールの限界解像性能とする工程と、上記結像レンズから上記所定位置よりも近い被写体までの距離と、上記撮像モジュールの画角と、上記撮像素子の有効像円径と、から、該被写体に対する上記結像レンズが結像する像の倍率を算出する工程と、上記撮像モジュールの限界解像性能と、上記倍率と、から、上記撮像モジュールが読取可能な、上記マトリクス型二次元コードのサイズを算出する工程と、を含むことを特徴としている。
【0027】
上記の構成によれば、本撮像モジュールを用いた、マトリクス型二次元コードの読取時において、撮像モジュールの高解像力化を図ることができる。
【発明の効果】
【0028】
以上の通り、本発明の撮像モジュールは、被写界深度が拡げられたと共に、像面湾曲が小さくされた結像レンズと、所定位置よりも近い被写体からの白色光に対する、上記結像レンズの最良像面の位置から、該所定位置よりも遠い被写体からの白色光に対する、上記結像レンズの最良像面の位置まで、の間に設けられた撮像素子と、を備える。
【0029】
従って、本発明の撮像モジュールは、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有し、かつ、簡単な構造であるという効果を奏する。
【0030】
以上の通り、本発明の結像レンズは、被写界深度が拡げられていると共に、像面湾曲が小さくされており、所定位置よりも近い物体からの白色光に対する最良像面の位置から、該所定位置よりも遠い物体からの白色光に対する最良像面の位置まで、の間において、物体の結像を行うものである。
【0031】
従って、本発明の結像レンズは、本発明の撮像モジュールを実現するのに好適であるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の一実施の形態に係る撮像モジュールの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態に係る結像レンズの具体的な構成例を示す概略断面図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、図2に示す結像レンズの各種収差の特性を示すグラフであり、同図(a)には球面収差の特性を、同図(b)には非点収差の特性を、同図(c)には歪曲の特性を、それぞれ示している。
【図4】図4(a)は、近い被写体および遠い被写体からの各白色光に対する、結像レンズのデフォーカスMTFの両方と、撮像素子の位置と、の関係を示すグラフであり、図4(b)および(c)はそれぞれ、同図(a)に示す両デフォーカスMTFを、個別に詳細に示したグラフである。
【図5】近い被写体および遠い被写体からの各白色光に対する、結像レンズの別のデフォーカスMTFの両方と、撮像素子の位置と、の関係を示すグラフである。
【図6】近い被写体および遠い被写体からの各白色光に対する、結像レンズのさらに別のデフォーカスMTFの両方と、撮像素子の位置と、の関係を示すグラフである。
【図7】近い被写体および遠い被写体からの各白色光に対する、結像レンズの他のデフォーカスMTFの両方と、撮像素子の位置と、の関係を示すグラフである。
【図8】遠い被写体からの白色光に対する結像レンズの、像面湾曲の有無および像高に応じた各デフォーカスMTFと、撮像素子の位置と、の関係を示すグラフである。
【図9】本発明に係る撮像モジュールにおける、撮像素子から被写体までの距離に対する、MTF値の変化の関係を示すグラフである。
【図10】図10(a)および(b)は、図1に示す撮像モジュールに対する比較例となる撮像モジュールの、結像レンズの各種収差の特性を示すグラフであり、同図(a)には非点収差の特性を、同図(b)には歪曲の特性を、それぞれ示している。
【図11】遠い被写体からの白色光に対する、図10と同じ結像レンズのデフォーカスMTFを詳細に示したグラフである。
【図12】本発明に係る撮像モジュールに対する比較例となる撮像モジュールにおける、撮像素子から被写体までの距離に対する、MTF値の変化の関係を示すグラフである。
【図13】白色光に対する、本発明およびその比較例に係る各結像レンズの各デフォーカスMTFと、緑の単色放射に対する、本発明に係る結像レンズのデフォーカスMTFと、撮像素子の位置と、の関係を示すグラフである。
【図14】通常撮像時と、マトリクス型二次元コードの読取時と、のそれぞれにおける、使用すべき画素の対比を示す図である。
【図15】図15(a)は、近い被写体からの白色光に対する、図13と同じ本発明に係る結像レンズのデフォーカスMTFを詳細に示したグラフであり、図15(b)は、近い被写体からの緑の単色放射に対する、同結像レンズのデフォーカスMTFを詳細に示したグラフである。
【図16】結像レンズの限界解像性能の求め方を説明するグラフである。
【図17】撮像素子における画素ピッチと、撮像素子における緑の画素のみの画素ピッチと、の関係を示す概略図である。
【図18】結像レンズの倍率の求め方を説明する図である。
【図19】結像レンズの限界解像性能の求め方を説明する別のグラフである。
【図20】図1に示す撮像モジュールの具体的な構造の一例を示す断面図である。
【図21】図1に示す撮像モジュールの具体的な構造の他の例を示す断面図である。
【図22】一般的な、撮像モジュールの製造方法を示す断面図である。
【図23】本発明に係る、撮像モジュールの製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
図1に示す撮像モジュール1は、結像レンズ10およびセンサ(撮像素子)11を備えている。
【0034】
結像レンズ10は、物体の結像を行うものである。具体的に、結像レンズ10は、撮像モジュール1により撮影を行う対象となる被写体を、像面において結像するものである。
【0035】
結像レンズ10は、被写界深度を拡げ、かつ、像面湾曲を小さくする工夫が施された周知のレンズ系であれば、具体的な構成について特に限定されない。結像レンズ10の具体的な構成の一例は後述する。
【0036】
被写界深度とは、カメラレンズをあるレンズセット位置に固定したとき、ボケがなく、鮮明であると受け入れられるようなカメラから最も近い点と最も遠い点との間の距離、すなわち、レンズをある特定の距離に対して焦点を合わせた時、満足すべき鮮明度が得られる全体の距離である。
【0037】
像面湾曲とは、平面物体が、平面よりもむしろ湾曲した面に結像したような状態になるレンズの収差である。つまり、レンズにこの収差があると、平面物体の像は湾曲したものとなり、画像の中心にピントを合わせると周辺部がボケ、周辺部にピントを合わせると逆に中心がボケる。
【0038】
センサ11は、結像レンズ10が被写体を結像して形成された像を示す光が入射されると、入射された光を電気信号に変換して出力することで、表示装置(図示しない)に該被写体を表示可能とするものである。センサ11としては、CCD(Charge Coupled Device:電荷結合素子)およびCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor:相補型金属酸化膜半導体)等に代表される、固体撮像素子等が使用可能である。
