説明

撮像装置

【課題】撮像光学系において、フォーカス又はズーム機能を含めて反射光学系で構成することにより、従来の結像レンズ光学系において発生していたフレアやゴーストを防ぎ、ダイナミックレンジの範囲を拡大することを可能にした撮像装置を提供すると共に、フォーカス又はズーム動作に伴う画像の横ずれを最小限に抑制すること。
【解決手段】少なくとも、撮像光学系2と、撮像光学系2により被写体の光学像を結像する撮像素子8とを備える撮像装置において、撮像光学系2は、その結像光学系において少なくとも1つを反射ミラー9で構成すると共に、反射ミラー9の1つがフォーカス又はズーム動作の際に入射中心光線と射出中心光線のなす角の2等分線と平行に移動することを特徴とする撮像装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載、監視、工業用等において、被写体を撮像する撮像装置に係わり、特に、撮像する被写体画像内の光量差が大きいために発生する、フレアやゴーストの影響を防止することを可能にした撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、反射面を含めた光路全体を矩形になるよう構成し、光学系内に設置された絞りの中心を通過し、かつ画面中心に到達する光線を中心光線と定義したとき、光学系の構成部品を中心光線に対し平行に移動することによりズームを行なう撮像装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−292368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、撮像装置においては、撮像光学系にレンズが用いられるため、撮影する被写体画像の暗部と明部の光量比が高い場合、強い光は、レンズ面で多重反射し、撮像素子に結像に関与しない光として照射され、撮像画像全体へのフレア成分、すなわち光ノイズとして極めて大きな影響を与えている。そのため、ダイナミックレンジが確保できないという問題があった。
【0005】
レンズ面での反射がフレア原因のひとつであるので、フレアを低減させる手段として、レンズ面のかわりにミラー面を導入することが考えられる。
すなわち、レンズによる光線の屈折を、ミラーによる光線の反射に置き換えることが可能である。
しかし通常の共軸光学系を維持したままでミラーを組み込んでも、望遠鏡等の極めて画角の小さい用途しか実現できず、本発明の用途である車載、監視、工業用途には適さない。そのため非共軸光学系でミラーを組み込むことが適当である。
このような光学系では、中心光線がミラーに対し斜めに入射・反射するため、フォーカスやズームといった機能を付加しようとすると、フォーカスやズームに伴い前記中心光線が撮像素子に対し横ずれし、画面がずれるという課題がある。
特許文献1に記載の撮像装置は、反射面を含めた光路全体を矩形になるよう構成し、光学系の構成部品を中心光線に対し平行に移動することにより、画像の横ずれを伴わずにズームを行なうことを特徴としている。
しかし本事例では、構成部品を矩形に配置するために余計な空間を要してしまっている。
【0006】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、ミラー面を含む撮像装置であって、フォーカス又はズーム動作に伴う画像の横ずれを最小限に抑制しつつ、最小限の体積で結像レンズにおいて発生していたフレアやゴーストを防ぎ、ダイナミックレンジの範囲を拡大することを可能にした撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、少なくとも、撮像光学系と、該撮像光学系により被写体の光学像を結像する撮像素子とを備える撮像装置において、前記撮像光学系は、その結像光学系において少なくとも1つを反射ミラーで構成すると共に、前記反射ミラーの1つがフォーカス又はズーム操作を行うための構成部品であることを特徴とする撮像装置である。
第2の手段は、第1の手段において、前記フォーカスまたはズーム操作を行うための構成部品であるミラーが、当該ミラーに入射する画面中心に到達する中心光線と当該ミラーから射出する中心光線の2等分線に平行して移動し、フォーカスまたはズームを行なうことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置である。
第3の手段は、第1の手段において、前記撮像光学系は、その結像光学系の全てが反射ミラーで構成される広ダイナミックレンジの撮像装置であることを特徴とする撮像装置である。
