説明

撮像装置、画像記録プログラム、画像データ記録媒体、画像処理装置および画像処理プログラム

【課題】人間の可視範囲内の色を過不足なく表現可能な画像データを出力する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像手段から入力される画像データで表された画像を形成する各画素の色を、可視領域全体を表現可能な色度空間において可視領域内に予め決められた基準点と前記色度空間における可視光スペクトルの軌跡とに基づいて決定される主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを用いて符号化し、得られた符号化データを出力する符号化手段を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デジタルカメラを含む撮像装置、この撮像装置から出力された画像データを記録する画像データ記録媒体および画像データの表示や印刷を含む処理を行う画像処理装置ならびにこれらの装置において画像データの処理を行う画像記録プログラムおよび画像処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルカメラなどの撮像装置では、撮像素子で得られたR、G、B成分に対応する電気信号について、撮像素子の特性やフィルタの特性とともに表示装置の特性を考慮した補間処理を行うことによって各画素の色を示す画像データが生成され、更に、JPEG方式などに従う符号化処理を経た後に画像データがメモリカードなどの記録媒体に記録される。
【0003】
この符号化の過程で、補間処理で得られたR、G、B信号からなる画像データは、符号化処理に適合する信号系(例えば、Y、Cb、Cr信号)に変換された後に符号化されており、一方、符号化された画像データを復元してディスプレイ装置を介して表示する際には、上述したY、Cb、Cr信号を再びR、G、B信号に変換する処理が行われる。
この画像再生の際の変換処理は、IEC(International Electrotechnical Commission)によって規定された標準的なディスプレイの特性に関するsRGB標準に基づいて、このsRGB標準に準拠したディスプレイで画像が再生されることを想定して実行されている。
【0004】
しかしながら、このsRGB標準で規定された色域は、人間の可視範囲を完全には含んでいないため、人間の可視範囲内であって、sRGB標準で規定された色域に含まれない色が存在する。このような色は、sRGB標準に従う画像データでは表現することができないため、sRGB標準で規定された色域内部の色で近似されていた。
このようなsRGB標準の色域の制限を避けるために、画像データにディスプレイの特性としてより広い色域特性を記述したカラープロファイルを付加し、このカラープロファイルに基づいて、R、G、B信号への変換を行う方法により、sRGB標準よりも広い色域を再現可能とする技術も実現されている。
【0005】
また一方、上述したIECによって、sRGB標準を拡張したscRGB標準が規定されている(非特許文献1参照)。このscRGB標準の色域は、人間の可視範囲を完全に含む半面、可視範囲の外側、つまり、人間が「色」として認識しない範囲にある点も定義可能となっている。
【非特許文献1】INTERNATIONAL STANDARD IEC 61966-2-2
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したカラープロファイルを画像データに付加する方法では、色域特性を表す三原色(R、G、B)の色度点を可視光領域の外側に設定することにより、R、G、B成分の組み合わせで可視光領域全体を表現可能とすることができる反面、scRGB標準と同様に、可視光領域の外側の点も「色」として定義可能となってしまう。
このような可視光領域の外側に定義された「色」については、ディスプレイ装置やプリンタを介して出力処理においてどのように扱うべきか明確な指針が示されていないため、いずれの方法によって画像データが表現されている場合でも、この画像データの処理段階における混乱を招くおそれがある。
【0007】
また、いずれの場合でも、可視光領域の外側の領域にも可視光領域の内部と同様にデータ領域が割り当てられるため、定義可能ではあっても実際の色を表す有効なデータとして利用されることのない値の範囲が発生してしまう。
本発明は、人間の可視範囲内の色を過不足なく表現可能な画像データを出力する撮像装置、画像記録プログラム、画像データ記録媒体、画像処理装置および画像処理プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明にかかわる第1の撮像装置は、撮像手段から入力される画像データで表された画像を形成する各画素の色を、可視領域全体を表現可能な色度空間において可視領域内に予め決められた基準点と色度空間における可視光スペクトルの軌跡とに基づいて決定される主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを用いて符号化し、得られた符号化データを出力する符号化手段を備える。
