説明

撮像装置

【課題】本発明は、駆動機構の部品点数を削減することによって占有体積が小さくなる撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置100は、共軸光学系のレンズ2と、これを保持するホルダ12と、ホルダ12を光軸λに沿って移動可能に保持するスライド機構と、シャッタ羽根61と、磁石71と、第1のコイル74と、第2のコイル75,76とを備える。磁石71は、ホルダ12に移動可能に支持され、シャッタ羽根61と連結される。ホルダ12を駆動するレンズ駆動機構7aは、磁石71と第1のコイル74とで構成する。シャッタ羽根61を駆動するシャッタ駆動機構7bは、磁石71と第2のコイル75,76とで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学系を通過する光束の光量を調整する減光部材を駆動する機構と、光束に沿う方向へ光学系を駆動する機構とを備える撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたレンズ鏡筒は、1群レンズと2群レンズと回転筒と直進筒とシャッタ羽根とシャッタ駆動機構と鏡筒駆動機構とを備える。1群レンズは、1群ホルダに保持され、2群レンズは、2群ホルダに保持されている。1群ホルダおよび2群ホルダは、直進筒とともに光軸方向に移動する。シャッタ羽根は、1群レンズと2群レンズとの間に配置され、シャッタ駆動機構によって開閉される。
【0003】
鏡筒駆動機構は、回転筒を回転させることによって直進筒を光軸に沿って移動させ、ズームおよび焦点調整を行うようになっている。特許文献1ではレンズの傾き調整機構を工夫し、鏡筒駆動機構やシャッタ駆動部との干渉をなくし、小型化を図っている。
【特許文献1】特開平11−212135号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載のレンズ鏡筒は、シャッタ羽根を動かす駆動部とレンズを光軸方向に動かす鏡筒駆動機構とが独立して設けられている。したがって、これらを個別に納めるための場所が必要であり、小型化を図る上で限界があった。
【0005】
そこで、本発明は、部品点数を削減し、占有体積が小さい小型の撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る撮像装置は、レンズとホルダとスライド機構と減光部材と磁石と第1のコイルと第2のコイルとを備える。レンズは、光学系を構成する少なくとも1つ設けられる。ホルダは、レンズを保持する。スライド機構は、レンズの光軸に沿ってホルダを移動可能に支持する。減光部材は、光学系を光軸に沿って通過する光束の光量を調整する。磁石は、ホルダに移動可能に支持され、減光部材と連結される。第1のコイルは、磁石をホルダとともに光軸に沿って移動させる方向の磁界を発生する。第2のコイルは、磁石をホルダに対して動かす方向の磁界を発生する。レンズの光軸に沿ってホルダを駆動する第1のアクチュエータは、磁石と第1のコイルとで構成する。減光部材を光束から外れた待機位置と光束を横切る挿入位置とに移動させる第2のアクチュエータは、磁石と第2のコイルとで構成する。
【0007】
減光部材として、光束を遮断するシャッタ羽根、光束の断面積を変化させる開口を有した絞羽根、光束を横切る位置に振込まれるND(Natural Density)フィルタのいずれかを適用する。また、異なる役割を果たす2種類の減光部材を設けることも好ましい。この場合、第2のアクチュエータは、これら2種類の減光部材を独立して駆動するために各々に対応して2組設け、第1のアクチュエータは、2組の第2のアクチュエータにそれぞれ設けられる磁石に対し、発生する磁界を作用させてホルダを光軸に沿って変化させる第1のコイルを少なくとも1つ有すればよい。
【0008】
2種類の減光部材の組合せとして、シャッタ羽根と絞羽根、シャッタ羽根とNDフィルタ、互に異なる口径の絞孔が設けられた2種類の絞羽根の組合せのいずれかが効果的である。
【0009】
第1のアクチュエータの駆動力を大きくするために、ホルダに移動可能に支持される第1の磁石とは別にホルダに固定される第2の磁石を設ける。そして、第1のコイルは、第1の磁石と前記第2の磁石との両方に作用してホルダを第1の磁石と第2の磁石とともに光軸に沿って変位させる磁界を発生させる。
【0010】
撮像装置の消費電力を抑えるために、ホルダは、第1のコイルが通電されていない状態で、光学系の焦点を無限遠に設定するパンフォーカス位置に保持する。減光部材は、第2のコイルが通電されていない状態で、光束から外れた待機位置に保持する。
【0011】
撮像装置のさらに好ましい形態は、磁石とともに磁気回路を構成するヨークをさらに備える。第1のコイルの一部は、ホルダとともに磁石を光軸に沿って移動させる方向に磁気回路を横切って配置する。第2のコイルの一部は、磁気回路を横切る第1のコイルの一部と直交させ、ホルダに対して磁石を動かす方向に配置する。
【0012】
この撮像装置において、ホルダを光軸に沿って動かすことによって焦点を補正する。または、ホルダを光軸に沿って動かすことによって焦点距離を変化させる。
【0013】
本発明に係る他の形態の撮像装置は、光学系を構成する少なくとも1つのレンズと、このレンズを保持するホルダと、スライド機構と、原稿部材と、磁石と、ヨークと、第1のコイルと、第2のコイルとを備える。スライド機構は、レンズの光軸に沿ってホルダを移動可能に支持する。減光部材は、光学系を光軸に沿って通過する光束の光量を調整する。磁石は、ホルダに移動可能に支持されて減光部材と連結される。ヨークは、磁石と磁気回路を構成する。第1のコイルは、磁気回路を第1の方向に横切る部分を有し、通電されることで磁石をホルダとともに光軸に沿って移動させる。第2のコイルは、第1の方向と直交する第2の方向に磁気回路を横切る部分を有し、通電されることで磁石をホルダに対して動かす。レンズの光軸に沿ってホルダを駆動する第1のアクチュエータは、磁石と第1のコイルとで構成する。光束を横切る挿入位置と光束から外れた待機位置とに減光部材を移動させる第2のアクチュエータは、磁石と前記第2のコイルとで構成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る撮像装置は、焦点位置の調整やズーム動作などのために光学系を動かす駆動機構と、シャッタ羽根やフィルタおよび絞りなどの減光部材の駆動機構とで部品を一部共有するので、全体の嵩を小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明に係る第1の実施形態の撮像装置100は、図1から図14を参照して説明する。図1に示す撮像装置100は、電子式カメラやカメラ付携帯電話の撮像部として適用され、第1のレンズ1、第2のレンズ2、第3のレンズ3、第1のホルダ11、第2のホルダ12、第3のホルダ13、シャフト4a,4b、コイルバネ5a,5b、シャッタ機構6、駆動機構7、撮像素子20を備える。
【0016】
