説明

撮像装置

【課題】省電力とノイズ低減とを両立する撮像装置を提供する。
【解決手段】撮像装置は、撮像素子と、撮像素子上に被写体像を形成する少なくとも1つのレンズと、制御信号に基づいて少なくとも1つのレンズを駆動するアクチュエータと、制御信号を出力するドライバであって、撮影時の被写体条件に応じて、アナログ制御信号を出力するかデジタル制御信号を出力するかを切り替えるドライバとを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は撮像装置に関する。より具体的には、本発明は、制御信号を利用してアクチュエータを駆動してレンズの位置制御を行う撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、光学式記録再生装置の光ピックアップ回路に使用されるフォーカス制御回路を開示する。このフォーカス制御回路は、フォーカスサーチ動作およびフォーカスサーボ動作に共用され、かつ、パルス幅変調(PWM)で駆動される。このような動作を可能とするために駆動信号をPWM周期毎に発生するのではなく数周期に1回だけ発生させる制御回路が設けられている。
【0003】
これにより、PWM駆動でも対物レンズの微小移動が可能となり、共通のハードウェアでフォーカスサーチ動作、フォーカスサーボ動作を実現できるため、回路の省電力化、コストダウンが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−329489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
PWM制御は省電力化に非常に有効であるが、その反面、ノイズが発生するという問題がある。PWM制御によって駆動コイルやモータを駆動させると、PWM制御のオフタイム中のコイルやモータの自己誘導作用によって逆起電力が発生する。これが、いわゆるスイッチングノイズまたは駆動ノイズとなり、他の信号に混入する。その結果、本来必要となる信号の波形を乱し信号品質を低下させてしまう。
【0006】
上記特許文献1は、PWM駆動により生じるノイズに関しては考慮していない。
【0007】
このようなスイッチングノイズは近年の撮像装置においては無視できない問題である。その理由は、撮像素子の画素数が非常に増加したことによって各撮像素子の受光面積が小さくなり、信号対雑音比が悪化してきたためである。ノイズの影響は、撮影時の被写体条件が悪いとき、たとえば光量が少なく被写体が暗いときには顕著である。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、省電力とノイズ低減とを両立する撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のある実施形態にかかる撮像装置は、撮像素子と、前記撮像素子上に被写体像を形成する少なくとも1つのレンズと、制御信号に基づいて前記少なくとも1つのレンズを駆動するアクチュエータと、前記制御信号を出力するドライバであって、撮影時の被写体条件に応じて、アナログ制御信号を出力するかデジタル制御信号を出力するかを切り替えるドライバとを備えている。
【0010】
前記被写体条件は撮影された画像の明るさに関しており、前記ドライバは、撮影された画像の明るさが予め定められた値以上のときは前記デジタル制御信号を出力し、前記明るさが予め定められた値より小さいときは前記アナログ制御信号を出力してもよい。
【0011】
前記被写体条件は撮影された画像の高周波成分に関しており、前記ドライバは、撮影された画像の高周波成分の量が予め定められた値以上のときは前記アナログ制御信号を出力し、前記高周波成分の量が予め定められた値より小さいときは前記デジタル制御信号を出力してもよい。
【0012】
前記被写体条件は撮影された画像のコントラストに関しており、前記ドライバは、撮影された画像のコントラストが予め定められた値以上のときは前記デジタル制御信号を出力し、前記コントラストが予め定められた値より小さいときは前記アナログ制御信号を出力してもよい。
【0013】
