説明

改良されたエンドプロテーゼおよび製造方法

送達形状と展開形状を備える改良されたエンドプロテーゼと製造方法が開示される。本発明によるいくつかの実施形態は、織込まれた管状構造と、前記構造をそれらの拡張された形状に保持するための手段とを備える。本発明の一実施形態において、1つ以上の繊維(15、17)に配置された係止要素(12、14)が前記エンドプロテーゼをその展開形状に保持する。代替的実施形態では、1つ以上の軸部材が前記エンドプロテーゼをその展開形状に保持することができる。さらに他の実施形態において、化学結合部または熱電対が前記エンドプロテーゼをその展開形状に保持することができる。本発明によるいくつかの実施形態は、侵食性材料を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2002年11月15日に出願された米国特許仮出願第60/426,737号、および2003年1月15日に出願された米国特許仮出願第10/342,622号の利得を主張するものであり、これらの開示内容は、各々、参照することによって、その全体がここに含まれるものとする。
【技術分野】
【0002】
本発明は、一般的には、医学装置およびその製造に関し、さらに詳細には、体腔内の狭窄の治療に用いられる改良されたエンドプロテーゼに関する。
【背景技術】
【0003】
虚血性心疾患は、先進工業国において、死亡の主たる原因である。心筋梗塞をもたらすことが多い虚血性心疾患は、冠状動脈のアテローム性硬化症の結果である。アテローム性動脈硬化症は、複雑な慢性の炎症性疾患であり、脂質と炎症細胞の局所性蓄積、平滑筋細胞の増殖と移動、および細胞外基質の合成を含んでいる。「ネイチャー(Nature)」、362、801−809(1993)。これらの複雑な細胞反応によって、コラーゲンに富む線維性蓋によって覆われた脂質に富む核からなるアテローム斑が形成される。このアテローム斑の厚みは、非常にさまざまである。さらに、アテローム班の崩壊に伴って、程度はさまざまであるが、内出血と管腔血栓症が生じる。何故なら、脂質核および露出したコラーゲンが血栓形成作用を有するからである。「米国心臓学会誌(J Am Coll Cardiol.)」、23、1562〜1569(1994)。急性冠症候群は、通常、このような崩壊、またはいわゆる「脆弱なプラーク」の潰瘍化の結果として、生じる。「動脈硬化、血栓症、および血管生態(Arterioscler Thromb Vasc Biol.)」、22巻、6号、1002頁(2002年、6月)。
【0004】
冠状動脈バイパス手術に加えて、血管閉塞を軽減するための現在の治療の手法には、冠状動脈の内腔をバルーンによって拡張する経皮・経管冠動脈形成術がある。米国では、毎年、約800,000人の血管形成手術がなされている(「動脈硬化、血栓症、および血管生態(Arteriosclerosis, Thrombosis, and Vascular Biology)」、22巻、6号、884頁(2002年、6月))。しかし、血管形成手術がなされた患者の30%から50%は、間もなく、著しい動脈再狭窄、すなわち、平滑筋細胞の移動と成長による動脈の狭窄を患う。
【0005】
血管形成術の後の著しい動脈再狭窄率に応えて、罹患した冠状動脈を通る流体の流れを維持するために、経皮的に配置されるエンドプロテーゼが広く開発されている。伝統的に金属合金を用いて作製されるこのようなエンドプロテーゼ、すなわち、ステントは、脈菅系内を「前進」し、1つ以上の病巣に近接して配置される自己拡張またはバルーンによって拡張可能な装置を備えている。ステントは血管形成の長期的な利得を著しく高めるが、ステントを受け入れる患者の10%から50%は、やはり、再狭窄を起こす。(「米国心臓学会誌」、39、183〜193(2002))。このため、該当する患者の集団のかなりの部分を占める人数が、継続的な監視を受け、多くの場合、追加的な治療を受ける。
【0006】
ステント技術における継続的な改良は、容易に追跡され、容易に観察され、かつ速やかに展開されるステントであって、罹患した人体の脈菅系を横切るための小さな送達断面と十分な柔軟性を犠牲にすることなく、必要な半径方向の強度を示すステントを製造する点に向けられている。さらに、炎症細胞が蓄積される細胞機構および平滑筋細胞の増殖と移動の治療のための多数の治療薬は、虚血性心疾患の良好な長期の治療に対する非常に大きな展望を示している。その結果、このような治療薬の送出しと、疾患部位の近傍に送達される血管内プロテーゼの機械的な支持部とを組み合わせる技術の進展によって、心臓疾患を患う多数の患者に大きな希望がもたらされる。
【0007】
虚血性心疾患が複雑な慢性の炎症過程であるという理解が進むと共に、冠動脈造影法のような従来の診断技術は、次世代の画像診断法に取って代わられるようになっている。実際、冠動脈造影法は、臨床徴候を生じる傾向にある炎症を起こしたアテローム斑を識別するのに全く有用でないことがある。例えば、温度差に基づく撮像が、冠動脈疾患を検出するのに用いられるために検討されている。磁気共鳴撮像(MRI)は、現在、脆弱なプラーク形成の検出、診断、および監視を向上させる最先端の診断用動脈撮像として注目されている。MRIによって案内される経管介入がこれに続くと期待される。しかし、金属は、MR画像に歪と人為現象とを生じさせるので、冠状動脈、胆管、食道、尿管、および他の体腔内への従来の金属製ステントの使用は、MRIの使用とは適合しない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
その結果、明らかに、新しい画像診断法と適合し、かつそれを補完する介入装置に対する臨床的な必要性が生じている。さらに、人体の遠隔領域、特に冠状動脈の脈菅系内の予め検出され得ない疾患への追跡性能が改良された装置が必要とされている。最終的に、機械的な支持が改良され、かつ再狭窄の発生を低下またはなくすために補助的な治療薬と速やかに適合する装置が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
