説明

撮像装置、撮像方法および撮像プログラム

【課題】画像のプレビュー性を低下させること無く、ピントを視覚的に容易に把握できるようにする。
【解決手段】撮像素子12の受光した光に基づいて生成した表示用画像データD2に基づいた画像を表示部19に表示するDSC100であって、ピントズレを検出するピント部M3と、ピントズレに応じてピント領域Aからずれた位置のズレ画像SIを表示用画像のピント領域Aに対して相加平均もしくは加重平均した合成画像を表示部19に表示させる表示制御部M2と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置、撮像方法および撮像プログラムに関し、特に、撮像素子の受光した光に基づいて生成した画像を表示部に表示する撮像装置、撮像方法および撮像プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
フィルム式カメラのユーザーには、マニュアルで所望の焦点にピントを合致させた画像を撮影したいというユーザーが存在する。このようなユーザーは、デジタルスチルカメラ(以下、DSCと略す)のユーザーにも存在し、DSCでマニュアルでピントを調節したいという要望が存在する。しかしながら、ピントの合致度合は確認が難しく、DSCが撮像した画像に基づいて液晶ディスプレイ等の表示部に表示したプレビュー画像に基づいてピントの合致状況を把握するのは困難である。このような困難性に対処するために、ピントのズレ量を検出し、このズレ量に基づいたスプリットイメージを撮像された画像とともに表示する技術が開示されている(特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−309210号公報
【特許文献2】特開平9−214813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述の特許文献1,2の技術は、撮像された画像をスプリットイメージと置き換えて表示部に表示しているため、分割された部位において画像が見づらくなっていた。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、画像のプレビュー性の低下を抑制し、ピントを視覚的に容易に把握することが可能な撮像装置、撮像方法および撮像プログラムの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明にかかる撮像装置は、撮像素子の受光した光に基づいて生成した画像データに基づいて表示部に画像を表示する撮像装置であって、ピントズレを検出するピント部と、上記画像データの画像の少なくとも一部の領域の画像と上記ピントズレに応じて該領域からずれた位置の画像とを重畳合成した合成画像を上記表示部に表示させる表示制御部と、を具備する構成としてある。
【0006】
上記撮像素子は、受光面で受光した光の強弱に応じた電気信号を生成可能なデバイスであればいかなるものであってもよく、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサーが例示される。上記表示部は、画像データに基づいて画像を表示することができればよく、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ、プラズマディスプレイ、ブラウン管ディスプレイ等が例示される。上記少なくとも一部の領域は、上記画像の全部であってもよいし、上記画像の一部であってもよいし、上記領域が複数であってもよい。領域が複数の場合は、領域ごとに検出されたピントズレに応じてそれぞれに合成画像を生成して表示してもよいし、複数の領域の全てにおける総合的なピントズレに応じて合成画像を生成して表示してもよいし、複数の領域の中の一部の領域における総合的なピントズレに応じて合成画像を生成して表示してもよい。
【0007】
上記合成画像の上記領域には、上記画像データに基づいてほんらい上記領域に表示されるべき画像と上記ピントズレに応じて該領域からずれた位置の画像とがともに表示されており、これら画像は上記ピントズレに応じたズレ量で互いにずれている。従って、上記ピントズレが0で有る場合を除いて、上記領域の画像は2重になっている。撮像装置のユーザーは、上記合成画像の上記領域における画像のズレ量を視認して、ピントズレを直感的に把握することができる。また、本来上記領域に表示されるべき画像は、上記ピントズレに応じて該領域からずれた位置の画像が重複されているものの表示されているため、上記領域における画像を含めた全体の構成の把握を妨げることがない。
【0008】
本発明の選択的な一側面として、上記表示制御部は、上記画像データの画像と上記ずれた位置の画像との少なくとも一方の色を変更した上記合成画像を上記表示部に表示させる構成としてもよい。各画像で色を異ならせることにより、オリジナルの画像と重畳された画像とを区別しやすくなるため、画像が2重表示された部位の視認性が向上する。
【0009】
