説明

放射線または化学療法により誘導された組織の損傷の処置のための方法

本発明は、電離放射線への、または化学療法への曝露と関係する毒性を防ぎ、または処置するための方法に関する。特に、本発明は、放射線または化学療法と関係する毒性を防ぎ、または処置するための方法に関し、そのような処置が必要な対象体に、可溶性IL-6受容体に連結されたIL-6が含まれるポリペプチド複合体を施すことが包含され、ポリペプチド複合体は、毒性、特に口内乾燥を防ぎ、または処置することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野 本発明は、電離放射線への、または化学療法への曝露と関係する毒性を防ぎ、または処置するための方法に関する。特に、本発明は、放射線または化学療法と関係する毒性を防ぎ、または処置するのにあたり、そのような処置が必要な対象体に、可溶性IL-6受容体に連結するIL-6が含まれるポリペプチド複合体を施すことが包含され、ポリペプチド複合体は、毒性、特に口内乾燥を防ぎ、または処置することが可能である方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景 最新のガン療法は、種々のタイプ(種類)の悪性病変の治療(処置)に対する主要な戦略として、手術または化学療法の単独で、またはそれらの組合せのいずれかで、イオン化照射の使用を頼みとする。電離放射線は、放射線のチャレンジ(攻撃)を耐えぬく細胞の能力を定める種々の細胞タイプにおいて多重な、そして変動する生化学的事象を誘導する。その結果、体において異なる正常な、そして悪性の組織は、可変的な放射線感受性を表示する。たとえば、胃腸(GI)管への放射線療法は、潜在的に致命的なGI症候群、腎毒性、食道炎および肺の合併症を引き起こすことがある。照射後、細胞は、アポトーシスにより、または細胞修復メカニズム(機構)に対する干渉または最終的な細胞死につながる後の細胞分裂を通して消失することがある。マウスでの消化管照射損傷上の最近の研究は、内皮細胞アポトーシスが照射によって誘導された損傷の一次病巣であり、次いで上皮の損傷が続くことを提唱した。放射線療法の副作用は、正常な周囲の組織に引き起こされる損傷に関し、一方で、標的(目標)腫瘍が放射線で治療される。
【0003】
毎年、口腔および喉頭のガンの新しく診断される症例は、41,000名のアメリカ人、そして世界的には350,000-400,000名よりも多くについて報告される。照射によって誘導される口内乾燥またはドライマウスは、電離放射線に対する唾液腺の高感度による直接的な結果であり、そして頭部および頚部のガンを患う患者(受動体)への標準的な分割放射線療法と関係する最も普通の毒性である。
【0004】
放射線は唾液腺分泌細胞において変化を生じさせ、唾液産出量の減少および唾液の増加した粘性をもたらす。口内乾燥は、わずかから完全まで変動し、そして潜在的に衰弱させる。急性の放射線誘導口内乾燥は炎症反応と関係し、一方で、遅発型(late)口内乾燥は、放射線療法後の最高1年までそれが起こることがあり、唾液腺の線維症をもたらし、そして通常永続する。耳下腺および顎下腺は双方とも、照射後に類似した形態的な変更を示すが、放射線誘導された細胞死を媒介する正確なメカニズムはまだわかっていない。放射線誘導された唾液腺損傷および細胞内レドックス活性金属イオンの役割の間の相関関係が報告されている。唾液腺放射線感受性のためのメカニズムを説明する1つの仮説は、放射線が唾液腺顆粒の崩壊(disruption)を引き起こすことを示唆し、その内容物は、細胞質中へ漏れ、鉄および銅を含むゆるく結合した金属イオンの細胞での再分配を引き起こし、それはDNAに達し、そしてフリーラジカル(遊離基)および反応性酸素種(活性酸素種、ROS)の発生によって損傷を推進する。p53の高められた生産およびカルシウムオーバーロード(過負荷)のような他のファクター(因子)が関与するとも考えられる。胃腸管での変化とは異なり、耳下腺で見られる慢性腺房萎縮は、直接的に、不可逆で、そして初期の傷害(early injury)の結論であり、脈管構造での放射線誘導された変化の結果でないと考えられる。
【0005】
患者における治療的な照射から唾液腺の損傷の重症度を定める最も重要な因子は、届けられる放射線の用量および放射に曝される腺の容量である。合計放射線用量が52Gyを超えるとき、唾液が唾液腺から口まで分泌されないように、唾液の流れが減らされ、またはさらに全体的に抑制される。これらの変化は通常永続する。その結果、患者は急性効果で苦しみ、そして残留機能障害(impairments)に直面する。遅発型効果には、咀嚼(かんで)、嚥下(のみこんで)、そして味見における困難のための栄養的な問題、および話す能力の厳しい困難性のためのコミュニケーション(情報伝達)の問題が含まれる。重篤な潰瘍および感染症は経口免疫系の機能障害により口腔粘膜において発達し、患者の健康の状態を一層悪化させる。患者の生命の問題の質に関する最近のサーベイ(標本調査)において、照射された頭部および頚部のガン患者の10-24%は、それらの処置の経口的副作用に高い重点を置いた。
【0006】
Stogniew(ストニュー)らへの米国特許第5,994,409号明細書は、ヒトを、抗新生物性放射線療法へ曝露することと関係する毒性を処置するための方法を明らかにし、それは、アミノチオール化合物、好ましくは、アミホスチンの前記ヒトへの投与を含む。米国特許第5,994,409号明細書はさらに、ヒトにおいて、抗新生物性化学療法または抗新生物性放射線療法によって誘導される口内乾燥を治療するための方法を明らかにし、それは、前記ヒトへのアミノチオール化合物、好ましくはアミホスチンの投与を含む。
【0007】
アミホスチンは放射線療法を受けるガン患者での放射線保護剤として有効であることが示されている一方、アミホスチンの静脈内投与が、望ましくない副作用で、たとえば、吐き気、嘔吐(vomiting)、催吐(emesis)、低血圧、フラッシング(潮紅)、悪寒、めまいおよびくしゃみのようなものに苦しむことも報告されている。アミホスチンの静脈内投与と関係する副作用を減らすために、Stogniewらへの米国特許第6,573,253号明細書は、対象体にアミノチオール化合物を皮下投与することを含む、対象体での電離放射線と関係する毒性に対して保護するか、またはそれを処置するための方法を明らかにする。口内乾燥は、明らかにされる毒性の1つである。
【0008】
Mackiewicz(マッカイヴィッツ)らの国際特許出願公開第WO 2005/113591号は、H11、複合ポリペプチドで、可溶性インターロイキン-11受容体(sIL-11R)からなるものの、増殖性疾患、細胞変性、および放射線障害を治療すること、または防ぐことにおける使用を明らかにするが、何らの特定の使用可能性またはガイダンスも、放射線損傷を治療し、または防ぐために提供しない。
【0009】
放射線全身照射に曝されたマウスにIL-1およびTNFを施すときだけ、サイトカインのインターロイキン-6(IL-6)は放射線防護活性を出すことが示された〔Neta(ネタ)ら、J. Exp. Med.(ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メディシン)175:689-694、1992年;Legue(レギュー)ら、Cytokine(サイトカイン)16:232-238、2001年〕。しかし、IL-6はそれ自体が放射線全身照射に曝されたマウスに投与されたとき、それは放射線防護剤として効果がなかった(Netaら、同上)。IL-6はガンマ線照射によって発生する酸化的ストレスへの適応可能な反応に関与すると仮定されている〔Brouazin(ブロージン)ら、Anticancer Res.(アンチキャンサー・リサーチ)22:257-262、2002年〕。
【0010】
IL-6は、膜貫通シグナル伝達タンパク質、gp130の少なくとも1種のサブユニットを含む受容体複合体を介して作用するサイトカインのファミリー(族)のメンバー(一員)であり、それはほとんどすべての器官で見出され、心臓、腎臓、脾臓、肝臓、肺、および脳が含まれる。標的細胞上、IL-6は、特定の膜貫通型の同族受容体(gp80またはIL-6Rα)、以降IL-6Rと称し、それと結合することによって作用し、それはgp130(また、IL-6Rβとも呼ばれる)のホモ二量体化の引き金を引き、Jak/Stat(ジャックスタット)シグナル経路、特にSTAT-3の活性化を導く。gp130とは異なり、gp80の内因性発現は、肝臓、腸、および若干のB細胞およびT細胞を含め、体での比較的少ない組織において自然に見出される。このように、gp80の発現の欠如のため、体でのほんの少しの細胞集団だけがIL-6の刺激に応えると期待されている。しかし、その膜結合形態に加え、IL-6Rはまた、可溶性形態(sIL-6R)においても見出され、それはIL-6との複合型であるとき、gp130との相互作用を介して細胞を刺激することが可能である。重要なことに、次に、IL-6トランスシグナリングと呼ばれるプロセスでは、IL-6/sIL-6R複合体は、それらがgp130を発現するが、単独でIL-6と固有に反応しない細胞タイプに関するアゴニスト(作用薬)として働くことが可能である。
【0011】
柔軟なペプチド鎖によってsIL-6RにリンクされるヒトIL-6からなるハイパー-IL-6と称される組換え型融合タンパク質は、スーパーアゴニストのデザイナーサイトカインであることが示された〔Fisher(フィッシャー), M.ら、Nat. Biotechnol.(ネイチャー・バイオテクノロジー)15:142-145、1997年〕。ハイパーIL-6は、gp130発現細胞上で、リンクされてないIL-6とsIL-6Rの組合せよりも100から1000倍まで低い濃度にて十分に活性であり、およびgp130に対するIL-6/sIL-6R複合体の100倍よりも高い親和性のため、そしてインビボ(生体内)でのその長い半減期のために、インビトロ(試験管内)およびインビボで、スーパーアゴニストの効果を見せる〔Peters(ピータース), M.ら、J. Immunol.(ジャーナル・オブ・イムノロジー)161:3575-3581、1998年〕。
【0012】
Galun(ガルン)らへの米国特許第5,919,763号明細書は、対象体の肝臓への傷害を治療するための方法を明らかにし、それには、対象体に、IL-6/sIL-6R複合体、好ましくはハイパー-IL-6を含む製薬上の組成物を施すことが包含される。
【0013】
Galunらへの国際特許出願公開第WO99/62534号は、対象体の肝臓への傷害を治療するための方法を明らかにし、それには、対象体に、IL-6/sIL-6R複合体、好ましくはハイパー-IL-6を含む製薬上の組成物を施すことが包含される。WO99/62534はさらに、対象体の肝臓への傷害を治療するための遺伝子療法の方法を明らかにし、それには、対象体に、ハイパー-IL-6キメラ遺伝子を運ぶベクターを施すことが包含される。
【0014】
Axelrod(アクセルロッド)らへの国際特許出願公開第WO03/029281号は、IL-6ファミリー、好ましくはIL-6/sIL-6複合体、および肝臓再生因子を含む治療上の組成物を明らかにする。WO03/029281はさらに、対象体において病的状況を治療するための方法を明らかにし、それには、対象体に、IL-6ファミリーの組合せ構成要素および肝臓再生因子を含む治療上の組成物を施すことが包含され、そこでは、少なくとも1種のIL-6ファミリーの組合せ構成要素および肝臓再生因子が施され、プラスミドによってコード化される。
【0015】
Axelrodらへの国際特許出願公開第WO2006/134601号は、対象体に、IL-6ファミリーのメンバーの可溶性受容体にリンクされるIL-6ファミリーのメンバーを含む複合体を包含する製薬上の組成物を施すことが含まれる腎不全を防止し、または治療するための方法を明らかにする。好ましくは、IL-6ファミリーのメンバーの可溶性受容体レセプターにリンクされるIL-6ファミリーのメンバーは、IL-6/sIL-6複合体である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国特許第5,994,409号明細書