改良されたエンドプロテーゼおよび製造方法が、本明細書中に提供される。本発明によるエンドプロテーゼは織込みまたは編組みされた実質的に管状の構造を備えてよく、前記エンドプロテーゼは送達形状と展開形状をさらに備える。前記エンドプロテーゼは、そのエンドプロテーゼを展開形状に保持するための1つ以上の手段を備える。エンドプロテーゼは、さらに磁気共鳴撮像と適合する侵食性材料から構成されてもよい。本発明によるエンドプロテーゼは、治療薬または治療薬を含む被膜を備えてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明は、限定はされないが、そのいくつかの実施形態において、侵食性材料を含む。「侵食性」という用語は、所望の期間にわたって構造的な完全性を維持し、その後、徐々に多数のプロセスを受け、それによって、材料が引張強度と質量を実質的に失うような材料の能力を指す。これらのプロセス例として、加水分解、酵素による分解および酵素によらない分解、酸化、および酵素によって助長される酸化などが挙げられ、すなわち、生理学的環境と相互作用するときに、生体再吸収、溶解、および患者の組織が吸収、代謝、呼吸および/または排泄し得る成分への機械的な分解が挙げられる。ポリマー鎖は、加水分解によって切り裂かれ、クレブズ回路を介して人体から、主に二酸化炭素として、尿内に排出される。「侵食性」という用語と「分解され得る」という用語は、ここでは、同義的に用いられることを意図している。
【0011】
「エンドプロテーゼ」という用語は、これに限定されるものではないが、体腔または導管を通る流体の流れを回復または向上させる目的で、体腔または導管を治療的に処置するために、その体腔または導管内に配置される任意のプロテーゼ装置を指す。
【0012】
「自己拡張型」エンドプロテーゼは、装置を縮小された断面形状に保持する拘束物がその装置に存在せずに、縮小断面形状から大断面形状にたやすく戻る能力を有している。
【0013】
「バルーン拡張型」という用語は、縮小された断面形状と拡張された断面形状を備え、任意の適切な膨張媒体によって拡張されたバルーンの半径方向外方の力を介して、縮小された断面形状から拡張された形状に変化させる装置を指す。
【0014】
「バルーンアシスト」という用語は、最終的な展開が拡張されたバルーンによって助長される自己拡張装置を指す。
【0015】
「繊維」という用語は、ポリマー、金属、または金属合金であろうと、天然または合成であろうと、任意の適切な材料から作製される任意の略細長の部材を指す。
【0016】
繊維と関連して用いられるとき、「交差する点」という語句は、1本または2本以上の繊維の部分が交差、重複、巻付け、接線方向に通過、互いに貫通、または互いに接近または実際に接触する任意の点を指す。
【0017】
装置を人体内に配置する手術が終了した後、その装置が人体内に留置され、任意の時間だけ保持される場合、ここでは、その装置は「移植された」と呼ばれる。
【0018】
ここで用いられる「編組み」という用語は、全体的な幾何学的形状および所望の寸法に依存して、一本から数百本の縦方向および/または横方向細長要素を、0°から180°の間の角度、通常は、45°から105°の間の角度で、織込み、編組み、メリヤス編み、螺旋巻き、または撚合せの任意の方法によって製造される任意の編組み、メッシュ、または同様の織り構造を指す。
【0019】
特定されない限り、適切な取付け手段として、熱溶融結合、化学的結合、接着、焼結、溶接、または当該技術分野における任意の公知手段が挙げられる。
【0020】
「形状記憶」という用語は、構造的な相変態を受ける材料が特定の物理的および/または化学的条件下において第1形状を確定し、それらの条件の変化したときに、代替的形状に戻るような能力を指す。形状記憶材料は、限定はされないが、ニッケルチタンを含む金属合金であってもよいし、ポリマーであってもよい。もし、あるポリマーの元の形状が(軟質セグメントの転移温度として定義される)形状回復温度を超える温度に加熱することによって回復されるなら、そのポリマーの元の成形された形状が形状回復温度よりも低い温度において機械的に破壊されても、または記憶された形状が他の刺激を加えることによって回復可能であっても、そのポリマーは、形状記憶ポリマーである。このような他の刺激として、限定はされないが、pH、塩分、および水和などが挙げられる。本発明による幾つかの実施形態は、第1形状と第2形状を取り得る構造を有する1つ以上のポリマーと、装置が第2形状にあるときに少なくともその構造の一部に被覆される十分な剛性を有する親水性のポリマーとを含んでよい。この装置を水性環境に配置し、その結果、親水性ポリマーの水和が生じるとき、ポリマー構造は、第1形状に戻る。
【0021】
本明細書中に用いられる「セグメント」という用語は、形状記憶ポリマーの一部を形成するポリマーのブロックまたはシーケンスを指す。硬質セグメントと軟質セグメントという用語は、それらのセグメントの転移温度に関して、相対的な用語である。一般的に言うと、硬質セグメントは、例外もあるが、軟質セグメントよりも高いガラス転移温度を有している。天然のポリマーセグメントまたはポリマーとして、限定はされないが、タンパク質、例えば、カゼイン、ゼラチン、グルテン、ゼイン、変性ゼイン、血清アルブミン、およびコラーゲン、並びに多糖類、例えば、アルギン酸塩、キチン、セルロース、デキストラン、プルレン、並びにポリヒアルロン酸、ポリ(3−ヒドロキシアルカノエート)、特にポリ(βーヒドロキシブチレート)、ポリ(3−ヒドロキシオクタノエート)およびポリ(3−ヒドロキシ脂肪酸)が挙げられる。
【0022】
代表的な天然の侵食性ポリマーセグメントまたはポリマーとして、多糖類、例えば、アルギン酸塩、デキストラン、セルロース、コラーゲン、およびそれらの化学的誘導体(置換、化学基、例えば、アルキル、アルキレン、の付加、水酸化、酸化、および当業者によって通常なされる他の変性による誘導体)、並びにタンパク質、例えば、アルブミン、ゼイン、およびそれらのコポリマーおよび混合物が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、または合成ポリマーと組合せて用いられてもよい。
【0023】
好適な合成ポリマーブロックとして、ポリホスファゼン、ポリ(ビニルアルコール)、ポリアミド、ポリエステルアミド、ポリ(アミノ酸)、合成ポリ(アミノ酸)、ポリ酸無水物、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリアルキレン、ポリアクリルアミド、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンオキシド、ポリアルキレンテレフタレート、ポリオルトエステル、ポリビニルエーテル、ポリビニルエステル、ポリハロゲン化ビニル、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリシロキサン、ポリウレタン、およびそれらのコポリマーが挙げられる。
