説明

支持体を艶消し被覆するための方法

【課題】ポリウレタン分散液から得ることができる被覆ができるだけ低い光沢度を有し、光沢度が摩擦によって本質的に変化すべきではなく(再艶出し可能性なし)、支持体の色調が被覆によって本質的に変化すべきではなく、記載された性質は若干のポリウレタン分散液の使用によって得ることができ、ポリウレタン分散液で処理された皮革は良好な機械的性質を有するべきであることを満たすポリウレタン分散液を、織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙上に塗布することにより、支持体を艶消し被覆する方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1つの水性ポリウレタン調剤を、織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙上に塗布することにより、支持体を艶消し被覆する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持体を艶消し被覆するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
支持体、例えば木材、金属、プラスチック、織物または皮革の被覆に使用されるポリウレタン分散液は、一般に高光沢のポリマー被膜をもたらす。
【0003】
しかし、若干の使用の場合、例えば自動車用皮革およびクッション用皮革を被覆する場合には、できるだけ僅かな光沢度を有する被覆がよく売れる。この僅かな光沢度は、例えば利用した際に生じるような摩擦によって変化してはならず;即ち、被覆は、できるだけ僅かな程度に再艶出し可能でなければならない。更に、被覆は、支持体の色調の変化を生じてはならず;例えば、黒に呈色した皮革は、被覆によって灰色になってはならない。
【0004】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4016713号明細書A1には、艶消し仕上げされた被覆を製造するために、70℃未満で被膜形成するポリマー分散液と70℃未満で被膜形成しないポリウレタン−ポリ尿素分散液との混合物が記載されている。この混合物の欠点は、この混合物の製造のために2つの異なる分散液を準備しなければならないことであり、このことは、増大された合成費用を意味する。
【0005】
ドイツ連邦共和国特許出願公開第4017525号明細書A1には、側方の側鎖基を有しない少なくとも1つのジイソシアネートおよび少なくとも1個の側方の側鎖基を有する少なくとも1つのジイソシアネートから得ることができるポリウレタンを含有する水性ポリウレタン調剤が記載されている。しかし、この分散液を用いて得ることができる被覆は、再艶出し可能性に関連してもはや現代の要求を満たすものではない。更に、こうして得ることができる分散液は、安定性の問題を示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4016713号明細書A1
【特許文献2】ドイツ連邦共和国特許出願公開第4017525号明細書A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
即ち、本発明の課題は、次の要求:
− 前記分散液から得ることができる被覆は、できるだけ低い光沢度を有するべきであること、
− 光沢度は、摩擦によって本質的に変化すべきではないこと(再艶出し可能性なし)、
− 支持体の色調は、被覆によって本質的に変化すべきではないこと、
− 記載された性質は、若干のポリウレタン分散液の使用によって得ることができること、
− ポリウレタン分散液で処理された皮革は、良好な機械的性質を有するべきであること
を満たすポリウレタン分散液を、織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙上に塗布することにより、支持体を艶消し被覆する方法を提供することであった。
【0008】
更に、本発明は、特に僅かな光沢度および僅かな再艶出し可能性を有する被覆のための被覆剤として前記調剤の使用ならびに前記調剤で被覆された織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙にも関する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、
a)側方のアルキル基を有しない少なくとも1つの有機イソシアネート[モノマーI]、
b)場合によっては少なくとも1個の側方のアルキル基を有する少なくとも1つの有機イソシアネート[モノマーII]、
c)400〜6000の数平均分子量の少なくとも1つの少なくとも2価のアルコール[モノマーIII]、
d)62〜399の数平均分子量の少なくとも1つの少なくとも2価のアルコール[モノマーIV]、
e)少なくとも1個のヒドロキシ基を有する少なくとも1つのカルボン酸[モノマーV]、
f)少なくとも2個の>N−H基を有するポリアミンなしかまたは少なくとも2個の>N−H基を有する1つ以上のポリアミン[モノマーVI]、
g)少なくとも1個のアルコール性OH基および少なくとも1個の>N−H基を有する化合物なしかまたは少なくとも1個のアルコール性OH基および少なくとも1個の>N−H基を有する1つ以上の化合物[モノマーVII]および
h)1価ポリエーテルアルコールなしかまたは1つ以上の1価ポリエーテルアルコール[モノマーVIII]から構成されている少なくとも1つのポリウレタンA10〜60質量%を含有し、この場合導入されたモノマーI〜VIIIの量は、
導入された
モノマーIII/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0.1〜0.75であり、
モノマーIV/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0.2〜0.8であり、