【特許文献2】米国特許第6,573,253号明細書
【特許文献3】国際公開第2005/113591号
【特許文献4】米国特許第5,919,763号明細書
【特許文献5】国際公開第99/62534号
【特許文献6】国際公開第03/029281号
【特許文献7】国際公開第2006/134601号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Neta et al., J. Exp. Med. 175: 689-694, 1992
【非特許文献2】Legue et al., Cytokine 16: 232-238, 2001
【非特許文献3】Brouazin et al., Anticancer Res. 22: 257-262, 2002
【非特許文献4】Fischer, M., et al. Nat. Biotechnol. 15: 142-145, 1997
【非特許文献5】Peters, M., et al. J. Immunol. 161: 3575-3581, 1998
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
背景技術のどこにも、IL-6/sIL-6受容体の複合体が、電離放射線および化学療法と関係する毒性に対して保護を提供し、またはそれを処置するために役立つことを、開示も、また示唆もしていない。
【課題を解決するための手段】
【0019】
発明の概略 本発明は、電離放射線への、または化学療法への曝露と関係する毒性を減らし、防ぎ、または処置するための方法を提供し、それには、その必要がある対象体に、可溶性IL-6受容体にリンク(連結)されたIL-6が含まれるポリペプチド複合体を施すことが包含される。本発明はさらに、電離放射線への、または化学療法への曝露と関係する毒性を減らし、防ぎ、または処置するために方法を提供し、それは、その必要がある対象体にIL-6および可溶性IL-6受容体の複合体が含まれるポリペプチド複合体をコード化する分離されたポリヌクレオチドが施されることを包含する。
【0020】
今回、初めて、対象体に、配列番号1で表されるようなヒトIL-6ポリペプチドを配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL-6受容体にリンクされたものが含まれるポリペプチド複合体を、対象体の電離放射線への曝露に先立って施すことが、対象体を唾液腺に対する損傷から保護し、それ故に、口内乾燥としても知られる口渇障害の発生(development、発達)を防止することを明らかにする。ヒト可溶性IL-6受容体にリンクされるヒトIL-6を含むポリペプチド複合体は、対象体を口内乾燥から保護するためだけでなく、また電離放射線と関係する他の毒性に対しても役に立つ。同様に、本発明でのポリペプチド複合体はまた、対象体を、化学療法と関係した毒性に対して保護することで役立つ。本発明は配列番号3で表されるようなハイパー-IL-6と指定されるポリペプチド複合体の急性口内乾燥に対する放射線防護効果によってここで以降に実証するが、一方で、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴(ototoxicity)、肺毒性、脱毛症、血球減少、および心毒性のような他の毒性が、本発明において包含される。
【0021】
X線照射を受ける無処置のラットおよびマウスでは、唾液腺機能が著しく低下する一方で、顎下腺にハイパー-IL-6の管内注入により前処理されたラットおよびマウスは、唾液腺機能のマイナーな(微量な)減少だけしか示されなかったという所見に、本発明は一部において基づく。本発明はこのように、照射に先立つハイパー-IL-6での唾液腺の処置が、照射によって誘導される損傷からこれらの腺のほとんど完全な保護を与え、そして腺機能を維持することを例証する。
【0022】
1種の局面に従えば、本発明は、対象体において電離放射線と関係する毒性を防ぎ、または処置するための方法を提供し、それには、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性なアナログ(類似体)またはフラグメント(断片)、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL-6受容体(sIL-6R)またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメントを含むポリペプチド複合体、および製薬上許容可能なキャリヤー(担体)が含まれる製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる。
【0023】
1種の具体化に従えば、ヒトIL-6の断片は、配列番号4で表されるようなヒトIL-6のアミノ酸残基29-212を含む。追加的な具体化に従えば、ヒトのsIL-6Rの断片は、配列番号5で表されるようなヒトのsIL-6Rのアミノ酸残基113-323、または配列番号6で表されるようなヒトのsIL-6Rのアミノ酸残基114-323を含む。別の具体化に従えば、ポリペプチド複合体はさらに、配列番号7で表されるようなアミノ酸配列の13-マー(化合体)ペプチドリンカーを含む。目下の模範的な具体化に従えば、電離放射線と関係する毒性を防ぎ、または処置するのに役立つポリペプチド複合体は、配列番号3で表されるような、ハイパー-IL-6であり、ヒトIL-6のアミノ酸残基1-323、13-マーのペプチドリンカー、およびヒトsIL-6Rのアミノ酸残基29-212からなる。
【0024】
若干の具体化に従えば、電離放射線と関係する毒性は、急性口内乾燥および遅発型口内乾燥からなる群より選ばれる口内乾燥である。目下の模範的な具体化に従えば、毒性は急性口内乾燥である。
【0025】
さらなる具体化に従えば、対象体に製薬上の組成物を施すルート(経路)は、前記毒性をもつ組織中に、またはその近くでの直接の投与、局所的、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、経皮的および経口の投与からなる群より選ばれる。
【0026】
更なる具体化に従えば、製薬上の組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン類、タブレット、カプセル、粉体、坐剤、および持続性製剤からなる群より選ばれる形態において調剤される。
【0027】
まださらなる具体化に従えば、製薬上の組成物は、対象体に、前記対象体が電離放射線に曝されるのに先立って施される。あるいはまた、製薬上の組成物は対象体が電離放射線に曝されるのと同時に施される。さらにあるいはまた、製薬上の組成物は、対象体が電離放射線に曝された後施される。製薬上の組成物は、対象体が電離放射線に曝されるのに先立ち、および同時に、または対象体が電離放射線に曝されるのと同時およびその後に、または要求に応じ、前記毒性に対して保護し、またはそれを処置するために施すことができることが理解されるべきである。
【0028】
別の局面に従えば、本発明は、対象体への化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぎ、または処置するための方法が提供され、この方法はそのような処置が必要な対象体に活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性な類似体または断片、および配列番号2で表されるようなヒトsIL-6Rまたはその生物学的に活性な類似体または断片を含むポリペプチド複合体、および製薬上許容可能な担体が含まれる製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる。目下の模範的な具体化に従えば、化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぎ、または処置するために役立つポリペプチド複合体は、配列番号3で表されるようなハイパー-IL-6である。
【0029】
若干の具体化に従えば、化学療法剤の投与と関係する毒性は、急性口内乾燥および遅発型口内乾燥からなる群より選ばれる口内乾燥である。
【0030】
追加的な具体化に従えば、製薬上の組成物は化学療法剤の投与に先立ち、対象体に施される。あるいはまた、製薬上の組成物は化学療法剤の投与と同時に施される。さらにあるいはまた、製薬上の組成物は化学療法剤の投与の後で施される。製薬上の組成物は、化学療法剤の投与に先立ち、および同時に、または化学療法剤の投与と同時およびその後に、または要求に応じ、前記毒性に対して保護し、またはそれを処置するために施すことができることが理解されるべきである。
【0031】
若干の具体化に従えば、化学療法剤は、タキサン、アルキル化剤、アルキルスルホナート、ニトロソ尿素、代謝拮抗物質、ピリミジン類似体、プリンの類似体、自然物、抗生物質、およびプラチナ配位錯体からなる群より選ばれる。模範的な具体化に従えば、化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびメトトレキサートからなる群より選ばれる。
【0032】
別の局面に従えば、本発明は、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性な類似体または断片、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL-6受容体(sIL-6R)またはその生物学的に活性な類似体または断片が含まれるポリペプチド複合体の使用であって、電離放射線と関係する毒性を防ぎ、または処置するための薬の調製用の使用であり、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、使用を提供する。一定の具体化に従えば、ポリペプチド複合体は、電離放射線と関係する毒性の防止または処置に役立つ配列番号3で表されるハイパー-IL-6である。模範的な具体化に従えば、電離放射線と関係する毒性は口内乾燥である。
【0033】
まだ別の局面に従えば、本発明は、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性な類似体または断片、および配列番号2で表されるような可溶性IL-6受容体(sIL-6R)またはその生物学的に活性な類似体または断片を含むポリペプチド複合体の使用であって、化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぐか、または処置するための薬の調製用の使用であり、毒性が口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、使用を提供する。ある具体化において、配列番号3で表されるハイパー-IL-6は、化学療法剤の投与と関係する毒性の防止および処置に役立つ。一体の具体化に従えば、化学療法剤の投与と関係する毒性は口内乾燥である。
【0034】
まださらなる局面に従って、本発明は、電離放射線と、または化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぎ、または処置するにあたり、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性な類似体または断片、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL-6受容体(sIL-6R)またはその生物学的に活性な類似体または断片が含まれるポリペプチド複合体をコード化する分離されたポリヌクレオチド、および製薬上許容可能なキャリヤーを含む製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、方法を提供する。ある1つの具体化に従い、電離放射線と関係する毒性は口内乾燥である。一定の具体化に従えば、分離されたポリヌクレオチドは、配列番号8で表されるヌクレオチド配列をもつ。
