説明

操作レバー装置

【課題】 密閉性に優れてコンパクトな構成で、永久磁石の可動範囲を広く構成することができ、操作レバーの操作に安定性を与えることができ、しかも操作レバーの操作に対するダンパー作用を持たせることのできる操作レバー装置を提供することにある。
【解決手段】操作レバー2を固定したシャフト5の中空軸部5bを、ベアリング軸受15を介してキャップ4に突設した支持軸19に支承する。シャフト5のフランジ部5a外周には、永久磁石7を配設し、ハウジング3に設けたホールIC8で永久磁石の磁界を検出する。シャフト5に外嵌した捩じりバネ6の両端部に、フランジ部5aに設けた一対の係止ピン10を係止する。ハウジング3とキャップ4とで構成されるケース35の密閉空間14内にシリコンオイルを封入する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば建設機械や産業機械等において使用される操作レバー装置に関するものであり、特に、操作レバーの操作量を永久磁石とホールICとによって、電気信号として検出することのできる操作レバー装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、建設機械や産業機械等においては、油圧シリンダの制御や変速機の制御等を操作するのに操作レバー装置が用いられている。操作レバー装置としては、操作レバーの操作量を機械的な変位量として取り出す構成のものや、操作レバーの操作量を油圧に変換して取り出す構成のものや、操作レバーの操作量を電気信号に変換して取り出す構成のものなどが用いられている。
【0003】
操作レバーの操作量を電気信号に変換して取り出す構成のものを用いることにより、操作レバー装置を小型化させることが可能となる。しかし、電気信号に変換する構成を用いた操作レバー装置では、次のような問題があった。
【0004】
即ち、操作レバーの操作に応じて回動するカムと、カムの回動により電気接点が開閉するスイッチとを備えた構成のものでは、電気接点やカム等が摩耗して耐久性に乏しかった。
【0005】
また、操作レバーの操作に応じて摺動する永久磁石と、永久磁石の磁力に応動するリードスイッチとを備えた構成のものでは、リードスイッチと永久磁石との配置関係を正確に位置決めすることが難しく、操作レバーの僅かな操作に応じた検出信号を得ることは更に難しくなるという問題があった。
【0006】
これらの問題を解決するため特許文献1には、永久磁石と永久磁石の磁力を検出するホールICとを用いたレバー装置が開示されている。特許文献1に記載されたレバー装置を本発明の従来例1として、図11にはその断面図を示している。
【0007】
図11に示すように、操作レバー51の下端部には略円柱状のベース部51aが設けられており、ベース部51aは軸53を介して、断面が略凹状の支持部材52内で回動可能に支持されている。ベース部51aの一方の側面部には、細い棒状の永久磁石54が軸53と平行に埋設固定されている。永久磁石54と対向する支持部材52の部位には、複数のホールICを取り付けたプリント基板56が合成樹脂層を介在して埋設固定されている。
【0008】
また、プリント基板56を埋設固定した支持部材52とベース部51aとの間には、ボール57とスプリング58とからなるディテント機構が配設されている。スプリング58で付勢されたボール57が、ベース部51aに形成した複数の凹部のうちの一つの凹部と係合することにより、軸53の回りで回動するベース部51aの位置決めを行うことができる。
【0009】
特許文献1に記載されたレバー装置では、デテント機構を用いてレバーを多段階の回動位置に位置決めすることができるが、レバーの傾倒操作を解除したときにレバーを自動的に中立位置に復帰させることはできない。
【0010】
永久磁石とホールICとを用いた操作レバー装置に関するものではないが、操作レバーを自動的に中立位置に復帰させる中立復帰装置は、特許文献2に開示されている。特許文献2に記載された中立復帰装置を本発明の従来例2として、図12にはその断面図を示している。
【0011】
図12に示すように、図示せぬ操作レバーの操作によって回動する支軸60が、取付け座67に支承されている。支軸60に外嵌している捩じりバネ62の両端側には、取付け座67に固設された一対のストッパー65,66が配設されている。支軸60に取付けられ、支軸60とともに一体回転する回転部材61には、捩じりバネ62の両端側に各別に係止する一対の係止ピン63,64が立設されている。
