放射性浮遊粒子状物質測定装置および放射性浮遊粒子状物質測定方法
【課題】
浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、微小粒子状物質および粗大粒子状物質それぞれから放射される放射線を検出することができる放射性浮遊粒子状物質測定装置および放射性浮遊粒子状物質測定方法を提供する。
【解決手段】
放射性浮遊粒子状物質測定装置100に、格納壁部1と、ポンプ2と、浮遊粒子状物質を粗大粒子状物質と微小粒子状物質とに分級する分級器3と、テープ供給部4と、第1検出器51および第2検出器52を備える放射線検出部5とを設ける。
浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、微小粒子状物質および粗大粒子状物質それぞれから放射される放射線を検出することができる放射性浮遊粒子状物質測定装置および放射性浮遊粒子状物質測定方法を提供する。
【解決手段】
放射性浮遊粒子状物質測定装置100に、格納壁部1と、ポンプ2と、浮遊粒子状物質を粗大粒子状物質と微小粒子状物質とに分級する分級器3と、テープ供給部4と、第1検出器51および第2検出器52を備える放射線検出部5とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性浮遊粒子状物質測定装置および放射性浮遊粒子状物質測定方法に関し、特に、大気中に浮遊する放射性物質を自動的に高時間分解能で連続的に計測することを目的とし、大気中に浮遊している浮遊粒子状物質を分級した後、フィルタに捕集し、捕集された放射性の浮遊粒子状物質からの放射線を放射線検出器で検出して、大気中に存在する粗大粒子および微小粒子の放射性物質の濃度を測定・監視することを可能とする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射性浮遊粒子状物質測定装置は、放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントに設置され、大気中の浮遊粒子状物質からの放射線を放射線検出器で検出して、大気中に存在する放射能濃度を測定・監視していた。また、従来から、サンプラーによって大気中の浮遊粒子状物質を持ち帰って分析することも行われていた。
【0003】
特許文献1〜6には、従来の放射性浮遊粒子状物質測定装置が記載されている。また、特許文献7〜9には、放射性の浮遊粒子状物質ではなく、放射性の気体からの放射線を検出する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−098260号公報
【特許文献2】特開2002−250771号公報
【特許文献3】特開2003−315462号公報
【特許文献4】特開2010−019724号公報
【特許文献5】特開2010−054447号公報
【特許文献6】特開2006−126124号公報
【特許文献7】特開2010−145319号公報
【特許文献8】特開2010−237232号公報
【特許文献9】特開2011−128052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1960年代から、大気の汚染について、モニタリングの結果と疫学データとにより、発生源を中心として風向きによって汚染が局在化することが知られており、モニタリングについては1時間に1回程度の時間的に密な観測が必要であると認識されている。放射性物質による大気の汚染については、現在、モニタリングスポットにおける線量のモニタリングと、サンプラーによる持ち帰り分析とがなされているが、サンプラーによる持ち帰り分析は、せいぜい、一日に一回程度の時間分解能での測定であり、気象条件を考えた場合、この時間分解能は低過ぎるという問題がある。
【0006】
また、気流とともに高濃度の汚染物質を含んだ気団の飛来のためか、地域的に局在化した放射性物質による汚染が懸念されるので、空間的に密なモニタリングが望まれている。しかしながら、サンプラーによる持ち帰り分析は、人手が掛かり、コストが高くなるため、観測地点が非常に少ないのが現状である。
【0007】
人は15m3/dayの空気を呼吸し、非常に高濃度の放射性浮遊粒子状物質を数時間吸引することで、大きなダメージを受けることが心配される。また、どのような半減期の放射性元素によって被曝したか、体の中でどこに濃縮されていくのか、また、人体がどのような速度で排出できるか、物質によって大きく異なり、人体への影響が全く異なることが予想される。
【0008】
さらに、浮遊粒子状物質は、人の健康に悪影響を及ぼすものとして研究されており、浮遊粒子状物質のうち、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質は、特に悪影響が大きいと考えられている。その理由は、浮遊粒子状物質のうち、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質は、鼻や気道の途中で取り除かれるのに対して、微小粒子状物質は呼吸によって肺の奥深くに沈降し、一度、沈降してしまうと、排出することが困難だからである。したがって、大気中の浮遊粒子状物質からの放射線量が全体として同じ場合であっても、その放射線量が粗大粒子状物質に由来している場合に比べて、その放射線量が微小粒子状物質に由来している場合の方が、人体にとって危険性が高いと考えられる。
【0009】
放射性の微小粒子状物質による内部被曝の研究はほとんど行われていないけれども、微小粒子状物質の発癌性の研究や心血管疾患の疫学調査は行われており、放射性の微小粒子状物質を一度吸引してしまうと、長期間にわたって内部被曝をすることが予想されるので、今後の疫学調査によって、その危険性が明らかになると思われる。ところが、放射性浮遊粒子状物質については、疫学データ、毒性のデータについてもほとんどなく、観測データも少なく、非常に、科学的知見が少ないせいか、現在のところ、放射性浮遊粒子状物質を、粒径を分けて、自動的にモニタリングする装置はない。
【0010】
たとえば、特許文献1〜9に記載のような従来の測定装置は、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて放射線を検出することを行っておらず、検出された放射線が、放射性の微小粒子状物質に由来するのか、それとも放射性の粗大粒子状物質に由来するのかを、判断することができない。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、微小粒子状物質および粗大粒子状物質それぞれから放射される放射線を検出することができる放射性浮遊粒子状物質測定装置および放射性浮遊粒子状物質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線のいずれか一方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置である。
【0013】
また本発明は、内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置である。
【0014】
また本発明は、前記分級部は、前記吸引部に連動して分級を行い、
前記捕集部は、前記分級部に連動して捕集を行い、
前記放射線検出部は、前記捕集部に連動して放射線の検出を行うことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記放射線検出部は、シンチレーション検出器により、検出した放射線のエネルギーおよびエネルギーごとの計数を測定することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記放射線検出部は、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を、同時に検出し、反同時計数法により、それぞれの放射線の検出結果を補正することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記放射線検出部は、放射線として、α線またはβ線の少なくとも一方と、γ線とを検出することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引するステップと、
吸引された浮遊粒子状物質から、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質を分離して捕集するステップと、
捕集された微小粒子状物質から放射される放射線を検出するステップとを含むことを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、いずれか一方から放射される放射線を検出することができる。また本発明によれば、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、放射線をそれぞれ検出することができ、人体により危険性の高い、放射性の微小粒子状物質からの放射線を検出することができるとともに、放射性の粗大粒子状物質からの放射線も検出するので、大気中の浮遊粒子状物質全体についての放射線を検出することができる。
【0020】
また本発明によれば、吸引部、分級部、捕集部、および放射線量測定部が、互いに連動しているので、大気中の放射線浮遊粒子状物質を連続自動的にモニタリングすることができる。
【0021】
また本発明によれば、放射線検出部は、シンチレーション検出器により、検出した放射線のエネルギーおよびエネルギーごとの計数を測定するので、放射性核種の同定を行うことができる。
【0022】