モノマーV/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0.05〜0.5であり、
モノマーVI/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0〜0.4であり、
モノマーVII/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0〜0.4であり、
モノマーVIII/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0〜0.2であり、
モノマーIII〜VIIIの総和/モノマー(I+II)の(−OH+>N−H)/NCO−当量比が0.80〜1.25であり、
モノマーIとモノマーIIの全体量がモノマーIを50〜100モル%含有し、水性調剤中でポリウレタンA 1kg当たり導入されたモノマーVのカルボキシ基50〜2000mMolが陰イオンで存在し、分散分布されたポリウレタン粒子が2〜15μmの粒径を有することが定められている、少なくとも1つの水性ポリウレタン調剤を、織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙上に塗布することにより、支持体を艶消し被覆する方法によって解決された。
【0010】
有機基本骨格が側方のアルキル基を有しないモノマーIとして、モノイソシアネート、ジイソシアネートもしくはポリイソシアネートまたはその混合物、有利に脂肪族ジイソシアネートヘキサメチレンジイソシアネートおよび4,4′−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタンがこれに該当する。
【0011】
有機基本骨格が少なくとも1個の側方のアルキル基を有するモノマーIIとして、モノイソシアネート、ジイソシアネートもしくはポリイソシアネートまたはその混合物、有利にイソシアネート、例えばトリメチルヘキサンジイソシアネート、1−イソシアナト−3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン(IPDI)、2,4−ジイソシアネートトルエン、2,6−ジイソシアナトトルエン、テトラメチルキシリレンジイソシアネートならびにそれから誘導されたカルボジイミド基、アロファネート基、イソシアヌレート基、ウレタン基またはビウレット基を有するポリイソシアネートがこれに該当する。好ましいのは、ジイソシアネートであり、この中で脂肪族ジイソシアネート、殊に1−イソシアナト3,3,5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサンおよびトリメチルヘキサンジイソシアネートが特に好ましい。有利に、モノマーIIの側方のアルキル基は、側方のアルキル基1個当たり1〜3個のC原子、特に有利に1個のC原子を有する。
【0012】
モノマーIまたはIIの場合にモノイソシアネートを共用する場合には、このモノイソシアネートの含量は、有利にモノマーIまたはII中のイソシアネート基の全体量に対してそれぞれイソシアネート基最大で10モル%である程度に定められる。好ましくは、モノマーIならびにモノマーIIは、2の平均NCO官能性を有する。特に好ましいのは、モノマー混合物Iおよび/またはIIであり、これらは、専らジイソシアネートから構成されている。更に、モノマーIおよびIIからの全体量は、モノマーIに対して特に50〜100モル%、特に有利に70〜100モル%、殊に有利に90モル%を上廻り100モル%以下、殊に95モル%〜100モル%、際立って有利には、100モル%を含む。
【0013】
適当なモノマーIIIは、殊に2価または多価のポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールであり、この場合には、2価のポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールが好ましい。ポリエステルポリオールとしては、なかんずく多価アルコールと多塩基性カルボン酸との自体公知の反応生成物がこれに該当し、この場合アルコール成分は、過剰量で使用される。多塩基性カルボン酸は、脂肪族、脂環式、芳香族、複素環式またはエチレン系不飽和の性質を有していてもよく、ならびに場合によってはハロゲン原子を置換基として有していてもよい。また、多塩基性カルボン酸の代わりに、この多塩基性カルボン酸の無水物は、エステル化されていてもよい。適当な多塩基性出発カルボン酸の例としては、次のものが挙げられる:コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、フタル酸無水物、テトラヒドロフタル酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、テトラクロルフタル酸無水物、エンドメチレンテトラヒドロフタル酸無水物、無水グルタル酸、マレイン酸、無水マレイン酸またはフマル酸。過剰量で使用することができる多価アルコールとしては、次のものが挙げられる:
エタンジオール−(1,2)、プロパンジオール−(1,2)、プロパンジオール−(1,3)、ブタンジオール−(1,2)、ブタンジオール−(1,3)、ブタンジオール−(1,4)、ブテンジオール−(1,4)、ブチンジオール−(1,4)、ペンタンジオール−(1,5)およびその位置異性体、ヘキサンジオール−(1,6)、オクタンジオール−(1,8)、1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ヘキサントリオール−(1,2,6)、ブタントリオール−(1,2,4)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、378〜900、有利に378〜678の分子量を有するポリエチレングリコール、134〜1178、有利に134〜888の分子量を有するポリ−1,2−プロピレングリコールまたはポリ−1,3−プロパンジオール、162〜2000、有利に378〜1458、特に有利に378〜678の分子量を有するポリ−THF。
