説明

操作力伝達構造

【課題】 さらなる少部品点数化を可能とする。
【解決手段】 交差する二軸を中心に交差方向へ回動操作可能なレバー1と、レバー1のX−X方向への回動操作により同Y−Y方向への回動操作位置に関わらず移動操作される可動子3へ操作量を増幅して伝達する伝達体9とを備えた操作力伝達構造において、レバー1及び伝達体9間に、レバー1のY−Y方向への回動操作を許容し且つX−X方向への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能な第1の係合部27を設け、伝達体9及び可動子21間に、操作量の伝達につき反伝達方向で伝達体9に対する可動子3の係合を維持可能な第2の係合部35を設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車用のステアリング・ホイール側に備えられるコンビネーション・スイッチのレバー等に適用される操作力伝達構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の操作力伝達構造としては、例えば自動車のステアリング・ホイール側に備えられるコンビネーション・スイッチのレバーに適用された図5〜図7に示すようなものがある。図5は、コンビネーション・スイッチの要部断面図、図6は、レバー,伝達体,可動部の関係を概略的に示す要部側面図、図7は同平面図である。
【0003】
図5〜図7のように、レバー101は、可動盤102に対して軸103によりX−X方向へ回動操作可能に支持されている。可動盤102は、軸103と交差する可動盤102の軸によりスイッチ・ケース105側にY−Y方向へ回転可能に支持され、レバー101が可動盤102と共に可動盤102の軸を中心にY−Y方向へ回動操作可能となっている。
【0004】
前記レバー101の軸103を中心にしたX−X方向への回動操作は、伝達体107に伝達されるようになっている。伝達体107は、長短のアーム部109,111を有し、中間部113がレバー101に当接し、一端115がスイッチ・ケース105側に当接支持され、他端117が可動子119に当接している。中間部113には、図7のように係合軸部121が設けられている。
【0005】
前記可動子119には、可動接点123が設けられ、可動子119の下降移動により可動接点123が固定接点に接触する。可動子119の復帰は、スプリング125の付勢力で行われる。
【0006】
従って、レバー101の先端側を、軸103を中心にX−X方向へ下降移動させると、伝達体107の中間部113が下方へ押圧されて移動する。この移動により、伝達体107は、一端115がスイッチ・ケース105に支持されながら他端117が下降移動し、可動子119を押圧する。この押圧により可動子119がスプリング125の付勢力に抗して下降移動し、可動接点123が固定接点に接触する。
【0007】
前記伝達体107によりレバー101の操作が可動子119へ伝達されるときは、伝達体107のアーム部109,111のアーム比によりレバー101の操作量が可動子119へ増幅して伝達することができる。
【0008】
また、図7のように、レバー101が、前記軸103と交差する上述の軸を中心にY−Y方向の左右へ操作されているときでも、レバー101を軸103中心に下降回動させると、レバー101の先端側は、係合軸部121を含めて中間部113に干渉可能であるため、前記同様にレバー101から中間部113を介して伝達体107へ操作力が伝達され、可動子119を動作させることができる。
【0009】
前記レバー101を軸103を中心に元の上昇位置へ戻すと、スプリング125の付勢力により可動子119が元の位置へリターンし、伝達体107の他端117が押し上げられて伝達体107が図6の状態に復帰する。
【0010】
しかし、上記構成では、復帰用のスプリング125が必要となり、少部品点数化に限界を招いていた。
【0011】
【特許文献1】特開平11−162300号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
解決しようとする問題点は、少部品点数化に限界を招いていた点である。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、さらなる少部品点数化を可能とするため、操作体及び伝達体間に、操作体の他方への回動操作を許容し且つ一方への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能な第1の係合部を設け、伝達体及び被操作部間に、操作量の伝達につき反伝達方向で伝達体に対する被操作部の係合を維持可能な第2の係合部を設けたことを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の操作力伝達構造は、操作体及び伝達体間に、操作体の他方への回動操作を許容し且つ一方への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能な第1の係合部を設け、伝達体及び被操作部間に、前記操作量の伝達につき反伝達方向で伝達体に対する被操作部の係合を維持可能な第2の係合部を設けたため、操作体の操作によりその操作量を伝達体により被操作部へ増幅して伝達した後、操作体の回動操作を戻すと第1の係合部が反操作方向で操作体及び伝達体間を係合させ、伝達体に復帰力を伝達することができる。この伝達により第2の係合部が反伝達方向で伝達体及び被操作部間を係合させ、被操作部に復帰力を伝達することができる。従って、操作体の一方への回動操作を戻すことで、伝達体及び被操作部を復帰させることができる。
【0015】
