説明

改善された障壁特性を有する気体障壁組成物

【課題】気体障壁特性を改良した薬品耐性包装材料を提供すること。
【解決手段】気体障壁塗装組成物が提供されており、これは、ポリアミン成分、ポリエポキシド成分およびヒドロキシ置換芳香族化合物(これは、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ気体障壁塗装組成物の酸素透過率の75%以下の酸素透過率を有する気体障壁被覆を生じるのに十分な有効量で、存在している)を含有する。少なくとも1層の気体透過性包装材料層および少なくとも1層の気体障壁材料層(これは、該気体障壁塗装組成物から形成されている)を有する多層包装材料もまた、提供されている。密封可能容器もまた、提供されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、高分子包装材料およびそれから作製した多層包装材料に適用する気体障壁塗装組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
プラスチックは、ガラスおよび金属包装材料の代替品として、ますます普及している。プラスチック包装材料がガラス包装材料よりも有利な点としては、軽量、破損が少ないことおよび低価格が挙げられる。金属包装材料とは異なり、プラスチック包装材料は、再び閉じられる容器を形成するのに使用できる。上記のことにもかかわらず、通常のプラスチック包装材料(例えば、ポリエステル、ポリオレフィンおよびポリカーボネート)は、気体透過性であり、もし、酸素に影響され易い品目(例えば、食料品、化学物質または薬品および/または炭酸飲料)を包装するのに使用するなら、問題を起こし得る。
【0003】
酸素が特定のプラスチック包装材料に浸透できる度合いは、典型的には、酸素透過率定数で表わされる。このようなプラスチック包装材料の酸素透過率定数(本明細書中では、「P(O)」と呼ぶ)は、特定の条件下にて薄膜または被覆を通ることができる酸素の量を定量するが、一般に、立方センチメートル−ミル/100インチ/気圧/日の単位で表わされる。具体的には、これは、特定の温度および相対湿度(「R.H.」)で、1気圧の分圧差にて、24時間にわたって、100平方インチ(645平方センチ)の面積および1ミル(25.4ミクロン)の厚さの包装材料の試料を通って透過する酸素の立方センチメートルとして測定された透過標準単位である。他に述べられていなければ、本明細書中で使用するP(O)値は、50〜55%のR.H.で、25℃で報告されている。
【0004】
多くの食料品、飲料、化学物質および薬品は、変色および/または損傷を起こし得る酸化を受けやすい。それゆえ、このような品目は、酸素に晒されるのを防止するために、保護包装しなければならない。さらに、炭酸飲料は、気体状二酸化炭素の抜け(これが起きると、その飲料の「気が抜けて」、飲用に適さなくなり得る)を防止するために、密封容器に保存しなければならない。酸素および二酸化炭素は、包装産業で通例使用されているプラスチック包装材料の多くを容易に透過するので、通常のプラスチック容器に保存した品目は、ガラスまたは金属容器で包装したときの品目の寿命と比べて、著しく寿命が短い。
【0005】
特に酸素の影響を受けやすい品目の一部の具体例には、腐りやすい食料品および飲料、例えば、トマトベースの製品(例えば、ケチャップ、トマトソースおよびトマトペースト)、フルーツジュースおよび野菜ジュース、および麦芽飲料(例えば、ビール、エール酒および麦芽酒)が挙げられる。このような製品は、比較的に短時間にわたって僅かな量の酸素に晒しても、色や味に悪影響を与え得る。もし、通常のプラスチック容器で包装するとその寿命が著しく短くなり得る炭酸飲料の一部の具体例には、麦芽飲料、清涼飲料、ソーダ水、発泡ぶどう酒などが挙げられる。
【0006】
食料品業界で使用されている最も一般的な包装材料の1つには、ポリ(エチレンテレフタレート)(本明細書中では、「PET」と呼ぶ)がある。PETは、業界で広く使用されているにもかかわらず、比較的にP(O)値が高い(すなわち、約6.0)。この理由のために、食料品業界では、PETのP(O)値を改善しようと勤めている。P(O)値は、薄膜または被覆を通る酸素の透過率を表しているものの、そのP(O)値を低くすることは、酸素障壁特性を向上させるだけでなく、二酸化炭素障壁特性もまた向上できることが理解できるはずである。
【0007】
一般に、プラスチック包装材料のP(O)を改善する方法として、当該技術分野では、2つの方法が知られている。そのプラスチックそれ自体が、化学的および/または物理的に変性できる。この方法は、典型的には、高価であり、また、再生利用中に問題を起こし得る。あるいは、このプラスチック包装材料は、そこに気体障壁塗装組成物または気体障壁薄膜を塗布することにより、気体障壁材料で被覆できる。後者の方法は、典型的には、費用効率が高く、また、再生利用の問題が殆どない(たとえあったとしても)ので、前者の方法よりも商業上魅力的である。
【0008】
先行文献には、多数の気体障壁塗装組成物が開示されている。例えば、P(O)値が低いポリエポキシド−ポリアミンベースの気体障壁塗装組成物は、本願出願人が所有している特許文献1;特許文献2;特許文献3;特許文献4;および特許文献5で開示されている。また、当該技術分野では、特定の粒径分布を有する血小板型充填剤(例えば、シリカおよびマイカ)をさらに含有するP(O)が非常に低いポリエポキシド−ポリアミンベースの気体障壁被覆もまた、公知である。これらの気体障壁塗装組成物中で血小板型充填剤が存在していることにより、高い光沢の外観特性を維持しつつ障壁特性を改良したプラスチック包装材料が得られる。上述の塗装組成物は、一般に、高分子容器用の気体障壁被覆として、市場で受け入れられている。
【0009】
特定の用途には、この気体障壁包装材料は、厳しい薬品耐性要件を満たさなければならない。例えば、フルーツジュースは、典型的には、充填前に、180°F〜190°F(82℃〜87℃)で低温殺菌される。気体障壁包装材料から形成したプラスチック容器には、温かい製品が充填される。この過程は、通例、「ホットフィル」過程と呼ばれている。このホットフィル過程中にて、この気体障壁被覆(これは、このプラスチック容器に塗布されて、気体障壁包装材料を形成する)は、しばしば、酸性が高い温かいフルーツジュースと接触できる。これらのホットフィル用途には、この気体障壁包装材料は、気体障壁特性を与えなければならないだけでなく、薬品に耐性でもなければならない。
【0010】
ヒドロキシ置換芳香族化合物は、ポリアミンとポリエポキシドとの間の硬化反応の触媒として、当該技術分野で周知である。非特許文献1および上で引用した参考文献を参照せよ。しかしながら、このような化合物を、気体障壁特性を高めるための気体障壁塗装組成物で使用することは、知られていない。さらに、これらのヒドロキシ置換芳香族化合物は、熱可塑性ポリアミン−ポリエポキシドベースの気体障壁塗装組成物で使用することが知られていない。
【0011】
前記ポリアミン−ポリエポキシドベースの気体障壁被覆の薬品耐性は、その組成物中でのアミン:エポキシ比を小さくすることにより、改良できる。しかしながら、この組成物中のポリアミンの量を少なくすると、改良した薬品耐性を得ることができるものの、気体障壁特性が低い包装材料が得られる。前述のことを考慮すると、食料品包装業界では、明らかに、気体障壁特性を改良した薬品耐性包装材料が必要とされている。
【特許文献1】米国特許第5,006,361号明細書
【特許文献2】米国特許第5,008,137号明細書
【特許文献3】米国特許第5,300,541号明細書
【特許文献4】米国特許第5,006,381号明細書
【特許文献5】国際公開第95/26997号パンフレット
【非特許文献1】L.H.Goughら、Accelerated Amine Curing of Epoxy Resins Research Department,Cray Valley Products,Ltd.、43 J.O.C.C.A.409−18、1960年6月で再印刷
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0012】
(発明の要旨)
本発明によれば、以下を含有する気体障壁塗装組成物が提供されている:(A)ポリアミン成分であって、このポリアミン成分は、少なくとも1種のポリアミンを含有する;(B)ポリエポキシド成分であって、このポリエポキシド成分は、芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシドを含有する;および(C)以下の構造(I)により表わされるヒドロキシ置換芳香族化合物:
(I) HO−A−R
ここで、Aは、アリーレンである;RおよびRは、それぞれ別個に、H、OH、R、O(OC)R’、NH(CO)R’、NH、CH、C(CHまたは(CO)Rであり、ここで、Rは、アルキルである;R’は、Hまたはアルキルである;Rは、ヒドロキシ置換芳香族基またはアミノ基である;そしてRは、(ジ)ヒドロキシ置換芳香族基であるが、但し、RがHまたはRのとき、Rは、HでもRでもあり得ない。このヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)を含まない同じ気体障壁塗装組成物により得られる気体障壁被覆の酸素透過率(P(O))の75%以下の酸素透過率(P(O))を有する気体障壁被覆を生じるのに十分な有効量で、気体障壁塗装組成物中で存在している。
【0013】
少なくとも1層の気体透過性包装材料層および少なくとも1層の気体障壁材料層を有する多層包装材料もまた、提供されている。気体障壁材料層は、すぐ上で記述した組成物を含有する。上記ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ気体透過性包装材料層および同じ気体障壁材料層を含む多層包装材料の酸素透過率(P(O))の75%以下の酸素透過率(P(O))を有する気体障壁材料層を生じるのに十分な量で、気体障壁材料層中で存在している。多層気体障壁材料から形成した容器もまた、提供されている。
【0014】
本発明は、さらに以下を提供する。
(項目1)気体障壁塗装組成物であって、以下:
(A)少なくとも1種のポリアミンを含有する、ポリアミン成分;
(B)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシドを含有する、ポリエポキシド成分;および
(C)以下の構造(I)
(I) HO−A−R
により表わされるヒドロキシ置換芳香族化合物であって:
ここで、Aは、アリーレンであり;RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、R、O(OC)R’、NH(CO)R’、NH、CH、C(CHまたは(CO)Rであり、
ここで、Rは、アルキルであり;R’は、Hまたはアルキルであり;Rは、ヒドロキシ置換芳香族基またはアミノ基であり;そしてRは、(ジ)ヒドロキシ置換芳香族基であるが、ただし、RがHまたはRのとき、Rは、HまたはRではない、ヒドロキシ置換芳香族化合物
を含み、ここで、該ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ気体障壁塗装組成物により提供される気体障壁被覆の酸素透過率(P(O))の75%以下の酸素透過率(P(O))を有する気体障壁被覆を生じるのに十分な有効量で、該気体障壁塗装組成物中に存在している、気体障壁塗装組成物。
(項目2)前記ポリアミンが、以下の構造(II)により表わされ、
(II) Φ−(RNH
ここで、
Φが、芳香族基含有化合物を表わし、
が、C〜Cアルキル基を表わし、そして
kが、1.5以上の値を表わす、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目3)Rが、2個以下の炭素原子を有するアルキル基を表わし、そしてkが、1.9以上の値を表わす、項目2に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目4)前記ポリアミンが、m−キシリレンジアミンである、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目5)前記ポリアミン成分(A)が、非ゲル化アミン基含有付加物であり、該付加物が、ポリアミン(a)と、以下:
(b)エピクロロヒドリン、および
(c)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシド、
の少なくとも1種との反応生成物を含有する、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目6)前記非ゲル化アミン基含有付加物の活性アミン水素の10〜80%が、該付加物を前記ポリエポキシド成分(B)と反応させる前に、(b)および/または(c)のエポキシ基と反応される、項目5に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目7)前記ポリアミン成分(A)が、前記ポリアミン(a)とエピクロロヒドリンとの反応生成物である非ゲル化アミン基含有付加物を含有する、項目5に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目8)前記ポリアミン成分(A)が、前記ポリアミン(a)と芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシドとの反応生成物である非ゲル化アミン基含有付加物を含有する、項目5に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目9)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有する前記ポリエポキシドが、以下の構造(III)により表わされ、
【化1】

ここで、
が、アリーレンであり;
Xが、N、NR、CHN、CHNR、OまたはC(O)−Oであり、
ここで、Rが、1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、シアノエチル基またはシアノプロピル基であり;
nが、1または2であり;、そして
mが、2〜4である、項目8に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目10)Rが、フェニレンまたはナフチレンである、項目9に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目11)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有する前記ポリエポキシドが、N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラニルメチル)−1,3−ベンゼンジメタンアミン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、イソフタル酸のジグリシジルエステル、テレフタル酸のジグリシジルエステルおよびトリグリシジルパラアミノフェノールからなる群から選択される物質の少なくとも1種を含有する、項目9に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目12)前記ポリアミン(a)が、m−キシリレンジアミンを含有する、項目5に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目13)前記ポリエポキシド成分(B)が、以下の構造(III)により表わされるポリエポキシドを含有し、
【化2】

ここで、
が、アリーレンであり;
Xが、N、NR、CHN、CHNR、OまたはC(O)−Oであり、
ここで、Rが、1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、シアノエチル基またはシアノプロピル基であり;
nが、1または2であり;そして
