説明

改良された抗酸化特性を得るための添加剤および潤滑組成物

【課題】 より高い抗酸化特性を示す潤滑油によって表面を潤滑する方法および組成物の提供。
【解決手段】 当該潤滑面には、潤滑粘度の基油、および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一つの炭化水素に可溶な金属化合物の量を含んだ潤滑組成物が含まれる。当該金属化合物の金属はチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに記載された態様は、特定の油溶性金属添加剤および潤滑油組成物中でのそのような金属添加剤の使用、また特に潤滑組成物の抗酸化特性を改良するために使用される可溶性金属添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乗用車および高荷重ディーゼルエンジンに使用される潤滑油は年を経て変化してきた。今日のエンジンは過去に比べてより激しくまた苛酷な走行用にデザインされている。しかしながら、より激しい走行により、オイルの使用温度の上昇に伴ってオイルの酸化が増進するという悪影響が生じる。オイルの酸化は、オイルの粘度上昇、および潤滑面に焼け付く凝集した酸化副産物によって生じる高温堆積物の形成の原因となる。そのため、特定のリン添加剤および硫黄添加剤がエンジンオイルの酸化を減少させるために使用されている。
【0003】
しかし、次世代の乗用車のモーターオイルおよび高荷重ディーゼルエンジンオイルの部類には、より厳しい公害防止装置の汚染を減少させるため、当該組成物内にリンおよび硫黄を含んだ酸化防止添加剤がより低レベルで存在することが要求される。リンおよび硫黄を含んだ添加剤が公害防止装置の効力を害する、あるいは減少させることはよく知られている。
【0004】
上記に関して、潤滑添加剤は、優れた抗酸化特性を提供し、また乗用車およびディーゼルエンジンに使用されている公害防止装置と、より適合する必要がある。このような添加剤はリンおよび硫黄を含んでいることも、あるいは実質的にリンおよび硫黄を欠いていることもあり得る。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一つの実施態様において、潤滑粘度の基油と、炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少する以上に当該潤滑組成物の酸化を減少する効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属化合物の量を含んだ潤滑組成物を含む潤滑面がここに提示され、ここで当該金属化合物の金属は、チタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される。
【0006】
別の実施態様において、可動部を有し、また当該可動部を潤滑するための潤滑剤を含んだ車が提供される。当該潤滑剤には、潤滑粘度のオイル、有機モリブデン摩擦調整剤、および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属化合物の量が含まれる。当該金属化合物の金属はチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択され、また当該化合物は硫黄原子およびリン原子を実質的に欠いている。当該潤滑剤は事実上フェノール系抗酸化化合物を欠いている。
【0007】
さらに別の実施態様において、潤滑粘度の基油成分、有機モリブデン摩擦調整剤、および炭化水素に可溶な金属を含んだ物質を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属を含んだ物質の量を含んだ、完全に配合された潤滑組成物が提供される。当該の金属を含んだ物質の金属はチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択され、また当物質は硫黄原子およびリン原子を実質的に欠いている。
【0008】
当開示のさらなる実施態様は、フェノール系酸化防止剤の実質的な不在下において抗酸化特性の増加を示す潤滑油によって可動部を潤滑する方法を提供する。当方法は、基油、有機モリブデン摩擦調整剤、および酸化防止添加剤を含んだ潤滑組成物を、潤滑油として一つ以上の可動部に使用することを含む。当該酸化防止添加剤には、ヒドロカルビル分散媒、および潤滑油中に約50ppmから約1000ppmの金属を与える、炭化水素に可溶な金属化合物の量が含まれる。当該の炭化水素に可溶な金属化合物の金属はチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される。
【0009】
上記で簡単に説明したように、当開示の実施態様は潤滑組成物の酸化安定性を著しく向上させ、また対応する酸化安定性に必要とされるリン添加剤および硫黄添加剤の量を減少させることのできる、炭化水素に可溶な金属性酸化防止添加剤を提供する。当添加剤は、可動部間の表面に使用される油性の流体と混合される。その他の用途において、当添加剤は完全に配合された潤滑組成物中に提供される。当添加剤は、将来の乗用車およびディーゼルエンジンオイルの仕様に加え、現在提案されている乗用車のモーターオイル用のGF−4規格、および高荷重ディーゼルエンジンオイル用のPC−10規格を満たすように特に意図されている。
【0010】
ここに記載された組成物および方法は、特に自動車の公害防止装置の汚染を減少させるのに適している。また一方で当該組成物は、潤滑組成物の酸化安定性を向上させるのに適している。ここに記載された組成物および方法のその他の特徴および長所は、ここに記載された実施態様を制限することなく好適な実施の態様を例示することを意図した以下の詳細な説明を参照することにより明らかである。
【0011】
当然のことながら、前述の要約および以下の詳細な説明は両方とも例示および説明のみを目的としたものであり、開示・請求された実施態様につてのさらなる説明が提供されることが意図されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
一つの実施態様において、潤滑油組成物内の成分として有用な新規の組成物が提示されている。当組成物は、リンおよび硫黄を含んだ従来の酸化防止添加剤に加え、あるいは部分的または全体的に従来の酸化防止添加剤と置き換えて使用される、炭化水素に可溶な金属化合物を含む。
【0013】
潤滑組成物に供給される添加剤および濃縮物の主成分は、炭化水素に可溶な金属化合物である。「炭化水素に可溶」という用語は、炭化水素類と反応性金属化合物の反応あるいは錯化により、化合物が炭化水素類中に実質的に懸濁あるいは溶解していることを意味する。ここに使用されるように「炭化水素」とは、炭素、水素、および/または酸素を様々な組み合わせで含んだ多数の化合物のいずれかを意味する。
【0014】
「ヒドロカルビル」という用語は、炭素原子が分子の残りの部分に直接結合し、主に炭化水素の特性を有する基を指す。ヒドロカルビル基の例には以下のものが含まれる:
(1) 炭化水素置換基、すなわち脂肪族(例えばアルキルまたはアルケニル)、脂環式(例えばシクロアルキル、シクロアルケニル)置換基、および芳香族、脂肪族、および脂環族で置換された芳香族置換基、ならびに(例えば二つの置換基が集まって脂環ラジカルを形成するなどのように)環が分子の別の部分によって完成されている環状置換基;
(2) 置換された炭化水素置換基、すなわちこの記載の状態において、主に炭化水素置換基(例えばハロ(特にクロロおよびフルオロ)、ヒドロキシ、アルコキシ、メルカプト、アルキルメルカプト、ニトロ、ニトロソ、およびスルホキシ)を変換しないような非炭化水素基を含んだ置換基;
(3) ヘテロ置換基、すなわちこの記載の状態において、主に炭化水素の特性を有しながら、そうでなければ炭素原子から成る環あるいは鎖に炭素以外を含むような置換基。ヘテロ原子には硫黄、酸素、窒素が含まれ、またピリジル、フリル、チエニルおよびイミダゾリルのような置換基が含まれる。通常、ヒドロカルビル基内の炭素原子10個毎に二つ以下、望ましくは一つ以下の非炭化水素置換基が存在する。典型的にはヒドロカルビル基内に非炭化水素置換基は存在しない。
【0015】
当開示に記載の使用に適した金属化合物の例として、これらに限定はされないが、チタン、ジルコニウム、およびマンガンのカルボン酸塩;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのフェネート;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのアルコキシド;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのアミン化合物;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのスルホン酸塩;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのサリチル酸塩;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのジケトン;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのクラウンエーテル、その他のような、有機酸、アミン、含酸素化合物、フェネート(phenates)、およびスルホン酸塩から誘導したチタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物が含まれる。スルホン酸塩以外のこのような化合物はリンおよび硫黄を含んでいることもあるし、あるいは実質的にリンおよび硫黄を欠いていることもある。当該化合物はそのヒドロカルビル成分内に約3から約200以上の炭素原子を含み得る。