【0009】
本発明にかかわる第2の撮像装置は、上述した第1の撮像装置において、符号化手段に、色度空間において可視領域の内部に設定された基準点に基づいて、各画素に対応する主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを算出する第1パラメータ算出手段と、第1パラメータ算出手段で得られた値と値が主波長であるか補色主波長であるかを示す判別フラグとから波長パラメータを形成する波長パラメータ形成手段とを備える。
【0010】
本発明にかかわる第3の撮像装置は、上述した第1の撮像装置において、符号化手段に、色度空間において可視光スペクトルの軌跡の長波長側端点と短波長側端点とを結ぶ赤紫線上に設定された基準点に基づいて、各画素に対応する主波長と刺激純度とを算出する第2パラメータ算出手段を備える。
本発明にかかわる第4の撮像装置は、上述した第1乃至第3の撮像装置のいずれかにおいて、符号化手段により、各画素の色に関する符号化に用いられた基準点および可視光スペクトルの軌跡を示す情報を符号化データに付加して出力する。
【0011】
本発明にかかわる第5の撮像装置は、上述した第1の撮像装置において、符号化手段は、符号化の際に得られる主波長あるいは補色主波長の範囲と刺激純度の範囲とをそれぞれ符号長で表現可能な数値の全範囲に対応付ける。
本発明にかかわる第6の撮像装置は、上述した第2の撮像装置において、符号化手段は、色度空間において可視領域の内部に設定された基準点と可視光スペクトルの軌跡とによって限定される補色主波長の範囲をそれぞれパラメータの値を表す符号長で表現可能な数値の全範囲に対応付ける。
【0012】
本発明にかかわる第7の撮像装置は、上述した第1の撮像装置において、符号化手段に、入力される画像データをxy色度図上の座標データに変換する色度変換手段と、座標データと基準点の座標および可視光スペクトルの軌跡に関する情報とに基づいて、主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを算出する演算手段とを備える。
本発明にかかわる第8の撮像装置は、上述した第1乃至第7の撮像装置のいずれかにおいて、符号化手段は、各画素の色に対応する符号化データに輝度を示すパラメータを加えて画像データを形成し、形成した画像データを出力する。
【0013】
本発明にかかわる画像データ記録媒体は、視覚対象となる画像を表す画像データを、可視領域全体を表現可能な色度空間において可視領域内に予め決められた基準点と画像データで表された画像を形成する各画素の色を色度空間において表す点とを結ぶ直線と色度空間における可視光スペクトルの軌跡との交点で示される主波長と補色主波長との少なくとも一方と主波長あるいは補色主波長に関する各画素の色の刺激純度とを含むパラメータを用いて符号化された符号化データを記録する。
【0014】
本発明にかかわる画像処理装置は、可視領域全体を表現可能な色度空間における可視光スペクトルの軌跡上の主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを含むパラメータに対応する符号情報からなる符号化データから、画像を形成する各画素の色を示す色度を復元する復号手段を備える。
【発明の効果】
【0015】
本発明にかかわる撮像装置および画像データ記録プログラムによれば、可視光領域外の色を定義することなく可視光領域内の全ての色を表現可能な形式の画像データを生成してメモリカードなどの記憶媒体への記録処理に供することができる。
また、本発明にかかわる画像データ記憶媒体によれば、上述した本発明にかかわる形式の画像データを記録し、パーソナルコンピュータやプリンタなどの処理に供することができる。
【0016】
更に、本発明にかかわる画像処理装置および画像処理プログラムによれば、このような画像データによって可視光領域全体を用いて表された色を復元し、表示装置やプリンタ装置を介する出力処理に供することにより、画像を記録する側が意図した色を忠実に再現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態について詳細に説明する。
(デジタルカメラの実施形態)
図1に、本発明にかかわるデジタルカメラの実施形態を示す。
図1に示したデジタルカメラにおいて、画像の撮影の際に撮影光学系21によって撮像素子22上に結像された光は、この撮像素子22によってその強度に応じた電気信号に変換され、更に、アナログ/デジタル(A/D)変換器23によってデジタルデータに変換されてメモリ24に保持される。
【0018】
