説明

放射ビーム溶接方法、本体及びリソグラフィ装置

【課題】より大きい負荷に耐えられる冷却システムを有するリソグラフィ装置のための改良型アクチュエータを提供する。
【解決手段】電磁アクチュエータ用の冷却体の第1の部材FMを第2の部材SMへ放射ビーム溶接する方法であって、第1の部材FMはその1つの側に、凹部REが設けられた表面部分を有し、凹部REは周縁部によって区切られ、第2の部材SMは、凹部RE閉鎖するために第1の部材FMの表面部分CSPを補完する実質的に連続する第1の表面部分を有し、第2の部材SMは第1の表面部分CSPの反対側に第2の表面部分SSPを有し、前記方法は、第1の表面部分が第1の部材の表面部分に係合するように、第1及び第2の部材を配置するステップと、放射ビームを提供するステップと、第1及び第2の部材が凹部REの周縁部で一緒に溶接されるように、第2の表面部分へ向けて放射ビームを誘導するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁アクチュエータの第1の部材を第2の部材に放射ビーム溶接する方法、この方法を用いて製作された本体、及びそのような本体を備えるリソグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リソグラフィ装置は、所望のパターンを基板に、通常は基板のターゲット部分に適用する機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用可能である。このような場合、代替的にマスク又はレチクルとも呼ばれるパターニングデバイスを使用して、ICの個々の層上に形成すべき回路パターンを生成することができる。このパターンを、基板(例えばシリコンウェーハ)上のターゲット部分(例えば1つ又は幾つかのダイの一部を含む)に転写することができる。パターンの転写は通常、基板に設けた放射感応性材料(レジスト)の層への結像により行われる。一般的に、1枚の基板は、順次パターンが与えられる隣接したターゲット部分のネットワークを含んでいる。従来のリソグラフィ装置は、パターン全体をターゲット部分に1回で露光することによって各ターゲット部分が照射される、いわゆるステッパと、基板を所与の方向(「スキャン」方向)と平行あるいは逆平行に同期的にスキャンしながら、パターンを所与の方向(「スキャン」方向)に放射ビームでスキャンすることにより、各ターゲット部分が照射される、いわゆるスキャナとを含む。パターンを基板にインプリントすることによっても、パターニングデバイスから基板へとパターンを転写することが可能である。
【0003】
ウェーハ及び/又はレチクルのスキャンは、通常、ステージシステム、例えば、上下に積み重ねた2つのステージを含み、一方のステージが粗位置決めに使用され、他方のステージが微細位置決めに使用されるステージシステムによって実行される。現在のステージシステムの設計は、電流担体が永久磁石によって生成された電界と相互作用する電磁アクチュエータを使用する。これらのアクチュエータの欠点は、電流担体を流れる電流が多大なエネルギーを放散して温度を上昇させるということである。温度上昇は、周囲の部品に影響を与え、装置の精度を低下させる。さらに、電流担体の最大許容温度が許容電流を制限し、アクチュエータによって印加できる力を制限する。
【0004】
アクチュエータの温度を所定限度内に収めるために、アクチュエータを電流担体の周辺部の冷却流路を有する冷却体を用いて冷却し、放散した熱を除去し、他の部分に対する熱シールドとしての働きをすることができる。冷却体は、2枚の板を互いに結合し、2枚の板の一方に凹部又は空洞を流路として形成し、他方の板を用いて流路を閉鎖することで形成される。2枚の板はレーザビーム溶接で互い結合してもよい。
【0005】
しかし、レーザビーム溶接を用いて2枚の板を結合するときには、溶接シームが耐えられる最大負荷は、アクチュエータの駆動サイクルとして、また冷却液の周辺部のポンピング時の冷却流路内の圧力負荷の結果としての振動負荷のために制限される。
【発明の概要】
【0006】
より大きい負荷に耐えられる冷却システムを有するリソグラフィ装置のための改良型アクチュエータを提供することが望ましい。
【0007】
本発明のある実施形態によれば、電磁アクチュエータの第1の部材を第2の部材へ放射ビーム溶接する方法であって、第1の部材はその1つの側に、凹部を有する表面部分を有し、該凹部は周縁部によって区切られ、第2の部材は、第1の部材の凹部を閉鎖して、それにより第1及び第2の部材によって形成される本体に空洞を形成するように、第1の部材の表面部分を補完する実質的に連続する第1の表面部分を有し、第2の部材は第1の表面部分の反対側に第2の表面部分を有し、
−第2の部材の第1の表面部分が凹部を閉鎖するために第1の部材の表面部分に係合するように、第1及び第2の部材を互いに対して配置するステップと、