【0016】
金属含酸素化合物の例として、これらに限定はされないが、金属錯体、エステル、またはエチレングリコール、プロピレングリコール、オクチレングリコール、ブタノール、ポリブタノール、イソプロパノール、ノニルアルコール、2−エチルヘキサノール、およびイソオクチルアルコールの反応生成物のような、C−C20アルキルチタン酸塩、アルキルジルコン酸塩、およびアルキルマンガン酸塩が含まれる。チタン、ジルコニウム、およびマンガンのテトラフェニルエステル、テトラベンジルエステル、ジエチルジフェニルエステル、その他のような、チタン、ジルコニウム、およびマンガンのアリールおよびアラルキルエステルもまた使用される。チタン、マンガン、およびジルコニウムのジケトンおよびクラウンエーテルもまた使用される。適切なチタン酸塩の例は米国特許第2,160,273号、2,960,469号、および6,074,444号に見られる。
【0017】
チタン、ジルコニウム、およびマンガン錯体、またはカルボン酸の反応生成物もまた使用される。このような化合物は、アルカリ金属塩水和物または有機酸の水溶液、アミン塩水和物または有機酸の水溶液、および/またはアンモニウム塩水和物または有機酸の水溶液と、金属ハロゲン化物の水溶液とを反応させ、続いてその反応生成物を酸化させることによって生成される。
【0018】
別の実施態様において、チタンイソイソプロポキシド、チタン−2−エチルヘキソキシド、チタンエトキシド、またはジルコニウムプロポキシドのような金属アルコキシドと有機酸とを反応させて、金属有機酸反応生成物が形成される。金属・カルボン酸生成物の例として、これらに限定はされないが、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、シクロヘキサンカルボン酸、フェニル酢酸、安息香酸、ネオデカン酸、およびそれらと同種のものの、チタン、ジルコニウム、およびマンガン生成物が含まれる。
【0019】
その他の使用されるチタン、ジルコニウム、およびマンガンの有機化合物に、これらに限定はされないが、金属フェネート、金属サリチル酸塩、金属リン酸塩、金属スルホン酸塩、および硫化金属フェネートが含まれ、ここで各芳香族基は炭化水素可溶性を与えるため一つ以上の脂肪族基を有する。例えば、金属スルホン酸塩において、各スルホン酸部分は、通常一つ以上の脂肪族置換基を含んだ芳香族の核に結合している。
【0020】
アルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールの金属塩は中性塩あるいは石鹸と呼ばれる。アルキルフェノールまたは硫化アルキルフェノールの中和に使用される金属は、チタン、マンガン、ジルコニウム、あるいはカルシウム、ナトリウム、マグネシウム、および酸化バリウムおよび水酸化バリウムなどのような一般的に使用されるその他の金属であり得る。従って、上述のスルホン酸塩、サリチル酸塩、リン酸塩、およびフェネートには、チタン、ジルコニウム、またはマンガンのスルホン酸塩、サリチル酸塩、リン酸塩、およびフェネートと組合わせて、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよび/またはマグネシウムのスルホン酸塩、サリチル酸塩、リン酸塩、およびフェネートが含まれる。フェノールまたは硫化フェノールの高塩基性の塩は、しばしば「過塩基性」フェネートまたは「過塩基性硫化」フェネートと呼ばれる。例えば、チタン、ジルコニウムまたはマンガンは、清浄剤の過塩基化により発生する炭酸塩として清浄剤の添加剤に組み込まれる。
【0021】
その他の炭化水素に可溶な金属化合物には、チタン、ジルコニウムおよび/またはマンガンから選択された金属を含むように反応された分散剤、清浄剤、粘度指数向上剤、耐磨耗添加剤、およびその他の抗酸化化合物が含まれる。例えば、エチレン共重合体またはポリイソブチレン基盤のスクシンイミド、マンニッヒまたは油溶性分散剤添加剤は、後述のように、金属アルコキシドあるいは含金属分散剤を提供する試薬を含んだその他の適切な金属と反応させられる。
【0022】
ここに記載された実施態様の炭化水素に可溶な金属化合物は、潤滑組成物中に有利に組み込まれる。従って、炭化水素に可溶な金属化合物は、潤滑油組成物に直接添加され得る。しかしながら、一つの実施態様において、炭化水素に可溶な金属化合物は、金属添加剤濃縮物を形成するため、鉱油、合成油(例えばジカルボン酸のエステル)、ナフサ、アルキル化された(例えばC10−C13アルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンのような、実質的に不活性な、通常は液体である有機希釈剤によって希釈される。当該金属添加剤濃縮物は通常、重量比約0%から約99%の希釈オイルを含む。
【0023】
潤滑油組成物の生成において、例えばミネラル潤滑油、または適切な溶媒などの炭化水素オイル中の、1から99重量%の活性成分の濃縮物として金属添加剤の濃縮物が導入されるのは一般的なことである。通常これらの濃縮物は、例えばクランクケースモーターオイルのような精製潤滑剤を形成するために、DIパッケージの重量により、潤滑油0.01から50重量部を含む分散剤・抑制剤(DI)添加剤パッケージおよび粘度指数(VI)向上剤を備えた潤滑油に加えられる。適切なDIパッケージは、例えば米国特許第5,204,012号および6,034,040号に記載されている。DI添加剤パッケージ中に含まれた添加剤の種類には、清浄剤、分散剤、耐磨耗剤、摩擦低減剤、シール膨張剤、酸化防止剤、消泡剤、潤滑剤、さび止め、腐食防止剤、乳化破壊剤、粘度指数向上剤、その他のものがある。これらの成分のいくつかは当技術分野に精通した技術者に周知のものであり、また望ましくは従来の用量でここに記載された添加剤および組成物と共に使用される。
【0024】
別の実施態様において、当該金属添加剤濃縮物は、完全に配合されたモーターオイルあるいは精製潤滑剤中に最優先で導入される。金属添加剤濃縮物およびDIパッケージの目的は、もちろん、最終的な混合物中への溶解または懸濁を促進することに加え、様々な材料の取り扱いをより困難また厄介でなくすることである。体表的なDIパッケージとして、分散剤、酸化防止剤、清浄剤、耐磨耗剤、消泡剤、流動点降下剤、また任意的にVI向上剤およびシール膨張剤が含まれる。
【0025】
ここに記載された実施態様は、潤滑油、および精製潤滑組成物中に元素チタン、ジルコニウムまたはマンガンとして約1ppmから約1500ppmの金属を提供する、炭化水
素に可溶な金属化合物の濃度の比較的低い潤滑組成物を提供する。一つの実施態様において、潤滑油組成物中に、約1ppmから約1000ppmの金属、またさらなる実施態様においては約1ppmから約500ppmの金属を与えるのに充分な量の当該金属化合物が存在する。
【0026】
上述の炭化水素に可溶なチタン、ジルコニウム、およびマンガン添加剤でできた潤滑組成物は、多種多様な用途に使用される。圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンに関し、当該潤滑組成物は、GF−4またはAPI−CI−4規格に合う、あるいはそれらを超えることが望ましい。前述のGF−4またはAPI−CI−4規格に基づいた潤滑組成物には、完全に配合された潤滑剤を提供するため、基油、DI添加剤パッケージ、および/またはVI向上剤が含まれる。当開示に基づいた潤滑剤用の基油は、天然潤滑油、合成潤滑油およびそれらの混合物から選択された潤滑粘度のオイルである。このような基油に、自動車やトラックのエンジン、船舶や鉄道のディーゼルエンジン、その他のような火花点火および圧縮点火の内燃エンジン用のクランクケース潤滑油として従来より使用されてきた基油が含まれる。
分散剤成分
DIパッケージに含まれる分散剤として、これらに限定はされないが、分散される粒子と会合することのできる官能基を有した油溶性ポリマー炭化水素骨格が含まれる。通常、当該分散剤にはアミン、アルコール、アミド、またはしばしば架橋基によってポリマー骨格に結合しているエステルの極性部分が含まれる。分散剤は、米国特許第3,697,574号および3,736,357号に記載されているマンニッヒ分散剤;米国特許第4,234,435号および4,636,322号に記載されている無灰スクシニミド分散剤;米国特許第3,219,666、3,565,804号、および5,633,326号に記載されているアミン分散剤;米国特許第5,936,041、5,643,859号、および5,627,259に記載されているコッホ(Koch)分散剤、また米国特許第5,851,965、5,853,434号、および5,792,729号に記載されているポリアルキレンスクシンイミド分散剤から選択される。