【0014】
好ましいのは、ジオールとジカルボン酸とからのポリエステルポリオールである。更に、ポリエステルポリオールとしては、開始剤分子として使用された2価アルコールへのラクトンまたはラクトン混合物の付加生成物が適している。好ましいラクトンの例は、ε−カプロラクトン、β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトンまたはメチル−ε−カプロラクトンである。
【0015】
適当な開始剤分子は、殊に既にポリエステルポリオールのために構成成分として記載された低分子量の2価アルコールである。
【0016】
勿論、モノマーIIIとしてのヒドロキシカルボン酸からのポリエステルも適している。更に、例えばホスゲンまたはジフェニルカーボネートおよびポリエステルポリオールのための構成成分として挙げられた低分子量の2価アルコールから過剰量で得ることができるポリカーボネートは、ポリエステルとして適当なモノマーIIIである。
【0017】
ポリエーテルポリオールとして適当なモノマーIIIとしては、有利にポリエーテルジオールがこれに該当し、例えばこのポリエーテルジオールは、酸化エチレン、酸化プロピレン、酸化ブチレン、テトラヒドロフラン、酸化スチレンまたはエピクロロヒドリンそれ自体かまたは互いの硼素三弗化物により促進される結合によって得ることができるかまたは前記化合物を個々にかまたは混合物で反応能力を有する水素原子を有する開始剤成分、例えば水、多価アルコールまたはアミン、例えばエタンジオール−(1,2)、プロパンジオール−(1,3)、1,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンもしくは2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)プロパンまたはアニリンに付加することによって得ることができる。更に、ポリエーテル−1,3−ジオール、例えば酸化アルキレン鎖が1〜18個のC原子を有するアルキル基で終結されている、OH基上でアルコキシル化されたトリメチロールプロパン、有利に使用されるモノマーIIIである。
【0018】
モノマーIVは、2価または多価のアルコールであってよく、その中で2価のアルコールが好ましい。
【0019】
モノマーIVとしては、なかんずくポリエステルポリオールのための構成成分として記載された低分子量のポリオールならびに多価アルコール、例えばトリメチロールブタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ネオペンチルグリコール、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールエステル、ペンタエリトリット、2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセリン、ジトリメチロールプロパン、ジペンタエリトリット、ヒドロキノン、ビスフェノールA、ビスフェノールB、ビスフェノールS、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノールおよび1,4−シクロヘキサンジメタノール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,3−シクロヘキサンジオールまたは1,4−シクロヘキサンジオールまたは糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリトリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトールまたはイソマルトールがこれに該当する。有利には、直鎖状1,ω−ジヒドロキシアルカン、特に有利にブタンジオール−(1,4)およびヘキサンジオール−(1,6)は、ポリウレタンA中に組み込まれる。特に好ましくは、モノマーIIIならびにモノマーIVは、専ら2価アルコールからなる。好ましくは、少なくとも1つのポリウレタンA中に組み込まれたモノマーIIIおよびIVは、アルコール性−OH基のモル比(IV:III)が1〜8、有利に2〜6である程度に定められる。
【0020】
少なくとも1個のヒドロキシ基(−OH)を有するカルボン酸[モノマーV]は、1つの任意の対イオンまたは多数の任意の対イオン、例えばLi+、Na+、K+、Cs+、Mg2+、Ca2+またはBa2+が随伴されていてよい少なくとも1個、有利に1〜3個、特に有利に1〜2個および殊に有利に1個のカルボキシ基官能基(−COOH)またはその陰イオン形を有する化合物である。更に、対イオンとしては、アンモニアまたはアミン、殊に第三アミンから誘導されたアンモニウムイオンまたは第四アンモニウムイオン、例えばアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、エチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、トリブチルアンモニウム、ジ−イソプロピル−エチル−アンモニウム、ベンジルジメチルアンモニウム、モノエタノールアンモニウム、ジエタノールアンモニウム、トリエタノールアンモニウム、ヒドロキシエチル−ジメチルアンモニウム、ヒドロキシエチル−ジエチルアンモニウム、モノプロパノールアンモニウム、ジプロパノールアンモニウム、トリプロパノールアンモニウム、ピペリジニウム、ピペラジニウム、N,N′−ジメチルピペラジニウム、モルホリニウム、ピリジニウム、テトラメチルアンモニウム、トリエチルメチルアンモニウム、2−ヒドロキシエチル−トリメチルアンモニウム、ビス−(2−ヒドロキシエチル)−ジメチルアンモニウム、トリス−(2−ヒドロキシエチル)−メチルアンモニウムが随伴されていてよい。