前記ドライバは、パルス波形の信号を出力する第1回路と、非パルス波形の信号を出力する第2回路と、前記パルス波形の信号および前記非パルス波形の信号を選択的に利用するためのスイッチングを行う少なくとも1つのスイッチとを有しており、前記ドライバは、前記少なくとも1つのスイッチを利用して、前記撮影時の被写体条件に応じてスイッチングを行い、前記パルス波形の信号の利用時には、前記第1回路から出力された前記パルス波形の信号に基づいて前記デジタル信号を生成し、前記非パルス波形の信号の利用時には、前記第2回路から出力された前記非パルス波形の信号に基づいて前記アナログ信号を生成してもよい。
【0014】
前記第2回路は、前記第1回路が出力した前記パルス波形の信号に基づいて、前記非パルス波形の信号を生成してもよい。
【0015】
前記少なくとも1つのレンズは、前記撮像素子上の前記被写体像を拡大又は縮小させるズームレンズ、前記被写体像の振れを低減するOISレンズ、および、被写体像への焦点距離を調整するフォーカスレンズのいずれかを含んでもよい。
【発明の効果】
【0016】
本発明のある実施形態にかかる撮像装置によれば、アクチュエータに制御信号を出力するドライバは、撮影時の被写体条件に応じて、アナログ制御信号を出力するかデジタル制御信号を出力するかを切り替える。デジタル制御信号利用時には省電力化を図ることができ、アナログ制御信号利用時にはノイズ低減を図ることができる。これにより、省電力とノイズ低減を両立できる撮像装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態によるデジタルビデオカメラ100の構成を示すブロック図である。
【図2】フォーカスアクチュエータ290の構成の一例示す構成図である。
【図3】フォーカスドライバ300の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】フォーカスレンズ170の駆動動作を説明するための、フォーカスドライバ300の処理手順を示すフローチャートである。
【図5A】フォーカスドライバ300が出力するアナログ制御信号の波形図である。
【図5B】フォーカスドライバ300が出力するデジタル制御信号の波形図である。
【図6】変形例にかかるフォーカスドライバ300の詳細な構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による撮像装置の実施形態を説明する。以下では、撮像装置としてデジタルビデオカメラを例に挙げて説明する。
【0019】
〔1.デジタルビデオカメラの構成〕
本実施の形態にかかるデジタルビデオカメラ100の電気的構成について、図1を用いて説明する。
【0020】
図1は、デジタルビデオカメラ100の構成を示すブロック図である。デジタルビデオカメラ100は、ズームレンズ110等からなる光学系により形成された被写体像をCMOSイメージセンサー180(「撮像素子」とも呼ぶ。)で撮像する。CMOSイメージセンサー180で生成された映像データは、画像処理部190で各種処理が施され、メモリカード240に格納される。また、メモリカード240に格納された映像データは、液晶モニタ270で表示可能である。
【0021】
本実施形態においては、デジタルビデオカメラ100は、撮影時の被写体条件(撮影した画像の明るさ等)に応じて、フォーカスレンズ170の位置を制御するレンズアクチュエータに与える制御信号をデジタル制御信号およびアナログ制御信号の一方に切り替える。たとえば、撮影時の明るさが所定レベル以上であればノイズが混入したとしてもその影響が小さいため、デジタルビデオカメラ100はPWM制御によるデジタル制御信号に切り替える。一方、撮影時の明るさが所定レベルよりも小さくなればノイズの影響が大きくなるため、デジタルビデオカメラ100は上述のデジタル制御信号からアナログ制御信号に切り替える。被写体条件に応じてデジタル制御信号およびアナログ制御信号を切り替えることにより、省電力化とノイズ低減とを実現することができる。
【0022】
以下、デジタルビデオカメラ100の構成を詳細に説明する。
【0023】
デジタルビデオカメラ100の光学系は、ズームレンズ110、光学式手振れ補正回路(Optical Image Stabilizer;OIS)140、フォーカスレンズ170を含む。ズームレンズ110は、ズームアクチュエータ130に駆動されて光学系の光軸に沿って移動することにより、被写体像を拡大又は縮小させることが可能である。また、フォーカスレンズ170は、フォーカスアクチュエータ290に駆動されて光学系の光軸に沿って移動することにより、被写体像への焦点距離を調整する。