【0012】
図示せぬ操作レバーを中立位置から一方側へ傾倒操作すると、例えば、操作レバーの傾倒操作に伴って回転部材61が図12の時計回り方向に回動すると、係止ピン63は捩じりバネ62を押圧することになる。このとき、係止ピン64との係止が解除された側の捩じりバネ62の端部は、ストッパー65との当接によって図12の時計回り方向への回動が規制される。
【0013】
これによって、捩じりバネ62は変形し、変形による捩じり力が蓄積されることになる。図示せぬ操作レバーに対する操作力が解除されると、捩じりバネ62の復元力によって操作レバーは中立位置に自動復帰する。
【0014】
また、操作レバーが中立位置にあるときには、捩じりバネ62に付与されている初期応力によって、一対の係止ピン63,64に対しては互いに逆向きの付勢力が作用している。これによって、中立位置における操作レバーのガタツキが防止されている。
【特許文献1】実願昭61−22445号(実開昭62−134124号)のマイクロフィルム
【特許文献2】実願平4−38228号(実開平6−2426号)のCD―ROM
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1に記載されたレバー装置では、ベース部51aが軸53の回りを回動する構成となっているため、ベース部51aと軸53との間が擦れ合って摩耗が生じる。摩耗によって発生した粉塵が、ベース部51aと支持部材52との間に入り込むと、ベース部51aの回動不良を生じさることになる。
【0016】
また、摩耗によってベース部51aと軸53との間に隙間が形成されると、ベース部51aの回動中心軸と軸53の中心軸とが偏心してしまう。このため、ベース部51aがガタつきながら回動することになり、ベース部51aとしては正確な回動運動を行うことができなくなる。
【0017】
更に、ベース部51aが支持部材52に対して相対的に回動する構成となっているので、ベース部51aと支持部材52との間に多少の隙間が形成されている。外部からの塵埃、水滴等は、この隙間を通って浸入することができる。隙間からの浸入を防止するためには、支持部材52の上部から操作レバー1の軸部の一部にかけて、蛇腹式に形成したゴム製の防塵カバー等を用いて覆うことが必要となる。
【0018】
従来からの操作レバー装置では、操作レバー装置の本体内への塵埃、水滴等の浸入を防止するため、この種の防塵カバーが用いられている。このため、特許文献1に記載されたレバー装置を含めて、従来からの操作レバー装置の修理、点検、交換等を行うにあたっては、防塵カバーを取外してからでなければ行うことができなかった。
【0019】
まして、操作レバー装置を取外して屋外に持ち出して操作しようとしても、特別構造とした防塵構造や防水構造で操作レバー装置を全体的に覆わなければ、屋外で使用することはできなかった。
【0020】
また、その構成を本明細書ではあらためて図示していないが、特許文献2に記載された操作レバー装置においても、防塵カバーを配設した構成が開示されている。ところで、特許文献2に記載された操作レバー装置は、操作レバーの回動量をポテンショメータにて検出する構成を有するものである。
【0021】
このため、特許文献2に記載された操作レバー装置は、永久磁石と永久磁石の磁力を検出するホールICとを用いた操作レバー装置に関するものではなく、本発明に係わるホールICを用いた構成に関しては何ら開示も示唆もされていない。
【0022】
更に、特許文献2に記載された操作レバー装置では、操作レバーの中立位置への復帰を捩じりバネ62の復元力だけで行っている。このため、操作レバーの中立位置への復帰時には、捩じりバネ62はその復元力によって振動を生じてしまう。この振動は操作レバーに伝達され、操作レバーは中立位置に復帰しても直ぐには静止することができずに、小刻みな振動を繰り返すことになる。
【0023】
即ち、中立位置に復帰した操作レバーは小刻みな振動を繰り返しながら静止することになる。このため、操作レバーに対する操作力を解除して操作レバーを中立位置に戻した直後に、作業者が操作レバーを再度操作しようとしても、操作レバーが震えているため新たな操作が行い難くなる。
【0024】