【0024】
好適なポリアクリレートの例として、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(エチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(イソブチルメタクリレート)、ポリ(ヘキシルメタクリレート)、ポリ(イソデシルメタクリレート)、ポリ(ラウリルメタクリレート)、ポリ(フェニルメタクリレート)、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(イソプロピルアクリレート)、ポリ(イソブチルアクリレート)、およびポリ(オクタデシルアクリレート)が挙げられる。
【0025】
合成的に変性された天然ポリマーとして、セルロース誘導体、例えば、アルキルセルロース、ヒドロキシアルキルセルロース、セルロースエーテル、セルロースエステル、ニトロセルロース、およびキトサンが挙げられる。適切なセルロース誘導体の例として、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシブチルメチルセルロース、酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、酢酸フタル酸セルロース、アルボキシメチルセルロース、三酢酸セルロース、セルロース硫酸ナトリウム塩が挙げられる。これらは、本明細書では、「セルロース」と総称される。
【0026】
分解可能な合成ポリマーセグメントまたはポリマーの例として、ポリヒドロキシ酸、例えば、ポリラクチド、ポリグリコリドおよびそれらのコポリマー、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(ヒドロキシブチル酸)、ポリ(オキシ吉草酸)、ポリ[ラクチド−co−(ε−カプロラクトン)]、ポリ[グリコリド−co−(ε−カプロラクトン)]、ポリカーボネート、ポリ(擬似アミノ酸)、ポリ(アミノ酸)、ポリ(ヒドロキシアルカノエート)、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル、およびそれらのブレンドおよびコポリマーが挙げられる。
【0027】
形状記憶ポリマーを含む実施形態の場合、ポリマーまたはポリマーブロックの結晶化度は、3%から80%の間、多くの場合、3%から65%の間である。転移温度よりも低い温度におけるポリマーの引張係数は、典型的には、50MPaから2GPa(ギガパスカル)の間であり、転移温度よりも高い温度におけるポリマーの引張係数は、典型的には、1MPaから500MPaの間である。多くの場合、転移温度よりも高い温度と低い温度における弾性係数の比率は、20以上である。
【0028】
硬質セグメントの融点とガラス転移温度は、一般的に、軟質セグメントの転移温度よりも、少なくとも10℃、好ましくは20℃高い。硬質セグメントの転移温度は、好ましくは、60℃から270℃の間、多くの場合、30℃から150℃の間にある。軟質セグメントに対する硬質セグメントの重量比は、約5:95から95:5の間、多くの場合、20:80から80:20の間である。形状記憶ポリマーは、少なくとも1つの物理的な架橋(硬質セグメントの物理的な相互作用)を含むか、または硬質セグメントの代わりに共有架橋を含む。形状記憶ポリマーは、相互貫通したまたは半相互貫通した網状組織を有してもよい。
【0029】
ポリマーの滑らかな表面が侵食されるにつれ、外面に露出されるカルボキシル基を有する、ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリ酸無水物、およびポリオルトエステルのような急速に侵食され得るポリマーを用いることもできる。さらに、ポリ酸無水物やポリエステルのような不安定な結合を含むポリマーは、加水分解において反応性を有することで、よく知られている。これらの加水分解の程度は、一般的に、ポリマーの骨格とそれらの配列構造を簡単に変化させることによって、変更させることができる。
【0030】
好敵な親水性ポリマーの例として、限定はされないが、ポリ(エチレンオキシド)、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ(エチレングリコール)、ポリアクリルアミド−ポリ(ヒドロキシアルキルメタクリレート)、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、親水性ポリウレタン、HYPAN、指向性HYPAN、ポリ(ヒドロキシエチルアクリレート)、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メトキシル化ペクチンゲル、寒天、デンプン、変性デンプン、アルギン酸塩、ヒドロキシエチル炭水化物、並びにそれらの混合物およびコポリマーが挙げられる。
【0031】
ヒドロゲルは、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリレート、ポリ(エチレンテレフタレート)、ポリ(酢酸ビニル)、並びにそれらのコポリマーおよびブレンドから生成することができる。いくつかのポリマーセグメント、例えば、アクリル酸、は、そのポリマーが水和され、ヒドロゲルが生成されたときにのみゴム弾性状態を呈する。他のポリマーセグメント、例えば、メタクリル酸は結晶性であり、そのポリマーが水和されないときでも融解可能である。所望の用途および使用の条件に依存して、いずれの種類のポリマーブロックも用いることができる。
【0032】