また本発明によれば、放射線検出部は反同時計数法により検出結果を補正するので、放射性浮遊粒子状物質測定装置に入射する宇宙線の影響を軽減することができる。
【0023】
また本発明によれば、放射線検出部は、放射線として、γ線を検出することができ、さらに、α線またはβ線の少なくとも一方も検出することができる。
【0024】
また本発明によれば、大気中の浮遊粒子状物質のうち、人体により危険性の高い、微小粒子状物質から放射される放射線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】測定装置100の構成を示す図である。
【図2】分級器3についてより詳細に説明するための図である。
【図3】分級器3を所定の条件で運転したときの分級曲線を示す図である。
【図4】各標準線源を使用したときの第1検出器51による測定結果を示すグラフである。
【図5】図4のグラフから、各ピークを分離したときのグラフである。
【図6】測定装置100による測定処理を示すフローチャートである。
【図7A】測定結果の一例を示す図である。
【図7B】測定結果の一例を示す図である。
【図7C】測定結果の一例を示す図である。
【図7D】測定結果の一例を示す図である。
【図7E】測定結果の一例を示す図である。
【図7F】測定結果の一例を示す図である。
【図8】γ線とβ線との両方を検出する測定装置100の全体図である。
【図9】γ線とβ線との両方を検出する測定装置100における第1検出器51の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る放射性浮遊粒子状物質測定装置100(以下では、単に、「測定装置100」と称する)について説明する。図1は、測定装置100の構成を示す図である。図1では、紙面上側を鉛直方向上側とし、紙面下側を鉛直方向下側とする。
【0027】
測定装置100は格納壁部1を備えており、格納壁部1によって内部空間が形成され、その内部空間に、ポンプ2、分級器3、テープ供給部4、および放射線検出部5が収容される。また、格納壁部1によって囲まれる空間と外部の空間とを連通するように、サンプルインレット6が設けられる。格納壁部1の材質としては、どのようなものであってもよいけれども、放射線が透過し難いコンクリート、鉄、鉛などが好ましい。
【0028】
測定装置100は、概略的には、空気を吸引し減圧する真空ポンプであるポンプ2と、ブロア7とによって、サンプルインレット6から試料大気を吸引して、吸引した試料大気中を浮遊する浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter)を、分級器3によって、粗大粒子状物質と微小粒子状物質とに分級した後、テープ供給部4によって供給されるテープ状フィルタ4aにより、粗大粒子状物質と微小粒子状物質とを分けて捕集し、放射線検出部5によって、捕集された粗大粒子状物質および微小粒子状物質から放射される放射線を、それぞれ検出する装置である。ここで、粗大粒子状物質とは、浮遊粒子状物質のうち、空気力学的粒子径(以下では、単に、「粒径」と称する)が2.5μmよりも大きい物質であり、微小粒子状物質とは、浮遊粒子状物質のうち、粒径が2.5μm以下の物質である。
【0029】
サンプルインレット6は、浮遊粒子状物質を透過させるための慣性衝突型の分級器(PM10インパクタ)と一体に構成されるPM10インレットであってもよいし、分級器を含まない、10μm以上の粒子も取り込むTSPインレットであってもよい。サンプルインレット6は、試料大気中の浮遊粒子状物質と気体とを分級器3へ送給する。分級器3には、サイクロン式分級器、インパクタ、バーチャルインパクタなどが用いられる。本実施形態では、分級器3はバーチャルインパクタであり、空気を吸引するポンプ2およびブロア7によって気流を発生させることで、浮遊粒子状物質を粗大粒子状物質と微小粒子状物質とに分級する。微小粒子状物質は、分級器3によって分級され、試料大気中の気体とともに、分級器3の第1排出口3aから排出されて、第1流路8へ向かう。また、分級器3によって、試料大気中の気体とともに、粗大粒子状物質を主とする浮遊粒子状物質が、分級器3の第2排出口3bから排出されて、第2流路9へ向かう。
【0030】
第1排出口3aと第1流路8との間、および、第2排出口3bと第2流路9との間には、第1、第2排出口3a,3bに面するように、テープ供給部4によって1本のテープ状フィルタ4aが張設されており、このテープ状フィルタ4aに粗大粒子状物質と微小粒子状物質とが捕集される。テープ状フィルタ4aは、空気をよく通過させることができるとともに、粒子を効率よく捕集することができるようになっている。第1、第2排出口3a,3bから排出された空気は、このテープ状フィルタ4aを通過して、それぞれ、第1、第2流路8,9へ流れ込む。このときの微小粒子状物質の第1流路8側の流速は200L/minであり、粗大粒子状物質の第2流路9側の流速20L/minである。このように、大きな流量で吸引する必要がある場合は、ブロア7が用いられ、小さい流量で吸引する場合は、ポンプ2が用いられる。
【0031】
テープ状フィルタ4aは、異なる部分において、第1、第2排出口3a,3bに、10mm程度の距離で近接している。また、テープ状フィルタ4aを挟んで第1、第2排出口3a,3bとは反対側、すなわちテープ状フィルタ4aの裏側には、第1、第2流路8,9の入口が設けられている。
【0032】
第1流路8内には、テープ状フィルタ4aを挟んで第1排出口3aに対向するように、第1検出器51が設けられる。第1検出器51は、検出面51aがテープ状フィルタ4aの裏側に面しており、検出面51aとテープ状フィルタ4aとの距離は、1mm〜50mmである。第1検出器51は、検出面51aに入射した放射線を検出して、検出結果を、マルチチャンネルアナライザ53を介して、主制御部54へ入力する。同様に、第2流路9内にも、テープ状フィルタ4aを挟んで第2排出口3bに対向するように、第2検出器52が設けられる。第2検出器52は、検出面52aがテープ状フィルタ4aの裏側に面しており、検出面52aとテープ状フィルタ4aとの距離は、1mm〜50mmである。第2検出器52は、検出面52aに入射した放射線を検出して、検出結果を、マルチチャンネルアナライザ53を介して、主制御部54へ入力する。主制御部54は、第1、第2検出器51,52から入力された検出結果に基づいて、捕集された微小粒子状物質および粗大粒子状物質から放射された放射線量を、それぞれ算出する。このように、第1検出器51、第2検出器52、マルチチャンネルアナライザ53、および主制御部54によって、放射線検出部5が構成される。
【0033】
主制御部54には、マルチチャンネルアナライザ53だけではなく、第1流路8内に設けられる、第1温度センサ10および第1圧力センサ11が接続され、第1流路8内の温度データや圧力データが入力される。また、分級器3による分級のために気流を発生させるブロア7や、ブロア7によって発生する第1流路8内の気流の流量を計測する第1流量センサ12も、主制御部54に接続される。
【0034】
また、主制御部54には、第2流路9内に設けられる、第2温度センサ13および第2圧力センサ14が接続され、第2流路9内の温度データや圧力データが入力される。また、ポンプ2によって発生する第2流路9内の気流の流量を制御する流量制御部15や、第2流路9内の気流の流量を計測する第2流量センサ16も、主制御部54に接続される。温度データや圧力データは、バーチャルインパクタである分級器3の制御に用いられる。すなわち、分級器3は、通過する空気を体積流量で制御する必要があるが、第1、第2流量センサ12,16は通過する空気の質量流量で測定するマスフロセンサであるので、体積流量に換算するために、温度データと圧力データとが用いられる。
【0035】
次に、分級器3について説明する。上述したように、本実施形態における分級器3はバーチャルインパクタであり、第1流路8内に設けられるブロア7によって発生する主流と、第2流路9内に設けられるポンプ2によって発生する2次流とによって、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分級する。第1流量センサ12による計測結果に基づいて、主制御部54によってブロア7が制御されることで、分級器3内に主流が発生する。ポンプ2は、一定の速度、たとえば、毎分数100リットルで第2流路9内の空気を吸引し、第2流量センサ16による計測結果に基づいて、主制御部54によって流量制御部15が制御されることで、分級器3内に主流よりも流量が小さい2次流が発生する。ブロア7およびポンプ2を経た空気は、それぞれ、第1、第2流路8,9の出口から、格納壁部1によって囲まれる空間の外へ排出される。なお、測定装置100には、ポンプ2によって空気を排出する際に発生する騒音を抑えるためのサイレンサ17が設けられる。
【0036】
図2を用いて、分級器3についてより詳細に説明する。分級器3は、ノズル部31と、集気部32と、外管部33とから構成される。ノズル部31は、サンプルインレット6から試料大気が送給される縮管部31aと、縮管部31aに連なり、軸線方向長さをT[cm]とする円筒部31bと、円筒部31bに連なり、試料大気を噴出する噴出口31cとを含む。噴出口31cは円形状であり、その内径をD0[cm]とする。噴出口31cから噴出される空気は、たとえば、レイノルズ数にして約10000に相当する線速(20000m/min〜25000m/min)で噴出される。集気部32は、円筒状の部材であり、図1に示す第2排出口3bと連通する。集気部32の軸線と円筒部31bの軸線とは一致し、集気部32の内径D1[cm]は内径D0よりも大きい。集気部32と噴出口31cとの距離をS[cm]とする。外管部33は、集気部32の外径よりも充分大きい内径の部材であり、ノズル部31および集気部32を収容し、図1に示す第1排出口3aと連通する。