第1のレンズ1と第2のレンズ2と第3のレンズ3とは、それぞれの光軸が同一線上に揃う共軸光学系を構成している。以降、各レンズの光軸は、共軸光学系の光軸λで表す。第1のホルダ11と第2のホルダ12と第3のホルダ13とは、光軸λに沿って光束を通過させる開口部11a,12a,13aが、図2に示すように設けられている。レンズマウント11b,12b,13bが、開口部11a,12a,13aの外周に形成されている。第1のレンズ1は、レンズマウント11bに、第2のレンズ2は、レンズマウント12bに、第3のレンズ3は、レンズマウント13bに、各々接着固定される。
【0017】
シャフト4a,4bは、光軸λと平行にかつ光軸λを中心とするほぼ対称な位置に配置される。第3のホルダ13は、シャフト4a,4bの基端41a,41bが差し込まれる台座13c,13dを有している。第2のホルダ12は、シャフト4a,4bに外挿する軸受12c,12dを有している。第1のホルダ11は、シャフト4a,4bの先端41c,41dが差し込まれて固定される嵌合孔11c,11dを有している。第1のホルダ11は、シャフト4a,4bによって、第3のホルダ13対して一定の距離で平行に保持される。
【0018】
また、一方の軸受12cは、主軸受として第2のホルダ12がシャフト4aに沿って平行移動するように支持し、他方の軸受12dは、従動軸受としてシャフト4aを中心に光軸λを横切る方向(第2のレンズ2の面内方向)に第2のホルダ12が回動することを防止するように支持する。
【0019】
具体的には、一方の軸受12cは、光軸λに沿う方向に長く形成され、第2のホルダ12が光軸λに沿って移動する間、光軸λに対して第2のレンズ2が傾くことを防止する程度にシャフト4aに対する十分な嵌め合い精度を有している。具体的には、シャフト4aの外径がφ0.996〜0.998mmであることに対して、軸受12cの内径は、φ1.005〜1.013mmである。また、移動方向に4mmの長さを有している。
【0020】
他方の軸受12dは、第2のホルダ12が光軸λに沿って移動することを妨げないようにシャフト4bの半径方向に一部が切欠かれたC型に形成されている。切り欠く代わりに、シャフト4a,4bの中心どうしを結ぶ線分に沿う方向に長い長円形に軸受12dを形成しても良い。軸受12dは、シャフト4a,4bの中心どうしを結ぶ線分と平行に設けられる平坦部でシャフト4bを挟むように支持している。平坦部どうしの距離は、軸受12cの内径と同じく、1.005〜1.013mmに設ける。また、光軸に沿って移動する方向の長さは、0.8mm程度でよい。
【0021】
シャフト4a,4bが十分な真直度および円筒度を有していても、第1のホルダ11に設けられる嵌合孔11c,11dおよび第3のホルダ13に設けられる台座13c,13dの位置精度や、これらに対するシャフト4a,4bの組立精度によっては、これらのシャフト4a,4bを決められた寸法精度で平行に組み立てることは難しい。寸法精度を追求することで、シャフト4a,4bの平行度を向上させようとすると、製造コストが増加してしまう。
【0022】
これに対し、以上の構成を有することにより、シャフト4a,4bの平行度が多少悪くても、これを軸受12c,12dで吸収することができる。したがって、第2のホルダ12は、第1のホルダ11と第3のホルダ13との間でこれらと平行に支持され、光軸λに沿って移動する。シャフト4a,4bおよび軸受12c,12dは、第2のホルダ12を光軸λに沿って移動させるスライド機構を構成する。
【0023】
各部の具体的な材質を1つずつ挙げると、第1のホルダ11および第3のホルダ13は、ポリカーボネイト樹脂製、第2のホルダ12は、ポリフェニリンサルファイト樹脂製、シャフト4a,4bは、マルテンサイト系ステンレス鋼、具体的には日本工業規格で表記されるSUS420J2製である。これらに対して、製造コストや機械的特性の点で仕様を十分に満たすものであれば、これらの材料に置き換えて利用することは可能である。
【0024】
コイルバネ5a,5bは、シャフト4aに装着される。コイルバネ5aは、第1のホルダ11と第2のホルダ12の間に装着される。コイルバネ5bは、第2のホルダ12と第3のホルダ13との間に装着される。コイルバネ5a,5bは、光学系がパンフォーカス状態になる中立位置に第2のホルダ12を位置決めし、保持する。パンフォーカス状態とは、無限延の被写体に対して光学系の焦点が合う状態である。
【0025】
シャッタ機構6は、図3に示すように、第3のホルダ13に面した側の第2のホルダ12に取り付けられている。シャッタ機構6は、ベースプレート60とシャッタ羽根61と線細工バネ62とで構成される。ベースプレート60は、スペーサ60aと、貫通孔60bと、支持軸60cと、スライドパッド60dと、逃部64a,64bとが形成されている。
【0026】
スペーサ60aは、第2のホルダ12の外周縁に沿うベースプレート60の対辺に設けられ、第2のホルダ12に接着固定される。スペーサ60aは、第2のホルダ12との間に一定の隙間を造る。貫通孔60bは、第2のレンズ2から射出される光束が通過する十分な大きさを有している。支持軸60cは、シャッタ羽根61の回動中心となる。スライドパッド60dは、貫通孔60bを挟んで支持軸60cと反対側に、支持軸60cを中心とする円弧状に形成されている。第2のホルダ12に対してベースプレート60を微調整することのできる位置決代を設けるために、逃部64aは、軸受12cと接しない大きさに、逃部64bは、軸受12dと接しない大きさにそれぞれ形成されている。
【0027】
シャッタ羽根61は、光軸λに沿って光学系を通過する光束を遮断する減光部材の一形態である。シャッタ羽根61は、光束から外れた待機位置P1と光束を横切る挿入位置P2との間で、支持軸60cを中心に回動する。支持軸60cから離れた回動先端部61aは、スライドパッド60dに接している。
【0028】
線細工バネ62は、支持軸60cを介してベースプレート60とシャッタ羽根61との間に掛けられ、シャッタ羽根61を待機位置に保持する方向に付勢する。
【0029】
駆動機構7は、ベースプレート60と第3のホルダ13との間に設けられる。駆動機構7は、磁石71と磁石ホルダ72とヨーク73と第1のコイル74と第2のコイル75,76とを備える。この内、磁石71と第1のコイル74とヨーク73によって、第2のホルダ12を光軸λに沿う方向へ移動させる第1のアクチュエータとしてのレンズ駆動機構7aを構成する。また、磁石71と磁石ホルダ72と第2のコイル75,76とヨーク73とによって、第2のアクチュエータとしてのシャッタ駆動機構7bを構成する。
【0030】
磁石71は、磁石ホルダ72に固定される。磁石ホルダ72は、磁界に影響を及ぼさない合成樹脂で形成されており、第2のホルダ12が移動する方向に延びる旋回軸72aと、この旋回軸72aから半径方向に延びるアーム72bとを有している。旋回軸72aは、ベースプレート60に設けられた取付孔60eに通されて第1のホルダ11に面した側で、抜け止めリング72cが取り付けられる。抜け止めリング72cは、取付孔60eに設けられたザグリ部60fに一部が潜り込んだ状態になる。
【0031】