mが、2〜4である、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目14)Rが、フェニレンまたはナフチレンである、項目13に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目15)前記ポリエポキシド(B)が、N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラニルメチル)−1,3−ベンゼンジメタンアミン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、イソフタル酸のジグリシジルエステル、テレフタル酸のジグリシジルエステルおよびトリグリシジルパラアミノフェノールからなる群から選択されるポリエポキシドの少なくとも1種を含有する、項目13に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目16)前記ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)が、2−アセトアミドフェノール、3−アセトアミノフェノール、3−アミノフェノール、ビスフェノールAおよびビスフェノールF、レゾルシノール、レゾルシノールモノアセテート、メチルヒドロキノン、ヒドロキノン、カテコールならびにフロログルシノールからなる群から選択される、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目17)(C)が、レゾルシナール、カルボニル基含有化合物およびアミンの反応生成物を含有するマンニッヒ塩基化合物である、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目18)前記ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)が、前記塗装組成物の全樹脂固形分の重量を基準にして、0.1〜10重量%の範囲の量で存在している、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目19)前記組成物が、熱硬化性組成物である、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目20)0.5立方センチメートル−ミル/インチ/気圧/日以下の酸素透過率(P(O))を有する気体障壁被覆を形成する、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目21)前記組成物が、熱可塑性塗装組成物である、項目1に記載の気体障壁塗装組成物。
(項目22)多層包装材料であって、該多層包装材料は、少なくとも1層の気体透過性包装材料層および少なくとも1層の気体障壁材料層を有し、該気体障壁材料層は、以下:
(A)少なくとも1種のポリアミンを含有するポリアミン成分;
(B)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシドを含有する、ポリエポキシド成分;および
(C)以下の構造(I)
(I) HO−A−R
により表わされるヒドロキシ置換芳香族化合物であって:
ここで、Aは、アリーレンであり;RおよびRは、それぞれ独立して、H、OH、R、O(OC)R’、NH(CO)R’、NH、CH、C(CHまたは(CO)Rであり、
ここで、Rは、アルキルであり;R’は、Hまたはアルキルであり;Rは、ヒドロキシ置換芳香族基またはアミノ基であり;そしてRは、(ジ)ヒドロキシ置換芳香族基であるが、ただし、RがHまたはRのとき、Rは、HまたはRではない、ヒドロキシ置換芳香族化合物、
を含有し、ここで、該ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ気体透過性包装材料層および同じ気体障壁材料層を含む多層包装材料の酸素透過率(P(O))の75%以下の酸素透過率(P(O))を有する気体障壁材料層を生じるのに十分な量で、該気体障壁材料層中に存在している、多層包装材料。
(項目23)前記ポリアミン成分(A)が、以下の構造(II):
(II) Φ−(RNH
により表わされるポリアミンを含み、ここで、
Φが、芳香族基含有化合物を表わし、
が、C〜Cアルキル基を表わし、そして
kが、1.5以上の値を表わす、項目22に記載の多層包装材料。
(項目24)Rが、2個以下の炭素原子を有するアルキル基を表わし、そしてkが、1.9以上の値を表わす、項目23に記載の多層包装材料。
(項目25)前記ポリアミンが、m−キシリレンジアミンである、項目23に記載の多層包装材料。
(項目26)前記ポリアミン成分(A)が、非ゲル化アミン基含有付加物を含み、該付加物が、ポリアミン(a)と、以下:
(b)エピクロロヒドリン、および
(c)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシド、
の少なくとも1種との反応生成物を含有する、項目22に記載の多層包装材料。
(項目27)前記非ゲル化アミン基含有付加物の活性アミン水素の10〜80%が、該付加物を前記ポリエポキシド成分(B)とを反応させる前に、(b)および/または(c)のエポキシ基と反応される、項目26に記載の多層包装材料。
(項目28)前記ポリアミン成分(A)が、前記ポリアミン(a)とエピクロロヒドリンとの反応生成物である非ゲル化アミン基含有付加物を含有する、項目26に記載の多層包装材料。
(項目29)前記ポリアミン成分(A)が、前記ポリアミン(a)と芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシドとの反応生成物である非ゲル化アミン基含有付加物を含有する、項目26に記載の多層包装材料。
(項目30)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有する前記ポリエポキシドが、以下の構造(III)により表わされ、
【化3】

ここで、
が、アリーレンであり;
Xが、N、NR、CHN、CHNR、OまたはC(O)−Oであり、
ここで、Rが、1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、シアノエチル基またはシアノプロピル基であり;
nが、1または2であり;そして
mが、2〜4である、項目29に記載の多層包装材料。
(項目31)Rが、フェニレンまたはナフチレンである、項目30に記載の多層包装材料。
(項目32)芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有する前記ポリエポキシドが、N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラニルメチル)−1,3−ベンゼンジメタンアミン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、イソフタル酸のジグリシジルエステル、テレフタル酸のジグリシジルエステルおよびトリグリシジルパラアミノフェノールからなる群から選択される物質の少なくとも1種を含有する、項目30に記載の多層包装材料。
(項目33)前記ポリアミン(a)が反応して、m−キシリレンジアミンを含有する非ゲル化アミン基含有付加物を形成する、項目26に記載の多層包装材料。
(項目34)前記ポリエポキシド成分(B)が、以下の構造(III)により表わされるポリエポキシドを含有し、
【化4】

ここで、
が、アリーレンであり;
Xが、N、NR、CHN、CHNR、OまたはC(O)−Oであり、
ここで、Rが、1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、シアノエチル基またはシアノプロピル基であり;
nが、1または2であり;そして
mが、2〜4である、項目22に記載の多層包装材料。
(項目35)Rが、フェニレンまたはナフチレンである、項目34に記載の多層包装材料。
(項目36)前記ポリエポキシド(B)が、N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラニルメチル)−1,3−ベンゼンジメタンアミン、レゾルシノールジグリシジルエーテル、フタル酸のジグリシジルエステル、イソフタル酸のジグリシジルエステル、テレフタル酸のジグリシジルエステルおよびトリグリシジルパラアミノフェノールからなる群から選択される少なくとも1種のポリエポキシドを含有する、項目34に記載の多層包装材料。
(項目37)前記ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)が、2−アセトアミドフェノール、3−アセトアミノフェノール、3−アミノフェノール、ビスフェノールAおよびビスフェノールF、レゾルシノール、レゾルシノールモノアセテート、メチルヒドロキノン、ヒドロキノン、カテコールならびにフロログルシノールからなる群から選択される、項目22に記載の多層包装材料。
(項目38)(C)が、レゾルシナール、カルボニル基含有化合物およびアミンの反応生成物を含有するマンニッヒ塩基化合物である、項目22に記載の多層包装材料。
(項目39)前記ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)が、前記気体障壁材料層の全樹脂固形分の重量を基準にして、1〜10重量%の範囲の量で存在している、項目22に記載の多層包装材料。
(項目40)前記気体障壁材料層が、熱可塑性材料を含有する、項目22に記載の多層包装材料。