硬化性材料として、架橋、重合、または他の適切な工程によって、流動性または軟質の材料から硬質材料に変換可能な任意の材料が挙げられる。材料は、経時的、熱的、化学的、または放射線への露出によって、硬化され得る。放射線への露出によって硬化される材料の場合、その材料に依存して、多くの種類の放射線が用いられ得る。約100〜1300nmのスペクトル範囲の波長が用いられるとよい。材料は、組織、血液成分、生理液、または水によって速やかに吸収されない波長範囲の光を吸収しなくてはならない。可視線、赤外線、および熱線と共に、約100〜400nmの範囲の波長を有する紫外線が用いられるとよい。硬化性材料の例として、以下の材料、すなわち、ウレタン、ポリウレタン−オリゴマー混合物、アクリレートモノマー、脂肪族ウレタンアクリレートオリゴマー、アクリルアミド、UV硬化性エポキシ、光重合されるポリ酸無水物、および他のUV硬化性モノマーおよびポリマーが挙げられる。あるいは、硬化性材料は、室温で加硫されるシリコーン系化合物のように、化学的に硬化され得る材料であってよい。
【0033】
本発明によるいくつかの実施形態は、所望のパターンで硬化される材料を含む。このような材料は、前述の手段のいずれによって硬化されてもよい。さらに、光硬化性材料の場合、このようなパターンは、標準的なフォトレジスト技術を用いて、所望のパターンの陰画が得られるように、その材料にマスク材を被覆することによって、形成することができる。これによって、直接放射線と入射放射線の両方の吸収がマスク領域において遮られ、装置を所望のパターンに硬化させる。このような「マスキング」に対して、限定はされないが、金、マグネシウム、アルミニウム、銀、銅、プラチナ、インコネル、クロム、チタニウム−インジウム、インジウム−錫−酸化物を含む種々の生体適合性のある侵食性被膜材料を用いることができる。真空における240nm未満の紫外線波長を用いる投影式光学的フォトリソグラフィシステムは、より小さい断面寸法を達成するという点において利益をもたらす。193nmまたは157nm波長領域の紫外線波長を利用するこのようなシステムは、より小さい断面寸法を有する精緻なマスキング装置を改良することが可能である。
【0034】
限定はされないが、本発明によるいくつかの実施形態では、ステントを構成する材料の侵食と共に、又は独立して、プロテーゼの構造から溶出する1つ以上の治療物質を備えるように、表面が処理されている。あるいは、治療物質は、エンドプロテーゼを構成する材料内に混和されてもよい。本発明によれば、このような治療物質を備えるための表面処理および/またはそれの取込みは、二酸化炭素液、例えば、液状または超臨界状態にある二酸化炭素を利用する多数の工程の1つ以上を利用することによって実施することができる。
【0035】
超臨界液は、その臨界温度および臨界圧(または「臨界点」)を越える物質である。気体を圧縮すると、通常、相分離を生じ、分離した液相が現れる。しかし、全ての気体は、臨界温度、すなわち、その温度よりも高い温度ではその気体を圧力の増大によって液化できない温度と、臨界圧力、すなわち、臨界温度においてその気体を液化するのに必要な圧力とを有している。例えば、超臨界状態にある二酸化炭素は、その液体状態と気体状態が互いに識別できない形態として存在する。二酸化炭素の場合、臨界温度は約31℃(88°D)であり、臨界圧力は約73気圧、すなわち、約1070psiである。
【0036】
ここで用いられる「超臨界二酸化炭素」という用語は、約31℃よりも高い温度で、かつ約1070psiよりも高い圧力にある二酸化炭素を指す。液状の二酸化炭素は、約−15℃から約−55℃の間の温度で、かつ約77psiから約335psiの間の圧力で得ることができる。一種以上の溶媒およびそのブレンドが、状況に応じて、二酸化炭素に含まれてもよい。例示的な溶媒として、限定はされないが、4フッ化イソプロパノール、クロロホルム、テトラヒドロフラン、シクロヘキサン、および塩化メチレンが挙げられる。このような溶媒の含有量は、典型的には、約20重量%未満である。
【0037】
一般的に、二酸化炭素は、ポリマー材料のガラス転移温度を効果的に低下させ、薬剤をポリマー材料内に浸透させるのを容易にするために用いることができる。このような薬剤として、限定はされないが、疎水性薬剤、親水性薬剤、および粒状の形態の薬剤が挙げられる。例えば、作製後に、エンドプロテーゼと疎水性薬剤が超臨界二酸化炭素内に浸漬されるとよい。超臨界二酸化炭素は、ポリマー材料を「可塑化」する。すなわち、超臨界二酸化炭素は、ポリマー材料を低温において軟化させ、その薬剤が変質および/または損傷する可能性の低い温度において、ポリマー製のエンドプロテーゼまたはステントのポリマー被膜内にその薬剤を浸透させるのを促進することができる。
【0038】
他の例として、エンドプロテーゼと親水性薬剤を水中に浸漬し、二酸化炭素の「ブランケット」で覆うようにすることもできる。親水性薬剤は水中の溶液内に入り、二酸化炭素が前述したようにポリマー材料を「可塑化」し、これによって、ポリマー製のエンドプロテーゼまたはエンドプロテーゼのポリマー被膜内へのその薬剤の注入を容易にする。
【0039】
さらに他の例として、二酸化炭素は、「粘着力を高める」のに用いることができる。すなわち、二酸化炭素は、ポリマー製のエンドプロテーゼまたはエンドプロテーゼのポリマー被膜をより接着性にし、薬剤を乾燥した微粉状態でそこに塗布するのを容易にすることができる。その際、薬剤を内部に拡散し得る能力の点から選択された薄膜形成ポリマーがエンドプロテーゼにわたり層状に適用されてもよい。適切な手段によって硬化させた後、所定の期間にわたって薬剤の拡散を許容する薄膜が形成される。
【0040】
本発明の代替的実施形態において、少なくとも1つのモノマーまたはコモノマーを二酸化炭素内に溶解させ、フッ素モノマーと共重合させることができる。限定はされないが、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド、メタクリルアミド、スチレン系、エチレン、およびビニルエーテルのモノマーを含む任意の好適なモノマーまたはコモノマーを用いることができる。本発明の共重合は、前述したのと同様の温度および圧力下で実行されるとよい。
【0041】
本発明によるエンドプロテーゼを形成する材料またはそのエンドプロテーゼを被覆する材料内に治療物質を含ませる目的として、動脈損傷部位における血小板の付着および凝集の低減、成長因子およびそれらのレセプターの発現の阻止、成長因子に対する競合的拮抗体の発現、レセプターが感受性細胞に送信することの妨害、および平滑筋の増殖に対する阻害物質の促進が挙げられる。抗血小板剤、抗凝血剤、抗腫瘍剤、抗線維素剤、酵素および酵素阻害剤、抗有糸分裂薬、抗代謝薬、抗炎症剤、抗トロンビン剤、抗増殖剤、および抗生物質などが好適である。