【0039】
センサ11が設けられた位置(以下「センサ位置」と称する)2は、ひまわり5からの白色光に対する結像レンズ10の最良像面の位置3から、木6からの白色光に対する結像レンズ10の最良像面の位置4まで、の間となっている。最良像面とは、光の集中度、または、解像力が最大の結像面を意味する、一般的な技術用語である。
【0040】
ひまわり5は、撮像モジュール1により撮影される被写体の一例であって、その位置が撮像モジュール1に近い被写体を示している。ひまわり5は、例えば、距離にして撮像モジュール1と約300mm離れている。そして、詳細に述べると、位置3は、ひまわり5のような撮像モジュール1に近い被写体を、結像レンズ10が結像した場合の、最良像面である。
【0041】
木6は、撮像モジュール1により撮影される被写体の一例であって、その位置が撮像モジュール1から遠い被写体を示している。木6は、例えば、距離にして撮像モジュール1と約1500mm離れている。そして、詳細に述べると、位置4は、木6のような撮像モジュール1から遠い被写体を、結像レンズ10が結像した場合の、最良像面である。
【0042】
撮像モジュール1に近い被写体と、撮像モジュール1から遠い被写体と、の区別は例えば、センサ11までの距離が、基準となる距離(所定距離)よりも小さい被写体を撮像モジュール1に近い被写体とし、この基準となる距離よりも大きい被写体を撮像モジュール1から遠い被写体とすればよい。さらに、この要領で区別を実施する場合、上記基準となる距離は、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影とで、レンズの位置、および/または、レンズの焦点位置が互いに異なる、2種類の撮影モードが存在する、従来一般的な撮像モジュールにおいて、これら2種類の撮影モードを切り替えるのが好ましいとされる、該撮像モジュールの撮像素子から該被写体までの距離とすればよい。
【0043】
上述した基準となる距離等の、撮像モジュール1に近い被写体と、撮像モジュール1から遠い被写体と、を区別するための臨界となる距離(所定距離)は、いかなる撮像モジュール1において存在するものの、その具体的な値は、結像レンズ10の特性、センサ11の最終的な配置位置、および、撮像モジュール1のサイズ等に応じて、撮像モジュール1毎に変化し得るものである。撮像モジュール1に近い被写体と、撮像モジュール1から遠い被写体と、を区別するための臨界となる距離については、撮像モジュール1の各種設計および特性に応じて適宜、撮像モジュール1毎に決定されるものであると解釈すべきである。
【0044】
図2には、結像レンズ10の具体的な構成の一例を示している。結像レンズ10で最も重要なことは、ジャストフォーカス位置での解像力を向上させることよりも、被写界深度を拡げること、および、像面湾曲を小さくすることである。
【0045】
結像レンズ10の構成の具体例は、図2に示すとおり、開口絞り12、第1レンズPL1、第2レンズPL2、第3レンズPL3、および、カバーガラス(保護部材)CGを備えている。
【0046】
第1レンズPL1における、結像を行う対象となる物体側の面(物体側面)はS1であり、結像レンズ10の像面側の面(像側面)はS2である。第2レンズPL2における、物体側の面はS3であり、結像レンズ10の像面側の面はS4である。第3レンズPL3における、物体側の面はS5であり、結像レンズ10の像面側の面はS6である。カバーガラスCGにおける、物体側の面はS7であり、結像レンズ10の像面側の面はS8である。結像レンズ10の像面は、S9であり、センサ位置2(図1参照)に対応している。
【0047】
開口絞り12は、第1レンズPL1の面S1の周囲を取り囲むように設けられている。開口絞り12は、結像レンズ10に入射した光が、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および、第3レンズPL3を適切に通過することを可能にするために、結像レンズ10に入射した光の軸上光線束の直径を制限することを目的に設けられている。
【0048】
第1レンズPL1は、物体側に向けられた面S1が凸面となっている、周知のメニスカスレンズである。第1レンズPL1が、物体側に凸面を向けたメニスカスレンズである場合は、結像レンズ10の全長に対する、第1レンズPL1の全長の比率が大きくなり、これにより、結像レンズ10の全長に比して、結像レンズ10全体の焦点距離を長くすることができるため、結像レンズ10の小型化および低背化が可能となる。第1レンズPL1は、アッベ数を56程度と大きくすることで、入射光の分散を小さくしている。
【0049】
第2レンズPL2は、物体側に向けられた面S3が凹面となっている、周知のメニスカスレンズである。第2レンズPL2が、物体側に凹面を向けたメニスカスレンズである場合は、第2レンズPL2の屈折力を維持しつつ、ペッツヴァル和(光学系による平面物体の像の湾曲の軸上特性)を小さくすることができるため、非点収差、像面湾曲、およびコマ収差を低減することができる。第2レンズPL2は、アッベ数を34程度と小さくすることで、入射光の分散を大きくしている。
【0050】
アッベ数の大きな第1レンズPL1と、アッベ数の小さな第2レンズPL2と、を組み合わせた構成は、色収差の補正の観点において有効である。
【0051】
第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3としてはいずれも、非球面のレンズを適用した。
【0052】
非球面の第1レンズPL1は、特に球面収差を大幅に補正することが可能である。非球面の第2レンズPL2は、特に非点収差および像面湾曲を大幅に補正することが可能である。非球面の第3レンズPL3は、特に非点収差、像面湾曲、および歪曲を大幅に補正することが可能である。
【0053】
さらに、非球面の第3レンズPL3は、結像レンズ10におけるテレセントリック性を向上させることができるため、NA(numerical aperture:開口数)を小さくすることにより、結像レンズ10では、被写界深度を簡単に拡げることができる。
【0054】
以上のことから、図2に示す結像レンズ10では、被写界深度を拡げることができ、さらに、像面湾曲を小さくすることができる。
【0055】
カバーガラスCGは、第3レンズPL3とセンサ11(図1参照)との間に挟まれて設けられる。カバーガラスCGは、センサ11に被覆されることで、センサ11を物理的ダメージ等から保護するためのものである。
【0056】
〔表1〕には、結像レンズ10によるレンズ系の設計式の一例を示している。
【0057】
【表1】

【0058】
〔表1〕において、屈折率およびアッベ数は共に、d線(波長587.6nm)に対する各材料での数値を示している。
【0059】
中心厚(面の中心厚)とは、対応する面中心から像面側に向かって次の面の中心までの光軸に沿う距離である。有効半径とは、レンズにおける、光束の範囲を規制可能な円領域の半径である。
【0060】