酸化防止剤成分
酸化抑制剤即ち酸化防止剤は使用中ベースストックが劣化する傾向を減少させる。劣化は金属の表面に堆積するスラッジおよびワニス様の堆積物などの酸化生成物や精製潤滑剤の粘度の増加によって証明することができる。このような酸化防止剤に、ヒンダードフェノール、硫化ヒンダードフェノール、CからC12のアルキル側鎖を有するアルキルフェノールチオエステルのアルカリ土類金属塩、硫化アルキルフェノール、硫化または非硫化アルキルフェノールのいずれかの金属塩、例えばカルシウムノニルフェノールスルフィド、無灰油溶性フェネートおよび硫化フェネート、リン硫化または硫化炭化水素、リン酸エステル、金属チオカルバメート、および米国特許第4,867,890号に記載されている油溶性銅化合物が含まれる。
【0027】
炭化水素に可溶なチタン、ジルコニウム、および/またはマンガン化合物と組み合わせて使用される他の酸化防止剤として、立体障害フェノールおよびジアリールアミン、アルキル化フェノチアジン、硫化化合物、および無灰ジアルキルジチオカルバメートが含まれる。立体障害フェノールの非限定的例には、2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、2,6−ジ−第三級ブチルメチルフェノール、4−エチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−プロピル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ブチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ペンチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ヘキシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ヘプチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−(2−エチルヘキシル)−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−オクチル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ノニル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−デシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ウンデシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、4−ドデシル−2,6−ジ−第三級ブチルフェノール、および4,4−メチレンビス(6−t−ブチル−オルソ−クレゾール)、4,4−メチレンビス(2−t−アミル−オルソ−クレゾール)、2,2−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)および米国公報第2004/0266630号に記載されているようなそれらの混合物を含むがそれらに限定されないメチレン架橋立体障害フェノールなどが含まれるがこれらに限定されない。
【0028】
ジアリールアミン酸化防止剤には、これらに限定はされないが、以下の化学式のジアリールアミンが含まれ:
【0029】
【化1】

【0030】
ここでR’およびR’’はそれぞれ独立して、6から30の炭素原子を有する、置換あるいは非置換アリール基を表す。アリール基の例示的置換基として、1から30の炭素原子を有するアルキルのような脂肪族炭化水素基、ヒドロキシ基、ハロゲンラジカル、カルボン酸またはエステル基、またはニトロ基が含まれる。
【0031】
当アリール基は望ましくは、特に一つまたは両方のアリール基が4から30個の炭素原子、望ましくは4から18個の炭素原子、最も望ましくは4から9個の炭素原子を有する少なくとも一つのアルキルで置換されている、置換または非置換のフェニルあるいはナフチルである。アリル基の一つあるいは両方が、例えば、モノアルキル化ジフェニルアミン、ジアルキル化ジフェニルアミン、あるいはモノおよびジアルキル化ジフェニルアミンの混合物で置換されることが望ましい。
【0032】
当ジアリールアミンは、分子中に一つ以上の窒素原子を含む構造をしている。従って当ジアリールアミンは、少なくとも二つの窒素原子を含み、ここで例えば二つのアリールが窒素原子の一つに結合している場合同様、第二級窒素原子を有する様々なジアミンの場合のように、少なくとも一つの窒素原子に二つのアリール基が結合している。
【0033】
使用されるジアリールアミンの例には、これらに限定はされないが、ジフェニルアミン;各種のアルキル化ジフェニルアミン;3−ヒドロキシジフェニルアミン;N−フェニル−1,2−フェニレンジアミン;N−フェニル−1,4−フェニレンジアミン;モノブチルジフェニルアミン;ジブチルジフェニルアミン;モノオクチルジフェニルアミン;ジオクチルジフェニルアミン;モノノニルジフェニルアミン;ジノニルジフェニルアミン;モノテトラデシルジフェニルアミン;ジテトラデシルジフェニルアミン、フェニル−アルファ−ナフチルアミン;モノオクチルフェニル−アルファ−ナフチルアミン;フェニル−ベータ−ナフチルアミン;モノヘプチルジフェニルアミン;ジヘプチル−ジフェニルアミン;p−配向性スチレン化ジフェニルアミン;混合ブチルオクチルジフェニルアミン;および混合オクチルスチリルジフェニルアミンが含まれる。
【0034】
市販のジアリールアミンの例には、例えばチバスペシャリティーケミカル社(Ciba
Specialty Chemicals)製のIRGANOX;クロンプトン社(Crompton Corporation)製NAUGALUBE;BFグッドリッチスペシャルティーケミカル社(BF Goodrich Specialty Chemicals)製GOODRITE;R.T.バンダービルト社(R.T.Vanderbilt Company Inc)製VANLUBEなどの商品名のジアリールアミンが含まれる。
【0035】
別の種類のアミン酸化防止剤は、以下の化学式のフェノチアジンまたはアルキル化フェノチアジンを含み:
【0036】
【化2】

【0037】
ここでRは直鎖あるいは分岐のCからC24のアルキル、アリール、ヘテロアルキルまたはアルキルアリール基であり、またRは水素、あるいは直鎖または分岐のCからC24のアルキル、ヘテロアルキル、またはアルキルアリール基である。アルキル化フェノチアジンは、モノテトラデシルフェノチアジン、ジテトラデシルフェノチアジン、モノデシルフェノチアジン、ジデシルフェノチアジン、モノノニルフェノチアジン、ジノニルフェノチアジン、モノオクチル−フェノチアジン、ジオクチルフェノチアジン、モノブチルフェノチアジン、ジブチルフェノチアジン、モノスチリルフェノチアジン、ジスチリルフェノチアジン、ブチルオクチルフェノチアジン、およびスチリルオクチルフェノチアジンから成るグループから選択される。
【0038】
含硫黄酸化防止剤としては、これらに限定はされないが、その生成に使用されるオレフィンの種類および酸化防止剤の最終硫黄含量により特徴付けられる、硫化オレフィンが含まれる。高分子量オレフィン、すなわち平均分子量が168g/モルから351g/モルのオレフィンが望ましい。使用されるオレフィンの例には、アルファオレフィン、異性化アルファオレフィン、分岐オレフィン、環状オレフィン、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0039】
アルファオレフィンには、これらに限定はされないが、CからC25の任意のアルファオレフィンが含まれる。アルファオレフィンは、硫化反応に先立ち、あるいは硫化反応の最中に異性化され得る。内部の二重結合および/または分岐を含んだ、アルファオレフィンの構造的および/または配座異性体もまた使用される。例えば、イソブチレンはアルファオレフィン−1−ブテンの分岐オレフィン対応物である。
【0040】
オレフィンの硫化反応に使用される硫黄の原料としては、硫黄元素、一塩化硫黄、二塩化硫黄、硫化ナトリウム、多硫化ナトリウムが含まれ、またこれらの混合物が硫化プロセスに同時に、あるいは別の段階で加えられる。
【0041】
使用される市販の硫化オレフィンの例として、アフトンケミカル社(Afton Chemical Corporation)製の、約20重量%の硫黄分を含んだHiTEC(R) 7084、約12重量%の硫黄分を含んだHiTEC(R) 7188、約47.5重量%の硫黄分を含んだHiTEC(R) 312、またラインケミー社(Rhein Chemie Corporation)製の、約38重量%の硫黄分を含んだADDITIN RC 2540−Aなどの商品名で販売されている硫化オレフィンが含まれる。
【0042】
不飽和のオイルもまた、それが不飽和であるがために硫化され、酸化防止剤として使用され得る。使用されるオイルまたは油脂の例として、コーンオイル、カノーラ油、綿実油
、グレープシードオイル、オリーブ油、ヤシ油、ピーナッツ油、ココナッツ油、菜種油、ベニバナ種油、ゴマ油、大豆油、ヒマワリ油、獣脂、およびこれらの組み合わせが含まれる。
【0043】