図1に示したメモリ24は、バスを介して画像処理部25、記録処理部26および撮影制御部28に接続されている。上述したようにしてメモリ24に格納されたデジタルデータについて、画像処理部25により、符号化処理を含む画像処理が行われ、この画像処理結果として得られた圧縮画像データがバスを介して記録処理部26に渡されて、記憶媒体27に記録される。また、これらの各部の動作は、撮影制御部28によって制御されている。
【0019】
以下、撮影によって得られたデジタルデータから符号化データを生成する処理について詳細に説明する。
図2に、符号化データ生成動作を表す流れ図を示す。
ステップS1に示した撮影によって得られたデジタルデータは、メモリ24を介して、図1に示した画像処理部25に備えられた補間処理部31による補間処理に供され(ステップS2)、これにより、各画素の色をR、G、B成分の組み合わせで表す画像データが得られる。
【0020】
この各画素の画像データは、図1に示した色度算出部32により、まず、一般的な変換式を用いて、CIEの3刺激値を示すXYZデータに変換され(ステップS3)、次いで、式(1)、(2)を用いて、このXYZデータから色度x、yが算出される(ステップS4)。
x=X/(X+Y+Z) ・・・(1)
y=Y/(X+Y+Z) ・・・(2)
また、上述したステップS3あるいはステップS4の過程で、RGBデータあるいはXYZデータに基づいて、各画素の輝度値Yが求められ、符号化処理部35に渡される。
【0021】
ここで、図1に示した画像処理部25において、基準情報保持部34には、xy色度図において、例えば、標準光源の一つであるD65の色度を示す座標W(x、y)と、xy色度図におけるスペクトル光の軌跡(図3参照)を示す色度座標データが保持されている。この色度座標データとしては、例えば、波長380nmから700nmまで5nmステップでサンプリングしたスペクトル光について、それぞれの色度座標を保持しておくことで実現することができる(例えば、「色彩工学の基礎」朝倉書店、池田光男著参照)。なお、波長700nmから780nmまでのスペクトル光に対応する色度座標は同一の点となるので、上述した例では、波長380nmから700nmまでのスペクトル光に対応する色度座標データを基準情報保持部34に格納している。
【0022】
ここで、主波長、補色主波長および刺激純度といった量は、白色点に基づいて算出されるのが一般的である。しかし、本発明では、これらの量を算出する際の基準となる白色点が等エネルギー白色やD65などのいわゆる白色である場合に限らず、可視光域内であればどこにあっても目的を達成することができ、また、後述するように、通常は白色と呼ばれない赤紫線上の点をこれらの量の算出に用いて、特有の効果を得る形態も含んでいる。
【0023】
そこで、本明細書では、いわゆる「白色点」の代わりに、「基準点」という語を用いる。また、主波長、補色主波長および刺激純度の算出においては、基準点を白色点として用いる。
以下の説明では、図3において、スペクトル光の軌跡の長波長側端点(図3において符号Rを付して示した)と基準点Wとを結ぶ線分と、この基準点Wとスペクトル光の軌跡の短波長側端点(図3において符号Vを付して示した)とを結ぶ線分と、スペクトル光の軌跡とで囲まれた領域を主波長領域と称し、上述した2つの線分とスペクトル光の軌跡の両端を結んだ赤紫線とで囲まれる三角形の領域を補色主波長領域と称する。
【0024】
上述したステップS4において得られたxy色度座標(x、y)に基づいて、図1に示したパラメータ算出部33は、まず、この色度座標(x、y)が主波長領域に含まれるか否かを判定する(ステップS5)。
例えば、図3に示した点Aは、主波長領域に含まれると判断され(ステップS5の肯定判定)、このとき、パラメータ算出部33により、点Aの色度座標(xa1、ya1)で示される色を表すパラメータとして、主波長WLと刺激純度Peとが算出される(ステップS6、S7)。
【0025】
図1に示したパラメータ算出部33により、まず、点Aの色度座標(xa1、ya1)と基準点Wの色度座標(x、y)とから点Aと基準点Wとを結ぶ直線とスペクトル光の軌跡との交点が求められ、この交点に対応する波長が主波長WLとして符号化処理部35に渡される。
具体的には、パラメータ算出部33は、上述した直線の式を求め、この直線の式(例えば,y=px+q)にスペクトル光の軌跡を示す色度座標データの中からスペクトル光の軌跡において隣接する2つの点のx座標x,xi+1を代入して得られた式の値(つまり、px+q,pxi+1+q)それぞれと上述した2つの点のy座標y,yi+1それぞれとの差の積が負となる色度座標データ(x、y),(xk+1、yk+1)を探索する。そして、この探索で得られた二つの色度座標データで示されるスペクトル光の軌跡上の点を結ぶ直線と点Aと基準点Wとを結ぶ直線(例えば,y=px+q)との交点を、点Aと基準点Wとを結ぶ直線とスペクトル光の軌跡との交点(図3において、符号D1Mを付して示した)の座標とこれに対応する主波長WLを求めることができる。また刺激純度Peは、基準点Wから点Aまでの距離を基準点Wから交点D1Mまでの距離で除算することによって得られる。