本発明では、上述の問題点を解決し、ホールICを用いて密閉性に優れ小型でコンパクトな操作レバー装置を提供するとともに、安価の構成により操作レバーの操作量をホールICで検出でき、しかもホールICで検出する永久磁石の可動範囲を広く構成することができ、摺動部での摩耗を抑えて操作レバーの操作に安定性を与えることができるとともに、操作レバーの操作に対するダンパー作用を持たせることのできる操作レバー装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明の課題は本願請求項1〜3に記載された各発明により達成することができる。
即ち、本発明の操作レバー装置では、操作レバーの傾倒操作により回動するシャフトが、その一端部側をハウジングとキャップとからなるケースによって形成される密閉空間内で回動自在に支承され、他端部側を前記ケースから外部に突出して配設され、前記シャフトの回動位置検出用の磁界を発生する永久磁石が、前記密閉空間内における前記シャフトの一端部側であって、前記ケース内面と近接した前記シャフト外周の所定部位に配設され、前記シャフトを中立位置に戻す捩じりバネが、前記密閉空間内における前記シャフトの一端部側に外嵌して配設され、前記操作レバーが、前記シャフトの他端部側に一体回転自在に取り付けられ、前記永久磁石からの磁界を電気信号に変換するホールICが、前記シャフトの中立位置からの回動により前記永久磁石の極性が変わる前記ケースの部位に配設されてなることを最も主要な特徴となしている。
【0026】
また、本発明では請求項2に記載したように、ケース内面とシャフトの一端部側との間に形成した隙間に、粘性流体を封入した構成を主要な特徴となしている。
更に、本発明では請求項3に記載したように、永久磁石の配置構成を主要な特徴となしている。
【発明の効果】
【0027】
本発明では、操作レバーの操作量を検出する検出部やシャフトの回動支承部や捩じりバネを、密閉状態の空間内に収納することができ、検出部やシャフトの回動支承部や捩じりバネに対して外部から塵埃、水滴等が付着するのを防止できる。
【0028】
また、シャフトの回動支承部や捩じりバネや永久磁石等を密閉空間内でコンパクトに配設することができるので、ケースによって形成されるシャフト軸方向の厚みを薄く構成することができる。従って、操作レバー装置におけるシャフト軸方向における寸法を小さく構成することができる。
【0029】
更に、本発明では、密閉空間内におけるケース内面とシャフトの一端部側との間に形成した隙間に、粘性流体を封入しておくことにより、シャフトの回動に対して抵抗力を付与することができる。粘性流体としては、シリコンオイル、作動油等を用いることができる。
【0030】
更にまた、本発明では、シャフトの周方向に離間して配設した2本の永久磁石を用いることができる。2本の磁石における対向する端面での磁極を異ならせて配設することにより、単価の安い棒状の永久磁石を用いても、単一のホールICで検出することのできる永久磁石の可動範囲を広く構成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明の好適な実施の形態による操作レバー装置を、添付図面に基づいて以下において具体的に説明する。本発明の操作レバー装置は、以下で説明する実施例に限定されるものではなく、本発明の技術思想を満たすことができるものであれば、多様な形態のものに適用することができる。
【実施例】
【0032】
図1には操作レバー装置1の外観斜視図を示し、図4には操作レバー装置1の要部正面図を示している。また、図5には操作レバー装置1の要部断面図を示している。図5に示すように、シャフト5の一端部側におけるフランジ部5a及び中空軸部5bは、ハウジング3とキャップ4とによって構成されるケース35の密閉空間14内において回動自在に支承されている。
【0033】
ケース35から外部に突出したシャフト5の他端部5cには、操作レバー2が取り付けられている。操作レバー2は、ケース35に形成した凹部30(図1参照)内を通ってケース35の上方側に突出している。
【0034】
ハウジング3とシャフト5の中空軸部5bとの間には、ダストシール22が配設されており、また、ハウジング3とキャップ4との間にはシールリング23が配設されている。ダストシール22を支持するダスト押え部26と中空軸部5bとの間にも、シールリング23が配設されている。この構成により、ハウジング3とキャップ4とで構成されるケース35内には密閉空間14が形成されている。