旋回軸72aは、取付孔60eに対して、抜け止めリング72cは、ザグリ部60fに対してそれぞれ隙間嵌めの状態である。磁石ホルダ72は、旋回軸72aに沿う方向についてもベースプレート60と隙間を有して組み付けられており、旋回軸72aを中心に回動する。磁石71は、N極とS極とが並ぶ方向を旋回軸72aに対して直交させて磁石ホルダ72に取り付けられている。
【0032】
アーム72bの先端72dは、ベースプレート60に設けられた挿通孔60gに通されて、シャッタ羽根61の係合孔61bに連結される。挿通孔60gは、旋回軸72aを中心とする円弧状の長孔である。シャッタ羽根61の係合孔61bは、支持軸60cから半径方向に長く形成されているので、磁石ホルダ72が回動してもシャッタ羽根61の動作に支障をきたすことは無い。
【0033】
ヨーク73は、基部73aと立ち上がり部73b,73cとで構成される。ヨーク73は、磁性体の鋼板の両端をプレス加工で曲げることで造られている。基部73aは、第3のホルダ13に設けられた据付凹部13eに接着固定されている。立ち上がり部73b,73cは、磁石71のN極とS極とにそれぞれ向き合う位置まで第3のホルダ13から第2のホルダ12に向かって延びており、磁石ホルダ72のアーム72bと干渉しない第3のホルダ13の縁から延びる立ち上がり部73cの方が長く延びている。立ち上がり部73b,73cは、N極およびS極に対して、十分に広い面積を有している。ヨーク73は、磁石71とともに磁気回路を形成する。
【0034】
第1のコイル74は、N極と対峙する立ち上がり部73bに捲きつけられている。したがって、ヨーク73の立ち上がり部73bと磁石71との間を第1の方向に横切る第1のコイル74の第1の部分74aは、光軸λを横切る方向に磁気回路を横切る。
【0035】
第2のコイル75,76は、第1のコイル74とN極との間に配置される。第2のコイル75,76の捲回中心軸は、磁石71が形成する磁力線に沿う方向に向いている。第2のコイル75,76の一部である辺75a,76aは、第1の方向と直交する第2の方向に、光軸λに沿う方向へ磁気回路を横切る。第2のコイル75,76は、辺75a,76aに流れる電流の向きが揃うように通電される。つまり、コイル全体では、互に逆向きに電流が流される。
【0036】
図7に示すように、磁石71は、第1のコイル74にN極を向けて磁石ホルダ72に取り付けられている。したがって、磁気回路の磁力線の流れは、矢印A71で示される向きに形成される。
【0037】
図8および図9において、第1のコイル74に時計回りの矢印A1に示される方向の電流を流すと、電磁気学におけるいわゆる「フレミングの左手の法則」に基づき、第1のコイル74の第1の部分74aは、磁界の向きと電流の向きに垂直な、光軸λに沿って第2のホルダ12から離れる方向の力f1を受ける。第1のコイル74は、第3のホルダ13に対してヨーク73で固定されているので、力f1の反力f11が磁石71に作用する。
【0038】
磁石71は、第2のホルダ12に対して光軸λに沿う方向に移動しないように支持されており、第2のホルダ12は、シャフト4a,4bに沿って光軸λに沿う方向に移動する。したがって、第2のホルダ12は、第1のホルダ11に接近する矢印A2方向へ移動する。第1のコイル74に流れる電流の向きを矢印A3方向に反転させると、第1のコイル74の第1の部分74aに力f2が作用し、磁石71に力f21が作用する。その結果、第2のホルダ12は、第3のホルダ13に接近する矢印A4方向へ移動する。なお、第1のコイル74の第1の部分74a以外の部分は、磁気回路の外にあり、磁石71が作り出す磁界の影響をほとんど受けない。
【0039】
このように、第1のコイル74に電流を流すことにより、第2のホルダ12および第2のレンズ2は、磁石71とともに光軸λに沿う方向に移動される。つまり第1のコイル74は、光学系の焦点またはズームを調整するフォーカスコイルとして機能する。第1のコイル74に流す電流の大きさおよび向きを制御することで、光学系の結像面上に作られる像の焦点を正確に合わせる調整ができる。
【0040】
図4において、第2のコイル75,76に矢印A5,A6に示される方向の電流を流すと、第2のコイル75,76の辺75a,76aは、図8に示すように光軸と交差する方向の力f3を受ける。このとき、第2のコイル75,76の残りの部分は、磁気回路の外にあるため磁界の影響をほとんど受けない。第2のコイル75,76は、第3のホルダ13に対してヨーク73および第1のコイル74を介して固定されているため、力f3の反力f31が磁石71に作用する。
【0041】
磁石71は、第2のホルダ12に対して回動するように、磁石ホルダ72によって保持されている。したがって、磁石71は、図8において反時計回りに回動した状態となる。磁石ホルダ72のアーム72bの先端72dがシャッタ羽根61に連結されているので、シャッタ羽根61は、支持軸60cを中心に回動し、図8中に二点鎖線で示す待機位置に保持される。また、線細工バネ62によって、通電されていない状態でも、シャッタ羽根61は、待機位置に保持される。
【0042】
第2のコイル75,76に矢印A7,A8の方向の電流をそれぞれ流すと、第2のコイル75,76の辺75a,76aに力f4が作用し、磁石71に反力f41が作用する。この結果、図9に示すように、磁石ホルダ72が時計回りに回動するので、シャッタ羽根61は、図9中に二点鎖線で示す挿入位置に保持される。挿入位置において、シャッタ羽根61は、光軸λに沿って光学系を通過する光束を遮断する。
【0043】
第2のコイル75,76に電流を流すことによって磁石71が第2のホルダ12に対して回動される。磁石ホルダ72で磁石71と連結されるシャッタ羽根61は、図8に示す待機位置と図9に示す挿入位置との間を回動する。つまり、第2のコイル75,76は、シャッタ羽根61を駆動するシャッタコイルとして機能する。第2のコイル75,76に流す電流の大きさおよび向きを制御することで、光学系の結像面に入射される光の量を適度に絞るためにシャッタ羽根61を動かすことができる。
【0044】
なお、図8において、シャッタ羽根61に点線で示す領域61cは、ベースプレート60の貫通孔60bを塞ぐ範囲である。この領域61cにNDフィルタを取り付けたり、光軸λを中心とする光束の断面積を小さくする開口となる絞孔を設けた絞羽根としたりしても良い。NDフィルタまたは絞羽根は、待機位置と挿入位置とに移動することで、光軸λに沿って通過する光量を変化させる減光部材となる。
【0045】
第3のホルダ13は、第2のホルダ12に面する側の反対側から凹んだ基板取付部13fを有している。撮像素子20は、基板21に実装され、図2および図5に示されるように基板取付部13fに小ネジ21aで固定される。基板取付部13fは、撮像素子20の受光面が光学系の結像面に位置決めされるように形成されている。予め微調整ができるように、基板21との間にスペーサを入れることを前提に作られていても良い。
【0046】