【0037】
分級器3は、外管部33に流れ込む気流を主流とし、集気部32に流れ込む気流を2次流とすることで、外管部33に微小粒子状物質を集め、集気部32に粗大粒子状物質を集める。より詳細には、噴出口31cから噴出される粗大粒子状物質は、慣性力が比較的大きいので、噴出した粗大粒子状物質の大多数が、2次流によって、噴出口31cに対向する集気部32へ流れ込む。これに対して、噴出口31cから噴出される微小粒子状物質は、慣性力が比較的小さいので、流量が大きい主流の影響を大きく受け、噴出した微小粒子状物質の大多数が、外管部33へ流れ込む。
【0038】
外管部33に流れ込む気流が主流であるので、噴出口31cから噴出される試料大気の流量をQ0[リットル/min]とし、集気部32に流れ込む試料大気の流量をQ1[リットル/min]とすれば、外管部33に流れ込む試料大気の量は(Q0−Q1)となり、(Q0−Q1)>Q1となる。Q1/Q0や、内径D1/内径D0、距離S/内径D0、長さT/内径D0を適宜設定することで、ほとんどの微小粒子状物質を外管部33に集め、ほとんどの粗大粒子状物質を集気部32に集めることができる。
【0039】
たとえば、Q0=27.7リットル/min、Q1/Q0=0.1、内径D0=3.912mm、内径D1/内径D0=1.28、距離S/内径D0=1.0、長さT/内径D0=2.0の条件で分級器3を運転すると、図3に示すような分級曲線となる。図3は、横軸を粒径(μm)、縦軸を分級効率(%)としており、図3において実線で示すグラフX1は、外管部33に集められる浮遊粒子状物質の分級曲線を示し、破線で示すグラフX2は、集気部32に集められる浮遊粒子状物質の分級曲線を示す。図3に示すように、バーチャルインパクタである分級器3は、粒径2.5μmで完全に分級できるものではないけれども、2つの分級曲線は粒径2.5μmの位置で交わっており、粒径が2.5μm以下の浮遊粒子状物質の大部分が外管部33に集められ、粒径が2.5μmよりも大きい浮遊粒子状物質の大部分が集気部32に集められるので、微小粒子状物質と粗大粒子状物質とを分級できているといえる。
【0040】
本実施形態では、上記のように、ポンプ2によって、サンプルインレット6から試料大気が吸引され、浮遊粒子状物質が分級器3内に送給され、ポンプ2およびブロア7によって、分級が行われるように構成されている。すなわち、本実施形態では、試料大気の吸引と試料大気中の浮遊粒子状物質の分級とが連動しており、その結果、吸引された浮遊粒子状物質を、停滞無く連続自動的に分級することができる。
【0041】
次に、図1に戻って、テープ供給部4について説明する。テープ供給部4は、送出しローラ41と、巻取りローラ42と、カバーテープ送出しローラ43と、複数のガイドローラとを含んでいる。テープ状フィルタ4aは、送出しローラ41、巻取りローラ42、およびガイドローラに張設されている。テープ状フィルタ4aとしては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製ろ紙などのフッ素樹脂系メンブランフィルタが挙げられる。テープ状フィルタ4aの幅は、15mm〜200mm程度である。
【0042】
送出しローラ41は、一定時間ごと、たとえば、60分〜240分の時間間隔で、テープ状フィルタ4aを送り出す。したがって、その一定時間中、微小粒子状物質は、テープ状フィルタ4aの一箇所に捕集されて蓄積され続けることになり、テープ状フィルタ4aが送り出されると、別の箇所で捕集されることになる。粗大粒子状物質についても同様である。
【0043】
巻取りローラ42は、送出しローラ41から送り出されたテープ状フィルタ4aを弛まないように巻き取るとともに、カバーテープ送出しローラ43によって送り出されるカバーテープ4bも巻き取り、これにより、テープ状フィルタ4aの分級器3側の面がカバーテープ4bに被覆される。このようにカバーテープ4bで被覆することによって、測定装置100からテープ状フィルタ4aを回収するときに大気中の浮遊粒子状物質がテープ状フィルタ4aに付着するのを防ぐことができ、回収したテープ状フィルタ4aに捕集された浮遊粒子状物質の元素分析を精密に行うことができる。なお、テープ状フィルタ4aに浮遊粒子状物質を捕集した後、カバーテープ4bで被覆する前に、元素分析を行うように、測定装置100内に元素分析器を設けてもよい。元素分析器としては、蛍光X線分析器などが挙げられる。
【0044】
本実施形態では、上記のように、分級器3から排出される微小粒子状物質および粗大粒子状物質を捕集するためのテープ状フィルタ4aが一定時間ごとに送り出されるので、浮遊粒子状物質がテープ状フィルタ4aに蓄積され過ぎてテープ状フィルタ4aを試料大気中の気体が通過できなくなるという事態は生じない。したがって、本実施形態では、浮遊粒子状物質の分級と、分級後の微小粒子状物質および粗大粒子状物質の捕集とが連動しており、その結果、分級された浮遊粒子状物質を、停滞無く連続自動的に捕集することができる。
【0045】
次に、放射線検出部5について説明する。上述したように、放射線検出部5は、第1検出器51と第2検出器52とを備えており、第1、第2検出器51,52は、テープ状フィルタ4aに捕集された、放射性物質を含有する浮遊粒子状物質(以下では、「放射性浮遊粒子状物質」と称する)から放射される放射線を常時検出し、主制御部54に検出結果を常時入力する。第1検出器51と第2検出器52とは、同一の放射線検出器が用いられ、放射線検出器には、たとえば、シンチレーション検出器やゲルマニウム検出器などを使用することができる。本実施形態では、第1検出器51および第2検出器52は、ともに、シンチレーション検出器とマルチチャンネルディテクターとを組み合わせたものであり、放出されたエネルギーと放出された計数(カウント)からスペクトル解析を行う。スペクトル解析において、エネルギーレベルは放射性核種固有の値を持つことから、放射性核種の種類を同定することができる。たとえば、131Iは主として、80.2keV、284keV、637keV、723keVのエネルギーのγ線を放出する。次に、単位時間当たりの計数(cps)を使い、あらかじめ用意した放射線各種の標準線源から、検出器の計数効率を求めることにより、エネルギー毎の放射能Bqを求めることができる。標準線源のエネルギーレベルを表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
平時に観測されるγ線スペクトルは、天然放射性核種である40K、235U、ウラン系列(214Pb、214Bi、226Ra、234Pa等)、トリウム系列(208Tl、212Pb、212Bi、228Ac等)であり、また、宇宙線によって作られる7Beのピークである。次に、原子力発電所の事故等により観測されるのは、人工放射性核種であり、65Z、95Nb、99Mo、99mTc、113Sn、129Te、129mTe、131I、132I、133I、134Cs、136Cs、137Cs、140Ba、140La、203Pbなどがある。また、このとき、直接飛来するのは微小粒子状物質としてであり、一度、土壌に吸収され、砂塵として、再度、浮遊する場合は、粗大粒子状物質として存在することが知られている。
【0048】
図4(a)は、各標準線源を、テープ状フィルタ4aに所定の質量だけ付着させ、各標準線源から放射される放射線を検出し、天然放射性核種や宇宙線によって生じる放射性核種の影響を除いた後の、第1検出器51による測定結果を示すグラフである。図4(b)は、図4(a)の一部を拡大したグラフである。図4では、横軸をエネルギー[keV]とし、縦軸を計数[cps]としている。
【0049】
第1検出器51の計数効率を求めるために、図4の各ピークはガウス分布であり、ピークが複数重なっていると仮定して、図4(a)のグラフに対して、ピークの分離を行う。図5(a)は、ピーク分離後のグラフであり、図5(b)は、図5(a)の一部を拡大したグラフである。図5のグラフから、各標準線源について、単位質量あたりの計数[cps/g]を算出することができる。
【0050】
第1検出器51は、第1流路8内において、分級器3の第1排出口3aに対向して設けられており、上述したように、微小粒子状物質および試料大気中の気体の一部は分級器3の外管部33に集められて第1排出口3aから排出されるので、第1検出器51によって検出される放射線は、テープ状フィルタ4aに捕集された放射性の微小粒子状物質からの放射線と、テープ状フィルタ4aを通過して第1流路8内に流れ込む放射性の気体からの放射線とを合わせたものとなる。また、同様に、第2検出器52は、第1流路9内において、分級器3の第2排出口3bに対向して設けられており、上述したように、粗大粒子状物質および試料大気中の気体の一部は分級器3の集気部32に集められて第2排出口3bから排出されるので、第2検出器52によって検出される放射線は、テープ状フィルタ4aに捕集された放射性の粗大粒子状物質からの放射線と、テープ状フィルタ4aを通過して第2流路9内に流れ込む放射性の気体からの放射線とを合わせたものとなる。そこで、主制御部54は、第1検出器51による検出結果と、第2検出器52による検出結果とから、テープ状フィルタ4aを通過する気体からの放射線量を除く補正処理を行って、テープ状フィルタ4a上に捕集された放射性の微小粒子状物質の、単位面積あたりの放射能[μBq/cm2]と、放射性の粗大粒子状物質の、単位面積あたりの放射能とを算出する。そして、テープ状フィルタ4aを通過した空気の体積を計算することで、試料大気に含まれる微小粒子状物質(粗大粒子状物質)の単位体積あたりの放射能[μBq/m3]を算出できる。