非球面係数のそれぞれは、非球面を構成する非球面式である数式(1)における、i次の非球面係数Ai(iは4以上の偶数)を意味している。数式(1)において、Zは光軸方向(図2のX方向)の座標であり、xは光軸に対する法線方向(図2のY方向)の座標であり、Rは曲率半径(曲率の逆数)であり、Kはコーニック(円錐)係数である。
【0061】
【数1】

【0062】
〔表1〕の各値「(定数a)E(定数b)」の表記は「(定数a)×10の(定数b)乗」を示しており、例えば「8.74E−01」は「8.74×10−1」を示しているものとする。
【0063】
〔表2〕には、撮像モジュール1の仕様の一例を示している。
【0064】
【表2】

【0065】
有効像円径は、結像レンズ10により解像された像の有効な結像円寸法である。
【0066】
Fナンバーは、光学系の明るさを示す量の一種である。結像レンズ10のFナンバーは、結像レンズ10の等価焦点距離を、結像レンズ10の入射瞳径で割った値で表される。撮像モジュール1では、〔表2〕に示すとおり、この結像レンズ10のFナンバーを3以下にまで低減するのが好ましい。これにより、結像レンズ10では、受光光量を増大させることができるため、像を明るくすることが可能になると共に、色収差が良好に補正されるため、高い解像力を得ることができる。
【0067】
画角は、撮像モジュール1により撮影可能な角度である。
【0068】
光学全長とは、構成された光学系(撮像モジュール1)の光学特性に対して或る影響を与える、該光学系の全構成要素の、光軸方向における寸法の総計を意味する。
【0069】
撮像モジュール1では、〔表2〕に示すとおり、センサ11の画素のピッチ(センサ画素ピッチ)を、2.5μm以下とするのが好ましい。画素のピッチが2.5μm以下であるセンサ11を用いることにより、撮像モジュール1は、高画素の撮像素子の性能を十分活かすことができる。
【0070】
最近接物体距離とは、撮像モジュール1により撮像可能な、最も近い被写体までの距離である。
【0071】
図3(a)〜(c)は、図2に示す結像レンズ10の各種収差の特性を示すグラフであり、同図(a)には球面収差の特性を、同図(b)には非点収差の特性を、同図(c)には歪曲の特性を、それぞれ示している。
【0072】
残存収差量が小さい(光軸に対する法線方向の変位に対する各収差の大きさのズレが小さい)ことから、結像レンズ10は、小型かつ低背であり、さらに、良好な光学特性を有していることがわかる。
【0073】
図4(a)は、センサ11までの距離が約300mmである、ひまわり5からの白色光に対する、結像レンズ10のデフォーカスMTF(詳細な波形は図4(b)参照)と、センサ11までの距離が約1500mmである、木6からの白色光に対する、同結像レンズ10のデフォーカスMTF(詳細な波形は図4(c)参照)と、センサ位置2と、の関係を示すグラフである。
【0074】
デフォーカスMTF(Modulation Transfer Function:変調伝達関数)とは、像面S9(図2参照)を光軸方向に移動させていったときの、像面S9に形成される像のコントラスト変化を測定したものである。
【0075】
図4(b)および(c)では、空間周波数を71.4lp/mmとし、像高h0、像高h0.2、像高h0.4、像高h0.8、および、像高h1.0における、各デフォーカスMTFの測定結果をグラフに示している。
【0076】
像高とは、画像の中心を基準とした像の高さを意味する。そして、最大像高に対する像高の高さは、割合で表現され、画像の中心を基準として、該最大像高の80%の高さに該当する像高の高さに対応する部分を示す場合、上記のとおり、像高h0.8と表現される(その他、像高8割、h0.8と表現される場合もある)。像高h0、像高h0.2、像高h0.4、および像高h1.0も、像高h0.8と同様の旨示す表現である。
【0077】
空間周波数を71.4lp/mmとした理由は、以下のとおりである。すなわち、目標とする解像性能により、評価に用いる空間周波数を選ぶ。デフォーカスMTFでは、光学系の焦点深度および歪非点収差、像面の湾曲を評価する。この為、レンズの限界解像性能に相当する高い空間周波数を用いるのではなく、それより若干低い空間周波数で評価することが妥当と考えられる。また、センサの解像限界性能を表す指標のひとつにセンサナイキスト周波数があり、一般に、センサのナイキスト周波数に対する1/2倍または1/4倍の空間周波数を評価の値に用いる。そこで本実施例の場合、センサナイキスト周波数×1/4に相当する、空間周波数71.4lp/mmを用いた。なお、この場合、センサ画素ピッチは1.75μmであり、センサナイキスト周波数は285.7143lp/mmであり、その1/4は71.42857≒71.4lp/mmである。
【0078】
図4(a)および後述する図5〜7では、ひまわり5からの白色光に対する、結像レンズ10のデフォーカスMTFを点線により、木6からの白色光に対する、同結像レンズ10のデフォーカスMTFを実線により、それぞれ示している。
【0079】
図4(a)に示す各デフォーカスMTFは、いずれも、縦軸MTF値、横軸フォーカスシフト(Focus Shift)のグラフにおいて上に凸の曲線であるが、センサ11から被写体までの距離が離れている程に、フォーカスシフトが小さな部分、すなわち、より被写体に近い側に像面S9を配置した旨を示す、グラフの左側において、MTF値が極大となる。
【0080】
理由は、ひまわり5からの光が結像レンズ10の光軸に対して広がりを持った光線として結像レンズ10に入射される一方、木6からの光が結像レンズ10の光軸に対して平行に近い光線として結像レンズ10に入射されるので、これらの光を結像レンズ10によりそれぞれ集束させた場合、木6からの光のほうが、結像レンズ10に近い部分(すなわち、より被写体に近い側)で集束されるためである。
【0081】
結像レンズ10では、被写界深度を拡げることにより、図4(a)に示す各デフォーカスMTFを示す曲線の傾きが、全体的に比較的緩やかになる。これにより、比較的広いフォーカスシフトの範囲において、MTF値が良好となる。
【0082】
結像レンズ10では、像面湾曲を小さくすることにより、像高の変化に応じた、MTF値の変動が小さくなる。
【0083】
図4(a)に示すグラフにおいて、点線で示す曲線の極大値は、ひまわり5からの白色光に対する結像レンズ10の最良像面の位置3(図1参照)に、実線で示す曲線の極大値は、木6からの白色光に対する結像レンズ10の最良像面の位置4(図1参照)に、それぞれ該当する。
【0084】
グラフ中「必要なMTF値」とは、撮像モジュール1における、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を示している。
【0085】
センサ位置2は、図1に示すとおり、位置3と位置4との間であるが、これは、点線で示す曲線の極大値と、実線で示す曲線の極大値と、の間に該当する。そして、この場合、ひまわり5からの白色光に対する結像レンズ10の、センサ位置2でのMTF値と、木6からの白色光に対する結像レンズ10の、センサ位置2でのMTF値と、の両方が、必要なMTF値を満足する。
