説明

操作ペダルの支持構造

【課題】操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、操作ペダルの支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時は、操作ペダルの支軸を脱落させる操作ペダルの支持構造を提供する。
【解決手段】ブレーキペダル2に下向きの荷重が加わると、係合部材29の係合突起部29hがペダルブラケット3の係合孔7aに係合することで、第1支軸13の脱落が規制される。車両が前突すると、係合部材29の係合突起部29hの、ペダルブラケット3の係合孔7aに対する係合は回避されることで、第1支軸13の脱落が許可され、第1支軸13がペダルブラケット3から脱落する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ペダルの支持構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車の衝突(前突)時には、その衝突を回避するためにドライバがブレーキペダルを踏んで自動車を制動しているにもかかわらず、自動車が停止せずに衝突してしまうというブレーキペダルの踏み込み状態での衝突が多い。
【0003】
その場合、衝突に伴って車体前部が衝突エネルギーを吸収しながら潰れ、エンジンルーム内に配置されているエンジンが、その後側に位置するエンジンルームと車室とを仕切るダッシュパネルを押しながら後退する。ダッシュパネルの車体前側には、ブレーキブーストが設けられ、このブレーキブーストに対し、ダッシュパネル後方に位置するブレーキペダルがプッシュロッドを介して連結されている。このため、ダッシュパネル(ブレーキブースト)の後退移動に伴いプッシュロッドを介してプレーキペダルも押されて後退することとなる。その結果、衝突直前までブレーキペダルを踏込んでいるドライバーの足に衝突荷重が作用して大きなキックバックが生じ、そのドライバーの足に衝撃がかかるという問題がある。
【0004】
そこで、従来、このような問題に対処するため、種々の対策が提案されている。例えば、特許文献1には、前端部がダッシュパネルに固定され、中央部において操作ペダルの支軸を支持するペダルブラケットと、このペダルブラケットの後端部に回動自在に支持された回動レバーとを備えたペダル取付け装置が開示されている。このペダル取付け装置では、衝突時に回動レバーが車体側部材に当接して回動することで操作ペダルの支軸を下側に押すようにしており、それによって操作ペダルの支軸をペダルブラケットのガイド部に沿って下方に脱落させるようにしている。
【0005】
特許文献2には、前端部がダッシュパネルに固定され、後部において操作ペダルの支軸を支持するペダルブラケットと、このペダルブラケットの後端部に回動自在に支持された回動レバーとを備え、この回動レバーと車体側部材との間にスプリングが設けられたペダル構造が開示されている。このペダル構造では、衝突時に回動レバーが車体側部材との当接及びスプリングの付勢力によって回動することで操作ペダルの支軸を下側に押すようにしており、それによって操作ペダルの支軸を下方に脱落させるようにしている。
【0006】
そして、両者いずれの場合も、上述の如く、操作ペダルの支軸を脱落させることで、ブレーキペダルのペダル踏込み部が車体後方へ移動するのを抑制し、ダッシュパネルが変形したにも拘わらず、運転席の足下に大きなスペースを維持し、ドライバの足に作用する衝撃を緩和している。
【特許文献1】特表2005−510785号公報
【特許文献2】特許第3269372号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記特許文献1及び2のものでは、通常時は、操作ペダルの支軸が脱落しないようにしているが、例えば操作ペダルに下向きの衝撃が加わった場合、操作ペダルの支軸が脱落してしまうおそれがある。
【0008】
そこで、本発明者たちは、簡単な構成で、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、操作ペダルの支軸の脱落を規制する一方、衝突時は、操作ペダルの支軸を脱落させるものを開発するに至った。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、操作ペダルの支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時は、操作ペダルの支軸を脱落させる操作ペダルの支持構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、ダッシュパネルの車両後方に設けられる操作ペダルの支持構造であって、上記ダッシュパネルに取り付けられて該ダッシュパネルから車両後方に延び、上記操作ペダルを車幅方向に延びる第1支軸を介して揺動自在に支持し、係合孔が形成されたペダルブラケットと、上記ペダルブラケットに車幅方向に延びる第2支軸を介して回動自在に支持され、車両衝突時に車体側部材に当接して上記第2支軸周りに回動することで上記第1支軸を下側に押して上記ペダルブラケットから脱落させる回動レバーと、上記第1支軸に連結支持されているとともに、上記係合孔に係合可能な係合部を有する係合部材とを備え、上記係合部材は、上記操作ペダルに下向きの荷重がかかったときには、上記回動レバーに対して相対移動して上記係合部が上記係合孔に係合することで上記第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時には、上記回動レバーの回動によって上記係合部の上記係合孔に対する係合が回避されることで上記第1支軸の脱落を許可するように構成されていることを特徴とするものである。