【0021】
対イオンとして好ましいのは、アンモニウムである。多数の異なる対イオンが存在する場合には、これらの対イオンの下でのアンモニウムイオンの含量は、有利に50〜100モル%、特に有利に75〜100モル%、殊に有利に90〜100モル%、殊に100モル%である。
【0022】
少なくとも1個のヒドロキシ基を有するカルボン酸は、脂肪族、脂環式または芳香族であってもよいし、分枝鎖状または非分枝鎖状であってもよく、場合によっては置換されていてもよい。
【0023】
特に好ましいモノマーVは、2〜6個の炭素原子、特に有利に3〜5個の炭素原子、殊に4〜5個の炭素原子を有する。
【0024】
モノマーVの例は、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、乳酸、3−ヒドロキシプロピオン酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、トリメチロール酢酸、ヒドロキシピバリン酸または糖酸、例えばグルコン酸、グルカル酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸またはムチン酸(ガラクタル酸)であり、好ましいのは、乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、トリメチロール酢酸、ヒドロキシピバリン酸およびグルクロン酸であり、特に好ましいのは、乳酸およびジメチロールプロピオン酸であり、殊に好ましいのは、ジメチロールプロピオン酸である。
【0025】
また、モノマーVは、混合物として使用されてもよい。
【0026】
特に、本発明によるポリウレタン調剤は、ポリウレタンAを含有し、この場合には、水性調剤中でポリウレタンA 1kg当たり導入されたモノマーVに対してカルボン酸70〜1000mMol、特に有利に100〜700mMolがイオン化され、即ち陰イオン形で存在する。
【0027】
モノマーVIは、特に32〜500、有利に60〜300の分子量を有する。専ら、第三アミノ基を有しないポリアミンが重要である。適当なモノマーVIの例は、ジアミン、例えば1,2−ジアミノエタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、2,5−ジメチルピペラジン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)、4,4′−ジ(アミノシクロヘキシル)−メタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,2−ジアミノプロパンおよび1,3−ジアミノプロパン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、トリアミン、例えばジエチレントリアミンまたはテトラミン、例えばN,N′−ビス−(3−アミノプロピル)1,4−ジアミノブタンである。しかし、モノマーVIとしては、ケチミン、例えばドイツ連邦共和国特許出願公告第2725589号明細書に記載されているようなケチミン、ケタジン、例えばドイツ連邦共和国特許出願公告第2811148号明細書および米国特許第4269748号明細書に記載されているようなケタジン、アミン塩、例えば米国特許第4292226号明細書に記載されているようなアミン塩またはオキサゾリジン、例えばドイツ連邦共和国特許出願公告第2732131号明細書および米国特許第4192937号明細書に記載されているようなオキサゾリジンがこれに該当する。この場合には、マスクドポリアミンが重要であり、このマスクドポリアミンからは、水の存在下に中期に相応するポリアミンが放出される。
【0028】
好ましくは、モノマーVIとしてエチレンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)および4,4′−ジ(アミノシクロヘキシル)−メタンが使用され、特に有利には、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン(IPDA)が使用される。
【0029】
(−OH+>N−H)/NCO当量比は、本発明によれば、使用されたモノマーVI/(I+II)については、0〜0.4。有利に0〜0.2、特に有利に0.02〜0.2である。
【0030】
モノマーVIIとしては、殊にアミノアルコール、例えばエタノールアミン、イソプロパノールアミン、メチルエタノールアミンならびにアミノエトキシエタノールがこれに該当する。
【0031】
モノマーVIIIは、有利に500〜10000の数平均分子量、特に有利に1000〜5000の数平均分子量を有する。このモノマーVIIIは、通常、低分子量の1価の開始剤分子、例えばメタノール、エタノールまたはn−ブタノールをアルコキシル化することによって得ることができ、この場合には、アルコキシル化剤として有利に酸化エチレンまたは酸化エチレンと別のアルキレン酸化物、殊に酸化プロピレンとの混合物が使用される。アルキレン酸化物を用いてアルコキシル化する場合には、このアルキレン酸化物は、有利に酸化エチレン少なくとも40モル%、特に有利に酸化エチレン少なくとも65モル%を含有する。導入されたモノマーの全体量に対するモノマーVIIIの質量分は、有利には10質量%を超えてはならない。
【0032】
更に、ポリウレタンAの構成に適したモノマーI〜VIIIの例は、例えばHigh Polymers, Vol. XVI, "Polyurethanes, Chemistry and Technology", Interscience Publishers, New Yorl, 第1巻, 1962, 第32〜42頁, 第44〜54頁および第II巻, 第5〜6頁および第198〜199頁に記載されている。特に、ポリウレタンAは、2個のイソシアネート基またはイソシアネート基と反応しうる2個の基を有するモノマーI〜VIIIを組み込んで含有している。有利には、モノマーI〜VIIIは、イソシアネート基と反応しうるヒドロキシ基およびアミノ基に対してほぼ等量の全体数が、イソシアネート基の全体数に相対するような量で少なくとも1つのポリウレタンA中に組み込まれる。特に、当量比は、0.9〜1.11、特に有利に0.95〜1.05である。