【0086】
従って、撮像モジュール1は、近いひまわり5の撮影においても、遠い木6の撮影においても、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有していると言える。
【0087】
なお、センサ位置2を、図4(a)に示すとおり、点線および実線で示す各デフォーカスMTFの交点に該当する位置とすることで、撮像モジュール1では、近いひまわり5の撮影と、遠い木6の撮影と、の両方において、安定した高い解像力を得ることができる。
【0088】
図5は、図4(a)に示すグラフに対して、センサ位置2を、実線で示す曲線の極大値に該当する位置、すなわち、木6からの白色光に対する結像レンズ10の最良像面の位置4とした場合を示している。
【0089】
この場合、ひまわり5からの白色光に対する結像レンズ10の、センサ位置2でのMTF値が、必要なMTF値を満足せず、撮像モジュール1により撮影されたひまわり5は、ボケてしまう。
【0090】
図6は、図4(a)に示すグラフに対して、センサ位置2を、点線で示す曲線の極大値に該当する位置、すなわち、ひまわり5からの白色光に対する結像レンズ10の最良像面の位置3とした場合を示している。
【0091】
この場合、木6からの白色光に対する結像レンズ10の、センサ位置2でのMTF値が、必要なMTF値を満足せず、撮像モジュール1により撮影された木6は、ボケてしまう。
【0092】
図7は、図4(a)に示すグラフに対して、結像レンズ10の被写界深度が狭い場合を示している。
【0093】
この場合、各デフォーカスMTFを示す曲線の傾きが、全体的に急峻となってしまう。これにより、MTF値が良好となるフォーカスシフトの範囲が、狭い範囲に限定されてしまう。この結果、たとえセンサ位置2を、点線および実線で示す各デフォーカスMTFの交点に該当する位置としても、ひまわり5および木6からの各白色光に対する結像レンズ10の、センサ位置2での各MTF値の両方が、必要なMTF値を満足しなくなってしまう。撮像モジュール1により撮影された、ひまわり5および木6は、いずれもボケてしまう。
【0094】
図8は、木6からの白色光に対する結像レンズ10の、像高h0およびh0.8での各デフォーカスMTFと、センサ位置2と、の関係を示すグラフである。なお、図8に示すグラフにおいては、結像レンズ10において像面湾曲が発生しているものとする。
【0095】
図8では、結像レンズ10の像高h0でのデフォーカスMTFを実線により、結像レンズ10の像高h0.8でのデフォーカスMTFを点線により、それぞれ示している。
【0096】
図8に示す各デフォーカスMTFは、像面湾曲に起因して、像高h0と像高h0.8とで、デフォーカスMTFが大きく異なっている。そして、図8では、図4(a)と同じセンサ位置2において、木6からの白色光に対する結像レンズ10の、センサ位置2での像高h0.8でのMTF値が、必要なMTF値を満足していない。この場合、撮像モジュール1により撮影された木6は、中心部分が鮮明である一方、周辺部分がボケてしまう。
【0097】
図9は、センサ11から被写体までの距離、すなわち、物体距離に対する、MTF値の変化の関係を示すグラフである。図9は、〔表3〕に示す、物体距離とMTF値(空間周波数130lp/mmの場合)との関係を、縦軸MTF値、横軸物体距離のグラフとして示したものである。空間周波数130lp/mmは約700TV本相当である。
【0098】
【表3】

【0099】
最大差とは、物体距離の各々における、MTFの最大値と最小値との差である。
【0100】
「Sag」はサジタル像面を、「Tan」はタンジェンシャル像面をそれぞれ示している。サジタル像面とは、光学系の光軸外の物点から、光学系に入射する光線のうち、回転対称の光学系で、主光線と光軸とを含む面に垂直な平面(サジタル平面)に含まれる光線(サジタル光線)によって形成される、像点の軌跡を意味している。タンジェンシャル像面とは、サジタル光線の光束に直交し、かつ主光線を含む光束(メリジオナル光線束)によって生じる像面を意味している。サジタル像面およびタンジェンシャル像面はいずれも、一般的な光学用語であるため、これ以上の詳細な説明については省略する。
【0101】
図9に示すグラフによれば、撮像モジュール1では、像高h0、像高h0.8(サジタル像面)、および像高h0.8(タンジェンシャル像面)の全てに関して、約300mmの物体距離から1500mm以上(およそ無限遠)の物体距離までの範囲において、0.20以上の高いMTF値が得られ、広い物体距離の範囲において、良好な解像力が得られる。
【0102】
以上のことから、撮像モジュール1は、結像レンズ10の位置、および、結像レンズ10の焦点位置の両方を固定した、固定焦点のレンズとしても、ひまわり5の撮影と、木6の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有するものとすることができる。
【0103】
従って、撮像モジュール1は、結像レンズ10の位置、または、結像レンズ10の焦点位置を、被写体の位置に応じて変化させるための機構が不要であるため、撮像モジュール1の構造が簡単になる。
【0104】
本発明は、光軸方向の収差を調整し、焦点深度を広く設計する。本発明は、像高によらず一定のMTF‐デフォーカス特性となる様、特に像面湾曲の補正に注力した収差補正を行う。本発明は、近接距離にある被写体に対する最良像面位置と遠距離にある被写体に対する最良像面位置の間にセンサ面が配置するようなレンズ‐センサ間の位置調整を行う。
【0105】
以下、本発明の作用効果を、よりわかりやすく説明するため、比較例となる撮像モジュールについて、同様の評価を行ったので、簡単に説明する。
【0106】
比較例となる撮像モジュールでは、結像レンズの被写界深度を拡げておらず、結像レンズの像面湾曲に関しても特別な工夫を施していない。該撮像モジュールは、ジャストフォーカス位置での解像力を向上させているものに過ぎない。
【0107】
比較例となる撮像モジュールの、各種収差の特性は、図10(a)および(b)の各グラフに示すとおりであり、同図(a)には非点収差の特性を、同図(b)には歪曲の特性を、それぞれ示している。図10(b)に示すとおり、比較例となる撮像モジュールの歪曲は、撮像モジュール1の歪曲(図3(c)参照)よりも、明らかに大きくなっている。
【0108】
比較例となる撮像モジュールでは、センサ位置を、センサまでの距離が1500mmである、遠い被写体からの白色光に対する結像レンズの最良像面の位置、すなわち、図1における位置4に略該当する位置としている(図11参照)。図11では、空間周波数を71.4lp/mmとし、像高h0、像高h0.2、像高h0.4、像高h0.8、および、像高h1.0における、各デフォーカスMTFの測定結果をグラフに示している。
【0109】
図12は、比較例となる撮像モジュールのセンサから被写体までの距離、すなわち、物体距離に対する、MTF値の変化の関係を示すグラフである。図12は、〔表4〕に示す、物体距離とMTF値(空間周波数130lp/mmの場合)との関係を、縦軸MTF値、横軸物体距離のグラフとして示したものである。