本発明の選択的な一側面として、上記表示制御部は、上記合成画像とともに上記領域を囲ようにピントが合っているときとずれているときとで異なる枠を上記表示部に表示させる構成としてもよい。該構成によれば、ピントの合焦/非合焦が明確になり、ユーザーがピントをあわせたりずらしたりする際の明確かつ直感的な指標を提供できる。
【0010】
本発明の選択的な一側面として上記表示制御部は、ピントが合っているときは上記合成画像とともに上記領域を囲む枠を上記表示部に表示させ、ピントがずれているときは上記領域を囲む枠を上記表示部に表示させない構成としてもよい。該構成によれば、ピントの合焦/非合焦が明確になり、ユーザーがピントをあわせたりずらしたりする際の明確かつ直感的な指標を提供できるとともに、ピントが合っている状態で画像観察の障害になる可能性のある枠を消去することにより、ユーザービリティを向上できる。
【0011】
本発明の選択的な一側面として、上記ピント部は、予め設定されたピント領域におけるピントズレを検出し、上記表示制御部は、上記ピント領域の画像と上記ピントズレに応じて上記ピント領域からずれた位置の画像とを上記ピント領域に重複表示した合成画像を上記表示部に表示させる構成としてもよい。2重表示の行われる上記領域をピント領域とすることにより、ピントズレと2重表示との対応関係が明確になり、操作性が向上する。
【0012】
本発明の選択的な一側面として、ユーザーの操作を受付ける操作部を更に備え、上記表示制御部は、上記操作部にて行われる所定の操作に応じて上記領域を上記画像の領域内に複数設定する構成としてもよい。画像に複数の被写体が含まれる場合に、被写体ごとのピント確認を、撮像装置を移動させること無く行うことができる。
【0013】
上述した撮像装置は、他の機器に組み込まれた状態で実施されたり他の方法とともに実施されたりする等の各種の態様を含む。また、本発明は上記撮像装置を備える撮像システム、上述した装置の構成に対応した工程を有する撮像方法、上述した装置の構成に対応した機能をコンピューターに実現させる撮像プログラム、該撮像プログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体、等としても実現可能である。これら撮像システム、撮像システム、撮像方法、撮像プログラム、該プログラムを記録した媒体、の発明も、上述した作用、効果を奏する。むろん、請求項2〜6に記載した構成も、前記システムや前記方法や前記プログラムや前記記録媒体に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】DSCの構成を示すブロック図である。
【図2】DSCの外観の一例を示す外観図である。
【図3】撮像処理の流れを示すフローチャートである。
【図4】2重画像の合成についての説明図である。
【図5】ピントとピントズレの対応関係を示す説明図である。
【図6】ピントズレとズレ量との対応関係を示す説明図である。
【図7】表示用画像の全体をピントズレに応じて2重画像にする場合の説明図である。
【図8】ピント領域が複数設定された場合の2重画像の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、下記の順序に従って本発明の実施形態を説明する。
(1)撮像装置の構成:
(2)撮像処理:
(3)各種変形例:
(4)まとめ:
【0016】
(1)撮像装置の構成:
図1は、本発明の一実施形態にかかる撮像装置の構成を示すブロック図である。本実施形態にかかる撮像装置は、デジタルスチルカメラ100(以下、DSC100と略す)であり、被写体を撮像して生成した画像データに基づいて表示部に画像を表示したり、被写体を撮像して生成した画像データを記憶媒体に保存したりする。同図において、DSC100は、制御部20および、この制御部20によって制御される光学系11と撮像素子12とアナログフロントエンド13(AFE13)と画像処理部14と圧縮部15とデータ記憶部16と操作部18と表示部19とVRAM21とを備えている。
【0017】
図1に示す制御部20は、通信バスで互いに接続されたCPU20a(演算処理部)とRAM20b(揮発性の半導体メモリー)とフラッシュメモリー20c(不揮発性の半導体メモリー)とを備えている。CPU20aは、RAM20bをワークエリアとして利用しつつフラッシュメモリー20cに記憶されている撮像プログラムを実行することにより、DSC100の全体の動作を制御する。制御部20で撮像プログラムが実行されることにより撮像処理が行われて、不図示の撮像部M1や表示制御部M2やピント部M3等に対応した機能をDSC100が実現することになる。
【0018】
光学系11は、不図示のレンズ群や絞り等によって構成されており、被写体の光学像を撮像素子12の受光面に投射する。レンズ群や絞りは不図示の駆動機構によってレンズ位置や絞り量を調整される。制御部20は、駆動機構を制御することによってDSC100によって撮像される光学像において所望の被写体にピントを合致もしくはピントをずらしたり、撮像される光学像の明るさを調整したりすることができる。