【0051】
主制御部54は、さらに、反同時計数法を用いた補正処理によって、第1検出器51の検出結果および第2検出器52の検出結果に対する、宇宙線の影響を取り除く。宇宙線は、非常に高いエネルギーを有しており、測定装置100に宇宙線が入射すると、第1検出器51および第2検出器52の検出結果に、ほぼ同時刻に鋭いピークが現れる。そこで、主制御部54は、反同時計数法により、この鋭いピークを取り除くように、第1、第2検出器51,52の検出結果を補正している。
【0052】
本実施形態では、一定時間ごとに送り出されるテープ状フィルタ4aに、連続自動的に放射性浮遊粒子状物質を捕集することができ、捕集された放射性浮遊粒子状物質からの放射線は、第1、第2検出器51,52によって常時検出される。したがって、本実施形態では、放射性浮遊粒子状物質の捕集と、捕集された放射性浮遊粒子状物質からの放射線の検出とが連動しており、その結果、大気中の放射性浮遊粒子状物質を、連続自動的にモニタリングすることができる。
【0053】
図6は、測定装置100による測定処理を示すフローチャートである。図7A〜図7Fは、測定結果の一例を示す図である。図7A〜図7Fは、横軸をエネルギー[keV]とし、縦軸を計数[cps]とするグラフである。
【0054】
テープ状フィルタ4aの送り出し(ステップS1)の直後は、テープ状フィルタ4aには浮遊粒子状物質は捕集されていない。このときに、ブランクの測定を行う(ステップS2)。図7A(a)は、ステップS2における第1検出器51からの出力を示し、図7A(b)は、ステップS2における第2検出器52からの出力を示している。図7A(a)、図7A(b)に示すように、浮遊粒子状物質の捕集前は、ほぼ同じ出力結果となる。
【0055】
ブランクの測定後、分級器3によって、微小粒子状物質と粗大粒子状物質とを分級し(ステップS3)、それぞれ、テープ状フィルタ4aに捕集する(ステップS4)。そして、捕集を行いながら、第1、第2検出器51,52による測定を行う(ステップS5)。図7B(c)は、ステップS5における第1検出器51からの出力を示し、図7B(d)は、ステップS5における第2検出器52からの出力を示している。
【0056】
次に、ステップS5の測定結果から、ステップS2における測定結果を減算することで、天然放射性核種の影響を取り除く(ステップS6)。図7C(e)は、ステップS6における第1検出器51の抽出結果を示し、図7C(f)は、ステップS6における第2検出器52の抽出結果を示している。
【0057】
次に、ステップS6の抽出結果に対して、ノイズ除去処理を行う(ステップS7)。図7D(g)は、ステップS7における第1検出器51のノイズ除去処理結果を示し、図7D(h)は、ステップS7における第2検出器52のノイズ除去処理結果を示している。
【0058】
次に、ステップS7による2つのノイズ除去処理結果から、共通するピークを抽出する(ステップS8)。図7E(i)は、ステップS8における共通ピークの抽出結果を示している。
【0059】
次に、ステップS7のノイズ除去処理結果から、ステップS8におけるピーク抽出結果を減算する反同時計数法によって、宇宙線によって作られるガス状の放射性核種の影響を取り除く(ステップS9)。これによって、人体により危険性の高い、大気中の微小粒子状物質の放射能を抽出するとともに、土壌から再飛散した放射性核種である粗大粒子状物質の放射能を抽出することができる。図7F(j)は、ステップS9における第1検出器51についての反同時計数処理結果を示し、図7F(k)は、ステップS9における第2検出器52についての反同時計数処理結果を示している。
【0060】
その後、標準物質から求めた計数効率と、ステップS9の結果とに基づいて、放射性核種の同定を行い(ステップS10)、測定装置100の流量などから、各放射性核種について、大気中の放射能濃度を算出する(ステップS11)。
【0061】
本発明は、このように、微小粒子状物質と粗大粒子状物質とを分級し、さらに、反同時計数法によって、自然界に存在する放射性核種や、ガス状の放射性核種を分離した後に、大気中の微小粒子状物質および粗大粒子状物質の放射能濃度を算出することが可能である。なお、本発明としては、微小粒子状物質のみの放射能濃度を算出してもよいし、粗大粒子状物質のみの放射能濃度を算出してもよい。
【0062】
また、本発明としては、放射線としてγ線のみを検出してもよいし、γ線とβ線との両方を検出してもよい。図8は、γ線とβ線との両方を検出する測定装置100の全体図であり、図9は、この測定装置100における第1検出器51の模式図である。
【0063】
核分裂生成物の多くは、β-壊変を繰り返しながら安定核種に壊変する。このとき、大部分の核種は、β-線とγ線とを同時に放出するが、中にはβ-線しか放出しない核種も存在する。γ線のエネルギーは放射性核種固有の値を持つことから、γ線エネルギーを測定することで放射性核種の種類を同定することができるが、89Sr、90Sr、90Y、143Prの4核種はβ-線しか放出しない核種であるので、β線の検出も行うことが必要である。
【0064】
γ線とβ線との両方を検出する場合、第1検出器51および第2検出器52は、ともに、NaIシンチレーション検出器511と、プラスチックシンチレーション検出器512と、γ線用マルチチャンネルディテクター513と、β線用マルチチャンネルディテクター514とを組み合わせたものである。図9に示すように、テープ状フィルタ4aに捕集された浮遊粒子状物質から放出されたγ線A1は、テープ状フィルタ4aの下方にある第1検出器51に入射する。このとき、γ線A1はプラスチックシンチレーション検出器512を通過し、NaIシンチレーション検出器511に入射する。NaIシンチレーション検出器511にγ線A1が入射すると蛍光A2が発生し、その蛍光A2がγ線用マルチチャンネルディテクター513に入射する。γ線用マルチチャンネルディテクター513では、光電子増倍管の電流出力が積分型前置増幅器で電圧パルスに変換され、PHA(Pulse Height Analyzer)で波高分析することで、γ線のエネルギーレベルとカウント数とが測定される。テープ状フィルタ4aに捕集された浮遊粒子状物質から放出されたβ線A3は、プラスチックシンチレーション検出器512に入射する。プラスチックシンチレーション検出器512にβ線が入射すると蛍光A4が発生し、その蛍光A4がβ線用マルチチャンネルディテクター514に入射し、γ線用マルチチャンネルディテクター513と同様にして、β線のエネルギーレベルとカウント数とが測定される。このように構成することで、γ線とβ線との両方を検出することが可能である。
【0065】
また、これに限らず、放射線検出部5は、α線またはβ線の少なくとも一方と、γ線とを検出するように構成されてもよい。たとえば、α線とγ線とを検出するように構成されてもよいし、α線、β線、およびγ線のすべてを検出するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 格納壁部
2 ポンプ
3 分級器
4 テープ供給部
5 放射線検出部
6 サンプルインレット
7 ブロア
51 第1検出器
52 第2検出器
54 主制御部
100 放射性浮遊粒子状物質測定装置(測定装置)
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性浮遊粒子状物質測定装置および放射性浮遊粒子状物質測定方法に関し、特に、大気中に浮遊する放射性物質を自動的に高時間分解能で連続的に計測することを目的とし、大気中に浮遊している浮遊粒子状物質を分級した後、フィルタに捕集し、捕集された放射性の浮遊粒子状物質からの放射線を放射線検出器で検出して、大気中に存在する粗大粒子および微小粒子の放射性物質の濃度を測定・監視することを可能とする装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の放射性浮遊粒子状物質測定装置は、放射性物質取扱い施設のモニタリングポイントに設置され、大気中の浮遊粒子状物質からの放射線を放射線検出器で検出して、大気中に存在する放射能濃度を測定・監視していた。また、従来から、サンプラーによって大気中の浮遊粒子状物質を持ち帰って分析することも行われていた。
【0003】
特許文献1〜6には、従来の放射性浮遊粒子状物質測定装置が記載されている。また、特許文献7〜9には、放射性の浮遊粒子状物質ではなく、放射性の気体からの放射線を検出する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−098260号公報
【特許文献2】特開2002−250771号公報
【特許文献3】特開2003−315462号公報
【特許文献4】特開2010−019724号公報
【特許文献5】特開2010−054447号公報
【特許文献6】特開2006−126124号公報
【特許文献7】特開2010−145319号公報
【特許文献8】特開2010−237232号公報
【特許文献9】特開2011−128052号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
1960年代から、大気の汚染について、モニタリングの結果と疫学データとにより、発生源を中心として風向きによって汚染が局在化することが知られており、モニタリングについては1時間に1回程度の時間的に密な観測が必要であると認識されている。放射性物質による大気の汚染については、現在、モニタリングスポットにおける線量のモニタリングと、サンプラーによる持ち帰り分析とがなされているが、サンプラーによる持ち帰り分析は、せいぜい、一日に一回程度の時間分解能での測定であり、気象条件を考えた場合、この時間分解能は低過ぎるという問題がある。
