説明

撮像装置、その制御方法及びプログラム

【課題】顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカスの時間を短縮させる。
【解決手段】カメラのレリーズスイッチの半押し状態になると、AEセンサでは測光演算を行い、AFセンサではAF自動選択のアルゴリズムに基づいて位相差検出方式による測距演算を行って、レンズ駆動する。そして、あと一回のレンズ駆動で合焦に至る状態である見切り合焦となったときに、AEセンサでは顔検出用の蓄積Afaceを開始し、その読み出しを終えると、顔検出を行う。また、AFセンサでは、合焦前最後の蓄積Bn+1の読み出しを終えると、AF自動選択のアルゴリズムに基づいて位相差検出方式による測距演算を開始する。続いて、AFセンサでは、AEセンサからの顔検出情報に基づいて位相差検出方式による測距点の再選択演算を行い、その演算結果に基づいて、顔に合焦するようにレンズ駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカスが可能な撮像装置、その制御方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、一眼レフカメラでは、撮影の前にペンタ部の測光センサで画像信号を取得し、その画像信号を処理することにより測光や顔検出を行うシステムが見受けられるようになってきた。このシステムでは、本撮影の前にペンタ部の測光センサで顔検出を行い、その情報から顔検出した位置に測距点を合わせ、AF(オートフォーカス)を行い、顔にピントが合った状態で本撮影ができる。例えば特許文献1には、顔検出モードにおいて、レリーズボタンが半押しされたら顔検出処理を開始し、顔が検出されたら、顔エリアのサイズを算出した結果に基づいて、人物の顔までの概略距離を算出して、レンズ移動距離を決定する撮像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−262001号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ペンタ部の測光センサで画像信号を取得し、顔検出を行い、顔検出した位置でAFを行う顔検出自動選択ワンショットAFでは、通常の自動選択ワンショットAFに比べて、顔検出を行う期間分、時間が長くかかってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は上記のような点に鑑みてなされたものであり、顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカスの時間を短縮させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の撮像装置は、顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカスが可能な撮像装置であって、電荷を蓄積して測光演算する測光手段と、電荷を蓄積して焦点検出を行うオートフォーカス手段とを備え、前記測光手段による測光及び前記オートフォーカス手段による焦点検出により、あと一回のレンズ駆動で合焦に至る状態である見切り合焦となったときに、前記測光手段による顔検出用の電荷の蓄積を開始し、その蓄積が終了したら顔検出を行い、顔検出した位置で再度、前記オートフォーカス手段による焦点検出を行って顔に合焦させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカス時に、あと一回のレンズ駆動で合焦に至る状態である見切り合焦となったときに、顔検出用の電荷の蓄積を開始するようにしたので、顔検出オートフォーカスの時間を短縮させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施形態に係るカメラシステムの構成を示す図である。
【図2】実施形態に係るカメラシステムによる顔検出自動選択ワンショットAFのシーケンス図である。
【図3】最終合焦後の測光演算の方法を説明するための図である。
【図4】顔の合焦位置からのピントずれと顔検出率の関係とを示す特性図である。
【図5】通常の自動選択ワンショットAFと、顔検出自動選択ワンショットAFとでの合焦幅と見切り合焦幅の例を示す図である。
【図6】顔検出自動選択ワンショットAFにおいて顔に合焦させるまでの状態を説明するための図である。
【図7】通常の自動選択ワンショットAFのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。