【0033】
本発明による水性ポリウレタン調剤の製造は、有利にモノマーI〜Vならびに場合によってはモノマーVIIおよびVIIIを溶融液中でかまたは水と混和性の不活性溶剤、例えばアセトン、テトラヒドロフラン、ブタノン、ジエチルケトン、環状または開鎖状のカーボネートまたはN−メチルピロリドンの存在下で20〜160℃、有利に50〜100℃の温度で反応させるようにして行なわれ、この場合反応時間は、通常、2〜10時間である。自体公知の方法で触媒活性の物質、例えばジブチル錫ジラウレート、錫−(II)−オクトエートまたは1,4−ジアゾビシクロ−(2,2,2)−オクタンを通常溶剤不含の反応混合物に対して10〜100ppmの量で共用することによって、反応は、促進させることができる。引続き、場合によっては水と混和性の溶剤で希釈され、モノマーVのイオノゲン基は、中和によって場合によりイオン化され、水が添加され、場合によってはモノマーVIが攪拌混入される。その後に、通常、沸点が水の沸点よりも低い溶剤が好ましいので、場合によっては共用される有機溶剤は、留去される。モノマーVIをポリウレタンA中に導入する場合には、このモノマーVIは、残りのモノマーから構成されたポリウレタンを含有する水性反応混合物に、有利に攪拌混入によって20〜50℃の温度で添加される。場合によっては、モノマーVIは、分散前に水と一緒に添加されてもよい。
【0034】
添加される水量は、通常、本発明による水性ポリウレタン調剤が10〜80質量%の固体含量を有するように定められる。調剤中に含有されているポリウレタンは、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中で不溶性の代表例を除外してDMF中で一般に20〜80のK値を有する。K値は、DIN53726と同様に23℃で定められる相対粘度数である。このK値は、純粋なDMFの流速に対するDMF中でのポリウレタンの1質量%の溶液の流速を含み、ポリウレタンの平均分子量を特性決定する。
【0035】
水性ポリウレタン分散液を製造する場合、付加反応、即ち個々のモノマーの互いの反応は、しばしば触媒を使用しながら実施される。この場合には、殊に錫の有機化合物、例えばジブチル錫ラウレートまたは錫−(II)−オクタノエートが良好であることが証明された。しかし、錫のこの種の有機化合物が、なかんずく高い毒性を有し、劣悪な分解可能性のために不所望にも環境中で増加することは、公知である。錫の通常使用されるジオルガニル化合物は、実際に所謂トリオルガニル化合物よりも危険性が少ないが、しかし、錫のジオルガニル化合物の購買可能な調製物は、特殊な製造のために常に錫のトリオルガニル化合物の或る程度の含量を含む。また、選択的に別の金属有機化合物、即ち少なくとも1個の共有金属−炭素結合を有する金属有機化合物、例えばビスマスオルガニルも使用される。
【0036】
本発明によれば、好ましくは、それぞれの金属オルガニルの触媒反応は、省略される。
【0037】
本発明によるポリウレタン調剤を製造するための上記モノマーのポリ付加は、出願日2001年12月12日の出願番号10161156.0をもつドイツ連邦共和国特許出願の記載と同様に、特に有利にセシウム塩の存在下で行なうことができる。この場合、好ましいセシウム塩は、次の陰イオン:
-、Cl-、ClO-、ClO3-、ClO4-、Br-、I-、IO3-、CN-、OCN-、NO2-、NO3-、HCO3-、CO32-、S2-、SH-、HSO3-、SO32-、HSO4-、SO42-、S222-、S242-、S252-、S262-、S272-、S282-、H2PO2-、H2PO4-、HPO42-、PO43-、P274-、(OCn2n+1-、(Cn2n-12-、(Cn2n-32-ならびに(Cn+12n-242-
が使用されるような化合物であり、この場合nは、1〜20の数を表わす。
【0038】
この場合、特に好ましいのは、陰イオンが式(Cn2n-12-ならびに(Cn+12n-242-に従うようなセシウムカルボキシレートであり、但し、nは1〜20であるものとする。殊に好ましいセシウム塩は、陰イオンとして一般式(Cn2n-12-のモノカルボキシレートを有し、この場合nは、1〜20の数を表わす。この場合には、殊に蟻酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、ヘキサン酸塩および2−エチルヘキサン塩酸である。
【0039】
セシウム塩は、溶剤不含のバッチ量1kg当たりセシウム塩0.01〜10mmolの量で使用される。好ましくは、セシウム塩は、溶剤不含のバッチ量1kg当たりセシウム塩0.05〜2mmolの量で使用される。
【0040】
セシウム塩は、バッチ量に固体の形で添加されうるが、しかし、好ましくは、溶解された形で添加されることができる。溶剤としては、極性の非プロトン性溶剤が適当であるが、プロトン性溶剤も適当である。特に好適なのは、水とともにアルコールであり;殊に好適なのは、とにかくポリウレタンのための構成成分として使用されるようなポリオール、例えばエタンジオール、プロパンジオールおよびブタンジオールである。セシウム塩の使用は、常用の条件下でポリ付加を生じることを可能にする。
【0041】
ポリマーへの反応に続いて、好ましくは、出願日2001年6月5日の出願番号10127208.1をもつドイツ連邦共和国特許出願に記載された方法と同様に、上記の中和度になるまで中和が行なわれる。このためには、殊にアンモニアが好適である。
【0042】