使用される硫化脂肪油の例としては、ラインケミー社(Rhein Chemie Corporation)製の、約9.5重量%の硫黄分を含んだADDITIN R 4410、約12.5重量%の硫黄分を含んだADDITIN R 4412−F、約17.5重量%の硫黄分を含んだADDITIN R 4417、約15重量%の硫黄分を含んだADDITIN RC 2515、約26重量%の硫黄分を含んだADDITIN RC 2526、約10重量%の硫黄分を含んだADDITIN RC 2810−A、約14重量%の硫黄分を含んだADDITIN RC 2814−A、および約16重量%の硫黄分を含んだADDITIN RC 2818−Aなどの商品名で市販されているものが含まれる。硫化オレフィンおよび/または硫化脂肪油は、ASTM D 1662によって決定されるような、腐食性が低く、また活性硫黄含量の低い液体であることが望まれる。
【0044】
精製潤滑剤に送られる硫化オレフィンまたは硫化脂肪油の量は、硫化オレフィンまたは脂肪油の硫黄分、および当該精製潤滑剤に送られる硫黄の希望のレベルに基づいて決まる。例えば、20重量%の硫黄を含む硫化脂肪油あるいはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで精製潤滑剤に加えられた場合、当精製潤滑剤に2000ppmの硫黄をもたらす。10重量%の硫黄を含む硫化脂肪油あるいはオレフィンは、1.0重量%の処理レベルで精製潤滑剤に加えられた場合、当精製潤滑剤に1000ppmの硫黄をもたらす。硫化オレフィンまたは硫化脂肪油を加えて、精製潤滑剤に200ppmから2000ppmの硫黄をもたらす事が望ましい。前述のアミン、フェノチアジン、および含硫黄酸化防止剤は、例えば米国特許第6,599,865号に記載されている。
【0045】
酸化防止添加剤として使用される無灰ジアルキルジチオカルバメートには、添加剤パッケージに可溶性または分散可能な化合物が含まれる。さらに当該無灰ジアルキルジチオカルバメートは揮発性が低いことが望まれ、望ましくは250ダルトン以上、最も望ましくは400ダルトン以上の分子量を有する。使用される無灰ジチオカルバメートの例としては、これらに限定はされないが、メチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジアルキルジチオカルバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジアルキルジチオカルバメート)、ヒドロキシアルキル置換ジアルキルジチオカルバメート、不飽和化合物から生成されたジチオカルバメート、ノルボルニレン(norbornylene)から生成されたジチオカルバメート、およびエポキシドから生成されたジチオカルバメートが含まれ、ここで当該ジアルキルジチオカルバメートのアルキル基は、望ましくは1から16の炭素を有することができる。使用されるジアルキルジチオカルバメートの例は、以下の特許に開示されている:米国特許第5,693,598号、4,876,375号、4,927,552号、4,957,643号、4,885,365号、5,789,357号、5,686,397号、5,902,776号、2,786,866号、2,710,872号、2,384,577号、2,897,152号、3,407,222号、3,867,359号、および4,758,362号。
【0046】
好適な無灰ジチオカルバメートの例には、メチレンビス−(ジブチルジチオカルバメート)、エチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)、イソブチルジスルフィド−2,2’−ビス(ジブチルジチオカルバメート)、ジブチルN,N−ジブチル(ジチオカルバミル)スクシネート、2−ヒドロキシプロピルジブチルジチオカルバメート、ブチル(ジブチルジチオカルバミル)アセテート、およびS−カルボメトキシ−エチル−N,N−ジブチルジチオカルバメートなどがある。最も望ましい無灰ジチオカルバメートはメチレンビス(ジブチルジチオカルバメート)である。
【0047】
亜鉛ジアルキルジチオホスフェート(「Zn DDP」)もまた潤滑油中で使用される。Zn DDPは優れた耐摩耗性および抗酸化特性を有し、Seq.IVAおよびTU3磨耗試験のようなカムの磨耗試験を通過するために使用されてきた。米国特許第4,904,401号、4,957,649号、および6,114,288号を含む多くの特許がZn DDPの製造および用途を提示している。非限定的、一般的なZn DDPの種類に、第一級、第二級、および第一級と第二級の組み合わせのZn DDPがある。
【0048】
同様に、摩擦調整剤として使用される化合物を含んだ有機モリブデンもまた酸化防止の機能性を表す。米国特許第6,797,677号は、精製潤滑組成物中で使用するための、有機モリブデン化合物、アルキルフェノチジンおよびアルキルジフェニルアミンの組み合わせについて説明している。摩擦調整剤を含んだ適切なモリブデンの例は、以下の摩擦調整剤の項に記載する。
【0049】
ここに記載された炭化水素に可溶な金属化合物は、前述の酸化防止剤のいずれかまたはすべてと、いずれかまたはすべての組み合わせおよび比率で使用される。当然のことながら、フェノール系、アミン、含硫黄および含モリブデンの添加剤の様々な組み合わせが、ベンチテスト、またはエンジンテスト、あるいは分散剤、VI向上剤、基油、あるいはその他の任意の添加剤の変成に基づいて、精製潤滑組成物に対し最適化される。
【0050】
一つの実施態様において、ここに記載された添加剤濃縮物および潤滑油組成物は、可溶性銅化合物を本質的に欠いている。別の実施態様において、ここに記載された添加剤濃縮物および潤滑油組成物は、フェノール系抗酸化化合物を本質的に欠いている。
摩擦調整剤成分
摩擦調整剤として使用される、硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物は、硫黄およびリンを含まないモリブデン原料をアミノ基および/またはアルコール基を含んだ有機化合物と反応させることによって生成される。硫黄およびリンを含まないモリブデン原料の例として、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウムおよびモリブデン酸カリウムが含まれる。当該アミノ基はモノアミン、ジアミン、またはポリアミンなどである。当該アルコール基はモノ置換アルコール、ジオール、またはビス−アルコール、あるいはポリアルコールなどである。例として、ジアミンと脂肪油との反応により、硫黄およびリンを含まないモリブデン原料との反応が可能な、アミノ基およびアルコール基を両方とも含む生産物が生成される。
【0051】
硫黄およびリンを含まない有機モリブデン化合物の例として以下のものが含まれる:
1 米国特許第4,259,195号および4,261,843号に記載されているような、塩基性窒素化合物とモリブデン原料とを反応させることによって生成される化合物。2 米国特許第4,164,473号に記載されているような、ヒドロカルビル置換ヒドロキシアルキル化アミンとモリブデン原料とを反応させることによって生成される化合物。
3 米国特許第4,266,945号に記載されているような、フェノールアルデヒド縮合生産物、モノアルキル化アルキレンジアミン、およびモリブデン原料を反応させることによって生成される化合物。
4 米国特許第4,889,647号に記載されているような、脂肪油、ジエタノールアミン、およびモリブデン原料を反応させることによって生成される化合物。
5 米国特許第5,137,647号に記載されているような、脂肪油または酸と、2−(2−アミノエチル)アミノエタノール、およびモリブデン原料とを反応させることによって生成される化合物。
6 米国特許第4,692,256号に記載されているような、第二級アミンとモリブデン原料とを反応させることによって生成される化合物。
7 米国特許第5,412,130号に記載されているような、ジオール、ジアミノ、またはアミノ−アルコール化合物とモリブデン原料とを反応させることによって生成される化合物。
8 米国特許第6,509,303号に記載されているような、脂肪油、モノアルキル化アルキレンジアミン、およびモリブデン原料を反応させることによって生成される化合物。
9 米国特許第6,528,463号に記載されているような、脂肪酸、モノアルキル化アルキレンジアミン、グリセリド、およびモリブデン原料を反応させることによって生成される化合物。
【0052】
市販の、硫黄およびリンを含まない油溶性モリブデン化合物の例が、旭電化工業株式会社(Asahi Denka Kogyo K.K.)製のSAKURA−LUBE、およびR.T.バンダービルト社(R.T.Vanderbilt Company Inc)製のMOLYVAN(R)などの商品名で販売されている。
【0053】
米国特許第4,889,647号に記載されているように、脂肪油、ジエタノールアミン、およびモリブデン原料を反応させて生成したモリブデン化合物は、これらの材料の正確な化学組成は完全には知られておらず、また事実上いくつかの有機モリブデン化合物の他成分混合物であるかもしれないが、しばしば以下の構造式によって例示され、ここでRは脂肪アルキル鎖である。
【0054】
【化3】

【0055】
