説明

放射線撮影システム及び放射線撮影方法

【課題】電界電子放出型の放射線源を用いて短いSIDで被写体の撮影を行う場合に、放射線の照射範囲を容易に拡大できると共に、被写体に最適な線量の放射線を照射する。
【解決手段】放射線撮影システム及び放射線撮影方法では、少なくとも2つの放射線源(18a〜18c)のうち、少なくとも一方の放射線源(18b)から被写体(14)に放射線(16b)を照射するプレ曝射を行うことによりプレ曝射画像を取得し、該プレ曝射画像に基づいて、少なくとも2つの放射線源(18a〜18c)から出力される各放射線(16a〜16c)の線量の重み付けを行い、該重み付けに従って少なくとも2つの放射線源(18a〜18c)から被写体(14)に放射線(16a〜16c)を照射する本曝射を行うことにより本曝射画像を取得する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線出力装置に収容された複数の放射線源から被写体に放射線を照射し、該被写体を透過した各放射線を放射線検出装置で検出して放射線画像に変換する放射線撮影システム及び放射線撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において、放射線源から被写体に放射線を照射し、該被写体を透過した前記放射線を放射線検出装置で検出することにより、前記被写体の放射線画像を取得する放射線撮影システムが広汎に使用されている。例えば、病院(医療機関)に配設された放射線撮影システムでは、通常、比較的大型且つ大重量の熱電子放出型の放射線源が使用されている。
【0003】
しかしながら、このような放射線撮影システムを、病院内での回診時における放射線画像の撮影や、病院外での放射線画像の撮影、例えば、検診車での撮影、自然災害等の災害現場や在宅医療の現場での撮影にそのまま適用すれば、大型且つ大重量の放射線源を現場まで搬送して撮影を行うことになるので、医師又は放射線技師の負担が大きくなる。そこで、特許文献1には、熱電子放出型の放射線源よりも小型且つ軽量な電界電子放出型の放射線源が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−103016号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電界電子放出型の放射線源を現場で動作させる場合、電源の確保が困難であることが想定されるので、電界電子放出型の放射線源は、バッテリ駆動の放射線源であることが望ましい。従って、現場で使用される電界電子放出型の放射線源は、小型且つ軽量な放射線源であると共に、小線量の放射線を出力する放射線源となる。そのため、医師又は放射線技師は、現場において、前記電界電子放出型の放射線源をできる限り被写体に近づけ、該放射線源と放射線検出装置との間の距離(線源受像画間距離(SID))を短く設定した状態で、前記被写体に対する放射線画像の撮影を行う必要がある。この結果、前記電界電子放出型の放射線源から出力される放射線の照射範囲が狭くなると共に、前記被写体に照射される放射線の線量(曝射線量)が小さいため、医師の読影診断に適した曝射線量の放射線画像を得ることができなくなる。
【0006】
このような問題を解決するためには、電界電子放出型の放射線源を複数個用意して、所望の照射範囲(被写体の撮影部位)をカバーできるように前記各放射線源から被写体に放射線を照射させるか、あるいは、1つの電界電子放出型の放射線源を移動させながら、移動した箇所から前記被写体に放射線を照射して、前記照射範囲をカバーできるようにすることが考えられる。
【0007】
ところで、被写体に放射線を照射する場合、該被写体に応じた最適な線量(曝射線量)の放射線を前記被写体に照射することができれば、医師の読影診断に適した曝射線量の放射線画像が得られると共に、前記被写体の不用意な被曝を回避することができる。
【0008】
しかしながら、前述のように、単に、所望の照射範囲をカバーできるように電界電子放出型の放射線源から被写体に放射線を照射するだけでは、最適な線量の放射線を前記被写体に照射させることはできない。
【0009】
本発明は、上記の課題を解消するためになされたものであり、電界電子放出型の放射線源を用いて短いSIDで被写体に対する放射線画像の撮影を行う場合に、放射線の照射範囲を容易に拡大できると共に、該被写体に対して最適な線量の放射線を照射することが可能となる放射線撮影システム及び放射線撮影方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の目的を達成するために、本発明に係る放射線撮影システムは、
被写体に放射線を照射可能な放射線源を少なくとも2つ収容する放射線出力装置と、前記被写体を透過した放射線を検出して放射線画像に変換する放射線検出装置と、前記放射線出力装置及び前記放射線検出装置を制御する制御装置とを備え、
前記少なくとも2つの放射線源のうち、少なくとも一方の放射線源から前記被写体に放射線を照射するプレ曝射が行われた場合に、前記放射線検出装置は、前記被写体を透過した前記放射線を検出することにより、前記プレ曝射での放射線画像であるプレ曝射画像を取得し、
前記制御装置は、前記プレ曝射画像に基づいて前記少なくとも2つの放射線源から出力される各放射線の線量の重み付けを行い、前記重み付けに従って前記少なくとも2つの放射線源から前記被写体に前記各放射線を照射する本曝射を行うように前記放射線出力装置を制御すると共に、前記被写体を透過した前記各放射線を検出して前記本曝射での放射線画像である本曝射画像を取得するように前記放射線検出装置を制御することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る放射線撮影方法は、
放射線源が放射線出力装置に少なくとも2つ収容されている場合に、前記少なくとも2つの放射線源のうち、少なくとも一方の放射線源から被写体に放射線を照射するプレ曝射を行い、
前記被写体を透過した前記放射線を放射線検出装置で検出することにより、前記プレ曝射での放射線画像であるプレ曝射画像を取得し、
前記プレ曝射画像に基づいて前記少なくとも2つの放射線源から出力される各放射線の線量の重み付けを行い、前記重み付けに従って前記少なくとも2つの放射線源から前記被写体に前記各放射線を照射する本曝射を行い、
前記被写体を透過した前記各放射線を前記放射線検出装置で検出することにより、前記本曝射での放射線画像である本曝射画像を取得することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、放射線出力装置に収容された少なくとも2つの放射線源のうち、少なくとも一方の放射線源により被写体に対するプレ曝射を行い、該プレ曝射により得られたプレ曝射画像に基づいて、本曝射の際に前記少なくとも2つの放射線源から出力される各放射線の線量の重み付けを行う。
【0013】
このように、本発明では、単純に所望の照射範囲(被写体の撮影部位)をカバーできるように放射線の照射範囲を設定するのではなく、前記本曝射に先立って行われる前記プレ曝射により取得した前記プレ曝射画像に基づいて、該本曝射の際に前記各放射線源から出力される前記各放射線の線量の重み付けを行っている。しかも、前記プレ曝射画像には前記被写体の撮影部位が写り込んでいるので、該撮影部位に従って前記各放射線の線量の重み付けが行われることになる。
【0014】
従って、本発明では、電界電子放出型の放射線源を用いて短いSIDで被写体に対する放射線画像の撮影(本曝射)を行っても、放射線の照射範囲を容易に拡大することができると共に、該被写体に対して最適な線量(曝射線量)の放射線を照射させることが可能となる。このように、本発明では、前記被写体に応じた最適な線量の放射線を被写体に照射することができるので、医師の読影診断に適した放射線画像(本曝射画像)が得られると共に、前記被写体の不用意な被曝を回避することができる。
【0015】
なお、放射線出力装置と放射線検出装置とを対向させた場合に、放射線が照射される放射線検出装置の照射面に対して、少なくとも2つの放射線源が一次元配列、又は、少なくとも3つの放射線源が二次元配列されていれば、どのような撮影部位に対する放射線画像の撮影でも効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本実施形態に係る放射線撮影システムの構成図である。
【図2】図2Aは、図1の放射線出力装置及び放射線検出装置が一体となっている斜視図であり、図2Bは、放射線出力装置と放射線検出装置とを離間させた状態を示す斜視図である。
【図3】図3A及び図3Bは、放射線検出装置に対する被写体の撮影部位のポジショニングを示す平面図である。
【図4】図4A及び図4Bは、放射線出力装置の斜視図である。
【図5】図5A及び図5Bは、被写体の撮影部位に対する放射線の照射を示す側面図である。
【図6】図6A及び図6Bは、被写体の撮影部位に対する放射線の照射を示す側面図である。
【図7】図1の放射線出力装置及び放射線検出装置のブロック図である。
【図8】図1の制御装置のブロック図である。
【図9】図7の放射線検出装置の回路構成図である。
【図10】図8のデータベースに格納されたオブジェクトデータの一例を示す説明図である。