前記操作体を他方へ回動操作したときでも、第1の係合部は、操作体の他方への回動操作を許容し且つ一方への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能にするから、操作体の他方への回動操作位置において操作体を一方へ回動操作し且つ操作を戻すと、第1の係合部により操作体から伝達体に復帰力を伝達することができる。従って、同様に操作体の一方への回動操作を戻すことで、伝達体及び被操作部を復帰させることができる。
【0016】
従って、被操作部を復帰させるためのスプリングを必要とせず、部品点数を削減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
さらなる少部品点数化を可能とするという目的を、簡単な構造で実現した。
【実施例1】
【0018】
図1は、本発明実施例1の操作力伝達構造の要部を示す側面図であり、図2は、図1のII−II先矢視断面図、図3は、図1のIII矢視における一部省略下面図、図4は、動作状態の一部省略下面図である。
【0019】
[操作力伝達構造]
図1〜図3で示す本発明実施例1の操作力伝達構造は、図5で示す従来のコンビネーション・スイッチの操作力伝達構造と同様に適用され、以下に示すレバー1、スイッチ・ケース7、可動盤4、伝達体9、及び可動子3等の構成は、例えば図5のレバー101、スイッチ・ケース105、可動盤102、伝達体107、及び可動子119に対応し、同様の位置関係で配置されている。
【0020】
すなわち、本実施例においても、操作体を自動車のステアリング・ホイール側に備えられるコンビネーション・スイッチのレバー1とし、被操作部を、可動接点を備えた可動子3として適用した。
【0021】
前記レバー1は、交差する二軸を中心に交差方向へ回動操作可能な構造となっており、具体的には、レバー1は、可動盤4に対して軸5により一方(図1においてX−X方向)へ回動操作可能に支持されている。可動盤4は、軸5と交差する可動盤4の軸によりスイッチ・ケース7側に回転可能に支持され、レバー1が可動盤4と共に前記X−X方向への回動操作に対して交差する方向(図3のY−Y方向)へ回動操作可能となっている。
【0022】
前記レバー1の軸5を中心にしたX−X方向への回動操作は、図5と同様に伝達体9に伝達されるようになっている。伝達体9は、長短のアーム部11,13を有し、中間部15がレバー1に当接し、一端17がスイッチ・ケース7側に当接支持され、他端19が被操作部である可動子3に当接している。中間部15には、図3のように一対の第1の係合軸部23が対称に設けられ、他端19にも同様な第2の係合軸部24が設けられている。
【0023】
前記可動子3には、可動接点25が設けられ、可動子3の下降移動により可動接点25が固定接点に接触する。
【0024】
前記レバー1及び伝達体9間には、第1の係合部27が設けられている。第1の係合部27は、レバー1のY−Y方向への回動操作を許容し且つX−X方向への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能としている。
【0025】
前記第1の係合部は、前記レバー1に設けられた前記第1の係合軸部23及び該第1の係合軸部23に係合する第1のフック部29で構成されている。第1のフック部29は、レバー1の先端側においてY−Y方向の両側に設けられ、レバー1に対称に設けられた突部31にそれぞれ配置されている。各第1のフック部29は、レバー1の先端側に開いた溝状の遊動部33を有し、第1の係合軸部23が遊動状態で係合している。
【0026】
前記伝達体9及び可動子3間には、第2の係合部35が設けられている。第2の係合部35は、レバー1の操作量の伝達につき反伝達方向で伝達体9に対する可動子3の係合を維持可能としている。
【0027】
前記第2の係合部35は、前記第2の係合軸部24及び該第2の係合軸部24に係合する第2のフック部37で構成されている。第2のフック部37は、前記第1のフック部29の遊動部33とは逆向きに開いた溝状の遊動部39を有し、第2の係合軸部24が遊動状態で係合している。
【0028】
[操作力伝達作用]
前記レバー1の先端側を、軸5を中心にX−X方向へ下降移動させると、伝達体9の中間部15が一端17を中心に下方へ押圧されて移動する。この移動により、伝達体9は、一端17がスイッチ・ケース7側に支持されながら他端19が下降移動し、可動子3を押圧する。この押圧により可動子3が下降移動し、可動接点25が固定接点に接触する。可動子3が下降移動すると伝達体9の他端19と可動子3との相対位置は変化するが、他端19の第2の係合軸部24が第2のフック部37の遊動部37内を遊動して相対動が許容される。
【0029】
前記伝達体9によりレバー1の操作が可動子3へ伝達されるときは、伝達体9のアーム部11,13のアーム比によりレバー1の操作量を可動子3へ増幅して伝達することができる。
【0030】
また、図4のように、レバー1が、前記軸5と交差する上述の軸を中心にY−Y方向へ操作されると、第1の係合軸部23が第1のフック部29の遊動部33内で相対的に遊動することができる。
【0031】
そして、レバー1を軸5中心に前記同様下降回動させると、レバー1の先端側は、第1の係合軸部23を含めて中間部15に干渉可能であるため、前記同様にレバー1から中間部15を介して伝達体9へ操作力が伝達され、可動子3を動作させることができる。
【0032】
前記レバー1を軸5を中心に元の上昇位置へ戻すと、第1のフック部29が第1の係合軸部23に係合して同方向へ引き上げる。この引き上げにより伝達体9の他端19の第2の係合軸部24が第2のフック部37に係合して引き上げ、可動子3を元の位置へ復帰させることができる。
【0033】
