説明

擬石の製造方法

【課題】擬石を短時間で大量に製造できる擬石の製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】本発明の擬石の製造方法は、少なくとも、セメント、細骨材、粗骨材、水を練り混ぜて流動性を調整することにより、所定の形状を自己保持できると共に、内部に空隙が発生するのを抑制可能なコンクリート材料19を形成し、このコンクリート材料19を加圧して脱水する。コンクリート材料19が所定の形状を自己保持できるので、プレス成型が容易になる。コンクリート材料19の水分が少ないので、プレス成型後に型枠17を直ぐに脱型できると共に、養生期間を短くできる。これにより、一個の型枠17で短時間に大量の擬石を製造できる。また、コンクリート材料19内に空隙が発生するのを抑制できるので、緻密な組成を有する高品質な擬石を製造できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートを用いた擬石の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、道路や床材として擬石が使用されている。この擬石の中には、コンクリートによって形成されたテラゾーブロックなど各種のものがある。
【0003】
従来、コンクリートで擬石を形成する場合、セメント、砂、骨材、顔料、化粧骨材、水などを練り混ぜ、これを型枠の中に入れて養生し、硬化させることによって製造していた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のコンクリートを用いて擬石を製造する方法では、型枠に入れたコンクリートが硬化するのに数日間を要するため、一個の型枠では、大量に製造するのが困難になるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、一個の型枠で短時間に擬石を大量に製造できる擬石の製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、前記課題を解決するため、以下の手段を採用した。
(1)すなわち、本発明は、少なくとも、セメント、細骨材、粗骨材、水を練り混ぜて流動性を調整することにより、所定の形状を自己保持できると共に、内部に空隙が発生するのを抑制可能なコンクリートを形成し、
前記コンクリートを加圧して脱水することを特徴とする。
【0007】
本発明では、擬石の材料となるコンクリートの流動性を調整することによって、成型前のコンクリートがそれ自体で所定の形状、例えば矩形の板形状を保持することができる。これにより、型枠を嵌め込む作業が容易になるので、コンクリートのプレス成型が可能になる。
【0008】
また、成型前のコンクリートに含まれる水分が少ないので、脱水に要する時間を短縮できると共に、成型後は養生水をより多く出すことができるので、加圧脱水処理の直後に型枠を外すことができ、更に成型後の硬化に要する養生期間を短くできる。従って、一個の型枠で短時間に大量の擬石を製造できる。
【0009】
更に、コンクリートの内部に空隙が発生するのを抑制できるので、緻密な組成を有する高品質の擬石を製造できる。
【0010】
(2)前記コンクリートの流動性は、そのモルタルフロー値が20±5cmの範囲内、好ましくは20±3cmの範囲内にあることが望ましい。更に、コンクリートの流動性は、モルタルフロー値が20±1cmであれば、より好ましい。
【0011】
(3)前記コンクリートには、顔料又は化粧骨材の一方又は両方を含ませることができる。これによって、色や模様の付いた擬石を形成できる。
【0012】
(4)前記コンクリートを、メッシュ筋及び透水シートが重ねられて形成された受台上に置き、型枠によってコンクリートを加圧して脱水するのが好ましい。この場合は、コンクリートの脱水を短時間でできる。
【0013】
(5)前記粗骨材としては、焼却灰、ガラス、マイナスイオン発生石、耐摩耗材料、透水性系材料の少なくとも何れかを使用できる。耐摩耗材料としては、ダイヤモンド、カーボンなどを例示できる。また、焼却灰や廃ガラスなどを用いることにより、産業廃棄物を有効利用できる。更に、透水性系材料としては安山岩系のものを使用でき、この場合は、製造された擬石の透水性が高くなる。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、コンクリートの流動性を調整することにより、コンクリートが所定の形状を自己保持できると共に、内部に空隙が発生するのを抑制できるので、このコンクリートをプレス成型によって加圧脱水することにより、一個の型枠で短時間に大量の擬石を製造できると共に、空隙のない高品質の擬石を製造できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を添付した図1から図3に基づいて詳細に説明する。図1に示すように、本発明に係る擬石の製造方法では、まずコンクリートを練り混ぜる(S1)。