【0035】
まださらなる局面に従い、本発明は、電離放射線と、または化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぎ、または処置するにあたり、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性な類似体または断片、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL-6受容体(sIL-6R)またはその生物学的に活性な類似体または断片を含むポリペプチド複合体をコード化する分離されたポリヌクレオチドが含まれる発現ベクター、および製薬上許容可能なキャリヤーを含む製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、方法を提供する。1つの具体化に従い、電離放射線と関係する毒性は口内乾燥である。一定の具体化に従えば、分離されたポリヌクレオチドは配列番号8で表される。
【0036】
別の局面に従い、本発明は、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性な類似体または断片、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL-6受容体(sIL-6R)またはその生物学的に活性な類似体または断片を含むポリペプチド複合体をコード化する分離されたポリヌクレオチドの使用であって、電離放射線と、または化学療法と関係する毒性を防ぎ、または処置するための薬の調製用の使用を提供する。一定の具体化に従えば、口内乾燥を治療するのに役立つ分離されたポリヌクレオチドは、配列番号8で表されるようなヌクレオチド配列をもつ。
【0037】
さらなる局面に従い、本発明は、配列番号1で表されるようなヒトIL-6またはその生物学的に活性な類似体または断片、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL-6受容体(sIL-6R)またはその生物学的に活性な類似体または断片を含むポリペプチド複合体をコード化する分離されたポリヌクレオチドが含まれる発現ベクターの使用であって、電離放射線と、または化学療法と関係する毒性を防ぎ、または処置するための薬の調製用の使用を提供する。一定の具体化に従えば、発現ベクター内の分離されたポリヌクレオチドは、配列番号8で表されるようなヌクレオチド配列をもつ。
【0038】
本発明のこれらの、および他の具体化は、あとに続く図面、説明、例および請求の範囲に関してより一層良好に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】ラットでの照射誘導された口内乾燥上のハイパー-IL-6の効果を示す。雄性のラットを、頭部および頚部に向けられる照射(17.5Gy)に先立って4時間で、ハイパー-IL-6溶液または塩類溶液のいずれかを用い顎下腺に注入した。唾液腺機能を照射後2ヵ月に評価し、そして正常コントロール(対照)ラットと比較した。
【図2】マウスでの照射誘導された口内乾燥上のハイパー-IL-6の効果を示す。雌性のC3Hマウスを、頭部および頚部に向けられる照射(15Gy)に先立って4時間で、ハイパー-IL-6溶液または塩類溶液のいずれかを用い顎下腺に注入した。唾液腺機能(図2A)および平均体重(図2B)を、照射後2ヵ月に評価し、そして正常マウスと比較した。
【図3】ウエスタンブロット解析で測定されるような、STAT3、ERKおよびAKTのリン酸化上のハイパー-IL-6の効果を示す。
【図4−1】ハイパー-IL-6のアミノ酸およびヌクレオチド配列を示す。ヒトIL-6のNH2-終端(terminus)を有するそのCOOH-終端での可溶性ヒトIL-6Rを接続するのに用いる制限エンドヌクレアーゼSal(サル)I(GTCGAC)のための認識部位、シグナルペプチドおよび合成リンカーに下線を付ける。
【図4−2】ハイパー-IL-6のアミノ酸およびヌクレオチド配列を示す。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明の詳しい説明 本発明は、対象体において、ガン療法と関係する毒性に対して保護し、またはそれを処置するための方法を提供し、この方法には、そのような処置が必要な対象体に、ヒトIL-6およびヒトsIL-6Rまたはその断片または類似体を含むポリペプチド複合体の治療上効果的な量が含まれる製薬上の組成物を施すことが包含される。本発明の方法には、特に電離放射線療法または化学療法を受けている対象体において役立つ。
【0041】
電離放射線治療または化学療法と関係する毒性の1種は、口内乾燥である。このように、本発明はさらに、放射線療法または化学療法に起因する口内乾燥を防ぎ、または治療するための方法を提供し、それには、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤としてヒトIL-6およびヒトsIL-6R、または断片または類似物を含むポリペプチド複合体が含まれる製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含される。
【0042】
用語「IL-6およびsIL-6Rを含むポリペプチド複合体」は、IL-6ポリペプチドおよび可溶性IL-6受容体(SIL-6R)ポリペプチドを特長とする二分子ポリペプチド複合体に、およびIL-6ポリペプチドおよびsIL-6Rポリペプチドを含む単分子ポリペプチドに、どんな順でも、双方ともに言及する。好ましくは、sIL-6RおよびIL-6の生物活性の部分は、互いに直接的に、または実質前述のとおり柔軟なリンカー(国際特許出願公開第WO97/32891号、第WO99/62534号、第WO03/02981号、Fischer(フィッシャー), M.ら、Nat. Biotechnol. 15:142-147、1997年、およびPeters(ピータース), M.、J. Immunol. 161:3575-3581、1998年を参照し、ここで十分に説明されるように、参照することによって組み込み)、ならびにその任意の生物学的に活性な類似体または断片を介して接続される。IL-6のための受入れ番号は、M14584〔GenBank(ジェンバンク)Protein Sequences Database(プロテイン・シークエンシーズ・データベース)〕であり、そして可溶性IL-6受容体については、M57230、M20566、およびX12830である。
【0043】
用語「生物学的に活性な類似体」は、IL-6またはsIL-6Rに対する任意の相同ポリペプチドにも言及し、それには、任意のアミノ酸置換、欠失、または付加が含まれ、その一方で、元のポリペプチドの生物活性が保持される。このように、IL-6の類似体または断片および/またはsIL-6Rの類似体または断片を含むポリペプチド複合体は、gp130またはgp130の下流のシグナルカスケードの少なくとも1種の構成要素として既知のIL-6/sIL-6Rポリペプチド複合体のための膜受容体を直接的に活性化させるための能力を保持すべきである。本発明は、断片が自然なポリペプチドの生物学的活性を保持する限り、IL-6およびsIL-6Rの断片を包含する。
【0044】
用語「リンカー」は、任意の種類のリンカーに関し、それはIL-6のsIL-6Rとの結合に適する。そのようなリンカーの例には、制限されないが、二官能基、化学架橋剤、IL-6の第1のアミノ酸およびsIL-6Rの第2のアミノ酸を接続するジスルフィド・ブリッジ(ジスルフィド架橋)、ペプチドまたはポリペプチドが含まれる。
【0045】
単分子タンパク質は融合ポリペプチドであることができる。このように、IL-6およびsIL-6Rの生物活性の部分を特長とするポリペプチドは、互いに融合することができ、そしてリンカーは2つのポリペプチドによって生産されるジスルフィド架橋であることができる。好ましくは、リンカーはペプチドであり、それは2つの他のポリペプチドを互いに接続する。これらの融合ポリペプチドは、ヒトsIL-6Rポリペプチド(配列番号2)を含むことができ、それはヒトIL-6RおよびヒトIL-6ポリペプチド(配列番号1)の細胞外サブユニットであり、それによってsIL-6RおよびIL-6が、異なるペプチドリンカーによって互いに、どんな順ででも接続される。一定の具体化に従い、ペプチドリンカーは、配列番号7で表されるようなアミノ酸配列をもつ。
【0046】
用語「ハイパーIL-6」は、配列番号3で表されるような単分子タンパク質に言及し、それは、配列番号2で表されるようなヒトsIL-6Rのアミノ酸残基1-323、および配列番号4で表されるようなヒトIL-6のアミノ酸残基29-212からなり、配列番号7で表されるような柔軟なペプチドリンカーと連結し、実質的に国際特許出願公開第WO97/32891号で記載されるように、その参考文献において「H-IL-6」と称される。
【0047】
sIL-6Rポリペプチド(配列番号5)のアミノ酸113-323およびIL-6ポリペプチド(配列番号4)のアミノ酸29-212を含むポリペプチド複合体はまた、本発明において包含される。また、sIL-6R-ポリペプチド(配列番号6)のアミノ酸114-323およびIL-6ポリペプチド(配列番号2)のアミノ酸29-212からなるポリペプチド複合体も含まれる。他の単分子複合体、二分子複合体、それらの類似体、断片、および組合せは、複合体、それらの類似体、断片、および組合せが、gp130またはgp130の下流のシグナルカスケードの任意の構成要素でも活性化する能力を保持する限り、本発明において含まれる。
【0048】
「ペプチド」によって、ペプチドが50を超えないアミノ酸からなることが意味される。「ポリペプチド」によって、ポリペプチドが概して50より多いアミノ酸残基からなることが意味される。
【0049】
「アミノ酸置換」を用いることによって、機能的に等価なアミノ酸残基がサイレント変化をもたらす配列内で残基の代わりをすることが意味される。たとえば、ポリペプチド配列内の1またはそれよりも多くのアミノ酸残基は、類似した極性の別のアミノ酸によって代えることができ、それは機能的な等価物として作用し、サイレント変更が招かれる。配列内のアミノ酸の代わりは、アミノ酸が属するクラスの他のメンバーから選ぶことができる。たとえば、非極性(疎水性の)アミノ酸には、アラニン、ロイシン、イソロイシン、バリン、プロリン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびメチオニンが含まれる。極性の中性アミノ酸には、グリシン、セリン、ス(ト)レオニン、システイン、チロシン、アスパラギン、およびグルタミンが含まれる。正に荷電した(塩基性の)アミノ酸には、アルギニン、リジンおよびヒスチジンが含まれる。負に荷電した(酸性の)アミノ酸には、アスパラギン酸およびグルタミン酸を含む。そのような置換は保存的置換として既知である。その上、非保存的な置換は、ポリペプチド内の1種のアミノ酸が異なる極性または疎水性のアミノ酸で代えられ、またポリペプチドが元の生物活性を保持する限り、本発明の範囲内に含まれる。本発明にはさらに、D-異性体立体配置での1種またはそれよりも多くのアミノ酸をもつポリペプチドおよび1種またはそれよりも多くの非自然的なアミノ酸をもつポリペプチドが含まれる。
【0050】