【0024】
OIS140は、内部に光軸に垂直な面内で移動可能な補正レンズを有する。OIS140は、OISアクチュエータ150に駆動されてデジタルビデオカメラ100の振れを相殺する方向に補正レンズを駆動することにより、被写体像の振れを低減する。
【0025】
ズームアクチュエータ130は、ズームドライバ310からの制御信号に基づいてズームレンズ110を駆動する。ズームモータ130は、パルスモータやDCモータ、リニアモータ、サーボモータなどで実現してもよい。ズームモータ130は、カム機構やボールネジなどの機構を介してズームレンズ110を駆動するようにしてもよい。検出器120は、ズームレンズ110が光軸上でどの位置に存在するのかを検出する。検出器120は、ズームレンズ110の光軸方向への移動に応じて、ブラシ等のスイッチによりズームレンズの位置に関する信号を出力する。
【0026】
OISアクチュエータ150は、OISドライバ320からの制御信号に基づいてOIS140内の補正レンズを光軸と垂直な面内で駆動する。OISアクチュエータ150は、平面コイルや超音波モータなどで実現できる。また、検出器160は、OIS140内における補正レンズの移動量を検出する。
【0027】
図2は、フォーカスアクチュエータ290の構成の一例示す構成図である。フォーカスアクチュエータ290は、たとえばデジタルビデオカメラ100のレンズ鏡筒に配置される。図2には、フォーカスアクチュエータ290とともにフォーカスレンズ170も示されている。フォーカスレンズ170は、移動枠71に固定されている。移動枠71は、通常樹脂材を成形して構成される。
【0028】
フォーカスアクチュエータ290は、駆動コイル291と、位置センサ292と、駆動用マグネット293および294とを備えている。本実施の形態において、位置センサ292は、フォーカスレンズの位置を検出するために設けられており、磁気抵抗変換素子(MR素子)と微小なピッチで着磁された四角柱のマグネットとで構成される。なお、フォーカスレンズ170と対向して近接する位置にCMOSイメージセンサー180が取り付けられるが、図2にはCMOSイメージセンサー180は図示されていない。
【0029】
再び図1を参照する。
【0030】
CMOSイメージセンサー180は、ズームレンズ110等からなる光学系で形成された被写体像を撮像して、映像データを生成する。CMOSイメージセンサー180は、露光、転送、電子シャッタなどの各種動作を行う。
【0031】
画像処理部190は、CMOSイメージセンサー180で生成された映像データに対して各種の処理を施す。より具体的に説明すると、画像処理部190は、CMOSイメージセンサー180で生成された映像データに対して処理を施し、液晶モニタ270に表示するための映像データを生成する。また画像処理部190は、メモリカード240に再格納するための映像データを生成する。例えば、画像処理部190は、CMOSイメージセンサー180で生成された映像データに対してガンマ補正やホワイトバランス補正、傷補正などの各種処理を行う。また、画像処理部190は、CMOSイメージセンサー180で生成された映像データに対して、H.264規格やMPEG2規格に準拠した圧縮形式等により映像データを圧縮する。画像処理部190は、DSPやマイコンなどで実現可能である。
【0032】
コントローラー210は、デジタルビデオカメラ100の全体の動作を制御する。コントローラー210は、半導体素子などで実現可能である。コントローラー210は、ハードウェアのみで構成してもよいし、ハードウェアとソフトウェアとを組み合わせることにより実現してもよい。または、コントローラー210は、マイコンなどでも実現できる。
【0033】
メモリ200は、画像処理部190及びコントローラー210のワークメモリとして機能する。メモリ200は、例えば、DRAM、強誘電体メモリなどで実現できる。
【0034】
液晶モニタ270は、CMOSイメージセンサー180で生成した映像データが示す画像や、メモリカード240から読み出した映像データが示す画像を表示可能である。
【0035】
ジャイロセンサー220は、圧電素子等の振動材等で構成される。ジャイロセンサー220は、圧電素子等の振動材を一定周波数で振動させコリオリ力による力を電圧に変換して角速度情報を得る。ジャイロセンサー220から角速度情報を得、この揺れを相殺する方向にOIS内の補正レンズを駆動させることにより、デジタルビデオカメラ100は、使用者による手振れを補正する。