【0019】
撮像素子12は、2次元空間に離散的に配置された複数の光電変換素子を備えており、各光電変換素子が光学系11から投射された光の受光量に応じて光電変換した電荷を電気信号として出力する。撮像素子12は、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサーで構成されており、これらの撮像素子を構成する光電変換素子は格子状やハニカム状の配置になっている。また、撮像素子12は、光電変換素子の受光面にそれぞれC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)、G(グリーン)の補色フィルタやR(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)の原色フィルタを市松模様配列等で設けることによりカラー画像情報を取り込むことが出来る。むろん、これらのフィルタを用いずに白黒画像情報を取り込んでもよい。
【0020】
AFE13はA/D変換器を備えており、撮像素子12から出力される電気信号を量子化してデジタル画像信号に変換する。
画像処理部14は、AFE13から入力されたデジタル画像信号に対し、1つの画素に対して複数色の情報を持たせるいわゆるデモザイク処理としての画素補間処理、ホワイトバランス補正処理、RGBからRGBへの3x3の行列演算処理による色再現処理やノイズ除去処理、シャープネス処理、ガンマ補正処理、RGB画像データ形成処理等の各種画像処理を行い、各画素がR,G,Bの階調値で表現された画像データD1を作成する。むろん、画像データD1はR,G,B以外の表色系(例えば、Y,Cb,Crなど)の階調値で表現されていてもよい。
【0021】
また、画像処理部14は表示部19に表示するための表示用画像データD2を作成する。表示用画像データD2は、画像データD1についてアスペクト変換や拡大・縮小を行って作成される。なお、後述するように、本実施形態の表示部19にはLCD19aとEVF19bの2種類がある。そのため、画像処理部14は、撮影時のプレビュー画面としてユーザーに選択された方の画面サイズや画素数に合わせてアスペクト変換や拡大・縮小を行い、表示用画像データD2を作成する。むろん、双方でプレビュー表示するために、LCD19aに適合する表示用画像データとEVF19bに適合する表示用画像データの双方を作成してもよい。画像処理部14は、作成した表示用画像データD2をVRAM21(グラフィックメモリー)に記憶する。
【0022】
なお、本実施形態のDSC100では、制御部20の制御により所定時間おきにVRAM21の表示用画像データD2を更新している。すなわち、撮像素子12が所定時間おきにカラー画像情報を取得してAEF13に出力し、AEF13は入力されたカラー画像情報に基づいて、順次、デジタル画像信号を作成して画像処理部14に出力する。このデジタル画像信号に基づいて、画像処理部14は所定時間おきに新たな表示用画像データD2を作成してVRAM21に保存する。このようにして所定時間おきに更新されている表示用画像データD2を適宜取得して表示部19に表示することにより、ユーザーが行う撮像範囲の変更などに追随したプレビューを行うことができる。
【0023】
圧縮部15は、制御部20の制御に従って、画像処理部14の作成した画像データを圧縮して圧縮画像データD4を生成する。圧縮形式は、非可逆圧縮JPEG形式や非可逆圧縮TIFF形式のように非可逆圧縮であってもよいし、PNG形式や可逆圧縮JPEG形式や可逆圧縮TIFF形式のように可逆圧縮であってもよい。また、圧縮部15は、画像データを圧縮せずにビットマップ形式で出力してもよい。このようにして作成された圧縮画像データD4は、データ記憶部16に出力される。なお、制御部20は、圧縮部15を介さずに、AFE13から出力されるデモザイク前の画像データであるRAWデータをそのままデータ記憶部16に出力させることもできる。
【0024】
データ記憶部16は、例えば、リムーバブルメモリー(着脱可能な記憶媒体)を接続するためのカードスロット(着脱口)や接続されたリムーバブルメモリーに対するデータ読み書きを制御するメモリーコントローラーを備える。むろん、着脱できない固定式の記憶媒体によってデータ記憶部16を構成してもよい。データ記憶部16は、制御部20の制御に従って、圧縮部15の出力する圧縮画像データD4やAEF13の出力するRAWデータをリムーバブルメモリーに記憶する。また、データ記憶部16は、制御部20の制御によって、リムーバブルメモリーに記憶されている画像データを読み出すこともできる。
【0025】