シールリング23としては、XリングやOリングを用いることができる。また、ダスト押え部26は、ハウジング3との一体形成により構成されている。また、径方向のスペースに余裕があれば、ダストシールとシールリングとを一体化したオイルシールを用いることもできる。
【0035】
また、キャップ4には密閉空間14内に突出した支持軸19が形成されており、支持軸19は一対のベアリング軸受15を介して、シャフト5の中空軸部5bを支承している。シャフト5の他端部5cに形成した凹部18には、シールリング33によって付勢されたボール25が配設されている。
【0036】
シールリング33によって付勢されたボール25によって、シャフト5の他端部5cと支持軸19との間の間隔を調整している。シールリング33としては、Oリング等の弾性力が付勢できる部材を用いることができる。このため、ボール25を支持軸19側に付勢するシールリング33を用いる代わりに皿バネ、コイルスプリング、ゴム等の弾性部材などを用いることもできる。
【0037】
中空軸部5bの端部には外周方向に延設したフランジ部5aが形成されており、フランジ部5aには、後述する一対の永久磁石7及び捩じりバネ6に係止する一対の係止部材10が配設されている。
更に、密閉空間14内には、シャフト5に外嵌した捩じりバネ6が配設されている。捩じりバネ6の構成については、図8、図9を用いて後述する。
【0038】
背面側から見た操作レバー装置1の外観斜視図を図2で示しているように、キャップ4はネジ27によってハウジング3に密接固定されている。また図5で示しているように密閉空間14内には図示せぬ粘性流体としてのシリコンオイルが封入されており、封入されたシリコンオイルの一部は、キャップ4とフランジ部5aとの間に形成されている隙間16aに浸入している。
また、密閉空間14内に封入したシリコンオイルの封入量によっては、フランジ部5aとハウジング3の内周面との間に形成されている隙間16bにも、シリコンオイルを浸入させておくこともできる。
【0039】
図4、図5に示すように、シャフト5の他端部5c及び操作レバー2に固定された二又固定部材11には、それぞれキー溝が形成されている。キー13をそれぞれのキー溝に係合させた状態で、二又固定部材11の端部に螺合したボルト12を締め込むことにより、操作レバー2をシャフト5に対して一体回転可能に固定することができる。
【0040】
図5〜図7を用いて、一対の棒状の磁石7a、7b及びホールIC8の構成について説明する。
シャフト5のフランジ部5aの外周面側には、一対の棒状の磁石7a、7bを収納挟持する磁石取付穴20a、20bが形成されている。図7で示すように、磁石取付穴20a、20bは、各棒状の磁石7a、7bを円形状断面のフランジ部5aにおける弦方向に配設できるように形成されている。
【0041】
磁石取付穴20a、20b内で接着剤により固定された棒状の磁石7a、7bの磁極は、各磁石7a、7bの対向面側の磁極がそれぞれ反対の磁極となるように配設されている。即ち、図7において磁石7aの上側の端面における磁極が、例えば、N極であれば、磁石7aのS極に対向する磁石7bの端面における磁極がN極となるように配設している。
【0042】
尚、図5では、一対の棒状の磁石7の配設部位を分かり易く図示するため、棒状の磁石7の配設部位を約90度回転させた状態で図示している。また、ハウジング3、キャップ4及びシャフト5等は、ステンレス鋼等の非磁性体の材質にて構成しておくことが望ましい。
【0043】
図7で示すように、一対の棒状の磁石7a、7bからの磁界を検出するホールIC8は、ハウジング3の側部に配設されている。ホールIC8における検出中心は、操作レバー2が中立位置にあるときの対向する各磁石7a、7bの端面間の中央部と、シャフト5の回動中心とを結んだ線上に来るように配設されている。
【0044】
図6、図7で示すようにホールIC8は、基板9上に取り付けられており、基板9はネジ34を介してハウジング3に取り付けられている。ホールIC8を取り付けるためにハウジング3に形成した開口穴内には、ホールIC8を取り付けた後において絶縁性の樹脂材が充填されている。また、ホールIC8を収納する前記開口穴は、ネジ29を介してハウジング3に取り付けたカバー28によって覆われている。
【0045】
カバー28には、ホールIC8に接続した電線を外部に引き出す電線取り出し用の孔を有する部材32が取り付けられている。