第4の手段は、第1の手段ないし第3の手段のいずれか1つの手段において、前記フォーカス又はズーム機能を有する反射ミラーは、反射面を有する反射部材と、該反射部材を弾性的に保持する弾性部材と、前記反射部材を前記弾性部材の弾性力に抗して加圧する加圧部材とからなることを特徴とする撮像装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、結像光学系において少なくとも1つを反射ミラーで構成すると共に、この反射ミラーの1つにおいて、当該ミラーへの入射中心光線と射出中心光線の2等分線に対して平行にミラーを移動させることよりフォーカスまたはズーム機能を持たせつつ、画像の横ずれを最小限に抑制することができ、かつ体積を最小限にすることが可能である。そして従来の撮像光学系に結像レンズを用いた場合に比べて、結像レンズ間の多重反射によるフレアやゴーストの発生を大幅に低減することができるため、ダイナミックレンジを広範囲化した撮像装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る撮像装置1の斜視図である。
【図2】図1に示した撮像装置1の撮像光学系2の外観を示す斜視図である。
【図3】図2に示した撮像光学系2のA−A位置の断面図である。
【図4】図2に示した撮像光学系2のB−B位置の断面図である。
【図5】図1に示した撮像装置1の撮像光学系2の外観を示す斜視図である。
【図6】図5に示した撮像光学系2のC−C位置の断面図である。
【図7】図5に示した撮像光学系2のD−D位置の断面図である。
【図8】加圧部材として高分子アクチュエータ等を用いたときの撮像光学系の概略構成を示す図である。
【図9】結像光学系の反射ミラーの構成例を示す図である。
【図10】本発明に係る撮像装置を広ダイナミックレンジの車載用カメラに適用した場合の説明図である。
【図11】本発明に係る撮像装置を交差点等の広ダイナミックレンジの監視用カメラに適用した場合の説明図である。
【図12】本発明に係る撮像装置を工場内の広ダイナミックレンジのFA用カメラに適用した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の一実施形態を図1ないし図12を用いて説明する。
図1は、本発明に係る撮像装置1(筐体開口部のカバーガラスを外した状態)の斜視図である。
図2は、図1に示した撮像装置1の撮像光学系2の外観を示す斜視図である。図3は、図2に示した撮像光学系2を中心光線の位置(A−A位置)で中心光線の光路10に沿って切断した断面図、図4は、図2に示した撮像光学系2を案内軸3の位置(B−B位置)で中心光線の光路10に沿って切断した断面図である。
これらの図において、撮像装置1の筐体6には、複数の反射ミラー7、反射部材9からなる結像光学系が納められている。
また、筐体6には反射部材9を保持する反射部保持部材としての反射部保持板4を案内支持する2本の案内軸3が反射部保持板4の移動方向に立設されている。一方の案内軸3には、反射部保持板4に設けられた穴と嵌合し、他方の案内軸3には、反射部保持板4に設けた長溝(図示せず。)と嵌合し、反射部保持板4の移動方向を、案内軸3の方向、すなわち、反射部材9に入射する中心光線の光路と、射出する中心光線の光路がなす角度を2等分する方向9’に規制している。
案内軸3の周囲には筐体6と反射部保持板4との間に弾性部材としての圧縮スプリング11が設けられ、後述するカム5の加圧方向とは反対方向に弾性力を付与している。反射部保持板4はモータの回転軸51に偏心固定されるカム5の回転により加圧され、反射部材9を圧縮スプリング11の弾性力に抗して案内軸3の軸方向に移動させることにより結像光学系のフォーカス又はズームを行う。このとき、反射部材9を保持する反射部保持板4は、前述のように2本の案内軸3と反射部保持板4に設けた穴、長溝と嵌合して移動方向が規制されているので、カム5の加圧は、2本の案内軸3の中間位置が望ましいが、反射部保持板4のどこの位置であっても、正確に案内軸3の軸方向に反射部材を移動させることができる。
そして、撮像光学系を通った光(中心光線の光路10で示す。)は、筐体6に取り付けられた撮像素子8により電気信号に変換される。
【0011】
図9に結像光学系を全て反射ミラーとしたときの結像光学系の反射ミラーの配置構成例を示す。
同図において、この配置構成例1は反射ミラー7A1、7A2、9、7A3から構成され、すべて曲面から成る。曲面からなる反射ミラーは球面、回転対称非球面を組み合わせることにより、収差補正を良好に行うことができる。もちろん、これらの反射ミラーの一部を平面で形成することも可能である。