【0026】
このようにして、図1に示したパラメータ算出部33により、各画素の色を表すパラメータとして主波長WLと刺激純度Peが得られ、これらのパラメータが、符号化処理部35に渡される。
次いで、符号化処理部35は、パラメータ算出部33から受け取った主波長WLと刺激純度Peと、上述した色度算出部32から渡された輝度値Yとを含む符号データを形成し(ステップS8)、全ての画素について処理を終了したか否かを判定する(ステップS9)。
【0027】
このステップS9の否定判定の場合は、ステップS3に戻って、次の画素に関する処理を開始する。
例えば、次の画素の色が、図3に符号Aを付して示したように、補色主波長領域に含まれている場合は、上述したステップS5の否定判定となり、パラメータ算出部33により、ステップS10〜ステップS12の処理が行われる。
【0028】
まず、パラメータ算出部33は、基準点Wと符号化対象の点Aとを結ぶ直線の式を求め、この直線とスペクトル光の軌跡の両端を結ぶ線分との交点D2Sの色度座標を算出する(ステップS10)。
次いで、パラメータ算出部33は、上述したステップS6と同様にして基準点Wと符号化対象の点Aとを結ぶ直線とスペクトル光の軌跡との交点D2Mを求め、この交点D2Mに対応する波長を補色主波長WLとするとともに、基準点Wから点Aまでの距離を基準点Wから交点D2Sまでの距離で除算することによって、符号化対象の点Aに関する刺激純度Peを算出する(ステップS11、S12)。
【0029】
このようにして得られた補色主波長WLと刺激純度Peとが符号化処理部35に渡され、ステップS8の符号データ生成処理に供される。
符号化処理部35は、ステップS8において、例えば、図4(b)に示すように、波長を示す波長パラメータWLと、この波長パラメータが主波長であるか補色主波長であるかを示す判別フラグと、輝度値Yおよび刺激純度Peとから各画素対応の符号データを形成することができる。
【0030】
このとき、波長パラメータWLの範囲(380nm〜700nm)の上限および下限ならびに刺激純度Peの範囲(数値0〜1)の上限および下限と、波長パラメータWLおよび刺激純度Peに割り当てた符号長で表現可能な数値範囲の上限および下限とを一致させるように、波長パラメータWLおよび刺激純度Peの値に対応する符号を決定することにより、符号データが表現可能な数値範囲の全体を過不足なく利用して、可視光領域内の全ての色を表現することが可能となる。
【0031】
また、波長パラメータWLが補色主波長を示している場合に、補色主波長に関する波長範囲の制限を符号データの決定に反映させることも可能である。具体的には、図3において、基準点Wとスペクトル光の軌跡の端点R,Vとをそれぞれ結ぶ線分(図3において破線で示した)の延長とスペクトル光の軌跡との交点に対応する波長で示される補色主波長の範囲の上限および下限を波長パラメータWLに割り当てられた符号長で表される数値の上限および下限に対応付けて個々の符号を決定することもできる。
【0032】
このようにして、全ての画素に関する処理が完了した後に(ステップS9の肯定判定)、符号化処理部35により、図4(a)に示すように、1フレーム分の各画素に対応する符号データに、スペクトル光の軌跡を示す色度座標データと基準点Wの色度座標とからなる基準情報を付加することにより、1フレーム分の画像データに対応する符号データが形成され、記録処理部26を介して、メモリカードなどの記憶媒体27に記録される(ステップS13)。
【0033】
なお、上述したようにして符号化された画像データに基づいて、画像を出力するディスプレイ装置やプリンタ装置などにおいて、スペクトル光の軌跡を示す色度座標データや基準点の色度座標データが共有されている場合には、これらの情報からなる基準情報の付加を省略することができる。
また、図4(c)に示すように、各画素に対応して主波長、補色主波長、刺激純度および輝度値からなる符号データを形成しても良い。この場合に、符号化処理部35は、各画素の色が主波長領域にあるか補色主波長領域にあるかに応じて、符号データの主波長に対応するフィールドあるいは補色主波長に対応するフィールドに、パラメータ算出部33で得られた波長パラメータに対応する符号を設定する。
【0034】
また一方、図5に示すように、基準点Wをスペクトル光の軌跡の両端を結ぶ赤紫線上に設定した場合には、可視光領域に含まれる全ての色を示す色度座標について、スペクトル光の軌跡上の主波長と刺激純度とを求めることができる。
したがって、この場合は、図4(d)に示すように、各画素の色を主波長と刺激純度との組み合わせで表すことが可能となる。
【0035】