図1は本発明の実施形態に係る撮像装置であるカメラシステムの構成を示す図である。100はカメラ本体、200はレンズユニットである。本実施形態に係るカメラシステムでは、顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出自動選択ワンショットAF(オートフォーカス)が可能となっている。
【0010】
カメラ本体100において、101はマイクロコンピュータCPU(以下、カメラマイコンと称する)であり、カメラシステムの各部を制御する。102はカメラマイコン101に接続されているRAMやROM等のメモリである。103はCCD、CMOS等の撮像素子を具備する撮像部であり、赤外カットフィルタやローパスフィルタ等を含み、レンズユニット200によって撮影時に被写体の像が結像される。104はシャッターであり、非撮影時には撮像部103の撮像素子を遮光し、撮影時には開いて撮像素子へ光線を導く。
【0011】
105はハーフミラー、106はピント板である。ハーフミラー105は非撮影時にレンズユニット200より入射する光の一部を反射し、ピント板106に結像させる。
【0012】
107はPN液晶等のAF測距枠を表示するための表示素子であり、光学ファインダを覗いたときに、どの位置でAFしているかをユーザに示す。図6にAF測距枠を表示する表示素子の配置の一例を示す。AF測距枠の位置が点線で示されている。PN液晶では、カメラマイコン101からの指示で選択されたAF測距枠の液晶が拡散し、AF測距枠が表示される。
【0013】
108はリニア出力型の測光センサであり、CCD、COMS等の撮像素子を使用することにより測光だけでなく顔検出や追尾を行う。109はペンタプリズムであり、ピント板106の被写体像を測光センサ108及び光学ファインダに導く。測光センサ108は、ペンタプリズム109を介してピント板106に結像された被写体像を斜めの位置から見込んでいる。
【0014】
110は位相差検出方式により焦点検出を行う焦点検出回路、111はAFミラーであり、レンズユニット200より入射し、ハーフミラー105を通過した光線の一部をAFミラー111により焦点検出回路110内のセンサに導き、位相差検出方式による測距を行う。
【0015】
112は測光センサ108の画像処理・演算用のCPU(以下、AECPUと称する)であり、ここで顔検出の演算や追尾の演算、測光演算等を行う。113はAECPU112に接続されているRAMやROM等のメモリである。本実施形態では、測光センサ108専用のCPU112を用意したが、カメラマイコン101等で処理を行っても良い。
【0016】
レンズユニット200において、201はCPU(レンズ制御用マイクロコンピュータ(LPU)と称される)であり、被写体との距離情報等をカメラマイコン101に送る。202はフォーカスレンズを含むレンズ群である。
【0017】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るカメラシステムによる顔検出自動選択ワンショットAFのシーケンスについて説明する。以下の説明におけるAEセンサ、AFセンサとは、センサそのものだけでなく、それぞれ処理系のCPU等も含めた測光手段、オートフォーカス手段である意味とする。
【0018】
まず、カメラのレリーズスイッチの半押し状態になると(図2のSW1 ON)、ステップS1−1に示すように、AEセンサ、AFセンサがそれぞれ電荷の蓄積を開始する。電荷の蓄積後、AEセンサ、AFセンサでそれぞれ蓄積した電荷の読み出しを終えると、AEセンサでは測光演算を開始し、AFセンサではAF自動選択のアルゴリズムに基づいて位相差検出方式による測距演算を開始する。AFセンサで測距演算を終了すると、その演算結果に基づいてレンズユニット200のレンズが駆動される。
【0019】
ステップS1−2〜S1−nに示すように、AEセンサ及びAFセンサは、あと一回のレンズ駆動で合焦に至る状態(見切り合焦と呼ぶ)まで上記の処理を繰り返す。顔検出自動選択ワンショットAFのときには、見切り合焦に至ったと判定するための見切り合焦幅が、顔検出を行わない通常の自動選択ワンショットAFにおける見切り合焦幅よりも広く設定されている。
【0020】