尚、図7では、操作レバー2が中立位置にあるときの一対の棒状の磁石7の配設部位とホールIC8との位置関係を示しているが、一対の棒状の磁石7の配設部位とホールIC8との位置関係とは、図示例に限定されるものではない。
【0046】
ホールIC8を、キャップ4に配設することや、あるいは、ハウジング3の上方部位、下方部位等に配設することもできる。このとき、棒状の磁石7の配設位置は、ホールICでの検出が可能な部位に配設しておくことが望ましい。
【0047】
また、ホールIC8で検出する永久磁石として、図示例では一対の棒状の磁石7a、7bを用いた構成について説明を行っている。しかし、本発明ではこの構成に限定されるものではなく、一本の棒磁石や線状の磁石を複数本束ねたものを用いて構成することも、扇形に形成した磁石を用いて構成することなどができる。磁石としては、磁束密度が高く、強い磁力を持つネオジウム磁石などを用いることが望ましい。
【0048】
尚、図7において符号27は、キャップ4をハウジング3に取り付けるときに使用しているネジ27(図2参照)であり、符号24は、操作レバー装置1を運転室のフロアー等に取り付けるときの取り付け孔として形成されている。
【0049】
次に、図5、図8、図9を用いて捩じりバネ6の構成について説明する。
図5に示すように、捩じりバネ6はシャフト5を外嵌して配設されており、捩じりバネ6の両端部近傍には、図8、図9で示すように、シャフト5のフランジ部5aに立設した一対の係止ピン10a、10bが係止している。
【0050】
尚、図8において実線で示した捩じりバネ6が、操作レバー2が中立位置に位置しているときの状態を示し、二点鎖線で示した捩じりバネ6が、操作レバー2の操作によりシャフト5のフランジ部5aが回動して、捩じりバネ6が変形した状態を示している。図9においては、実線で示す捩じりバネ6が変形した状態を示し、二点鎖線で示す捩じりバネ6が、操作レバー2が中立位置に復帰したときの状態を示している。
【0051】
操作レバー2が中立位置にあるとき、捩じりバネ6の両端部は、ハウジング3に形成した係止部位21にそれぞれ当接するとともに、捩じりバネ6に付与されている初期応力によって、一対の係止ピン10a、10bに係止している。このとき、一対の係止ピン10a、10bには、捩じりバネ6に付与されている初期応力が加わり、中立位置における操作レバーのガタツキを防止している。
【0052】
図8において、操作レバーが操作されてシャフト5が図8の時計回り方向に回動すると、係止ピン10bによって捩じりバネ6は実線の状態から二点鎖線の状態に変形する。このとき、係止ピン10aと捩じりバネ6との係止状態が解除されることになるが、係止ピン10aと係止していた捩じりバネ6の端部は、ハウジング3に形成した係止部位21との当接状態が維持されることになる。
【0053】
これにより、操作レバーには捩じりバネ6を変形させるためのトルクと、シャフト5とハウジング3又はシャフト5とキャップ4との間の隙間に浸入したシリコンオイルに対してせん断力を加えるためのトルクと、が発生する。
【0054】
即ち、シャフト5が支持軸19の回りに回動すると、上述した隙間に浸入したシリコンオイルに対して捩じり方向へのせん断応力が発生する。シリコンオイルに対して発生したせん断応力は、シャフト5の回動に対する抵抗力となって作用する。
【0055】
上述した捩じりバネ6を変形させるためのトルクとシリコンオイルに対するトルクとによって、操作レバー2の傾倒操作時に、作業者の操作力に対して抵抗力を与えることができる。また、これらのトルクの大きさを調整することによって、作業者の感性に応じた抵抗力となるように調整することができる。
【0056】
即ち、捩じりバネ6のバネ力を調整したり、シャフト5とハウジング3又はシャフト5とキャップ4との間の隙間を調整したり、密閉空間14に封入するシリコンオイルの封入量を調整したりすることにより、操作レバー2の傾倒操作時における抵抗力を任意に調整することができる。
【0057】
図9に示すように、図示せぬ操作レバー2を傾倒操作して捩じりバネ6を変形させた実線状態から、操作レバー2に対する操作力を解除して、二点鎖線で示す状態に捩じりバネ6を復元させると、係止ピン10bを介してシャフト5は図9の反時計回り方向に回動する。
【0058】
このとき、上述したシリコンオイルに対するせん断力がシャフト5とハウジング3又はシャフト5とキャップ4との間の隙間において発生する。このシリコンオイルに対するせん断力が操作レバー2の中立位置への復帰に対するダンパー作用として奏することになる。
