説明

撮像装置

【課題】小型化と撮像面でのテレセントリック性とを満足しつつ、撮影時における光量分布の非対称性を光学的に改善することができるようにする。
【解決手段】複数のレンズエレメントG1,G2,G3を有する撮像レンズ1と、撮像レンズ1における光束を制限する光学的開口絞り2と、撮像レンズ1によって形成された被写体像に応じた電気信号を出力する撮像素子5とを備える。また、第1のレンズエレメントG1を挟んで光学的開口絞り2とは光軸10上で異なる位置に配置されたシャッタ3と、撮像レンズ1の光路に対して挿脱可能に構成された光量むら補正手段としてのNDフィルタ4とを備える。NDフィルタ4は、シャッタ3の開閉動作に応じて生ずる撮像素子5の撮像面での光量むらを補正するために、シャッタ3の閉じ動作に先立って露光時に撮像レンズ1の光路中に挿入される。NDフィルタ4は、光量むらに対応する濃度分布を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等の撮像素子を用いた撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
CCDやCMOS等の撮像素子は近年、非常に小型化および高画素化が進んでいる。そのため、撮像機器本体、ならびにそれに適用される撮像光学系にも小型化が求められている。特に、携帯用端末機器では撮像光学系における全長の短縮化と低背化(光軸に直交する径方向の小型化)が強く求められる。撮像光学系の小型化を図るためには、シャッタ機構を撮像レンズ系の内部に配置することが好ましい。シャッタ機構の種類としては、1枚のシャッタ羽根を往復運動させることにより露光開口を開閉させるいわゆる1枚羽根タイプのものや、露光開口を挟んで2枚のシャッタ羽根を互いに相反する方向に往復運動させるいわゆる2枚羽根タイプのものがある。また、露光開口は通常円形であるため、もっと多く(例えば5枚)のシャッタ羽根を用いて円形に近い開口を保ったまま開閉動作をさせるタイプもある。しかしながら、携帯用端末機器のように小型化および低コスト化が要求されるものでは、1枚羽根タイプや2枚羽根タイプを用いることが多い。
【0003】
特許文献1には、撮像レンズ系の内部に配置されたシャッタ装置の構成例が記載されている。特許文献1には、光束を完全に遮光するシャッタ羽根と、半透明のNDフィルタ(Neutral Density)羽根とを有するシャッタ装置が記載されている。特許文献1におけるNDフィルタ羽根は、全体的な光量を調節するために用いられるものであり、必要な露光量を得るために選択的に用いられるものである。
【特許文献1】特開2005−274856号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、撮像光学系では、小型化のほかにもテレセントリック性、すなわち、撮像素子への主光線の入射角度が光軸に対して平行に近く(撮像面における入射角度が撮像面の法線に対してゼロに近く)なるようにすることも求められている。テレセントリック性を確保するためには、光学的開口絞りをなるべく物体側に配置することが有利である。特にレンズ枚数の少ない撮像レンズでは、最も物体側に光学的開口絞りを配置することが好ましい。しかしながら、上述したように小型化のためにシャッタ機構は撮像レンズ系の内部に配置することが好ましく、また、光量を均一に絞るために通常、シャッタ羽根は光学的開口絞りの近傍に配置することが好ましいとされているため、小型化とテレセントリック性とを同時に満足することは困難である。例えば、シャッタ羽根位置を撮像レンズ系の内部に配置した状態で、光学的開口絞りをシャッタ羽根位置よりも物体側にシフトした位置に持ってきた場合、テレセントリック性は良化することができるが、撮像面において非対称な光量ばらつき(光量むら)が生じてしまう。
【0005】
図16は、シャッタ羽根を光学的開口絞りの近傍に配置した場合における撮像面での光量分布の一例を示している。この場合、周辺部での光量分布は四隅で同じである。一方、図17は、光学的開口絞りをシャッタ羽根よりも物体側に配置した場合における撮像面での光量分布の一例を示している。なお、図17では、1枚のシャッタ羽根が図17の右上の領域から閉じ始め、左下の領域で閉じ終わるようなシャッタ機構を想定している。この場合、光軸上でシャッタ羽根の位置と光学的開口絞りの位置とに違いがあり、かつ、露光開口面において右上の領域と左下の領域とでシャッタ羽根が閉じるタイミングに差があることにより、撮像面において光量分布に非対称性が生ずる。