見切り合焦に至ると、ステップS2に示すように、AEセンサでは顔検出用の蓄積Afaceを開始し、AFセンサでは合焦前最後の蓄積Bn+1を開始する。電荷の蓄積後、AEセンサでは、顔検出用の蓄積Afaceの読み出しを終えると、顔検出演算を開始し、顔検出演算を終えると、顔検出情報をAFセンサに通信する。このときの顔検出用の蓄積Afaceの読み出しは、顔検出を行うために全画素読みを行うのが良い。また、AFセンサでは、合焦前最後の蓄積Bn+1の読み出しを終えると、AF自動選択のアルゴリズムに基づいて位相差検出方式による測距演算を開始する。続いて、AFセンサでは、AEセンサからの顔検出情報に基づいて再度位相差検出方式による測距演算(測距点の再選択演算)を行い、その演算結果に基づいて、顔に合焦するようにレンズユニット200のレンズが駆動される。
【0021】
合焦後、ステップS3に示すように、AEセンサではレリーズ許可前、最後の蓄積Alast1を開始し、読み出しを終えると、測光演算を行って最終測光値を求める。以上の処理を終えたら、本撮影が許可される(図2のレリーズ許可)。
【0022】
ここで、ステップS3におけるレリーズ許可前、最後の蓄積Alast1の読み出しは、時間短縮等の観点から画素加算読み出しを行うのが良い。画素加算読み出しを行うことにより、読み出しの時間が減り、レリーズ許可までの時間を短縮することができる。
【0023】
また、ステップS3における最終合焦後の測光演算は、見切り合焦時の蓄積、すなわち顔検出用の蓄積Afaceと、最終合焦時の蓄積Alast1との両方の結果を用いて行うと良い。その測光演算の一例を以下説明する。測光センサ108は、被写界を斜めの位置から見込んでいるために、撮像素子で得られる画像と比べて、図3に示すように、レンズの周辺光量落ちの影響が大きい。そのため、この周辺光量落ちの大きい領域では、正しい測光値が得られない可能性がある。そこで、顔検出用の蓄積Afaceで取得した画像に加えて、最終合焦時の蓄積で取得した画像Alast1(画素加算読み出しをした画像)で周辺光量落ちした部分を補うと良い。例えば、最終合焦時の蓄積Alast1を4画素加算で読み出すと、蓄積時間が同じならば2段明るい画像が、8画素加算ならば3段明るい画像が取得できる。このように、顔検出用の画像と、この最終合焦で得られた画像を利用することで、低輝度側のダイナミックレンジを広げて測光演算を行うことができる。
【0024】
顔検出自動選択ワンショットAFのシーケンス比較のために、図7に通常の自動選択ワンショットAFのシーケンスを示す。通常の自動選択ワンショットAFでは、見切り合焦に至ると、AEセンサではレリーズ許可前、最後の蓄積Alast1を開始し、読み出しを終えると、測光演算を行う。また、AFセンサでの測距演算の演算結果に基づいてレンズユニット200のレンズが駆動される。
【0025】
次に、顔検出自動選択ワンショットAF時の見切り合焦幅の設定方法について説明する。図4に、顔の大きさがピント板上で3mmのときの顔の合焦位置からのピントずれと顔検出率との関係を表したグラフを示す。このグラフから、顔の合焦位置から±60μm程度ずれていても略100%で顔検出が可能であるが、±65μm以上ずれると顔検出率が悪くなることがわかる。したがって、顔検出自動選択ワンショットAF時の見切り合焦幅は、図2のシーケンスの見切り合焦後のレンズ駆動で±60μmとなるような幅に設定するのが良い。なお、この見切り合焦幅はレンズのFNoによっても変わるので、レンズに合せて設定すれば良い。また、図4のグラフは検出する顔の大きさによって変わるので、より小さい顔で略100%の検出率を実現したい場合には、そのときのデータを取り、見切り合焦幅を狭める必要がある。
【0026】
ここで、図5に通常の自動選択ワンショットAFと、顔検出自動選択ワンショットAFとでの合焦幅と見切り合焦幅の例を示す。顔検出自動選択ワンショットAFにおける見切り合焦幅が、通常の自動選択ワンショットAFにおける見切り合焦幅よりも広く設定されている。顔検出自動選択ワンショットAFでの合焦幅とは、見切り合焦直後1回目のレンズ駆動による被写体との合焦幅を表すものである。
【0027】
次に、図6を参照して、実際にどのように被写体の顔にピントが合うかを説明する。(a)のSW1 ON直後では、まだ、被写体に全くピントが合っていないぼけた画像となっていることが想定される。この状態では、顔検出が難しい。
【0028】
次に、通常のAF自動選択のアルゴリズムに従い、レンズを駆動していき、徐々に被写体にピントを合わせていく(図2のステップS1−1〜S1−n)。そして、(b)のように見切り合焦に至ると、被写体にある程度ピントが合っているので顔検出を行うことが可能となる。したがって、(c)のように見切り合焦に至ると顔検出演算を行い、顔検出を行う(図2のステップS2)。そして、(d)のように顔に合焦するようにレンズ駆動を微調整し、顔にピントを合わせる(図2のステップS2、S3)。