【0042】
本発明による具体的な実施形態についての以下の説明から、本発明の詳細が良好に理解され得る。1例として、図1において、標準的な送達カテーテル1のエンドプロテーゼ10を支持する遠位端3が示されている。本発明によるエンドプロテーゼは自己拡張型であってもよいが、遠位端3に取り付けられたエンドプロテーゼ10は、バルーン拡張型である。従って、エンドプロテーゼ10は、遠位端3にバルーン5を備える送達カテーテル1を介して、展開される。エンドプロテーゼ10は、分子量、化学組成、および他の特性を考慮して選択された金属合金、ポリマー、または他の適切な材料を含む前述した従来の材料または形状記憶材料のいずれかから、所望の幾何学的形状を達成するように作製され、次いで、前述の説明のいずれかに従って、処理されてよい。このようなエンドプロテーゼ10は、バルーン5の上に「ひだを作って」低断面送達形態に重ねられている。次いで、エンドプロテーゼ10は、エンドプロテーゼ10が展開され得る体腔内の病巣まで、決められたコースを前進させることができる。エンドプロテーゼ10を展開するために、バルーン5が、カテーテル1を通る膨張媒体を介して膨張される。バルーン5を拡張する半径方向外方の力によって、エンドプロテーゼ10は、その展開形状に拡張される。
【0043】
図2は、カテーテル1が除去された後の展開形状にあるエンドプロテーゼ10を示している。従って、エンドプロテーゼ10はその展開直径にあり、この直径は、患者の血管(図示せず)のサイズに依存し、0.5mmから4.0mmの間にあるとよい。エンドプロテーゼ10は、1本から50本の間にある繊維15および17を含み、これらの繊維は、同種であっても、一種以上の異なる材料から作製される複合体であってもよい。あるいは、エンドプロテーゼ10は、追加的な繊維を含んでもよい。繊維15および17は、1つ以上の点において互いに交差し、かつ略管状の構造を形成するように、前述したような任意の適切な方法で編組みされる。
【0044】
係止要素12が、1°から90°の間の角度、最も適切には、10°から45°の間の角度で、繊維15から第1方向20に突出している。係止要素12は、1.0mmから5.0mmの間の距離、多くの場合、1.0mmから3.0mmの間の距離だけ、互いに離間し、単独で、対になって、または群をなして機能することが可能である。同様に、係止要素14は、繊維17から第1方向20と直交する第2方向21に突出し、ステント10の所望の寸法に対応する距離だけ、互いに離間している。係止要素12は、エンドプロテーゼ10が拡張作用を受けるとき、エンドプロテーゼ10が所望の直径まで拡張されるまで、繊維15が第1方向20において係止要素12を通り過ぎるように、配向されている。同様に、ステント10が所望の直径に拡張されるまで、繊維17は第2方向21において係止要素14を通り過ぎる。繊維15および17は、逆方向において、係止要素14および12を通り過ぎることができない。その結果、ステント10が所望の直径に達したとき、係止要素12および14は、繊維15および17が互いに交差する箇所において、繊維15および17とそれぞれ係合する。その後、係止要素12および14は、繊維15および17が互いに滑って抜けるのを防ぎ、これによって、繊維15および17の位置を互いに対して維持する。その結果、エンドプロテーゼ10が、小径に戻るのは阻止され、これによって、エンドプロテーゼ10は、患者の血管または導管の壁に、その内部を通る流体の流れを増すかまたは回復させるために、半径方向外方の連続的な力を加えることができる。
【0045】
図3は、図2のエンドプロテーゼ10の領域Aを拡大して示している。代替的な配置も可能であるが、係止要素12の対が、繊維15から矢印20によって示される第1方向に突出し、繊維17が繊維15と交差する箇所において、繊維17と係合し、力を矢印20の方向に加える。同様に、例えば、代替的に単独でも作用するが、係止要素14の対が、繊維17から第2方向21に突出している。係止要素14は、方向20と直交する矢印21によって示される第2方向21において、繊維17に力を加える。これによって、繊維15および17の位置は互いに対して保持され、管腔を通る流体の流れが高められまたは回復されるように、エンドプロテーゼ10はその治療直径を保持し、狭い血管の壁に半径方向外方の力を加えることができる。
【0046】
図4Aに示されるように、繊維15は、1つ以上の係止要素12を備え、これらの係止要素は、単独で配置されても、対になって配置されても、または任意の数の代替的な適切な構造で配置されてもよい。係止要素12は、限定はされないが、接着剤による貼付、溶接、溶融取付けなどを含む当該技術分野において知られている任意の数の適切な方法によって、繊維15に固着されてもよく、あるいは繊維15と共押出しされた隆起であってもよい。係止要素12は、繊維15と同一の材料から作製されてもよいし、あるいは繊維15よりも高い剛性を示す材料群から選択された材料から作製されてもよい。代替的に、エンドプロテーゼ10は、その位置で溶出される1つ以上の治療薬をさらに含んでもよい。
【0047】
図5を参照するに、本発明による他の実施形態が開示されている。典型的な送達カテーテル31の遠位端33が示されている。本発明によるエンドプロテーゼは代替的にバルーン拡張型であってもよいが、遠位端33に取り付けられたエンドプロテーゼ30は自己拡張型である。従って、エンドプロテーゼ30は、患者の脈菅系内を前進するための低断面送達形状にひだ寄せされ、シース34を介して、その低断面形状に保持されている。遠位端33が治療すべき病巣(図示せず)に近接して位置決めされると、シース34が引き込められ、エンドプロテーゼ30は、その大径の展開形状に戻ることができる。エンドプロテーゼ30は、所望の化学特性、分子量、および他の特徴を考慮して選択される前述のポリマー材料および金属合金を含む任意の数の好適な形状記憶材料から作製され、滅菌、所望の幾何学的形状、および生体内寿命を達成するように、処理されるとよい。
【0048】