【0016】
コンクリートには、少なくとも、セメント、砂などの細骨材、粗骨材、水が含まれている。また、本例では擬石に各種の色、模様、光沢を付けるため、コンクリートに顔料及び化粧骨材を混入する。更に、本例では、コンクリートに繊維も含まれている。
【0017】
また、骨材としては、焼却灰、ガラス、マイナスイオン発生石、耐摩耗材料、透水性系材料の少なくとも何れかを使用できる。耐摩耗材料としては、ダイヤモンド、カーボンなどを例示できる。
【0018】
骨材として、焼却灰や廃ガラスなどを用いることにより、産業廃棄物を有効利用できる。また、透水性系材料としては安山岩系のものを使用でき、この場合は、製造された擬石の透水性が高くなる。
【0019】
上記のようにコンクリートを練り混ぜる際には、コンクリートの流動性を調整する(S2)。本例では、コンクリートのモルタルフロー値が20±5cmの範囲内、好ましくは20±3cmの範囲内、更に好ましくは20±1cmの範囲内に入るように調整する。
【0020】
このように、コンクリートの流動性を調整することにより、型枠を使用することなくコンクリート自体で製造すべき擬石と相似形、例えば矩形の板形状を自己保持できる。
【0021】
そして、後述するように、このコンクリートに擬石と相似形の凹部を有する型枠を被せて、型枠をコンクリート側に押圧することにより、コンクリートの加圧脱水処理を短時間でできる。
【0022】
なお、コンクリートの流動性を示すモルタルフロー値は、セメント、砂、骨材、水、その他の成分の含有量を適宜調整することによって調整できる。
【0023】
上記のように、コンクリートの流動性を調整した後、プレス成型によって加圧、脱水を行う(S3)。このプレス成型は、図2に示すように、プレス成型装置1によって行うことができる。
【0024】
このプレス成型装置1は、所定の大きさの透水シート11と、この透水シート11の下側に積層されたメッシュ筋12と、メッシュ筋12との接触面14aに多数の排水穴13が設けられた受台14と、この受台14を適宜な高さに保持するための支持台15と、製造すべき擬石と相似形の凹部16を有する型枠17と、この型枠17を所定の力で下方に移動させる加圧装置18とを備えている。なお、図3中の符号20は導水路、21は排水管である。
【0025】
このプレス成型装置1によってプレス成型を行う場合は、透水シート11の上に擬石の素材となるコンクリート材料19を載置する。このコンクリート材料19は、上記で説明したように、所定の流動性を有している。
【0026】
すなわち、コンクリート材料19の流動性は、モルタルフロー値が20±5cmの範囲内、好ましくは20±3cmの範囲内、より好ましくは20±1cmの範囲内に入るように調整する。
【0027】
このような流動性を有するコンクリート材料19は、プレス成型を行う前の状態でも、型枠などを使用することなくコンクリート材料19自体で、擬石と相似形、例えば矩形の板形状など各種の形状を自己保持できる。
【0028】
このコンクリート材料19を製造すべき擬石と相似形にして、透水シート11上に載置する。本例では、矩形で板形状の擬石を製造するので、コンクリート材料19も矩形で板形状に形成する。
【0029】
次に、図3に示すように、型枠17を降下させてコンクリート材料19に上から嵌め入れる。次に、コンクリート材料19の上面19aを型枠17によって所定の力で下方に押圧する。
【0030】
これにより、コンクリート材料19が圧縮され、その中に含まれる水分が、透水シート11、メッシュ筋12、排水穴13、導水路20、排水管21を介して外部に排出される。これによりコンクリート材料19の水分が殆ど脱水され、所定の硬度となる。
【0031】
このようにして、図1のプレス成型処理(S3)が終了した後、型枠17をコンクリート材料19から脱型し、所定の時間、養生する(S4)。これによって、コンクリート材料19中の水分が略完全に脱水されて硬化される。上記の養生時間は、コンクリート材料19内の水分が殆ど脱水されているため、非常に短時間で完了する。
【0032】
養生が終了した後、擬石(コンクリート材料19)の表面研磨を行い(S5)、更に表面仕上げを行う(S6)。表面仕上げでは、エポキシやアクリルなどの樹脂を表面に塗布する。これにより、表面の保護ができる。