【0036】
カードスロット230は、メモリカード240を着脱可能である。カードスロット230は、機械的及び電気的にメモリカード240と接続可能である。メモリカード240は、フラッシュメモリや強誘電体メモリなどを内部に含み、データを格納可能である。
【0037】
内部メモリ280は、フラッシュメモリや強誘電体メモリなどで構成される。内部メモリ280は、デジタルビデオカメラ100全体を制御するための制御プログラム等を格納する。
【0038】
操作部250は、使用者から画像の撮像指示を受け付ける。ズームレバー260は、使用者からズーム倍率の変更指示を受け付ける部材である。
【0039】
〔2.フォーカスドライバの詳細な構成〕
次に、図3を参照しながら、フォーカスドライバ300の詳細な構成を説明する。図3は、フォーカスドライバ300の詳細な構成を示すブロック図である。
【0040】
まず図3を説明する。
【0041】
制御信号の流れを説明するために、図3にはフォーカスドライバ300とともに、コントローラー210およびフォーカスアクチュエータ290が示されている。
【0042】
コントローラー210は、複数の機能ブロックを有している。そのうち、図3には、被写体の映像が合焦するフォーカスレンズの位置を算出する位置制御部211と、撮影画像の明るさすなわち被写体の光量を検出する光量検出部212とが示されている。フォーカスアクチュエータ290は、フォーカスレンズ170を駆動する駆動コイル291と、フォーカスレンズ170の位置を検出する位置センサ292とを有している。
【0043】
次に、フォーカスドライバ300の詳細を説明する。フォーカスドライバ300は、PID回路301と、DA変換回路302と、PWM変換回路303と、センサ処理回路304と、種々の回路要素を備えている。センサ処理回路304は、位置センサ292の信号をデジタルの位置情報に変換する。PID回路301は、位置制御部211の信号とセンサ処理回路304の信号の差分信号をデジタル処理によって比例、積分、微分演算を行う。
【0044】
DA変換回路302は、PID回路301のデジタル出力信号をアナログ信号に変換する。PWM変換回路303は、PID回路301のデジタル出力信号を2相のPWM信号に変換する。
【0045】
種々の回路要素として、フォーカスドライバ300は、抵抗305、306、310、311、319a、319bと、パワーオペアンプ312および313と、電源314と、オペアンプ320と、スイッチ315〜318とを有している。
【0046】
パワーオペアンプ312、313は、比較的大電流を出力することが可能である。抵抗305、306は、比較的高抵抗でそれぞれ同一の抵抗値を有している。抵抗305は、DA変換回路302の出力とパワーオペアンプ回路312の反転入力端子に接続される。抵抗306は、パワーオペアンプ回路312の反転入力端子と出力端子との間に接続される。抵抗305、306およびパワーオペアンプ回路312はゲイン1倍の反転増幅回路を構成する。
【0047】
抵抗310、311は、同一で比較的高い抵抗値を有している。抵抗310は、パワーオペアンプ回路312の出力とパワーオペアンプ回路313の反転入力端子との間に接続される。抵抗311は、パワーオペアンプ回路313のマイナス入力端子と出力端子との間に接続される。抵抗310、311およびパワーオペアンプ回路313はゲイン1倍の反転増幅回路を構成する。
【0048】
抵抗319aおよび319bは、同一で比較的高い抵抗値を有している。オペアンプ320は、反転入力端子と出力端子を接続したボルテージフォロワ回路である。抵抗319aおよび319bとオペアンプ320とは、電源314の1/2の電圧を出力する基準電圧源を構成する。
【0049】
パワーオペアンプ回路312および313の正転入力端子には、比較的高抵抗値の抵抗319aおよび319bを介してオペアンプ320の出力が接続される。
【0050】