図6は、展開形状にあるエンドプロテーゼ30を示している。図1〜4に関して述べた実施形態と同様に、エンドプロテーゼ30は、1つ以上の交点39において交差する繊維35および37によって、略管状の構造を形成するように編組みされている。同種または複合体であってもよく、同一または異なる材料から作製されてもよい繊維35および37は、25°から105°の角度で互いに交差している。エンドプロテーゼ30がその所望の展開直径に拡張されると、繊維35および37は、交差点39において、互いに「入れ子」にされ、これによって、エンドプロテーゼ30をその展開形状に係止する。繊維35および37は、切欠き40を介して、互いに入れ子にされ得る。これらの切欠き40は、所望の展開寸法に依存して、0.25mmから1.0mmの間の幅を有し、1.0mmから5.0mmの距離で互いに離間している。
【0049】
切欠き40は、図7および8により詳細に示されている。例えば、図7は、エンドプロテーゼ30の領域Bの部分を拡大して示している。ここで、繊維35および37は、入れ子の形態にある。図8Aおよび8Bは、本発明によるエンドプロテーゼを作製するのに使用できる繊維の代替的な例を示している。図8Aに単独で示される繊維35は、切欠き40を備えている。同様に、代替的な構成を有する図8Bの繊維41は、切欠き44を備えている。他の構成も好適である。
【0050】
ステント30が送達形状にあるとき、切欠き40および42は、繊維35および37から離脱されている。展開されると、エンドプロテーゼ30を作製するのに用いられた材料の形状記憶特性によって、エンドプロテーゼ30はその展開形状に戻るので、ステント30は半径方向外方の力を示す。さらに、繊維35および37は、交差点39において、切欠き40および42内に「入り子」されるように弾性的に運動し、これによって、ステント30をより速やかに展開形状に係止し、より小さい直径に戻るように血管から加えられる圧力に対して耐える。
【0051】
限定されないが、エンドプロテーゼ30は、その全体が1つまたは多数の硬化性材料から作製されてもよいし、またはそのような材料によって被覆されてもよいし、あるいは交差点39に1つ以上の硬化性材料を含んでもよい。拡張および係止位置において、紫外線が装置内に送達され、複数の交差点が同時に「溶接」される。このような硬化性材料が硬化することによって、切欠き40および42の「入り子」の機能の安定性が高められ得る。さらに他の代替的実施形態において、エンドプロテーゼ30は1つ以上の硬化性材料から作製され、前述したようなフォトリソグラフィ技術を用いて、パターンに硬化され、切欠き40および42の硬化を向上させることができる。さらに、エンドプロテーゼ30は、代替的に、前述の技術のいずれかを用いて、エンドプロテーゼ30を構成する材料またはその表面に被覆される材料内に治療薬を含ませるように、処理することもできる。
【0052】
本発明によるさらに他の実施形態は、図9および図10に関して、より明快に説明することができる。図1〜8に関連して述べた本発明による実施形態と同様に、展開形状にあるエンドプロテーゼ50が図9に示されているが、このエンドプロテーゼ50は低断面の送達形状も有する。エンドプロテーゼ50は、自己拡張型であっても、バルーン拡張型であっても、バルーンアシスト型でもよい。エンドプロテーゼ50は、前述の繊維におけるような多数の可能性のある材料のいずれかを用いて、多数の可能性のある方法のいずれかによって作製され得る繊維52および54を含む。これらの繊維52および54は、略管状の構造を形成するように、互いに角度をなして織込まれる。繊維52はビーズ状の「雄」要素58を備え、繊維54は雄要素58が一方向にのみ貫通可能となるように構成された「雌」要素56を備えている。適切な手段によって、ステント50が拡張されると、雄要素58は、雌要素56を貫通し、逆方向において抜き戻すことができない。これによって、繊維52は互いに対して「係止」され、その結果、エンドプロテーゼ50は、いったん所望の直径に拡張されると、その展開形状に係止される。代替的に、雌要素56と雄要素58は、硬化性材料から構成されてもよく、および/またはエンドプロテーゼ50は、パターンに硬化され、展開された後のステント50の安定性を高めることができる。
【0053】
図11Aおよび図11Bにおいて、図9〜10において述べた本発明の構成の代替例が示されている。図11Aにおいて、嵌合前の雄要素55と雌要素57が示されている。雄要素55は、棘状の構造として構成され、雌要素57がカップ状の構造として構成されている。図11Bにおいて、雄要素55は矢印59の方向に移動され、雌要素57内に不可逆的に受容される。雄要素55は、矢印59によって表される方向と逆の方向において雌要素57を通って引き戻されることができない。しかし、前述したのは単なる例であること、および雄要素と雌要素は、不可逆的な連結のための多数の好適な構成のいずれによって、構成されてもよいことが強調されねばならない。
【0054】
次に、完全に代替的な実施形態について説明する。図12には、エンドプロテーゼ60が示されている。このエンドプロテーゼ60は、前述の実施形態と同様の編組みされた繊維構造を備えている。エンドプロテーゼ60は、そのエンドプロテーゼ60の長さに沿って実質的に延在する1つ以上の軸部材64をさらに備えている。図12Aの実施形態において、エンドプロテーゼ60は、略120°互いに離間している3本の軸部材64を備えている。軸部材64は、任意の数のエラストマー材料または形状記憶材料から作製されてよい。軸部材64は、限定はされないが、好適な接着剤の使用、化学的な取付け、溶融結合、またはその場での硬化などを含む当該技術分野で公知の任意の好適な方法で、エンドプロテーゼ60に固着されるとよい。図12Bは、図12の実施形態の端面図を示している。軸部材64の可能性のある離間の例が示されている。
【0055】
軸部材64は、矢印65および66の方向において、エンドプロテーゼ60に短縮する力を加える。このような短縮する力は、エンドプロテーゼ60が伸長するのを防ぎ、エンドプロテーゼ60の直径の減少を防ぐように作用する。これによって、軸部材64は、エンドプロテーゼ60を所望の展開直径に「係止」するように作用する。限定されはしないが、エンドプロテーゼ60を縮小された断面形状に保持するために、軸部材64および/またはエンドプロテーゼ60は、縮小された断面形状にあるときに、親水性ポリマーによって被覆されるとよい。生理液に露出されると、このような親水性ポリマーは侵食され、軸部材64、従って、エンドプロテーゼ60を大きな断面の展開直径に戻すことができる。
【0056】