【0011】
これにより、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、係合部材が回動レバーに対して相対移動して係合部材の係合部がペダルブラケットの係合孔に係合することで、係合部材を連結支持する、操作ペダルの第1支軸の脱落が規制される。一方、車両衝突時は、回動レバーの回動によって係合部材の係合部の、ペダルブラケットの係合孔に対する係合が回避されることで、第1支軸の脱落が許可される。以上のように、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、簡単な構造の係合部材によって操作ペダルの第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時は、従来どおり、第1支軸を脱落させることができる。
【0012】
第2の発明は、ダッシュパネルの車両後方に設けられる操作ペダルの支持構造であって、上記ダッシュパネルに取り付けられて該ダッシュパネルから車両後方に延び、上記操作ペダルを車幅方向に延びる第1支軸を介して揺動自在に支持し、係合孔が形成されたペダルブラケットと、上記ペダルブラケットに車幅方向に延びる第2支軸を介して回動自在に支持され、車両衝突時に車体側部材に当接して上記第2支軸周りに回動することで上記第1支軸を下側に押して上記ペダルブラケットから脱落させる回動レバーと、上記第1支軸に連結支持されているとともに、上記係合孔に係合する係合部を有する係合部材とを備え、上記係合部材は、上記操作ペダルに下向きの荷重がかかったときには、上記係合部の上記係合孔に対する係合が維持されることで上記第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時には、上記回動レバーの回動によって上記回動レバーに対して相対移動して上記係合部が上記係合孔から外れることで上記第1支軸の脱落を許可するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
これにより、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、係合部材の係合部の、ペダルブラケットの係合孔に対する係合が維持されることで、係合部材を連結支持する、操作ペダルの第1支軸の脱落が規制される。一方、車両衝突時は、回動レバーの回動によって係合部材が回動レバーに対して相対移動して係合部材の係合部がペダルブラケットの係合孔から外れることで、第1支軸の脱落が許可される。以上のように、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、簡単な構造の係合部材によって操作ペダルの第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時は、従来どおり、第1支軸を脱落させることができる。
【0014】
第3の発明は、上記第1又は第2の発明において、上記ペダルブラケットの上記第1支軸の支持部が、通常時に該第1支軸の脱落を規制しかつ車両衝突時に上記回動レバーの回動によって上記第1支軸の脱落を許可する規制部を有することを特徴とするものである。
【0015】
これにより、ペダルブラケットの第1支軸の支持部に、通常時にその第1支軸の脱落を規制しかつ車両衝突時に回動レバーの回動によって第1支軸の脱落を許可する規制部を設けているので、通常時は、第1支軸の脱落を確実に規制することができる。
【0016】
第4の発明は、上記第3の発明において、上記操作ペダルは、上記第1支軸が上記ペダルブラケットの上記支持部から脱落した直後に上記ペダルブラケットから離脱することを特徴とするものである。
【0017】
これにより、操作ペダルを、第1支軸がペダルブラケットの第1支軸の支持部から脱落した直後にペダルブラケットから離脱させるので、操作ペダルが車両後方に移動するのを確実に抑制することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、係合部材が回動レバーに対して相対移動して係合部材の係合部がペダルブラケットの係合孔に係合することで、係合部材を連結支持する、操作ペダルの第1支軸の脱落が規制される一方、車両衝突時は、第1支軸の脱落が許可されるので、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、簡単な構造の係合部材によって操作ペダルの第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時は、第1支軸を脱落させることができる。
【0019】