すなわち、撮像面において、シャッタ羽根が閉じ終わる左下の領域は、シャッタ羽根が閉じ始める右上の領域に比べて露光時間が相対的に長くなるため露光量が多くなる。このような非対称性は、多数のシャッタ羽根を用いて円形に近い露光開口を保ったまま開閉動作をするような場合には生じにくく、1枚羽根のときに生じやすい。このような光量分布の非対称性を解決する手段として、従来、光学的な手段ではなく、画像処理によって解決することが知られている。しかしながら、画像処理による手法では、画像処理用の演算装置に負荷が掛かるため処理に時間的が掛かり、また電力を余計に消費するという問題がある。また、特許文献1には、このような光量むらを解決する手段については記載されていない。
【0006】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、小型化と撮像面でのテレセントリック性とを満足しつつ、撮影時における光量分布の非対称性を光学的に改善することができるようにした撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明による撮像装置は、複数のレンズエレメントを有する撮像レンズと、撮像レンズにおける光束を制限する光学的開口絞りと、撮像レンズによって形成された被写体像に応じた電気信号を出力する撮像素子と、1つ以上のレンズエレメントを挟んで光学的開口絞りとは光軸上で異なる位置に配置され、露光時に撮像レンズの光路中で開閉動作するシャッタと、撮像レンズの光路に対して挿脱可能に構成されると共に、シャッタの開閉動作に応じて生ずる撮像素子の撮像面での光量むらを補正するために、露光時に撮像レンズの光路中に挿入される光量むら補正手段とを備えたものである。
【0008】
本発明による撮像装置では、光量むら補正手段が露光時に撮像レンズの光路中に挿入される。これにより、テレセントリック性を確保するために光学的開口絞りをなるべく物体側に配置すると共に、小型化のためにシャッタを光学的開口絞りとは光軸上で異なる位置に配置したとしても、光量むら補正手段によって、シャッタの開閉動作に応じて生ずる撮像面での光量むらが補正される。これにより、小型化と撮像面でのテレセントリック性とを満足しつつ、撮影時における光量分布の非対称性が光学的に改善される。
【0009】
本発明による撮像装置において、光学的開口絞りが撮像レンズの最も物体側に配置され、シャッタが、1つ以上のレンズエレメントを挟んで光学的開口絞りに対して像側に配置されていても良い。この構成の場合、光学的開口絞りが撮像レンズの最も物体側に配置されていることで、テレセントリック性の確保に有利となる。また、シャッタが撮像レンズの内部に配置されるので、小型化にも有利となる。
【0010】
本発明による撮像装置において、光量むら補正手段は例えば、光量むらに対応する濃度分布を有するNDフィルタで構成することができる。この構成の場合において、NDフィルタは、シャッタが閉じ始める領域から閉じ終わる領域に向かって濃度が濃くなる濃度分布を有していることが好ましい。また、光量むら補正手段として、互いに濃度分布の異なるNDフィルタを複数有し、撮影条件に応じて、複数のNDフィルタが選択的に使用されるようにしても良い。
【0011】
また、本発明による撮像装置において、光量むら補正手段が、露光時に撮像レンズの光路の一部を遮光する遮光板であっても良い。この構成の場合において、光量むら補正手段として、互いに遮光領域の大きさの異なる遮光板を複数有し、撮影条件に応じて、複数の遮光板が選択的に使用されるようにしても良い。もしくは、遮光板の光路に対する挿入量が調整可能に構成され、撮影条件に応じて遮光板の挿入量が変化するようにように構成されていても良い。
【発明の効果】
【0012】
本発明の撮像装置によれば、撮像レンズの光路に対して挿脱可能に構成された光量むら補正手段を備え、その光量むら補正手段を露光時に撮像レンズの光路中に挿入するようにしたので、小型化と撮像面でのテレセントリック性とを満足しつつ、撮影時における光量分布の非対称性を光学的に改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
[第1の実施の形態]