【図11】図8のデータベースに格納されたテーブルの一例を示す説明図である。
【図12】図8のデータベースに格納されたテーブルの一例を示す説明図である。
【図13】図1の放射線撮影システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図14】図1の放射線撮影システムの動作を説明するためのフローチャートである。
【図15】図15A及び図15Bは、本実施形態の第1変形例を示す側面図である。
【図16】図16A及び図16Bは、本実施形態の第2変形例を示す斜視図である。
【図17】図17A及び図17Bは、本実施形態の第3変形例を示す斜視図である。
【図18】本実施形態の第4変形例を示すブロック図である。
【図19】本実施形態の第4変形例を示すブロック図である。
【図20】本実施形態の第4変形例の動作を説明するためのフローチャートである。
【図21】本実施形態の第4変形例の他の動作を説明するためのフローチャートである。
【図22】本実施形態の第5変形例を示す断面図である。
【図23】図22の放射線検出器の1画素部分の信号出力部の構成を概略的に示した断面図である。
【図24】図24Aは、本実施形態の第6変形例を模式的に示す概略説明図であり、図24Bは、図24Aのシンチレータの一例を模式的に示す概略説明図である。
【図25】図25A及び図25Bは、本実施形態に第7変形例を適用して被写体の撮影部位に対する放射線の照射を実施する場合を図示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る放射線撮影システムについて、放射線撮影方法との関連で、好適な実施形態を、図1〜図25Bを参照しながら以下詳細に説明する。
【0018】
[本実施形態の構成]
本実施形態に係る放射線撮影システム10は、図1に示すように、ベッド等の撮影台12に横臥した被写体14に対して、放射線16a〜16cを照射可能な複数の放射線源18a〜18cを収容する放射線出力装置20と、被写体14を透過した放射線(放射線16a〜16cのうち少なくとも1つの放射線)を検出して放射線画像(プレ曝射画像、本曝射画像)に変換する放射線検出装置22と、放射線出力装置20及び放射線検出装置22を制御する制御装置24とを備える。この場合、制御装置24と放射線出力装置20及び放射線検出装置22との間の信号の送受信は、例えば、UWB(Ultra Wide Band)、IEEE802.11.a/b/g/n等の無線LAN、又は、ミリ波等を用いた無線通信により行ってもよいし、あるいは、ケーブルを用いた有線通信により信号の送受信を行ってもよい。
【0019】
また、放射線撮影システム10は、病院(医療機関)内の放射線科の撮影室における被写体14(患者)に対する放射線画像の撮影や、病院内の回診時での病室にいる被写体14(患者)に対する放射線画像の撮影や、病院外での被写体14に対する放射線画像の撮影に適用可能である。病院外での撮影としては、例えば、検診車での健康診断時における被写体14(受診者)に対する撮影や、自然災害等の災害現場における被写体14(怪我人)に対する撮影や、在宅医療の現場における被写体14(在宅者)に対する撮影がある。
【0020】
このような種々の適用を実現すべく、本実施形態に係る放射線撮影システム10において、放射線源18a〜18cは、特許文献1のような電界電子放出型の放射線源であることが望ましい。また、これらの放射線源18a〜18cを収容する放射線出力装置20での放射線16a〜16cの出力箇所とは反対側の箇所には、医師又は放射線技師(以下、単に、医師という。)26が把持する取手28が設けられている。従って、放射線出力装置20は、可搬型の装置である。
【0021】
放射線検出装置22は、被写体14を透過した放射線をシンチレータにより可視光に一旦変換し、変換した可視光をアモルファスシリコン(a−Si)等の物質からなる固体検出素子(以下、画素ともいう。)により電気信号に変換する間接変換型の放射線検出器、又は、被写体14を透過した放射線をアモルファスセレン(a−Se)等の物質からなる固体検出素子により電気信号に直接変換する直接変換型の放射線検出器を内蔵する可搬型の電子カセッテである。
【0022】
制御装置24は、携帯型の情報端末(例えば、ノートブック型のパーソナルコンピュータ(PC)、タブレットPC、携帯情報端末(PDA))であることが望ましい。なお、放射線撮影システム10を放射線科の撮影室に適用する場合には、制御装置24を据置型のコンソールとし、放射線出力装置20及び放射線検出装置22を可搬型の装置としてもよい。
【0023】
図2A及び図2Bに示すように、放射線検出装置22は、放射線16a〜16c(図1参照)を透過可能な材料からなる矩形状の筐体30を有し、被写体14が位置決め(ポジショニング)される表面(上面)は、放射線16a〜16cが照射される照射面32とされている。照射面32には、放射線16a〜16cの撮影領域及び撮影位置の基準となるガイド線34が形成され、該ガイド線34の外枠部分は、放射線16a〜16cを照射可能な領域である撮影可能領域36とされている。また、筐体30の一側面には、放射線検出装置22をオン又はオフさせるためのスイッチ38と、図示しないメモリカードを装填するためのカードスロット40と、ACアダプタの入力端子42と、図示しないUSBケーブルが接続されるUSB端子44とが配設されている。
【0024】
さらに、スイッチ38、カードスロット40、入力端子42及びUSB端子44が配設される側面とは反対側の側面には、外方に突出形成された保持部35、37が設けられている。保持部35には、保持部37と対向するように凸状の接続端子39が設けられ、一方で、保持部37には、接続端子39と対向するように凹状の接続端子41が設けられている(図2B〜図3B参照)。また、前述した放射線出力装置20を構成する円筒状の筐体46の両端部には、接続端子39と嵌合可能な凹状の接続端子43と、接続端子41と嵌合可能な凸状の接続端子45とがそれぞれ設けられている(図2B、図4A及び図4B参照)。
【0025】
ここで、接続端子39と接続端子43とを嵌合させると共に、接続端子41と接続端子45とを嵌合させることにより、図2Aのように、放射線出力装置20を保持部35、37間で保持することが可能になると共に、接続端子39と接続端子43とが電気的に接続され、且つ、接続端子41と接続端子45とが電気的に接続される。このように、放射線出力装置20と放射線検出装置22とが一体となった状態で、医師26は、例えば、取手28を把持して、放射線出力装置20及び放射線検出装置22を搬送することができる。なお、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の一体状態において、放射線出力装置20における放射線16a〜16cの出力箇所は、放射線検出装置22の筐体30の側面に向けられている。
【0026】
一方、保持部35、37及び接続端子39、41、43、45による放射線検出装置22の保持状態を解除して、放射線出力装置20から放射線検出装置22を離間させることにより、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の一体状態が解消されると共に、接続端子39と接続端子43との電気的な接続状態や、接続端子41と接続端子45との電気的な接続状態が解除される。
【0027】
図3A及び図3Bに示すように、被写体14のポジショニングを行う場合には、平面視で、被写体14の撮影部位の中心位置と撮影可能領域36の中心位置(ガイド線34の交差箇所)とが略一致し、且つ、前記撮影部位が撮影可能領域36に納まるように該撮影部位をポジショニングする。なお、図3Aは、被写体14の胸部を撮影部位としてポジショニングする場合を図示したものであり、図3Bは、被写体14の右手を撮影部位としてポジショニングする場合を図示したものである。
【0028】
図4A及び図4Bに示すように、放射線出力装置20は、放射線16a〜16cを透過可能な材料からなる円筒状の筐体46を有し、該筐体46の内部には、例えば、3つの電界電子放出型の放射線源18a〜18cが一方向に沿って配置(一次元配列)されている。また、筐体46の一端部には、図示しないUSBケーブルが接続されるUSB端子50と前述した接続端子43とが配設され、他端部には前述した接続端子45が配設されている。さらに、筐体46の側面には、前述した取手28が配設され、該取手28にはタッチセンサ52(把持状態検出センサ)が内蔵されている。
【0029】
タッチセンサ52は、静電容量式又は抵抗膜式の接触センサであり、医師26が取手28を把持して、該医師26の手がタッチセンサ52を構成する図示しない電極に接触すると、タッチセンサ52は、前記手と前記電極とが接触したことを示す検出信号を出力する。また、タッチセンサ52は、プッシュスイッチ等のメカニカルスイッチであってもよい。この場合、医師26が取手28を把持してメカニカルスイッチに接触すると、タッチセンサ52は、メカニカルスイッチがオン又はオフになったことを示す信号を検出信号として出力する。
【0030】