−放射ビーム溶接のための放射ビームを提供するステップと、
−第1及び第2の部材が凹部の周縁部で一緒に溶接されて凹部の方に向いた凹部側を有する溶接部を形成し、溶接部の凹部側の第1及び第2の部材の間に連続的な遷移が形成されるように、第2の表面部分へ向けて放射ビームを誘導するステップと
を含む方法が提供される。
【0008】
本発明の別の実施形態によれば、本発明のある実施形態による放射ビーム溶接方法により製造された本体が提供される。
【0009】
本発明のさらに別の実施形態によれば、空洞を有する電磁アクチュエータのための本体であって、本体は第1の部材及び第2の部材を有し、空洞は第2の部材によって閉鎖される第1の部材の凹部として形成され、第1及び第2の部材は第1の部材の凹部の周縁部の放射ビーム溶接によって互いに結合され、これにより凹部の方を向いた凹部側を有する溶接部を形成し、溶接部の凹部側の第1及び第2の部材の間に連続的な遷移が形成される本体が提供される。
【0010】
本発明のさらに別の実施形態によれば、本発明のある実施形態による本体を備えるリソグラフィ装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
対応する参照符号が対応する部分を示す添付の概略図を参照しながら以下に本発明の実施形態について説明するが、これは単に例示としてのものに過ぎない。
【図1】本発明のある実施形態によるリソグラフィ装置を示す。
【図2】図1のリソグラフィ装置の本体を示す。
【図3】図2の本体を形成する従来技術の方法を示す。
【図4】図3の従来技術の方法の詳細図を示す。
【図5】本発明のある実施形態による図2の本体を形成する放射ビーム溶接方法を示す。
【図6】図5の方法の結果の詳細図を示す。
【図7】本発明の別の実施形態による第1及び第2の部材を互いに結合する溶接シームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、本発明の一実施形態によるリソグラフィ装置を概略的に示す。この装置は、放射ビームB(例えば、UV放射又はその他の任意の好適な放射)を調節するように構成された照明システム(イルミネータ)ILと、パターニングデバイス(例えば、マスク)MAを支持するように構築され、特定のパラメータに従ってパターニングデバイスを正確に位置決めするように構成された第1の位置決めデバイスPMに接続されたマスク支持構造(例えば、マスクテーブル)MTとを含む。リソグラフィ装置は、また、基板(例えば、レジストコートウェーハ)Wを保持するように構築され、特定のパラメータに従って基板を正確に位置決めするように構成された第2の位置決めデバイスPWに接続された基板テーブル(例えば、ウェーハテーブル又は一般にオブジェクトテーブル)WT又は「基板支持体」を含む。リソグラフィ装置は、パターニングデバイスMAによって基板Wのターゲット部分C(例えば、1つ又は複数のダイを含む)上に放射ビームBに付与されるパターンを投影するように構成された投影システム(例えば、屈折投影レンズシステム)PSをさらに含む。
【0013】
照明システムは、放射の誘導、整形、又は制御を行うための、屈折、反射、磁気、電磁、静電型等の光学コンポーネント、又はその任意の組合せなどの種々のタイプの光学コンポーネントを含んでいてもよい。
【0014】
マスク支持構造は、パターニングデバイスを支持、すなわちその重量を支えている。マスク支持構造は、パターニングデバイスの方向、リソグラフィ装置の設計等の条件、例えばパターニングデバイスが真空環境で保持されているか否かに応じた方法で、パターニングデバイスを保持する。このマスク支持構造は、パターニングデバイスを保持するために、機械的、真空、静電式等のクランプ技術を使用することができる。マスク支持構造は、例えばフレーム又はテーブルでよく、必要に応じて固定式又は可動式でよい。マスク支持構造は、パターニングデバイスが例えば投影システムに対して確実に所望の位置にくるようにできる。本明細書において「レチクル」又は「マスク」という用語を使用した場合、その用語は、より一般的な用語である「パターニングデバイス」と同義と見なすことができる。
【0015】
本明細書において使用する「パターニングデバイス」という用語は、基板のターゲット部分にパターンを生成するように、放射ビームの断面にパターンを与えるために使用し得る任意のデバイスを指すものとして広義に解釈されるべきである。ここで、放射ビームに与えられるパターンは、例えばパターンが位相シフトフィーチャ又はいわゆるアシストフィーチャを含む場合、基板のターゲット部分における所望のパターンに正確には対応しないことがある点に留意されたい。一般的に、放射ビームに与えられるパターンは、集積回路などのターゲット部分に生成されるデバイスの特定の機能層に相当する。
【0016】