用語「非自然的なアミノ酸」は、その側鎖官能性において20の自然発生的なアミノ酸と異なるアミノ酸に言及する。用語「非自然的なアミノ酸」には、制限されないが、自然にコード化されたアミノ酸の修飾によって自然に発生するが、翻訳複合体(translation complex)によって発達するポリペプチド鎖中にそれら自体が組み込まれないアミノ酸が含まれる。自然にコード化されないアミノ酸の例には、N-アセチルグルコサミニル-L-セリン、N-アセチルグルコサミニル-L-トレオニン、およびO-ホスホチロシンが含まれる。その上、用語「非自然的なアミノ酸」には、制限されないが、自然に発生しないで、そして合成的に得ることができ、または自然なアミノ酸の修飾によって得ることができるアミノ酸が含まれる。
【0051】
このように、本発明は、少なくとも1種のアミノ酸が修飾されたポリペプチドの類似体を包含する。アミノ酸残基の修飾には、制限されないが、アミド化、アシル化、グリコシル化、酸化、永久リン酸化、還元、ミリスチル化、硫酸化、アシル化、アセチル化、ADP-リボシル化、環化、ジスルフィド結合形成、ヒドロキシル化、ヨウ素化、メチル化、保護性/ブロック性の基による誘導体化、またはこの技術において既知の任意の他の誘導体化が含まれる。そのような修飾は、それは破壊しないで、元のポリペプチドの生物活性を維持し、または改善し、ペプチド骨格にて、アミノ酸側鎖にて、またはアミンまたはカルボキシル終端にて含まれる類似体の配列に沿って、どこでも起こりうる。
【0052】
本発明でのヒトIL-6およびsIL-6R、その類似体または断片を含むポリペプチド複合体は、自然な供給源、合成的な生産または組換え型生産からの分離を含め、この技術において既知の種々の方法によって生産することができる。
【0053】
本発明でのポリペプチドには、制限されないが、血液および尿を含む自然な供給源から分離することができる。ポリペプチドは、合成的な生産によって生産することができる。ポリペプチドの合成的な生産は、この技術においてよく知られており、そして様々な会社から商業上入手可能である。IL-6/sIL-6Rポリペプチド複合体は、固相合成を介するような標準的な直接ペプチド合成方法〔例は、Bodanszky(ボダンスズキー)、1984、Principles of Peptide Synthesis(ペプチド合成の原理)、Springer-Verlag(シュプリンガー・フェルラーク出版)、Heidelberg(ハイデルベルク)にまとめられるようなもの〕を用いて合成することができる〔例は、Merrifield(メリフィールド)、1963年、J. Am. Chem. Soc.(ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサエティ)85:2149-2154参照〕。
【0054】
本発明の範囲内には、IL-6ポリペプチド、その断片または類似体を、sIL-6Rのアミノ酸配列、またはその断片または類似体のアミノ酸配列に、そのアミノ、またはカルボキシ終端にて、または側鎖の1種にて、ペプチド結合を介して接合したものを含むキメラの、または融合タンパク質が包含される。そのような融合タンパク質は、タンパク質合成、例はペプチド合成機の使用によって、または妥当なコーディングフレームにおいて、この技術で既知の方法により互いに望ましいアミノ酸配列をコード化する、適した核酸配列の核酸連結、およびこの技術で普通に知られる方法により融合タンパク質を発現することによって作成することができる。
【0055】
組換え型生産は、IL-6およびsIL-6Rまたはその類似体または断片をコード化する分離されたポリヌクレオチドの使用によって達成することができ、分離されたポリヌクレオチドがポリヌクレオチドの発現のためにプロモーターに連結される。随意に、プロモーターのレギュレーター(調節因子)を加える。そのポリペプチドまたはその類似体または断片をコード化するポリヌクレオチドを含む構築物、プロモーター、および随意にレギュレーターを、ベクター、たとえば、プラスミド、ウイルスまたはファージベクターに置くことができる。ベクターは、例は、宿主細胞、例は、細菌、酵母、昆虫、または哺乳類細胞をトランスフェクション(形質移入)するか、または形質転換するのに用いることができる。
【0056】
用語「ポリヌクレオチド」はデオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)のポリマーを意味し、それは任意の供給源から導き出すことができ、一本鎖または二本鎖、そしてDNAまたはRNAポリマー中に組み込むことが可能な、合成、非自然的、または変えられたヌクレオチドを随意に含むことができる。
【0057】
「分離したポリヌクレオチド」は、ポリヌクレオチドセグメント(区域)または断片に言及し、それは自然的に生じる状態においてそれの側面に位置する配列、例は、通常、断片に隣接する配列、例は、それが自然的に発生するゲノムにおける断片に隣接する配列から除去されたDNA断片から分離される。この用語はまた、ポリヌクレオチドに適用され、それは他の構成要素から実質精製され、それは自然的に、核酸、例は、RNAまたはDNAまたはタンパク質を伴い、それは細胞において自然的にそれを伴う。用語には従って、たとえば、ベクター中に、自発的に複製するプラスミドまたはウイルス中に、または原核生物または真核生物のゲノムDNA中に組み込まれ、または他の配列から独立した別々の分子として(例は、cDNAまたはゲノムまたはPCRまたは制限酵素消化によって生産されるcDNA断片として)存在する組換えDNAが含まれる。
【0058】
ヌクレオチド(すなわち、rRNA、tRNAおよびmRNA)の規定された配列またはアミノ酸の規定された配列のいずれかをもつ生物学的プロセスでの他のポリマーおよび高分子の合成およびそれから得られる生物学的特性のためのテンプレート(鋳型)として働かせるために、用語「コード化」は分離したポリヌクレオチドで、たとえば、遺伝子、cDNA、またはmRNAのようなものにおいて、ヌクレオチドの特定の配列の固有の特性に言及する。このように、遺伝子は、その遺伝子に対応するmRNAの転写および翻訳が細胞または他の生物学的システムにおいてタンパク質を生産する場合、タンパク質をコード化する。双方のコーディング鎖(コード鎖)は、それのヌクレオチド配列がmRNA配列と同一であり、通常シークエンスリスト(配列表)に提供され、および非コーディング鎖は、遺伝子またはcDNAの転写のためのテンプレートとして用いられ、タンパク質またはその遺伝子またはcDNAの他の生成物のコード化と称することができる。
【0059】
この技術において熟練するある者は、1種よりも多くの核酸が、遺伝暗号の縮重およびコドンの第3の位置の古典的な塩基対合に対する例外の許容(allowance)を考慮して任意の所定のタンパク質でも、いわゆる「Wobble rule(ウォッブル規則)」によって与えられるように、コード化することができる。さらに、程度の差はあるがヌクレオチドを含むポリヌクレオチドは、同じ、または等価のタンパク質を招くことがある。したがって、本発明がIL-6/sIL-6Rポリペプチド、好ましくはハイパー-IL-6をコード化するすべてのポリヌクレオチドを包含することが意図される。
【0060】
本発明でのポリヌクレオチドは、輸送されたタンパク質として発現することができ、そこでは、ポリペプチドは、ポリヌクレオチドを含む宿主細胞が増殖される媒体から分離され、またはリーダーまたは他のペプチドを削除することによって細胞内タンパク質として発現させることができ、その場合に、ポリペプチドは宿主細胞から分離される。そのように分離されるポリペプチドは次に、この技術において既知のタンパク質精製方法によって精製される。
【0061】
本発明でのポリペプチドは、本発明でのポリペプチドをコード化する分離したポリヌクレオチドを含む発現ベクターを細胞へ移すことによって、興味ある組織に提供することができる。細胞は、ポリペプチドを、それが興味ある細胞に適切に提供されるように、生産し、そして分泌する。
【0062】
発現ベクターはプロモーターを含む。本発明の文脈上では、プロモーターは細胞内でポリヌクレオチドの発現を導き出すことが可能でなければならない。多くのウイルスプロモーターには、制限されないが、レトロウイルスのITRs、LTRs、最初期(immediate early)のウイルスプロモーター(IEp、ヘルペスウイルスIepのようなもの、例は、ICP4-IepおよびICP0-IEpおよびサイトメガロウイルス(CMV)IEp)、後期ウイルス(late viral)プロモーター、潜在性活性プロモーター(LAPs)、ラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター、およびネズミ(Murine)白血病ウイルス(MLV)プロモーターが含まれるそのような発現カセットでの使用のために適する。他の適したプロモーターは、真核生物プロモーターで、それには、エンハンサー配列(例は、ラビットβ-グロビン調節エレメント(globin regulatory要素)、構成的に活性なプロモーター(例は、β-アクチンプロモーター、ヒトα1-アンチトリプシンプロモーター、その他)、シグナル(信号)および/または組織特異プロモーター(例は、誘導可能なおよび/または抑制可能なプロモーター、たとえば、TNFまたはRU486に応答するプロモーターのようなもの、メタロチオネイン(metallothionine、metallothionein)プロモーター、その他)、および腫瘍特異的プロモーターが含まれる。
【0063】
発現ベクター中で、本発明でのポリペプチドをコード化するポリヌクレオチドおよびプロモーターは、プロモーターがポリヌクレオチドの発現を導き出すのが可能なように、動作可能に(operably)連結される。この動作可能な連結が維持される限り、発現ベクターは1種よりも多く(複数)の遺伝子、たとえば、内部(配列内)リボソーム侵入(進入)部位(IRES)によって分けられる同義遺伝子のようなものを含むことができる。さらにまた、発現ベクターは、随意に他の要素で、たとえば、スプライス部位、ポリアデニル化配列、転写調節要素(例は、エンハンサー、サイレンサー、その他)、または他の配列を含むことができる。
【0064】
発現ベクターは、細胞中に、それらがその中で含む本発明でのポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチドを発現することが可能なような様式で導入しなければならない。任意の適したベクターは、そのように採用することができ、それの多くのものはこの技術において既知である。そのようなベクターの例には、ネイキッド(裸)のDNAまたはRNAベクター(たとえば、オリゴヌクレオチドまたはプラスミドのようなもの)、アデノ付随ウイルスベクターのようなウイルスベクター〔Berns(バーンズ)ら、1995年、Ann. N.Y. Acad. Sci.(アナルズ・オブ・ザ・ニュー・ヨーク・アカデミー・オブ・サイエンス)772:95-104〕、アデノウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター〔Fink(フィンク)ら、1996年、Ann. Rev. Neurosci.(アニュアル・リビュー・オブ・ニューロサイエンス)19:265-287〕、パッケージドアンプリコン(増幅産物)〔Federoff(フェデロフ)ら、1992年、Proc. Natl. Acad. Sci. USA(プロシーディングズ・オブ・ザ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・ザ・ユナイテッド・ステイツ・オブ・アメリカ)89:1636-1640〕、パピローマ(乳頭腫)ウイルスベクター、ピコルナウイルスベクター、ポリオーマウイルスベクター、レトロウイルスベクター、SV40ウイルスベクター、ワクシニアウイルスベクター、およびこの技術で既知の他のベクターが含まれる。興味ある発現ベクターに加えて、ベクターはまた、他の遺伝要素で、たとえば、選択可能なマーカー〔例は、β-gal(ガラクトシダーゼ)または毒素に対する抵抗を与えるマーカー〕、薬理学的に活性なタンパク質、転写因子、または他の生物学的に活性な物質をコード化する遺伝子を含むこともできる。