ここで、医師26が取手28を把持した状態で放射線出力装置20を被写体14に向けると、放射線出力装置20は、タッチセンサ52からの検出信号の出力に起因して、少なくとも1つの放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを出力することが可能となる(図4B参照)。また、各放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを出力することが可能である場合に、放射線出力装置20は、各放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを一斉に出力するか、又は、順次出力することもできる。なお、保持部35、37及び接続端子39、41、43、45によって、放射線出力装置20及び放射線検出装置22が一体状態である場合、医師26が取手28を把持しても、放射線出力装置20は、各放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力を許可しない(禁止する)。
【0031】
図5A及び図5Bは、比較的大きな撮影部位である被写体14の胸部を撮影する場合を図示したものであり、図6A及び図6Bは、比較的小さな撮影部位である被写体14の手を撮影する場合を図示したものである。この場合、放射線出力装置20の筐体46内には、図5A〜図6Bの左右方向(筐体46の長手方向)に沿って3つの放射線源18a〜18cが配置されている。また、少なくとも1つの放射線源18a〜18cから被写体14の撮影部位に放射線16a〜16cが照射された場合、該撮影部位を透過した放射線は、放射線検出装置22の筐体30の表面(図2A〜図3Bに示す撮影可能領域36)を透過して、該筐体30に内蔵された放射線検出器60に導かれる。放射線検出器60は、前述した間接変換型の放射線検出器又は直接変換型の放射線検出器であり、前記放射線を検出して放射線画像に変換する。
【0032】
ところで、可搬型の放射線出力装置20を病院内又は病院外の現場で動作させる場合、電源の確保が困難であることが想定されるので、放射線出力装置20の各放射線源18a〜18cは、バッテリ駆動の放射線源であることが望ましい。すなわち、電界電子放出型の放射線源18a〜18cは、放射線科の撮影室に配置される熱電子放出型の放射線源と比較して、小型且つ軽量な放射線源であると共に、小さな線量の放射線を出力する放射線源となる。
【0033】
この場合、医師26は、現場において、放射線出力装置20をできる限り被写体14に近づけて、各放射線源18a〜18cと放射線検出装置22内の放射線検出器60との間の距離(線源受像画間距離(SID))を短く設定した状態で、被写体14に対する放射線画像の撮影を行う必要がある。この結果、各放射線源18a〜18cから出力される放射線16a〜16cの照射範囲が狭くなると共に、被写体14に照射される放射線16a〜16cの線量(曝射線量)が小さいため、医師26の読影診断に適した曝射線量の放射線画像(本曝射画像)を得ることができなくなる場合がある。
【0034】
また、被写体14の撮影部位及びその厚み等に応じた最適な線量(曝射線量)の放射線を被写体14に照射することができれば、医師26の読影診断に適した曝射線量の放射線画像が得られると共に、被写体14に対する不用意な被曝を回避することができる。
【0035】
そこで、本実施形態では、放射線出力装置20に少なくとも2つの放射線源(図4A〜図6Bでは3つの放射線源18a〜18c)を配置する。
【0036】
そして、被写体14に対する放射線画像の撮影の際には、先ず、少なくとも2つの放射線源のうち、少なくとも一方の放射線源(図5A及び図6Aでは中央の放射線源18b)から被写体14に比較的小さな線量の放射線(図5A及び図6Aでは放射線16b)を照射するプレ曝射を行う。これにより、被写体14を透過した少なくとも1つの放射線が放射線検出器60で検出され、該プレ曝射時における放射線画像としてのプレ曝射画像に変換される。次に、得られた前記プレ曝射画像に写り込んでいる被写体14の撮影部位を特定する。
【0037】
なお、比較的小さな線量の放射線16bとは、医師26の読影診断に適した曝射線量よりも十分に小さい線量の放射線であって、プレ曝射画像に写り込んだ被写体14の撮影部位が、該被写体14中、どの撮影部位であるのかを特定可能な程度の線量の放射線をいう。このように、1つの放射線源18bからの放射線16bのみによってプレ曝射が行われるので、プレ曝射での被写体14の撮影部位に対する曝射線量を最小化することが可能である。
【0038】
また、図5Aに示す比較的大きな撮影部位(胸部)に対するプレ曝射では、胸部の一部にしか放射線16bが照射されないので、取得されるプレ曝射画像には、胸部の一部しか写り込まないことになるが、該胸部の特徴的な箇所(例えば、肺)が写っていれば、被写体14の他の撮影部位と胸部とを識別することができるので、プレ曝射画像の示す撮影部位が胸部であることを特定することが可能である。
【0039】
なお、比較的大きな撮影部位に対するプレ曝射において、プレ曝射画像から被写体14の撮影部位を一層精度よく特定できるようにするためには、(1)放射線源18aも駆動させて、比較的小さな線量の放射線16a、16bを被写体14に照射させるか、(2)放射線源18cも駆動させて、比較的小さな線量の放射線16b、16cを被写体14に照射させるか、(3)全ての放射線源18a〜18cを駆動させて、比較的小さな線量の放射線16a〜16cを被写体14に照射させればよい。これにより、胸部全体が写り込んだプレ曝射画像を取得することができる。また、後述する本曝射時での線量の重み付けをより正確に行うことも可能となる。
【0040】
一方、図6Aに示す比較的小さな撮影部位(右手)に対するプレ曝射では、右手全体に放射線16bが照射されるので、取得されるプレ曝射画像には右手が確実に写り込まれる。従って、プレ曝射画像の示す撮影部位が右手であることを容易に特定することが可能である。なお、比較的小さな撮影部位に対するプレ曝射においても、上記の(1)〜(3)のようなプレ曝射を行い、プレ曝射画像を取得してもよいことは勿論である。
【0041】
次に、本実施形態では、プレ曝射画像より特定された被写体14の撮影部位に基づいて、放射線出力装置20に内蔵される全ての放射線源に対して、放射線の線量の重み付けを行う。その後、その重み付けに従って各放射線源から被写体14に対する放射線の照射(本曝射)を行うことで、該本曝射での放射線画像である本曝射画像を取得する。
【0042】
具体的に、図5Bに示す比較的大きな撮影部位(胸部)に対する本曝射画像の撮影(本曝射)では、胸部全体に放射線16a〜16cが照射されるように、比較的広範囲(撮影可能領域36の全体)に放射線16a〜16cを照射させる必要がある。しかも、当該本曝射での被写体14に対する累積の曝射線量についても、前記胸部及びその厚み等に応じた最適な線量(医師26の読影診断に適した曝射線量)とする必要がある。
【0043】
そこで、本実施形態では、図5Bのような比較的大きな撮影部位に対する本曝射では、両端の各放射線源18a、18cから出力される放射線16a、16cの線量が最大の線量(図5Bの太い一点鎖線で模式的に図示)になると共に、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が前記最大の線量を補う程度の小さな線量(図5Bの細い一点鎖線で模式的に図示)となるように、線量の重み付けを行い、この重み付けに従って各放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを一斉に照射するか、又は、順次照射する。
【0044】
この場合、隣り合う放射線源から出力される放射線(図5Bでは放射線16a〜16c)の照射範囲の一部が互いに重なり合うようにすることで、被写体14の撮影部位に対して隙間なく放射線を照射することは勿論である。
【0045】
一方、図6Bに示す比較的小さな撮影部位(右手)に対する本曝射画像の撮影(本曝射)では、撮影可能領域36内の中央部分に右手が配置されるので、該中央部分を含む比較的狭い範囲内にのみ、確実に放射線が照射されればよい。この場合でも、当該本曝射での被写体14に対する累積の曝射線量は、前記右手及びその厚み等に応じた最適な線量(医師26の読影診断に適した曝射線量)とする必要がある。
【0046】
そこで、本実施形態において、図6Bのような比較的小さな撮影部位に対する本曝射では、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が最大の線量(図6Bの太い一点鎖線で模式的に図示)になると共に、両端の各放射線源18a、18cから出力される放射線16a、16cの線量が前記最大の線量を補う程度の小さな線量(図6Bの細い一点鎖線で模式的に図示)となるように、線量の重み付けを行い、この重み付けに従って各放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを一斉に照射するか、又は、順次照射する。
【0047】
なお、上記の説明において、前記最大の線量とは、各放射線16a〜16cの線量を比較したときに、相対的に最も大きな線量をいい、前記小さな線量とは、各放射線16a〜16cの線量を比較したときに、相対的に小さな線量をいい、いずれの線量も前記最適な線量を超えないようにする。すなわち、本実施形態では、図5B及び図6Bでの本曝射において、各放射線16a〜16cの照射により被写体14が被曝したときの累積の曝射線量が前記最適な線量となるように、各放射線源18a〜18cから出力される放射線16a〜16cの線量の重み付けを行う。