表示部19は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)とLCDコントローラーを備えており、LCDコントローラーは、制御部20の制御に従ってLCDの表示を制御する。制御部20は、LCDコントローラーを介して、各種の設定や画像をLCDに表示することができる。なお、本実施形態においては、表示部19のLCDとして、LCD19aとEVF19b(Electric View Finder)との2種類を備えている。LCD19aは、主として撮像結果を確認するために撮影済みの画像を表示する目的で利用されることが多いのに対し、EVF19bは光学系11から入力される光学像をリアルタイムで表示することによって画像の構図やピントを確認するために用いられる。すなわち、EVF19bは、フィルム式カメラ等において撮像範囲やピントを確認するためのファインダーの役割を果たす液晶画面である。そのためEVF19bは、高精細で動きの速い被写体に対応可能な、高温ポリシリコンLCDを利用することが好ましい。また、EVF58は、フィルム式カメラのファインダーに対応する構成であることから、人間の目に近いサイズの小型に形成されている。
【0026】
操作部18は、シャッターボタン、露光条件やその他各種の撮影条件を設定するためのダイヤルスイッチ、表示される各種のメニューを操作するための複数の押しボタンスイッチ、ジョグダイヤルなどを備える。なお、操作部18は押しボタンやダイヤルスイッチで構成する以外に、表示部19をタッチパネルなどで構成することにより、該タッチパネルに対する操作を操作部18とすることもできる。
【0027】
図2は、DSC100の外観の一例を示す外観図である。同図において、上図にはDSC100の被写体とは反対側から見た側面図を示し、下図にはDSC100の上面図を示してある。
同図において、DSC100は、電源のオンオフを切換えるための電源スイッチ18aと、画像を撮像するとともに取得した画像データをリムーバブルメモリーに記憶させる処理を指示するためのシャッターボタン18bと、撮影済みのデジタル画像の再生表示や各種の設定メニューなどを表示するためのLCD19aと、LCD19aに表示された設定メニューのカーソル等を移動させたり選択したメニュー項目を確定したりするためのカーソル操作キー18dと、撮影前に撮像範囲の画像を表示するためのEVF19bと、を備えている。また、巻き上げることによりセンサー前に配置されているフォーカルプレーン型のシャッタ装置の開閉動作を行ったり、あるいはシャッターボタンの押下げ操作に対するロックを解除したりする等の機能を有する巻上レバー18cを備えている。
【0028】
(2)撮像処理:
次に、以上の構成を利用して制御部20において実行されるマニュアルフォーカスで撮像する処理について説明する。図3は、撮像処理の流れを示すフローチャートである。撮像処理においては、撮像した画像に応じて作成される表示用画像データD2に基づいた画像をEVF19bに適宜プレビューしつつ、ユーザーが所望のタイミングで撮像指示を行うと、撮像した画像データをデータ記憶部16に保存させる。同図に示す処理は、上記各機能を実現した制御部20よって実行される。なお、ユーザーは撮像処理の間にDSC100の撮像画像の構図の変更、ピント調整やピント領域の追加や削除やサイズ変更といった調整も行うため、本撮像処理は1秒間に30回以上の頻度で繰り返し実行されている。
【0029】
処理が開始されると、表示制御部M2は、フラッシュメモリー20cからピント設定情報を取得する(S100)。ピント設定情報には、ピント領域の位置とサイズとが指定されており、このピント設定情報に基づいて撮像素子12の受光面のどの領域をピント領域とするかを決定することができる。本撮像処理においては、ピント領域に含まれる被写体に対するピントの合焦程度を示す表示が行われる。むろん、オートフォーカスで撮像する際は、公知のオートフォーカス技術によってピント領域に含まれる被写体に自動的にピントを合わせる処理が実行される。なお、本実施形態ではピント領域の形状を四角として説明するが、丸や三角など任意の形状を採用可能である。
【0030】
ピント領域の設定が終了すると、ピント部M3がピント領域におけるピントズレ(合焦度合もしくは不合焦度合)を検出する(S105)。ピントズレは、アクティブ方式やパッシブ方式で検出することができる。
アクティブ方式の場合は、対象物(被写体)に赤外線・超音波などを照射し、その反射波が戻るまでの時間や照射角度によりピント領域に含まれる被写体と撮像レンズとの距離を検出し、撮影レンズの焦点距離との差を計算する。本方式を採用する場合は、赤外線・超音波などを被写体に向けて照射する照射手段と、その反射波を受信する受信手段とをDSC100に備えさせる。また、受信手段は、反射波の受信角度を検出するセンサーや反射波が戻るまでの時間を計測するタイマーも備えることになる。
【0031】
次に、パッシブ方式のひとつである位相差検出方式によってピントズレを検出する場合は、DSC100にセパレータレンズとラインセンサーとを設けて、セパレータレンズで生成された2つの像の間隔(位相差)をラインセンサーで計測し、この位相差に基づいてピントのズレ量を検出する。このとき、位相差が大きいほどピントのずれ量が大きいことを意味し,位相差が小さいほどピントのずれ量が小さいことを意味する。