(項目41)前記気体障壁材料層が、0.25立方センチメートル−ミル/インチ/気圧/日以下の酸素透過率(P(O))を有する、項目22に記載の多層包装材料。
(項目42)前記気体透過性包装材料層が、ポリエステル材料、ポリオレフィン材料、ポリアミド材料、セルロース誘導体材料、ポリスチレン材料およびポリアクリル材料からなる群から選択される材料を含有する、項目22に記載の多層包装材料。
(項目43)前記気体透過性包装材料層が、ポリエステル材料を含有する、項目42に記載の多層包装材料。
(項目44)前記気体透過性包装材料層が、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンナフタレート)の少なくとも1種を含有する、項目42に記載の多層包装材料。
(項目45)前記多層包装材料が、密封可能容器の形状である、項目22に記載の多層包装材料。
(項目46)前記密封可能容器が、飲料容器である、項目45に記載の多層包装材料。
【0015】
操作実施例にあるかまたは他に指示されている場合以外、本明細書および特許請求の範囲で使用される成分の量、反応条件などを表わす全ての数値は、いずれの場合にも、「約」との用語で修飾されることが分かる。また、本明細書中で使用する「重合体」との用語は、オリゴマーと単独重合体および共重合体の両方とを意味する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
(発明の詳細な説明)
上述のように、本発明の改良した気体障壁塗装組成物は、ポリアミン成分(A)(これは、少なくとも1種のポリアミンを含有する)、ポリエポキシド成分(B)(これは、芳香族メンバーに結合した少なくとも2個のグリシジル基を有するポリエポキシドを含有する)、およびヒドロキシ置換芳香族化合物(C)(これは、上記構造(I)により表わされ、この場合、置換基A、R、R、RおよびRは、その構造について上で記述したとおりである)を含有する。好ましくは、Aは、フェニレン基またはナフチレン基を表わし、Rは、Hを表わし、そしてRは、OHまたはO(OC)R’を表わし、ここで、R’は、Hである(すなわち、アセトキシ)。
【0017】
本発明の気体障壁塗装組成物は、熱硬化性組成物であり得るか、あるいは、熱可塑性組成物であり得る。
【0018】
本発明の気体障壁塗装組成物が熱硬化性組成物であるとき(これが好ましい)、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)は、この組成物の別個の成分として、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)と混合される。この気体障壁塗装組成物が熱可塑性組成物であるとき、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)は、予め反応されて、熱可塑性アミン−エポキシ樹脂を形成し、それから、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)と混合されて、この気体障壁塗装組成物を形成する。
【0019】
上述のように、ヒドロキシ置換芳香族化合物は、一般に、ポリアミンとポリエポキシドとの間の硬化反応の触媒(熱硬化性組成物中)として、当該技術分野で周知である。しかしながら、驚くべきことに、上記構造(I)で表わされる種類のヒドロキシ置換芳香族化合物のメンバーは、本発明の熱硬化性気体障壁塗装組成物中で成分(C)として含有させるとき、このポリアミン−ポリエポキシド反応の触媒として働くだけでなく、増強した気体障壁特性も生じることが発見された。さらに、これらのヒドロキシ置換芳香族化合物は、本発明の熱可塑性気体障壁塗装組成物中に成分(C)として含有させるとき、気体障壁特性を高めることが発見された。
【0020】
ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ気体障壁塗装組成物の酸素透過率(P(O))の75%以下、好ましくは、60%以下、さらに好ましくは、50%以下の酸素透過率(P(O))を生じるのに十分な有効量で、本発明の気体障壁塗装組成物中で存在している。
【0021】
本発明の好ましい実施形態では、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、2−アセトアミドフェノール、3−アセトアミドフェノール、3−アミノフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、レゾルシノール、レゾルシノールモノアセテート、メチルヒドロキノン、ヒドロキノン、カテコール、およびフロログルシノールからなる群から選択される。レゾルシノールおよびレゾルシノールモノアセテートが好ましい。
【0022】
ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、典型的には、その薄膜形成組成物中の樹脂固形分の全重量を基準にして、少なくとも0.01重量%、好ましくは、少なくとも0.05重量%、さらに好ましくは、少なくとも0.1重量%、さらにより好ましくは、少なくとも0.5重量%の範囲の量で、本発明の気体障壁塗装組成物中で存在している。ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)はまた、典型的には、この気体障壁塗装組成物中の樹脂固形分の全重量を基準にして、15重量%未満、好ましくは、12重量%未満、さらに好ましくは、10重量%未満、さらにより好ましくは、8重量%未満で、本発明の組成物中で存在している。本発明の気体障壁塗装組成物中に存在しているヒドロキシ置換芳香族化合物(C)の量は、列挙した値を含めたこれらの値の任意の組合せ間の範囲であり得る。
【0023】
上述のように、本発明の気体障壁塗装組成物はまた、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)を含有する。ポリアミン成分(A)は、少なくとも1種のポリアミンを含有し、その適切な例には、m−キシリレンジアミン(「MXDA」)(例えば、三菱ガス化学株式会社から入手できるGaskamine 328およびGaskamine 328S)が挙げられる。このポリアミンはまた、活性アミン水素を有する予め反応させた非ゲル化アミン基含有付加物を含有し得る。
【0024】
「非ゲル化」とは、これらのアミン基含有付加物が、実質的に、架橋を含まず、例えば、ASTM−D1795またはASTM−D4243に従って決定されるように、適切な溶媒に溶解したとき、固有粘度を有することを意味する。この付加物の固有粘度は、その分子量の指標である。他方、ゲル化した反応生成物は、本質的に無限に高い分子量であるので、高すぎて測定できない固有粘度を有する。
【0025】
本発明の好ましい実施形態では、このポリアミンは、以下の構造(II)により表わされる:
(II) Φ−(RNH
ここで、Φは、芳香族基含有化合物を表わし、Rは、C〜Cアルキル基を表わし、そしてkは、1.5以上の値を表わす。
【0026】
好ましくは、kは、1.7以上、さらに好ましくは、1.9以上、さらにより好ましくは、2.0以上である。好ましくは、Rは、C以下、さらに好ましくは、C以下、さらにより好ましくは、C以下である。典型的には、Φは、アリール基、好ましくは、フェニル基および/またはナフチル基を含有する。
【0027】
本発明の気体障壁塗装組成物は、予め形成した非ゲル化ポリアミン付加物なしで生成できる。ポリアミン付加物が形成されない場合、このエポキシド(すなわち、上記ポリエポキシド成分(B))の全ては、このポリアミン(すなわち、ポリエポキシド成分(A))とブレンドまたは反応される。
【0028】
ポリアミン成分(A)が活性アミン水素を有する予め反応させた非ゲル化アミン基含有付加物の形状であるとき、ポリエポキシド成分(B)と反応させる反応部位を生じるために、十分な活性アミン水素基が未反応のままでなければならない。言い換えれば、この気体障壁塗装組成物が熱硬化性組成物であるとき、最終硬化工程中にて、ポリエポキシド成分(B)と反応するのに十分な活性アミン水素が残留していなければならない。あるいは、この気体障壁塗装組成物が熱可塑性組成物であるとき、ポリエポキシド成分(B)と反応して熱可塑性アミン−エポキシド樹脂を形成するのに十分な活性アミン水素が残留していなければならない。典型的には、このポリアミンの活性アミン水素の10〜80%は、エポキシ基と反応される。予備反応させる活性アミン水素の量が少ないと、この予備反応工程の有効性が少なくなり、その重合体生成物の直鎖性(これは、この付加物を形成することの利点の1つである)が殆どなくなる。