【0048】
さらに、各放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを一斉に照射すれば、被写体14の撮影に要する時間が短くなるので好ましい。しかしながら、各放射線源18a〜18cに対する電力供給能力(放射線出力装置20における電力の消耗)や、被写体14の撮影条件(撮影枚数)によっては、放射線16a〜16cの一斉照射が難しい場合もあり得る。
【0049】
このような場合には、各放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを順次照射して、被写体14に対する放射線画像の撮影を確実に行うようにすればよい。放射線16a〜16cを順次照射する場合、撮影中の撮影部位の移動に起因した放射線画像のぶれを軽減する目的で、ポジショニングされた撮影部位の中心位置に対する照射を優先して行い、その後、それ以外の箇所に対する照射を順次行えばよい。あるいは、図5B及び図6Bで太い一点鎖線で図示した放射線による照射を優先して行い、その後、細い一点鎖線で図示した放射線による照射を順次行ってもよい。
【0050】
従って、本実施形態では、各放射線源18a〜18cに対する電力供給能力や、被写体14の撮影条件に応じて、一斉照射又は順次照射を選択すればよい。
【0051】
このようにして線量の重み付けがされた放射線16a〜16cが被写体14の撮影部位に照射された場合、該撮影部位を透過した各放射線16a〜16cは、放射線検出器60により検出されて本曝射画像に変換される。
【0052】
ここで、放射線撮影システム10を構成する放射線出力装置20、放射線検出装置22及び制御装置24の内部構成について、図7及び図8のブロック図と図9の回路構成図とを参照しながら、より詳しく説明する。
【0053】
放射線出力装置20は、アンテナ62を介して制御装置24との間で無線通信により信号の送受信を行う通信部64と、各放射線源18a〜18cを制御する線源制御部66と、放射線出力装置20内の各部に電力供給を行うバッテリ68とをさらに有する。
【0054】
バッテリ68は、タッチセンサ52、通信部64及び線源制御部66に対しては、常時、電力供給を行っている。ここで、医師26による取手28の把持に起因して、タッチセンサ52から線源制御部66に検出信号が出力される場合に、線源制御部66は、放射線出力装置20内の各部に電力供給を行うようにバッテリ68を制御する。
【0055】
また、接続端子39と接続端子43とが電気的に接続され、且つ、接続端子41と接続端子45とが電気的に接続されることにより、放射線出力装置20及び放射線検出装置22が一体状態となっている場合に、放射線検出装置22のバッテリ76からバッテリ68に対して充電を行うことが可能である。この場合、線源制御部66は、タッチセンサ52からの検出信号の入力があっても、バッテリ68から各放射線源18a〜18cへの電力供給を許可しない(禁止する)。従って、線源制御部66は、接続端子39と接続端子43との電気的な接続が解除され、且つ、接続端子41と接続端子45との電気的な接続が解除されることにより、放射線出力装置20と放射線検出装置22とが離間した状態において、タッチセンサ52から検出信号が出力されたときに、初めて、バッテリ68から各放射線源18a〜18cへの電力供給を開始させる。
【0056】
なお、放射線出力装置20では、図示しないケーブル(通信ケーブル、USBケーブル、IEEE1394規格によるケーブル等)が接続されている場合には、当該ケーブルを介して外部との間で信号の送受信を行い、あるいは、電力供給を受けることも可能である。例えば、図示しないUSBケーブルがUSB端子50に接続されているときに、バッテリ68は、外部から充電を受けることが可能である一方で、通信部64は、前記USBケーブルを介して外部との間で信号の送受信を行うことが可能である。
【0057】
放射線検出装置22は、アンテナ70を介して制御装置24との間で無線通信により信号の送受信を行う通信部72と、放射線検出器60を制御するカセッテ制御部74と、放射線検出装置22内の各部に電力供給を行うバッテリ76とをさらに有する。
【0058】
バッテリ76は、カセッテ制御部74及び通信部72に対しては、常時、電力供給を行っているが、医師26によりスイッチ38が操作(オン)された場合には、放射線検出装置22内の各部に電力供給を開始することが可能である。
【0059】
なお、放射線検出装置22においても、図示しないケーブル(通信ケーブル、USBケーブル、IEEE1394規格によるケーブル等)が接続されている場合には、当該ケーブルを介して外部との間で信号の送受信を行い、あるいは、電力供給を受けることも可能である。例えば、図示しないUSBケーブルがUSB端子44に接続されているときに、バッテリ76は、外部から充電を受けることが可能である一方で、通信部72は、前記USBケーブルを介して外部との間で信号の送受信を行うことが可能である。
【0060】
カセッテ制御部74は、放射線画像の読出しを行うためのアドレス信号を放射線検出器60に供給するアドレス信号発生部78と、放射線検出器60から読み出された放射線画像を記憶する画像メモリ80と、放射線検出装置22を特定するためのカセッテID情報を記憶するカセッテIDメモリ82とを有する。
【0061】
ここで、一例として、間接変換型の放射線検出器60を採用した場合での放射線検出装置22の回路構成について、図9を参照しながら詳細に説明する。
【0062】
放射線検出器60は、可視光を電気信号に変換するa−Si等の物質からなる各画素90が形成された光電変換層96を、行列状のTFT98のアレイの上に配置した構造を有する。この場合、バッテリ76(図7参照)からバイアス電圧Vbが供給される各画素90では、可視光を電気信号(アナログ信号)に変換することにより発生した電荷が蓄積され、各行毎にTFT98を順次オンにすることにより前記電荷を画像信号として読み出すことができる。
【0063】
各画素90に接続されるTFT98には、行方向と平行に延びるゲート線92と、列方向と平行に延びる信号線94とが接続される。各ゲート線92は、ライン走査駆動部100に接続され、各信号線94は、マルチプレクサ102に接続される。ゲート線92には、行方向に配列されたTFT98をオンオフ制御する制御信号Von、Voffがライン走査駆動部100から供給される。この場合、ライン走査駆動部100は、ゲート線92を切り替える複数のスイッチSW1と、スイッチSW1の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ104とを備える。アドレスデコーダ104には、カセッテ制御部74のアドレス信号発生部78(図7参照)からアドレス信号が供給される。
【0064】
また、信号線94には、列方向に配列されたTFT98を介して各画素90に保持されている電荷が流出する。この電荷は、増幅器106によって増幅される。増幅器106には、サンプルホールド回路108を介してマルチプレクサ102が接続される。マルチプレクサ102は、信号線94を切り替える複数のスイッチSW2と、スイッチSW2の1つを選択する選択信号を出力するアドレスデコーダ110とを備える。アドレスデコーダ110には、カセッテ制御部74のアドレス信号発生部78からアドレス信号が供給される。マルチプレクサ102には、A/D変換器112が接続され、A/D変換器112によってデジタル信号に変換された放射線画像がカセッテ制御部74に供給される。
【0065】
なお、スイッチング素子として機能するTFT98は、CMOS(Complementary Metal−Oxside Semiconductor)イメージセンサ等、他の撮像素子と組み合わせて実現してもよい。さらにまた、TFT98で言うところのゲート信号に相当するシフトパルスにより電荷をシフトしながら転送するCCD(Charge−Coupled Device)イメージセンサに置き換えることも可能である。
【0066】
制御装置24は、図8に示すように、通信部122と、制御処理部124と、ディスプレイ等の表示部126と、キーボードやマウス等の操作部128と、曝射スイッチ130と、オーダ情報記憶部132と、データベース134と、撮影条件記憶部136と、画像メモリ138と、電源部140とを有する。
【0067】
通信部122は、アンテナ62、70、120を介して無線通信により放射線出力装置20の通信部64及び放射線検出装置22の通信部72との間で信号の送受信を行う。制御処理部124は、放射線出力装置20及び放射線検出装置22に対する所定の制御処理を実行する。曝射スイッチ130は、放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力の開始を医師26が指示するためのスイッチである。オーダ情報記憶部132は、被写体14に対する放射線画像の撮影を要求するためのオーダ情報を記憶する。データベース134は、放射線16a〜16cの線量の重み付けに関わる各種のデータを格納する。撮影条件記憶部136は、撮影部位に放射線16a〜16cを照射させるための撮影条件(プレ曝射条件、本曝射条件)を記憶する。画像メモリ138は、放射線検出装置22から無線通信により配信された放射線画像(プレ曝射画像、本曝射画像)を記憶する。電源部140は、制御装置24内の各部に電力供給を行う。