次に、以上のように構成された撮像装置100の動作について説明する。図10に示すように、撮像装置100を搭載するカメラは、システムコントローラ22、撮像素子IF(インターフェイス)回路23、レンズ駆動回路24、シャッタ駆動回路25、操作スイッチ26、メディアIF回路27、メモリーカード28、画像表示部を備える。メモリーカード28は、記録媒体の一例であり、この他に磁気記録装置を備えても良い。
【0047】
システムコントローラ22は、制御手段の一例であり、撮像素子IF回路23、レンズ駆動回路24、シャッタ駆動回路25、操作スイッチ26、メディアIF回路27が接続されている。撮像素子IF回路23は、撮像素子20とシステムコントローラ22との間に設けられている。レンズ駆動回路24は、フォーカスコイルである第1のコイル74に接続され、第1のコイル74の電流を制御する。シャッタ駆動回路25は、シャッタコイルである第2のコイル75,76に接続され、第2のコイル75,76の電流を制御する。
【0048】
操作スイッチ26は、各種設定ボタンなどを含む操作部の一つとしてカメラの外部に露出する。操作スイッチ26は、マニュアル操作されることによって、撮像動作を開始するための制御信号を出力する。メディアIF回路27は、システムコントローラ22とメモリーカード28との間に設けられ、システムコントローラ22から出力される画像データをメモリーカード28に記録する。また、メディアIF回路27は、画像表示部と接続されており、システムコントローラ22から出力される画像データ、または、メモリーカード28に記録されていた画像データを表示させる。
【0049】
図11に示すフォーカス調整の原理を示す図、図12、図13に示すフローチャートおよび図14に示すタイムチャートを参照して、撮像装置100の動作について説明する。図12に示すように、カメラ電源が入れられて撮像モードが選択されると、システムを起動するための初期設定(ST100)が実行され、システムコントローラ22は、シャッタ駆動回路25から第2のコイル75,76へホールド電流Ishを出力する(ST101)。このホールド電流Ishは、線細工バネ62に抗ってシャッタ羽根61の動作応答をよくするために、シャッタ羽根61が挿入位置に移動する方向に付勢する電流をわずかに与えておくものである。
【0050】
シャッタ羽根61が開状態で保持されたことが確認されると、操作スイッチ26の状態をモニターする(ST102)。操作スイッチ26が1/2以上、いわゆる半押状態に押されたか否か判定を行い(ST103)、操作スイッチ26が操作された場合、レンズ駆動回路24を介して第1のコイル74に電流Ifの通電が開始される(ST104)。
【0051】
第1のコイル74への通電が開始されると、フォーカス調整のサブルーチン(ST200)が実行される。サブルーチン(ST200)は、図11、図13を参照して後に詳述する。フォーカス調整のサブルーチン(ST200)が完了すると、元の手順フローに戻り画像データを基に露光時間Tsを決定する(ST105)。次に、図14に示すように、操作スイッチ26が底まで押された(ST106)信号がシステムコントローラ22に入力されると、静止画像を取り込むための露光が開始され(ST107)撮像素子20が蓄積動作を開始する。
【0052】
システムコントローラ22に内蔵されるタイマがカウントを始める(ST108)。カウント値が露光時間Tsに達すると、シャッタ駆動回路25から第2のコイル75,76へ、図14に示すように逆向きのクローズ電流Iscが出力される(ST109)。消費電力を抑えるため、シャッタ羽根61が閉じられるタイミングに合わせて第1のコイル74への通電が遮断される(ST110)。第2のホルダ12は、第2のレンズ2をパンフォーカス位置にするニュートラルポジションへ戻る。
【0053】
シャッタ羽根61が閉じられるタイミングよりも後に撮像素子20から画像でデータの読出しを行う(ST111)。データの読出しが完了すると、システムコントローラ22は、シャッタ駆動回路25から第2のコイル75,76へオープン電流Isoを出力する(ST112)。これにより、シャッタ羽根61は、挿入位置から待機位置へ移動する。
【0054】
シャッタ羽根61が待機位置へ移動すると、次の動作のために、システムコントローラ22は、シャッタ駆動回路25から第2のコイル75,76へホールド電流Ishを出力する(ST113)。読み出した画像データは、システムコントローラ22によって所望のデータ形式に圧縮され、メディアIF回路27を介してメモリーカード28に記録される(ST114)。そして、操作スイッチ26の状態を読み込むモニタリング(ST102)が、次の撮像動作が開始されるまで続けられる。
【0055】
また、撮像動作が開始されない間、操作スイッチ26が操作されないか判断し(ST103)、操作されていない場合、電源スイッチが操作されたか判断する(ST115)。電源スイッチが操作されていない場合は、再び操作スイッチ26のモニタリング(ST102)に戻る。電源スイッチが操作され、撮影モードが解除されると、第2のコイル75,76へ供給していたホールド電流Ishを遮断する(ST116)。そして、システムの動作を停止する(ST117)。
【0056】
次に、フォーカス調整のサブルーチン(ST200)の動作について図11、図13を参照して説明する。図11に示すように、フォーカス位置の決定は、レンズの位置を段階的に変化させ、各位置で得られる画像のコントラストが最も強くなる位置を求めることによって、行われる。
【0057】
したがって、図13に示すように、フォーカスの調整が開始されると、システムコントローラ22は、コントラストCnを得るために画像データを読出し、n=1回目のコントラストC1を演算する(ST201)。次に、システムコントローラ22は、1回目のコントラストC1を演算した時の第1のコイル74の電流値Ifn(n=1)に微小電流量ΔIFを加えた電流値If2をレンズ駆動回路24から第1のコイル74へ供給する(ST202)。
【0058】
第2のレンズ2がΔIfに応じた量だけ光軸λに沿って移動するので、2(=n+1)回目として移動した位置のコントラストC2を演算する(ST203)。2回目のコントラストC2と1回目のコントラストC1とを比較し(ST204)、C2≧C1の場合、図11に示すように同じ方向へ第2のレンズ2が動くように、n=2回目のコントラストC2を演算した時の電流値If2にさらに微小電流量ΔIfを加え、電流値If3を第1のコイル74に供給する(ST202)。
【0059】
そして、前回と同様にこの位置で得られるコントラストC(n+1)を演算し(ST203)、コントラストC(n+1)と前回のコントラストCnとを比較する(ST204)。このST202〜ST204の動作を繰り返し、C(n+1)<Cnとなった場合、一つ前のコントラストCnの時の電流値Ifnとなるように微小電流量ΔIfを減らした電流値If(n+1)−ΔIfを第1のコイル74に供給し(ST205)、再びコントラストC(n+1)を演算する(ST206)。コントラストC(n+1)と前回のコントラストCnとを比較し(ST207)、再びC(n+1)≧Cnとなったところを合焦点とする。
【0060】