【0059】
シリコンオイルによるダンパー作用によって、操作レバー2は急激に中立位置に復帰するのが防止される。また、操作レバー2が中立位置に復帰した時点での捩じりバネ6による振動が吸収される。これにより、操作レバー2は滑らかに中立位置に復帰することができ、しかも中立位置での小刻みな振動を発生させずに静止させることができる。
シャフト5とハウジング3、又はシャフト5とキャップ4との間の隙間に浸入させる粘性流体としては、シリコンオイルを用いる代わりに作動油を用いることもできる。
【0060】
捩じりバネ6の形状として、Ω(オメガ)形状の捩じりバネを例示しているが、この形状以外にもシャフト5を一周以上旋回するコイル部を備えた捩じりバネを用いることも、板バネにて図示例と同様の形状を有する捩じりバネを用いることもできる。
【0061】
尚、シャフト5を一周以上旋回するコイル部を備えた捩じりバネを用いた場合には、操作レバー装置1の軸方向の寸法が、捩じりバネのコイル部によって多少長くなってしまうことになる。このため、操作レバー装置1の軸方向の寸法を短く構成する上においては、望ましい形状の捩じりバネということにはならない。
【0062】
また、図5では、キャップ4にシャフト5を支持する支持軸19を設けた構成を例示しているが、図10に示すようにハウジング3に支持軸19を設け、操作レバー2側に配設したキャップ4をハウジング3に密着固定した構成とすることもできる。
【0063】
図10に示した構成では、図5におけるキャップ4を、図10におけるハウジング3の一部として構成するとともに、図5におけるハウジング3の一部、即ち、操作レバー2側の側面を、図10におけるキャップ4として構成している。他の構成は、図5における構成と同様の構成となっている。
【0064】
次に、操作レバー装置1の作動について説明する。
図1で示すように、操作レバー2が傾倒操作されると、操作レバー2の操作量に比例してシャフト5が回動する。シャフト5の回動によって、図7で示すように、フランジ部5aが回動し、フランジ部5aの外周部に配設した一対の永久磁石7a、7bとホールIC8との間における相対的な変位量として取り出される。
【0065】
また、一対の棒状の磁石7a、7bの磁極は、各磁石7a、7bの対向面側の磁極がそれぞれ反対の磁極となるように配設されている。このため、一対の磁石7a、7bにおける対向する面の中央部においては、磁石7aからの磁界と磁石7bからの磁界とが互いに逆向きの磁界となる。従って、操作レバー2が中立位置にあるときには、ホールIC8の検出中心では、同時に逆向きの磁界が作用することになる。即ち、ホールIC8の検出中心における磁界がキャンセルされていることになる。
【0066】
操作レバー2を中立位置から傾倒操作して、例えば、図7においてシャフト5のフランジ部5aが反時計回り方向に回動すると、磁石7aはホールIC8に近づき、磁石7bはホールIC8から遠ざかることになる。このとき、磁界がキャンセルされていたホールIC8の検出中心には、シャフト5の回動に伴って磁石7aからの磁界が徐々に強く作用してくることになる。
【0067】
即ち、この磁界の変化をホールIC8において電気信号として検出することにより、操作レバー2の操作量及び傾倒方向を電気信号として連続的に検出することができる。
逆に、図7においてシャフト5のフランジ部5aが時計回り方向に回動すると、磁石7aが近づいてきたときとは逆方向に磁界が、ホールIC8の検出中心には徐々に強く作用してくることになる。
【0068】
即ち、磁石7aが近づいてきた場合とは逆向きの磁界が、ホールIC8に作用してくることになり、ホールIC8ではシャフト5の回動方向が逆向きであることを検出できる。また、ホールIC8で検出する磁界の強さによって、シャフト5の回動量を検出することができる。
【0069】
従って、一対の永久磁石7a、7bからホールIC8上に作用している磁界が、シャフト5の回動によって変化する現象を捉えて、ホールIC8では磁界の変化を電気信号として取り出すことができる。これにより、操作レバー2の操作量及び操作方向を電気信号として正確に、しかも連続的に検出することができる。
【0070】
また、一対の棒状の磁石7a、7bは、フランジ部5aの周方向に離間して配設されているので、磁石7bから遠い磁石7aの端部から、磁石7aから遠い磁石7bの端部までの回動範囲を広く構成することができる。即ち、ホールIC8で検出できる磁石7a、7bの可動範囲を広く構成することができる。