【0068】
なお、オーダ情報とは、病院内の放射線科において取り扱われる放射線画像やその他の情報を統括的に管理する、図示しない放射線科情報システム(RIS)、又は、該RISに接続された、病院内の医事情報を統括的に管理する医事情報システム(HIS)において、医師26により作成される情報である。このオーダ情報には、被写体14の氏名、年齢、性別等、被写体14を特定するための被写体情報に加えて、放射線画像の撮影に使用する放射線出力装置20及び放射線検出装置22の情報や、被写体14の撮影部位等が含まれる。また、撮影条件とは、例えば、各放射線源18a〜18cの管電圧や管電流、放射線16a〜16cの曝射時間等、被写体14の撮影部位に対して放射線16a〜16cを照射させるために必要な各種の条件である。
【0069】
さらに、制御装置24が放射線科の撮影室に配設されたコンソールである場合、コンソール(制御装置24)は、RIS又はHISからオーダ情報を取得してオーダ情報記憶部132に記憶する。一方、制御装置24が現場に搬送して使用される携帯端末である場合には、(1)医師26が現場で操作部128を操作してオーダ情報を簡易的に登録することで該オーダ情報がオーダ情報記憶部132に記憶されるか、(2)現場への搬送前に、病院においてRIS又はHISからオーダ情報を取得してオーダ情報記憶部132に予め記憶されるか、あるいは、(3)現場の制御装置24と病院との間で無線リンクを形成し、前記病院から無線を介してオーダ情報を受信することにより、受信したオーダ情報がオーダ情報記憶部132に記憶されることが好ましい。
【0070】
制御処理部124は、データベース検索部150と、撮影条件設定部152と、制御信号生成部154とを有する。
【0071】
データベース検索部150は、被写体14の撮影部位等に対応する所望のデータをデータベース134から検索する。撮影条件設定部152は、データベース検索部150が検索したデータとオーダ情報とに基づいて撮影条件を設定する。制御信号生成部154は、医師26が曝射スイッチ130を操作したときに、放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力を開始させるための曝射制御信号を生成する。
【0072】
図10〜図12は、データベース134中、複数の撮影部位を示すオブジェクトデータと、放射線16a〜16cの線量の重み付けに関わる各種のデータが格納されたテーブルとを図示したものである。
【0073】
図10に示すオブジェクトデータは、複数の撮影部位の放射線画像を示すオブジェクトデータであり、代表的に、比較的大きな撮影部位である胸部のオブジェクトデータと、比較的小さな撮影部位である右手及び左手のオブジェクトデータとを図示している。
【0074】
図11には、複数の撮影部位、各撮影部位の厚み、及び、各撮影部位に対する撮影手技と、これらの内容に応じた最適な線量(最適線量データ)とを格納したテーブルが図示されている。なお、撮影手技とは、放射線検出装置22に対する撮影部位の向きと、該撮影部位に対する放射線16a〜16cの照射方向とを示す情報である。また、図11では、代表的に、比較的大きな撮影部位である胸部及び比較的小さな撮影部位である手に関し、これらの撮影部位(胸部、手)と、撮影手技(胸部正面に対する撮影、手の甲に対する撮影)と、撮影部位の厚みと、最適線量データ(曝射線量)との各種のデータがデータベース134に格納されている場合を図示している。
【0075】
図12には、複数の撮影部位及び撮影手技と、放射線出力装置20に収容された放射線源の個数と、各放射線源から出力される放射線の線量の重み付け(重み付けデータ)とを格納したテーブルが図示されている。なお、図12では、図11に対応させるように、代表的に、胸部及び手に関するデータであって、放射線源の個数が2及び3の場合でのデータを図示している。例えば、放射線源の個数が3であれば、Aが放射線源18aに対応し、Bが放射線源18bに対応し、Cが放射線源18cに対応する。放射線源の個数が3以上である場合には、図12のテーブル内での重み付けデータの個数が放射線源の個数に応じて増えることは勿論である。
【0076】
なお、データベース134(図8参照)は、放射線撮影システム10にて実行可能な撮影に関する各種のデータを格納可能であるため、撮影対象となる被写体14が代わったり、被写体14の撮影部位を変更したり、又は、複数の被写体14に対して撮影を順次行う場合にも、データベース134中のデータを利用可能である。
【0077】
また、被写体14の撮影部位、該撮影部位の厚み及び撮影手技は、撮影時に医師26が操作部128を操作することにより入力されてもよいし、あるいは、被写体14のオーダ情報に予め含めてもよい。操作部128を用いて入力された前記撮影部位、前記厚み及び前記撮影手技がオーダ情報の一部としてオーダ情報記憶部132に記憶されることにより、該オーダ情報が編集されることになる。
【0078】
ここで、オーダ情報に示す被写体14の撮影部位(撮影手技)に対する放射線画像の撮影が行われる場合に、データベース検索部150は、下記の処理を行う。
【0079】
先ず、プレ曝射時において、データベース検索部150は、オーダ情報に含まれる被写体14の撮影部位、その厚み及び撮影手技に応じた最適線量データを図11のテーブルから自動的に検索し、検索した最適線量データの示す最適な曝射線量よりも十分に小さな曝射線量を、プレ曝射時における放射線16bの線量として決定する。そして、データベース検索部150は、決定した線量を示すデータと、検索に用いた被写体14の撮影部位、その厚み及び撮影手技を含むオーダ情報とを撮影条件設定部152に出力する。
【0080】
なお、データベース検索部150は、データベース134から検索した最適線量データと、オーダ情報とを表示部126に表示させてもよい。この場合、医師26が表示部126の表示内容を確認しながら、操作部128を操作してプレ曝射時の放射線16bの線量を入力すると、データベース検索部150は、医師26が入力したデータ(プレ曝射時の放射線16bの線量)と、オーダ情報とを撮影条件設定部152に出力する。
【0081】
一方、本曝射時において、データベース検索部150は、データベース134中、プレ曝射画像に写り込んだ撮影部位に一致するオブジェクトデータを自動的に検索し、該撮影部位に一致したオブジェクトデータの示す撮影部位を、本曝射における被写体14の撮影部位として特定する。具体的に、データベース検索部150は、例えば、公知のパターンマッチング方法を用いて、プレ曝射画像に写り込んだ撮影部位と、各オブジェクトデータとのマッチングを行い、2つの画像間の相関(一致度)が所定の閾値を超える場合に、該閾値を超える結果となったオブジェクトデータの示す撮影部位を、本曝射での被写体14の撮影部位として特定する。
【0082】
なお、データベース検索部150は、データベース134中、プレ曝射画像に写り込んだ撮影部位と一致する可能性の高いオブジェクトデータ(一致度が前記閾値を超える結果となったオブジェクトデータ)を複数検索した場合には、前記プレ曝射画像と、複数のオブジェクトデータとを表示部126に表示させてもよい。この場合、医師26は、表示部126の表示内容を確認し、操作部128を操作して、最も一致していると思われるオブジェクトデータを選択すれば、データベース検索部150は、選択されたオブジェクトデータの示す撮影部位が被写体14の撮影部位であると特定する。
【0083】
また、データベース検索部150は、特定した被写体14の撮影部位の厚みと撮影手技とを特定する。この場合、オーダ情報記憶部132に記憶されたオーダ情報に含まれる被写体14の撮影部位と、特定した被写体14の撮影部位とが一致すれば、オーダ情報中の撮影部位の厚みと撮影手技とを、そのまま、本曝射における被写体14の撮影部位の厚み及び撮影手技として特定する。
【0084】
なお、オーダ情報中の撮影部位と一致しない場合や、撮影部位の厚み及び撮影手技を再度設定したい場合には、データベース検索部150は、特定した被写体14の撮影部位とオーダ情報とを表示部126に表示させてもよい。この場合、医師26は、表示部126の表示内容を確認し、操作部128を操作して、撮影部位の厚み及び撮影手技を入力する。これにより、データベース検索部150は、入力された撮影部位の厚み及び撮影手技を、本曝射における被写体14の撮影部位の厚み及び撮影手技として特定すると共に、特定した撮影部位、その厚み及び撮影手技をオーダ情報の一部として、オーダ情報記憶部132に記憶することにより該オーダ情報を編集することができる。
【0085】
さらに、データベース検索部150は、特定した被写体14の撮影部位、その厚み及び撮影手技に応じた最適線量データを、図11のテーブルから自動的に検索する。また、データベース検索部150は、被写体14の撮影部位及び撮影手技と放射線出力装置20における放射線源の個数とから、最適な重み付けデータを自動的に検索する。そして、データベース検索部150は、検索した最適線量データ及び重み付けデータと、検索に用いた被写体14の撮影部位、該撮影部位の厚み及び撮影手技を含むオーダ情報とを撮影条件設定部152に出力する。