パターニングデバイスは透過性又は反射性でよい。パターニングデバイスの例には、マスク、プログラマブルミラーアレイ、及びプログラマブルLCDパネルがある。マスクはリソグラフィにおいて周知のものであり、これには、バイナリマスク、レベンソン型(alternating)位相シフトマスク、ハーフトーン型(attenuated)位相シフトマスクのようなマスクタイプ、さらには様々なハイブリッドマスクタイプも含まれる。プログラマブルミラーアレイの一例として、小さなミラーのマトリクス配列を使用し、そのミラーは各々、入射する放射ビームを異なる方向に反射するよう個々に傾斜することができる。傾斜したミラーは、ミラーマトリクスによって反射する放射ビームにパターンを与える。
【0017】
本明細書において使用する「投影システム」という用語は、例えば使用する露光放射、又は液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、磁気光学システム、電磁光学システム及び静電型光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」という用語と同義と見なすことができる。
【0018】
本明細書で示すように、本装置は透過タイプである(例えば透過マスクを使用する)。あるいは、装置は反射タイプでもよい(例えば上記で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイを使用する、又は反射マスクを使用する)。
【0019】
リソグラフィ装置は2つ(デュアルステージ)又はそれ以上の基板テーブル又は「基板支持体」(及び/又は2つ以上のマスクテーブル又は「マスク支持体」)を有するタイプでよい。このような「マルチステージ」機械においては、追加のテーブル又は支持体を並行して使用するか、又は1つ又は複数の他のテーブル又は支持体を露光に使用している間に1つ又は複数のテーブル又は支持体で予備工程を実行することができる。
【0020】
リソグラフィ装置は、投影システムと基板との間の空間を充填するように、基板の少なくとも一部を水などの比較的高い屈折率を有する液体で覆えるタイプでもよい。液浸液は、例えばマスクと投影システムの間など、リソグラフィ装置の他の空間に適用することもできる。液浸技術は、投影システムの開口数を増加させるために当技術分野で周知である。本明細書で使用する「液浸」という用語は、基板などの構造を液体に沈めなければならないという意味ではなく、露光中に投影システムと基板の間に液体が存在するというほどの意味である。
【0021】
図1を参照すると、イルミネータILは放射源SOから放射ビームを受ける。放射源とリソグラフィ装置とは、例えば放射源がエキシマレーザである場合に、別々の構成要素であってもよい。このような場合、放射源はリソグラフィ装置の一部を形成すると見なされず、放射ビームは、例えば適切な誘導ミラー及び/又はビームエクスパンダなどを備えるビームデリバリシステムBDを用いて、放射源SOからイルミネータILへと渡される。他の場合では、例えば放射源が水銀ランプの場合は、放射源がリソグラフィ装置の一体部分であってもよい。放射源SO及びイルミネータILは、必要に応じてビームデリバリシステムBDとともに放射システムと呼ぶことができる。
【0022】
イルミネータILは、放射ビームの角度強度分布を調整するように設定されたアジャスタADを備えていてもよい。通常、イルミネータの瞳面における強度分布の外側及び/又は内側半径範囲(一般にそれぞれ、σ-outer及びσ-innerと呼ばれる)を調節することができる。また、イルミネータILは、インテグレータIN及びコンデンサCOなどの他の種々のコンポーネントを備えていてもよい。イルミネータを用いて放射ビームを調節し、その断面にわたって所望の均一性と強度分布とが得られるようにしてもよい。
【0023】
放射ビームBは、マスク支持構造(例えば、マスクテーブルMT)上に保持されたパターニングデバイス(例えば、マスクMA)に入射し、パターニングデバイスによってパターン形成される。マスクMAを横断した放射ビームBは、投影システムPSを通過し、投影システムPSは、ビームを基板Wのターゲット部分C上に合焦させる。第2の位置決めデバイスPW及び位置センサIF(例えば、干渉計デバイス、リニアエンコーダ又は容量センサ)を用いて、基板テーブルWTを、例えば様々なターゲット部分Cを放射ビームBの経路に位置決めするように正確に移動できる。同様に、第1の位置決めデバイスPMと別の位置センサ(図1には明示されていない)を用いて、マスクライブラリからの機械的な取り出し後又はスキャン中などに放射ビームBの経路に対してマスクMAを正確に位置決めできる。一般に、マスクテーブルMTの移動は、第1の位置決めデバイスPMの部分を形成するロングストロークモジュール(粗動位置決め)及びショートストロークモジュール(微動位置決め)を用いて実現できる。