図11に示すように、コントラストが大きくなるように第2のレンズ2を合焦点に向けて、漸近させて行き最大値を求める、いわゆる「山登り制御」によって、焦点を求める。図11、図14においては、ST202〜ST204の動作を7回繰り返し、ST205〜ST209を行って、通り過ぎた合焦点に戻った過程を示している。
【0061】
また、1回目のコントラストC1に対して2回目のコントラストC2が、C2<C1となった場合、合焦点から離れる方向に第2のレンズ2が動いている可能性がある。この場合、ST205によって電流値を基に戻すとコントラストC(n+1)が少なくとも前回のコントラストCnと一致し、したがって、合焦点が求まったかのようになってしまう。この誤った認定を防止するため、計測回数nがn>1であるか判定する(ST208)。
【0062】
n>1の場合、少なくとも一度は、合焦点に向かって第2のレンズ2が移動したことであるので、これを持って合焦点を決定し(ST209)、第1のコイル74の電流値Ifを固定し、ST105へ移行する。また、n>1ではない、つまり、合焦点に向かって第2のレンズ2を一度も動かしていない場合、さらに第1のコイル74の電流Ifを微小電流量ΔIf減少させたIf(n+1)を第1のコイル74に供給する。この結果、第2のレンズ2が先ほどとは反対方向へ合焦点に向かって移動する。
【0063】
移動した位置のコントラストC(n+1)を演算し(ST211)、前回のコントラストCnとなる初回に図ったコントラストC1と比較する(ST212)。C(n+1)≧Cnである場合、ST202〜ST204を繰り返したのと同様に、ST210〜ST212を繰り返しす。途中で、C(n+1)<Cnとなった場合、電流値If(n+1)に微小電流量ΔIfを加えた値を第1のコイル74に供給し(ST213)、その位置におけるコントラストC(n+1)を再度演算する(ST214)。
【0064】
C(n+1)とCnとを比較し(ST215)、再びC(n+1)≧Cnに戻った所を合焦点として、第1のコイル74の電流値Ifを固定する(ST209)。そして、元の手順フローに戻り、ST105へ移行する。
【0065】
以上のように、本実施形態の撮像装置100は、焦点を合わせるべく第2のレンズ2を移動させるための駆動力、および光量を調整するべくシャッタ羽根61を回動させるための駆動力は、同じ磁石71に対する第1のコイル74と第2のコイル75,76の電流量の変化によって発生させている。したがって、部品点数がここに磁石を有する場合よりも少なく、装置としての全体の嵩が小さくなる。また、磁石71とともに磁気回路を構成するヨーク73も1つであることも装置の小型化に寄与している。
【0066】
本実施形態において、第1のコイル74に流れる電流の大きさを変化させて第2のレンズ2を光軸λに沿って変位させ、焦点を合わせるフォーカス動作を例に撮像装置100の動作を説明した。同じ機構を利用して、焦点距離を変更するズーム動作を行うことも可能である。この場合、ズーム調整のためのズームボタンの操作に基づき、システムコントローラ22は、第1のコイル74の電流量を変化させる。また、シャッタ羽根61を待機位置と挿入位置とに移動させるシャッタ動作は、シャッタ羽根61を2枚設け、第2のコイル75,76の電流量を段階的に変化させ、光束の断面積を段階的に変化させる絞りとしてもよい。
【0067】
シャッタ羽根61を待機位置に維持するために、線細工バネ62を用いた。同じ機能を果たすものとして、図8の状態に磁石71を引き付けるように、ヨーク73と離しかつ第2のホルダ12から光軸λに沿って磁石71と同じ範囲77に別の磁石または磁性体を配置する。この磁石または磁性体は、シャッタ羽根61を待機位置に保持しかつ第2のコイル75,76の動作に支障をきたさないよう設けられる。
【0068】
本発明に係る第2の実施形態の撮像装置100aは、図15から図16を参照して説明される。なお、第1の実施形態に記載の撮像装置100と同じ機能を有する構成については、同一の符号を付しその説明を省略する。また、撮像動作に係る主な流れは、第1の実施形態と同じであるので、図10から図14およびその説明を参照するものとして、ここでの説明を省略する。
【0069】
本実施形態の撮像装置100aは、光学系を構成する第1のレンズ1、第2のレンズ2、第3のレンズ3と、これらを個別に保持する第1のホルダ11、第2のホルダ12、第3のホルダ13と、シャフト4a,4bと、コイルバネ5a,5bと、シャッタ機構6と、駆動機構7と、撮像素子20とを備える。駆動機構7は、第1の磁石71と磁石ホルダ72と第1のヨーク73と第1のコイル74と第2のコイル75,76と第2の磁石81と磁石ホルダ82と第2のヨーク83と第3のコイル84とを備える。
【0070】
この内、第1の磁石71と磁石ホルダ72と第1のヨーク73と第2の磁石81と磁石ホルダ82と第2のヨーク83と第3のコイル84によって、第1のアクチュエータとしてのレンズ駆動機構7aを構成する。第1の磁石71と磁石ホルダ72と第2のコイル75,76と第1のヨーク73とによって、第2のアクチュエータとしてのシャッタ駆動機構7bを構成する。
【0071】
撮像装置100aは、2つの磁気回路を有していることが第1の実施形態と異なる。第1の磁気回路は、第1の磁石71と第1のヨーク73とで構成される。第2の磁気回路は、第2の磁石81と第2のヨーク83とで構成される。第2の磁石81は、磁極を第1の磁石71の磁極と反対に向き合うように配置され、磁石ホルダ82に固定される。磁石ホルダ82は、非磁性体である合成樹脂で形成されており、図16に示すように、第3のホルダ13に面したベースプレート60に基端が固定されている。ベースプレート60から一体に設けられていても良い。
【0072】
第2のヨーク83は、第1のヨーク73が固定されたのと同様に、基部83aと立ち上がり部83b,83cとを備える。第2のヨーク83は、磁性体の鋼板の両端をプレス加工で折曲げることで造られている。第2のヨーク83の基部83aは、第3のホルダ13に設けられた据付凹部13gに接着固定されている。立ち上がり部83b,83cは、第2の磁石81のN極およびS極にそれぞれ向き合う位置まで第3のホルダ13から第2のホルダ12に向かって延びている。この結果、第2の磁気回路の磁力線の流れは、矢印A81に示される向きに形成される。
【0073】
第3のコイル84は、第2の磁石81のN極が対峙する第2のヨーク83の立ち上がり部83bに捲きつけられている。したがって、第2の磁石81と第2のヨーク83の立ち上がり部83bとの間を横切る第3のコイル84の第1の部分84aは、光軸λを横切る方向に第2の磁気回路を横切る。
【0074】
図15に示すように第3のコイル84に矢印A11に示される方向の電流を流すと、磁界の向きと電流の向きに垂直な、光軸λに沿って第2のホルダ12から離れる方向の力f7を第3のコイル84の第1の部分84aが受ける。第3のコイル84は、第2のヨーク83を介して第3のホルダ13に固定されているので、第2の磁石81が反力f71を受ける。したがって、第2のホルダ12は、第1のホルダ11に接近する方向に移動する。第3のコイル84に流す電流の向きを矢印A12方向にすると、第3のコイル84の第1の部分84aに力f8が作用し、第2の磁石81に力f81が作用する。その結果、第2のホルダ12は、第3のホルダ13に接近する方向に移動する。