【0086】
なお、データベース検索部150は、データベース134中、最適線量データ及び重み付けデータとして複数の候補を検索した場合には、該複数の候補及びオーダ情報を表示部126に表示させる。医師26は、表示部126の表示内容を確認しながら、本曝射にとり最適と思われるデータを、操作部128を操作して選択すればよい。この場合、データベース検索部150は、複数の候補の中から医師26が選択した最適線量データ及び重み付けデータと、オーダ情報とを撮影条件設定部152に出力する。
【0087】
また、撮影条件設定部152は、プレ曝射時には、データベース検索部150で決定した線量を示すデータと、オーダ情報とに基づいて、プレ曝射における被写体14の撮影部位に対する撮影条件をプレ曝射条件として自動的に設定し、設定したプレ曝射条件を撮影条件記憶部136に記憶する。また、撮影条件設定部152は、本曝射時には、データベース検索部150が検索した最適線量データ及び重み付けデータと、オーダ情報とに基づいて、本曝射における被写体14の撮影部位に対する撮影条件を本曝射条件として自動的に設定し、設定した本曝射条件を撮影条件記憶部136に記憶する。
【0088】
なお、撮影条件設定部152は、プレ曝射時には、前記線量を示すデータと、オーダ情報とを表示部126に表示させてもよい。この場合、医師26は、表示部126の表示内容を確認しながら、操作部128を操作することにより、オーダ情報、被写体14の状態又は撮影手技に応じて線量を変更し、撮影条件設定部152は、変更後の線量に基づいてプレ曝射条件を設定する。
【0089】
また、撮影条件設定部152は、本曝射時には、オーダ情報と、データベース検索部150が検索した最適線量データ及び重み付けデータとを表示部126に表示させてもよい。この場合、医師26は、表示部126の表示内容を確認しながら、操作部128を操作することにより、オーダ情報、被写体14の状態又は撮影手技に応じて、最適線量データ及び重み付けデータの内容を変更し、撮影条件設定部152は、変更後の最適線量データ及び重み付けデータに基づいて本曝射条件を設定する。
【0090】
なお、上記の説明では、データベース検索部150がデータベース134から最適線量データを検索し、検索された最適線量データ等に基づいて撮影条件設定部152が本曝射条件を設定する場合について説明した。この説明に代えて、データベース検索部150は、プレ曝射画像に写り込んでいる被写体14の撮影部位を特定した後に、特定した撮影部位を示す画像に基づいて、該撮影部位に応じた最適な線量を算出することも可能である。この場合、データベース検索部150は、算出した最適な線量を示す最適線量データと、データベース134から検索した重み付けデータと、被写体14の撮影部位を示す情報とを撮影条件設定部152に出力し、撮影条件設定部152は、これらの情報に基づいて本曝射条件を設定することになる。
【0091】
[本実施形態の動作]
本実施形態に係る放射線撮影システム10は、基本的には以上のように構成されるものであり、次にその動作(放射線撮影方法)について、図13及び図14のフローチャートを参照しながら説明する。この動作説明では、必要に応じて、図1〜図12も参照しながら説明する。
【0092】
先ず、図13のステップS1において、制御装置24の制御処理部124(図8参照)は、外部からオーダ情報を取得し、取得したオーダ情報をオーダ情報記憶部132に記憶する。なお、制御装置24が撮影室のコンソールである場合には、アンテナ120及び通信部122を介してRIS又はHISからオーダ情報を取得すればよい。また、制御装置24が現場に搬送可能な可搬型の携帯端末である場合には、現場の医師26(図1、図4B及び図5A〜図6B参照)が操作部128を操作することによるオーダ情報の登録、現場への搬送前における病院内でのRIS又はHISからのオーダ情報の取得、あるいは、現場への搬送後、病院との間で形成される無線リンクを介してのオーダ情報の受信により、オーダ情報を取得すればよい。
【0093】
ステップS2において、データベース検索部150は、オーダ情報記憶部132に記憶されたオーダ情報に含まれる被写体14(図1、図3A、図3B及び図7参照)の撮影部位、該撮影部位の厚み及び撮影手技に対応する撮影部位、厚み及び撮影手技と、これらの情報に対応する最適線量データとを、データベース134から自動的に検索し、検索した最適線量データの示す最適な曝射線量よりも十分に小さな曝射線量を、プレ曝射時における放射線16bの線量として決定する。次に、撮影条件設定部152は、データベース検索部150において決定された線量とオーダ情報とに基づいて、プレ曝射条件を設定し、設定したプレ曝射条件を撮影条件記憶部136に記憶する。
【0094】
なお、ステップS2において、オーダ情報に撮影部位の厚み及び撮影手技が含まれていない場合、医師26は、操作部128を操作して撮影部位の厚み及び撮影手技を入力すればよい。これにより、入力された撮影部位の厚み及び撮影手技がオーダ情報の一部としてオーダ情報記憶部132に記憶され、該オーダ情報記憶部132内のオーダ情報が編集される。
【0095】
また、ステップS2において、データベース検索部150が検索した最適線量データと、オーダ情報とを表示部126に表示させてもよい。これにより、医師26は、表示部126の表示内容を確認しながら、操作部128を操作してプレ曝射時の放射線16bの線量を入力することができる。
【0096】
さらに、ステップS2において、撮影条件設定部152は、プレ曝射時の線量を示すデータと、オーダ情報とを表示部126に表示させてもよい。これにより、医師26は、表示部126の表示内容を確認しながら、操作部128を操作して、オーダ情報、被写体14の状態又は撮影手技に応じた線量に変更することができる。
【0097】
次に、ステップS3において、医師26が放射線検出装置22のスイッチ38(図2A、図2B、図5A〜図6B及び図7参照)を投入すると、バッテリ76は、放射線検出装置22内の各部に電力を供給して、装置全体を起動させる。これにより、カセッテ制御部74は、放射線検出装置22が起動したことを通知するための起動通知信号を無線により制御装置24(図1及び図8参照)に送信する。また、放射線検出器60の各画素90(図9参照)にもバッテリ76からバイアス電圧Vbが供給される。
【0098】
制御装置24の制御処理部124は、アンテナ120及び通信部122を介した前記起動通知信号の受信に基づいて、撮影条件記憶部136に記憶されているプレ曝射条件を無線により放射線検出装置22に送信する。カセッテ制御部74は、アンテナ70及び通信部72を介して受信した前記撮影条件を登録する。
【0099】
ところで、放射線出力装置20及び放射線検出装置22が現場に搬送された場合、接続端子39と接続端子43との嵌合と、接続端子41と接続端子45との嵌合によって、放射線出力装置20が放射線検出装置22の保持部35、37間で保持され、放射線出力装置20及び放射線検出装置22が一体状態となっている(図2A参照)。この場合、バッテリ76は、接続端子39、41、43、45を介してバッテリ68を充電している。
【0100】
そこで、医師26は、被写体14の撮影部位のポジショニングを行うべく、接続端子39と接続端子43との嵌合状態と、接続端子41と接続端子45との嵌合状態を解除して、放射線検出装置22から放射線出力装置20を離間させ、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の一体状態を解除する(図2B参照)。これにより、バッテリ76からバッテリ68への充電も停止する。
【0101】
次に、医師26は、被写体14の撮影部位の中心位置と撮影可能領域36の中心位置とが略一致し、且つ、該撮影部位が撮影可能領域36に納まるように前記撮影部位をポジショニングする(図3A及び図3B参照)。その後、医師26が取手28を把持した状態で、放射線出力装置20と放射線検出装置22との間の距離がSIDに応じた距離となるように、被写体14の撮影部位に放射線出力装置20を向けたときに、タッチセンサ52は、検出信号を線源制御部66に出力する。線源制御部66は、前記検出信号の入力に基づいて、放射線出力装置20内の各部に電力供給を行うようにバッテリ68を制御し、放射線出力装置20全体を起動させる。また、線源制御部66は、放射線出力装置20が起動したことを通知するための起動通知信号を無線により制御装置24に送信する。
【0102】
制御処理部124は、アンテナ120及び通信部122を介した前記起動通知信号の受信に基づいて、撮影条件記憶部136に記憶されたプレ曝射条件を無線により放射線出力装置20に送信する。線源制御部66は、アンテナ62及び通信部64を介して受信した前記プレ曝射条件を登録する。
【0103】
上記のプレ曝射の撮影準備が完了したことを前提に、医師26は、一方の手で取手28を把持した状態で他方の手で曝射スイッチ130を投入する(ステップS4)。これにより、制御信号生成部154は、放射線源18bからの放射線16bの出力を開始させるための曝射制御信号を生成し、無線により放射線出力装置20及び放射線検出装置22に送信する。なお、プレ曝射時の曝射制御信号は、放射線源18bからの放射線16bの出力の開始と、放射線検出器60における放射線16bの検出及び放射線画像への変換との同期を取ることにより、被写体14の撮影部位に対するプレ曝射画像の撮影を実行するための同期制御信号である。