【0014】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示している。本実施の形態に係る撮像装置は、例えばカメラ付き携帯電話機やデジタルスチルカメラ等に用いることができる。この撮像装置は、複数のレンズエレメントG1,G2,G3を有する撮像レンズ1と、撮像レンズ1における光束を制限する光学的開口絞り2と、露光時に撮像レンズ1の光路中で開閉動作するシャッタ3と、撮像レンズ1の光路に対して挿脱可能に構成された光量むら補正手段としてのNDフィルタ4と、撮像レンズ1によって形成された被写体像に応じた電気信号(撮像信号)を出力する撮像素子5とを備えている。撮像素子5は、CCDやCMOS等で構成されている。
【0015】
この撮像装置はまた、シャッタ3を開閉駆動するシャッタ駆動部11と、NDフィルタ4を挿脱駆動するフィルタ駆動部12と、撮像素子5を電気的に駆動する撮像素子駆動部13と、撮像素子5からの撮像信号に各種の画像処理を施す信号処理回路14と、操作部15と、これらの回路ブロックを制御する制御部16とを備えている。そのほか、図示しないが、信号処理回路14を経た後の画像データを保存する画像メモリや、撮影時の画像をモニタリング等するための表示部(例えば液晶モニタ)などを備えている。操作部15は、撮影時に撮影開始を指示する撮影スイッチ(シャッタボタン)や、撮影時における露光量(Fナンバー)などの撮影条件を指示する調整スイッチを含んでいる。制御部16は、CPU(Central Processing Uunit)を含んで構成されている。
【0016】
撮像レンズ1は、光軸10に沿って物体側から順に、第1レンズエレメントG1と、第2レンズエレメントG2と、第3レンズエレメントG3とを有している。ただし、撮像レンズ1は2または4以上のレンズエレメントで構成されていても良い。また撮像レンズ1は、単焦点レンズであってもズームレンズであっても良い。
【0017】
光学的開口絞り2とシャッタ3は、光軸10上で異なる位置に配置されている。この場合において、光学的開口絞り2は、撮像面でのテレセントリック性を確保するために、撮像レンズ1においてなるべく物体側に配置されていることが好ましい。一方、シャッタ3は、小型化を図るために撮像レンズ1の内部(レンズエレメント間)に配置されていることが好ましい。図1の構成例では光学的開口絞り2を撮像レンズ1の最も物体側(第1レンズエレメントG1の前側)に配置し、シャッタ3を第1レンズエレメントG1と第2レンズエレメントG2との間に配置している。これにより、シャッタ3が、第1レンズエレメントG1を挟んで光学的開口絞り2に対して像側に配置されている。なお、光学的開口絞り2とシャッタ3との配置は、図1の構成例に限られるものではなく、撮像レンズ1の構成に応じて他の配置であっても良い。例えばシャッタ3が、第2レンズエレメントG2と第3レンズエレメントG3との間に配置され、2つのレンズエレメントG1,G2を挟んで光学的開口絞り2に対して像側に配置されていても良い。
【0018】
光学的開口絞り2は、開口の大きさが固定の固定絞りであっても良いし、開口の大きさが変化する可変絞りであっても良い。光学的開口絞り2を可変絞りにすることにより、絞り径を変えてFナンバーの調整を行うことができる。
【0019】
シャッタ3は、例えば図4に示したように1枚のシャッタ羽根31を、回動軸32を中心に回転往復運動させることにより露光開口30を開閉させる1枚羽根タイプのもので構成されている。図4の構成例では、シャッタ羽根31の露光開口30側の部分33が直線状となっている。なお、図4ではシャッタ羽根31の回動軸32を左上にしているが、この回動軸32の位置はどこにあっても良い。このようなシャッタ羽根31の場合、回動軸32が左上にあり、時計回りに閉じ始めるものとすると、露光開口30において光束が直線状に、右上の領域から左下の領域に斜めに遮光されて行く。この場合、撮像面において例えば図17に示したような非対称な光量むらが生じてしまう。
【0020】
NDフィルタ4は、このようなシャッタ3の開閉動作に応じて生ずる撮像面での光量むらを補正するために、シャッタ3の閉じ動作に先立って、露光時に撮像レンズ1の光路中に挿入されるようになっている。なお、図1の構成例では、NDフィルタ4を撮像レンズ1の最も像側にある第3レンズエレメントG3と面撮像素子5との間に配置しているが、NDフィルタ4の配置位置は、これに限られるものではない。例えば図2に示したように撮像レンズ1の最も物体側(第1レンズエレメントG1の前側)に配置しても良い。また、撮像レンズ1の内部(レンズエレメント間)に配置しても良い。例えば図3に示したように、第1レンズエレメントG1と第2レンズエレメントG2との間に配置しても良い。ただし、撮像レンズ1を通過する光束は、像面側に行くほど中心部の光束と周辺部の光束とが分離し、各光束が細くなる傾向にあるため、NDフィルタ4をなるべく像面側に配置した方が、撮像面において細分化した領域ごとの細かな光量調整が容易となる。