【0029】
本発明の1実施形態によれば、この非ゲル化アミン基含有付加物は、(a)ポリアミン(例えば、上記のもの)と(b)エピクロロヒドリンとを反応させることにより、形成できる。この反応を、アルカリの存在下にて、1:1より大きいポリアミン:エピクロロヒドリンのモル比で実行することにより、主要な反応生成物は、2−ヒドロキシプロピレン連鎖で結合したポリアミン基となる。m−キシリレンジアミン(好ましいポリアミン)とエピクロロヒドリンとの反応は、米国特許第4,605,765号で記述されている。このような生成物は、三菱ガス化学から、GASKAMINE 328(登録商標)およびGASKAMINE(登録商標)328Sとして、市販されている。
【0030】
代替実施形態では、この非ゲル化アミン基含有付加物は、ポリアミン(a)と、芳香族メンバーに結合した複数のグリシジル基を有するポリエポキシド(c)とを反応させることにより、形成される。本明細書中で使用する「結合した」との用語は、中間結合基が存在していることを意味する。
【0031】
このようなポリエポキシドは、以下の構造(III)により表わすことができる:
【0032】
【化5】

ここで、Rは、フェニレンまたはナフチレンである;Xは、N、NR、CHN、CHNR、Oおよび/またはC(O)−Oであり、ここで、Rは、1個〜4個の炭素原子を含有するアルキル基、シアノエチル基またはシアノプロピル基である;nは、1または2である;そしてmは、2〜4である。
【0033】
適切なポリエポキシドの非限定的な例には、N,N,N’,N’−テトラキス(オキシラニルメチル)−1,3−ベンゼンジメタンアミン(dimethanamine)(例えば、三菱ガス化学からTETRAD Xとして市販されているポリエポキシド)、レゾルシノールジグリシジルエーテル(例えば、Shell Chemical Co.から市販されているHELOXY(登録商標)69)、フタル酸のジグリシジルエステル(例えば、Shell Chemical Co.から市販されているEPI−REZ(登録商標)A−100エポキシ樹脂)、イソフタル酸のジグリシジルエステル、テレフタル酸のジグリシジルエステルおよびトリグリシジルパラ−アミノフェノール(例えば、Ciba−Geigy Corporationから市販されているEpoxy Resin 0500)が挙げられる。
【0034】
この非ゲル化付加物を生成するためのエポキシドとポリアミン(a)との反応は、所望の非ゲル化生成物を生成するのに十分な反応物の温度および濃度で、実行される。これらの温度および濃度は、出発物質の選択に依存して、変わる。しかしながら、典型的には、反応温度は、40℃〜140℃の範囲であり、ゲル化を受けやすい系には、それより低い温度(例えば、40℃〜110℃)が好ましい。同様に、反応物の濃度は、典型的には、特定のモル比および反応物の種類に依存して、適切な溶媒中にて、反応物の5〜100重量%の範囲である。ゲル化を受けやすい系には、それより低い反応物濃度が一般的に好ましい。
【0035】
特定の反応条件は、本明細書中の開示および実施例により導かれた当業者により、容易に選択できる。さらに、非ゲル化アミン官能性重合体付加物の調製はまた、本出願人が所有している米国特許第5,006,391号、2〜7欄で、記述されている。
【0036】
大ていの場合には、このアミン基含有付加物を形成することは、その樹脂の直鎖性を維持しつつ分子量を高めるという利点を有し、それにより、ゲル化が防止される。これは、2個以下の第一級アミノ基を有するポリアミンを使用することにより、達成できる。
【0037】
典型的には、ポリアミン(a)は、(唯一のポリアミン成分(A)として使用するとき)、比較的にゆっくりと、ポリエポキシド成分(B)と反応する。逆に、前記アミン基含有付加物は、(唯一のアミン成分(A)として使用するとき)、比較的に迅速に、ポリエポキシド成分(B)と反応する。従って、このアミン基含有付加物を使用すると、反応時間が短くなるという利点が得られる。
【0038】
ポリエポキシド成分(B)は、ポリアミン成分(A)と反応性で本発明の気体障壁塗装組成物を形成する当業者に公知の任意のエポキシドであり得る。好ましくは、ポリエポキシド成分(B)には、芳香族メンバーに結合した複数のグリシジル基を有するポリエポキシド(例えば、上記構造(III)で表わされるもの)が挙げられる。成分(B)として使用するのに適切なポリエポキシドの特定の例には、上記のものであって、ポリアミン(a)と反応して非ゲル化アミン基含有付加物を形成できるものが挙げられる。
【0039】
このアミン基含有付加物を形成する際に使用されるポリエポキシドは、ポリエポキシド成分(B)として使用されるものと同一であっても異なっていてもよいことが理解できるはずである。典型的には、もし、本発明の気体障壁塗装組成物中にて、アミン基含有付加物が使用されるなら、これらのエポキシドは、このアミン基含有付加物を形成するのに使用され、ポリエポキシド成分(B)として使用されるものは、少なくとも1.4、好ましくは、少なくとも2.0のエポキシ官能基を有する。少量のモノエポキシドもまた、使用できる。
【0040】
ポリエポキシド成分(B)には、飽和または不飽和、脂肪族または環状脂肪族、芳香族または複素環であるポリエポキシドを含有でき、非妨害置換基(例えば、水酸基など)で置換され得る。一般に、このようなポリエポキシドは、芳香族ポリオールのポリグリシジルエーテルを含有でき、これは、アルカリの存在下にて、芳香族ポリオールとエピクロロヒドリンまたはジクロロヒドリンとのエーテル化により、形成できる。このようなものの特定の例には、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、1,5−ジヒドロキシナフタレンなどが挙げられる。また、ポリエポキシド成分(B)として使用するのに適切なものには、多価脂肪族アルコール(環式アルコールおよび多環式アルコールを含めて)のポリグリシジルエーテルがある。
【0041】
一般に、ポリエポキシド成分(B)は、80より高い分子量を有する。好ましくは、ポリエポキシド成分(B)の分子量は、100〜1,000、さらに好ましくは、200〜800の範囲である。さらに、ポリエポキシド成分(B)は、一般に、40より高いエポキシ当量を有する。好ましくは、ポリエポキシド成分(B)の当量は、60〜400、さらに好ましくは、80〜300の範囲である。
【0042】
ポリアミン成分(A)の各アミン水素は、理論的には、1個のエポキシ基と反応でき、それ自体、1アミン当量と考えられていることに注目すべきである。それゆえ、本発明の目的のために、第一級アミン窒素は、エポキシド基に関して、二官能性であると考えられている。
【0043】
本発明の熱硬化性気体障壁塗装組成物では、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)は、典型的には、(A)中の活性アミン水素の当量:(B)中のエポキシ基の当量の比を2.0:1.0またはそれ以下、好ましくは、1.75:1.0またはそれ以下とするのに十分な量で、存在している。
【0044】
本発明の気体障壁塗装組成物が熱可塑性組成物であるとき、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)は、典型的には、この反応混合物中のポリアミン:ポリエポキシドのモル比を1.4:1〜0.83:1、好ましくは、1.25:1〜1.05:1、さらに好ましくは、1.2:1〜1.1:1とするのに十分な量で、存在している。好ましい実施形態では、この熱硬化性気体障壁組成物は、1モルあたり2当量の第一級アミノ窒素(第一級アミノ窒素基1個あたり1当量)を有するポリアミンと、1モルあたり平均して2当量のエポキシを有するポリエポキシドとの反応(例えば、ジアミンとジエポキシドとの反応)に関与している。
【0045】
好ましくは、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)の反応生成物は、相当数の未反応アミン水素を含有する。しかしながら、ポリアミンの量を最大にすると、典型的には、得られる気体障壁被覆の気体障壁特性が最大になるものの、存在しているポリエポキシドの量もそれに伴って低下するので、形成される熱可塑性被覆の一般的なフィルム特性および硬化したまたは熱可塑性被覆の架橋密度に悪影響を与え得る。逆に、熱硬化性被覆では、好ましい量よりも多いポリエポキシドを使用すると、脆弱なフィルムが得られ得る。