別の発明によれば、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、係合部材の係合部の、ペダルブラケットの係合孔に対する係合が維持されることで、係合部材を連結支持する、操作ペダルの第1支軸の脱落が規制される一方、車両衝突時は、第1支軸の脱落が許可されるので、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、簡単な構造の係合部材によって操作ペダルの第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時は、第1支軸を脱落させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0021】
図1は、本発明の実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の側面図であり、図2は、ブレーキペダルの支持構造の分解斜視図であり、図3は、通常時におけるブレーキペダルの支持構造の側面図であり、図4は、図3のIV−IV線の矢視断面図の一部を示す図であり、図5は、左側の係合部材の正面図であり、図6は、ブレーキペダルに下向きの荷重がかかったときにおけるブレーキペダルの支持構造の側面図であり、図7は、図6のVII−VII線の矢視断面図の一部を示す図であり、図8は、車両前突時の初期段階におけるブレーキペダルの支持構造の側面図であり、図9は、ブレーキペダルの第1支軸が脱落した状態におけるブレーキペダルの支持構造の側面図である。なお、図2では、係合部材の図示を省略している。
【0022】
本発明の実施形態に係る、ダッシュパネルの車両後方に設けられるブレーキペダル(操作ペダルに相当)の支持構造は、右ハンドルの車両に搭載されている。図1において、1はエンジンルームと車室とを区画するダッシュパネルであり、このダッシュパネル1には、ブレーキペダル2を車両前後方向に揺動自在に支持するペダルブラケット3と、ブレーキブースタ4とが取り付けられている。ブレーキペダル2は、その支軸から車幅方向内側に向かって斜め下方に延びており、その下端部には、ペダル踏込み部2aが設けられている。ペダルブラケット3には、車両前突時(車両衝突時に相当)にブレーキペダル2の支軸を該ペダルブラケット3から下側に脱落させる回動レバー5が枢支されている。ブレーキブースタ4は、ブレーキペダル2にプッシュロッド4aを介して連結されている。ペダルブラケット3の回動レバー5の車両後方には、パイプからなるステアリングコラム支持用のインストルメントパネルレインフォースメント32が配設されており、このインストルメントパネルレインフォースメント32には、回動レバー5の後端部と所定間隔だけ離れて対向する車体側部材33が設けられている。
【0023】
図2〜図4に示すように、上記ペダルブラケット3は、ダッシュパネル1にボルト止めされた取付基板6と、この取付基板6の左右両端縁部から車両後方に延びる左右一対の側板7,7とを有している。
【0024】
上記各側板7には、車幅方向に延びる、ブレーキペダル2の第1支軸13を挿通支持する円状の第1支持孔14が形成されている。この各第1支持孔14の周縁部が第1支軸13の支持部20をそれぞれ構成している。第1支軸13は、一端部にねじ13aが切られ、他端部にボルト頭部13bが設けられたボルトである。このねじ13aは、第1支軸13のペダルブラケット3への取付け後において右側の側板7の外面よりも車幅方向外側に位置するように切られている。そして、第1支軸13を各第1支持孔14及びブレーキペダル2のボス部21の挿通孔21aに挿通させた状態で、ナット22を第1支軸13のねじ13aにワッシャー23を介して螺合させることで、ブレーキペダル2がペダルブラケット3に第1支軸13を中心として揺動自在に支持される。また、上述のようなねじ13a及びワッシャー23の構成により、第1支軸13がブレーキペダル2の操作時に荷重を受けたときにおいてねじ13aがペダルブラケット3の支持部20を傷付けることを抑制することができる。
【0025】
上記各支持部20の第1支持孔14の下側には、幅が第1支軸13の軸径よりも小さい開口部15が形成されているとともに、それぞれ車両後方及び前方に突起して互いに開口部15を介して対向する前後一対の突起部16,16(規制部に相当)が配設されている。この各突起部16は、車両前突時以外の通常時には、第1支軸13を支持してその下側への脱落(移動)を規制する一方、車両前突時には、回動レバー5の回動によって変形して第1支軸13の脱落を許可するようになっている。上記各支持部20の開口部15の下側には、幅が第1支軸13の軸径よりも大きい切欠き部19が形成されている。
【0026】
上記各側板7の第1支持孔14の後側には、車幅方向に延びる、回動レバー5の第2支軸17を挿通支持する円状の第2支持孔18が形成されている。この第2支軸17は、一端部にねじが切られ、他端部にボルト頭部が設けられたボルトである。そして、第2支軸17を各第2支持孔18及び回動レバー5の各挿通孔25に挿通させた状態で、ナット(図示せず)を第2支軸17のねじに螺合させることで、回動レバー5がペダルブラケット3に第2支軸17を中心として回動自在に支持される。