含硫黄有機モリブデン化合物が使用され、また様々な方法によって生成される。一つの方法は、硫黄およびリンを含まないモリブデン原料とアミノ基および一つ以上の硫黄原料とを反応させることを含む。硫黄原料には、例えば、これらに限定はされないが、二硫化炭素、硫化水素、硫化ナトリウムおよび硫黄元素が含まれる。一方、含硫黄モリブデン化合物は、含硫黄モリブデン原料とアミノ基またはチウラム基および任意的に二番目の硫黄原料とを反応させることにより生成される。硫黄およびリンを含まないモリブデン原料の例として、三酸化モリブデン、モリブデン酸アンモニウム、モリブデン酸ナトリウム、モリブデン酸カリウム、およびハロゲン化モリブデンが含まれる。当該アミノ基はモノアミン、ジアミン、またはポリアミンなどである。例として、三酸化モリブデンと第二級アミンおよび二硫化炭素の反応により、モリブデンジチオカルバメートが生産される。一方、nが0から2の間である場合の(NHMo13*n(HO)とテトラアルキルチウラムジスルフィドとの反応では、三核含硫黄モリブデンジチオカルバメートが生産される。
【0056】
特許および特許出願に現れる含硫黄有機モリブデン化合物の例には以下のものが含まれる:
1 米国特許第3,509,051号および3,356,702号に記載されているような、三酸化モリブデンと第二級アミンおよび二硫化炭素を反応させることによって生成される化合物。
2 米国特許第4,098,705号に記載されているような、硫黄を含まないモリブデン原料と第二級アミン、二硫化炭素、および追加的な硫黄原料とを反応させることによって生成される化合物。
3 米国特許第4,178,258号に記載されているような、ハロゲン化モリブデンと
第二級アミンおよび二硫化炭素とを反応させることによって生成される化合物。
4 米国特許第4,263,152号、4,265,773号、4,272,387号、4,285,822号、4,369,119号、および4,395,343号に記載されているような、モリブデン原料と塩基性窒素化合物および硫黄原料とを反応させることによって生成される化合物。
5 米国特許第4,283,295号に記載されているような、テトラチオモリブデン酸アンモニウムと塩基性窒素化合物とを反応させることによって生成される化合物。
6 米国特許第4,362,633号に記載されているような、オレフィン、硫黄、アミンおよびモリブデン原料を反応させることによって生成される化合物。
7 米国特許第4,402,840号に記載されているような、テトラチオモリブデン酸アンモニウムと塩基性窒素化合物および有機硫黄原料とを反応させることによって生成される化合物。
8 米国特許第4,466,901号に記載されているような、フェノール系化合物、アミンおよびモリブデン原料と硫黄原料とを反応させることによって生成される化合物。
9 米国特許第4,765,918号に記載されているような、トリグリセリド、塩基性窒素化合物、モリブデン原料、および硫黄原料を反応させることによって生成される化合物。
10 米国特許第4,966,719号に記載されているような、アルカリ金属アルキルチオキサントゲン酸塩とハロゲン化モリブデンとを反応させることによって生成される化合物。
11 米国特許第4,978,464号に記載されているような、テトラアルキルチウラムジスルフィドとモリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって生成される化合物。
12 米国特許第4,990,271号に記載されているような、アルキルジキサントゲンとモリブデンヘキサカルボニルとを反応させることによって生成される化合物。
13 米国特許第4,995,996号に記載されているような、アルカリ金属アルキルキサントゲン酸塩とジモリブデンテトラアセテートとを反応させることによって生成される化合物。
14 米国特許第6,232,276号に記載されているような、(NH Mo13*2HOとアルカリ金属ジアルキルジチオカルバメートまたはテトラアルキルチウラムジスルフィドとを反応させることによって生成される化合物。
15 米国特許第6,103,674号に記載されているような、エステルまたは酸とジアミン、モリブデン原料および二硫化炭素とを反応させることによって生成される化合物。
16 米国特許第6,117,826号に記載されているような、アルカリ金属ジアルキルジチオカルバメートと3−クロロプロピオン酸、続いて三酸化モリブデンとを反応させることによって生成される化合物。
【0057】
市販の含硫黄油溶性モリブデン化合物の例が、旭電化工業株式会社(Asahi Denka Kogyo K.K.)製のSAKURA−LUBE、およびR.T.バンダービルト社(R.T. Vanderbilt Company Inc)製のMOLYVAN(R)、およびクロンプトン社(Crompton Corporation)製のNAUGALUBEなどの商品名で販売されている。
【0058】
モリブデン ジチオカルバメートは以下の構造式で表され、
【0059】
【化4】

【0060】
ここでRは4から18の炭素を含むアルキル基またはHであり、またXはOまたはSである。
【0061】
グリセリドはまた、単独で使用されることもあるいは他の摩擦調整剤と組み合わせて使用されることもある。適切なグリセリドには以下の化学式のグリセリドが含まれ:
【0062】
【化5】

【0063】
ここで各Rは独立してHおよびC(O)R’から成るグループから選択され、ここでR’は3から23の炭素原子を有する飽和あるいは不飽和アルキル基である。使用されるグリセリドの例としては、グリセロールモノラウレート、グリセロールモノミリステート、グリセロールモノパルミテート、グリセロールモノステアレート、およびココナッツ酸、獣脂酸、オレイン酸、リノール酸、およびリノレン酸から導かれたモノ−グリセリドが含まれる。典型的な市販のモノグリセリドには、相当量の対応するジグリセリドおよびトリグリセリドが含まれる。これらの物質はモリブデン化合物の生成に害を及ぼすものではなく、事実より活性であることもある。モノグリセリドとジグリセリドは任意の比率で使用することができるが、利用できる部分の30%から70%に遊離ヒドロキシル基が含まれること(すなわち、上記の化学式で表されるグリセリドのR基の合計の30%から70%sが水素であること)が望ましい。好適なグリセリドとして、通常オレイン酸から派生したモノ、ジ、およびトリグリセリドの混合物であるグリセロールモノオレエート、およびグリセロールがある。適切な市販のグリセリドには、バージニア州リッチモンドのアフトンケミカル社(Afton Chemical Corporation)製の、通常約50%から60%の遊離ヒドロキシル基を含むHiTEC(R) 7133の商品名で販売されているグリセロールモノオレエートが含まれる。
【0064】
非イオン性ポリオキシアルキレンポリオールおよびそのエステル、ポリオキシアルキレンフェノール、および陰イオン性アルキルスルホン酸から成るグループから選択されたさび止めを使用することができる。
【0065】
少量の乳化成分が使用されることがある。好適な乳化成分はEP(欧州特許)330,522号に記載されている。このような乳化成分は、酸化アルキレンと、ビスエポキシドと多価アルコールとを反応させて得られた付加化合物、とを反応させることによって得られる。当乳化破壊剤は、活性成分の0.1質量%を越えないレベルで使用されなくてはならない。活性成分の0.001質量%から0.05質量%の処理率が適当である。
【0066】
潤滑油流動性向上剤としても知られる流動点降下剤は、流体が流れる、または注ぐことができるようになる最低温度を低下させる。このような添加剤はよく知られている。流体の低温流動性を向上させるこれらの添加剤の典型的なものとして、CからC18のフマ
ル酸ジアルキル・酢酸ビニル共重合体、ポリアルキルメタクリレート等がある。
【0067】
例えばシリコンオイル、またはポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサンタイプの消泡剤を含む多くの化合物によって、泡をコントロールすることができる。
【0068】
例えば米国特許第3,794,081号および4,029,587に記載されるようなシール膨張剤もまた使用されることがある。
【0069】
粘度調整剤(VM)は潤滑油に高温および低温操作性を与えるために機能する。使用されるVMは当該の機能のみを有することも、または多機能性であることもある。
【0070】
分散剤としても機能する多機能性粘度調整剤もまた知られている。適切な粘度調整剤としては、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレン及び高級アルファオレフィンの共重合体、ポリメタクリレート、ポリアルキルメタクリレート、メタクリレート共重合体、不飽和ジカルボン酸およびビニール化合物の共重合体、スチレンおよびアクリル酸エステルの共重合体、およびスチレン・イソプレン、スチレン・ブタジエン、およびイソプレン・ブタジエンの部分的に水素化された共重合体、ならびにブタジエン、イソプレン、およびイソプレン・ジビニルベンゼンの部分的に水素化されたホモポリマーなどがある。
【0071】