【0110】
【表4】

【0111】
図12に示すグラフによれば、比較例となる撮像モジュールでは、像高h0、像高h0.8(サジタル像面)、および像高h0.8(タンジェンシャル像面)の全てに関して、約300mmの物体距離において、0.20に満たない低いMTF値となり、解像力が低くなってしまう。特に、像高h0.8(サジタル像面)に関しては、物体距離が450mm程度にならないと、MTF値が0.20に到達せず、良好な解像力が得られる範囲が狭い。
【0112】
センサ11は、通常撮像(単純な被写体の撮影)のときに、RGB表色系における「Red(赤:700.0nm)」「Green(緑:546.1nm)」および「Blue(青:435.8nm)」の、各単色放射からなる白色光から得られた、全ての画素に関する情報を出力する必要がある。
【0113】
一方、QRコード(登録商標)等の、いわゆるマトリクス型二次元コード読取時において、センサ11は、上記「Green」(緑)の単色放射から得られた画素に関する情報のみを出力すれば十分であり、むしろこのほうが、「Green」の単色放射から得られた画素に関する情報に基づいた、コード読取処理が行いやすい(図14参照)。該コード読取処理の詳細については後述する。
【0114】
図14では、「Red」の単色放射から得られた画素をR141、「Green」の単色放射から得られた画素をG142、「Blue」の単色放射から得られた画素をB143として示している。センサ11においては、G142の画素の総数が、R141およびB143の画素の各総数に対して、2倍となっているのが一般的である。マトリクス型二次元コード読取時には、この各G142のみを用いて、読取処理を行う。
【0115】
つまり、センサ11は、R141に関する情報、G142に関する情報、およびB143に関する情報のうち、G142に関する情報のみを出力することが可能なものである。
【0116】
なお、G142に関する情報のみを、センサ11から出力させるためには例えば、以下の手法が考えられる。すなわち、この手法としては、R141に関する情報、G142に関する情報、およびB143に関する情報のそれぞれを、センサ11から出力するための各出力回路(図示しない)のうち、G142に対応する該出力回路を動作させる一方、R141およびB143に対応する各出力回路を停止させる。これらの各出力回路を、動作させるか停止させるかの制御は、センサ11の内部または外部に配された周知の信号生成回路(図示しない)にて生成される、高レベルおよび低レベルからなる2値のデジタル信号である停止信号により行う。例えば、各出力回路は、各々に設けられた停止信号入力端子(図示しない)に、高レベルの該停止信号が供給されると動作し、低レベルの該停止信号が供給されると停止するように構成する。そして、通常撮像(図14参照)時において、全ての出力回路の上記停止信号入力端子には、高レベルの該停止信号を供給する。一方、マトリクス型二次元コード読取時(図14参照)において、G142に対応する該出力回路の上記停止信号入力端子には、高レベルの該停止信号を供給する一方、R141およびB143に対応する各出力回路の上記停止信号入力端子には、低レベルの該停止信号を供給する。
【0117】
但し、以上の手法はあくまでも、G142に関する情報のみを、センサ11から出力させるための手法の一例に過ぎない。すなわち、G142に関する情報のみを、センサ11から出力させるための手法としては、一般的なセンサ11において、R141およびB143に関する各情報の出力を停止させることができる手法でさえあれば、特に限定されず、センサ11の各画素に関する情報に関して、各情報の出力または停止を切り替える、周知の構成が適用可能である。
【0118】
また、撮像モジュール1では、センサ11までの距離が約300mmである被写体、すなわち、撮像モジュール1に近い被写体からの「Green」の単色放射に対する、結像レンズ10の最良像面の位置と、センサ位置2と、が一致しているのが好ましい(図13参照)。これにより、撮像モジュール1に近い被写体からの「Green」の単色放射を、結像レンズ10により結像した像は、センサ位置2において最も鮮明になるため、細かい構造のマトリクス型二次元コードを、センサ11に認識させることが可能となる。このため、より細かな構造のマトリクス型二次元コードの読取が可能となる。
【0119】
図13には、白色光に対する、比較例となる撮像モジュールに係る結像レンズのデフォーカスMTFを、併せて示している。図15(a)には、近い被写体からの白色光に対する、図13に示す場合の結像レンズ10のデフォーカスMTFを詳細に示しており、図15(b)は、近い被写体からの緑の単色放射に対する、同結像レンズ10のデフォーカスMTFを詳細に示している。
【0120】
ここからは、「Green」の単色放射から得られた画素に関する情報に基づいた、コード読取処理について説明する。
【0121】
マトリクス型二次元コード読取の可否は、センサ11の解像性能(解像力)、または、結像レンズ10の解像性能により決定される。
【0122】
つまり、センサ11がマトリクス型二次元コード読取に必要な解像性能を十分に有していても、結像レンズ10の解像性能が該読取に必要な解像性能を有していない場合、撮像モジュール1は、マトリクス型二次元コードを読み取ることが出来ない。
【0123】
同様に、結像レンズ10がマトリクス型二次元コード読取に必要な解像性能を十分に有していても、センサ11の解像性能が該読取に必要な解像性能を有していない場合、撮像モジュール1は、マトリクス型二次元コードを読み取ることが出来ない。
【0124】
よって、読取可能なマトリクス型二次元コードのサイズは、結像レンズ10およびセンサ11において、限界解像性能の低い方により制限される。
【0125】
なお、限界解像性能とは、どの程度小さな像を解像することができるか、という性能の尺度を示す指標である。
【0126】
まずは、結像レンズ10の限界解像性能、および、センサ11の限界解像性能を算出し、これらを比較する。
【0127】
結像レンズ10の設計データの、「Green」の単色放射に対する、MTFおよび空間周波数特性より、解像可能なMTF閾値(MTF値の最小値)を2.0とすると、結像レンズ10の限界解像性能は、250lp/mmとなる(図16参照)。
【0128】
センサ11の限界解像性能を、センサ11の画素のピッチpから算出したナイキスト周波数とすると、センサ11のナイキスト周波数は、
1/(p×2)
である。
【0129】
ここで、センサ11は、G142(図14参照)のみを出力するため、各G142のピッチp´は、
p´=p×√2
である。
【0130】
以上より、センサ11のナイキスト周波数は、
1/(2×p×√2)
となる。本実施の形態の場合、センサ11の画素のピッチpは、1.75μmとなり、センサ11の限界解像性能は、202lp/mmとなる(図17参照)。
【0131】