同様に、基板テーブルWT又は「基板支持体」の移動は、第2のポジショナPWの部分を形成するロングストロークモジュール及びショートストロークモジュールを用いて実現できる。ステッパの場合(スキャナとは対照的に)、マスクテーブルMTをショートストロークアクチュエータのみに接続するか、又は固定してもよい。マスクMA及び基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2及び基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示のような基板アライメントマークは、専用のターゲット部分を占有するが、ターゲット部分の間の空間に位置してもよい(スクライブレーンアライメントマークとして周知である)。同様に、マスクMA上に複数のダイを設ける状況では、マスクアライメントマークをダイ間に配置してもよい。
【0024】
図示のリソグラフィ装置は、以下のモードのうち少なくとも1つにて使用可能である。
1.ステップモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は基本的に静止状態に維持される一方、放射ビームに与えたパターン全体が1回でターゲット部分Cに投影される(すなわち単一静的露光)。次に、別のターゲット部分Cを露光できるように、基板テーブルWT又は「基板支持体」がX方向及び/又はY方向に移動される。ステップモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一静的露光で結像されるターゲット部分Cのサイズが制限される。
2.スキャンモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」及び基板テーブルWT又は「基板支持体」は同期的にスキャンされる一方、放射ビームに与えられるパターンがターゲット部分Cに投影される(すなわち単一動的露光)。マスクテーブルMT又は「マスク支持体」に対する基板テーブルWT又は「基板支持体」の速度及び方向は、投影システムPSの拡大(縮小)及び像反転特性によって求めることができる。スキャンモードでは、露光フィールドの最大サイズによって、単一動的露光におけるターゲット部分の(非スキャン方向における)幅が制限され、スキャン動作の長さによってターゲット部分の(スキャン方向における)高さが決まる。
3.別のモードでは、マスクテーブルMT又は「マスク支持体」はプログラマブルパターニングデバイスを保持して基本的に静止状態に維持され、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動又はスキャンさせながら、放射ビームに与えられたパターンをターゲット部分Cに投影する。このモードでは、一般にパルス状放射源を使用して、基板テーブルWT又は「基板支持体」を移動させる毎に、又はスキャン中に連続する放射パルスの間で、プログラマブルパターニングデバイスを必要に応じて更新する。この動作モードは、以上で言及したようなタイプのプログラマブルミラーアレイなどのプログラマブルパターニングデバイスを使用するマスクレスリソグラフィに容易に利用できる。
【0025】
上述した使用モードの組合せ及び/又は変形、又は全く異なる使用モードも利用できる。
【0026】
第1及び第2の位置決めデバイスPM、PWは、アクチュエータ力を生成するために電流担体が永久磁石の磁界と相互作用する電磁アクチュエータを備えてもよい。しかし、電流担体を通過する電流は、結果としての温度上昇と共に電流担体内に熱を生成する。
【0027】
アクチュエータの温度を所定の最大温度未満に保つために、リソグラフィ装置は熱をそこから抽出する電流担体に接触する冷却体を備える。冷却体は、熱放射がリソグラフィ装置の他の部分に到達するのを防止して、装置の精度を向上させる熱シールド要素として機能することができる。そのような冷却体の概略例を図2に示す。
【0028】
図2は、冷却体CBの概略平面図を示す。冷却体CBの内部には、冷却体CBを通して蛇行する冷却流路CCが提供されている。通常、冷却流路CCは見えないため、冷却流路CCは破線で示されている。冷却流路CCは、冷却体CBの外側表面に提供された入口開口IOと出口開口OOとを有し、冷却体CBを通して流れる冷却液、例えば、水を冷却流路CCに提供できる。
【0029】
図3は、図2の冷却体CBを形成する方法についての従来の実施形態を示す。したがって、図2は、図2に示す線A−A’で切った冷却体の断面の一部を示す。冷却体は、第1の部材FMと第2の部材SMとを組み合わせることで形成できる。第1の部材FMの面SI上に、第1の部材は、冷却流路を形成する凹部REを有する外側表面部分CSPを有する。
【0030】