使用される機能化されたオレフィン共重合体には、無水マレイン酸のような活性モノマーによりグラフト化され、次にアルコールまたはアミンにより誘導体化された、エチレンおよびプロピレンの共重合体が含まれる。このような共重合体として、他にも窒素化合物によりによりグラフト化されたエチレンおよびプロピレンの共重合体がある。
【0072】
前述の各添加剤は、使用される際、潤滑剤に希望の特性を与えるために機能的に有効な量で使用される。従って、例えば添加剤が腐食防止剤である場合、この腐食防止剤の機能的に有効な量とは、潤滑剤に希望の腐食防止特性を与えるためにじゅうぶんな量である。通常、これらの各添加剤の濃度は、使用される際、潤滑油組成物の重量を基にして約20重量%までの範囲であり、一つの実施態様においては潤滑油組成物の重量を基にして約0.001重量%から約20重量%、また一つの実施態様においては約0.01重量%から約10重量%である。
【0073】
炭化水素に可溶な金属添加剤は、潤滑油組成物に直接加えられる。しかしながら一つの実施態様においてこれらは、添加剤濃縮物を形成するため、鉱油、合成油、ナフサ、アルキル化された(例えばC10−C13アルキル)ベンゼン、トルエン、またはキシレンのような、実質的に不活性な、通常は液体である有機希釈剤によって希釈される。これらの濃縮物は通常約1重量%から約100重量%のチタン化合物を含み、一つの実施態様においては約10重量%から約90重量%のチタン化合物を含んでいる。
基油
ここに記載されている当該組成物、添加剤および濃縮物の配合に使用するのに適した基油は、合成または天然油、またはそれらの混合物のいずれかから選択される。合成基油には、ジカルボン酸のアルキルエステル、ポリグリコールおよびアルコール、またポリブテン、アルキルベンゼン、リン酸の有機エステル、ポリシリコンオイルなどを含むポリアルファオレフィン、および酸化アルキレンポリマー、共重合体、末端ヒドロキシル基がエステル化、エーテル化等によって変成されている共重合体およびそれらの誘導体などが含まれる。
【0074】
天然基油には、動物油および植物油(例えばヒマシ油、ラード油)、鉱油および水素化処理、溶媒処理、または酸処理された、パラフィン系、ナフテン系およびパラフィン・ナフテン混合タイプのミネラル潤滑油が含まれる。石炭または頁岩から誘導した潤滑粘度の
オイルもまた有用な基油である。当該の基油は通常、100℃で約2.5cStから約15cStの、また望ましくは約2.5cStから約11cStの粘度を有する。
【0075】
以下の例は実施の態様を例証する目的で挙げられたものであり、いかなる方法によっても実施態様を制限するものではない。
[実施例]
例1
ネオデカン酸チタン
ネオデカン酸(600グラム)を、コンデンサー、ディンスタークトラップ(Dean−stark trap)、温度計、熱電対、およびガス注入口を備えた反応容器に入れる。酸の中に窒素ガスを泡立てる。チタンイソプロポキシド(245グラム)を、激しく攪拌しながら反応容器にゆっくり加える。反応物質を140℃に加熱し1時間攪拌する。反応により得られるオーバーヘッドおよび凝縮物はトラップに集められる。反応容器を減圧し、反応物質をさらに2時間、反応が完了するまで攪拌する。生産物の分析により、当生産物が100℃で14.3cStの動粘度、およびチタン含有量6.4重量パーセントを有することが示された。
例2
チタン酸グリセロールモノオレエート
前もって温められた均質のグリセロールモノオレエート(250グラム)をコンデンサー、ディンスタークトラップ(Dean−stark trap)、温度計、熱電対、およびガス注入口を備えた反応容器に入れる。反応物質を30℃に加熱しながら、窒素ガスを当該反応物質中に泡立てる。反応物質が希望する30℃の温度になったら、チタンイソプロポキシド(10グラム)を激しく攪拌しながら反応容器に加え、当該反応物質をこの温度で15分攪拌する。当該反応物質を次に50℃に加熱し、2時間攪拌する。反応により得られるオーバーヘッドおよび凝縮物はトラップに集められる。反応が完了したら生産物から未反応の組成物を揮散する。生産物の分析により、当生産物が100℃で10.1cStの動粘度、およびチタン含有量0.65重量パーセントを有することが示された。
例3
チタン酸アミン化合物
目標窒素含有量1.03重量%を有する、分子量2100のキャップ構造のない(uncapped)ポリイソブテニルビススクシンイミド(400グラム)を、コンデンサー、ディンスタークトラップ(Dean−stark trap)、温度計、熱電対、およびガス注入口を備えた反応容器に入れる。反応物質中に窒素ガスを泡立てる。チタンイソプロポキシド(5.32グラム)を、激しく攪拌しながら反応容器にゆっくり加える。反応物質を140℃に加熱し、1時間攪拌する。反応により得られるオーバーヘッドおよび凝縮物はトラップに集められる。反応容器を減圧し、反応物質をさらに2時間、反応が完了するまで攪拌する。生産物の分析により、当生産物が100℃で307cStの動粘度、チタン含有量0.22重量パーセント、および窒素含有量1.02重量パーセントを有することが示された。
例4
ネオデカン酸マンガン
ネオデカン酸(300グラム)および酢酸マンガン(II)(106グラム)の両方を、コンデンサー、ディンスタークトラップ(Dean−stark trap)、温度計、熱電対、およびガス注入口を備えた反応容器に入れる。反応物質中に窒素ガスを泡立てる。反応物質を140℃に加熱し、2時間攪拌する。反応により得られるオーバーヘッドおよび凝縮物はトラップに集められる。反応容器を減圧し、反応物質を140℃でさらに2時間、反応が完了するまで攪拌する。生産物の分析により、当生産物が100℃で54.8cStの動粘度、およびマンガン含有量8.1重量パーセントを有することが示された。
例5
ネオデカン酸ジルコニウム
ネオデカン酸(300グラム)を、コンデンサー、ディンスタークトラップ(Dean−stark trap)、温度計、熱電対、およびガス注入口を備えた反応容器に入れる。反応物質中に窒素ガスを泡立てる。激しく攪拌しながらジルコニウムプロポキシド(202グラム)をゆっくり加える。反応物質を140℃に加熱し、1時間攪拌する。反応により得られるオーバーヘッドおよび凝縮物はトラップに集められる。反応容器を減圧し、反応物質を140℃でさらに2時間、あるいは反応が完了するまで攪拌する。生産物の分析により、当生産物が100℃で198cStの動粘度、およびジルコニウム含有量14.2重量パーセントを有することが示された。
例6
チタンビスベータジケトネート
2,4−ペンタンジオン(226グラム)を、コンデンサー、ディンスタークトラップ(Dean−stark trap)、温度計、熱電対、およびガス注入口を備えた反応容器に入れる。反応物質中に窒素ガスを泡立てる。チタンイソプロポキシド(245.4グラム)を激しく攪拌しながらゆっくり反応フラスコに加える。反応物質を120℃に加熱し、2時間攪拌する。反応により得られるオーバーヘッドおよび凝縮物はトラップに集められる。反応容器を減圧し、反応物質を120℃でさらに2時間、あるいは反応が完了するまで攪拌する。生産物の分析により、当生産物が100℃で4.64cStの動粘度、およびチタン含有量12.68重量パーセントを有することが示された。
例7
炭化水素に可溶なチタン添加剤の酸化防止効果
以下の例において、炭化水素に可溶なチタン化合物を、予め混合された潤滑組成物にトップトリートとして加え、精製潤滑剤中に約50ppmから約830ppmの量のチタン金属を提供する。使用された予混合物はGroup IIIベースストック清浄剤、分散剤、流動点降下剤、摩擦調整剤、酸化防止剤、および粘度指数向上剤が配合された乗用車のエンジンオイルの試作品であり、以下の表に示されるようにチタン金属を欠いている。
【0076】
【表1】

【0077】
約0ppmから約800ppmの元素チタンが配合されたオイルの酸化安定性を、TEOST MHT−4検査を使用して評価した。TEOST MHT−4検査は、エンジンオイルの酸化および炭素質堆積物形成特性を評価する、潤滑剤業界の標準検査である。当検査は最新エンジンのピストンリングのベルト周辺における、高温堆積物形成をシミュレートするように作られている。当検査には、当検査の比較的新しい修正であるMHT−4プロトコルと共に、特許を有する機器(米国特許第5,401,661号および米国特許第5,287,731号;各特許の内容がここに引用により組み込まれている)が使用されている。当検査の操作および特定のMHT−4条件は、2000年1月11−13日、Wilfried J. Bartzの編集で第12回Technische Akademie Esslingen世界学会(the 12th International Colloquium Technische Akademie Esslingen)で発表された、SelbyおよびFlorkowskによる「エンジンオイルピストンの堆積傾向のベンチテストとしてのTEOSTプロトコルMHTの展開(The Development of the TEOST Protocol MHT as a Bench Test of Engine Oil Piston Deposit Tendency)」と題する文献により公表されている。通常、堆積物の量(ミリグラム)が少ないほど添加剤の質はよい。
【0078】
【表2】

【0079】