【0006】
また、気流とともに高濃度の汚染物質を含んだ気団の飛来のためか、地域的に局在化した放射性物質による汚染が懸念されるので、空間的に密なモニタリングが望まれている。しかしながら、サンプラーによる持ち帰り分析は、人手が掛かり、コストが高くなるため、観測地点が非常に少ないのが現状である。
【0007】
人は15m3/dayの空気を呼吸し、非常に高濃度の放射性浮遊粒子状物質を数時間吸引することで、大きなダメージを受けることが心配される。また、どのような半減期の放射性元素によって被曝したか、体の中でどこに濃縮されていくのか、また、人体がどのような速度で排出できるか、物質によって大きく異なり、人体への影響が全く異なることが予想される。
【0008】
さらに、浮遊粒子状物質は、人の健康に悪影響を及ぼすものとして研究されており、浮遊粒子状物質のうち、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質は、特に悪影響が大きいと考えられている。その理由は、浮遊粒子状物質のうち、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質は、鼻や気道の途中で取り除かれるのに対して、微小粒子状物質は呼吸によって肺の奥深くに沈降し、一度、沈降してしまうと、排出することが困難だからである。したがって、大気中の浮遊粒子状物質からの放射線量が全体として同じ場合であっても、その放射線量が粗大粒子状物質に由来している場合に比べて、その放射線量が微小粒子状物質に由来している場合の方が、人体にとって危険性が高いと考えられる。
【0009】
放射性の微小粒子状物質による内部被曝の研究はほとんど行われていないけれども、微小粒子状物質の発癌性の研究や心血管疾患の疫学調査は行われており、放射性の微小粒子状物質を一度吸引してしまうと、長期間にわたって内部被曝をすることが予想されるので、今後の疫学調査によって、その危険性が明らかになると思われる。ところが、放射性浮遊粒子状物質については、疫学データ、毒性のデータについてもほとんどなく、観測データも少なく、非常に、科学的知見が少ないせいか、現在のところ、放射性浮遊粒子状物質を、粒径を分けて、自動的にモニタリングする装置はない。
【0010】
たとえば、特許文献1〜9に記載のような従来の測定装置は、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて放射線を検出することを行っておらず、検出された放射線が、放射性の微小粒子状物質に由来するのか、それとも放射性の粗大粒子状物質に由来するのかを、判断することができない。
【0011】
本発明は、上述した課題を解決するためのものであり、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、微小粒子状物質および粗大粒子状物質それぞれから放射される放射線を検出することができる放射性浮遊粒子状物質測定装置および放射性浮遊粒子状物質測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線のいずれか一方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置である。
【0013】
また本発明は、内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置である。
【0014】
また本発明は、前記分級部は、前記吸引部に連動して分級を行い、
前記捕集部は、前記分級部に連動して捕集を行い、
前記放射線検出部は、前記捕集部に連動して放射線の検出を行うことを特徴とする。
【0015】
また本発明は、前記放射線検出部は、シンチレーション検出器により、検出した放射線のエネルギーおよびエネルギーごとの計数を測定することを特徴とする。
【0016】
また本発明は、前記放射線検出部は、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を、同時に検出し、反同時計数法により、それぞれの放射線の検出結果を補正することを特徴とする。
【0017】
また本発明は、前記放射線検出部は、放射線として、α線またはβ線の少なくとも一方と、γ線とを検出することを特徴とする。
【0018】
また本発明は、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引するステップと、
吸引された浮遊粒子状物質から、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質を分離して捕集するステップと、
捕集された微小粒子状物質から放射される放射線を検出するステップとを含むことを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定方法である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、いずれか一方から放射される放射線を検出することができる。また本発明によれば、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分けて、放射線をそれぞれ検出することができ、人体により危険性の高い、放射性の微小粒子状物質からの放射線を検出することができるとともに、放射性の粗大粒子状物質からの放射線も検出するので、大気中の浮遊粒子状物質全体についての放射線を検出することができる。
【0020】
また本発明によれば、吸引部、分級部、捕集部、および放射線量測定部が、互いに連動しているので、大気中の放射線浮遊粒子状物質を連続自動的にモニタリングすることができる。
【0021】
また本発明によれば、放射線検出部は、シンチレーション検出器により、検出した放射線のエネルギーおよびエネルギーごとの計数を測定するので、放射性核種の同定を行うことができる。
【0022】
また本発明によれば、放射線検出部は反同時計数法により検出結果を補正するので、放射性浮遊粒子状物質測定装置に入射する宇宙線の影響を軽減することができる。
【0023】
また本発明によれば、放射線検出部は、放射線として、γ線を検出することができ、さらに、α線またはβ線の少なくとも一方も検出することができる。
【0024】
また本発明によれば、大気中の浮遊粒子状物質のうち、人体により危険性の高い、微小粒子状物質から放射される放射線を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】測定装置100の構成を示す図である。
【図2】分級器3についてより詳細に説明するための図である。
【図3】分級器3を所定の条件で運転したときの分級曲線を示す図である。
【図4】各標準線源を使用したときの第1検出器51による測定結果を示すグラフである。
【図5】図4のグラフから、各ピークを分離したときのグラフである。
【図6】測定装置100による測定処理を示すフローチャートである。
【図7A】測定結果の一例を示す図である。
【図7B】測定結果の一例を示す図である。
【図7C】測定結果の一例を示す図である。
【図7D】測定結果の一例を示す図である。
【図7E】測定結果の一例を示す図である。
【図7F】測定結果の一例を示す図である。
【図8】γ線とβ線との両方を検出する測定装置100の全体図である。
【図9】γ線とβ線との両方を検出する測定装置100における第1検出器51の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係る放射性浮遊粒子状物質測定装置100(以下では、単に、「測定装置100」と称する)について説明する。図1は、測定装置100の構成を示す図である。図1では、紙面上側を鉛直方向上側とし、紙面下側を鉛直方向下側とする。
【0027】
測定装置100は格納壁部1を備えており、格納壁部1によって内部空間が形成され、その内部空間に、ポンプ2、分級器3、テープ供給部4、および放射線検出部5が収容される。また、格納壁部1によって囲まれる空間と外部の空間とを連通するように、サンプルインレット6が設けられる。格納壁部1の材質としては、どのようなものであってもよいけれども、放射線が透過し難いコンクリート、鉄、鉛などが好ましい。
【0028】
測定装置100は、概略的には、空気を吸引し減圧する真空ポンプであるポンプ2と、ブロア7とによって、サンプルインレット6から試料大気を吸引して、吸引した試料大気中を浮遊する浮遊粒子状物質(Suspended Particulate Matter)を、分級器3によって、粗大粒子状物質と微小粒子状物質とに分級した後、テープ供給部4によって供給されるテープ状フィルタ4aにより、粗大粒子状物質と微小粒子状物質とを分けて捕集し、放射線検出部5によって、捕集された粗大粒子状物質および微小粒子状物質から放射される放射線を、それぞれ検出する装置である。ここで、粗大粒子状物質とは、浮遊粒子状物質のうち、空気力学的粒子径(以下では、単に、「粒径」と称する)が2.5μmよりも大きい物質であり、微小粒子状物質とは、浮遊粒子状物質のうち、粒径が2.5μm以下の物質である。
【0029】
サンプルインレット6は、浮遊粒子状物質を透過させるための慣性衝突型の分級器(PM10インパクタ)と一体に構成されるPM10インレットであってもよいし、分級器を含まない、10μm以上の粒子も取り込むTSPインレットであってもよい。サンプルインレット6は、試料大気中の浮遊粒子状物質と気体とを分級器3へ送給する。分級器3には、サイクロン式分級器、インパクタ、バーチャルインパクタなどが用いられる。本実施形態では、分級器3はバーチャルインパクタであり、空気を吸引するポンプ2およびブロア7によって気流を発生させることで、浮遊粒子状物質を粗大粒子状物質と微小粒子状物質とに分級する。微小粒子状物質は、分級器3によって分級され、試料大気中の気体とともに、分級器3の第1排出口3aから排出されて、第1流路8へ向かう。また、分級器3によって、試料大気中の気体とともに、粗大粒子状物質を主とする浮遊粒子状物質が、分級器3の第2排出口3bから排出されて、第2流路9へ向かう。