第2の部材SMは、凹部REを閉鎖して冷却流路を形成するために外側表面部分CSPと係合する連続的な第1の表面部分FSPを有する。したがって、第1の表面部分FSPは外側表面部分CSPを補完する。第1の表面部分FSPの反対側に、第2の部材は第2の表面部分SSPを有する。
【0031】
第1及び第2の部材FM、SMは、
−第2の部材SMの第1の表面部分FSPが凹部を閉鎖するために第1の部材FMの外側表面部分CSPに係合するように、第1及び第2の部材を互いに対して配置するステップと、
−放射ビーム溶接のための放射ビームを提供するステップと、
−第1及び第2の部材が溶接されるように第2の表面部分SSPへ向けて放射ビームを誘導するステップとによる放射ビーム溶接を用いて互いに結合される。
【0032】
結果として得られる溶接シームWSを図3に示す。溶接シームWSの1つの詳細を図4に示す。凹部REを含む第1の部材FMの外側表面部分CSPと、第1及び第2の表面部分FSP、SSPを有する第2の部材と、第1及び第2の部材FM、SMの間の溶接シームWSとがより明らかに示されている。溶接シームWSが2つの凹部部分REの間の外側表面部分CFPのほぼ中央に提供されている。
【0033】
従来技術の結果として、溶接シームWSのいずれかの側にクラックCRが依然として存在し、溶接シームの凹部側の第1及び第2の部材の間に連続的な遷移は提供されない。クラックCRのために、第1の部材から第2の部材への急激な遷移が存在する。すなわち、遷移における曲率半径は、10マイクロメートル未満にまで低下することがある。その結果、遷移は、特に起動駆動サイクルだけでなく冷却流路を通したポンピング冷却液の振動負荷の場合に、高い局所応力にさらされる。
【0034】
図5は、第1の部材FMを第2の部材SMに溶接するための本発明のある実施形態による放射ビーム溶接方法を概略的に示す。溶接方法は、図2の冷却体CBの断面A−A’に関して示されている。第2の部材SMの提供された厚さは、少なくとも100マイクロメートル、好ましくは少なくとも200マイクロメートル、より好ましくは少なくとも500マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも1000マイクロメートルである。したがって、第2の部材SMは薄い板部材と考えられる。図6は、この断面で切った2つの溶接シームの詳細図を示す。好ましい実施形態では、外側表面部分CSPの幅は、溶接工程中に効果的な熱バッファ/伝達を形成するために、第2の部材SMの厚さの少なくとも同程度、好ましくは2倍、より好ましくは5倍、最も好ましくは10倍である。
【0035】
この方法は、図5の上部に示す第1及び第2の部材FM、SMを提供するステップで開始する。第1の部材FMの面SI上に、外側表面部分CSPは凹部REを有する。凹部REは、凹部REを区切る周縁部PEを有する。すなわち、周縁部PEは、凹部REと表面部分CSPの境界上にある。外側表面部分CSPは、この実施形態では平面内にある。
【0036】
第2の部材SMは、第1の部材の外側表面部分CSPを補完して、それにより凹部REを閉鎖して冷却流路を形成できる連続的な第1の表面部分FSPを有する。この実施形態では、第1の表面部分FSPも外側表面部分CSPの平面と同様の平面内にある。第1の表面部分FSPの反対側に、放射ビーム溶接のための放射ビームを受光する第2の表面部分SSPが提供される。第1及び第2の部材は、
−第2の部材SMの第1の表面部分FSPが凹部を閉鎖するために第1の部材FMの表面部分CSPに係合するように、第1及び第2の部材FM、SMを互いに対して配置するステップと、
−放射ビーム溶接のための放射ビームを提供するステップと、
−第1及び第2の部材FM、SMが、凹部REの周縁部PEで溶接されて凹部の方に向いた凹部側を有する溶接部を形成し、溶接部WSの凹部側の第1及び第2の部材FM、SMの間に小さいギャップ又はクラックを伴う遷移の代わりに連続的な遷移が形成されるように、第2の表面部分SSPへ向けて放射ビームを誘導するステップとによって互いに結合される。
【0037】
この結果の詳細を図6に示す。この方法の利点は、溶接シームの凹部側の第1及び第2の部材の間の遷移が連続的で、溶接シームと凹部との間にクラックがないという点である。図6に示すように2つの溶接シームの間には依然としてクラックがあるかも知れないが、このクラックの影響は最小限である。2つの連続的な溶接シームを印加する別の利点は、流体が2つの溶接シーム間にあり得るクラックに進入するリスクが低減し、隙間腐食のリスクが低減することである。溶接部WSの凹部側にクラックが存在しないため、結合はより大きい応力に耐えられる。実験結果によれば、本発明の溶接部が耐えられる応力は従来の溶接部の最大3倍である。
【0038】