【0027】
上記各側板7の第1支持孔14の上側には、その厚み方向に貫通する矩形状の係合孔7aが形成されている。
【0028】
上記回動レバー5は、横断面略コ字状に形成されていて、それぞれペダルブラケット3の各側板7の内面に沿って延びて下端部に円状の挿通孔25が形成された左右一対の側板26,26と、この両側板26,26の上端縁部を互いに連結する天板27とを有している。
【0029】
上記各側板26における第1支軸13(ブレーキペダル2のボス部21)に対向する部分が円弧状に形成されて円弧部26aを構成しており、この円弧部26aは、円筒状のボス部21の外面に対して僅かな隙間を有して設けられている。各側板26の円弧部26aの上側には、その厚み方向に貫通する矩形状の挿通孔26bが形成されており、この各挿通孔26bは、ペダルブラケット3の各係合孔7aよりも上側に配置されている。
【0030】
図3〜図5に示すように、上記第1支軸13には、2つの係合部材29が連結支持されている。この2つの係合部材29,29は、板状のものであって、ブレーキペダル2のボス部21とペダルブラケット3の左右の側板7,7との間にそれぞれ配置されている。
【0031】
各係合部材29は、ペダルブラケット3の側板7の内面に沿うワッシャー状(略環状)の環状板29aと、この環状板29aの上部の後側部分から車幅方向内側に向かって斜め上方に延びる第1傾斜板29bと、この第1傾斜板29bの上端部から回動レバー5の側板26の外面に沿って上方に延びる第1鉛直板29cと、回動レバー5の挿通孔26bに挿通された状態で、第1鉛直板29cの上端部から車幅方向内側に向かって斜め上方に延びる第2傾斜板29dと、この第2傾斜板29dの上端部から回動レバー5の側板26の内面に沿って上方に延びる第2鉛直板29eとを有している。
【0032】
上記各環状板29aの中心部には、円状の挿通孔29fが形成されている。この各挿通孔29fに第1支軸13を挿通支持させることで、各係合部材29が第1支軸13に支持される。
【0033】
上記各第1鉛直板29cの前部の下側部分には、車両前方に延びる延設部29gが設けられており、この各延設部29gの外面の前端部には、車幅方向外側に突起してペダルブラケット3の各係合孔7aに係合可能な係合突起部29h(係合部に相当)が該係合孔7aに対向するように設けられている。各係合突起部29hの上面は、各係合孔7aの上縁とほぼ同じ高さ位置であり、その上下方向長さは、各係合孔7aの上下方向長さよりも短い。各係合突起部29hは、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときには、各係合部材29が回動レバー5に対して相対移動することで各係合孔7aに嵌まり込んで係合し、車両前突時には、回動レバー5の回動によって各係合孔7aに対する係合が回避されるようになっている。
【0034】
−ブレーキペダルの支持構造の動作−
以下、ブレーキペダルの支持構造の動作について説明する。
【0035】
まず、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときにおけるブレーキペダルの支持構造の動作について説明する。
【0036】
ブレーキペダル2に下向きの荷重が加わると、第1支軸13がブレーキペダル2のボス部21とともに下側に引っ張られる。これに伴って、図6に示すように、ペダルブラケット3の突起部16が変形し、開口部15が拡開変形する。そして、第1支軸13が下側に僅かに移動する。このとき、係合部材29が第1支軸13によって下側に押される。このため、図7に示すように、係合部材29は、第2傾斜板29dの内面が回動レバー5の挿通孔26bの下縁部に接触しながら、回動レバー5に対して下側に僅かに相対移動する。この結果、係合部材29は、環状板29a及び第1傾斜板29bの境界部分よりも上側部分がこの境界部分で車幅方向外側に曲がる。これに従って、係合突起部29hがペダルブラケット3の係合孔7aに嵌まり込んで係合する。これにより、係合部材29の脱落が規制され、係合部材29を連結支持する第1支軸13の脱落が規制される。
【0037】
次に、車両前突時におけるブレーキペダルの支持構造の動作について説明する。
【0038】
図8に示すように、車両が前突すると、ダッシュパネル1及びペダルブラケット3が車両後方に移動し、回動レバー5の側板26の後端部が車体側部材33に当接する。これに伴って、回動レバー5が第2支軸17を中心として図8で示す反時計回りに回動する。そして、回動レバー5の円弧部26aがブレーキペダル2のボス部21を下側に押す。このため、第1支軸13が下側に押される。
【0039】
それから、ペダルブラケット3の突起部16が変形し、開口部15が拡開変形する。このため、第1支軸13が係合部材29とともに下側に移動する。このとき、係合部材29の係合突起部29hの、ペダルブラケット3の係合孔7aに対する係合は回動レバー5の回動によって回避される。この結果、第1支軸13の脱落が許可される。
【0040】
そして、図9に示すように、第1支軸13の支持部20に対する支持が解除され、第1支軸13が係合部材29とともにペダルブラケット3から切欠き部19を介して脱落する。その直後(それと同時に)、ブレーキペダル2もペダルブラケット3から離脱(脱落)する。