【0104】
線源制御部66は、曝射制御信号を受信すると、前記プレ曝射条件に従って所定の線量からなる放射線16bを被写体14に照射するように放射線源18bを制御する。これにより、放射線源18bは、放射線16bを出力し、該放射線16bは、放射線出力装置20から外部に出力され、前記プレ曝射条件に基づく所定の曝射時間(照射時間)だけ被写体14の撮影部位に照射される(ステップS5)。
【0105】
この場合、撮影部位が図3A及び図5Aに示す胸部であれば、中央の放射線源18bからは、最適な曝射線量よりも十分に小さな線量の放射線16bが被写体14の胸部の一部に照射される。また、撮影部位が図3B及び図6Aに示す右手であれば、中央の放射線源18bからは、最適な曝射線量よりも十分に小さな線量の放射線16bが被写体14の右手全体に照射される。
【0106】
そして、放射線16bが被写体14を透過して放射線検出装置22内の放射線検出器60に至ったステップS6において、放射線検出器60が間接変換型の放射線検出器である場合に、該放射線検出器60を構成するシンチレータは、放射線16bの強度に応じた強度の可視光を発光し、光電変換層96(図9参照)を構成する各画素90は、可視光を電気信号に変換し、電荷として蓄積する。次いで、各画素90に保持された被写体14の放射線画像(プレ曝射画像)である電荷情報は、カセッテ制御部74を構成するアドレス信号発生部78(図7参照)からライン走査駆動部100及びマルチプレクサ102に供給されるアドレス信号に従って読み出される。
【0107】
すなわち、ライン走査駆動部100のアドレスデコーダ104は、アドレス信号発生部78から供給されるアドレス信号に従って選択信号を出力してスイッチSW1の1つを選択し、対応するゲート線92に接続されたTFT98のゲートに制御信号Vonを供給する。一方、マルチプレクサ102のアドレスデコーダ110は、アドレス信号発生部78から供給されるアドレス信号に従って選択信号を出力してスイッチSW2を順次切り替え、ライン走査駆動部100によって選択されたゲート線92に接続された各画素90に保持された電荷情報であるプレ曝射画像を信号線94を介して順次読み出す。
【0108】
選択されたゲート線92に接続された各画素90から読み出されたプレ曝射画像は、各増幅器106によって増幅された後、各サンプルホールド回路108によってサンプリングされ、マルチプレクサ102を介してA/D変換器112に供給され、デジタル信号に変換される。デジタル信号に変換されたプレ曝射画像は、カセッテ制御部74の画像メモリ80に一旦記憶される(ステップS7)。
【0109】
同様にして、ライン走査駆動部100のアドレスデコーダ104は、アドレス信号発生部78から供給されるアドレス信号に従ってスイッチSW1を順次切り替え、各ゲート線92に接続されている各画素90に保持された電荷情報であるプレ曝射画像を信号線94を介して読み出し、マルチプレクサ102及びA/D変換器112を介してカセッテ制御部74の画像メモリ80に記憶させる(ステップS7)。
【0110】
画像メモリ80に記憶された放射線画像(プレ曝射画像)は、カセッテIDメモリ82に記憶されたカセッテID情報と共に、通信部72及びアンテナ70を介して無線通信により制御装置24に送信される。制御装置24の制御処理部124は、アンテナ120及び通信部122を介して受信されたプレ曝射画像及びカセッテID情報を画像メモリ138に記憶すると共に、プレ曝射画像を表示部126に表示させる(ステップS8)。これにより、医師26は、表示部126の表示内容を視認することにより、プレ曝射画像が得られたことを確認することができる。
【0111】
次のステップS9において、データベース検索部150は、プレ曝射画像に写り込んだ撮影部位に一致するオブジェクトデータをデータベース134から自動的に検索し、該撮影部位に一致したオブジェクトデータの示す撮影部位を、本曝射時の被写体14の撮影部位として特定する。
【0112】
次に、データベース検索部150は、特定した被写体14の撮影部位について、その厚み及び撮影手技を特定する。この場合、オーダ情報記憶部132に記憶されたオーダ情報に含まれる被写体14の撮影部位と、データベース検索部150が特定した被写体14の撮影部位とが一致すれば、データベース検索部150は、該オーダ情報中の撮影部位の厚みと撮影手技とを、そのまま、本曝射における被写体14の撮影部位の厚み及び撮影手技として特定する。
【0113】
なお、ステップS9において、プレ曝射画像に写り込んだ撮影部位との一致度が所定の閾値を超えたオブジェクトデータを複数検索した場合、データベース検索部150は、前記プレ曝射画像と、これらのオブジェクトデータとを表示部126に表示させてもよい。これにより、医師26は、表示部126の表示内容を確認し、操作部128を操作して、最も一致していると思われるオブジェクトデータを選択することができる。この結果、データベース検索部150は、医師26が選択したオブジェクトデータの示す撮影部位を、被写体14の撮影部位であると特定する。
【0114】
また、ステップS9において、プレ曝射画像に写り込んだ撮影部位とオーダ情報中の撮影部位とが一致しない場合や、撮影部位の厚み及び撮影手技を再度設定する場合、データベース検索部150は、特定した被写体14の撮影部位とオーダ情報とを表示部126に表示させてもよい。これにより、医師26は、表示部126の表示内容を確認し、操作部128を操作して、撮影部位の厚み及び撮影手技を入力することができる。この結果、データベース検索部150は、入力された撮影部位の厚み及び撮影手技を、本曝射における被写体14の撮影部位の厚み及び撮影手技として特定し、特定した撮影部位、その厚み及び撮影手技をオーダ情報の一部としてオーダ情報記憶部132に記憶させることにより、オーダ情報記憶部132に記憶されたオーダ情報を編集することができる。
【0115】
図14のステップS10において、データベース検索部150(図8参照)は、図13のステップS9で特定した被写体14(図1、図3A、図3B及び図5A〜図7参照)の撮影部位、その厚み及び撮影手技に対応する撮影部位、厚み及び撮影手技と、これらの情報に対応する最適線量データとを、データベース134から自動的に検索する。また、データベース検索部150は、ステップS9で特定した被写体14の撮影部位及び撮影手技に対応する重み付けデータも、データベース134から自動的に検索する。そして、データベース検索部150は、検索できた最適線量データ及び重み付けデータと、検索に用いた被写体14の撮影部位、その厚み及び撮影手技を含むオーダ情報とを、本曝射に必要な各種のデータとして撮影条件設定部152に出力する(ステップS11)。
【0116】
なお、前述したステップS10において、データベース検索部150は、最適線量データ及び重み付けデータについて複数の候補を検索した場合、これらの候補とオーダ情報とを表示部126に表示してもよい。この場合、医師26は、表示部126の表示内容を確認して、本曝射にとり最適と思われる候補(データ)を、操作部128を操作して選択することができる。これにより、データベース検索部150は、医師26が選択した最適線量データ及び重み付けデータの候補と、オーダ情報とを、本曝射に必要な各種のデータとみなして撮影条件設定部152に出力する(ステップS11)。
【0117】
次に、ステップS12において、撮影条件設定部152は、入力された最適線量データ及び重み付けデータと、オーダ情報とに基づいて、各放射線源18a〜18cから被写体14の撮影部位に放射線16a〜16cを照射させるための本曝射条件を設定する。
【0118】
被写体14の撮影部位が図5Bのような胸部である場合、撮影条件設定部152(図8参照)は、上記の各データの内容に従って、両端の各放射線源18a、18cから出力される放射線16a、16cの線量が最大の線量となり、且つ、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が前記最大の線量を補う小さな線量となるように、本曝射条件(管電圧、管電流、照射時間)を設定し、設定した本曝射条件を撮影条件記憶部136に記憶する。
【0119】
また、被写体14の撮影部位が図6Bのような手(右手)である場合、撮影条件設定部152(図8参照)は、上記の各データに従って、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が最大の線量となり、且つ、両端の各放射線源18a、18cから出力される放射線16a、16cの線量が前記最大の線量を補う小さな線量となるように、本曝射条件(管電圧、管電流、照射時間)を設定し、設定した本曝射条件を撮影条件記憶部136に記憶する。
【0120】
そして、制御処理部124は、設定された本曝射条件を通信部122及びアンテナ120を介して無線により放射線出力装置20及び放射線検出装置22(図7参照)に送信する。放射線出力装置20の線源制御部66は、アンテナ62及び通信部64を介して受信した前記本曝射条件を登録し、一方で、放射線検出装置22のカセッテ制御部74は、アンテナ70及び通信部72を介して受信した前記本曝射条件を登録する。