溶接部は、第1及び第2の部材の材料が移設されて第1及び第2の部材の間に丸められた遷移を形成し、提供される曲率半径が少なくとも10マイクロメートル、好ましくは少なくとも25マイクロメートル、より好ましくは少なくとも50マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも100マイクロメートルであるように形成される。100〜200程度の曲率半径でさえ実施可能であることが示されている。
【0039】
溶接部を作成するために用いる放射ビームは、レーザビーム又は電子ビームであってもよい。第1及び第2の部材の材料は、好ましくは、チタン、チタン合金、ステンレス鋼又はアルミニウムである。あるいは、溶接部の位置が連続的な遷移を提供するために十分正確に制御できる限り、第1及び第2の部材を溶接するために他の任意の熱源を使用してもよい。その結果、任意の材料、例えば、溶接可能な金属を第1及び第2の部材に使用できる。
【0040】
図7は、溶接シームWSの両側は凹部REの方を向き、第1及び第2の部材の間の連続的な遷移が溶接シームの両側に形成されるように、単一の溶接シームWSを用いて第1の部材FMを第2の部材SMに結合する、本発明の別の実施形態による第1及び第2の部材FM,SMの間の結合を示す。言い換えれば、放射ビーム溶接のための放射ビームは、第1及び第2の部材が同時に2つの周縁部部分で溶接される第2の部材の第2の表面部分SSPの方へ誘導される。
【0041】
ある実施形態では、周縁部付近の凹部壁面と周縁部付近の第2の部材の表面部分との間の角度は90度であってもよい。あるいは、角度は鋭角又は鈍角、すなわち、90度より小さくても大きくてもよい。90度以外の角度を使用する利点は、本発明による放射ビーム溶接方法によって形成される丸められた遷移は90度の角度の場合よりも大きい曲率半径を有することがあるという点である。
【0042】
本文ではICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特に言及しているが、本明細書で説明するリソグラフィ装置には他の用途もあることを理解されたい。例えば、これは、集積光学システム、磁気ドメインメモリ用誘導及び検出パターン、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどの製造である。こうした代替的な用途に照らして、本明細書で「ウェーハ」又は「ダイ」という用語を使用している場合、それぞれ、「基板」又は「ターゲット部分」という、より一般的な用語と同義と見なしてよいことが、当業者には認識される。本明細書に述べている基板は、露光前又は露光後に、例えばトラック(通常はレジストの層を基板に塗布し、露光したレジストを現像するツール)、メトロロジーツール及び/又はインスペクションツールで処理することができる。適宜、本明細書の開示は、以上及びその他の基板処理ツールに適用することができる。さらに基板は、例えば多層ICを生成するために、複数回処理することができ、したがって本明細書で使用する基板という用語は、既に複数の処理済み層を含む基板も指すことができる。
【0043】
光リソグラフィの分野での本発明の実施形態の使用に特に言及してきたが、本発明は文脈によってはその他の分野、例えばインプリントリソグラフィでも使用することができ、光リソグラフィに限定されないことを理解されたい。インプリントリソグラフィでは、パターニングデバイス内のトポグラフィが基板上に作成されたパターンを画定する。パターニングデバイスのトポグラフィは基板に供給されたレジスト層内に刻印され、電磁放射、熱、圧力又はそれらの組合せを印加することでレジストは硬化する。パターニングデバイスはレジストから取り除かれ、レジストが硬化すると、内部にパターンが残される。
【0044】
本明細書で使用する「放射」及び「ビーム」という用語は、イオンビーム又は電子ビームなどの粒子ビームのみならず、紫外線(UV)放射(例えば、365nm、248nm、193nm、157nm若しくは126nm、又はこれら辺りの波長を有する)及び極端紫外線(EUV)放射(例えば、5nm〜20nmの範囲の波長を有する)を含むあらゆるタイプの電磁放射を網羅する。
【0045】
「レンズ」という用語は、状況が許せば、屈折、反射、磁気、電磁及び静電型光学コンポーネントを含む様々なタイプの光学コンポーネントのいずれか一つ、又はその組合せを指すことができる。
【0046】
以上、本発明の特定の実施形態を説明したが、説明とは異なる方法でも本発明を実践できることが理解される。例えば、本発明は、上記で開示したような方法を述べる機械読み取り式命令の1つ又は複数のシーケンスを含むコンピュータプログラム、又はこのようなコンピュータプログラムを内部に記憶したデータ記憶媒体(例えば半導体メモリ、磁気又は光ディスク)の形態をとることができる。
【0047】