また、パッシブ方式のひとつである高周波成分の山登り方式によってピントズレを検出する場合は、メインの光学系11の焦点距離を変化させながら撮像素子12が撮像した画像データの明暗のコントラストを計算し、コントラストが最も大きくなる所が焦点距離が合っていると判断する。あるいはコントラストを計算する他に画像データを離散コサイン変換などの手法で空間周波数分解し、ピント領域の画像に含まれる高周波成分の量を評価する。そのため、例えば画像処理部14に、画像の空間周波数分解を行う手段と、画像に含まれる高周波成分の比率とピントズレの量との対応関係データとを備える。画像処理部14は、画像処理の何れかの段階で作成された画像データからピント領域の画像データを抽出し、この画像データに含まれる高周波成分の比率に基づいてピントズレの量を検出する。
【0032】
なお、山登り方式によるピントズレの評価をより正確に行うには、ピントズレを検出している間にユーザーの調整した位置からレンズを微小変動させることによりピントを変化させればよい。すなわち、レンズの微小変動によって高周波成分が大きく変動するほどピントズレが大きく、変動量が小さいほどピントが合っていることになる。また、レンズの微小変動によってピントを遠景方向に変動させたときに、コントラストや高周波成分が増加したときはピントが近景方向にずれているし、高周波成分が減少したときはピントが遠景方向にずれていることになる。レンズの微小変動によってピントを近景方向に変動させたときは、その逆である。なお、圧縮部15にJPEG圧縮回路機能を有する場合は、JPEG処理の一部として離散コサイン変換機能があるため画像処理部14で処理した画像を圧縮部15の離散コサイン処理によりAC成分を抽出して、このAC成分の量を用いて高周波成分の量を評価することもできる。
【0033】
表示制御部M2は、ピント部M3からピントズレを取得すると、ピントズレに応じて作成された2重画像をピント領域Aに合成した合成画像を作成する(S105)。
図4は2重画像の合成についての説明図であり、図5はピントとピントズレΔPの対応関係を示す説明図であり、図6はピントズレΔPと2重画像に発生するズレ量Δxとの対応関係を示す説明図である。ズレ量Δxとは、表示用画像データD2のピント領域に本来表示される画像と、この画像に重複される画像とのずれに相当する量である。
【0034】
まず、図5と図6を参照してピントとピントズレΔPとズレ量Δxとの関係を説明する。ピントズレΔPとズレ量Δxとは正の相関を有しており、ピントズレΔPが大きくなるほどズレ量Δxは大きくなり、ピントズレΔPが小さくなるにつれてズレ量Δxは小さくなる。また、ピントズレの方向が近景方向と遠景方向とでズレ量の正負を変えており、ピントズレの方向に応じてずれる方向が方向を異なるようにしてある。
【0035】
図6に示す例では、近景方向へのピントズレと遠景方向へのピントズレとでズレ方向が左右逆になっており、近景方向へのピントズレのときにはズレ量は0から+方向に徐々に大きくなっていくため、図6に示すようにずれる方向が右である。一方、遠景方向へのピントズレのときにはシフト量は0から−方向へ徐々に大きくなるため、図6に示すようにずれる方向は左になっている。むろん、ズレ方向は上下方向や斜め方向など他の方向であってもよいし、近景方向へのピントズレのときには左方向へずれるとともに遠景方向へのピントズレのときには上方向へずれたり、近景方向へのピントズレでも遠景方向へのピントズレでも左方向へずれるなど、ずらす方向は様々に変更しても構わない。
なお、ピントズレΔPとズレ量Δxとの対応関係は演算式や対応表で表現されており、本実施形態ではフラッシュメモリー20cに予め記憶されている。ピント部M3は、フラッシュメモリー20cに記憶されている対応関係に基づいてピントズレΔPからシフト量Δxを求めることができる。
【0036】
シフト量Δxを算出すると、次に表示制御部M2は2重画像を作成する。表示制御部M2は、ピント領域Aを図4の左方向にズレ量Δx(A)だけずらしたズレ画像領域A’のズレ画像をピント領域Aに合成する。具体的には、ピント領域Aの画素を、順次、着目画素として選択し、表示用画像データD2における着目画素の画素データと着目画素からΔx(A)だけずれた位置の画素データとを取得する。そして、これらの画像データを相加平均もしくは加重平均し、合成画像を表す合成画像データD3の着目画素における画素データとする。なお、合成画像データD3におけるピント領域A以外の画素データは、表示用画像データD2のデータをそのまま利用する。これによって、ピント領域Aは2重像となる。
【0037】