以上より、結像レンズ10の限界解像性能は、250lp/mmであり、センサ11の限界解像性能は、202lp/mmである。よって、センサ11の解像性能から、撮像モジュール1の読取可能なコードのサイズは決定される。
【0132】
次に、読取可能な解像性能に相当する、被写体のサイズを算出する。
【0133】
結像レンズ10から物体(被写体)までの距離および画角から、解像可能な被写体のサイズを求め、解像可能な被写体のサイズと、センサ11の有効像円径と、から、結像レンズ10の倍率(被写体に対する結像レンズが結像する像の倍率)を求めることができる。具体的には、数式(2)および数式(3)から、結像レンズ10の倍率を求めることができる。
【0134】
【数2】

【0135】
但し、dは、結像レンズ10から物体(被写体)までの距離である。θは、半画角(画角/2)である。yは、上記距離dにおいて解像を実施する被写体のサイズである。y´は、有効像円径である。Mは、結像レンズ10の倍率である。
【0136】
また、結像レンズ10の倍率M、および、撮像モジュール1の限界解像性能から、読取可能なコードのサイズを求めることができる。具体的には、数式(4)〜数式(7)から、読取可能なコードのサイズを求めることができる。
【0137】
【数3】

【0138】
但し、xは、読取可能なマトリクス型二次元コードのサイズである。x´は、撮像モジュール1の限界解像性能である。
【0139】
よって、〔表5〕に示す、結像レンズ10から物体までの距離d、半画角θ、有効像円径y´、および、撮像モジュール1の限界解像性能x´を、数式(4)〜数式(7)に適宜代入し、計算することで、読取可能なマトリクス型二次元コードのサイズxを求めることができる。
【0140】
【表5】

【0141】
なお、本実施の形態において、撮像モジュール1の限界解像性能x´は、センサ11の限界解像性能である。
【0142】
以上の各数式(2)〜(7)より、読取可能なマトリクス型二次元コードのサイズxは、0.19mmである。従って、撮像モジュール1では、サイズ0.19mmの、マトリクス型二次元コードを読み取ることができる。
【0143】
なお、本実施の形態に係る、コード読取時の高解像化の方法を用いなければ、結像レンズ10の限界解像性能は約140lp/mmとなり、各数式(2)〜(7)より、読取可能なマトリクス型二次元コードのサイズxは、約0.28mmとなる(図19および〔表6参照〕)。
【0144】
【表6】

【0145】
また、撮像モジュール1は、結像レンズ10は、センサ11を保護するためのカバーガラスCGを介して、該センサ11に載せられているのが好ましい。
【0146】
上記の構成によれば、撮像モジュール1は、結像レンズ10を収容するための筐体(筐枠)を省略することが可能になるため、該筐体を省略することにより、小型化および低背化、さらには低コスト化が実現可能となる。
【0147】
図20に示す撮像モジュール60は、撮像モジュール1(図1参照)の具体的な構造の一例を示しており、第1レンズPL1、第2レンズPL2、第3レンズPL3、カバーガラスCG、筐枠61、および、センサ11を備えている。撮像モジュール60では、開口絞り12が、筐枠61と一体的に形成されている。具体的に、開口絞り12は、筐枠61における、第1レンズPL1上面(図2に示す、面S1に該当)を覆っている部分であって、該上面に形成された凸面を露出させるように覆っている部分に該当する。すなわち、撮像モジュール60は、結像レンズ10(図1および図2参照)と、筐枠61と、センサ11(図1参照)と、を備えた構成であると解釈することができる。
【0148】
筐枠61は、内部に結像レンズ10を収容する筐体であり、遮光性を有する部材により形成されている。
【0149】
固体撮像素子を用いてセンサ11を構成することにより、撮像モジュール60は、小型化および低背化が可能である。特に、情報携帯端末および携帯電話機をはじめとする携帯端末(図示しない)に搭載される撮像モジュール60においては、固体撮像素子を用いてセンサ11を構成することにより、高い解像力を有し、かつ、小型および低背である、撮像モジュールの実現が可能である。
【0150】
撮像モジュール60は、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有する撮像モジュール1である。このため、撮像モジュール60では、結像レンズ10とセンサ11との間の離間距離を調整するための図示しない調整機構、および、図示しない鏡筒を省略しても、解像力の維持に与える悪影響は小さい(図1および図2参照)。この調整機構および鏡筒を省略することにより、撮像モジュール60は、さらなる小型化および低背化、および低コスト化が実現可能となる。
【0151】
撮像モジュール60は、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有するから、レンズとセンサ間隔の調整機構を省いた簡易構造の撮像モジュールとして構成できる。
【0152】
図21に示す撮像モジュール70は、図20に示す撮像モジュール60に対して、筐枠61が省略されている。これにより、撮像モジュール70において、開口絞り12は、図2に示す結像レンズ10と同じ形態で設けられている。
【0153】
また、図21に示す撮像モジュール70は、図20に示す撮像モジュール60に対して、第3レンズPL3の下端の面(図2に示す、面S6に該当)の外周部分、いわゆる、第3レンズPL3のコバが、カバーガラスCGを介して、センサ11に載せられている。
【0154】
撮像モジュール70は、結像レンズ10(図1および図2参照)を収容するための筐体である、筐枠61を省略することが可能になり、筐枠61を省略することにより、さらなる小型化および低背化、さらには低コスト化が実現可能となる。
【0155】
撮像モジュール70では、図示しない調整機構および鏡筒を省略するという、撮像モジュール60の構造に基づいている。さらに、撮像モジュール70では、結像レンズ10において、第3レンズPL3の下端の面S6とカバーガラスCGとの離間距離が非常に小さい。このことから、撮像モジュール70では、小さなレンズ偏肉比において、第3レンズPL3に、カバーガラスCGへの設置部分を作りこみ、筐枠61不要の簡易構造の撮像モジュール70を実現している。
【0156】
その他、撮像モジュール70は、撮像モジュール60と同じである。
【0157】
一般的な撮像モジュールの製造方法の概要を、図22(a)〜(d)を参照して説明する。
【0158】
第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3は、主に熱可塑性樹脂231を用いた射出成形により作製される。熱可塑性樹脂231を用いた射出成形では、加熱により軟化した熱可塑性樹脂231を、所定の射出圧(およそ、10〜3000kgf/c)を加えながら金型232に押込んで、熱可塑性樹脂231を金型232に充填して成形を行う(図22(a)参照)。
【0159】