上述したようにして、撮像素子を用いた撮像処理によって得られたRGBデータから、各画素の色を主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを用いて表す符号データを生成する処理は、ソフトウェアによって実現可能であり、このようなソフトウェアは、デジタルカメラによる撮影の際に得られるRGBデータに限らず、測光機で得られた画像データや画像データベースなどに蓄積された画像データについても適用することができる。
(画像処理装置の実施形態)
図6に、本発明にかかわる画像処理装置の実施形態を示す。
【0036】
図6に示したメモリカード41には、図4に示したような形式に従って上述した符号化データからなる画像ファイルが格納されており、カードリーダ42は、画像処理部43に備えられた復元制御部51からの指示に応じて、このメモリカード41から指定された画像ファイルを読み出して、画像処理部43の処理に供する。
以下、この画像処理部43により、上述した構成の画像ファイルから画像データを再生する方法について説明する。
【0037】
図7に、画像データ再生動作を表す流れ図を示す。
図6に示した画像処理部43において、復元制御部51は、まず、カードリーダ42を介して画像ファイルを読み出し(ステップS21)、受け取った画像ファイルから基準情報を抽出して基準情報保持部52に格納する(ステップS22)。
上述した画像ファイルを構成する各画素に対応する符号データのうち、判別フラグ、波長パラメータおよび刺激純度は、復元制御部51を介して色度値復元部53に渡され、輝度値は、画像データ再生部54に渡される。
【0038】
判別フラグによって主波長領域であることが示されている場合に(図7のステップ23の肯定判定)、図6に示した色度値復元部53は、波長パラメータで示された主波長に対応する色度座標と基準点Wの色度座標とに基づいて、これらを結ぶ直線の式を求め、この直線の式と刺激純度とから符号データで表された画素の色を示す色度座標を復元する(ステップS24)。
【0039】
一方、判別フラグによって補色主波長領域であることが示されている場合に(図7のステップ23の否定判定)、色度値復元部53は、波長パラメータで示された主波長に対応する色度座標と基準点Wの色度座標とに基づいて、これらを結ぶ直線の式を求め、この直線と赤紫線との交点の色度座標を特定する(ステップS27)。次いで、色度値復元部53は、ステップ27で特定された色度座標と刺激純度および基準点Wの色度座標とに基づいて、符号データで表された画素の色を示す色度座標を復元する(ステップS28)。
【0040】
このようにして復元された色度座標と復元制御部51から受け取った輝度値とに基づいて、画像データ再生部54は、該当する画素の色を明るさも含めて再現するためのXYZデータを復元する(ステップS25)。
上述したステップS23からステップS28を繰り返し、全ての画素に対応する符号データからXYZデータを復元した後に(ステップS26の肯定判定)、画像データ生成部54は、1フレーム分のXYZデータをバスに出力し、表示制御部44あるいはプリンタ制御部46を介して、表示部45あるいはプリンタ47による出力処理に供する(ステップS29)。
【0041】
上述したようにして表示制御部44あるいはプリンタ制御部46の処理に供されたXYZデータは、確実に可視光域内に限定されているので、表示部45による表示のための表示データあるいはプリンタ47による出力のための出力データに変換する際に、どのように変換すべきかが明瞭となる。
なお、画像処理部43に備えられた基準情報保持部52に、予め画像ファイルの生成に用いられた基準情報が共有されている場合は、上述したステップS22を省略し、共有された基準情報を利用してxy色度座標の復元処理を行うことができる。
【0042】
また、基準情報で示された基準点Wが赤紫線上の点である場合は、全ての画素に対応する符号データから上述したステップS24の処理によってxy色度座標を復元することができる。
本発明にかかわる撮像装置、画像記録プログラム、画像データ記録媒体、画像処理装置および画像処理プログラムによれば、可視光領域内のあらゆる色が表現可能であって、しかも、可視光領域の外側については符号データが定義されていないので、表示あるいは印刷が不可能な符号データを考慮する必要がない。
【0043】
つまり、本発明にかかわる画像データの符号化方法では、可視光領域内の色の範囲と画像の記録に用いる符号データの範囲との間に高い整合性を持たせることができ、画像の記録に用いられた符号データに対し明確な解釈ができる。
【産業上の利用可能性】
【0044】
以上説明したように、本発明にかかわる撮像装置、画像記録プログラム、画像データ記録媒体、画像処理装置および画像処理プログラムによれば、可視光領域外を示すデータに対する考慮の必要なしに、可視光領域内のあらゆる色を表現可能とするので、微妙な色彩表現が必要とされるカタログやポスターの印刷や芸術作品のデジタルデータ化などの分野において、極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明にかかわるデジタルカメラの実施形態を示す図である。