以上のようにして合成画像データD3が作成されると、表示制御部M2は、合成画像データD3に基づいて合成画像をEVF58に出力する(S110)。その結果、EVF58には、図4に示すように、本来の画像からズレ量Δxに応じた量だけずれた画像がピント領域Aに表示される。ユーザーは、本来の画像とのずれ度合を見ることにより、ピント領域Aにおけるピントズレを直感的に把握することができる。むろん、ピント領域にはオリジナルの画像も残存しており、ピント領域に加算されたズレ画像とピント領域Aの外の画像と非連続的に形成されているものの、オリジナルのピント領域Aの画像はピント領域Aの外の画像と連続的に形成されている。従って、ユーザーは2重画像のズレ量に基づいてピントズレを直感的に把握できるし、さらに画像の全体像も視認することができる。
【0038】
また、図6に示すように、合成画像を表示するときにはピント領域の周囲を囲う枠が表示さている。枠を表示することにより、ユーザーは、ピント領域Aの位置と範囲を容易に把握できるし、ピント領域Aとそれ以外の領域との境界を明確に認識できる。さらに、図6に示すように、ピントが合うとピント枠が消えるようにしてもよい。また、ピントが合ったときとピントが合っていないときとで枠の色が変わるようにしてもよい。例えば、ピントが合っていないときは枠を白や黒といった無彩色で表示し、ピントが合うと枠を有彩色にする。むろん、ピントが合っているときと合っていないときとで、有彩色と無彩色を逆にしてもよい。このようにすると、ユーザーは、ピント領域Aの位置と範囲、ピント領域Aの境界、をさらに明確に認識できるし、合焦した瞬間を確実かつ直感的に認識できる。
【0039】
次に、表示制御部M2は、ピント操作が実行されたか否かを判断する(S115)。ピントが変更されるとピント領域AにおけるピントズレΔPが変化するため、2重画像の更新が必要になるからである。表示制御部M2は、操作部18を介して実行されるピント操作の有無を判断し、ピント操作が行われた場合には(S115:Yes)ステップS105〜S110を実行することにより、新たなピントズレΔPに基づいて作成された合成画像をEVF58に表示する。
【0040】
一方、ピント操作が行われていない場合は(S115:No)ピント領域に変更が加えられたか否かを判断する(S120)。ピント領域に変更が加えられると、ピントズレの判断対象となる範囲が変化し、2重画像の形成対象が変化するからである。なお、ピント領域の変更とは、ピント領域の位置やサイズの変更であり、また後述のようにピント領域の追加や削除であってもよい。ステップS11において、表示制御部M2は、操作部18を介してピント設定に対する変更を確定する操作の有無を判断し、ピント設定が変更された場合は(S120:Yes)ステップS100〜S110を実行し、変更後のピント設定に基づいて作成された合成画像をEVF58に表示する。一方、ピント操作が行われていない場合はステップS130に進む(S120:No)、
【0041】
ステップS130では、表示制御部M2は、撮像が指示されたか否かを判断する。本実施形態においては、撮像の指示はシャッターボタン18bを押下げることにより行われる。表示制御部M2は、シャッターボタン18bの操作を監視しており、シャッターボタン18bが押下げられた場合はステップS135に進む(S130:Yes)。一方、シャッターボタン18bが押下げられていない場合は、所定時間が経過した後でステップS105に戻り、ステップS105〜S110の処理を繰り返すことによりEVF58に表示される画像を更新する。このとき、ピントズレの検出やピントズレを用いた処理を繰り返すために、被写体やカメラが移動していても、その時点でのピントズレに応じた画像をEVF58に表示する。
【0042】
ステップS135では、撮像部M1が各部11〜15を制御することによって撮像処理が実行される。まず、光学系11の図示しないシャッタースクリーンが所定時間だけ開口し、撮像範囲に含まれる被写体の光学像が撮像素子12により取得される。そしてAFE13でデジタル化されたデジタル画像信号に対し画像処理部14で各種画像処理が施すことにより画像データD1を作成し、圧縮部15が画像データD1をJPEG画像データに圧縮する。このようにして作成されたJPEG画像データは、データ記憶部16からリムーバブルメモリーに書込まれる。なお、Rawデータの保存が選択されている場合には、AFEの出力するデジタル画像信号に画像処理を施すことなくそのままリムーバブルメモリーに書込む。
【0043】
(3)各種変形例:
(3−1)変形例1:
上述した実施形態では、ピント領域Aの画像が2重表示されるように合成画像を作成したが、2重表示される範囲はピント領域Aに限る必要は無い。例えば、ピント領域Aのピントズレに応じて、表示用画像の全体が2重にずれて表示されるようにしてもよい。また、ピント領域Aは1重で表示され、ピント領域A以外の領域が2重にずれて表示されるというように、ピント領域Aとは異なる範囲が、2重にずれて表示されるようにしてもよい。ここでは、前者の例について説明する。
【0044】