光量検出部212は、その出力信号により、スイッチ315〜318を接続するか開放するかを制御する。スイッチ315は、オペアンプ312の正転入力とオペアンプ320の出力に接続される。スイッチ316は、PWM変換回路303の正方向出力とパワーオペアンプ回路312の正転入力端子との間に接続される。スイッチ317は、PWM変換回路303の負方向出力とパワーオペアンプ回路313の正転入力端子との間に接続される。スイッチ318は、オペアンプ312の正転入力とオペアンプ320の出力に接続される。
【0051】
〔3.フォーカスレンズの駆動動作〕
次に、図3〜図5Bを参照しながら、デジタルビデオカメラ100におけるフォーカスレンズ170の駆動動作を説明する。
【0052】
本実施形態においては、フォーカスドライバ300は、フォーカスアクチュエータ290を駆動するために「デジタル制御信号」および「アナログ制御信号」という2種類の制御信号を生成する。本明細書において、「デジタル制御信号」とは、PWM信号に代表される、パルス波形を有する信号をいう。また、「アナログ制御信号」とは、デジタル制御信号に該当しない、非パルス波形の信号をいう。たとえば、DC信号やDC信号に近い制御信号は「アナログ制御信号」に該当する。
【0053】
図4は、フォーカスレンズ170の駆動動作を説明するための、フォーカスドライバ300の処理手順を示すフローチャートである。図5Aは、フォーカスドライバ300が出力するアナログ制御信号の波形図である。また図5Bは、フォーカスドライバ300が出力するデジタル制御信号の波形図である。
【0054】
デジタルビデオカメラ100の電源が投入されると、はじめにコントローラー210は、現在のデジタルビデオカメラ100の動作モードが撮影モードか再生モードかを判定する。本実施形態にかかるフォーカスレンズの駆動動作は、撮影モード時に行われる。そこで以下では、撮影モードであると判定されたとして説明する(ステップS100)。
【0055】
ステップS110においてコントローラー210の光量検出部212(図3)は、撮影画像の明るさ、即ち撮影している被写体の光量を検出する。光量は、撮像素子からの出力信号の平均値に基づいて検出してもよいし、光センサ(図示せず)からの出力信号に基づいて検出してもよい。
【0056】
ステップS120において、光量検出部212は、撮影画像の明るさが所定のレベル以上かそれより小さいかを検出する。
【0057】
明るさが所定のレベルより小さい場合は、処理はステップS130に進む。フォーカスドライバ300は、アナログ制御信号をフォーカスアクチュエータ290へ送り、そのアナログ制御信号により、フォーカスアクチュエータ290はフォーカスレンズ170の位置を制御する(ステップS130)。被写体条件が十分明るいとは言えないときには光量の確保が困難である。このようなときは、PWM駆動に起因するノイズが画像に与える影響は大きい。よってデジタル制御信号に基づくPWM駆動を行わず、アナログ制御信号に基づいてフォーカスレンズ170を駆動する。
【0058】
以下、ステップS130の処理の詳細を説明する。
【0059】
まずフォーカスドライバ300は、スイッチ315と316と317と318を開放状態にする。これにより、フォーカスドライバ300は、DA変換回路302が出力するアナログ信号で動作することになる。パワーオペアンプ312と313の正転入力端子は、電源電圧の1/2の電圧が入力されている。
【0060】
DA変換回路302の出力がフルスケールの1/2のすなわち電源電圧の1/2の電圧の場合には、コイル291の両端に電位差は発生せず、フォーカスレンズの駆動電流がゼロとなる。図5A(a)は、駆動電流がゼロのときのアナログ制御信号の波形を示している。
【0061】
次に、DA変換回路302の出力が最小値即ち0Vの時は、コイル291のC+端子に最大電圧即ちほぼ電源電圧が印加され、コイル291のC−端子には、最小電圧即ちほぼ0Vが印加される。この時コイル電流は、C+方向からC−方向に向かって流れる(これを正方向の駆動電流とする)。図5A(b)は、正方向の駆動電流が最大のときのアナログ制御信号の波形を示している。
【0062】
DA変換回路302の出力が最大値即ち電源電圧の時に、コイルのC+端子に最小電圧即ちほぼ0Vが印加され、コイルのC−端子には、最大電圧即ちほぼ電源電圧が印加される。この時コイル電流は、C−方向からC+方向に向かって流れる(これを負方向の駆動電流とする)。図5A(c)は、負方向の駆動電流が最大のときのアナログ制御信号の波形を示している。
【0063】