図13Aは、図12Aおよび図12Bに関連して述べたのと同様の実施形態を示している。図13Aにおいて、展開形状にあるエンドプロテーゼ70が示されている。エンドプロテーゼ70は、ステント70の遠位端75またはその近傍において、任意の適切な手段によって固着された1つ以上の軸部材74を備えている。軸部材74は、ステント70の近位端73またはその近傍において、雄要素76と雌要素78をさらに備えている。エンドプロテーゼ70が展開されると、軸部材74は「引締め」られ、エンドプロテーゼ70に短縮する力を加える。任意の数の適切な形状を有することができる雄要素76は、矢印77の方向において、雌要素74内を不可逆的に引っ張られる。雄要素76は、その逆方向には通過することができない。前述の実施形態と同様、エンドプロテーゼ70と軸部材74は、前述の材料のいずれかを用いて、前述の工程のいずれかによって、作製することができる。図13Bは、図13Aに関連して述べた実施形態の端面図を示している。
【0057】
図14Aおよび14Bは、本発明による代替的実施形態を示している。エンドプロテーゼ80は、図1〜13に関連して述べた実施形態に、任意の数の好適な材料の2つ以上から作製される編組みによる略管状の構造を備えるという点までは類似している。さらに、展開の後、エンドプロテーゼ80は、繊維の1つ以上の交差点84において、1つ以上の係止領域86を備えている。代替的に、係止領域86は、多くの他の構成によって画成されてもよい。図14Aおよび図14Bの実施形態において、係止領域86は、繊維82および83間に化学結合部を備えている。
【0058】
さらに詳細には、エンドプロテーゼ80は、アルギン酸塩繊維82とカルシウム繊維83と含む。カルシウム繊維83は、任意の数の好適な親水性被膜85の1つ以上によって被覆されている。エンドプロテーゼ80が水性環境内に配置されると、親水性被膜85が溶解し、カルシウム繊維83を露出させ、1つ以上、典型的には無数の繊維の交差点84においてアルギン酸塩繊維82と接触させる。アルギン酸塩繊維82とカルシウム繊維83が接触すると、それらの材料間の化学反応によって、体温で硬化する材料を生じる。これによって、図14Bに示されるように、係止領域86が形成される。代替的に、エンドプロテーゼ80は、光硬化材料を含む、他の手段により硬化可能な材料から作製され、場合によっては、先に詳述したフォトリソグラフィ技術を用いて、所望のパターンに従って、硬化させることもできる。
【0059】
図14C〜図14Eは、繊維交差点またはその近傍に1つ以上の係止領域も備える本発明による異なる実施形態を示している。図14Cの実施形態において、1つ以上の繊維交差点91は、任意の好適な材料からなる熱電対93を備えている。いったん熱電対93を備えるエンドプロテーゼが展開形状に達したとき、誘導加熱を用いて、繊維90および94を交差点91において接合し、これによって、このようなエンドプロテーゼを展開形状において係止することができる。代替的に、繊維を交差点またはその近傍において溶接又は接合するために、無線周波数の信号を用いて、熱電対93を加熱することもできる。
【0060】
図14D〜図14Eは、展開の前後における、エンドプロテーゼの係止領域の代替的実施形態を示している。図14Dでは、展開の前に、繊維97は繊維98と角度99をなして交差している。係止要素95は、交差点96またはその近傍に配置されている。自己拡張または他の手段によって展開した後、繊維97は繊維98と角度100をなして交差し、係止要素95と係合し、これによって、繊維97および98を角度100またはそれに近い角度で係止し、その結果、係止要素95を備えるエンドプロテーゼを展開形状に保持する。
【0061】
前述の実施形態のいずれもが、単独で、またはエンドプロテーゼの侵食に伴って、溶出される治療薬をさらに含んでもよい。第1ステップとして、前述のエンドプロテーゼのいずれかを準備するときに、超臨界二酸化炭素溶液内の適切なポリマーを疎水性治療薬と混合させるとよい。その結果、疎水性治療薬がポリマー内に取込まれる。あるいは、本発明による実施形態で、図15に示されるように、親水性治療薬がすでに含まれている外層120を備えてもよい。前述したように、作製の後、前述の材料のいずれかによって形成されたエンドプロテーゼ117がポリマー、水、および親水性治療薬の溶液内に浸漬され、超臨界二酸化炭素の「ブランケット」で覆われる。二酸化炭素はポリマーへの治療薬の取込みをいっそう鋭敏にする。治療薬を含むポリマーは、エンドプロテーゼ117の表面に層120を形成する。
【0062】
エンドプロテーゼ117は、形状記憶材料から形成され、1つ以上の端119またはその近傍に配置されるエンドキャップ118をさらに備えている。エンドキャップ118は、エンドプロテーゼ117を展開形状に保持するように作用する半径方向外方の力を加える。
【0063】
以上、本発明の特定の形態について、図示し、かつ説明したが、前述の説明は例示にすぎず、本発明の精神と範囲から逸脱することなく、種々の変更がなされ得ることは、当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明によるステントが取り付けられた従来のバルーンカテーテルの遠位端の平面図である。
【図2】展開形状にある図1の実施形態を示す。
【図3】図2の詳細な領域Aを示す。
【図4A】図1〜3の実施形態を作製するのに用い得る繊維の例を示す。
【図5】本発明による代替的実施形態が取り付けられた従来の送達カテーテルの遠位端の平面図である。
【図6】展開形状にある図5の実施形態を示す。
【図7】図6の詳細な領域Bを示す。
【図8A−8B】本発明による実施形態を作製するのに用い得る繊維の例を示す。
【図9】展開形状にある本発明による他の実施形態を示す。
【図10】図9の詳細領域Cを示す。
【図11A−11B】本発明による代替的実施形態の構成要素を示す。
【図12A】展開形状にある本発明のさらに他の実施形態の平面図である。
【図12B】図12Aに示される実施形態の端面図を示す。
【図13A】本発明による代替的実施形態の平面図である。
【図13B】図13Aの実施形態の端面図である。
【図14A−14B】本発明による実施形態の平面図である。
【図14C−14E】本発明によるエンドプロテーゼの係止領域の代替的実施形態を示す。