【0021】
NDフィルタ4は、例えば図5に示したように、撮像面の有効エリアに対応する四角形状を成し、支持枠41に嵌め込まれて一体化されている。NDフィルタ4は、支持枠41の回動軸42を中心に回転往復運動させることにより、撮像レンズ1の光路に対して挿脱可能となっている。なお、図5では、NDフィルタ4の回動軸42を右下にしているが、この回動軸42の位置はどこにあっても良い。
【0022】
NDフィルタ4は、シャッタ羽根31の移動に応じて生ずる光量むらに対応する濃度分布を有している。図6は、その濃度分布の一例を示している。なお、図6に示した数値は、値が大きいほど濃度が濃いことを示す。シャッタ羽根31が図4に示した構成であると、図17に示したように、撮像面においてシャッタ羽根31が閉じ終わる左下の領域の方が、シャッタ羽根31が閉じ始める右上の領域に比べて露光量が多くなる。これに対応して、NDフィルタ4は、シャッタ羽根31が閉じ始める右上の領域から閉じ終わる左下の領域に向かって濃度が次第に濃くなる濃度分布を有している。このような濃度分布のNDフィルタ4をシャッタ羽根31の閉じ動作に先立って光路中に挿入することで、撮像面において全体的に光量分布が一様になるようにしている。なお、NDフィルタ4の濃度分布は、図6に示したようにシャッタ羽根31の移動(回旋)軌跡に対応したものであることが望ましいが、製造性を考慮し、単純なグラデーションで近似しても良い。図7に、図6の濃度分布を単純化して構成されたNDフィルタ4Aの一例を示す。図7のような単純なグラデーションで近似しても、図6のNDフィルタ4とほぼ同様の効果を得ることができる。
【0023】
なお、NDフィルタ4の濃度分布は図6および図7に示したものに限らず、シャッタ3の構成に応じて種々のものが考えられる。例えば、図8に示したように露光開口30を横切る部分34が曲線状となっているシャッタ羽根31Aの場合、NDフィルタ4の濃度分布もそれに対応したものにすることが望ましい。図9に、図8のシャッタ羽根31Aに対応した濃度分布を有するNDフィルタ4Bの一例を示す。NDフィルタ4Bでは、曲線状の形状を有するシャッタ羽根31Aに対応して濃度分布も曲線状にしている。
【0024】
また、撮影条件の違いによってもNDフィルタ4の濃度分布を変えた方が好ましい場合が考えられる。この場合、互いに濃度分布の異なるNDフィルタ4を複数有し、撮影条件に応じて、複数のNDフィルタ4を選択的に使用するようにしても良い。例えばFナンバーやシャッタスピード等の撮影条件の違いに応じた最適な濃度分布を有するNDフィルタ4を複数用意し、それらを選択的に使用するようにしても良い。
【0025】
次に、以上のように構成された撮像装置の動作を説明する。
この撮像装置は、通常の状態では、制御部16の制御により、光学的開口絞り2およびシャッタ3は開状態とされ、また、NDフィルタ4も光路から外れた状態とされている。この状態で、撮像レンズ1によって結像された被写体像が撮像素子5に入射すると、撮像素子駆動部13からのタイミングパルスに応じて撮像素子5の撮像信号が順次読み出される。撮像信号は、制御部16の制御により信号処理回路14で所定の画像処理を施された後、図示しない表示部に表示される。撮影者は、表示部に表示された画像を見て、操作部15の調整スイッチを操作してあらかじめ撮影条件(Fナンバー等)を設定する。撮影条件を設定したら、撮影者は操作部15の撮影スイッチをオンして撮影開始を指示する。
【0026】
図10は、露光時(撮影時)の動作タイミングを示している。図10において縦軸は光量、横軸は時間を示している。図10において斜線部分が撮影時の総露光量となる。時刻T1で撮影スイッチがオンされると、制御部16はフィルタ駆動部12を制御してNDフィルタ4を光路中に挿入する(時刻T2)。その後、撮像素子5において信号電荷の蓄積を開始(露光開始)する(時刻T3)。あらかじめ設定された所定期間経過後、制御部16がシャッタ駆動部11を制御してシャッタ3の閉じ動作を開始する(時刻T4)。シャッタ3によって露光開口が完全に閉じられた時点で露光は終了する(時刻T5)。すなわち、時刻T3〜時刻T4はシャッタの開放状態、時刻T4〜時刻T5でシャッタの閉じ動作が行われる。そして、制御部16の制御により、撮像素子5において時刻T3〜時刻T5までに蓄積された信号電荷が撮像信号として読み出され、信号処理回路14で所定の画像処理を施された後、図示しない画像メモリに撮影データとして記録される。露光終了後、シャッタ3は再び開状態となり、NDフィルタ4は再び光路から外れた状態となるように制御される。また、撮像素子5における信号電荷がリフレッシュされる。なお、露光期間は、例えば撮影者による撮影条件のマニュアル指定もしくは装置側での自動露光制御により決定される。このようにシャッタ3の閉じ動作に先立って、光量むら補正用のNDフィルタ4が挿入され、露光が行われる。これにより、撮像面における光量分布の非対称性が緩和される。