【0041】
−効果−
以上により、本実施形態によれば、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときは、係合部材29が回動レバー5に対して相対移動して係合部材29の係合突起部29hがペダルブラケット3の係合孔7aに係合することで、係合部材29を連結支持する、ブレーキペダル2の第1支軸13の脱落が規制される。一方、車両前突時は、回動レバー5の回動によって係合部材29の係合突起部29hの、ペダルブラケット3の係合孔7aに対する係合が回避されることで、第1支軸13の脱落が許可される。以上のように、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときは、簡単な構造の係合部材29によってブレーキペダル2の第1支軸13の脱落を規制する一方、車両前突時は、従来どおり、第1支軸13を脱落させることができる。
【0042】
また、ペダルブラケット3の第1支軸13の支持部20に、通常時にその第1支軸13の脱落を規制しかつ車両前突時に回動レバー5の回動によって第1支軸13の脱落を許可する規制部を設けているので、通常時は、第1支軸13の脱落を確実に規制することができる。
【0043】
また、ブレーキペダル2を、第1支軸13がペダルブラケット3の第1支軸13の支持部20から脱落した直後にペダルブラケット3から離脱させるので、ブレーキペダル2が車両後方に移動するのを確実に抑制することができる。
【0044】
(その他の実施形態)
上記実施形態では、ブレーキペダルの支持構造を右ハンドルの車両に搭載しているが、左ハンドルの車両に搭載しても良い。
【0045】
また、上記実施形態では、係合部材29を2つ設けているが、これに限らず、例えば1つだけ設けても良い。
【0046】
また、上記実施形態では、係合部を係合突起部29hで構成しているが、ペダルブラケット3の係合孔7aに係合可能な限り、係合部は如何なるものであっても良い。
【0047】
また、上記実施形態では、規制部を突起部16で構成しているが、通常時に第1支軸13の脱落を規制する一方、車両前突時に第1支軸13の脱落を許可する限り、規制部は如何なるものであっても良い。
【0048】
また、上記実施形態では、第1支軸13をペダルブラケット3から完全に脱落させているが、完全に脱落させなくても良い。
【0049】
また、上記実施形態では、ブレーキペダル2を第1支軸13がペダルブラケット3の支持部20から脱落した直後にペダルブラケット3から完全に離脱させているが、これに限らず、例えば、第1支軸13の脱落からしばらく後に離脱させても良く、さらに、ペダルブラケット3から完全に離脱させなくても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、係合部材29は、係合突起部29hがペダルブラケット3の係合孔7aに係合可能であって、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときには、係合突起部29hが係合孔7aに係合することで第1支軸13の脱落を規制し、車両前突時には、回動レバー5の回動によって係合突起部29hの係合孔7aに対する係合が回避されることで第1支軸13の脱落を許可するようになっているが、これに限らない。例えば、係合部材29は、係合突起部29hが係合孔7aに係合していて、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときには、係合突起部29hの係合孔7aに対する係合が維持されることで第1支軸13の脱落を規制し、車両前突時には、回動レバー5の回動によって該回動レバー5に対して相対移動して係合突起部29hが係合孔7aから外れる(つまり、係合突起部29hの係合孔7aに対する係合が解除される)ことで第1支軸13の脱落を許可するようになっていても良い。なお、上述のように、車両前突時に係合突起部29hが係合孔7aから外れるようにするためには、回動レバー5の円弧部26aとブレーキペダル2のボス部21の外面との間に所定の間隙を設ける必要がある。この場合、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときは、係合部材29の係合突起部29hの、ペダルブラケット3の係合孔7aに対する係合が維持されることで、係合部材29を連結支持する、ブレーキペダル2の第1支軸13の脱落が規制される。一方、車両前突時は、回動レバー5の回動によって係合部材29が回動レバー5に対して相対移動して係合部材29の係合突起部29hがペダルブラケット3の係合孔7aから外れることで、第1支軸13の脱落が許可される。以上のように、ブレーキペダル2に下向きの荷重がかかったときは、簡単な構造の係合部材29によってブレーキペダル2の第1支軸13の脱落を規制する一方、車両前突時は、従来どおり、第1支軸13を脱落させることができる。
【0051】
本発明は、実施形態に限定されず、その精神又は主要な特徴から逸脱することなく他の色々な形で実施することができる。
【0052】