【図2】符号化データ生成動作を表す流れ図である。
【図3】パラメータ算出動作を説明する図である。
【図4】符号データのフォーマット例を示す図である。
【図5】パラメータ算出動作を説明する図である。
【図6】本発明にかかわる画像処理装置の実施形態を示す図である。
【図7】画像データ再生動作を表す流れ図である。
【符号の説明】
【0046】
21…光学系、22…撮像素子、23…A/D変換器、24…メモリ、25,43…画像処理部、26…記録処理部、27…記憶媒体、28…撮影制御部、31…補間処理部、32…色度算出部、33…パラメータ算出部、34,52…基準情報保持部、35…符号化処理部、41…メモリカード、42…カードリーダ、44…表示制御部、45…表示部、46…プリンタ制御部、47…プリンタ、51…復元制御部、53…色度値復元部、54…画像データ再生部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段から入力される画像データで表された画像を形成する各画素の色を、可視領域全体を表現可能な色度空間において可視領域内に予め決められた基準点と前記色度空間における可視光スペクトルの軌跡とに基づいて決定される主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを用いて符号化し、得られた符号化データを出力する符号化手段
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記符号化手段は、
前記色度空間において可視領域の内部に設定された基準点に基づいて、各画素に対応する主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを算出する第1パラメータ算出手段と、
前記第1パラメータ算出手段で得られた値と前記値が主波長であるか補色主波長であるかを示す判別フラグとから波長パラメータを形成する波長パラメータ形成手段とを備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項3】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記符号化手段は、前記色度空間において前記可視光スペクトルの軌跡の長波長側端点と短波長側端点とを結ぶ赤紫線上に設定された基準点に基づいて、各画素に対応する主波長と刺激純度とを算出する第2パラメータ算出手段を備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか一項に記載の撮像装置において、
前記符号化手段は、前記各画素の色に関する符号化に用いられた前記基準点および前記可視光スペクトルの軌跡を示す情報を前記符号化データに付加して出力する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項5】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記符号化手段は、前記符号化の際に得られる主波長あるいは補色主波長の範囲と刺激純度の範囲とをそれぞれ符号長で表現可能な数値の全範囲に対応付ける
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項6】
請求項2に記載の撮像装置において、
前記符号化手段は、前記色度空間において可視領域の内部に設定された基準点と前記可視光スペクトルの軌跡とによって限定される補色主波長の範囲をそれぞれパラメータの値を表す符号長で表現可能な数値の全範囲に対応付ける
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項7】
請求項1に記載の撮像装置において、
前記符号化手段は、
入力される画像データをxy色度図上の座標データに変換する色度変換手段と、
前記座標データと前記基準点の座標および前記可視光スペクトルの軌跡に関する情報とに基づいて、主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを算出する演算手段とを備えた
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項8】
請求項1乃至請求項7に記載の撮像装置において、
前記符号化手段は、前記各画素の色に対応する符号化データに輝度を示すパラメータを加えて画像データを形成し、形成した画像データを出力する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項9】