図7は、表示用画像の全体をピントに応じて2重化する場合の説明図である。同図に示すように、撮像された画像にはピント領域Aが設定されており、表示制御部M2はピント部M3からピント領域AにおけるピントズレΔPを取得する。そして、表示制御部M2は、フラッシュメモリー20cに記憶されている対応関係に基づいてピントズレΔPに応じたシフト量Δxを算出し、表示用画像の全体を図7の左方向にズレ量Δx(A)だけずらしたズレ画像領域A’のズレ画像をピント領域Aに合成する。具体的な合成手法は上述した実施形態と同様である。なお、ズレ画像が合成されない部位もあるが、この部位はオリジナルの表示用画像のままにしておけばよい。このとき、画像を合成された部位と画像を合成されなかった部位との境界を表示する枠を表示してもよく、上述した実施形態のように合焦時に枠を消去したり色を変化させたりできるようになる。このように画像全体を2重表示することにより、EVF58のように小さな表示部であっても、ピントズレの有無を明確に視認できるようになる。
【0045】
(3−2)変形例2:
また、上述した実施形態では、1つだけピント領域Aを設定する例について説明したが、ピント領域Aは複数設定されていてもよい。ここでは、複数のピント領域にそれぞれ符号A1,A2,A3を付け、それぞれのピント領域に対応して設定されるズレ画像領域にそれぞれ符号A1’,A2’,A3’をつけて説明することにする。また、各ズレ画像領域から取得されるズレ画像には、符号SI(A1),SI(A2),SI(A3)をつけて説明する。
【0046】
図8は、ピント領域が複数設定された場合に、各ピント領域の画像を2重化する場合の説明図である。同図に示すように、表示制御部M2はピント部M3からピント領域A1,A2,A3のそれぞれにおけるピントズレΔP(A1),ΔP(A2),ΔP(A3)を取得する。そして、表示制御部M2は、フラッシュメモリー20cの対応関係に基づいてピントズレΔP(A1),ΔP(A2),ΔP(A3)からシフト量Δx(A1),Δx(A2),Δx(A3)を算出する。表示制御部M2は、各ピント領域を各シフト量でシフトした位置にズレ画像領域A1’,A2’,A3’を設定し、各ズレ画像領域からズレ画像SI(A1),SI(A2),SI(A3)を取得する。
【0047】
そして、表示制御部M2は、各ズレ画像を表すデータをオリジナルの表示用画像データの各ピント領域に合成して合成画像データを作成し、表示用画像データとしてEVF58に出力する。その結果、EVF58には、各ピント領域に各ピント領域のピントズレに応じた量だけずれた画像が重畳された合成画像が表示されることになる。ピント領域ごとにピントズレの度合を示す2重画像が表示されるため、撮影される画像の複数箇所におけるピントを把握できる。よって、画像の各所におけるピントを容易に把握できるし、画像の全体的な合焦傾向を容易に把握することができる。
【0048】
なお、本実施形態におけるピント領域の追加・削除・サイズ変更は、操作部18で行う。例えば、設定メニューにピント領域に関する設定項目を設けておいて、操作部18に所定の操作を行ったときにピント領域に関する設定を行うモードになるようにしておく。そして、このモードになると、例えばカーソル操作キー18dで新規ピント領域の位置を指定したり、既存のピント領域を選択して削除・サイズ変更・位置変更を行ったりといった各種ピント領域の設定を行えるようにする。むろん、この操作は一例であり、公知の様々な手法と適宜採用可能である。
【0049】
(3−3)変形例3:
上述した実施形態では、マニュアルでピントを調整するMF方式のDSCを例にとって説明を行ったが、本実施形態のDSCは自動的にピント領域のピントを合致させるAF方式をも実行可能であってもよい。MF方式とAF方式とを切換えて実行可能であれば、ユーザーの利便性が向上する。また、DSCがパッシブ方式でのAF機構を備えさせることにより、上述した実施形態のピント部M3がピントズレを検出する際に、ピントを変化させつつピント領域における映像信号の高周波解析を行う山登り方式でピント領域におけるピントズレを検出することも可能である。
【0050】
(3−4)変形例4:
上述した実施形態では、合成画像をEVF58に表示する場合を例にとって説明を行ったが、むろん、合成画像はLCD50に表示しても構わない。また、合成画像の表示先を、EVF58、LCD50、EVF58およびLCD50の双方、のいずれかを操作部18に対して行われる操作に基づいて選択可能に構成しても構わない。
【0051】
(3−5)変形例5:
上述した実施形態では、光学系11の駆動機構が表示制御部M2の制御によって駆動される場合を例にとって説明したが、むろん、ラック&ピニオンのような機械的機構によって手動で駆動機構を調整するための操作部を設けても構わない。
(3−6)変形例6:
上述した実施形態では表示制御部M2は、ピント領域Aをずらしたズレ画像領域A’のズレ画像をオリジナルの画像のピント領域Aに合成していた。しかし、オリジナルの画像とズレ画像との少なくとも一方の色を変更して合成することで、ズレ画像とオリジナルの画像とを区別しやすいようにしても構わない。この色を変更するとは具体的には、赤色成分を1.5倍にすることで赤っぽいズレ画像又はオリジナルの画像としたり、ズレ画像又はオリジナルの画像の全体をモノクロ画像にしたり、オリジナルの画像のピント領域Aのみを緑色成分のみにし、かつズレ画像を赤色成分と青色成分のみにして合成し、ピント領域Aの外のオリジナルの画像は元のままにしたり、といった方法が採用できる。