上記の説明は例示的であり、限定的ではない。それ故、特許請求の範囲から逸脱することなく、記載されたような本発明を変更できることが当業者には明白である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁アクチュエータの第1の部材を第2の部材へ放射ビーム溶接する方法であって、前記第1の部材はその1つの側に、凹部を有する表面部分を有し、該凹部は周縁部によって区切られ、前記第2の部材は、前記第1の部材の凹部を閉鎖して、それにより前記第1及び第2の部材によって形成される本体に空洞を形成するように、前記第1の部材の前記表面部分を補完する実質的に連続する第1の表面部分を有し、前記第2の部材は前記第1の表面部分の反対側に第2の表面部分を有し、前記方法は、
前記第2の部材の前記第1の表面部分が前記凹部を閉鎖するために前記第1の部材の前記表面部分に係合するように、前記第1及び第2の部材を互いに対して配置するステップと、
放射ビーム溶接のための放射ビームを提供するステップと、
前記第1及び第2の部材が前記凹部の周縁部で一緒に溶接されて前記凹部の方に向いた凹部側を有する溶接部を形成し、該溶接部の該凹部側の前記第1及び第2の部材の間に連続的な遷移が形成されるように、前記第2の表面部分へ向けて前記放射ビームを誘導するステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記凹部の周縁部の前記第1及び第2の部材の材料が移設されて、前記第1及び第2の部材の間に丸められた遷移を形成するように、前記放射ビームが前記第2の表面部分の方へ誘導される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の部材の間の丸められた遷移は、少なくとも10マイクロメートル、好ましくは少なくとも25マイクロメートル、より好ましくは少なくとも50マイクロメートル、最も好ましくは少なくとも100マイクロメートルの曲率半径を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記放射ビームは、レーザビームである、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記放射ビームは、電子ビームである、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記凹部は、前記第1の部材内の流路である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記溶接部及びその付近の前記第1及び第2の部材の両方がチタン、チタン合金、ステンレス鋼又はアルミニウム製である、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記第1及び第2の部材は金属板であり、前記凹部は前記第1の部材の上面又は下面に提供される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の部材の前記第1の表面部分は、連続的で凹部のない表面部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記第1の部材の前記表面部分と前記第2の部材の前記第1の表面部分は、好ましくは平面内に延在する平坦な表面部分である、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記溶接部の前記凹部側の前記第1及び第2の部材の間の連続する遷移は、2つの隣接する溶接シームによって形成される、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか1項以上に従って製造される本体。
【請求項13】
空洞を有する電磁アクチュエータのための本体であって、該本体は第1の部材及び第2の部材を有し、前記空洞は前記第2の部材によって閉鎖される前記第1の部材の凹部として形成され、前記第1及び第2の部材は前記第1の部材の前記凹部の周縁部の放射ビーム溶接によって互いに結合され、これにより前記凹部の方を向いた凹部側を有する溶接部を形成し、前記溶接部の前記凹部側の前記第1及び第2の部材の間に連続的な遷移が形成される、本体。
【請求項14】
前記空洞は、前記本体の外部の入口及び出口開口を有する流路である、請求項13に記載の本体。
【請求項15】
請求項12又は13に記載の本体を備える、リソグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84936(P2013−84936A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−208706(P2012−208706)
【出願日】平成24年9月21日(2012.9.21)
【出願人】(504151804)エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ. (1,856)
【Fターム(参考)】