このように駆動コイル291には、基準電圧を中心としてDA変換回路302の出力に応じて正方向及び負方向にコイル電流を制御しフォーカスレンズ170を駆動する。このコイル電流は、フォーカスドライバ300からフォーカスアクチュエータ290に与えられたアナログ制御信号として機能する。
【0064】
図4のステップS120において、撮影画像の明るさが所定のレベル以上の場合は、処理はステップS140に進む。フォーカスドライバ300は、デジタル制御信号をフォーカスアクチュエータ290へ送り、そのデジタル制御信号により、フォーカスアクチュエータ290はフォーカスレンズ170の位置を制御する被写体条件が十分明るいと言えるときには光量を確保できる。PWM駆動に起因するノイズが画像に与える影響は十分小さいため、デジタル制御信号に基づいてフォーカス制御を行う。
【0065】
以下、ステップS140の処理の詳細を説明する。
【0066】
フォーカスドライバ300は、スイッチ315と316と317と318を閉じて導通状態とする。これにより、フォーカスドライバ300は、PWM変換回路303が出力するPWM信号で動作することになる。
【0067】
PWM変換回路303のP+出力がパワーオペアンプ回路312の正転入力へ接続され、PWM変換回路303のP−出力がパワーオペアンプ回路313の反転入力へ接続される。抵抗318、319の抵抗値をスイッチ316、317のオン抵抗値に対して十分大きくすることで、PWM変換回路303のパルス信号は歪むことなくパワーオペアンプの正転入力端子へ入力される。
【0068】
同時にスイッチ315とスイッチ318は導通状態となっているため、PWM変換回路303のパルス信号は、オペアンプ312とオペアンプ313の反転入力に接続されたオペアンプ320の出力に接続される。これによりパワーオペアンプ312と313は、コンパレータ動作となり、正転入力端子のパルス波形が出力端子に出力される。すなわちフォーカスレンズをPWM信号を利用してデジタル制御信号によって駆動することが出来る。
【0069】
図5B(a)〜(c)は、フォーカスドライバ300が出力するデジタル制御信号の波形図である。デジタル制御信号によれば、パルス波形を利用したPWM駆動が実現される。
【0070】
図5B(a)〜(c)において、上段の波形は、PWM変換回路303のP+端子(正方向)のPWM信号を示す。下段の波形は、P−端子(負方向)のPWM信号を示す。
【0071】
PID回路301の出力がフルスケールの1/2の時は、正方向、負方向ともに(2)のデューティ50%のPWM信号である。この状態では、駆動コイル291の両端の電圧波形は同一であるのでコイル電流は流れない。図5B(a)は、出力電流がゼロのときのPWM信号波形を示す。
【0072】
PID回路301の出力が最大の場合は、正方向出力P+端子はデューティ最大となり、負方向出力P−端子はデューティ最小となる。駆動コイル291に印加されるパルス電圧はコイルのインダクタンス成分で平滑され、正方向に最大の電流が流れる。図5B(b)は、出力電流が正方向で最大のときのPWM信号波形を示す。
【0073】
PID回路301の出力が最小の場合は、正方向出力P+端子はデューティ最小、正方向出力P−端子はデューティ最大となり、駆動コイル291には、負方向に最大の電流が流れる。このようにPID回路301のフルスケール出力の1/2を基準として正方向及び負方向にPWM信号でコイル電流を制御してフォーカスレンズ170を駆動する。図5B(c)は、出力電流が負方向で最大のときのPWM信号波形を示す。
【0074】
PWM駆動の場合は、コイル駆動時の電力効率を高く出来、消費電力を低減出来る効果がある反面、駆動コイルからCMOSイメージセンサー180への電磁ノイズが飛び込む問題がある。
【0075】
アナログ駆動の場合、コイル駆動時の電力効率が悪く消費電力がやや増加する。しかしながら、駆動コイルからCMOSイメージセンサー180への電磁ノイズを微小に抑えることが可能である。
【0076】
本発明においては、被写体の明るさが明るくCMOSイメージセンサー180の出力に対して電磁ノイズが問題とならない場合は、PWM駆動を行うようにし、被写体の明るさが暗くCMOSイメージセンサー180の出力に対して電磁ノイズが問題となる場合は、アナログ駆動とすることで、撮影時の被写体条件に応じて低消費電力駆動と低照度時の画質を最適に選択できる優れた効果がある。
【0077】