【0052】
(4)まとめ:
以上説明した実施形態によれば、撮像素子12の受光した光に基づいて生成した表示用画像データD2に基づいた画像を表示部19に表示するDSC100であって、ピントズレを検出するピント部M3と、ピントズレに応じてピント領域Aからずれた位置のズレ画像SIを表示用画像のピント領域Aに対して相加平均もしくは加重平均した合成画像を表示部19に表示させる表示制御部M2と、を備えている。よって、画像のプレビュー性を低下させること無く、ピントを視覚的に容易に把握できるようになる。
【0053】
なお、本発明は上述した実施形態や変形例に限られず、上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、公知技術並びに上述した実施形態および変形例の中で開示した各構成を相互に置換したり組み合わせを変更したりした構成、等も含まれる。
【符号の説明】
【0054】
100…デジタルスチルカメラ(DSC)、11…光学系、12…撮像素子、13…AFE、14…画像処理部、15…圧縮部、16…データ記憶部、18…操作部、18a…電源スイッチ、18b…シャッターボタン、18c…巻上レバー、18d…カーソル操作キー、19…表示部、19a…LCD、19b…EVF、20…制御部、21…VRAM、M1…撮像部、M2…表示制御部、M3…ピント部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子にて受光した光に基づいて画像データを生成する撮像装置であって、
画像を表示する表示部と、
ピントズレを検出するピント部と、
上記画像データの画像の少なくとも一部の領域の画像と上記ピントズレに応じて該領域からずれた位置の画像とを重畳合成した合成画像を上記表示部に表示させる表示制御部と、
を具備することを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
上記表示制御部は、上記画像データの画像と上記ずれた位置の画像との少なくとも一方の色を変更した上記合成画像を上記表示部に表示させる請求項1記載の撮像装置。
【請求項3】
上記表示制御部は、上記合成画像とともに上記領域を囲むようにピントが合っているときとずれているときとで異なる枠を上記表示部に表示させる請求項1又は請求項2に記載の撮像装置。
【請求項4】
上記表示制御部は、ピントが合っているときは上記合成画像とともに上記領域を囲む枠を上記表示部に表示させ、ピントがずれているときは上記領域を囲む枠を上記表示部に表示させない請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項5】
上記ピント部は、予め設定されたピント領域におけるピントズレを検出し、
上記表示制御部は、上記ピント領域の画像と上記ピントズレに応じて上記ピント領域からずれた位置の画像とを上記ピント領域に重複表示した合成画像を上記表示部に表示させる請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の撮像装置。
【請求項6】
ユーザーの操作を受付ける操作部を更に備え、
上記表示制御部は、上記操作部にて行われる所定の操作に応じて上記領域を上記画像の領域内に複数設定する請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
撮像素子にて受光した光に基づいて生成した画像データに基づいた画像を表示部に表示する撮像方法であって、
ピントズレを検出するピント工程と、
上記画像データの画像の少なくとも一部の領域の画像と上記ピントズレに応じて該領域からずれた位置の画像とを重畳合成した合成画像を上記表示部に表示させる表示制御工程と、
を具備することを特徴とする撮像方法。
【請求項8】
撮像素子にて受光した光に基づいて生成した画像データに基づいた画像を表示部に表示する機能をコンピューターに実現させるための撮像プログラムであって、
ピントズレを検出するピント機能と、
上記画像データの画像の少なくとも一部の領域の画像と上記ピントズレに応じて該領域からずれた位置の画像とを重畳合成した合成画像を上記表示部に表示させる表示制御部と、
を具備することを特徴とする撮像プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−119930(P2011−119930A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−274821(P2009−274821)
【出願日】平成21年12月2日(2009.12.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】