前記表2において、表示された量のチタンネオデカノエートを含んだサンプル2−7の酸化安定性とサンプル2−7に使用されている基油(サンプル1)の酸化安定性とを比較した。データによって示されるように、TEOSTの結果が39.4である基油(サンプル1)の酸化安定性と比べ、約50ppmから約800ppmのチタン金属を含んだオイルの酸化安定性には劇的な増加が見られる。
【0080】
【表3】

【0081】
前記の表3において、他の炭化水素に可溶な金属化合物(サンプル9−14)を含んだ基油の酸化安定性と、サンプル9−14を生成するために使用された基油(サンプル8)の酸化安定性とを比較した。サンプル8−14の基油は、上記のサンプル1−7に使用された基油と同類である。各サンプル9−12は基油組成物中に約100ppmのチタンを提供するように配合されている。
【0082】
サンプル9は、化合物中に約4.97重量%のチタン金属を有する炭化水素に可溶な金属化合物としてチタンIV 2−プロパノラート、トリスイソオクタデカノエート−Oを含む。サンプル10は、化合物中に約6.09重量%のチタン金属を有する炭化水素に可溶な金属化合物としてチタンIV 2,2(ビス2−プロパノ−ラトメチル)ブタノラート、トリスネオデカノエート−Oを含む。サンプル11は、化合物中に約4.57重量%のチタン金属を有する炭化水素に可溶な金属化合物としてチタンIV 2−プロパノラート、トリス(ジオクチル)ホスファート−Oを含む。サンプル12は、化合物中に約3.47重量%のチタン金属を有する炭化水素に可溶な金属化合物としてチタンIV 2−プロパノラート、トリス(ドデシル)ベンゼンスルファナート−Oを含む。サンプル9−12中の各チタン化合物は、ニュージャージー州ベーヨンのケンリッチ石油化学(Kenrich Petrochemicals, Inc.)から市販されている。サンプル9−12に示されるように、各チタン化合物は基油(サンプル8)の酸化安定性を著しく増加させた。
【0083】
サンプル13は、化合物中に約12重量%のジルコニウムを有する炭化水素に可溶な金属化合物としてネオデカン酸ジルコニウムを含む。サンプル14は、化合物中に約8.0重量%のマンガンを有する炭化水素に可溶な金属化合物としてネオデカン酸マンガンを含む。サンプル13および14に示されるように、ジルコニウムおよびマンガン化合物もまた基油の酸化安定性の増加に効果がある。
【0084】
上述の結果によって例証されるように、約50ppmから約800ppmの炭化水素に可溶な金属化合物の形態の金属を含んだサンプル2−14は、炭化水素に可溶な金属化合物をまったく含まない従来の潤滑組成物よりも著しく性能が優れている。炭化水素に可溶な金属化合物をまったく含まないサンプル1は、TEOSTの結果が39.4ミリグラムであったが、チタン、ジルコニウム、またはマンガンを含んだ他のサンプル(2−14)のTEOSTの結果は約18ミリグラムから約32ミリグラムであった。
【0085】
約50ppmから約800ppm以上のチタン、ジルコニウム、あるいはマンガン金属を炭化水素に可溶な金属化合物の形態で含んでいる組成物が、従来のリンおよび硫黄の耐磨耗剤の低減を可能とし、そのため同様のあるいはより優れた酸化防止剤の性能または利益を達成しながら、車の公害防止設備の性能を改良することが期待されている。
【0086】
当明細書の全体を通した多くの箇所で、多数の米国特許が引用されている。このような引用文献は、ここにすべて完全に説明されたものとして当開示に明白に組み込まれている。
【0087】
前述の実施態様はその実行においてかなり変化する余地がある。従って当実施態様は、上記に述べられた特定の例証に制限されることを意図したものではない。むしろ前述の実施態様は、法律的に使用可能なそれらの均等物を含む、添付の請求項の精神および範囲内にある。
【0088】
当特許権者は、開示された実施態様のいずれをも一般に提供することは意図しておらず、また開示された修正または変更は、それらが文言上請求項の範囲内に収まらない限りにおいて、均等論により本発明の一部であると見なされる。
【0089】
本発明の主な特徴および態様を示せば以下のとおりである。
1. 潤滑粘度の基油、および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属化合物の量を含む潤滑組成物を含んで成る潤滑面であって、該金属化合物の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される潤滑面。
2. 潤滑面がエンジン動力伝達系を含む上記1に記載の潤滑面。
3. 潤滑面が内燃エンジンの内側の面または部品を含む上記1に記載の潤滑面。
4. 潤滑面が圧縮点火エンジンの内側の面または部品を含む上記1に記載の潤滑面。
5. 炭化水素に可溶な金属化合物の量が、潤滑組成物中に約1から約1500ppmの範囲の量の金属を与える上記1に記載の潤滑面。
6. 炭化水素に可溶な金属化合物が、有機酸、アミン、含酸素化合物、フェネート、サリチル酸塩、およびスルホン酸塩から誘導したチタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される上記1に記載の潤滑面。
7. 炭化水素に可溶な金属化合物が、チタン、ジルコニウム、およびマンガンのカルボキシレート;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのフェネート;および本質的にリン原子および硫黄原子を欠いているチタン、ジルコニウム、マンガンのアルコキシドから成るグループから選択される上記1に記載の潤滑面。
8. 炭化水素に可溶な金属化合物が、少なくとも約7つの炭素原子を含み、またカルボキシル基に隣接した第三級炭素を有するモノカルボン酸から誘導した金属炭酸塩を含む上記1に記載の潤滑面。
9. 炭化水素に可溶な金属化合物が、チタンカルボン酸塩、チタンフェネート、チタンアルコキシド、チタンアミン化合物、チタンスルホン酸塩、チタンサリチル酸塩、チタンジケトン、およびチタンクラウンエーテルから成るグループから選択された化合物を含む上記1に記載の潤滑面。
10. 炭化水素に可溶な金属化合物が、ジルコニウムカルボン酸塩、ジルコニウムフェネート、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアミン化合物、ジルコニウムスルホン酸塩、ジルコニウムサリチル酸塩、ジルコニウムジケトン、およびジルコニウムクラウンエーテルから成るグループから選択された化合物を含む上記1に記載の潤滑面。
11. 炭化水素に可溶な金属化合物が、マンガンカルボン酸塩、マンガンフェネート、マンガンアルコキシド、マンガンアミン化合物、マンガンスルホン酸塩、マンガンサリチ
ル酸塩、マンガンジケトン、およびマンガンクラウンエーテルから成るグループから選択された化合物を含む上記1に記載の潤滑面。
12. 上記1に記載の潤滑面を含む自動車。
13. 炭化水素に可溶な金属化合物の量が潤滑剤中に約1ppmから約1500ppmの金属を与える上記12に記載の車。
14. 可動部を有し、また当該可動部を潤滑する潤滑剤を含んだ自動車であって、当該潤滑剤が潤滑粘度のオイル、有機モリブデン摩擦調整剤、および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属化合物の量を含んでなり、該金属化合物の金属はチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択され、また該化合物は硫黄原子およびリン原子を本質的に欠いており、そして該潤滑剤が実質的にフェノール系抗酸化化合物を欠いている自動車。
15. 炭化水素に可溶な金属化合物が、有機酸、アミン、含酸素化合物およびフェネートから誘導した、チタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される上記14に記載の車。
16. 炭化水素に可溶な金属化合物が、チタン、ジルコニウム、およびマンガンのカルボン酸塩;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのフェネート;およびチタン、ジルコニウム、およびマンガンのアルコキシドから成るグループから選択される上記15に記載の車。
17. 炭化水素に可溶な金属化合物が、チタンカルボン酸塩、チタンフェネート、チタンアルコキシド、チタンアミン化合物、チタンサリチル酸塩、チタンジケトン、およびチタンクラウンエーテルから成るグループから選択された化合物を含む上記14に記載の車。
18. 炭化水素に可溶な金属化合物が、ジルコニウムカルボン酸塩、ジルコニウムフェネート、ジルコニウムアルコキシド、ジルコニウムアミン化合物、ジルコニウムサリチル酸塩、ジルコニウムジケトン、およびジルコニウムクラウンエーテルから成るグループから選択された化合物を含む上記14に記載の車。
19. 炭化水素に可溶な金属化合物が、マンガンカルボン酸塩、マンガンフェネート、マンガンアルコキシド、マンガンアミン化合物、マンガンサリチル酸塩、マンガンジケトン、およびマンガンクラウンエーテルから成るグループから選択された化合物を含む上記14に記載の車。
20. 可動部が高荷重ディーゼルエンジンを含む上記14に記載の車。