この場合、中和後のCOO-NH4+の含量は、例えば50〜2000mmol/kg、有利に100〜600mmol/kg、特に有利に200〜500mmol/kg、殊に有利に250〜500mmolであった。
【0043】
更に、中和後に水で分散され、場合によっては溶剤は留去される。水を添加し、引続き蒸留によって溶剤を除去することによって、殊に望ましい固体濃度を生じさせることができる。
【0044】
原料およびその量比を特別に選択することによって、本発明によるポリウレタン調剤は、ポリウレタンマトリックス中で不溶性の粒子を含有し、この場合この粒子の平均直径は、1〜20μm、特に有利に2〜15μm、殊に有利に3〜10μm、殊に3〜7μmである。
【0045】
よりいっそう大きな粒径を有する粒子を含有する水性ポリウレタン分散液は、安定性でなく、皮革上でざらざらした感触を示し;よりいっそう小さな粒径は、艶消し効果を全く示さない。
【0046】
ポリウレタン分散液は、市販の助剤および添加剤、例えば発泡剤、消泡剤、乳化剤、濃稠化剤、湿潤剤およびチキソトロープ剤、着色剤、例えば染料および顔料を含有することができる。
【0047】
本発明による水性ポリウレタン調剤は、技術的または審美的な理由から減少された表面光沢を有する被覆が望ましい場合には、有利に被覆に対する質量のための結合剤として適当である。適当な支持体は、織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙であり、好ましい支持体は、織物および皮革であり、特に好ましいのは、皮革である。注目すべきことに、本発明による水性ポリウレタン調剤を使用する際に結合剤として得ることができる被覆は、減少された光沢と共に高められた耐磨耗性、水安定性、弾性、僅かな再艶出し可能性、濃い色の濃さおよび快く温かく柔らかい("センチメンタルな")感触を有する。従って、特に有利には、本発明による水性ポリウレタン調剤は、市販の下塗り剤で前処理されていてよい皮革上、特に自動車用皮革上およびクッション用皮革上に最終被覆のための結合剤として適している。この場合、本発明による水性調剤は、それ自体かまたは別の結合剤および常用の添加剤との混合物で使用されることができる。別の結合剤、例えば別のポリウレタン分散液と混合することによって、光沢度は、望ましい水準に調節されることができる。この別の結合剤は、噴霧、吹き付け、注型、ナイフ塗布、浸漬によって前記対象上に塗布することができるかまたは被膜の形で前記対象上に塗布することができ、引続き乾燥させることができる。好ましくは、10〜75質量%、有利に20〜65質量%の固体含量および10〜1500mPasの粘度(20℃の温度および250s-1の剪断速度で測定された)を有する本発明による水性調剤が塗布される。
【0048】
下塗り被覆中での結合剤としての本発明による水性ポリウレタン調剤の使用は、同様に可能である。
【0049】
本発明によるポリウレタン調剤を用いて得ることができる被覆は、僅かな再艶出し可能性および快く温かく柔らかい("センチメンタルな")感触を示す。
【0050】
本明細書中で使用されたppmおよび百分率の記載は、別記しない限り、質量%および質量ppmに関連する。
【実施例】
【0051】

比較例
アジピン酸とネオペンチルグリコールとヘキサンジオール−(1,6)(DIN 53240によるヒドロキシ価56)とからなるポリエステルジオール394kg、ブタンジオール−(1,4)90kg、ジブチル錫ジラウレート0.1kg、1−イソシアナト−3,3、5−トリメチル−5−イソシアナトメチルシクロヘキサン72.5kgおよび4,4′−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタン258.2kgからなる混合物を、70℃で3時間に亘って反応させた。引続き、アセトン1000kgで希釈し、50℃に冷却した。引続き、50℃でN−(2−アミノエチル)−2−アミノエタンカルボン酸のNa塩の40質量%の水溶液48kgおよび水1250kgを攪拌混入した。アセトンを蒸留により除去した後、約40質量%の水性ポリウレタン調剤を得ることができた。
【0052】
分散液は、貯蔵の際、4週間後に濃厚な底部沈殿物を示し、この底部沈殿物は、振盪または攪拌によって再び均一に分布させることができなかった。
【0053】
1.本発明によるポリウレタン調剤Z1の製造:
還流冷却器および温度計を備えた攪拌型フラスコ中で、OH価56のポリテトラヒドロフラン400g(0.20モル)、ジメチロールプロピオン酸40.2g(0.30モル)およびブタノン100gを攪拌しながら80℃にもたらした。そのために、注型中にヘキサメチレンジイソシアネート168g(1.00モル)(HDI)を加えた。15分後、バッチ量に45℃に加熱されたヘキサンジオール−1,6 47.2g(0.40モル)を添加した。15分後、アセトン70gを添加し、80℃でさらに200分間、攪拌した。この場合、上昇する粘度を最初にブタノン全部で200g、次にアセトン全部で200gを連続的に添加することによって減少させた。ヘキサンジオールを添加してから210分後に、さらにアセトン500gで希釈し、30℃に冷却した。希釈された溶液のNCO含量を0.49質量%に定めた(計算値:0.49質量%)。次に、イソホロンジアミン17.0g(0.1モル)(IPDA)を添加し、30℃で60分間、攪拌した。水80g中の25%のアンモニア水18gの溶液を添加した後、水1300gの添加によって分散させ、アセトンおよびブタノンを真空中で留去した。
【0054】
33質量%の固体含量を有する水性ポリウレタン分散液を得ることができた。
【0055】
また、分散液は、貯蔵の際に4週間に亘って僅かな底部沈殿物のみを示し、この場合この底部沈殿物は、振盪または攪拌によって簡単に再び均一に分布させることができた。
【0056】
対象の担体上に塗布された薄手の被膜は、光学顕微鏡の下で平均直径が約6μmであることが測定された粒子を示した。
【0057】
2.被覆のための結合剤としての本発明によるPUDの使用