成形後、熱可塑性樹脂231を金型232から取り出し、1枚のレンズ毎に切断する(図22(b)参照)。ここでは、便宜上、金型232から取り出された熱可塑性樹脂231を、第1レンズPL1毎に切断する例を示しているが、第2レンズPL2毎または第3レンズPL3毎に切断する場合についても、図22(a)および(b)に示すのと同様である。
【0160】
第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3を、レンズバレル(筐枠)233に嵌め込んで(または、圧入して)組み立てる(図22(c)参照)。
【0161】
図22(c)に示す、撮像モジュールの中間生成物を、鏡筒234に嵌め込んで組み立てる。さらにその後、第3レンズPL3の面S6(図2参照)側の端部に、センサ235(センサ11に対応)を搭載する。こうして、撮像モジュールは完成する(図22(d)参照)。
【0162】
射出成形レンズである、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3に用いられる、熱可塑性樹脂231の加重たわみ温度は、摂氏130度程度である。このため、熱可塑性樹脂231は、表面実装で主に適用される技術であるリフローを実施するときの熱履歴(最大温度が摂氏260度程度)に対する耐性が不十分であるため、リフロー時に発生する熱に耐えることができない。
【0163】
よって、図22(d)に示す撮像モジュールにおける基板への実装時には、センサ235部分のみをリフローにより先に実装する。その後、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3部分を樹脂で接着する方法、または、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3の搭載部分を局所的に加熱するという実装方法が採用されている。
【0164】
続いては、本発明に係る撮像モジュール250の製造方法を、図23(a)〜(e)を参照して説明する。
【0165】
近年では、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3の各々の材料として、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を用いた、いわゆる耐熱カメラモジュールの開発が進められている。ここで説明する撮像モジュール250は、撮像モジュール1(図1参照)を、この耐熱カメラモジュールの形態で製造したものであり、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3の全ての材料として、熱可塑性樹脂231(図22(a)参照)のかわりに、熱硬化性樹脂(熱硬化性の樹脂)241を用いている。
【0166】
第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3の各々の材料として、熱硬化性樹脂241を用いる理由は、多数の撮像モジュール250を一括して製造することにより、撮像モジュール250の製造コストの低減を図るためである。また、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3の全ての材料として、熱硬化性樹脂241を用いる理由は、撮像モジュール250に対して、リフローの実施を可能とするためである。
【0167】
撮像モジュール250を製造する技術は、多々提案されている。中でも代表的な技術は、上述した射出成形、および、後述するウエハレベルレンズのプロセスである。特に、最近では、撮像モジュールの製造時間およびその他の総合的知見において、より有利とされている、ウエハレベルレンズ(リフローアブルレンズ)のプロセスが注目されている。
【0168】
ウエハレベルレンズのプロセスを実施するにあたっては、熱に起因して、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3に塑性変形が発生してしまうことを抑制する必要がある。この必要性から、第1レンズPL1、第2レンズPL2、および第3レンズPL3としては、熱が加えられても変形しにくい、耐熱性に非常に優れた熱硬化性樹脂材料または紫外線硬化性樹脂材料を用いたウエハレベルレンズが注目されている。具体的には、摂氏260〜280度の熱が10秒以上与えられても、塑性変形しない程度の耐熱性を有している、熱硬化性樹脂材料または紫外線硬化性樹脂材料を用いたウエハレベルレンズが注目されている。ウエハレベルレンズでは、アレイ状の金型242および243により、アレイ状のレンズ244〜246をそれぞれ一括成型した後、これらを貼り合わせ、さらに、アレイ状の開口絞り247およびアレイ状のセンサ249を搭載した後、個別に切断して撮像モジュール250を製造する。
【0169】
ここからは、ウエハレベルレンズのプロセスの詳細について説明する。
【0170】
ウエハレベルレンズのプロセスでは、まず、多数の凹部が形成されたアレイ状の金型242と、該凹部の各々に対応する多数の凸部が形成されたアレイ状の金型243と、により、熱硬化性樹脂241を挟み込み、熱硬化性樹脂241を硬化させ、互いに対応する凹部および凸部の組み合わせ毎にレンズが成形された、アレイ状のレンズを作製する(図23(a)参照)。
【0171】
図23(a)に示す工程で作製するアレイ状のレンズは、多数の第1レンズPL1が成形されたアレイ状のレンズ244、多数の第2レンズPL2が成形されたアレイ状のレンズ245、および、多数の第3レンズPL3が成形されたアレイ状のレンズ246である。
【0172】
なお、アレイ状のレンズ244を、アレイ状の金型242および243により作製するためには、第1レンズPL1の形状と反対の形状である凹部が多数形成されたアレイ状の金型242と、該凹部の各々に対応する多数の凸部が形成されたアレイ状の金型243と、を用いて、図23(a)に示す要領で作製を行えばよい。アレイ状のレンズ245を、アレイ状の金型242および243により作製するためには、第2レンズPL2の形状と反対の形状である凹部が多数形成されたアレイ状の金型242と、該凹部の各々に対応する多数の凸部が形成されたアレイ状の金型243と、を用いて、図23(a)に示す要領で作製を行えばよい。アレイ状のレンズ246を、アレイ状の金型242および243により作製するためには、第3レンズPL3の形状と反対の形状である凹部が多数形成されたアレイ状の金型242と、該凹部の各々に対応する多数の凸部が形成されたアレイ状の金型243と、を用いて、図23(a)に示す要領で作製を行えばよい。
【0173】
アレイ状のレンズ244〜246を互いに、各第1レンズPL1〜第3レンズPL3に関して、第1レンズPL1を通過する光軸La(第1レンズの光軸)と、これに対応する第2レンズPL2を通過する光軸La(第2レンズの光軸)と、これらに対応する第3レンズPL3を通過する光軸La(第3レンズの光軸)と、が、同一直線上に位置するように、貼り合わせる(図23(b)参照)。具体的に、アレイ状のレンズ244〜246の位置合わせを行う調芯方法としては、光軸La同士を揃える以外にも、撮像しながら調整を行う等、色々な手法が挙げられ、また、位置合わせは、ウエハのピッチ仕上がり精度にも影響される。また、このとき、アレイ状のレンズ244における、各第1レンズPL1の面S1(図2参照)に対応する部分を露出させるように、アレイ状の開口絞り248を取り付ける。