【0027】
以上説明したように、本実施の形態に係る撮像装置によれば、光学的開口絞り2を最も物体側に配置するようにしたので、テレセントリック性の確保が容易となる。また、シャッタ3を撮像レンズ1のレンズエレメント間に配置しているので、小型化が容易となる。さらに、不均一な濃度分布を有するNDフィルタ4を光量むら補正手段として露光時に撮像レンズ1の光路中に挿入するようにしたので、光軸10上で光学的開口絞り2とシャッタ3との配置位置が異なること、およびシャッタ3の開閉機構が1枚羽根タイプという単純な機構であることに起因する光量むらを補正することができる。これらにより、小型化と撮像面でのテレセントリック性とを満足しつつ、撮影時における光量分布の非対称性を光学的に改善することができる。
[第2の実施の形態]
【0028】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置について説明する。なお、上記第1の実施の形態に係る撮像装置と実質的に同一の構成部分には同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0029】
図11は、本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の構成例を示している。上記第1の実施の形態に係る撮像装置では、光量むら補正手段としてのNDフィルタ4を備えていたが、本実施の形態に係る撮像装置は、NDフィルタ4に代えて遮光板6を備えている。また、フィルタ駆動部12に代えて遮光板駆動部17を備えている。その他の構成は、図1の構成と同様である。
【0030】
遮光板6は、NDフィルタ4と同様、シャッタ3の開閉動作に応じて生ずる撮像面での光量むらを補正するために、シャッタ3の閉じ動作に先立って、露光時に撮像レンズ1の光路中に挿入されるようになっている。遮光板6は、例えば図13に示したように、撮像面の有効エリアの一部を遮光する遮光エリア6Aを有している。遮光板6は、その回動軸60を中心に回転往復運動させることにより、撮像レンズ1の光路に対して挿脱可能となっている。
【0031】
遮光板6は、シャッタ羽根31の移動に応じて生ずる光量むらに対応する遮光エリア6Aを有している。シャッタ羽根31が図4に示した構成であると、図17に示したように、撮像面においてシャッタ羽根31が閉じ終わる左下の領域の方が、シャッタ羽根31が閉じ始める右上の領域に比べて露光量が多くなる。これに対応して、遮光板6は、露光量が多くなる左下の領域を遮光するようになっている。このような遮光板6をシャッタ羽根31の閉じ動作に先立って光路中に挿入することで、撮像面において左下の領域と右上の領域とにおける光量分布の差が小さくなり、不均一性が軽減される。
【0032】
なお、図13では、遮光板6の回動軸60を右下にしている。これは、シャッタ羽根31の回動軸32が図4に示したように左上にあり、時計回りに閉じる機構であるものとすると、遮光板6の回動軸60の回動軸60をそれとは対称的な右下の位置にすることで、露光量の多くなる左下部分を遮光させやすいからである。ただし、光量の多くなる部分を遮光することができるような機構を実現できるのであれば、回動軸60の位置はどこにあっても良い。また、図11の構成例では、遮光板6を撮像レンズ1の第1レンズエレメントG1と第2レンズエレメントG2との間に配置しているが、遮光板6の配置位置は、これに限られるものではない。例えば図12に示したように撮像レンズ1の最も物体側(第1レンズエレメントG1の前側)に配置しても良い。ただし、遮光板6を像面近傍に配置するのは好ましくない。遮光板6はNDフィルタ4とは異なり、局所的に光束を完全に遮断するが、像面近傍では中心部の光束と周辺部の光束とが分離し、各光束が細くなっているために、撮像面の有効エリアを局所的に完全に遮光する形となり、露光量を均一に調整するのが難しくなるためである。このため、遮光板6を配置する位置は、光学的開口絞り2の近傍が望ましい。光学的開口絞り2の近傍であれば、撮像面の有効エリアが局所的に完全に遮光されてしまうようなことはない。