【0046】
上述のように、ポリアミン−ポリエポキシド気体障壁被覆の薬品耐性は、この気体障壁塗装組成物中に存在しているアミンの量を少なくすることにより、改良できる。しかしながら、このようにして改良した薬品耐性を達成すると、それに伴って、気体障壁特性が低下する。本発明の気体障壁塗装組成物は、上述のヒドロキシ置換芳香族化合物(C)の組成物を含有させて、気体障壁特性のこの低下を克服する。
【0047】
本発明の気体障壁塗装組成物は、溶媒ベースまたは水ベースのいずれかの塗装組成物として、気体透過性基板に塗布できる。溶媒を使用する場合、それらは、被覆する基板と適合するように、また、塗布中にて、その液状組成物に所望の流動特性を与えるように、選択するべきである。適切な溶媒には、含酸素溶媒(例えば、グリコールエーテル(例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−プロポキシエタノール、2−ブトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールなど))またはアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)が挙げられる。グリコールエーテル(例えば、2−ブトキシエタノールおよび1−メトキシ−2−プロパノール)は、さらに好ましく、1−メトキシ−2−プロパノールは、最も好ましい。1−メトキシ−2−プロパノールを使用することは、それが急速に蒸発して乾燥フィルムまたは硬化フィルム中での溶媒の滞留を最小にするために、好ましい。予め反応した付加物を使用する実施形態の一部において、所望の流動特性を得るためには、2−ブトキシエタノールを使用することが好まれ得る。さらに、流動特性のためにゆっくりと蒸発する溶媒を必要としない実施形態では、ここで列挙した溶媒は、トルエンまたはキシレンのような安価な溶媒で希釈され得る。この溶媒はまた、ハロゲン化炭化水素を含有し得る。例えば、塩素化炭化水素(例えば、塩化メチレン、1,1,1−トリクロロエタンなど(これは、通常、速く蒸発する溶媒と考えられている))は、障壁フィルムを得る際に特に有用であり得る。このような溶媒の混合物もまた、使用され得る。得られる障壁材料がハロゲンを含まないことが望ましい場合、非ハロゲン化溶媒が好ましい。
【0048】
ポリアミン成分(A)はまた、水溶液または水性分散体の形態であり得る。例えば、ポリエポキシド成分(B)が水溶性である(例えば、脂肪族ジオールのポリグリシジルエーテル)場合、ポリアミン成分(A)は、水溶液として使用され得る。そうではなく水不溶性ポリエポキシドを使用する場合、ポリアミン成分(A)は、水性媒体中への分散を容易にするために有機酸(例えば、ギ酸、乳酸または酢酸)、または無機酸(例えば、塩酸またはリン酸)で中和された十分なアミン基を有し得る。このような水ベースの系には、典型的には、有機酸が好ましい。
【0049】
非ゲル化アミン基含有付加物を含有する本発明の気体障壁塗装組成物は、典型的には、この組成物中の全樹脂固形物の重量を基準にして、15〜50重量%、好ましくは、25〜40重量%の範囲の樹脂固形物を有する。重量パーセントがさらに高い場合は、特に、噴霧用途において、塗布が困難となり得るのに対して、それより低い重量パーセントは、典型的には、この硬化段階中にて、さらに多い量の溶媒を除去する必要がある。このポリアミン(例えば、唯一のポリアミン成分(A))とポリエポキシド成分(B)との直接の反応を使用する実施形態には、50重量%より高い固形分が首尾良く用いられ得る。
【0050】
本発明の気体障壁塗装組成物は、さらに、当業者に公知の添加剤を含有し得る。存在し得るより一般的ないくつかの添加剤としては、無機充填剤粒子、顔料、シリコーン、界面活性剤およびヒドロキシ置換芳香族化合物(C)とは異なる触媒が挙げられる。これらの特定の任意の成分の各々は、以下で議論する。
【0051】
無機充填剤および顔料の使用に関して、この気体障壁材料に色および/または色合いを与えることに加えて、それらの使用はまた、得られる被覆の気体障壁特性をさらに高めることができる。顔料:結合剤の重量比は、もし使用するなら、典型的には、1:1以下、好ましくは、0.3:1以下、さらに好ましくは、0.1:1以下である。これらの比で使用する結合剤の重量は、この気体障壁塗装組成物中のポリアミン−ポリエポキシド樹脂の全固形分重量である。
【0052】
特に好ましい種類の無機充填剤には、プレートリット(platelet)型充填剤が挙げられ、これらは、5.5〜15ミクロンの数平均粒径および8〜25ミクロンの容積平均粒径により特徴付けられる粒径分布を有する。適切なプレートリット型充填剤の例には、マイカ、バーミキュライト、粘土、タルク、含マイカ酸化鉄、シリカ、薄片状金属、薄片状グラファイト、薄片状ガラスなどが挙げられる。このようなプレートリット型充填剤は、米国特許第5,840,825号、10欄、1行〜11欄、24行で、詳細に記述されている。
【0053】
シリコーンは、その障壁材料を塗布する基板を湿潤するのを助けるために、本発明の気体障壁塗装組成物に含有され得る。一般に、この目的に有用なシリコーンには、種々の有機シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン、ポリメチルフェニルシロキサンなど)が挙げられる。このようなものの特定の例には、SF−1023シリコーン(General Electric Co.から入手できるポリメチルフェニルシロキサン)、AF−70シリコーン(General
Electric Co.から入手できるポリジメチルシロキサン)およびDF−100Sシリコーン(BASF Corp.から入手できるポリジメチルシロキサン)が挙げられる。このようなシリコーンは、使用する場合、典型的には、この気体障壁塗装組成物中の全樹脂固形分を基準にして、0.01〜1.0重量%の範囲の量で、この気体障壁塗装組成物に添加される。
【0054】
典型的には、この気体障壁塗装組成物の水ベース型には、界面活性剤が含有される。この目的に使用できる界面活性剤の例には、当該技術分野で公知の任意の適切な非イオン性またはアニオン性界面活性剤が挙げられる。このような界面活性剤は、使用する場合、典型的には、この気体障壁塗装組成物の全重量を基準にして、0.01〜1.0重量%の範囲の量で、存在する。
【0055】
前述のように、ポリアミン成分(A)とポリエポキシド成分(B)との間の反応を助けるために、本発明の気体障壁塗装組成物には、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)とは異なる触媒が含有され得る。一般に、この目的のために、エポキシ−アミン反応物に使用される任意の適切な触媒が用いられ得る。このような適切な触媒の例には、亜リン酸トリフェニル、硝酸カルシウムなどが挙げられる。
【0056】
この気体障壁塗装組成物が熱硬化性組成物である場合、基板に塗布する前に、ポリアミン成分(A)、ポリエポキシド成分(B)およびヒドロキシ置換芳香族化合物(C)が、まず、一緒に十分に混合される。この気体障壁塗装組成物が熱可塑性組成物である場合、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)は、予め反応されて、熱可塑性樹脂を形成し、これは、引き続いて、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)と混合される。混合した後、この気体障壁塗装組成物は、直ちに、この基板に塗布されるか、または硬化(熱硬化性組成物の場合)および/または透明性を改良するために、塗布する前に、典型的には、1〜60分間の範囲の時間にわたって、保持され得る。この保持時間は、ポリアミン成分(A)がアミン基含有付加物を含有する場合、または使用する溶媒が2−ブトキシエタノールである場合、短くされ得、そして/または排除され得る。
【0057】
この気体障壁塗装組成物は、当業者に公知の任意の従来の手段(例えば、噴霧、圧延、浸漬、刷毛塗りなど)により、塗布できる。好ましい塗布方法には、噴霧プロセスおよび/または浸漬プロセスが挙げられる。
【0058】
本発明の熱硬化性気体障壁塗装組成物は、その基板に塗布した後、数時間〜数日間にわたって徐々に硬化させることにより、周囲程度に低い温度で、硬化され得る。しかしながら、このような低い温度の硬化は、一般に、市販の生産ラインで望ましい硬化よりも遅い。これはまた、硬化した障壁材料から溶媒を除去する効率的な手段ではない。従って、好ましい1実施形態では、この酸素障壁材料は、それを塗布する基板が変形しないできるだけ高い温度に加熱することにより、硬化される。