a)自動車用皮革外被を水250g、Lepton(登録商標)ブラック(Schwarz) N 150g(BASF AG, Ludwigshafen)、Luron(登録商標)艶消し剤100g(BASF AG, Ludwigshafen)、Lepton(登録商標)充填剤CEN 50g(BASF AG, Ludwigshafen)、Lepton(登録商標)艶消し剤MF 50g(BASF AG, Ludwigshafen)、Corialgrund(登録商標)DN 100g(BASF AG, Ludwigshafen)、Astacin(登録商標)仕上げ剤PUMN TF 250g(BASF AG, Ludwigshafen)およびAstacin(登録商標)仕上げ剤PFM TF 50g(BASF AG, Ludwigshafen)からなる市販の下塗り剤で下塗りし(塗布量:吹き付け塗装において縦横1回ずつ)、乾燥させ、80℃で200バールで1.5秒間型押しし、3時間ロール処理した。
【0058】
上塗り塗料として、水300g、Lepton(登録商標)ブラック(Schwarz) N 150g(BASF AG, Ludwigshafen)、Luron艶消し剤100g(BASF AG, Ludwigshafen)、Lepton(登録商標)充填剤CEN 50g(BASF AG, Ludwigshafen)、Lepton艶消し剤MF 50g(BASF AG, Ludwigshafen)、Corialgrund(登録商標)DN 100g(BASF AG, Ludwigshafen)、Astacin(登録商標)仕上げ剤PUMN TF 250g(BASF AG, Ludwigshafen)、Astacin(登録商標)仕上げ剤PFM TF 100g(BASF AG, Ludwigshafen)およびAstacin(登録商標)硬化剤CN 30g(BASF AG, Ludwigshafen)からなる混合物を、吹き付け塗装で塗布した(塗布量:吹き付け塗装において縦横1回ずつ)。
【0059】
引続き、粘度がLepton(登録商標)ペーストVL(BASF AG, Ludwigshafen)でDIN53211による23℃DIN容器4mm中で25秒の流展時間に調節された、水380g、Lepton(登録商標)ブラック(Schwarz) N 10g(BASF AG, Ludwigshafen)、LeptonワックスWA 40g(BASF AG, Ludwigshafen)、Astacin(登録商標)硬化剤CN 60g(BASF AG, Ludwigshafen)およびZ1 500g(BASF AG, Ludwigshafen)からなる混合物を、吹き付け塗装で塗布した(塗布量:吹き付け塗装において縦横2回ずつ、乾燥通路内での中間乾燥および80℃での最終的な乾燥)。
【0060】
IUFによる耐磨耗性(DIN EN ISO 11640)、湿った皮革:500回の作業周期後に損傷なし。
【0061】
IUFによる耐磨耗性、乾燥した皮革:2000回の作業周期後に損傷なし。
【0062】
耐膨潤性、IUF450による乾燥フェルト:2000回の作業周期後に損傷なし。
【0063】
IUF450によるガソリンでの摩擦に対する堅牢度:10回の摩擦後に損傷なしおよび変色なし。
【0064】
IUP20による曲げ抵抗(DIN EN 13334):乾燥した皮革:100000回の作業周期後に損傷なし。
【0065】
湿った皮革:20000回の作業周期後に損傷なし。
【0066】
−10℃の場合:30000回の作業周期後に損傷なし。
【0067】
テーバー(Taber)試験 CS 10(1000gの荷重)(DIN 53109):1000回の作業周期後に損傷なし。
【0068】
目視的試験により、2000回の乾式摩擦後に再艶出し可能性は、全く確認されることができなかった。
【0069】
b)自動車用皮革外被を水350g、Lepton(登録商標)ブラック(Schwarz) N 120g、Lepton(登録商標)充填剤CEN 200g、Corialgrund(登録商標)BANF 250gおよびAstacin(登録商標)仕上げ剤SUSI TF 150gからなる市販の下塗り剤で下塗りした(塗布量:乾燥物質20g/m2)。
【0070】
引続き、水157g、LeptonワックスWA 3g、Astacin(登録商標)硬化剤CN 18gおよびZ1 122gからなる混合物を、80℃で5分間空気循環箱中で乾燥させ、再び同量の混合物を塗布し、再び乾燥させた。
【0071】
取扱説明書によりLange社の光沢測定器REFO 3Dを用いて測定された、次の性質:
光沢度 20゜:0.1 60゜:0.5 85゜:0.4
を有する被覆された皮革を得ることができた。
【0072】
再艶出し可能性を評価するために、IUF 450により摩擦マークの光沢度を2000回の作業周期後に乾燥した皮革について測定した。
【0073】
2000回の摩擦後の光沢度:60゜:0.5 85゜:0.6。
【0074】
上記の記載から明らかなように、本発明によるポリウレタン調剤は、機械的性質についてだけでなく、再艶出し可能性についても皮革を被覆するのに極めて好適である。
【0075】
顕著な黒色の濃さを有する、極端に強力に艶消しされ、再艶出し不可能な仕上げ加工を達成することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)側方のアルキル基を有しない少なくとも1つの有機イソシアネート[モノマーI]、
b)場合によっては少なくとも1個の側方のアルキル基を有する少なくとも1つの有機イソシアネート[モノマーII]、
c)400〜6000の数平均分子量の少なくとも1つの少なくとも2価のアルコール[モノマーIII]、
d)62〜399の数平均分子量の少なくとも1つの少なくとも2価のアルコール[モノマーIV]、
e)少なくとも1個のヒドロキシ基を有する少なくとも1つのカルボン酸[モノマーV]、