【0030】
第1排出口3aと第1流路8との間、および、第2排出口3bと第2流路9との間には、第1、第2排出口3a,3bに面するように、テープ供給部4によって1本のテープ状フィルタ4aが張設されており、このテープ状フィルタ4aに粗大粒子状物質と微小粒子状物質とが捕集される。テープ状フィルタ4aは、空気をよく通過させることができるとともに、粒子を効率よく捕集することができるようになっている。第1、第2排出口3a,3bから排出された空気は、このテープ状フィルタ4aを通過して、それぞれ、第1、第2流路8,9へ流れ込む。このときの微小粒子状物質の第1流路8側の流速は200L/minであり、粗大粒子状物質の第2流路9側の流速20L/minである。このように、大きな流量で吸引する必要がある場合は、ブロア7が用いられ、小さい流量で吸引する場合は、ポンプ2が用いられる。
【0031】
テープ状フィルタ4aは、異なる部分において、第1、第2排出口3a,3bに、10mm程度の距離で近接している。また、テープ状フィルタ4aを挟んで第1、第2排出口3a,3bとは反対側、すなわちテープ状フィルタ4aの裏側には、第1、第2流路8,9の入口が設けられている。
【0032】
第1流路8内には、テープ状フィルタ4aを挟んで第1排出口3aに対向するように、第1検出器51が設けられる。第1検出器51は、検出面51aがテープ状フィルタ4aの裏側に面しており、検出面51aとテープ状フィルタ4aとの距離は、1mm〜50mmである。第1検出器51は、検出面51aに入射した放射線を検出して、検出結果を、マルチチャンネルアナライザ53を介して、主制御部54へ入力する。同様に、第2流路9内にも、テープ状フィルタ4aを挟んで第2排出口3bに対向するように、第2検出器52が設けられる。第2検出器52は、検出面52aがテープ状フィルタ4aの裏側に面しており、検出面52aとテープ状フィルタ4aとの距離は、1mm〜50mmである。第2検出器52は、検出面52aに入射した放射線を検出して、検出結果を、マルチチャンネルアナライザ53を介して、主制御部54へ入力する。主制御部54は、第1、第2検出器51,52から入力された検出結果に基づいて、捕集された微小粒子状物質および粗大粒子状物質から放射された放射線量を、それぞれ算出する。このように、第1検出器51、第2検出器52、マルチチャンネルアナライザ53、および主制御部54によって、放射線検出部5が構成される。
【0033】
主制御部54には、マルチチャンネルアナライザ53だけではなく、第1流路8内に設けられる、第1温度センサ10および第1圧力センサ11が接続され、第1流路8内の温度データや圧力データが入力される。また、分級器3による分級のために気流を発生させるブロア7や、ブロア7によって発生する第1流路8内の気流の流量を計測する第1流量センサ12も、主制御部54に接続される。
【0034】
また、主制御部54には、第2流路9内に設けられる、第2温度センサ13および第2圧力センサ14が接続され、第2流路9内の温度データや圧力データが入力される。また、ポンプ2によって発生する第2流路9内の気流の流量を制御する流量制御部15や、第2流路9内の気流の流量を計測する第2流量センサ16も、主制御部54に接続される。温度データや圧力データは、バーチャルインパクタである分級器3の制御に用いられる。すなわち、分級器3は、通過する空気を体積流量で制御する必要があるが、第1、第2流量センサ12,16は通過する空気の質量流量で測定するマスフロセンサであるので、体積流量に換算するために、温度データと圧力データとが用いられる。
【0035】
次に、分級器3について説明する。上述したように、本実施形態における分級器3はバーチャルインパクタであり、第1流路8内に設けられるブロア7によって発生する主流と、第2流路9内に設けられるポンプ2によって発生する2次流とによって、浮遊粒子状物質を微小粒子状物質と粗大粒子状物質とに分級する。第1流量センサ12による計測結果に基づいて、主制御部54によってブロア7が制御されることで、分級器3内に主流が発生する。ポンプ2は、一定の速度、たとえば、毎分数100リットルで第2流路9内の空気を吸引し、第2流量センサ16による計測結果に基づいて、主制御部54によって流量制御部15が制御されることで、分級器3内に主流よりも流量が小さい2次流が発生する。ブロア7およびポンプ2を経た空気は、それぞれ、第1、第2流路8,9の出口から、格納壁部1によって囲まれる空間の外へ排出される。なお、測定装置100には、ポンプ2によって空気を排出する際に発生する騒音を抑えるためのサイレンサ17が設けられる。
【0036】
図2を用いて、分級器3についてより詳細に説明する。分級器3は、ノズル部31と、集気部32と、外管部33とから構成される。ノズル部31は、サンプルインレット6から試料大気が送給される縮管部31aと、縮管部31aに連なり、軸線方向長さをT[cm]とする円筒部31bと、円筒部31bに連なり、試料大気を噴出する噴出口31cとを含む。噴出口31cは円形状であり、その内径をD0[cm]とする。噴出口31cから噴出される空気は、たとえば、レイノルズ数にして約10000に相当する線速(20000m/min〜25000m/min)で噴出される。集気部32は、円筒状の部材であり、図1に示す第2排出口3bと連通する。集気部32の軸線と円筒部31bの軸線とは一致し、集気部32の内径D1[cm]は内径D0よりも大きい。集気部32と噴出口31cとの距離をS[cm]とする。外管部33は、集気部32の外径よりも充分大きい内径の部材であり、ノズル部31および集気部32を収容し、図1に示す第1排出口3aと連通する。
【0037】
分級器3は、外管部33に流れ込む気流を主流とし、集気部32に流れ込む気流を2次流とすることで、外管部33に微小粒子状物質を集め、集気部32に粗大粒子状物質を集める。より詳細には、噴出口31cから噴出される粗大粒子状物質は、慣性力が比較的大きいので、噴出した粗大粒子状物質の大多数が、2次流によって、噴出口31cに対向する集気部32へ流れ込む。これに対して、噴出口31cから噴出される微小粒子状物質は、慣性力が比較的小さいので、流量が大きい主流の影響を大きく受け、噴出した微小粒子状物質の大多数が、外管部33へ流れ込む。
【0038】
外管部33に流れ込む気流が主流であるので、噴出口31cから噴出される試料大気の流量をQ0[リットル/min]とし、集気部32に流れ込む試料大気の流量をQ1[リットル/min]とすれば、外管部33に流れ込む試料大気の量は(Q0−Q1)となり、(Q0−Q1)>Q1となる。Q1/Q0や、内径D1/内径D0、距離S/内径D0、長さT/内径D0を適宜設定することで、ほとんどの微小粒子状物質を外管部33に集め、ほとんどの粗大粒子状物質を集気部32に集めることができる。
【0039】
たとえば、Q0=27.7リットル/min、Q1/Q0=0.1、内径D0=3.912mm、内径D1/内径D0=1.28、距離S/内径D0=1.0、長さT/内径D0=2.0の条件で分級器3を運転すると、図3に示すような分級曲線となる。図3は、横軸を粒径(μm)、縦軸を分級効率(%)としており、図3において実線で示すグラフX1は、外管部33に集められる浮遊粒子状物質の分級曲線を示し、破線で示すグラフX2は、集気部32に集められる浮遊粒子状物質の分級曲線を示す。図3に示すように、バーチャルインパクタである分級器3は、粒径2.5μmで完全に分級できるものではないけれども、2つの分級曲線は粒径2.5μmの位置で交わっており、粒径が2.5μm以下の浮遊粒子状物質の大部分が外管部33に集められ、粒径が2.5μmよりも大きい浮遊粒子状物質の大部分が集気部32に集められるので、微小粒子状物質と粗大粒子状物質とを分級できているといえる。
【0040】
本実施形態では、上記のように、ポンプ2によって、サンプルインレット6から試料大気が吸引され、浮遊粒子状物質が分級器3内に送給され、ポンプ2およびブロア7によって、分級が行われるように構成されている。すなわち、本実施形態では、試料大気の吸引と試料大気中の浮遊粒子状物質の分級とが連動しており、その結果、吸引された浮遊粒子状物質を、停滞無く連続自動的に分級することができる。
【0041】
次に、図1に戻って、テープ供給部4について説明する。テープ供給部4は、送出しローラ41と、巻取りローラ42と、カバーテープ送出しローラ43と、複数のガイドローラとを含んでいる。テープ状フィルタ4aは、送出しローラ41、巻取りローラ42、およびガイドローラに張設されている。テープ状フィルタ4aとしては、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)製ろ紙などのフッ素樹脂系メンブランフィルタが挙げられる。テープ状フィルタ4aの幅は、15mm〜200mm程度である。
【0042】
送出しローラ41は、一定時間ごと、たとえば、60分〜240分の時間間隔で、テープ状フィルタ4aを送り出す。したがって、その一定時間中、微小粒子状物質は、テープ状フィルタ4aの一箇所に捕集されて蓄積され続けることになり、テープ状フィルタ4aが送り出されると、別の箇所で捕集されることになる。粗大粒子状物質についても同様である。
【0043】