【0071】
ところで、シャフト5の回動時には、一対の係止ピン10a、10bはシャフト5の回動に伴って回動する。一対の係止ピン10a、10bの回動により、図8で示すように捩じりバネ6を変形させることができる。捩じりバネ6が変形することによって、捩じりバネ6には操作レバー2を中立位置に復帰させる復元力が蓄積されることになる。
【0072】
図9で示すように、操作レバー2を角度θだけ傾倒操作した後、操作レバー2に対する操作力を解除すると、捩じりバネ6に蓄えていた復元力によって、操作レバー2は中立位置に自動復帰することになる。
【0073】
尚、図9で示した角度θとしては、捩じりバネ6の端部同士が当接したときの角度が最大角度となる。従って、操作レバー2としては、中立位置からそれぞれの片側に対して最大角度となるまで傾倒させることができる。
【0074】
また、捩じりバネ6の構成として、図9において一方の端部と他方側の端部とが、紙面の垂直方向に対しても捩じれて構成されている場合には、係止ピン10bが係止部位21によって回動が規制されている端部に当接するまで前記最大角度を拡大することもできる。
【0075】
上述したように操作レバー装置1は、密閉空間14を有する独立したものとして構成することができ、しかも、密閉空間14内にはベアリング軸受15、永久磁石7、ホールIC8、捩じりバネ6等をコンパクトに収納することができる。
【0076】
しかも、シャフト5の回動支承部や捩じりバネ6や永久磁石7等をケース35の密閉空間内でコンパクトに配設することができるので、ハウジング3とキャップ4とによって形成されるケース35の厚みを薄く構成することができる。これによって、操作レバー装置におけるシャフト5の軸方向における寸法を小さく構成することができる。
【0077】
また、複数の操作レバー装置1をシャフト5の軸方向に沿って重ね合わせて、図3で示すように直列配置することが可能となる。複数の操作レバー装置1を直列配置させたとしても、シャフト5の軸方向における長さ寸法は短く構成しておくことができる。
【0078】
しかも、図3に示すように、基盤31上に複数の操作レバー装置1を直列状態にて配設することが可能となる。基盤31としては、運転席等のフロアーを用いることや携帯用に持ち運び可能な板状体等として構成することができる。
【0079】
また、操作レバー2は、ハウジング3に形成した凹部30から上方に突出するように配設されているので、シャフト5の他端部5cや同他端部5cに固定する二又固定部材11を、ハウジング3によって覆って保護しておくことができる。
【0080】
更に、シャフト5の中空軸部5bは、一対のベアリング軸受15によって支承されているので、シャフト5が安定して回動できるように支承しておくことができる。これにより、シャフト5の回動に伴う永久磁石10からの磁界の変化を正確にホールIC8によって検出することができる。
【0081】
しかも、永久磁石10をシャフト5の外周部に配設しているので、シャフト5を同じ角度だけ回動させたとしても、外周部における円弧幅は大きくなり、永久磁石10の可動範囲を広く構成することができる。
【0082】
また、本発明では、密閉空間内にシリコンオイル、作動油等の粘性流体を封入しておくことにより、シャフト5とハウジング3との間やシャフト5とキャップ4との間に形成される隙間に粘性流体を浸入させておくことができる。隙間に浸入した粘性流体によって、シャフトの回動に対して抵抗力を付与することができる。
【0083】
これにより、操作レバー2の傾倒操作時における作業者の感性に応じた抵抗力の調整を、捩じりバネ6によるバネ力調整以外にも粘性流体の封入量によって行うことができる。また、捩じりバネ6の復元力によって操作レバー2を中立位置に復帰させる場合においても、復元力によって生じる振動を粘性流体によって吸収することができる。このため、中立位置への復帰時に、操作レバー2を振動させることなく中立位置で静止させることができる。
【0084】
この構成により、ハウジング3及びキャップ4で覆われる領域内に、主要な部材を全て配設することができる。このため、堅牢にして耐久性に優れ、しかも、防塵、防水性を備えた操作レバー装置1を構成することができる。また、操作レバー装置を密閉状態にて構成することができるので、操作レバー装置を運転室等に配設する以外にも、屋外等で使用する操作レバー装置としてそのまま使用することができる。