【0065】
分離したポリヌクレオチドを含むベクターを操作するための方法は、この技術においてよく知られており〔例は、Sambrook(サムブルック)ら、1989年、Molecular Cloning(分子クローニング):A Laboratory Manual(実験室マニュアル)、第2版、Cold Spring Harbor Press(コールド・スプリング・ハーバー・プレス社)参照〕、そして直接クローニング、リコンビナーゼを用いる部位特異的組換え、相同組換え、および組換え型ベクターを構築する他の適する方法(本発明の出願人に対するWO2006/134601号を参照、参照することによってまるでここに完全に述べられるように組み込む)が含まれる。かくのごとく、発現ベクターは、それが任意の望ましい細胞で複製され、任意の望ましい細胞ででも発現されることができ、そして任意の望ましい細胞のゲノムにでも統合することさえできるように、構築することができる。
【0066】
ヒトIL-6およびヒトsIL-6Rポリペプチド、好ましくはハイパー-IL-6をコード化するポリヌクレオチドを含む発現ベクターは、細胞中へのDNAの移行に適切などんな手段によってでも、細胞に導入される。多くのそのような方法がこの技術においてよく知られている(Sambrookら、上記、Watoson(ワトソン)ら、1992年、Recombinant DNA(組換えDNA)、第12章、第2版、Scientific American Books(サイエンティフィック・アメリカン・ブックス社)。またWO2006/134601号の前記の箇所参照)。真核生物細胞のために、たとえば、ベクターをエレクトロポーレーション、トランスフェクションで、たとえば、流体力学ベースのトランスフェクションのようなもの、感染、DNA被覆したマイクロ発射体または原形質融合の使用を通して導入することができる(たとえば、Liu(リウ), F.ら、1999年、Gene Ther.(ジーン・セラピー)6:1258-1266を参照)。
【0067】
細胞内で、細胞がポリペプチドを発現し、そして分泌するように、ポリヌクレオチドを発現する。ポリヌクレオチドの好首尾の発現は、標準的な分子生物学的技術(例は、ノーザンハイブリダオゼーション、ウエスタンブロット法、免疫沈降、酵素免疫測定法、その他)を使用して評定することができる。ポリヌクレオチドの発現およびトランスフェクションされた細胞からのポリペプチドの分泌を検出するための試薬は、この技術において既知である(また、以下のここでの例を参照)。
【0068】
組換え技術によって生産される本発明のポリペプチドは、対象体に施されるときポリペプチドが実質純粋であるように精製することができる。用語「実質純粋」は、化合物、例は、タンパク質またはポリペプチドに言及し、それは構成要素から分けられたものであり、それは自然にそれを伴う。典型的に、合成物は、試料中の合計の材料(容量によって、湿重量または乾重量によって、またはモルパーセントまたはモル分率によって)の少なくとも10%、より一層好ましくは少なくとも20%、より一層好ましくは少なくとも50%、より一層好ましくは少なくとも60%、より一層好ましくは少なくとも75%、より一層好ましくは少なくとも90%、および最も好ましくは少なくとも99%が興味ある化合物であるとき、実質純粋である。純度は、任意の適切な方法によってでも、例は、カラムクロマトグラフィー、ゲル電気泳動またはHPLC分析によって測定することができる。ポリペプチドはまた、それが自然に関係する構成要素を基本的に含まないとき、またはそれが、天然汚染物質で、それがその自然状態でそれを伴うものから分けられるとき、実質純粋である。
製薬上の組成物および投与経路
【0069】
本発明は、活性な薬剤としてヒトIL-6およびヒトsIL-6Rまたはその類似体または断片を含むポリペプチド複合体および製薬上許容可能な担体が含まれる製薬上の組成物を提供する。本発明はさらに、活性な薬剤として、本発明でのポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチド、ポリヌクレオチドを含む発現ベクター、または発現ベクターでトランスフェクションされた細胞、および製薬上許容可能な担体が含まれる製薬上の組成物を提供する。
【0070】
用語「製薬上(薬学的に)許容可能な」は、連邦政府または州政府の規制当局の承認を得るか、または米国薬局方または動物で、またはさらに詳しくはヒトでの使用のために他の一般に認識される薬局方に挙げられることを意味する。用語「キャリヤー(担体)」は、希釈剤、アジュバント、賦形剤、またはそれとともに活性な薬剤が施されるビヒクル(媒介物)に言及する。そのような製薬上の担体は、滅菌液体で、たとえば、水および油のようなものであることができ、石油、動物性、植物性または合成の起源のもので、たとえば、落花生油、大豆油、鉱油、ゴマ油および同様のもののようなもの、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコールまたは他の合成溶媒が含まれる。製薬上の組成物が静脈内投与されるとき、水は好ましい担体である。特に注射可能な溶液のために、また塩類溶液および水性デキストロース(右旋糖)およびグリセロール溶液を、液体キャリヤーとして採用することもできる。適した製薬上の賦形剤には、でんぷん、グルコース(ブドウ糖)、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、モルト(麦芽)、ライス、穀粉(小麦粉)、チョーク、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアラート、タルク、塩化ナトリウム、乾燥脱脂乳、プロピレングリコール、水、エタノールおよび同様のものが含まれる。組成物はまた、必要に応じ、湿潤剤または乳化剤(wetting or emulsifying agents)、またはpH緩衝剤で、たとえば、アセタート、シトラート(クエン酸塩)またはホスファート(リン酸塩)の小量(マイナーな量)を含むこともできる。抗菌剤で、たとえば、ベンジルアルコールまたはメチルパラベン、酸化防止剤で、たとえば、アスコルビン酸または重亜硫酸ナトリウムのようなもの、キレート剤で、エチレンジアミン四酢酸のようなもの、および張性(浸透圧)の調整のための薬剤で、塩化ナトリウムまたはデキストロースのようなものも構想される。
【0071】
本発明には、ポリペプチドの製薬上許容可能な塩類が含まれる。製薬上許容可能な塩類には、遊離アミノ基で形成されるもので、たとえば、酢酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、フマル酸、グルコン酸、グルタミン酸、臭化水素酸、塩化水素酸、イソチオン酸(isothionic)、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、粘液酸、硝酸、シュウ酸、パモン酸、パントテン酸、リン酸、コハク酸、硫酸、酒石酸、p-トルエンスルホン酸、および同様のものから導き出されるようなもの、および遊離カルボキシル基で形成されるもので、たとえば、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、鉄(III)、鉄(II)、リチウム、マグネシウム、マンガン(III、IV)の塩、マンガン(II)、カリウム、ナトリウム、亜鉛、一級、二級、および三級アミン、自然に発生する置換されたアミンを含む置換アミン、環状アミン、および塩基性イオン交換樹脂から導き出されるようなもの、アルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、N,N′-ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2-ジエチルアミノエタノール、2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モルホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリプロピルアミン、トロメタミン、などのようなものが含まれる。
【0072】
組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン類、タブレット、カプセル、粉体、坐剤、持続性製剤などの形態をとることができる。経口の製剤には、標準の担体で、マンニトール、ラクトース、でんぷん、ステアリン酸マグネシウム、サッカリン酸ナトリウム、セルロース、炭酸マグネシウム、その他の製薬上の等級のようなものを含むことができる。適した製薬上の担体の例は、E.W. Martin(マーティン)によって「Remington’s Pharmaceutical Sciences(レミントンのファーマシューティカル・サイエンス)」で記述される。そのような組成物は、本発明での活性な薬剤の治療上効果的な量を、好ましくは精製された形態において、対象体に妥当な投与のための形態を提供するために、担体の適した量と一緒に含む。
【0073】
本発明でのポリペプチド、またはポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチド、または前記ポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター、ポリペプチドを発現する細胞の量は、前記毒性の防止または処置において効果的であるもので、毒性の性質に依存し、そして標準的な臨床技術によって定めることができる。たとえば、インビトロアッセイ(分析評価)は、最適投薬量範囲を確認することを助けるために、随意に採用することができる。あるいは、または追加的に、動物モデルを伴ったインビボアッセイは、最適投薬量範囲(ここでの下の例を参照)を定めるために実行することができる。製剤において採用される正確な用量はまた、投与のルート、および毒性の重篤性にも依存し、そして開業医の判断および各患者の状況によっても決定されなければならない。有効な用量は、インビトロまたは動物モデル試験バイオアッセイまたはシステムから導き出す用量反応曲線から推定することができる。
【0074】
本発明でのポリペプチドの供給源を含む組成物(すなわち、ここで上記に説明したような、IL-6/sIL-6Rポリペプチド複合体またはポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチド、または前記ポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター、またはポリペプチドを発現する細胞)は、体循環中に導入することができ、それはポリペプチドの供給源を毒性が起こった傷ついた組織に分配する。あるいは、ポリペプチドの供給源を含む組成物は、局所的に、毒性が起こる傷ついた組織に適用することができる〔例は、注射によって、または組織の範囲内のボーラス(大量瞬時投与)として〕。
【0075】
本発明でのポリペプチドの供給源を含む製薬上の組成物の対象体への導入の方法には、制限されないが、損傷を受けた組織への、またはその近くでの直接的投与、局所的、皮内、経皮的、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の投与が含まれる。化合物は、任意の都合のよいルートによって、たとえば、注入または大量瞬時投与によって、上皮層(epithelial linings)(例は、口腔粘膜、直腸および腸の粘膜、その他)を通した吸収によって投与することができ、そしてたとえば、他の治療上活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は、たとえば、耳下腺または顎下腺中のように局所化することができ、またはそれは全身的であることができる。