巻取りローラ42は、送出しローラ41から送り出されたテープ状フィルタ4aを弛まないように巻き取るとともに、カバーテープ送出しローラ43によって送り出されるカバーテープ4bも巻き取り、これにより、テープ状フィルタ4aの分級器3側の面がカバーテープ4bに被覆される。このようにカバーテープ4bで被覆することによって、測定装置100からテープ状フィルタ4aを回収するときに大気中の浮遊粒子状物質がテープ状フィルタ4aに付着するのを防ぐことができ、回収したテープ状フィルタ4aに捕集された浮遊粒子状物質の元素分析を精密に行うことができる。なお、テープ状フィルタ4aに浮遊粒子状物質を捕集した後、カバーテープ4bで被覆する前に、元素分析を行うように、測定装置100内に元素分析器を設けてもよい。元素分析器としては、蛍光X線分析器などが挙げられる。
【0044】
本実施形態では、上記のように、分級器3から排出される微小粒子状物質および粗大粒子状物質を捕集するためのテープ状フィルタ4aが一定時間ごとに送り出されるので、浮遊粒子状物質がテープ状フィルタ4aに蓄積され過ぎてテープ状フィルタ4aを試料大気中の気体が通過できなくなるという事態は生じない。したがって、本実施形態では、浮遊粒子状物質の分級と、分級後の微小粒子状物質および粗大粒子状物質の捕集とが連動しており、その結果、分級された浮遊粒子状物質を、停滞無く連続自動的に捕集することができる。
【0045】
次に、放射線検出部5について説明する。上述したように、放射線検出部5は、第1検出器51と第2検出器52とを備えており、第1、第2検出器51,52は、テープ状フィルタ4aに捕集された、放射性物質を含有する浮遊粒子状物質(以下では、「放射性浮遊粒子状物質」と称する)から放射される放射線を常時検出し、主制御部54に検出結果を常時入力する。第1検出器51と第2検出器52とは、同一の放射線検出器が用いられ、放射線検出器には、たとえば、シンチレーション検出器やゲルマニウム検出器などを使用することができる。本実施形態では、第1検出器51および第2検出器52は、ともに、シンチレーション検出器とマルチチャンネルディテクターとを組み合わせたものであり、放出されたエネルギーと放出された計数(カウント)からスペクトル解析を行う。スペクトル解析において、エネルギーレベルは放射性核種固有の値を持つことから、放射性核種の種類を同定することができる。たとえば、131Iは主として、80.2keV、284keV、637keV、723keVのエネルギーのγ線を放出する。次に、単位時間当たりの計数(cps)を使い、あらかじめ用意した放射線各種の標準線源から、検出器の計数効率を求めることにより、エネルギー毎の放射能Bqを求めることができる。標準線源のエネルギーレベルを表1に示す。
【0046】
【表1】
【0047】
平時に観測されるγ線スペクトルは、天然放射性核種である40K、235U、ウラン系列(214Pb、214Bi、226Ra、234Pa等)、トリウム系列(208Tl、212Pb、212Bi、228Ac等)であり、また、宇宙線によって作られる7Beのピークである。次に、原子力発電所の事故等により観測されるのは、人工放射性核種であり、65Z、95Nb、99Mo、99mTc、113Sn、129Te、129mTe、131I、132I、133I、134Cs、136Cs、137Cs、140Ba、140La、203Pbなどがある。また、このとき、直接飛来するのは微小粒子状物質としてであり、一度、土壌に吸収され、砂塵として、再度、浮遊する場合は、粗大粒子状物質として存在することが知られている。
【0048】
図4(a)は、各標準線源を、テープ状フィルタ4aに所定の質量だけ付着させ、各標準線源から放射される放射線を検出し、天然放射性核種や宇宙線によって生じる放射性核種の影響を除いた後の、第1検出器51による測定結果を示すグラフである。図4(b)は、図4(a)の一部を拡大したグラフである。図4では、横軸をエネルギー[keV]とし、縦軸を計数[cps]としている。
【0049】
第1検出器51の計数効率を求めるために、図4の各ピークはガウス分布であり、ピークが複数重なっていると仮定して、図4(a)のグラフに対して、ピークの分離を行う。図5(a)は、ピーク分離後のグラフであり、図5(b)は、図5(a)の一部を拡大したグラフである。図5のグラフから、各標準線源について、単位質量あたりの計数[cps/g]を算出することができる。
【0050】
第1検出器51は、第1流路8内において、分級器3の第1排出口3aに対向して設けられており、上述したように、微小粒子状物質および試料大気中の気体の一部は分級器3の外管部33に集められて第1排出口3aから排出されるので、第1検出器51によって検出される放射線は、テープ状フィルタ4aに捕集された放射性の微小粒子状物質からの放射線と、テープ状フィルタ4aを通過して第1流路8内に流れ込む放射性の気体からの放射線とを合わせたものとなる。また、同様に、第2検出器52は、第1流路9内において、分級器3の第2排出口3bに対向して設けられており、上述したように、粗大粒子状物質および試料大気中の気体の一部は分級器3の集気部32に集められて第2排出口3bから排出されるので、第2検出器52によって検出される放射線は、テープ状フィルタ4aに捕集された放射性の粗大粒子状物質からの放射線と、テープ状フィルタ4aを通過して第2流路9内に流れ込む放射性の気体からの放射線とを合わせたものとなる。そこで、主制御部54は、第1検出器51による検出結果と、第2検出器52による検出結果とから、テープ状フィルタ4aを通過する気体からの放射線量を除く補正処理を行って、テープ状フィルタ4a上に捕集された放射性の微小粒子状物質の、単位面積あたりの放射能[μBq/cm2]と、放射性の粗大粒子状物質の、単位面積あたりの放射能とを算出する。そして、テープ状フィルタ4aを通過した空気の体積を計算することで、試料大気に含まれる微小粒子状物質(粗大粒子状物質)の単位体積あたりの放射能[μBq/m3]を算出できる。
【0051】
主制御部54は、さらに、反同時計数法を用いた補正処理によって、第1検出器51の検出結果および第2検出器52の検出結果に対する、宇宙線の影響を取り除く。宇宙線は、非常に高いエネルギーを有しており、測定装置100に宇宙線が入射すると、第1検出器51および第2検出器52の検出結果に、ほぼ同時刻に鋭いピークが現れる。そこで、主制御部54は、反同時計数法により、この鋭いピークを取り除くように、第1、第2検出器51,52の検出結果を補正している。
【0052】
本実施形態では、一定時間ごとに送り出されるテープ状フィルタ4aに、連続自動的に放射性浮遊粒子状物質を捕集することができ、捕集された放射性浮遊粒子状物質からの放射線は、第1、第2検出器51,52によって常時検出される。したがって、本実施形態では、放射性浮遊粒子状物質の捕集と、捕集された放射性浮遊粒子状物質からの放射線の検出とが連動しており、その結果、大気中の放射性浮遊粒子状物質を、連続自動的にモニタリングすることができる。
【0053】
図6は、測定装置100による測定処理を示すフローチャートである。図7A〜図7Fは、測定結果の一例を示す図である。図7A〜図7Fは、横軸をエネルギー[keV]とし、縦軸を計数[cps]とするグラフである。
【0054】
テープ状フィルタ4aの送り出し(ステップS1)の直後は、テープ状フィルタ4aには浮遊粒子状物質は捕集されていない。このときに、ブランクの測定を行う(ステップS2)。図7A(a)は、ステップS2における第1検出器51からの出力を示し、図7A(b)は、ステップS2における第2検出器52からの出力を示している。図7A(a)、図7A(b)に示すように、浮遊粒子状物質の捕集前は、ほぼ同じ出力結果となる。
【0055】
ブランクの測定後、分級器3によって、微小粒子状物質と粗大粒子状物質とを分級し(ステップS3)、それぞれ、テープ状フィルタ4aに捕集する(ステップS4)。そして、捕集を行いながら、第1、第2検出器51,52による測定を行う(ステップS5)。図7B(c)は、ステップS5における第1検出器51からの出力を示し、図7B(d)は、ステップS5における第2検出器52からの出力を示している。
【0056】
次に、ステップS5の測定結果から、ステップS2における測定結果を減算することで、天然放射性核種の影響を取り除く(ステップS6)。図7C(e)は、ステップS6における第1検出器51の抽出結果を示し、図7C(f)は、ステップS6における第2検出器52の抽出結果を示している。
【0057】
次に、ステップS6の抽出結果に対して、ノイズ除去処理を行う(ステップS7)。図7D(g)は、ステップS7における第1検出器51のノイズ除去処理結果を示し、図7D(h)は、ステップS7における第2検出器52のノイズ除去処理結果を示している。
【0058】
次に、ステップS7による2つのノイズ除去処理結果から、共通するピークを抽出する(ステップS8)。図7E(i)は、ステップS8における共通ピークの抽出結果を示している。
【0059】
次に、ステップS7のノイズ除去処理結果から、ステップS8におけるピーク抽出結果を減算する反同時計数法によって、宇宙線によって作られるガス状の放射性核種の影響を取り除く(ステップS9)。これによって、人体により危険性の高い、大気中の微小粒子状物質の放射能を抽出するとともに、土壌から再飛散した放射性核種である粗大粒子状物質の放射能を抽出することができる。図7F(j)は、ステップS9における第1検出器51についての反同時計数処理結果を示し、図7F(k)は、ステップS9における第2検出器52についての反同時計数処理結果を示している。
【0060】
その後、標準物質から求めた計数効率と、ステップS9の結果とに基づいて、放射性核種の同定を行い(ステップS10)、測定装置100の流量などから、各放射性核種について、大気中の放射能濃度を算出する(ステップS11)。