【0033】
このように、本発明の擬石の製造方法によれば、コンクリート材料19の流動性を調整して、加圧脱水する前にコンクリート材料19自体で、製造すべき擬石と相似形の状態を自己保持できるので、コンクリート材料19の取り扱いが容易になり、擬石の製造効率が向上する。
【0034】
また、プレス成型直後に、コンクリート材料19から脱型してもコンクリート材料19自体で所定の形状を保持できるので、一個の型枠17で短時間に擬石を大量に製造できる。更に、脱型後のコンクリート材料19すなわち擬石の養生期間を短くできるので、製造された擬石を早期に搬出でき、擬石の養生に必要な保管スペースを小さくできる。
【0035】
また、プレス成型前のコンクリート材料19には、ある程度の流動性があるので、その内部にポーラス(空隙)ができるのを抑制して緻密な組成を得ることができる。従って、このコンクリート材料19から製造された擬石は、ポーラスがなく、高品質化が可能になる。
【0036】
また、プレス成型時にコンクリート材料19内の余剰水が脱水されるので、圧縮、曲げ強度の高い擬石を製造できる。
【0037】
更に、擬石には化粧骨材が含まれておりその研磨後に光沢が出るので、外観が良好になる。このように高品質で外観が良好な擬石は、天然石に代わる石材として、土木建築分野における床や壁の仕上げ材料として、幅広く利用できる。特に、OAフロアーの床として好適である。
【0038】
なお、上記の実施形態では、矩形で板形状の擬石を製造する場合について説明したが、本発明は、円形、楕円形、多角形など各種の擬石を製造する場合に適用できる。
【0039】
また、上記の実施形態では、コンクリート材料19に、繊維、顔料及び化粧骨材を混入したが、繊維、顔料、化粧骨材の何れか又は全部を混入しないで擬石を製造することもできる。
【0040】
更に、型枠17における凹部16の内面に各種の凹凸を設けることにより、擬石の表面に、例えば点字ブロックや岩石の割肌(割れ目)のような各種のテクスチャ、文字、記号、模様などを容易に設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る擬石の製造方法を示すフローチャートである。
【図2】本発明に係るプレス成型装置を示す断面図であり、型枠をコンクリート材料に嵌め入れる前の状態を示す図である。
【図3】本発明に係るプレス成型装置を示す断面図であり、型枠をコンクリート材料に嵌め入れた状態を示す図である。
【符号の説明】
【0042】
1 プレス成型装置
11 透水シート
12 メッシュ筋
13 排水穴
14 受台
14a 接触面
15 支持台
16 型枠の凹部
17 型枠
18 加圧装置
19 コンクリート材料
19a 上面
20 導水路
21 排水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、セメント、細骨材、粗骨材、水を練り混ぜてその流動性を調整することにより、所定の形状を自己保持できると共に、内部に空隙が発生するのを抑制可能なコンクリートを形成し、
前記コンクリートを加圧して脱水することを特徴とする擬石の製造方法。
【請求項2】
前記コンクリートの流動性は、そのモルタルフロー値が20±5cmの範囲内、好ましくは20±3cmの範囲内であることを特徴とする請求項1に記載の擬石の製造方法。
【請求項3】
前記コンクリートには、顔料又は化粧骨材の一方又は両方を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の擬石の製造方法。
【請求項4】
前記コンクリートを、メッシュ筋及び透水シートが重ねられて形成された受台上に置き、型枠によって加圧して脱水することにより、所定の形状に仕上げることを特徴とする請求項1から3の何れかに記載の擬石の製造方法。
【請求項5】
前記粗骨材は、焼却灰、ガラス、プラスチック、マイナスイオン発生石、耐摩耗材料、透水性系材料の少なくとも何れかであることを特徴とする請求項1から4の何れかに記載の擬石の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2006−167941(P2006−167941A)
【公開日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−359625(P2004−359625)
【出願日】平成16年12月13日(2004.12.13)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(000112749)フジミ工研株式会社 (24)
【Fターム(参考)】