【0029】
以上のように、顔検出自動選択ワンショットAFの場合、見切り合焦幅を広げ、見切り合焦位置に入った直後にAEセンサで顔検出用の蓄積を行うことで、顔検出自動選択ワンショットAFの時間を短縮することができる。
【0030】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。
【0031】
(その他の実施形態)
また、本発明は、以下の処理を実行することによっても実現される。すなわち、上述した実施形態の機能を実現するソフトウェア(プログラム)を、ネットワーク又は各種記憶媒体を介してシステム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)がプログラムを読み出して実行する処理である。
【符号の説明】
【0032】
100:カメラ本体、101:カメラマイコン、103:撮像部、105:ハーフミラー、107:表示素子、108:測光センサ、110:焦点検出回路、112:CPU、200:レンズユニット、201:CPU、202:レンズ群

【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカスが可能な撮像装置であって、
電荷を蓄積して測光演算する測光手段と、
電荷を蓄積して焦点検出を行うオートフォーカス手段とを備え、
前記測光手段による測光及び前記オートフォーカス手段による焦点検出により、あと一回のレンズ駆動で合焦に至る状態である見切り合焦となったときに、前記測光手段による顔検出用の電荷の蓄積を開始し、その蓄積が終了したら顔検出を行い、顔検出した位置で再度、前記オートフォーカス手段による焦点検出を行って顔に合焦させることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
顔検出オートフォーカスのときには、見切り合焦に至ったと判定するための見切り合焦幅が、顔検出を行わない通常のオートフォーカスにおける見切り合焦幅よりも広く設定されていることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
顔に合焦後、再度、前記測光手段による電荷の蓄積を行い、前記測光手段による前記顔検出用の電荷の蓄積の結果と合わせて最終測光値を求めることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
顔に合焦後の前記測光手段による電荷の蓄積後、画素加算読み出しすることを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記測光手段による前記顔検出用の電荷の蓄積後、全画素読み出しすることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカスが可能な撮像装置の制御方法であって、
電荷を蓄積して測光演算する測光手段による測光、及び、電荷を蓄積して焦点検出を行うオートフォーカス手段による焦点検出により、あと一回のレンズ駆動で合焦に至る状態である見切り合焦となったときに、前記測光手段による顔検出用の電荷の蓄積を開始し、その蓄積が終了したら顔検出を行い、顔検出した位置で再度、前記オートフォーカス手段による焦点検出を行って顔に合焦させることを特徴とする撮像装置の制御方法。
【請求項7】
顔検出を行い、顔に合焦させる顔検出オートフォーカスが可能な撮像装置を制御するためのプログラムであって、
電荷を蓄積して測光演算する測光手段による測光、及び、電荷を蓄積して焦点検出を行うオートフォーカス手段による焦点検出により、あと一回のレンズ駆動で合焦に至る状態である見切り合焦となったときに、前記測光手段による顔検出用の電荷の蓄積を開始し、その蓄積が終了したら顔検出を行い、顔検出した位置で再度、前記オートフォーカス手段による焦点検出を行って顔に合焦させる処理をコンピュータに実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−3298(P2013−3298A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133101(P2011−133101)
【出願日】平成23年6月15日(2011.6.15)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】