【0085】
しかも本発明では、ベアリング軸受を介してシャフトを密閉空間内で支承させておくことができ、シャフトの支承部での摩耗による粉塵の発生が防止される。これにより、常に安定した状態でシャフトを回動させることができ、シャフトの外周部に配設した永久磁石からの磁界の変化をホールICによって正確に検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0086】
本発明は、操作レバーの傾倒操作により作動させることができるものに対して、本発明の技術を有効に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】操作レバー装置の斜視図である。(実施例)
【図2】裏面側から見た操作レバー装置の斜視図である。(実施例)
【図3】複数の操作レバー装置を基盤上に配設した構成を示す斜視図である。(実施例)
【図4】操作レバー装置の正面図である。(実施例)
【図5】操作レバー装置の断面図である。(実施例)
【図6】操作レバー装置の一部破断面を含む側面図である。(実施例)
【図7】永久磁石とホールICとを含む断面図である。(実施例)
【図8】捩じりバネを含む断面図である。(実施例)
【図9】捩じりバネの作動状態を示す断面図である。(実施例)
【図10】他の操作レバー装置の断面図である。(実施例)
【図11】レバー装置の断面図である。(従来例1)
【図12】中立復帰装置の断面図である。(従来例2)
【符号の説明】
【0088】
1・・・操作レバー装置、2・・・操作レバー、3・・・ハウジング、4・・・キャップ、5・・・シャフト、6・・・捩じりバネ、7(7a、7b)・・・永久磁石、8・・・ホールIC、9・・・基板、10(10a、10b)・・・係止ピン、14・・・密閉空間、16a、16b・・・隙間、19・・・支持軸、21・・・係止部位、35・・・ケース、51・・・操作レバー、51a・・・ベース部、52・・・支持部材、53・・・軸、54・・・永久磁石、56・・・プリント基板、60・・・支軸、61・・・回転部材、62・・・捩じりバネ、63、64・・・係止ピン、65、66・・・ストッパー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
操作レバーの傾倒操作により回動するシャフトが、その一端部側をハウジングとキャップとからなるケースによって形成される密閉空間内で回動自在に支承され、他端部側を前記ケースから外部に突出して配設され、
前記シャフトの回動位置検出用の磁界を発生する永久磁石が、前記密閉空間内における前記シャフトの一端部側であって、前記ケース内面と近接した前記シャフト外周の所定部位に配設され、
前記シャフトを中立位置に戻す捩じりバネが、前記密閉空間内における前記シャフトの一端部側に外嵌して配設され、
前記操作レバーが、前記シャフトの他端部側に一体回転自在に取り付けられ、
前記永久磁石からの磁界を電気信号に変換するホールICが、前記シャフトの中立位置からの回動により前記永久磁石の極性が変わる前記ケースの部位に配設されてなることを特徴とする操作レバー装置。
【請求項2】
前記ケース内面と前記シャフトの一端部側との間に隙間が形成され、
前記密閉空間内の前記隙間部に、前記シャフトの回動に抵抗を与える粘性流体が封入されてなることを特徴とする請求項1又は2記載の操作レバー装置。
【請求項3】
前記永久磁石が、棒状の2本の磁石から構成され、かつ前記各棒状の磁石の長手方向が前記シャフトの円形状断面における弦方向に配設されるとともに、前記2本の磁石の対向する端面が異なる磁極となって前記シャフトの周方向に離間して配設されてなることを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の操作レバー装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−323188(P2007−323188A)
【公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−150399(P2006−150399)
【出願日】平成18年5月30日(2006.5.30)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】