【0059】
比較的「遅い」溶媒(すなわち、比較的低い蒸発速度を有する溶媒)については、硬化温度は、典型的には、55℃〜110℃、好ましくは、70℃〜95℃の範囲であり得る。このような硬化温度では、硬化時間は、典型的には、1〜60分間の範囲である。比較的「速い」溶媒(すなわち、比較的高い蒸発速度を有する溶媒)については、硬化温度は、典型的には、35℃〜70℃、好ましくは、45℃〜65℃の範囲である。このような硬化温度では、硬化時間は、典型的には、0.5〜30分間の範囲である。
【0060】
本発明の熱可塑性気体障壁塗装組成物は、一旦、その基板に塗布されると、典型的には、この熱可塑性被覆のフィルムから溶媒が離れるのに十分な温度で十分な時間加熱することにより乾燥されて、溶媒が除去される。一般に、乾燥温度は、この基板の変形を防止するのに十分に低い。典型的な乾燥温度は、1〜60分間で、160°F(71.1℃)〜230°F(110℃)の範囲である。必要に応じて、フィルムは、数日間にわたって乾燥させることにより、例えば、70°F(21.1℃)程度に低い温度で乾燥され得る。
【0061】
本発明の気体障壁被覆は、任意の適切な乾燥フィルム厚を有し得る。厚い被覆は、典型的には、増大した気体障壁特性を提供するが、包装業界では、典型的には、経済的な理由のために、薄い被覆が好まれている。そういうものとして、本発明の気体障壁被覆は、一般に、1.0ミル(25.4ミクロン)未満の乾燥フィルム厚を有する。さらに薄いフィルムが望ましい場合、本発明の気体障壁被覆は、0.5ミル(12.7ミクロン)以下、さらに、0.3ミル(7.6ミクロン)以下の乾燥フィルム厚を有し得る。
【0062】
本発明の気体障壁塗装組成物は、典型的には、0.5立方センチメートル−ミル/インチ/気圧/日以下、好ましくは、0.35立方センチメートル−ミル/インチ/気圧/日以下、さらに好ましくは、0.25立方センチメートル−ミル/インチ/気圧/日以下のP(O)を有する気体障壁被覆を形成する。
【0063】
本発明の気体障壁被覆はまた、比較的滑らかで、透明で、光沢がある。好ましくは、本発明に従って作製された気体障壁被覆は、Gardner Instruments製のGardner Glossgard IIa 20°光沢計で測定したとき、少なくとも60、好ましくは、少なくとも70、さらに好ましくは、少なくとも80の20°光沢を有する。
【0064】
この気体障壁塗装組成物は、次の各層から溶媒を除去するために、複数の加熱段階で、単層または多層として、基板に塗布できる。両方共、本明細書中では、「多層」包装材料と呼ばれている。
【0065】
本発明はまた、改良された障壁特性を有する多層包装材料を提供する。本発明の多層包装材料は、少なくとも1層の気体透過性基板材料および少なくとも1層の気体障壁材料(これは、上記のようなポリアミン成分(A)、ポリエポキシド成分(B)およびヒドロキシ置換芳香族化合物(C)を含有する)を含む。ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)は、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ気体透過性包装材料層および同じ気体障壁材料層を含む多層包装材料の酸素透過率(P(O))の75%以下、好ましくは、60%以下、さらに好ましくは、50%以下の酸素透過率(P(O))を有する気体障壁材料層を生じるのに十分な量で、この気体障壁材料層中に存在している。
【0066】
本発明の多層包装材料を形成するために、上記気体障壁塗装組成物は、任意の適切な基板に塗布できる。しかしながら、典型的には、それは、気体透過性基板に塗布でき、好ましくは、それは、気体透過性高分子包装材料に塗布される。
【0067】
この気体障壁塗装組成物が塗布できる気体透過性材料には、典型的には、気体が容易に通ることができかつ適切な包装材料として使用できる任意の高分子材料が挙げられる。食品、飲料、薬品、医薬、医療用品などの包装で使用できるこのような適切な気体透過性材料の例には、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、セルロース誘導体、ポリスチレンおよびポリアクリルが挙げられる。ポリエステルは、それらの物理的特性のために、好ましい。この目的のために適切なポリエステルの例には、PET、ポリ(エチレンナフタレート)(「PEN」)および/またはそれらの組合せが挙げられる。
【0068】
本発明の1実施形態では、この多層包装材料は、この気体障壁材料の層を含む積層体を含む。このような積層体を形成するために、この気体障壁材料は、適切な基板材料の第一層に塗布され、その後、この気体障壁材料の層の上に、類似または異なる基板材料の第二層が塗布される。
【0069】
この気体透過性包装材料としてポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)が使用される本発明の実施形態では、このポリオレフィンの表面は、好ましくは、表面張力を高め、この酸素障壁材料のポリオレフィン材料に対する良好な付着を促進するために、処理される。この目的のために使用できる処理技術の例には、火炎処理、コロナ処理などが挙げられる。このような処理技術の具体的な例は、Pinnerら、Plastics:Surface and Finish,Butterworth & Co.Ltd.(1971),第3章により、詳細に記述されている。
【0070】
本発明に包含される多層包装材料の別の実施形態では、従来のプラスチック処理技術により引き続いて容器に形成されるシートまたはフィルムストックは、上記気体障壁塗装組成物で被覆される。その後、被覆されたフィルムまたはシートは、包装紙、バッグ、容器などのような物品に形成される。
【0071】
本発明により包含される多層包装材料のさらに他の実施形態では、予め形成した容器(例えば、飲料用ボトル)は、上記気体障壁塗装組成物の少なくとも1層で被覆される。
【0072】
いくつかの用途について、本発明の多層包装材料をCOで処理することが望まれ得る。この気体障壁塗装組成物は、包装材料に塗布され、その後、その被覆は、高圧および高温で、CO雰囲気に曝される。このような処理プロセス中にて、COの圧力は、典型的には、1平方インチあたり、30〜1,000ポンド(2バール〜70バール)の範囲であり;処理温度は、典型的には、32°F(0℃)〜200°F(93℃)の範囲であり;そして処理持続時間は、1分〜6週間の範囲であり得る。好ましくは、この処理プロセス中にて、COの圧力は、1平方インチあたり、30〜100ポンド(2バール〜7バール)の範囲であり;処理温度は、40°F(14℃)〜150°F(65℃)の範囲であり;そして処理持続時間は、1時間〜3週間の範囲であり得る。
【0073】
あるいは、この気体障壁被覆は、密封可能容器の形態の気体透過性包装材料に塗布される。その後、この容器は、少なくとも部分的に、炭酸飲料で満たされ、そして密封される。この包装材料は、気体透過性であるので、COは、そこを通ることができる。そのようにして、この炭酸飲料は、CO処理媒体として、使用されている。このCO処理方法について、この気体透過性材料は、0.5より高いP(O)値を有する。
【0074】
本発明の多層包装材料は、理想的には、食品、飲料、薬品、医薬、医療用品などの包装に適している。本発明は、以下の実施例で例示されるが、これらは、しかしながら、本発明をそれらの詳細に限定するものとみなされるべきではない。他に指示がなければ、以下の実施例ならびに明細書全体にわたって、全ての部およびパーセントは、重量基準である。
【実施例】
【0075】
(実施例)
実施例1は、非ゲル化マンニッヒ塩基付加物の調製を記述しており、これは、有利なことに、本発明の気体障壁塗装組成物において、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)として使用できる。
【0076】
実施例A〜Vは、熱硬化性気体障壁塗装組成物の調製を記述している。実施例A〜Nは、180°F(82.5℃)で硬化し、また、実施例O〜Vは、145°F(62.8℃)で硬化した。比較例AおよびOは、ヒドロキシ置換化合物を含有しない。
【0077】