【0076】
局所的に処置が必要な傷ついた組織に本発明の製薬上の組成物を施すことは、望ましい場合があり、これは、たとえばであるが、制限するためにではなく、局所的注入、局所適用、例は、創傷被覆材と併せて、注射によって、カテーテルを使って、または移植を使うことによって達成することができ、前記移植は、多孔性、無孔、またはゼラチン状の物質である。若干の具体化に従い、投与は、毒性が起こった傷ついた組織の部位で、直接的注射(direct injection)によって、例は、シリンジ(注射器)を介して、または静脈内注入によってであることができる。
【0077】
若干の具体化に従えば、本発明でのポリペプチドの供給源は皮膚に適用することができる。たとえばであるが、制限するためにではなく、担体は、軟膏、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、エアゾール、坐剤、パッドまたはゲル状スティック(gelled stick)の形態であることができる。
【0078】
指向された内部適用については、製薬上の組成物はタブレットまたはカプセルの形態であることができ、それは似た性質の以下の成分または化合物のいずれかでも含むことができ、すなわち、バインダー(接合剤)で、たとえば、微結晶性セルロース、トラガカントゴムまたはゼラチンのようなもの、賦形剤で、たとえば、でんぷんまたはラクトースのようなもの、崩壊剤で、たとえば、アルギン酸、プリモゲル(Primogel)、またはコーンでんぷんのようなもの、潤滑剤で、たとえば、ステアリン酸マグネシウムのようなもの、または流動促進剤で、たとえば、コロイド状二酸化ケイ素のようなものである。薬用量単位の形態がカプセルであるとき、それは、上記の構成要素に加えて、脂肪油のような液体キャリヤーを含むことができる。そのうえ、薬用量単位の形態は、薬用量単位、たとえば、糖、セラックまたは他の腸溶性の薬剤のコーティング(被膜)の物理的な形態を修飾する種々の他の物質を含むことができる。
【0079】
本発明でのポリペプチドは、コントロールリリース(徐放)システムにおいて配送することができる。1つの具体化において、注入ポンプは、ポリペプチドを施すのに用いることができる。あるいはまた、本発明のポリペプチドは、生物分解可能な、生物学的適合性の重合体の移植片と併用して施すことができ、それは傷ついた組織にて制御された時間の間にわたりポリペプチドを放出する。好ましい重合体物質の例には、ポリ酸無水物、ポリオルトエステル類、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリエチレンビニルアセタート、共重合体およびそれらのブレンド(配合物)が含まれる〔Medical applications of controlled release(徐放の医学的応用)、Langer(ランガー)およびWise(ワイズ)(編)、1974年、CRC Pres、Boca Raton(ボカラトン)、Fla.(フロリダ州)参照〕。
組成物の使用
【0080】
電離放射線による腫瘍の処置(以下にまた、「ガン放射線療法」として言及する)は、ガン療法において広範囲に用いられる。そのような処置の目標は、腫瘍細胞の破壊を誘発して、DNAの損傷を通しておそらく腫瘍細胞増殖を妨げることであり、その一方で、非腫瘍細胞および組織に最小限の損傷しか引き起こさない。隣接した組織へのコラテラルダメージ(付帯的損傷)は、一定の腫瘍で、たとえば、腹腔および頚部での脳腫瘍および腫瘍のようなものの放射線療法の有効性を制限することが多い。
【0081】
ガン放射線療法のために放射線量を定めることでの最も有力な考慮は、治療照射野(treatment field)において最も放射線感受性の通常の組織/器官の寛容の評価である。問題は、遅発性逆反応が種々の時点で発達し、次いで隣接した組織での照射の終了が続くことである。これらの副作用は、隣接した組織への放射線によって引き起こされる若干の組織の損傷の結果である。この損傷は、累進的に最初の損傷を増悪させる炎症誘導サイトカインの放出と関係することが示唆される。
【0082】
本発明は、電離放射線と関係する毒性に対して保護し、防ぎ、または処置するための方法を提供し、それには、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、本発明でのポリペプチドの供給源および製薬上許容可能な担体を含む製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが含まれる。本発明に従うポリペプチドの供給源は、ヒトIL-6またはその類似体または断片、およびヒトsIL-6Rまたはその類似体または断片を本発明の原理に従って含むポリペプチド複合体、本発明でのポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチド、本発明でのポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクター、および本発明でのポリペプチドをコード化する分離されたポリヌクレオチドを含む発現ベクターでトランスフェクションされた宿主細胞に言及する。
【0083】
皮膚、口腔粘膜、食道粘膜、直腸粘膜、膣粘膜および膀胱上皮のような電離放射線によって悪影響を受けている正常な組織の多くは、照射後発達する急性および慢性の影響から保護することができる。
【0084】
このように、本発明での製薬上の組成物の投与は、それがより一層重篤な照射後合併症を管理するために方法を提供し、そしてそれらの大きさを効果的に制限することができるので、より一層高い放射線用量の使用を可能にする。
【0085】
本発明はさらに、化学療法と関係する毒性に対して保護し、防ぎ、または処置するための方法を提供し、それには、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、本発明でのポリペプチドの供給源および製薬上許容可能な担体を含む製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが含まれる。
【0086】
ここで用いるように、用語「処置性」、「処置する」または「処置」は、予防的(例は、予防薬)、緩和剤(対症療法的)、および根治的な治療が含まれる。このように、本発明の方法は、組織毒性、またはその危険性をもつ対象体での組織機能を改善するのに役立つ。1種の具体化に従えば、対象体は哺乳類である。別の具体化に従えば、哺乳類はヒト(人間)である。
【0087】
用語「治療上効果的な量」は、不当な生理学的悪影響または副作用を伴わずに、組織傷害または損傷を処置または防止するのに効果的な量を意味する。
【0088】
ここで用いるように、用語「毒性」は、認められた病原因子または薬剤、サイン(前兆)および徴候の同定可能な群で、副作用、望まれない効果、望ましくない効果、または異常なサインまたは徴候を含め、または一貫した解剖学的変更によって特徴付けられる疾患を意味する。
【0089】
若干の具体化において、本発明での方法は、電離放射線と関係する毒性を処置するのに用いられる。用語「電離放射線」は、ここで用いるように、結合をイオン化するのに十分なエネルギーをもつ光子で、たとえば、放射性核およびX線からのα、βおよびγ線のようなものに言及する。他のタイプの放射線は、それは、腫瘍組織を放射線で治療し、一方で正常な組織に損傷を与えるかもしれず、レーザー照射、マイクロ波照射、紫外線放射、赤外線または超音波温熱療法であり、すべてが本発明で包含される。適用される放射線は、特定の器官または組織に局所的に用いることができ、またはそれは全身放射線であることができる。
【0090】
他の具体化において、本発明での方法は、化学療法剤の投与と関係する毒性を処置するのに用いられる。
【0091】
化学療法剤の例には、制限されないが、タキサンで、たとえば、パクリタキセルおよびドセタキセルのようなもの、ナイトロジェンマスタードを含むアルキル化薬で、たとえばメタクロレタミン、シクロホスファミド、イホスファミド(ifosamide)、メルファラン〔フェナルフェニン(phenalphenine)マスタード〕およびクロラムブシルのようなもの、エチレンイミンおよびメチルメラミンで、たとえば、アルトレタミン、ジアジクオン(diaziquone)(AZQ)およびチオテパのようなもの、ブスルファンのようなアルキルスルホナート、ニトロソ尿素で、たとえば、カルマスチン(BCNU)、ロムスチン(CCNU)、セムスチン(メチル-CCNU)およびストレプトゾシン(ストレプトゾトシン)のようなもの、およびトリアゼンで、たとえば、ダカルバジン〔DTIC、ジメチルトリアゼノイミダゾールカルボキサミド(dimethyltriazenoimidazolecarboxamide)〕のようなもの、代謝拮抗物質で、それは、葉酸の類似体を含み、たとえば、メトトレキサート、トリメトレキセート、および他のジヒドロ葉酸のようなもの、ピリミジンの類似体で、たとえば、フルオロウラシル(5-フルオロウラシル、5-FU)、フロキシウリジン(フルオロデオキシウリジン、FUdR)およびシタラビン(シトシンアラビノシド)のようなもの、プリンの類似体および関連したインヒビター(抑制剤)で、たとえば、メルカプトプリン(6-メルカプトプリン、6-MP)、チオグアニン(6-チオグアニン、TG)およびペントスタチン(2′-デオキシコホルマイシン)のようなもの、自然な生成物で、それはビンカアルカロイドを含み、たとえば、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ナベルビンおよびビンクリスチンのようなもの、エピポドフィロトキシン(epipodophylotoxins)で、たとえば、エトポシドおよびテニポシドのようなもの、抗生物質で、たとえば、ダクチノマイシン(アクチノマイシンD)、ダウノルビシン〔ダウノマイシン、ルビドマイシン(rubidomycin)〕、ドキソルビシン、ブレオマイシン、プリカマイシン(ミトラマイシン)およびマイトマイシン(マイトマイシンC)のようなもの、L-アスパラギナーゼのような酵素、および生物学的反応修飾物質で、たとえば、インターフェロン-αおよび他のインターフェロンのようなもの、プラチナ配位錯体で、たとえば、シスプラチン(シス-DDP)、カルボプラチンおよびオキサリプラチンのようなもの、ミトキサントロンのようなアントラセンジオン、ヒドロキシ尿素のような置換された尿素、プロカルバジン(N-メチルヒドラジン、MIH)のようなメチルヒドラジド誘導体および副腎皮質抑止剤で、たとえば、ミトタン(o,p′-DDD)およびアミノグルテチミドのようなもの、副腎皮質ステロイドを含むホルモン類およびアンタゴニストで、たとえば、プレドニゾンのようなもの、プロゲスチンで、たとえば、ヒドロキシプロゲステロンカプロアート、メドロキシプロゲステロンアセタートおよびメゲストロールアセタートのようなもの、エストロゲンで、たとえば、ジエチルスチルベストロールおよびエチニルエストラジオールのようなもの、タモキシフェンのような抗エストロゲン、アンドロゲンで、たとえば、テストステロンプロピオナートおよびフルオキシメステロン(fluoxymetsterone)のようなもの、フルタミドのような抗アンドロゲン、およびロイプロリドのような生殖腺刺激ホルモン(ゴナドトロピン)放出ホルモンの類似体、カンプトセシンで、たとえば、イリノテカン、トポテカンのようなもの、ゲムシタビンのようなゲムシタジン(gemciatdins)、エストラムスチンホスファート、VM-26〔ブモン(vumon)〕およびオールトランスレチノイン酸(ATRA)が含まれる。これらの薬剤は普通に、頭部および頚部、卵巣、胸部、結腸、肺、前立腺、精巣および子宮頸部のガン、ならびに一定のリンパ腫、白血病、およびCNSのガンでの処置において用いられる。
【0092】