【図15】拡張形状にある本発明によるさらに他の実施形態の平面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略管状構造の輪郭を示す1つ以上の繊維を含むエンドプロテーゼであって、前記エンドプロテーゼは送達形状と展開形状を備え、前記エンドプロテーゼは前記エンドプロテーゼを前記展開形状に保持するための手段をさらに備える、エンドプロテーゼ。
【請求項2】
前記エンドプロテーゼは、1つ以上の侵食性材料を含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項3】
前記1つ以上の繊維は、1つ以上の係止要素を備える、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項4】
前記1つ以上の繊維は、1つ以上の交差点を備え、前記エンドプロテーゼが前記展開形状にあるとき、前記交差点1つ以上において、前記係止要素1つ以上が前記繊維1つ以上と係合する、請求項3に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項5】
前記1つ以上の係止要素は、係止突起を備える、請求項4に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項6】
前記1つ以上の係止要素は、1つ以上の切欠きを備える、請求項4に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項7】
前記1つ以上の係止要素は、雄要素と雌要素を備える、請求項4に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項8】
前記エンドプロテーゼが前記展開形状にあるとき、前記1つ以上の繊維は、前記1つ以上の交差点に化学結合を備える、請求項4に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項9】
前記エンドプロテーゼを前記展開形状に保持するための前記手段は、前記エンドプロテーゼの長さに沿って実質的に延在する1つ以上の軸部材を備える、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項10】
前記1つ以上の軸部材は、前記エンドプロテーゼに長手方向の圧縮力を加える、請求項9に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項11】
前記1つ以上の軸部材は、1つ以上の係止要素をさらに備える、請求項10に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項12】
前記エンドプロテーゼは、第1端と第2端を備え、前記1つ以上の係止要素は、前記第1端に近接している、請求項11に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項13】
前記1つ以上の係止要素は、1つ以上の熱電対を備える、請求項4に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項14】
前記エンドプロテーゼは第1端と第2端を備え、前記エンドプロテーゼを前記展開形状に保持するための前記手段は前記第1および第2端に近接して配置された1つ以上のエンドキャップを備え、前記エンドプロテーゼが前記展開形状にあるとき、前記1つ以上のエンドキャップは半径方向外方の力を加える、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項15】
超臨界状態にある溶媒を利用して、前記エンドプロテーゼ内または前記エンドプロテーゼ上に治療薬が取込まれている、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項16】
前記繊維は、1つ以上の硬化性材料を含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項17】
体腔の狭窄を治療する方法であって、前記方法は、
送達形状と展開形状を備え、1つ以上の繊維から形成される略管状のエンドプロテーゼを設けるステップであって、前記繊維は1つ以上の係止要素と、前記1つ以上の繊維間の1つ以上の交差点とを備え、前記エンドプロテーゼが前記展開形状にあるとき、前記係止要素は前記繊維と係合するステップと、
前記エンドプロテーゼを体腔内に配置するステップと、
前記エンドプロテーゼを展開し、これによって、前記係止要素を係合させるステップと
を備える、方法。
【請求項18】
前記係止要素は1つ以上の熱電対を備え、前記方法は、前記熱電対の1つ以上を加熱し、これによって、前記熱電対を係合させるステップをさらに備える、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
体腔内において300mmHgに耐えることができる織込まれた侵食性エンドプロテーゼであって、前記エンドプロテーゼは送達形状と展開形状を備え、前記エンドプロテーゼは前記エンドプロテーゼを前記展開形状に係止するための手段を備える、エンドプロテーゼ。
【請求項20】
前記エンドプロテーゼを前記展開形状に係止するための前記手段は、指向性係止/係合機構を備え、前記機構は、0.25ポンド未満の係合力と1.0ポンドよりも大きい係止力を必要とする、請求項19に記載のエンドプロテーゼ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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【図15】
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【公表番号】特表2006−506209(P2006−506209A)
【公表日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−570378(P2004−570378)
【出願日】平成15年11月10日(2003.11.10)
【国際出願番号】PCT/US2003/035951
【国際公開番号】WO2004/045450
【国際公開日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【出願人】(505175744)サインコア,リミテッド・ライアビリティ・カンパニー (15)
【Fターム(参考)】