実施例2は、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)の予備形成反応生成物として、熱可塑性気体障壁塗装組成物において引き続いて使用した熱可塑性非ゲル化アミン−エポキシ付加物の調製を記述している。実施例2Aは、ヒドロキシ置換芳香族化合物なしで実施例2の付加物だけを含有する比較熱可塑性気体障壁塗装組成物を記述している。実施例2は、ヒドロキシ置換芳香族化合物(C)として5重量%のレゾルシノールを含有する本発明の熱可塑性気体障壁塗装組成物の調製を記述している。
【0078】
(実施例1)
本実施例は、本発明の気体障壁塗装組成物においてヒドロキシ置換芳香族化合物(C)として有用な非ゲル化マンニッヒ塩基付加物の調製を記述している。
【0079】
適切に装備した反応容器に、レゾルシノール1モル(110グラム)、m−キシレンジアミン1モル(136グラム)および1−メチル−2−ピロリジノン533グラムを充填した。この反応混合物を、窒素雰囲気で、30℃の温度まで加熱し、そして1時間にわたって、ホルムアルデヒド1モル(30グラム)(すなわち、81.1グラムの37%水溶液)を添加した。この反応混合物を、40℃の温度で、1時間保持し、次いで、その温度を50℃まで上げ、さらに1時間保持した。得られた付加物は、258の理論分子量、30重量%の理論固形分含量、および86の理論アミン水素当量を有していた。
【0080】
(実施例A〜W)
(熱硬化性気体障壁塗装組成物の調製)
GASKAMINE(登録商標)328S(これは、Mitsubishi Gas Chemical Co.から市販されているm−キシレンジアミンおよびエピクロロヒドリンの反応生成物であり、1−メトキシ−2−プロパノール(これは、DOWANOL(登録商標)PMとして、Dow Chemical
Co.から市販されている)中70%溶液である)17.2重量%;TETRAD−X(登録商標)(これは、Mitsubishi Gas Chemical Co.から市販されているポリグリシジルm−キシレンジアミンであり、65%酢酸エチル溶液である)25.7重量%;1−メトキシ−2−プロパノール57.0重量%;およびSF1023(これは、General Electric Co.から市販されているシロキサン界面活性剤である)0.1重量%を穏やかに撹拌しながら混合することにより、実施例A〜Vの気体障壁塗装組成物を調製した。
【0081】
実施例B〜OおよびP〜Vの気体障壁塗装組成物の各々に、以下の表Iで列挙した添加剤(成分(C)として)の各々の指示量を添加した。比較例AおよびPの組成物は、添加剤を含まなかった。実施例A〜Vの気体障壁塗装組成物は、この組成物の全固形分に基づいて、約25重量%の最終固形分含量を有し、また、1.0のNH:エポキシ比を有していた。
【0082】
上で記述したように調製した気体障壁組成物の各々を、026ワイヤ巻き付けドローダウン棒を使用して、2ミル(50.8マイクロメートル)のPETフィルム試験パネルに塗布した。触れることにより決定される不粘着状態を達成するのに必要な時間にわたって、実施例A〜Oの組成物を被覆した試験パネルを、180°F(82.5℃)の温度で硬化し、また、実施例P〜Vの組成物を被覆した試験パネルを、145°F(62.8℃)の温度で硬化した。被覆した試験パネルを、引き続いて、不粘着状態を達成するのに必要な時間に等しい時間にわたって、さらに硬化した。硬化した気体障壁塗装組成物の各々に対する最終気体障壁塗装フィルム厚は、約0.5ミル(12.7マイクロメートル)であった。被覆した試験パネルを、透過率試験の前に、周囲条件で、4日間にわたって、「熟成」させた。
【0083】
(気体透過性試験)
上記のように調製したPET試験パネルの各々を、OXTRAN2/20を使用して、25℃で、50〜55%の相対湿度で、酸素透過率について試験した。被覆したPETサンプルの各々に対する気体障壁材料層の酸素透過率定数(P(O))は、以下の等式を使用して、計算した:
【0084】
【数1】

ここで、Rは、被覆フィルム透過速度(立方センチメートル/100インチ/気圧/日)を表わし;Rは、PETに対するフィルム透過速度を表わし;DFTは、この被覆の乾燥フィルム厚(ミル)を表わし;そしてP(O)は、この被覆の酸素透過率定数(立方センチメートル−ミル/100インチ/気圧/日)を表わす。試験結果は、以下の表IおよびIIで報告する。
【0085】
【表1】

比較例
**50〜55%の相対湿度および25℃で、cc−mil/100in./気圧/日。
【0086】
【表2】

比較例
**50〜55%の相対湿度および25℃で、cc−mil/100in./気圧/日。
【0087】
上記表IおよびIIで報告されたデータは、本発明の熱硬化性気体障壁塗装組成物(これは、特定の構造(I)のヒドロキシ置換芳香族化合物を含有する)が、特定の構造(I)のヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ組成物により得られる障壁被覆の気体透過率の75%以下の気体透過率値を有する硬化気体障壁被覆を提供することを示している。
【0088】
(熱可塑性気体障壁塗装組成物の調製)
(実施例2)
本実施例は、非ゲル化熱可塑性アミン−エポキシ樹脂の調製を記述しており、ここで、ポリアミン成分(A)およびポリエポキシド成分(B)は、予め反応されて、非ゲル化熱可塑性アミン−エポキシ付加物を形成する。
【0089】
適切に装備した反応容器に、m−キシレンジアミン1モル(136グラム)および1−メトキシ−2−プロパノール835.4グラムを充填した。この混合物を、窒素雰囲気下にて、100℃の温度まで加熱した。0.857モル(198.4グラム)のERISYS RDGE/H(CVC Specialty Chemicals,Inc.of Maple Shade,New Jerseyから市販されるレゾルシノールジグリシジルエーテル)および1218.7グラムの1−メトキシ−2−プロパノールの混合物を、2時間にわたって添加した。この反応混合物を、次いで、100℃で、2時間保持し、次いで、70℃の温度まで冷却し、そして真空ストリッピングした。得られたアミン−エポキシ樹脂は、2341の理論分子量、36.7重量%の測定固形分含量(110℃で1時間)、および146の理論アミン水素当量を有していた。
【0090】
(実施例2Aおよび2B)
実施例2Aおよび2Bは、2種の熱可塑性気体障壁塗装組成物の調製を記述している。比較例2Aは、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含有しない熱可塑性気体障壁塗装組成物の調製を記述している;そして実施例2Bは、5重量%のレゾルシノールを含有する本発明の熱可塑性気体障壁塗装組成物の調製を記述している。
【0091】
(比較例2A)
比較例2Aは、実施例2の非ゲル化熱可塑性アミン−エポキシ付加物からなり、これは、ヒドロキシ置換芳香族化合物を含有していなかった。
【0092】
(実施例2B)
実施例2Bは、実施例2の熱可塑性アミン−エポキシ付加物にレゾルシノール5重量%を添加し、そして得られた熱可塑性気体障壁塗装組成物の固形分含量を1−メトキシ−2−プロパノールを使用して25重量%まで低下させることにより、調製した。
【0093】
比較例2Aおよび実施例2Bの組成物の各々は、020ワイヤ巻き付け棒を使用したドローダウンにより、2ミルのPET試験基板に塗布した。被覆した試験基板を、145°F(62.8℃)で、20分間にわたって、対流式オーブン中で、乾燥した。その直後、すなわち、熟成期間なしで、上記OXTRAN2/20を使用して、酸素透過率を試験した。気体透過率データは、以下の表IIIで報告する。
【0094】
【表3】

上の表IIIで提示した透過率データは、熱可塑性気体障壁塗装組成物中にヒドロキシ置換芳香族化合物(C)としてレゾルシノールを含有させると、このようなヒドロキシ置換芳香族化合物を含まない同じ組成物よりも気体障壁特性が著しく改良されることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書中に記載の気体障壁組成物。

【公開番号】特開2008−95096(P2008−95096A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−256767(P2007−256767)
【出願日】平成19年9月28日(2007.9.28)
【分割の表示】特願2001−559763(P2001−559763)の分割
【原出願日】平成13年2月15日(2001.2.15)
【出願人】(599087017)ピーピージー インダストリーズ オハイオ, インコーポレイテッド (267)
【Fターム(参考)】