化学療法の薬剤の投与または放射線療法と関係する毒性には、制限されないが、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、肺毒性、血球減少、骨髄抑制、心毒性、脱毛症、不妊性および管外溢出から皮膚までの局所炎症が含まれる。目下模範的な具体化に従えば、毒性は口内乾燥である。
【0093】
用語「口内乾燥」は、ここで用いるように、唾液腺機能不全による口の乾燥を意味する。典型的に、口内乾燥は放射線によって誘導される。用語「急性口内乾燥」は、ここで用いるように、処置開始の90日内の、濃い、粘着性の唾液で、味覚変化、または急性唾液腺壊死を有する口の乾燥によって特徴付けられる口内乾燥を意味する。用語「遅発型口内乾燥」は、ここで用いるように、処置開始後の90日から2年までに起こる口内乾燥を意味し、唾液腺の乾燥、乏しい唾液産生、または線維症によって特徴付けられる。
【0094】
用語「粘膜炎」は、ここで用いるように、放射線または化学療法によって誘導される消化管の内側を覆う粘膜の膜の炎症を意味する。本発明は、急性粘膜炎および慢性粘膜炎を包含する。用語「急性粘膜炎」は、ここで用いるように、処置開始の90日内に起こる粘膜炎を意味し、パーチー(parchy)またはコンフルエントな偽膜、潰瘍化または壊死によって特徴付けられる。用語「遅発型粘膜炎」は、ここで用いるように、処置開始後の90日から2年までに起こる粘膜炎を意味し、粘膜萎縮、乾燥、毛細管拡張症または潰瘍化によって特徴付けられる。
【0095】
用語「神経毒性」は、ここで用いるように、指、足指、手および足における知覚の損失またはゆがみ、ならびにすばらしい筋肉運動の損失に言及し、服のボタン掛けのような日常的機能を実行することができないことをもたらす。より一層重篤なケースでは、神経毒性は、患者が歩行器または車椅子を必要とするように、十分な運動機能の損失によって明らかにされる。
【0096】
用語「中毒性難聴」は、ここで用いるように、高い周波数範囲(4000-8000Hz)において、耳鳴および/または聴力損失を意味する。中毒性難聴は、正常な会話の口調を聞くための減少した能力によって、そしてさらに聴覚消失によってさえも明らかにしうる。聴力損失は一側性、または両側性であることができ、より頻繁で、および度重なる処置に重篤になる傾向がある。
【0097】
電離放射線は、照射後数ヶ月または数年で発達することがある慢性の毒性をもたらすことが多いので、本発明はまた遅発型損傷または毒性が包含される。遅発型毒性の例には、制限されないが、線維症および脈管障害が含まれる。このように、たとえば、5%および20%の間の頻度で、骨盤のフィールド放射線療法のよく認められた合併症は直腸炎である。症状には、渋り、出血、下痢、および便失禁が含まれる。直腸炎は、大部分は骨盤照射への曝露の1年以上後と同じくらい遅く現れるかもしれない脈管障害による。脳腫瘍の照射は、放射線療法で、たとえば、脳障害および動脈の脈管障害のようなものの長期合併症と関係する。肺ガンは放射線に対して比較的耐性を示し、そして放射線肺炎は放射線量を増やすことに対する重大な障害である。電離放射線への肺の曝露は、2、3週後におさまる急性期(相)として間質性肺炎を誘導し、そして次いで照射後数ヶ月または数年で発達することができる慢性期として、炎症および線維症が続く。このように、本発明は、たとえば、電離放射線への曝露、次いでガンの照射治療から生じる線維症および脈管障害のような毒性を防ぎ、または処置するために方法を提供する。
【0098】
本発明での製薬上の組成物は、このように、種々のタイプのガンおよびそれらの転移で、制限されることはないが、乳がん、肺がん、扁平細胞がん、基底細胞がん、黒色腫、カポジ肉腫、前立腺がん、血管腫、髄膜腫、星状細胞腫、神経芽細胞腫、すい臓がん、胃がん、結腸直腸がん、大腸がん、膀胱の移行細胞がん、喉頭のがん、慢性脊髄性白血病、急性リンパ性白血病、急性前骨髄球性白血病、多発性骨髄腫、T細胞リンパ腫、B細胞リンパ腫、胆のう、気管支および皮膚のガンが含まれるものの、放射線療法または化学療法によって引き起こされる線維症を防ぎ、または治療するのに用いることができる。一定の具体化に従えば、本発明での製薬上の組成物は、口腔ガン、肺ガン、前立腺ガン、脳ガンおよび皮膚ガンに対する放射線療法によって引き起こされる線維症を防ぎ、または治療するのに用いることができる。
【0099】
放射線によって処置することができる他の状況には、乾癬および眼内炎症(たとえば、レーザー照射に起因する)が含まれる。
【0100】
本発明での製薬上の組成物は、化学療法剤および/または放射線療法の管理に先立って、同時に、および/またはその後に施すことができる。若干の具体化に従い、製薬上の組成物は、電離放射線または化学療法剤の投与に先立って24時間を超えないで投与される。他の具体化に従えば、製薬上の組成物は、電離放射線または化学療法剤の投与に先立って12時間を超えないで投与される。さらなる具体化に従い、製薬上の組成物は電離放射線または化学療法剤の投与に先立って4時間を超えないで投与される。さらなる具体化に従えば、製薬上の組成物は、電離放射線または化学療法剤の投与に先立って1時間を超えないで投与される。
【0101】
本発明でのポリペプチドの供給源は、単独で、または他の治療上の薬剤と併用して投与することができる。
例1
ラットでの放射線誘導口内乾燥上のハイパーIL-6の効果
【0102】
動物
12時間の明暗サイクルで、〜23℃の温度にて、雄性のサブララット(Sabra rat)〔200-230グラム(gr)〕を、Harlan(ハーラン)(イスラエル)から購入し、そしてSPF条件下で中央動物施設において維持した。ラットは商業的な齧歯目の固形飼料および適宜の(アドリブで)水を受け、そして使用に先立ち少なくとも5日の間順応させた。すべての処置プロトコールは、施設内動物ケアおよび使用委員会(Institutional Animal Care and Use Committee)によって承認を受けた。ハイパーIL-6(50ng)または塩類溶液各々を、先細のポリエチレン管(PE 10)での腺のカニューレ挿入を介して、照射前4時間の麻酔されたラットに対し顎下腺につき50μlの容量で注入した。照射は、麻酔されたラット上でそれらの背中において実行し、それらの頭頸部領域にだけ曝露する。放射線に対する他の器官の曝露を防ぐために、残りの体は、パースペックスボディシールドを用いて保護した。ワックス層の厚さ1cmを、相同の投薬を確実にするために照射されるエリアにおく。フィールド32×5cmで、照射を17.5Gyの単一の曝露で実行し、放射線率は600の機械単位/分、照射源および標的の間の距離(SSD)90cm(CLINAC 6、X線放射線)であった。コントロールラットは、シャム照射された。
【0103】
唾液腺機能の分析
唾液腺流体出力の測定を、照射後8週間評定した。麻酔されたラットを気管切開し(tracheotomized)、そして顎下腺の主な排泄ダクト(導管)を、先細のポリエチレン管(PE 10)でカニューレ挿入した。唾液を、20分間各々の腺から別に収集し、次いで注射を介してピロカルピン(5mg/Kg、s.c.)刺激を続けた。
【0104】
組換えハイパー-IL-6タンパク質
欧州特許第EP-B1 0 888 384号明細書によって定義されるように、ハイパーIL-6は柔軟なペプチドリンカーによって可溶性IL-6R(sIL-6R)に共有結合して付着するヒトIL-6からなるタンパク質複合体である。組換えハイパー-IL-6タンパク質は、HIL-6遺伝子カセットを運ぶ遺伝子工学によるチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞の培養上清から調製した。HIL-6を陰イオン交換クロマトグラフィーおよびゲルろ過によって上清から精製し、そして次いでドデシル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動および銀染色によって視覚化した〔Peters(ピータース)ら、J. Immunol. 161:3575-3581、1998年)。
【0105】
統計分析
手段の統計比較は、GraphPad InStat(R)〔グラフパッド・インスタット(商標)〕ソフトウェアを用いる一元配置分散分析(One-way Analysis of Variance)(ANOVA)によって実行した。P≦0.05は有意であると考えられる。
【0106】
結果
放射線曝露後の2ヵ月での、唾液腺流体出力によって測定されるような唾液腺機能の分析は、17.5Gyの照射が唾液腺機能の37%の低下を誘導したことを明らかにした(図1)。対照的に、ハイパー-IL-6で前処理されたラットは、唾液腺機能の10%の縮小だけしか示さなかった(図1)。類似した所見は、2つの独立した実験で観察された。これらの結果は、照射前のハイパー-IL-6による唾液腺の処置が、傷害からほとんど完全な保護を与え、そして腺機能を維持することを例証する。このように、電離放射線への曝露に先立つハイパー-IL-6による唾液腺の処置は、ラットでの口内乾燥の防止のために有用である。
例2
マウスでの放射線誘導口内乾燥上のハイパー-IL-6の効果
【0107】
動物
雌性のC3Hマウス(5-6週齢の、8-19グラム)をハーラン(イスラエル)から購入し、そして12時間の明暗サイクルで、〜23℃の温度にて、SPF条件下に中央動物施設において維持した。マウスは商業的な齧歯目の固形飼料および適宜の水を受け、そして使用に先立ち少なくとも5日の間順応させた。すべての処置プロトコールは、施設内動物ケアおよび使用委員会によって承認を受けた。ハイパーIL-6(50-100ng)または塩類溶液を、先細のポリエチレン管(PE 10)での腺のカニューレ挿入を介して、照射前3から4時間までの麻酔されたマウスに対し顎下腺につき50μlの容量で注入した。頭頚部領域に対する照射(15Gy)は、パースペックホールディングチャンバーにおいておかれた麻酔されてないマウス上で実行した。フィールド32×6cmにおいて、照射を15Gyの単一の曝露で実行し、600mGy/分の放射線率、SSD 100cm(CLINAC 6、X線放射線)であった。
【0108】
結果
唾液腺機能および体重を、放射線曝露後の2ヵ月に評定し、そして未処理コントロールマウスと比較した。実験は、17.5Gyの照射が唾液腺機能での48%の低下(図2A)および体重での31%の低下(図2B)を誘導することを明らかにした。対照的に、50または100ngのハイパー-IL-6で前処理されたマウスは、唾液腺機能において30%および12%の低下だけをそれぞれ示し(図2A)、体重での27%および11%の低下をそれぞれ(図2B)示した。類似した所見は、2件の独立した実験において観察された。これらの結果は、照射に先立つハイパー-IL-6での唾液腺の処置が傷害からのほとんど完全な保護を与え、そして腺機能を維持することを例証する。このように、電離放射線への曝露に先立つハイパー-IL-6による唾液腺の処置は、マウスにおいて口内乾燥の防止のために有用である。
【0109】
放射線および化学療法を含むガン療法は、健康な組織の無差別の傷害をもたらすことが多く、一時的またはさらに永久的な性質の望ましくない副作用が導かれ、そして効果的に治療剤の適用可能な用量が制限される。放射線または化学療法剤による処置に先立ってハイパー-IL-6へのこれらの組織の局所的または制限された曝露は、このように、傷害の範囲を、正常な、健康な組織に対し防ぎ、またはその範囲を制限するために有用であり、それによって患者の生活の質を改善する一方で、所定の治療剤の腫瘍に対する許容可能な投薬量を広げる。
例3
STAT3、ERKおよびAKTによって媒介されるシグナル伝達の誘導上のハイパー-IL-6の効果
【0110】
ハイパー-IL-6の、STAT3、ERKおよびAKTによって媒介されるシグナル伝達の誘導上の効果を、マウスにおいて調査した。雌性のC3Hマウスからの唾液腺を、ハイパー-IL-6(100ng)または塩類溶液のいずれかで、20、35、または50μlの容量にて顎下唾液腺にカニューレを介して注入した。唾液腺を60分後に取り出し、そしてタンパク質抽出物を、ウエスタンブロット分析によって、pSTAT3、pERK、およびpAKTタンパク質について分析した。