【0075】
このように、第3のコイル84は、通電されることにより、第2のホルダ12を光軸λに沿って移動させる力が生じる。つまり、第3のコイル84は、第1のコイル74と同様に、光学系の焦点またはズームを調整するフォーカスコイルとして機能するものであり、2つ目の第1のコイルとして機能する。つまり、撮像装置100aは、第1のコイル74を複数備えていることと同じことである。
【0076】
また、第2のコイル75,76を第2の磁石81と第3のコイル84との間に介在させないとともに、第2の磁石81が揺動しないので、第1のヨーク73の立ち上がり部73b,73cどうしの距離よりも狭く設けることができる。第2の磁石81と第2のヨーク83の立ち上がり部83b,83cとの距離が狭くなることによって、その間の磁界の強度が増す。
【0077】
磁石やコイルを複数設ける場合、各ユニットで発生する力のバランスが悪いと第2のホルダ12が傾く原因となる。そこで、磁界の強度が同じ大きさになるように、第2の磁石81の大きさを第1の磁石71よりも小さくしたり、磁化率の小さいものを用いたり、第1のヨーク73よりも透磁率の小さい材料を第2のヨーク83に適用したりする。あるいは、第3のコイル84の巻数を第1のコイル74の巻数よりも少なくする。このようにすることで、第1の磁気回路と第2の磁気回路とがそれぞれ発生する光軸λに沿う方向の力のバランスを取る。
【0078】
また、第2のホルダ12の動きを滑らかにするため、第1の磁石71と第2の磁石81とが受ける力の合力が光軸λを通るように、光軸λを挟んで第1の磁気回路と第2の磁気回路とを対称の位置に配置することが好ましい。
【0079】
以上のように構成された撮像装置100aの動作について説明する。撮像装置100aにおいて、光学系によって形成される像の焦点が撮像素子20の受光面上に正確に合うように調整する場合、システムコントローラ22は、第1のコイル74と第3のコイル84との電流の大きさをレンズ駆動回路24を介して制御する。
【0080】
第2のホルダ12を光軸λに沿う方向に動かすための駆動力が増加するので、光学系の焦点を合わせるための動作の応答性が向上する。また、駆動力が作用する箇所が2か所有り、それぞれ独立したコイルであるため、第2のホルダ12の姿勢を安定させやすい。磁石を複数備えている場合であっても、一部の磁石をレンズ駆動機構7aとシャッタ駆動機構7bとで共有しているので、部品点数が削減される。したがって、撮像装置100aは、小型化することができる。
【0081】
本発明に係る第3の実施形態の撮像装置100bは、図17を参照して説明する。なお、第1および第2の実施形態に示した撮像装置100,100aと同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。特に、本実施形態の撮像装置100bは、第2の実施形態に示した撮像装置100aと駆動機構7が異なり、その他の部分は、第1の実施形態の撮像装置100および第2の実施形態の撮像装置100aと同じであるので、重複する説明を省略する。
【0082】
第2の実施形態の撮像装置100aにおいて、第1の磁気回路を横切る第1のコイル74の第1の部分74aと第1のヨーク73を挟んで反対側の第2の部分74bと、第2の磁気回路を横切る第3のコイル84の第1の部分84aと第2のヨークを挟んで反対側の背側に位置する第2の部分84bとは、図16に示すように磁気回路の外にあり、駆動力の発生に寄与しない。
【0083】
これに対し、第1のヨーク73と第2のヨーク83とを一体に形成したヨーク78を図17に示すように設けている。このヨーク78は、基部78aから第2のホルダ12に向かって延びる3つの立ち上がり部78b,78c,78dを備えている。第1のコイル74は、中央の立ち上がり部78cに取り付ける。磁石81は、磁石ホルダ82aを貫通して両側に突出している。
【0084】
このように構成することにより、立ち上がり部78cと第1の磁石71との間にある第1のコイル74の第1の部分74aは、ヨーク78と第1の磁石71とで構成される第1の磁気回路を横切り、立ち上がり部78cと第2の磁石81との間にある第1のコイル74の第2の部分74bは、ヨーク78と第2の磁石81とで構成される第2の磁気回路を横切る。そして、第1のコイル74に電流を供給することにより、第1の磁石71と第2の磁石81との両方に作用して第2のホルダ12を光軸λに沿う方向へ駆動させる力を発生させることができる。第2の磁石81が、磁石ホルダ82aを貫通しているため、磁極を立ち上がり部78c,78dに接近させて配置できる。磁界強度が増すので、駆動機構7を小型化できる。
【0085】
このように、光軸λに沿って第2のホルダ12を移動させるために2つの磁石と作用するコイルを1つにすることができる。したがって、撮像装置100bの駆動機構7は、図15,図16に示したものよりもさらに小さくすることができる。
【0086】
なお、磁石ホルダ82aは、立ち上がり部87c,87dの間に第2の磁石81を保持できれば良いので、図16に示した形状でも良い。また、磁石ホルダ82を第2の実施形態の撮像装置100aに適用し、第2のヨーク83の立ち上がり部83a、83bの間に第2の磁石81を保持するように設けてもよい。
【0087】
本発明に係る第4の実施形態の撮像装置100cは、図18および図19を参照して説明される。なお、図18、図19において、第1から第3の実施形態に示した撮像装置100,100a,100bと同じ機能を有する構成は、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0088】
図18に示す撮像装置100cは、第1の実施形態の撮像装置100の構成に加えて、駆動機構7と鏡像に配置および形成された同じ構成の駆動機構9をさらに備える。また、撮像装置100cは、支持軸60cを中心とするシャッタ羽根61と鏡像の形状を有した絞羽根63を備える。
【0089】
絞羽根63は、支持軸60cにシャッタ羽根61と重ねて装着される。絞羽根63は、光学系の光軸λに沿って通過する光束を横切る挿入位置と、この光束から外れた待機位置との間を、シャッタ羽根61と平行に移動する。絞羽根63には、光束の断面積を絞るため開口である絞孔63sが開いている。
【0090】
絞羽根63は、シャッタ羽根61に重なって配置されていることを除いて、光軸λに直交する平面において、シャッタ羽根61と対称な形状をしている。シャッタ羽根61および絞羽根63がそれぞれ待機位置にある状態であっても、絞羽根63の先端63aは、シャッタ羽根61の回動先端部61aと重なり合った状態を維持している。
【0091】
シャッタ羽根61と絞羽根63とは、第2のホルダ12とベースプレート60との間に形成された空間に収まるように配置される。シャッタ羽根61と絞羽根63とをそれぞれ待機位置に保持する方向へ付勢する線細工バネ等の付勢手段が、第1の実施形態のように、シャッタ羽根61と絞羽根63とにそれぞれ設けられるとよい。