なお、これらの図においては、結像光学系の全てを複数枚の反射ミラーで構成したが、フォーカス又はズーム機能を有する反射部材9を除く結像光学系の全てを反射ミラーで構成するものに限定されるものではない。
【0012】
本発明の撮像光学系2においては、図3に示した光路に示すように、撮像光学系2の光学像を取込む入射口から入射した光は、撮像光学系2内の複数の反射ミラー7やフォーカスやズーム機能を有する反射部材9に反射されて撮像素子5に入射される。
【0013】
また、図4(a)に示すように、圧縮スプリング11の弾性力に抗して、モータによって駆動されるカム5が、反射部保持板4への加圧を強める方向に動作すると、反射部材9を保持する反射部保持板4は案内軸3に沿って加圧方向へ変移し、それに伴って反射部材9も変移し、フォーカスまたはズーム量が調節される。一方、図4(b)に示すように、圧縮スプリング11の弾性力に応じて、モータによって駆動されるカム5が、反射部保持板4への加圧を弱める方向に動作すると、反射部保持板4が案内軸3に沿って加圧方向とは反対方向に変移し、それに伴って反射部材9も変移し、フォーカスまたはズーム量が調節される。つまり、モータによって駆動されるカム5による加圧力を制御することにより、反射部材の案内軸3の軸方向に沿う変移量を調節することができるので、撮像素子8に対して対称形のフォーカス又はズーム機構を構成することができる。
【0014】
図5ないし図7は、図2ないし図4に示した加圧部材としてのモータによって駆動されるカム5に代えて、プランジャ12によって駆動されるレバー13を用いたときの撮像光学系2を示す図であり、図5は、図1に示した撮像装置1の撮像光学系2の外観を示す斜視図、図6は、図5に示した撮像光学系2を案内軸3の位置(C−C位置)で中心光線の光路10に沿って切断した断面図、図7は、図5に示した撮像光学系2を中心光線の位置(D−D位置)で中心光線の光路10に沿って切断した断面図である。
これらの図において、反射部保持板4は、プランジャ12によって駆動されるレバー13により加圧制御され、案内軸3の側方で、筐体6と反射部保持板4との間に設けられた弾性部材としての板バネ14の弾性力に抗して案内軸3の軸方向に変移される。
反射部保持板4の移動方向については、モータによって駆動されるカム5で反射部保持板4を移動させる図2ないし図4で示した実施形態と同様、案内軸3と反射部保持板4に設けた穴、長溝によって移動方向が規制されるが、レバー13先端の反射部保持板4の加圧位置についても、2本の案内軸3の中間位置が望ましい。しかしこの実施形態の場合も、反射部保持板4のどこの位置をレバー13先端が加圧しても、正確に反射部材を移動させることができる。
なお、その他の構成は、図2ないし図4に示した同符号の構成に対応する。
【0015】
図7(a)に示すように、板ばね14の弾性力に抗して、プランジャ12によって駆動されるレバー13が、反射部保持板4への加圧力を強める方向に動作すると、図6に示すように反射部材9を保持する反射部保持板4が案内軸3に沿って変移し、それに伴って反射部材9も変移し、フォーカスまたはズーム量を調節することができる。一方、図7(b)に示すように、板ばね14の弾性力に応じて、プランジャ12によって駆動されるレバー13が、反射部保持板4への加圧力を弱める方向に動作すると、反射部材9も変移し、フォーカスまたはズーム量を調節することができる。つまり、プランジャ12によって駆動されるレバー13による加圧力を制御することにより、反射部材9の案内軸3の軸方向に沿う変移量を調節することができるので、撮像素子8に対して対称形のフォーカス又はズーム機構を構成することができる。
【0016】
図8、加圧部材として高分子アクチュエータ等を用いたときの撮像光学系の概略構成を示す図である。
同図において、反射部材9の周辺部は、不図示の撮像装置の筐体6との間で弾性部材15によって支持されている。また、反射部材9の裏面には反射部材を加圧制御する高分子アクチェータ等の加圧部材16が筐体6との間に設けられている。なお、その他の構成は図3に示した同符号の構成に対応する。
同図に示すように、加圧部材16は、反射部材9と弾性部材15に対して力学的にバランスを保った位置関係にあり、反射部材9に対して均等に加圧されるように配置されている。反射部材9に対する高分子アクチュエータ16の伸縮方向、すなわち加圧の方向は、前述した実施形態と同様、反射部材9に入射する中心光線の光路と、射出する中心光線の光路がなす角度を2等分する方向にする。なお、反射部材9の移動方向を規制するため、反射部材9と、筐体4との間にガイド用の案内軸と、この案内軸と嵌合する穴、溝を設けても良い。