以上、本発明の実施形態を説明した。上述の実施形態の説明は一例であり、本発明は、これらには限定されない。
【0078】
図6は、変形例にかかるフォーカスドライバ300の回路構成図である。図3との相違点は、図3におけるDA変換回路302に代えて、抵抗321、322、コンデンサ323、324、オペアンプ325からなるアクティブフィルタ回路350を追加したことである。アクティブフィルタ回路350は、PWM変換回路303のP−出力と抵抗305との間に接続される。
【0079】
本アクティブフィルタ回路350により、PWM変換回路303の負方向PWM出力をアナログ信号に変換してアナログ制御信号による駆動を行うことができる。回路全体の動作は、図3と同様である。本実施例においては、DA変換回路を削除出来るため駆動回路における回路コストの合理化が可能となる。
【0080】
上述の実施形態においては、被写体条件として撮影画像の明るさを基準としてデジタル制御信号かアナログ制御信号かを切り替えるとして説明した。しかしながら、他の被写体条件も考えられる。たとえば、撮影画像に含まれる高周波成分の程度や、撮影画像のコントラストである。以下、各々を具体的に説明する。
【0081】
撮影画像に含まれる高周波成分は、たとえば、画像に細かな模様などが含まれているときに多く現れる。そのような画像にノイズが重畳すると、そのような細かな模様がつぶれてしまい、見かけ上の画質が悪くなる。そこで、撮影画像に含まれる高周波成分の量が予め定められた基準値以上のときは、フォーカスドライバ300はフォーカスアクチュエータ290に供給する制御信号をアナログ制御信号に切り替えればよい。一方、高周波成分の量が予め定められた基準値より小さいときは、フォーカスドライバ300はフォーカスアクチュエータ290に供給する制御信号をデジタル制御信号に切り替えればよい。
【0082】
ここでいう「高周波成分」とは、たとえば撮影した画像をハイパスフィルタ処理することによって求められる、所定レベル以上の周波数成分をいう。高周波成分の算出および算出した値と基準値との比較は、たとえば画像処理部190またはコントローラー210が行えばよい。
【0083】
コントラストが低い撮影画像にノイズが重畳すると、見かけ上の画質が悪くなる。そこで、たとえば、撮影画像全体の平均コントラスト値が予め定められた基準値より小さいときは、フォーカスドライバ300はフォーカスアクチュエータ290に供給する制御信号をアナログ制御信号に切り替えればよい。一方、平均コントラスト値が予め定められた基準値以上のときは、フォーカスドライバ300はズームアクチュエータ130に供給する制御信号をデジタル制御信号に切り替えればよい。平均コントラスト値の算出と算出した値と基準値との比較は、たとえば画像処理部190またはコントローラー210が行えばよい。
【0084】
上述の実施形態では、フォーカスドライバ300がフォーカスアクチュエータに供給する制御信号を、デジタル制御信号およびアナログ制御信号の一方に切り替えるとして説明した。しかしながら、切り替えの対象となる制御信号は、ズームドライバ310がズームアクチュエータ130に供給する制御信号であってもよいし、OISドライバ320がOISアクチュエータ150に供給する制御信号であってもよい。フォーカスドライバ300、ズームドライバ310およびOISドライバ320のいずれか1つが上述の切り替え処理を行ってもよいし、これらの2つ以上のドライバが切り替え処理を行ってもよい。制御信号を切り替える各ドライバにより、独立して省電力化およびノイズの低減を実現できる。
【0085】
なお、本願明細書および図面には、ズームドライバ310およびOISドライバ320の具体的な回路構成は示していない。しかしながら、図3および図6の構成を参照することにより、当業者であれば周知のズームドライバ310およびOISドライバ320の構成を改変して、アナログ制御信号とデジタル制御信号(PWM信号)とを切り替える構成を実現することは容易である。
【0086】
本実施の形態にかかるデジタルビデオカメラ100の光学系及び駆動系は、図1に示すものに限定されない。例えば、図1では3群構成の光学系を例示しているが、他の群構成のレンズ構成としてもよい。また、それぞれのレンズは、1つのレンズで構成してもよく、複数のレンズから構成されるレンズ群として構成してもよい。
【0087】