【0092】
駆動機構9は、磁石91、磁石ホルダ92、ヨーク93、第1のコイル94、第2のコイル95,96を備える。駆動機構9の各構成要素は、駆動機構7の磁石71、磁石ホルダ72、ヨーク73、第1のコイル74、第2のコイル75,76と全て鏡像に構成される。駆動機構7の磁石71とヨーク73とが第1の磁気回路を矢印A71に示す向きに構成することに対し、駆動機構9の磁石91とヨーク93とが第2の磁気回路を矢印A91に示す向きに構成する。
【0093】
磁石ホルダ92は、旋回軸92aとアーム92bとを有している。旋回軸92aは、ベースプレート60の取付孔60kに通され、抜け止めリング92cが取り付けられる。抜け止めリング92cは、取付孔60kに設けられたザグリ部60lに一部が潜り込んだ状態になる。アーム92bの先端92dは、ベースプレート60に設けられ得た挿通穴60mを通して、絞羽根63の係合孔63bと連結される。
【0094】
ヨーク93は、基部93aと、第2のホルダ12に向かって延びる立ち上がり部93b,93cとが磁性体の材料で一体に成形されている。磁石91は、図19に示す向きに磁極を向けて配置される。駆動機構9に設けられる第1のコイル94は、駆動機構7に設けられる第1のコイル74と同期させて通電される。
【0095】
駆動機構9の磁石91とヨーク93と第1のコイル94とは、駆動機構7の磁石71とヨーク73と第1のコイル74とともに、第1のアクチュエータとしてのレンズ駆動機構9aを構成する。磁石91とヨーク93と第2のコイル95,96とは、減光部材の一例である絞羽根63を動かす第2のアクチュエータとしての絞駆動機構9bを構成する。したがって、第1のコイル94は、第2のホルダ12を駆動するために通電されるフォーカスコイルとして機能し、第2のコイル95,96は、絞羽根63を駆動するために通電される絞コイルとして機能する。また、第2のコイル95,96の動きを制御する。
【0096】
第1のコイル94は、ヨーク93の立ち上がり部93bに捲きつけられている。磁石91と立ち上がり部93bとに挟まれて磁気回路を横切る第1の部分94aに電流が流れることによって、第2のホルダを光軸λに沿う方向に移動させる駆動力が発生する。第2のコイル95,96は、磁石91のN極と第1のコイル94との間に配置される。第2のコイル95,96の捲回中心軸は、磁石91が形成する磁力線に沿う方向へ向いている。第2のコイル95,96の一部である辺95a,96aは、第1のコイル94の捲回方向と直交する方向に磁気回路を横切る。辺95a,96aに流れる電流の向きが揃うように、第2のコイル95,96は、通電される。
【0097】
以上のように構成された撮像装置100cは、撮像素子20の受光面に光学系が形成する像の焦点を正確に調整する場合、第2のレンズ2を保持する第2のホルダ12を駆動するために、駆動機構7のレンズ駆動機構7aと駆動機構9のレンズ駆動機構9aとを連動させる。また、システムコントローラ22で検出された画像データの輝度が大きい場合、システムコントローラ22は、別途設けられる絞駆動回路を介して第2のコイル95,96に電流を流し絞羽根63を挿入位置に移動させる。
【0098】
駆動機構9の第1のコイル94に供給する電流の制御は、第1の実施形態に記載した駆動機構7の第1のコイル74に供給する電流の制御と同様であるので、ここでの説明を省略する。また、駆動機構9の第2のコイル95,96に供給する電流の制御は、第1の実施形態に記載した駆動機構7の第2のコイル75,76に供給する電流の制御と同様であるので、ここでの説明を省略する。
【0099】
ただし、絞羽根63は、操作スイッチが撮像動作を開始する信号を出力(ST106)したことに基づいて静止画像取込のための露光を開始(ST107)するまでに挿入位置に移動される。そして、絞羽根63は、シャッタコイルである第2のコイル75,76にクローズ電流Iscが供給され(ST109)たことによって、シャッタ羽根61が挿入位置に移動しきるまで、少なくとも挿入位置に保持される。
【0100】
撮像装置100cは、2組の駆動機構7,9にレンズ駆動機構7a,9aを備えており、これらを連動させて第2のホルダ12を駆動させるので、焦点を補正する動作の応答性が良い。また、駆動機構7の磁石71は、レンズ駆動機構7aとシャッタ駆動機構7bとで兼用され、駆動機構9の磁石91は、レンズ駆動機構9aと絞駆動機構9bとで兼用される。したがって、シャッタ羽根61、絞羽根63、第2のホルダ12をそれぞれ駆動させるために独立して駆動機構を設けることよりも、少ない部品点数で構成されるので、撮像装置100cが小型化される。
【0101】
なお、本実施形態の撮像装置100cは、減光部材としてシャッタ羽根61と絞羽根63との2種類を備えている。減光部材として、シャッタ羽根61と絞羽根63との組合せの他に、シャッタ羽根61とNDフィルタの組合せ、異なる口径の開口である絞孔を有した2種類の絞羽根の組合せであっても良い。また、シャッタ羽根61を複数枚で構成し、多段階に位置を制御することによって、絞りとシャッタとの両方の機能を兼ね備えさせても良い。
【図面の簡単な説明】
【0102】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の撮像装置を一部切欠いて示す斜視図。
【図2】図1に示した撮像装置の分解斜視図。
【図3】図1に示した撮像装置のシャッタ機構と駆動機構との分解斜視図。
【図4】図1に示した撮像装置の第2のホルダ、第3のホルダおよびシャッタ機構を並べた分解斜視図。
【図5】図4に示した撮像装置を撮像素子側から見た図。
【図6】図1に示した撮像装置を駆動機構側から見た斜視図。
【図7】図1に示した撮像装置の駆動機構側から見た側面図。
【図8】図7中のA−A線に沿って示す撮像装置のシャッタ羽根が待機位置にある状態の断面図。
【図9】図7中のA−A線に沿って示す撮像装置のシャッタ羽根が挿入位置にある状態の断面図。
【図10】図1に示した撮像装置のブロック図。
【図11】図10に示した撮像装置のシステムコントローラによって行われる焦点調整制御における第2レンズの移動量とこのとき撮像素子で得られる画像のコントラストとの関係を示す図。
【図12】図10に示した撮像装置の撮像動作のフローチャート。
【図13】図12に示したフローチャート中のフォーカス調整のフローチャート。
【図14】図10に示した撮像装置の撮像動作のタイムチャート。
【図15】本発明に係る第2の実施形態の撮像装置を示す分解斜視図。
【図16】図15に示した撮像装置を駆動機構側から見た側面図。
【図17】本発明に係る第3の実施形態の撮像装置を駆動機構側から見た側面図。
【図18】本発明に係る第4の実施形態の撮像装置を示す分解斜視図。
【図19】図18に示した撮像装置を駆動機構側から見た側面図。
【符号の説明】
【0103】