【0111】
pSTAT3、pERK1/2およびpAKTのウエスタンブロット分析
タンパク質抽出物を、0.5mlの全体細胞溶解バッファー(1%のNP-40、10mMのトリスpH 7.8、150mMのNaCl、40mMのEDTA、10mMのNa-ピロリン酸、10mMのNaF、1mMのPMSF、4mMのバナジン酸、ペプスタチンAの1mg/ml、ロイペプチン2mg/ml)における均質化によって組織試料(〜50mg)から調製した。タンパク質抽出物(50μg)を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって分離し、ウエスタンブロット分析を行った。ウエスタンブロットを、それぞれ抗pSTAT3マウスmAb〔Santa Cruz Biotechnology(サンタクルス・バイオテクノロジー社)、サンタクルス、CA(カリフォルニア州)〕、抗-pERK1/2マウスmAb〔Sigma(シグマ社)〕または抗pAKTウサギmAb〔Cell Signaling(セル・シグナリング社)、Danvers(ダンヴァーズ)、MA(マサチューセッツ州)〕、および抗-マウスHRPポリマーまたは抗ラビットHRPポリマー〔DAKO(ダコー社)〕で、それぞれ探索した。ブロットを、ECL-プラスのウエスタンブロット検出システム(ECL-Plus Western blotting Detection System)〔Amersham(アマシャム社)〕を用いて発色させた。負荷コントロールとして、ブロットを、0.1MのグリシンpH 2.8で剥ぎ取り、単クローン性抗-β-アクチン抗体、クローンAC-74(シグマ)で再度探索し、そしてHRP Envision(エンビジョン)(DAKO)で発色させた。
【0112】
結果
図3は、STAT3、ERK、およびAKTによって媒介されるハイパー-IL-6誘導シグナル伝達が注入量にある程度影響を受けることを示す。ハイパーIL-6注入は唾液腺においてSTAT3、ERK1/2およびAKTを活性化し、そしてそれは1つの腺につき50μlの容量を用いて最も効率的であった。
【0113】
この技術において熟練する者によって、本発明が、特に上記本明細書に示し、説明したものによって制限されないことは認められるであろう。むしろ、本発明の範囲は、あとに続く請求の範囲によって規定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電離放射線と関係する毒性を防ぎ、または処置するにあたり、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL−6またはその生物学的に活性なアナログ(類似体)またはフラグメント、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL−6受容体(sIL−6R)またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメントが含まれるポリペプチド複合体、および製薬上許容可能なキャリヤー(担体)を含む製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、方法。
【請求項2】
ポリペプチド複合体は配列番号3で表されるハイパー−IL−6である、請求項1に従う方法。
【請求項3】
毒性は口内乾燥である、請求項1に従う方法。
【請求項4】
口内乾燥は急性口内乾燥である、請求項3に従う方法。
【請求項5】
口内乾燥は遅発型口内乾燥である、請求項3に従う方法。
【請求項6】
製薬上の組成物を施す経路は、前記毒性をもつ組織中に、またはその近くでの直接の投与、局所的、経皮的、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の投与からなる群より選ばれる、請求項1に従う方法。
【請求項7】
製薬上の組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン類、タブレット、カプセル、粉体、坐剤、および持続性製剤からなる群より選ばれる形態において調剤される、請求項1に従う方法。
【請求項8】
製薬上の組成物は電離放射線への対象体の曝露に先立ち投与される、請求項1に従う方法。
【請求項9】
製薬上の組成物は電離放射線への対象体の曝露と同時に投与される、請求項1に従う方法。
【請求項10】
製薬上の組成物は電離放射線への対象体の曝露の後で投与される、請求項1に従う方法。
【請求項11】
化学療法剤を対象体に施すのに関係する毒性を防ぎ、または処置する方法であって、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL−6またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメント、および配列番号2で表されるようなヒトsIL−6Rまたはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメントが含まれるポリペプチド複合体、および製薬上許容可能なキャリヤーを含む製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、方法。
【請求項12】
ポリペプチド複合体は配列番号3で表されるようなハイパー−IL−6である、請求項11に従う方法。
【請求項13】
毒性は口内乾燥である、請求項11に従う方法。
【請求項14】
口内乾燥は急性口内乾燥である、請求項13に従う方法。
【請求項15】
口内乾燥は遅発型口内乾燥である、請求項13に従う方法。
【請求項16】
製薬上の組成物を施す経路は、前記毒性をもつ組織中に、またはその近くでの直接の投与、局所的、経皮的、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、硬膜外、および経口の投与からなる群より選ばれる、請求項11に従う方法。
【請求項17】
製薬上の組成物は、溶液、懸濁物、エマルジョン類、タブレット、カプセル、粉体、坐剤、および持続性製剤からなる群より選ばれる形態において調剤される、請求項11に従う方法。
【請求項18】
製薬上の組成物は化学療法剤の投与に先立って投与される、請求項11に従う方法。
【請求項19】
製薬上の組成物は化学療法剤の投与と同時に投与される、請求項11に従う方法。
【請求項20】
製薬上の組成物は化学療法剤の投与の後で投与される、請求項11に従う方法。
【請求項21】
化学療法剤は、シスプラチン、カルボプラチン、パクリタキセル、ビンブラスチン、ビンクリスチン、およびメトトレキサートからなる群より選ばれる、請求項11に従う方法。
【請求項22】
対象体に対する電離放射線と、または化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぎ、または処置するにあたり、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL−6またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメント、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL−6受容体(sIL−6R)またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメントを含むポリペプチド複合体をコード化する分離されたポリヌクレオチド、および製薬上許容可能なキャリヤーが含まれる製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、方法。
【請求項23】
対象体に対する電離放射線と、または化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぎ、または処置するにあたり、そのような処置が必要な対象体に、活性な薬剤として、配列番号1で表されるようなヒトIL−6またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメント、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL−6受容体(sIL−6R)またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメントを含むポリペプチド複合体をコード化する分離されたポリヌクレオチドが含まれる発現ベクター、および製薬上許容可能なキャリヤーを含む製薬上の組成物の治療上効果的な量を施すことが包含され、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、方法。
【請求項24】
配列番号1で表されるようなヒトIL−6またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメント、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL−6受容体(sIL−6R)またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメントを含むポリペプチド複合体の使用であって、電離放射線と関係する毒性を防ぎ、または処置するための薬の調製用の使用であり、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、使用。
【請求項25】
ポリペプチド複合体は配列番号3で表されるようなハイパー−IL−6である、請求項24に従う使用。
【請求項26】
電離放射線と関係する毒性は口内乾燥である、請求項24に従う使用。
【請求項27】
配列番号1で表されるようなヒトIL−6またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメント、および配列番号2で表されるようなヒト可溶性IL−6受容体(sIL−6R)またはその生物学的に活性なアナログまたはフラグメントを含むポリペプチド複合体の使用であって、化学療法剤の投与と関係する毒性を防ぎ、または処置するための薬の調製用の使用であり、毒性は、口内乾燥、粘膜炎、神経毒性、中毒性難聴、骨髄抑制、心毒性、肺毒性、血球減少、脱毛症、脈管障害、不妊性、および食道、腸、およびすい臓への毒性からなる群より選ばれる、使用。
【請求項28】
ポリペプチド複合体は配列番号3で表されるようなハイパー−IL−6である、請求項27に従う使用。
【請求項29】
化学療法剤の投与と関係する毒性は口内乾燥である、請求項27に従う使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4−1】
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【図4−2】
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【公表番号】特表2011−504924(P2011−504924A)
【公表日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535511(P2010−535511)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際出願番号】PCT/IL2008/001556
【国際公開番号】WO2009/069133
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(500545311)ハダシット メディカル リサーチ サービシーズ アンド ディベロップメント リミテッド (8)
【Fターム(参考)】