このように、上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上説明したように、本発明に係る操作ペダルの支持構造は、操作ペダルに下向きの荷重がかかったときは、操作ペダルの支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時は、操作ペダルの支軸を脱落させる用途等に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施形態に係るブレーキペダルの支持構造の側面図である。
【図2】ブレーキペダルの支持構造の分解斜視図である。
【図3】通常時におけるブレーキペダルの支持構造の側面図である。
【図4】図3のIV−IV線の矢視断面図の一部を示す図である。
【図5】左側の係合部材の正面図である。
【図6】ブレーキペダルに下向きの荷重がかかったときにおけるブレーキペダルの支持構造の側面図である。
【図7】図6のVII−VII線の矢視断面図の一部を示す図である。
【図8】車両前突時の初期段階におけるブレーキペダルの支持構造の側面図である。
【図9】ブレーキペダルの第1支軸が脱落した状態におけるブレーキペダルの支持構造の側面図である。
【符号の説明】
【0055】
1 ダッシュパネル
2 ブレーキペダル(操作ペダル)
3 ペダルブラケット
5 回動レバー
7 側板
7a 係合孔
13 第1支軸
15 開口部
16 突起部(規制部)
17 第2支軸
19 切欠き部
20 支持部
26 側板
26a 円弧部
26b 挿通孔
29 係合部材
29h 係合突起部(係合部)
33 車体側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダッシュパネルの車両後方に設けられる操作ペダルの支持構造であって、
上記ダッシュパネルに取り付けられて該ダッシュパネルから車両後方に延び、上記操作ペダルを車幅方向に延びる第1支軸を介して揺動自在に支持し、係合孔が形成されたペダルブラケットと、
上記ペダルブラケットに車幅方向に延びる第2支軸を介して回動自在に支持され、車両衝突時に車体側部材に当接して上記第2支軸周りに回動することで上記第1支軸を下側に押して上記ペダルブラケットから脱落させる回動レバーと、
上記第1支軸に連結支持されているとともに、上記係合孔に係合可能な係合部を有する係合部材とを備え、
上記係合部材は、上記操作ペダルに下向きの荷重がかかったときには、上記回動レバーに対して相対移動して上記係合部が上記係合孔に係合することで上記第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時には、上記回動レバーの回動によって上記係合部の上記係合孔に対する係合が回避されることで上記第1支軸の脱落を許可するように構成されていることを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項2】
ダッシュパネルの車両後方に設けられる操作ペダルの支持構造であって、
上記ダッシュパネルに取り付けられて該ダッシュパネルから車両後方に延び、上記操作ペダルを車幅方向に延びる第1支軸を介して揺動自在に支持し、係合孔が形成されたペダルブラケットと、
上記ペダルブラケットに車幅方向に延びる第2支軸を介して回動自在に支持され、車両衝突時に車体側部材に当接して上記第2支軸周りに回動することで上記第1支軸を下側に押して上記ペダルブラケットから脱落させる回動レバーと、
上記第1支軸に連結支持されているとともに、上記係合孔に係合する係合部を有する係合部材とを備え、
上記係合部材は、上記操作ペダルに下向きの荷重がかかったときには、上記係合部の上記係合孔に対する係合が維持されることで上記第1支軸の脱落を規制する一方、車両衝突時には、上記回動レバーの回動によって上記回動レバーに対して相対移動して上記係合部が上記係合孔から外れることで上記第1支軸の脱落を許可するように構成されていることを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の操作ペダルの支持構造において、
上記ペダルブラケットの上記第1支軸の支持部が、通常時に該第1支軸の脱落を規制しかつ車両衝突時に上記回動レバーの回動によって上記第1支軸の脱落を許可する規制部を有することを特徴とする操作ペダルの支持構造。
【請求項4】
請求項3記載の操作ペダルの支持構造において、
上記操作ペダルは、上記第1支軸が上記ペダルブラケットの上記支持部から脱落した直後に上記ペダルブラケットから離脱することを特徴とする操作ペダルの支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−302099(P2007−302099A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131747(P2006−131747)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(506132544)株式会社オートテクニカ (21)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】