入力される画像データで表された画像を形成する各画素の色を、可視領域全体を表現可能な色度空間において可視領域内に予め決められた基準点と前記色度空間における可視光スペクトルの軌跡とに基づいて決定される主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを用いて符号化する符号化ステップと、
前記符号化ステップによって得られた符号化データを記録する記録ステップと
を備えたことを特徴とする画像記録プログラム。
【請求項10】
請求項9に記載の画像記録プログラムにおいて、
前記符号化ステップは、
前記色度空間において可視領域の内部に設定された基準点に基づいて、各画素に対応する主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを算出する第1パラメータ算出ステップと、
前記第1パラメータ算出ステップで得られた値と前記値が主波長であるか補色主波長であるかを示す判別フラグとから波長パラメータを形成する波長パラメータ形成ステップとを備えた
ことを特徴とする画像記録プログラム。
【請求項11】
請求項9に記載の画像記録プログラムにおいて、
前記符号化ステップは、前記色度空間において前記可視光スペクトルの軌跡の長波長側端点と短波長側端点とを結ぶ赤紫線上に設定された基準点に基づいて、各画素に対応する主波長と刺激純度とを算出する第2パラメータ算出ステップを備えた
ことを特徴とする画像記録プログラム。
【請求項12】
請求項9乃至請求項11のいずれか一項に記載の画像記録プログラムにおいて、
前記記録ステップは、前記各画素の色に関する符号化に用いられた前記基準点および前記可視光スペクトルの軌跡を示す情報を符号化データに加えて記録する符号化条件付加ステップを備えた
ことを特徴とする画像記録プログラム。
【請求項13】
請求項9に記載の画像記録プログラムにおいて、
前記符号化ステップは、前記符号化の際に得られる主波長あるいは補色主波長の範囲と刺激純度の範囲とをそれぞれ符号長で表現可能な数値の全範囲に対応付けて符号化する
ことを特徴とする画像記録プログラム。
【請求項14】
請求項10に記載の画像記録プログラムにおいて、
前記符号化ステップは、前記色度空間において可視領域の内部に設定された基準点と前記可視光スペクトルの軌跡とによって限定される補色主波長の範囲をそれぞれ符号長で表現可能な数値の全範囲に対応付けて符号化する
ことを特徴とする画像記録プログラム。
【請求項15】
請求項9に記載の画像記録プログラムにおいて、
前記符号化ステップは、
入力される画像データをxy色度図上の座標データに変換する色度変換ステップと、
前記座標データと前記基準点の座標および前記可視光スペクトルの軌跡に関する情報とに基づいて、主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを算出する演算ステップとを備えた
ことを特徴とする画像記録プログラム。
【請求項16】
請求項9乃至請求項15に記載の撮像装置において、
前記符号化ステップは、前記各画素の色に対応する符号化データに輝度を示すパラメータを加えて画像データを形成し、形成した画像データを出力する
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項17】
視覚対象となる画像を表す画像データを、可視領域全体を表現可能な色度空間において可視領域内に予め決められた基準点と前記画像データで表された画像を形成する各画素の色を前記色度空間において表す点とを結ぶ直線と前記色度空間における可視光スペクトルの軌跡との交点で示される主波長と補色主波長との少なくとも一方と前記主波長あるいは補色主波長に関する前記各画素の色の刺激純度とを含むパラメータを用いて符号化された符号化データを記録した
ことを特徴とする画像データ記録媒体。
【請求項18】
可視領域全体を表現可能な色度空間における可視光スペクトルの軌跡上の点に対応する主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを含むパラメータに対応する符号情報からなる符号化データから、画像を形成する各画素の色を示す色度を復元する復号手段を備えた
ことを特徴とする画像処理装置。
【請求項19】
可視領域全体を表現可能な色度空間における可視光スペクトルの軌跡上の点に対応する主波長あるいは補色主波長と刺激純度とを含むパラメータに対応する符号情報からなる符号化データから、画像を形成する各画素の色を示す色度を復元する復号ステップを備えた
ことを特徴とする画像処理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−176415(P2008−176415A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7394(P2007−7394)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】