また、実施の形態1では、撮像手段として、CMOSイメージセンサー180を例示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、CCDイメージセンサーで構成してもよく、NMOSイメージセンサーで構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0088】
本発明は、デジタルビデオカメラやデジタルスチルカメラ等の撮像装置に適用できる。
【符号の説明】
【0089】
100 デジタルカメラ
110 ズームレンズ
120 検出器
130 ズームモータ
140 OIS
150 OISアクチュエータ
160 検出器
170 フォーカスレンズ
180 CMOSイメージセンサー
190 画像処理部
200 メモリ
210 コントローラー
220 ジャイロセンサー
230 カードスロット
240 メモリカード
250 操作部
260 ズームレバー
270 液晶モニタ
280 内部メモリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像素子と、
前記撮像素子上に被写体像を形成する少なくとも1つのレンズと、
制御信号に基づいて前記少なくとも1つのレンズを駆動するアクチュエータと、
前記制御信号を出力するドライバであって、撮影時の被写体条件に応じて、アナログ制御信号を出力するかデジタル制御信号を出力するかを切り替えるドライバと
を備えた、撮像装置。
【請求項2】
前記被写体条件は撮影された画像の明るさに関しており、
前記ドライバは、撮影された画像の明るさが予め定められた値以上のときは前記デジタル制御信号を出力し、前記明るさが予め定められた値より小さいときは前記アナログ制御信号を出力する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記被写体条件は撮影された画像の高周波成分に関しており、
前記ドライバは、撮影された画像の高周波成分の量が予め定められた値以上のときは前記アナログ制御信号を出力し、前記高周波成分の量が予め定められた値より小さいときは前記デジタル制御信号を出力する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記被写体条件は撮影された画像のコントラストに関しており、
前記ドライバは、撮影された画像のコントラストが予め定められた値以上のときは前記デジタル制御信号を出力し、前記コントラストが予め定められた値より小さいときは前記アナログ制御信号を出力する、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項5】
前記ドライバは、
パルス波形の信号を出力する第1回路と、
非パルス波形の信号を出力する第2回路と、
前記パルス波形の信号および前記非パルス波形の信号を選択的に利用するためのスイッチングを行う少なくとも1つのスイッチと
を有しており、
前記ドライバは、
前記少なくとも1つのスイッチを利用して、前記撮影時の被写体条件に応じてスイッチングを行い、
前記パルス波形の信号の利用時には、前記第1回路から出力された前記パルス波形の信号に基づいて前記デジタル信号を生成し、
前記非パルス波形の信号の利用時には、前記第2回路から出力された前記非パルス波形の信号に基づいて前記アナログ信号を生成する、請求項1から4のいずれかに記載の撮像装置。
【請求項6】
前記第2回路は、前記第1回路が出力した前記パルス波形の信号に基づいて、前記非パルス波形の信号を生成する、請求項5に記載の撮像装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つのレンズは、前記撮像素子上の前記被写体像を拡大又は縮小させるズームレンズ、前記被写体像の振れを低減するOISレンズ、および、被写体像への焦点距離を調整するフォーカスレンズのいずれかを含む、請求項1に記載の撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−221519(P2011−221519A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64788(P2011−64788)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】