【0174】
アレイ状のレンズ246における第3レンズPL3の面S6(図2参照)側の端部に、各光軸Laと、対応する各センサ248の中心248cとが、同一直線上に位置するように、多数のセンサ248が搭載されたアレイ状のセンサ249を搭載する(図23(c)参照)。
【0175】
図23(c)に示す工程により、アレイ状となっている多数の撮像モジュール250を、1つの撮像モジュール250毎に切断して(図23(d)参照)、撮像モジュール250は完成する(図23(e)参照)。
【0176】
以上、図23(a)〜(e)に示す、ウエハレベルレンズのプロセスにより、多数の撮像モジュール250を一括して製造することで、撮像モジュール250の製造コストは、低減することができる。さらに、完成した撮像モジュール250を、図示しない基板に実装するときにおいて、リフローにより発生する熱(最大温度が摂氏260度程度)に起因して塑性変形してしまうことを避けるため、第1レンズPL1〜第3レンズPL3は、摂氏260〜280度の熱に対して10秒以上の耐性を有している、熱硬化性樹脂または紫外線硬化性樹脂を用いるのが、より好ましい。第1レンズPL1〜第3レンズPL3の全てに、耐熱性を有している、熱硬化性の樹脂または紫外線硬化性の樹脂を用いることで、撮像モジュール250に対しては、リフローを施すことが可能となる。ウエハレベルでの製造工程に、さらに、耐熱性を有している樹脂材料を適用することで、リフローに対応可能な撮像モジュールを安価に製造することが可能である。
【0177】
ここからは、撮像モジュール250を製造する場合に好適な、第1レンズPL1〜第3レンズPL3の材料について考察する。
【0178】
プラスチックレンズ材料は、従来、熱可塑性樹脂が主に用いられてきたので、材料の幅広い品揃えがある。
【0179】
一方、熱硬化性樹脂材料、さらに紫外線硬化性樹脂材料は、第1レンズPL1〜第3レンズPL3の用途として開発途上にあることから、現状、材料の品揃えおよび光学定数に関して熱可塑性材料に劣り、また、高価である。一般的に、光学定数は、低屈折率かつ低分散材料であるのが好ましい。また、光学設計においては、幅広い光学定数の選択肢があることが好ましい。
【0180】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0181】
本発明は、近い被写体の撮影と、遠い被写体の撮影と、の両方において、要求された仕様を満足する程度に良好な解像力を有するように構成された撮像モジュール、および、該撮像モジュールを実現するのに好適な結像レンズに好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0182】
1 撮像モジュール
2 センサ位置(撮像素子が設けられた位置)
3 ひまわりからの白色光に対する結像レンズの最良像面の位置
4 木からの白色光に対する結像レンズの最良像面の位置
5 ひまわり(撮像モジュールに近い被写体)
6 木(撮像モジュールから遠い被写体)
10 結像レンズ
11 センサ(撮像素子)
142 G(緑の単色放射から得られた画素)
p センサの画素のピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写界深度が拡げられたと共に、像面湾曲が小さくされた結像レンズと、
所定位置よりも近い被写体からの白色光に対する、上記結像レンズの最良像面の位置から、該所定位置よりも遠い被写体からの白色光に対する、上記結像レンズの最良像面の位置まで、の間に設けられた撮像素子と、を備えることを特徴とする撮像モジュール。
【請求項2】
上記撮像素子は、緑の単色放射から得られた画素に関する情報のみを出力することが可能なものであることを特徴とする請求項1に記載の撮像モジュール。
【請求項3】
上記撮像素子は、上記所定位置よりも近い被写体からの上記緑の単色放射に対する、上記結像レンズの最良像面の位置に設けられたことを特徴とする請求項2に記載の撮像モジュール。
【請求項4】
上記撮像素子は、画素のピッチが2.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
【請求項5】
上記結像レンズは、上記撮像素子を保護するための保護部材を介して、該撮像素子に載せられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
【請求項6】
上記結像レンズのFナンバーは、3以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の撮像モジュール。
【請求項7】
被写界深度が拡げられていると共に、像面湾曲が小さくされており、
所定位置よりも近い物体からの白色光に対する最良像面の位置から、該所定位置よりも遠い物体からの白色光に対する最良像面の位置まで、の間において、物体の結像を行うものであることを特徴とする結像レンズ。
【請求項8】
請求項2または3に記載の撮像モジュールを使用して、緑の単色放射から得られた画素に基づいて、マトリクス型二次元コードを読み取るためのコード読取方法であって、
上記緑の単色放射から得られた画素のピッチを用いて、上記結像レンズおよび上記撮像素子の各限界解像性能の値を求め、値の低いほうを上記撮像モジュールの限界解像性能とする工程と、
上記結像レンズから上記所定位置よりも近い被写体までの距離と、上記撮像モジュールの画角と、上記撮像素子の有効像円径と、から、該被写体に対する上記結像レンズが結像する像の倍率を算出する工程と、
上記撮像モジュールの限界解像性能と、上記倍率と、から、上記撮像モジュールが読取可能な、上記マトリクス型二次元コードのサイズを算出する工程と、を含むことを特徴とするコード読取方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図4】
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【図11】
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【図15】
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【図16】
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【図19】
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【公開番号】特開2011−40906(P2011−40906A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−185037(P2009−185037)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】