f)少なくとも2個の>N−H基を有するポリアミンなしかまたは少なくとも2個の>N−H基を有する1つ以上のポリアミン[モノマーVI]、
g)少なくとも1個のアルコール性OH基および少なくとも1個の>N−H基を有する化合物なしかまたは少なくとも1個のアルコール性OH基および少なくとも1個の>N−H基を有する1つ以上の化合物[モノマーVII]および
h)1価ポリエーテルアルコールなしかまたは1つ以上の1価ポリエーテルアルコール[モノマーVIII]から構成されている少なくとも1つのポリウレタンA10〜60質量%を含有し、この場合導入されたモノマーI〜VIIIの量は、
導入された
モノマーIII/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0.1〜0.75であり、
モノマーIV/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0.2〜0.8であり、
モノマーV/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0.05〜0.5であり、
モノマーVI/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0〜0.4であり、
モノマーVII/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0〜0.4であり、
モノマーVIII/モノマーI+IIの(−OH+>N−H)/NCO当量比が0〜0.2であり、
モノマーIII〜VIIIの総和/モノマー(I+II)の(−OH+>N−H)/NCO−当量比が0.80〜1.25であり、
モノマーIとモノマーIIの全体量がモノマーIを50〜100モル%含有し、水性調剤中でポリウレタンA 1kg当たり導入されたモノマーVのカルボキシ基50〜2000mMolが陰イオンで存在し、分散分布されたポリウレタン粒子が2〜15μmの粒径を有することが定められている、少なくとも1つの水性ポリウレタン調剤を、織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙上に塗布することにより、支持体を艶消し被覆する方法。
【請求項2】
モノマーIがヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)および4,4′−ジイソシアナト−ジシクロヘキシルメタンから選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
モノマーIとIIの全体量がモノマーIに対して90モル%より多く100モル%以下である、請求項1または2記載の方法。
【請求項4】
モノマーVが乳酸、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロール酪酸、トリメチロール酢酸、ヒドロキシピバリン酸およびグルクロン酸から選択される、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
モノマーVが乳酸およびジメチロールプロピオン酸から選択される、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
モノマーVがジメチロールプロピオン酸である、請求項1から5までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
モノマーVIがエチレンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンおよび4,4′−ジ(アミノシクロヘキシル)−メタンから選択される、請求項1から6までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
モノマーVIが1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサンである、請求項1から7までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
モノマーVI/モノマー(I+II)の>N−H/NCO−当量比が0.02〜0.4である、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
導入されたモノマーVのカルボキシ基の対イオンとしてアンモニウムNH4+が存在する、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
モノマーの反応が金属オルガニレンの不在下で実施される、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
モノマーをセシウム塩の存在下で反応させることによって得ることができる、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙を艶消し被覆するための請求項1から12までのいずれか1項に記載の水性ポリウレタン調剤の使用。
【請求項14】
請求項1から12までのいずれか1項に記載の艶消し用水性ポリウレタン調剤で被覆された、織物、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、紙または厚紙。

【公開番号】特開2009−143235(P2009−143235A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5866(P2009−5866)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【分割の表示】特願2004−503527(P2004−503527)の分割
【原出願日】平成15年5月2日(2003.5.2)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】