【0061】
本発明は、このように、微小粒子状物質と粗大粒子状物質とを分級し、さらに、反同時計数法によって、自然界に存在する放射性核種や、ガス状の放射性核種を分離した後に、大気中の微小粒子状物質および粗大粒子状物質の放射能濃度を算出することが可能である。なお、本発明としては、微小粒子状物質のみの放射能濃度を算出してもよいし、粗大粒子状物質のみの放射能濃度を算出してもよい。
【0062】
また、本発明としては、放射線としてγ線のみを検出してもよいし、γ線とβ線との両方を検出してもよい。図8は、γ線とβ線との両方を検出する測定装置100の全体図であり、図9は、この測定装置100における第1検出器51の模式図である。
【0063】
核分裂生成物の多くは、β-壊変を繰り返しながら安定核種に壊変する。このとき、大部分の核種は、β-線とγ線とを同時に放出するが、中にはβ-線しか放出しない核種も存在する。γ線のエネルギーは放射性核種固有の値を持つことから、γ線エネルギーを測定することで放射性核種の種類を同定することができるが、89Sr、90Sr、90Y、143Prの4核種はβ-線しか放出しない核種であるので、β線の検出も行うことが必要である。
【0064】
γ線とβ線との両方を検出する場合、第1検出器51および第2検出器52は、ともに、NaIシンチレーション検出器511と、プラスチックシンチレーション検出器512と、γ線用マルチチャンネルディテクター513と、β線用マルチチャンネルディテクター514とを組み合わせたものである。図9に示すように、テープ状フィルタ4aに捕集された浮遊粒子状物質から放出されたγ線A1は、テープ状フィルタ4aの下方にある第1検出器51に入射する。このとき、γ線A1はプラスチックシンチレーション検出器512を通過し、NaIシンチレーション検出器511に入射する。NaIシンチレーション検出器511にγ線A1が入射すると蛍光A2が発生し、その蛍光A2がγ線用マルチチャンネルディテクター513に入射する。γ線用マルチチャンネルディテクター513では、光電子増倍管の電流出力が積分型前置増幅器で電圧パルスに変換され、PHA(Pulse Height Analyzer)で波高分析することで、γ線のエネルギーレベルとカウント数とが測定される。テープ状フィルタ4aに捕集された浮遊粒子状物質から放出されたβ線A3は、プラスチックシンチレーション検出器512に入射する。プラスチックシンチレーション検出器512にβ線が入射すると蛍光A4が発生し、その蛍光A4がβ線用マルチチャンネルディテクター514に入射し、γ線用マルチチャンネルディテクター513と同様にして、β線のエネルギーレベルとカウント数とが測定される。このように構成することで、γ線とβ線との両方を検出することが可能である。
【0065】
また、これに限らず、放射線検出部5は、α線またはβ線の少なくとも一方と、γ線とを検出するように構成されてもよい。たとえば、α線とγ線とを検出するように構成されてもよいし、α線、β線、およびγ線のすべてを検出するように構成されてもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 格納壁部
2 ポンプ
3 分級器
4 テープ供給部
5 放射線検出部
6 サンプルインレット
7 ブロア
51 第1検出器
52 第2検出器
54 主制御部
100 放射性浮遊粒子状物質測定装置(測定装置)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線のいずれか一方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項2】
内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項3】
前記分級部は、前記吸引部に連動して分級を行い、
前記捕集部は、前記分級部に連動して捕集を行い、
前記放射線検出部は、前記捕集部に連動して放射線の検出を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項4】
前記放射線検出部は、シンチレーション検出器により、検出した放射線のエネルギーおよびエネルギーごとの計数を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項5】
前記放射線検出部は、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を、同時に検出し、反同時計数法により、それぞれの放射線の検出結果を補正することを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3もしくは4に記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項6】
前記放射線検出部は、放射線として、α線またはβ線の少なくとも一方と、γ線とを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項7】
浮遊粒子状物質を含む大気を吸引するステップと、
吸引された浮遊粒子状物質から、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質を分離して捕集するステップと、
捕集された微小粒子状物質から放射される放射線を検出するステップとを含むことを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定方法。
【請求項1】
内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線のいずれか一方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項2】
内部空間を有する格納部と、
前記格納部の外から前記内部空間へ、浮遊粒子状物質を含む大気を吸引する吸引部と、
前記内部空間に設けられ、前記吸引部によって吸引された浮遊粒子状物質を、粒径が2.5μmよりも大きい粗大粒子状物質と、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質とに分級する分級部と、
前記内部空間に設けられ、前記分級部によって分級された粗大粒子状物質および微小粒子状物質を、それぞれ分けて捕集する捕集部と、
前記内部空間に設けられ、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を検出する放射線検出部とを備えることを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項3】
前記分級部は、前記吸引部に連動して分級を行い、
前記捕集部は、前記分級部に連動して捕集を行い、
前記放射線検出部は、前記捕集部に連動して放射線の検出を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項4】
前記放射線検出部は、シンチレーション検出器により、検出した放射線のエネルギーおよびエネルギーごとの計数を測定することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項5】
前記放射線検出部は、前記捕集部によって捕集された粗大粒子状物質から放射される放射線および微小粒子状物質から放射される放射線の両方を、同時に検出し、反同時計数法により、それぞれの放射線の検出結果を補正することを特徴とする請求項2または請求項2を引用する請求項3もしくは4に記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項6】
前記放射線検出部は、放射線として、α線またはβ線の少なくとも一方と、γ線とを検出することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の放射性浮遊粒子状物質測定装置。
【請求項7】
浮遊粒子状物質を含む大気を吸引するステップと、
吸引された浮遊粒子状物質から、粒径が2.5μm以下の微小粒子状物質を分離して捕集するステップと、
捕集された微小粒子状物質から放射される放射線を検出するステップとを含むことを特徴とする放射性浮遊粒子状物質測定方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図6】
【図4】
【図5】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図6】
【図4】
【図5】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図7E】
【図7F】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開2013−61254(P2013−61254A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−200046(P2011−200046)
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(591081321)紀本電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月13日(2011.9.13)
【出願人】(591081321)紀本電子工業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】
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