【0033】
ここで、遮光板6による遮光量(遮光エリア6Aの大きさ)は、撮影条件の違い(光学的開口絞り2の絞り径、Fナンバー)に応じて変えた方が好ましい。絞り径が小さい場合には、絞り径が大きい場合に比べて遮光量は小さい方が良い。このため、遮光板6の光路に対する挿入量が調整可能に構成されていることが好ましい。これは、遮光板6の回転移動量を制御することで実現できる。
【0034】
また、互いに遮光エリア6Aの大きさの異なる遮光板6を複数有し、撮影条件に応じて、複数の遮光板6を選択的に使用するようにしても良い。例えば図14に示したように、大きめの遮光エリア6Bを有する遮光板61を用意し、図13に示した小さめの遮光エリア6Aを有する遮光板6と切り替えて使用するようにしても良い。例えば絞り径が小さい場合には小さい遮光板6を使用し、絞り径が大きい場合には大きい遮光板61を使用すれば良い。用意する遮光板の種類を増やすことで撮影条件に応じた細かい制御ができる。
【0035】
次に、以上のように構成された撮像装置の動作を説明する。
この撮像装置の撮影動作は、NDフィルタ4の駆動制御が遮光板6の駆動制御に変わるだけで、基本的に上記第1の実施の形態に係る撮像装置と同様である。すなわち、通常の状態では、制御部16の制御により、光学的開口絞り2およびシャッタ3は開状態とされ、また、遮光板61も光路から外れた状態とされている。この状態で、撮像レンズ1によって結像された被写体像が撮像素子5に入射すると、撮像素子駆動部13からのタイミングパルスに応じて撮像素子5の撮像信号が順次読み出される。撮像信号は、制御部16の制御により信号処理回路14で所定の画像処理を施された後、図示しない表示部に表示される。撮影者は、表示部に表示された画像を見て、操作部15の調整スイッチを操作してあらかじめ撮影条件(Fナンバー等)を設定する。撮影条件を設定したら、撮影者は操作部15の撮影スイッチをオンして撮影開始を指示する。
【0036】
図15は、露光時(撮影時)の動作タイミングを示している。図15において縦軸は光量、横軸は時間を示している。図15において斜線部分が撮影時の総露光量となる。時刻T1で撮影スイッチがオンされると、制御部16は遮光板駆動部17を制御して遮光板6を光路中に挿入する(時刻T2)。その後、撮像素子5において信号電荷の蓄積を開始(露光開始)する(時刻T3)。あらかじめ設定された所定期間経過後、制御部16がシャッタ駆動部11を制御してシャッタ3の閉じ動作を開始する(時刻T4)。シャッタ3によって露光開口が完全に閉じられた時点で露光は終了する(時刻T5)。露光終了後、シャッタ3は再び開状態となり、遮光板6は再び光路から外れた状態となるように制御される。このようにシャッタ3の閉じ動作に先立って、光量むら補正用の遮光板6が挿入され、露光が行われる。これにより、撮像面における光量分布の非対称性が緩和される。
【0037】
以上説明したように、本実施の形態に係る撮像装置によれば、露光量の多くなる部分を遮光する遮光板6を光量むら補正手段として露光時に撮像レンズ1の光路中に挿入するようにしたので、光軸10上で光学的開口絞り2とシャッタ3との配置位置が異なること、およびシャッタ3の開閉機構が1枚羽根タイプという単純な機構であることに起因する光量むらを補正することができる。本実施の形態では、NDフィルタ4を用いる場合に比べて細かい光量補正はできなくなるが、NDフィルタ4のような濃度部分の加工精度がいらないので、低コストで実施できる。
【0038】
なお、本発明は、上記各実施の形態に限定されず種々の変形実施が可能である。例えば上記各実施の形態では、シャッタ3として1枚羽根タイプのものを使用した場合の光量むらを補正する場合を例に説明したが、その他のタイプ(2枚羽根タイプ等)のシャッタにも適用可能である。ただし、1枚羽根タイプの方が光量むらが発生しやすく、本発明による光量むらの補正効果は大きい。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】NDフィルタの配置位置の他の例を示す構成図である。
【図3】NDフィルタの配置位置のさらに他の例を示す構成図である。
【図4】シャッタの構成例を示す平面図である。
【図5】NDフィルタの構成例を示す平面図である。
【図6】図4のシャッタの構成に対応したNDフィルタの濃度分布の第1の例を示す説明図である。