21. 潤滑粘度の基油成分、有機モリブデン摩擦調整剤、および炭化水素に可溶な金属を含んだ物質を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属を含んだ物質の量を含んでなる、完全に配合された潤滑組成物であって、当該の金属を含んだ物質の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択され、また当該物質が硫黄原子およびリン原子を本質的に欠いている潤滑組成物。
22. 潤滑組成物が、圧縮点火エンジンに適した低灰分、低硫黄、および低リン潤滑組成物を含む上記21に記載の潤滑組成物。
23. 炭化水素に可溶な金属を含んだ物質が、有機酸、アミン、含酸素化合物、およびフェネートから誘導したチタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される上記21に記載の潤滑組成物。
24. 炭化水素に可溶な金属を含んだ物質が、チタン、ジルコニウム、およびマンガンのカルボン酸塩;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのフェネート;およびチタン、ジルコニウム、およびマンガンのアルコキシドから成るグループから選択される上記23に記載の潤滑組成物。
25. 炭化水素に可溶な金属を含んだ物質の量が、約1ppmから約1500ppmの金属を与える上記21に記載の潤滑組成物。
26. 潤滑組成物が、実質的にフェノール系抗酸化化合物を欠いている上記21に記載
の潤滑組成物。
27. 実質的にフェノール系抗酸化化合物の不在下での潤滑組成物を含んだエンジンの作動中にエンジン潤滑組成物の酸化を減少させる方法であって、エンジンの部品と、潤滑粘度の基油および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある炭化水素に可溶な金属化合物の量を含む潤滑組成物とを接触させることを含んでなり、該金属化合物の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される方法。
28. エンジンが高荷重ディーゼルエンジンを含んで成る上記27に記載の方法。
29. 炭化水素に可溶な金属化合物が、有機酸、アミン、含酸素化合物、およびフェネートから誘導した、チタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される上記27に記載の方法。
30. 炭化水素に可溶な金属化合物が、本質的にリン原子および硫黄原子を欠いているチタン、ジルコニウム、およびマンガンのカルボン酸塩;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのフェネート;およびチタン、ジルコニウム、およびマンガンアルコキシドから成るグループから選択される上記27に記載の方法。
31. 潤滑組成物がさらに有機モリブデン摩擦調整剤を含む上記27に記載の方法。
32. より高い抗酸化特性を示す潤滑油によって、実質的にフェノール系酸化防止剤の不在下で可動部を潤滑する方法であって、当該方法が基油、有機モリブデン摩擦調整剤、および酸化防止添加剤、ヒドロカルビル分散媒を含んだ酸化防止添加剤、および潤滑油中に約1ppmから約1500ppmの金属を与える量の炭化水素に可溶な金属化合物を含んだ潤滑組成物を一つ以上の可動部への潤滑油として使用することを含んでなり、当該の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される方法。
33. 可動部がエンジンの可動部を含む上記32に記載の方法。
34. エンジンが圧縮点火エンジンおよび火花点火エンジンから成るグループから選択される上記33に記載の方法。
35. エンジンがクランクケースを備えた内燃エンジンを含み、また当該潤滑油がエンジンのクランクケース中に存在するクランクケースオイルを含んでなる上記33に記載の方法。
36. 潤滑油がエンジンを含む車輌のドライブトレイン中に存在するドライブトレイン潤滑剤を含む上記33に記載の方法。
37. 炭化水素に可溶な金属化合物が、有機酸、アミン、含酸素化合物、およびフェネートから誘導した、チタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される上記32に記載の方法。
38. 炭化水素に可溶な金属化合物が、本質的にリン原子および硫黄原子を欠いているチタン、ジルコニウム、およびマンガンのカルボン酸塩;チタン、ジルコニウム、およびマンガンのフェネート;およびチタン、ジルコニウム、およびマンガンのアルコキシドから成るグループから選択される上記37に記載の方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑粘度の基油、および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属化合物の量を含む潤滑組成物を含んで成る潤滑面であって、該金属化合物の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される潤滑面。
【請求項2】
炭化水素に可溶な金属化合物の量が、潤滑組成物中に約1から約1500ppmの範囲の量の金属を与える請求項1に記載の潤滑面。
【請求項3】
炭化水素に可溶な金属化合物が、有機酸、アミン、含酸素化合物、フェネート、サリチル酸塩、およびスルホン酸塩から誘導したチタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される請求項1に記載の潤滑面。
【請求項4】
可動部を有し、また当該可動部を潤滑する潤滑剤を含んだ自動車であって、当該潤滑剤が潤滑粘度のオイル、有機モリブデン摩擦調整剤、および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属化合物の量を含んでなり、該金属化合物の金属はチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択され、また該化合物は硫黄原子およびリン原子を本質的に欠いており、そして該潤滑剤が実質的にフェノール系抗酸化化合物を欠いている自動車。
【請求項5】
炭化水素に可溶な金属化合物が、有機酸、アミン、含酸素化合物およびフェネートから誘導した、チタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される請求項4に記載の車。
【請求項6】
潤滑粘度の基油成分、有機モリブデン摩擦調整剤、および炭化水素に可溶な金属を含んだ物質を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある、少なくとも一種の炭化水素に可溶な金属を含んだ物質の量を含んでなる、完全に配合された潤滑組成物であって、当該の金属を含んだ物質の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択され、また当該物質が硫黄原子およびリン原子を本質的に欠いている潤滑組成物。
【請求項7】
炭化水素に可溶な金属を含んだ物質が、有機酸、アミン、含酸素化合物、およびフェネートから誘導したチタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される請求項6に記載の潤滑組成物。
【請求項8】
実質的にフェノール系抗酸化化合物の不在下での潤滑組成物を含んだエンジンの作動中にエンジン潤滑組成物の酸化を減少させる方法であって、エンジンの部品と、潤滑粘度の基油および炭化水素に可溶な金属化合物を欠いている潤滑組成物の酸化を減少させる以上に当該潤滑組成物の酸化を減少させる効果のある炭化水素に可溶な金属化合物の量を含む潤滑組成物とを接触させることを含んでなり、該金属化合物の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される方法。
【請求項9】
炭化水素に可溶な金属化合物が、有機酸、アミン、含酸素化合物、およびフェネートから誘導した、チタン、ジルコニウム、およびマンガン化合物から成るグループから選択される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
より高い抗酸化特性を示す潤滑油によって、実質的にフェノール系酸化防止剤の不在下
で可動部を潤滑する方法であって、当該方法が基油、有機モリブデン摩擦調整剤、および酸化防止添加剤、ヒドロカルビル分散媒を含んだ酸化防止添加剤、および潤滑油中に約1ppmから約1500ppmの金属を与える量の炭化水素に可溶な金属化合物を含んだ潤滑組成物を一つ以上の可動部への潤滑油として使用することを含んでなり、当該の金属がチタン、ジルコニウム、およびマンガンから成るグループから選択される方法。

【公開番号】特開2006−257406(P2006−257406A)
【公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−35393(P2006−35393)
【出願日】平成18年2月13日(2006.2.13)
【出願人】(391007091)アフトン・ケミカル・コーポレーション (123)
【氏名又は名称原語表記】Afton Chemical Corporation
【Fターム(参考)】