このような状態において、加圧部材16の加圧力を制御することにより、反射部材9と弾性部材15とで決定される力関係に変化が与えられ、反射部材9が変位することにより、撮像素子8に対して対称系のフォーカスまたはズーム機能を果たすことができる。
なお、弾性部材15の弾性力を反射部材9の周辺位置により変化させる、あるいは加圧部材16の反射部材9への加圧点を中心からずらした位置に調節することにより、反射部材の変移方向を選択することもできる。
【0017】
図10は、本発明に係る撮像装置を広ダイナミックレンジの車載用カメラに適用した場合の説明図である。
同図に示すように、車載用カメラ17として適用された広ダイナミックレンジの撮像装置を、車両の左右のヘッドライト付近に装着し、道路の白線認識18に用いると極めて有効である。
【0018】
図11は、本発明に係る撮像装置を交差点等の広ダイナミックレンジの監視用カメラに適用した場合の説明図である。
同図に示すように、監視用カメラ19として適用された広ダイナミックレンジの撮像装置を、交差点20を監視するために、周囲のビルや信号機等に設置し、24時間365日、常時交差点の監視を行うと、朝日や夕日等の強い入射光等が画像に取込まれる環境下にあっても、撮像素子が飽和することなく、状況確認を行うための撮影画像21を取得することができる。
【0019】
図12は、本発明に係る撮像装置を工場内の広ダイナミックレンジのFA(Factory Automation)用カメラに適用した場合の説明図である。
同図に示すように、FA用カメラ22として適用された広ダイナミックレンジの撮像装置を、例えば、レーザー半田付け装置23付近に装備し、電子部品とプリント基板の半田付けの様子を撮像することにより、撮像画像24をTVモニター等に表示する。これによって、作業者はレーザーの危険に曝されずに、レーザー加工状況を安全に確認することができ、場合によっては、撮像素子が飽和せずに安定した画像が得られるため、その画像を画像処理し、半田付け状況を正確に観察して自動半田を行うためのアシスト機能を実現することができる。
【符号の説明】
【0020】
1 撮像装置
2 撮像光学系
3 案内軸
4 反射部保持板
5 モータによって駆動されるカム
6 筐体
7 反射ミラー
8 撮像素子
9 反射部材
10 中心光線の光路
11 圧縮スプリング
12 プランジャ
13 レバー
14 板バネ
15 弾性部材
16 加圧部材
17 車載用カメラ
18 白線認識
19 監視用カメラ
20 交差点
21 撮影画像
22 FA用カメラ
23 レーザー半田付け装置
24 撮像画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、撮像光学系と、該撮像光学系により被写体の光学像を結像する撮像素子とを備える撮像装置において、
前記撮像光学系は、その結像光学系において少なくとも1つを反射ミラーで構成すると共に、前記反射ミラーの1つがフォーカス又はズーム操作を行うための構成部品であることを特徴とする撮像装置。
【請求項2】
前記フォーカスまたはズーム操作を行うための構成部品であるミラーが、当該ミラーに入射する画面中心に到達する中心光線と当該ミラーから射出する中心光線の2等分線に平行して移動し、フォーカスまたはズームを行なうことを特徴とする請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記撮像光学系は、その結像光学系の全てが反射ミラーで構成される広ダイナミックレンジの撮像装置であることを特徴とする請求項1又は2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記フォーカス又はズーム操作を行うための構成部品である反射ミラーは、反射面を有する反射部材と、該反射部材を弾性的に保持する弾性部材と、前記反射部材を前記弾性部材の弾性力に抗して加圧する加圧部材とからなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1つの請求項に記載の撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−169966(P2011−169966A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−31376(P2010−31376)
【出願日】平成22年2月16日(2010.2.16)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】