1…第1のレンズ、2…第2のレンズ、3…第3のレンズ、4a,4b…シャフト(スライド機構)、5a,5b…コイルバネ、6…シャッタ機構、7,9…駆動機構、7a,9a…レンズ駆動機構(第1のアクチュエータ)、7b…シャッタ駆動機構(第2のアクチュエータ)、9b…絞駆動機構(第2のアクチュエータ)、11…第1のホルダ、12…第2のホルダ、13…第3のホルダ、61…シャッタ羽根(減光部材)、62…線細工バネ、63…絞羽根(減光部材)、63s…絞孔(開口)、71…第1の磁石、72…磁石ホルダ、73…ヨーク、74…第1のコイル、74a…第1の部分(磁気回路を第1の方向に横切る部分)、75,76…第2のコイル、75a,76a…辺(磁気回路を第2の方向へ横切る部分)、78…ヨーク、81…第2の磁石、82…磁石ホルダ、83…第2のヨーク、84…第3のコイル(第1のコイル)、84a…一部(磁気回路を第1の方向へ横切る部分)、91…磁石、92…磁石ホルダ、93…ヨーク、94…第1のコイル、94a…第1の部分(磁気回路を第1の方向へ横切る部分)、95,96…第2のコイル、95a,96a…辺(磁気回路を第2の方向へ横切る部分)、100,100a,100b,100c…撮像装置、λ…光軸、P1…待機位置、P2…挿入位置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学系を構成する少なくとも1つのレンズと、
前記レンズを保持するホルダと、
前記レンズの光軸に沿って前記ホルダを移動可能に支持するスライド機構と、
前記光学系を前記光軸に沿って通過する光束の光量を調整する減光部材と、
前記ホルダに移動可能に支持されて前記減光部材と連結される磁石と、
前記磁石を前記ホルダとともに前記光軸に沿って移動させる方向に磁界を発生する第1のコイルと、
前記磁石を前記ホルダに対して動かす方向に磁界を発生する第2のコイルと、
を備え、
前記光軸に沿って前記ホルダを駆動する第1のアクチュエータは、前記磁石と前記第1のコイルとで構成し、
前記光束を横切る挿入位置と前記光束から外れた待機位置とに前記減光部材を移動させる第2のアクチュエータは、前記磁石と前記第2のコイルとで構成し、
ことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記減光部材は、前記光束を遮断するシャッタ羽根であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記減光部材は、前記光束の断面積を変化させる開口を有した絞羽根であることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記減光部材は、前記光束を横切る位置に振込まれるNDフィルタであることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記減光部材は、異なる役割を果たす2種類設けられ、
前記第2のアクチュエータは、2種類の前記減光部材を独立して駆動するために各々の前記減光部材に対応して2組設けられ、
前記第1のアクチュエータは、2組の前記第2のアクチュエータにそれぞれ設けられる前記磁石に対し、発生する磁界を作用させて前記ホルダを前記光軸に沿って変位させる前記第1のコイルを少なくとも1つ有する
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項6】
2種類の前記減光部材は、シャッタ羽根と絞羽根であることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
2種類の前記減光部材は、シャッタ羽根とNDフィルタであることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項8】
2種類の前記減光部材は、互に異なる口径の絞孔が設けられた2種類の絞羽根であることを特徴とする請求項5に記載の撮像装置。
【請求項9】
前記ホルダに移動可能に支持される第1の磁石とは別に前記ホルダに固定される第2の磁石を設け、
前記第1のコイルは、前記第1の磁石と前記第2の磁石との両方に作用して前記ホルダを前記第1の磁石と前記第2の磁石とともに前記光軸に沿って変位させる磁界を発生することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項10】
前記ホルダは、前記第1のコイルが通電されていない状態で、前記光学系の焦点を無限遠に設定するパンフォーカス位置に保持されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項11】
前記減光部材は、前記第2のコイルが通電されていない状態で、前記光束から外れた待機位置に保持されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項12】
前記磁石と磁気回路を構成するヨークをさらに備え、
前記光軸に沿って前記ホルダとともに前記磁石を移動させる方向に前記第1のコイルの一部が前記磁気回路を横切って配置され、
前記ホルダに対して前記磁石を移動させる方向に前記第2のコイルの一部が前記磁気回路を横切りかつ前記第1のコイルの前記一部と直交する方向へ配置されることを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項13】
前記ホルダを前記光軸に沿って動かすことによって焦点を補正することを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項14】
前記ホルダを前記光軸に沿って動かすことによって焦点距離を変化させることを特徴とする請求項1から請求項12のいずれか1項に記載の撮像装置。
【請求項15】
光学系を構成する少なくとも1つのレンズと、
前記レンズを保持するホルダと、
前記レンズの光軸に沿って前記ホルダを移動可能に支持するスライド機構と、
前記光学系を前記光軸に沿って通過する光束の光量を調整する減光部材と、
前記ホルダに移動可能に支持されて前記減光部材と連結される磁石と、
前記磁石と磁気回路を構成するヨークと、
前記磁気回路を第1の方向に横切る部分を有し通電されることで前記磁石を前記ホルダとともに前記光軸に沿って移動させる第1のコイルと、
前記第1の方向と直交する第2の方向に前記磁気回路を横切る部分を有し通電されることで前記磁石を前記ホルダに対して移動させる第2のコイルと、
を備え、
前記レンズの光軸に沿って前記ホルダを駆動する第1のアクチュエータは、前記磁石と前記第1のコイルとで構成し、
前記光束を横切る挿入位置と前記光束から外れた待機位置とに前記減光部材を移動させる第2のアクチュエータは、前記磁石と前記第2のコイルとで構成する
ことを特徴とする撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2006−322967(P2006−322967A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−143666(P2005−143666)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【出願人】(504371974)オリンパスイメージング株式会社 (2,647)
【Fターム(参考)】