また、図4のように、レバー1が、前記軸5と交差する軸を中心にY−Y方向の左右へ操作されているときでも、レバー1の軸5を中心とした回動操作を戻すと、レバー1の第1のフック部29が第1の係合軸部23に係合するため、前記同様にレバー1から中間部15を介して伝達体9へ引き上げ力が伝達され、可動子3を元の位置へ復帰させることができる。
【0034】
[実施例の効果]
以上、本発明の実施例では、レバー1及び伝達体9に、レバー1のY−Y方向への回動操作を許容し且つX−X方向への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能な第1の係合部27である第1の係合軸部23及び第1のフック部29を設け、伝達体9及び可動子3間に、操作量の伝達につき反伝達方向で伝達体9に対する可動子3の係合を維持可能な第2の係合部35として第2の係合軸部24及び第2のフック部37を設けたため、レバー1の操作によりその操作量を伝達体9により可動子3へ増幅して伝達した後、レバー1の回動操作を戻すと第1のフック部29を第1の係合軸部23に係合させることができる。
【0035】
このため、レバー1及び伝達体9間を反操作方向で係合させ、伝達体9に復帰力を伝達することができる。この伝達により第2の係合部35の第2の係合軸部24及び第2のフック部37により伝達体9及び可動子3間が係合し、伝達体9に伝達された復帰力を可動子3に伝達することができる。
【0036】
従って、レバー1のX−X方向への回動操作を戻すことで、伝達体9及び可動子3を容易に復帰させることができる。
【0037】
前記レバー1をY−Y方向へ回動操作したときでも、第1の係合部27の第1のフック部29及び第1の係合軸部23は、レバー1のY−Y方向への回動操作を許容し且つX−X方向への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能にするから、レバー1のY−Y方向への回動操作位置においてレバー1をX−X方向へ回動操作し且つ操作を戻すと、第1の係合部27の第1のフック部29及び第1の係合軸部23によりレバー1から伝達体9に復帰力を伝達することができる。従って、同様にレバー1のX−X方向への回動操作を戻すことで、伝達体9及び可動子3を復帰させることができる。
【0038】
このため、可動子を復帰させるためのスプリングを必要とせず、部品点数を削減することができる。また、スプリングを設けるスペースを必要とせず、装置の小型化が可能となる。
前記第1の係合部27は、前記伝達体9に設けられた第1の係合軸部23及びレバー1に設けられ前記第1の係合軸部23に遊動状態で係合する第1のフック部29であるため、第1の係合軸部23及びフック部によりレバー1のY−Y方向への回動操作を許容し且つX−X方向への回動操作につき反操作方向での係合を確実に維持可能にすることができる。
[その他]
前記第1の係合軸部23を、レバー1側に設け、第1のフック部29を伝達体9側に設けることもできる。
【0039】
前記第2の係合軸部24を、可動子3側に設け、第2のフック部37を伝達体9側に設けることもできる。
操作力伝達構造は、コンビネーション・スイッチ以外にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】操作力伝達構造の要部を示す側面図である(実施例1)。
【図2】図1のII−II線矢視断面図である(実施例1)。
【図3】図1のIII矢視における一部省略下面図である(実施例1)。
【図4】動作状態の一部省略下面図である(実施例1)。
【図5】コンビネーション・スイッチの要部断面図である(従来例)。
【図6】レバー,伝達体,可動部の関係を概略的に示す要部側面図である(従来例)。
【図7】レバー,伝達体,可動部の関係を概略的に示す要部平面図である(従来例)。
【符号の説明】
【0041】
1 レバー(操作体)
3 可動子(被操作部)
5 軸
9 伝達体
23 第1の係合軸部(係合軸部、第1の係合部)
24 第2の係合軸部(第2の係合部)
27 第1の係合部
29 第1のフック部(第1の係合部)
35 第2の係合部
37 第2のフック部(第2の係合部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交差する二軸を中心に交差方向へ回動操作可能な操作体と、
前記操作体の一方への回動操作により同他方への回動操作位置に関わらず移動操作される被操作部へ操作量を増幅して伝達する伝達体とを備えた操作力伝達構造において、
前記操作体及び伝達体間に、操作体の他方への回動操作を許容し且つ一方への回動操作につき反操作方向での係合を維持可能な第1の係合部を設け、
前記伝達体及び被操作部間に、前記操作量の伝達につき反伝達方向で伝達体に対する被操作部の係合を維持可能な第2の係合部を設けた
ことを特徴とする操作力伝達構造。
【請求項2】
請求項1記載の操作力伝達構造であって、
前記第1の係合部は、前記伝達体及び操作体の一方に設けられた係合軸部及び該係合軸部に遊動状態で係合するフック部である
ことを特徴とする操作力伝達構造。
【請求項3】
請求項1又は2記載の操作力伝達構造であって、
前記操作体は、自動車のステアリング・ホイール側に備えられるコンビネーション・スイッチのレバーであり、
前記被操作部は、可動接点を備えた可動子である
ことを特徴とする操作力伝達構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−273117(P2007−273117A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−93865(P2006−93865)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(390001236)ナイルス株式会社 (136)
【Fターム(参考)】