【図7】NDフィルタの濃度分布の第2の例を示す説明図である。
【図8】シャッタの他の構成例を示す平面図である。
【図9】図8のシャッタの構成に対応したNDフィルタの濃度分布の一例を示す説明図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る撮像装置における露光動作を示す説明図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置の全体構成を示す構成図である。
【図12】遮光板の配置位置の他の例を示す構成図である。
【図13】遮光板の第1の構成例を示す平面図である。
【図14】遮光板の第2の構成例を示す平面図である。
【図15】本発明の第2の実施の形態に係る撮像装置における露光動作を示す説明図である。
【図16】対称的な光量分布の一例を示す説明図である。
【図17】非対称な光量分布の一例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
G1…第1レンズエレメント、G2…第2レンズエレメント、G3…第3レンズエレメント、1…撮像レンズ、2…光学的開口絞り、3…シャッタ、4,4A,4B…NDフィルタ、5…撮像素子、6,61…遮光板、6A,6B…遮光エリア、10…光軸、11…シャッタ駆動部、12…フィルタ駆動部、13…撮像素子駆動部、14…信号処理回路、15…操作部、16…制御部、17…遮光板駆動部、31,31A…シャッタ羽根、32,42,60…回動軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズエレメントを有する撮像レンズと、
前記撮像レンズにおける光束を制限する光学的開口絞りと、
前記撮像レンズによって形成された被写体像に応じた電気信号を出力する撮像素子と、
前記光学的開口絞りとは光軸上で異なる位置に配置され、露光時に前記撮像レンズの光路中で開閉動作するシャッタと、
前記撮像レンズの光路に対して挿脱可能に構成されると共に、前記シャッタの開閉動作に応じて生ずる前記撮像素子の撮像面での光量むらを補正するために、露光時に前記撮像レンズの光路中に挿入される光量むら補正手段と
を備えたことを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記光学的開口絞りが前記撮像レンズの最も物体側に配置され、
前記シャッタが、1つ以上の前記レンズエレメントを挟んで前記光学的開口絞りに対して像側に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記光量むら補正手段は、前記光量むらに対応する濃度分布を有するNDフィルタである
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記NDフィルタは、前記シャッタが閉じ始める領域から閉じ終わる領域に向かって濃度が濃くなる濃度分布を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記光量むら補正手段として、互いに濃度分布の異なる前記NDフィルタを複数有し、
撮影条件に応じて、前記複数のNDフィルタが選択的に使用されるようにした
ことを特徴とする請求項3または4に記載の撮像装置。
【請求項6】
前記光量むら補正手段は、露光時に前記撮像レンズの光路の一部を遮光する遮光板である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記光量むら補正手段として、互いに遮光領域の大きさの異なる前記遮光板を複数有し、
撮影条件に応じて、前記複数の遮光板が選択的に使用されるようにした
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。
【請求項8】
前記遮光板の前記光路に対する挿入量が調整可能に構成され、
撮影条件に応じて前記遮光板の挿入量が変化するように構成されている
ことを特徴とする請求項6に記載の撮像装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2007−256565(P2007−256565A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−80194(P2006−80194)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000005430)フジノン株式会社 (2,231)
【Fターム(参考)】