【0121】
なお、ステップS12において、撮影条件設定部152は、入力された最適線量データ及び重み付けデータと、オーダ情報とを表示部126に表示させてもよい。この場合、医師26は、表示部126の表示内容を確認し、オーダ情報の内容、被写体14の状態、又は、被写体14の撮影手技に応じて、操作部128を操作することにより、最適線量データ及び重み付けデータの内容を変更し、変更後の各データの内容に従って所望の本曝射条件を設定することも可能である。この場合でも、撮影条件設定部152は、設定された本曝射条件を撮影条件記憶部136に記憶する。
【0122】
また、ステップS10において、データベース検索部150が、プレ曝射画像に写り込んでいる被写体14の撮影部位を特定した後に、該撮影部位の示す画像に基づいて、前記撮影部位に応じた最適な線量を算出する一方で、データベース134から重み付けデータを検索した場合に、ステップS12において、撮影条件設定部152(図8参照)は、被写体14の撮影部位を示す情報と、算出された最適な線量を示す最適線量データと、検索された重み付けデータとに基づいて、本曝射条件を設定する。
【0123】
上記の本曝射の撮影準備が完了したことを前提に、医師26は、一方の手で取手28を把持した状態で他方の手で曝射スイッチ130を再度投入する(ステップS13)。これにより、制御信号生成部154は、各放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力を開始させるための曝射制御信号を生成し、無線により放射線出力装置20及び放射線検出装置22(図7参照)に送信する。なお、本曝射での曝射制御信号は、放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力の開始と、放射線検出器60における放射線16a〜16cの検出及び放射線画像への変換との同期を取ることにより、被写体14の撮影部位に対する本曝射画像の撮影を実行するための同期制御信号である。
【0124】
線源制御部66は、曝射制御信号を受信すると、前記本曝射条件に従って所定の線量からなる放射線16a〜16cを被写体14に照射するように各放射線源18a〜18cを制御する。これにより、各放射線源18a〜18cは、放射線16a〜16cをそれぞれ出力し、該各放射線16a〜16cは、放射線出力装置20から外部に出力され、前記本曝射条件に基づく所定の曝射時間(照射時間)だけ被写体14の撮影部位に照射される(ステップS14)。
【0125】
この場合、撮影部位が図3A及び図5Bに示す胸部であれば、両端の各放射線源18a、18cからは、大きな線量の放射線16a、16cが被写体14の胸部に照射され、一方で、中央の放射線源18bからは、前記大きな線量を補うような小さな線量の放射線16bが前記撮影部位に照射される。
【0126】
また、撮影部位が図3B及び図6Bに示す右手であれば、中央の放射線源18bからは、大きな線量の放射線16bが被写体14の撮影部位に照射され、一方で、両端の各放射線源18a、18cからは、前記大きな線量を補うような小さな線量の放射線16a、16cが被写体14の右手に照射される。
【0127】
そして、各放射線16a〜16cが被写体14を透過して放射線検出装置22内の放射線検出器60に至ったステップS15において、放射線検出器60が間接変換型の放射線検出器である場合に、該放射線検出器60を構成するシンチレータは、放射線16a〜16cの強度に応じた強度の可視光を発光し、光電変換層96を構成する各画素90は、可視光を電気信号に変換し、電荷として蓄積する。次いで、各画素90に保持された被写体14の放射線画像(本曝射画像)である電荷情報は、カセッテ制御部74を構成するアドレス信号発生部78からライン走査駆動部100及びマルチプレクサ102に供給されるアドレス信号に従って読み出される。
【0128】
読み出された電荷情報である本曝射画像は、カセッテ制御部74の画像メモリ80に記憶され(ステップS16)、画像メモリ80に記憶された本曝射画像は、カセッテIDメモリ82に記憶されたカセッテID情報と共に、通信部72及びアンテナ70を介して無線通信により制御装置24に送信される。制御装置24の制御処理部124は、アンテナ120及び通信部122を介して受信された放射線画像及びカセッテID情報を画像メモリ138に記憶すると共に、本曝射画像を表示部126に表示させる(ステップS17)。
【0129】
なお、本曝射画像に関するステップS15〜S17の処理については、プレ曝射画像に関するステップS6〜S8の処理と同様である。すなわち、ステップS6〜S8の説明におけるプレ曝射画像に関する文言を本曝射画像に関する文言に置換すれば、ステップS15〜S17の説明になるため、ここでは、ステップS15〜S17の詳細な説明を省略する。
【0130】
医師26は、表示部126の表示内容を視認して本曝射画像が得られたことを確認した後に、被写体14をポジショニング状態から解放し、次に、取手28から手を離す。これにより、タッチセンサ52からの検出信号の出力が停止するので、線源制御部66は、バッテリ68から放射線出力装置20内の各部への電力供給を停止させる。この結果、放射線出力装置20は、スリープ状態又は停止状態に至る。また、医師26がスイッチ38を押す(オフする)と、バッテリ76から放射線検出装置22内の各部への電力供給が停止されるので、放射線検出装置22もスリープ状態又は停止状態に至る。
【0131】
そして、医師26は、接続端子39と接続端子43とを嵌合させると共に、接続端子41と接続端子45とを嵌合させることにより、保持部35、37間で放射線出力装置20を保持させて、放射線出力装置20及び放射線検出装置22を一体状態とする(図2A参照)。
【0132】
[本実施形態の効果]
以上説明したように、本実施形態に係る放射線撮影システム10及び放射線撮影方法によれば、放射線出力装置20に収容された少なくとも2つの放射線源(図4A〜図6Bでは3つの放射線源18a〜18c)のうち、少なくとも一方の放射線源(図4A〜図6Bでは放射線源18b)により被写体14に対するプレ曝射を行い、該プレ曝射により得られたプレ曝射画像に基づいて、本曝射の際に少なくとも2つの放射線源から出力される各放射線(放射線16a〜16c)の線量の重み付けを行う。
【0133】
このように、本実施形態では、単純に被写体14の撮影部位をカバーできるように放射線の照射範囲を設定するのではなく、本曝射に先立って行われるプレ曝射により取得したプレ曝射画像に基づいて、該本曝射の際に各放射線源から出力される各放射線の線量の重み付けを行っている。しかも、プレ曝射画像には被写体14の撮影部位が写り込んでいるので、該撮影部位に従って各放射線の線量の重み付けが行われることになる。
【0134】
従って、本実施形態では、電界電子放出型の放射線源を用いて短いSIDで被写体14に対する放射線画像の撮影(本曝射)を行っても、放射線の照射範囲を容易に拡大することができると共に、該被写体14に対して最適な線量(曝射線量)の放射線を照射させることが可能となる。このように、本実施形態では、被写体14に応じた最適な線量の放射線を被写体14に照射することができるので、医師26の読影診断に適した放射線画像(本曝射画像)が得られると共に、被写体14の不用意な被曝を回避することができる。
【0135】
また、データベース検索部150は、データベース134中、プレ曝射画像に写り込んだ撮影部位に一致するオブジェクトデータの示す撮影部位を、本曝射における被写体14の撮影部位として特定し、次に、特定した撮影部位、その厚み及び撮影手技に応じた最適線量データを検索すると共に、被写体14の撮影部位及び撮影手技に応じた重み付けデータを検索し、その後、検索した最適線量データ及び重み付けデータと、オーダ情報とを撮影条件設定部152に出力する。これにより、撮影条件設定部152での本曝射条件の設定を正確に且つ効率よく行うことが可能となる。この結果、放射線出力装置20が本曝射条件に従って各放射線源18a〜18cから被写体14の撮影部位に放射線16a〜16cを照射させれば、被写体14の撮影部位に対して最適な曝射線量で本曝射画像の撮影を行わせることができる。
【0136】
また、データベース検索部150は、プレ曝射画像に写り込んでいる被写体14の撮影部位を特定した後に、特定した撮影部位を示す画像に基づいて、該撮影部位に応じた最適な線量を算出することも可能であるため、最適線量データがデータベース134に格納されていない場合や、データベース134から所望の最適線量データが検索できなかった場合でも、本曝射での最適な線量を特定し、特定した最適な線量に基づいて、撮影条件設定部152にて本曝射条件を設定することができる。
【0137】
さらに、データベース検索部150は、オーダ情報に基づいて、本曝射時における最適な曝射線量よりも十分に小さい、プレ曝射時の放射線16bの線量を決定し、撮影条件設定部152は、データベース検索部150が決定した線量及びオーダ情報に基づいてプレ曝射条件を設定する。これにより、放射線出力装置20がプレ曝射条件に従って放射線源18bから被写体14の撮影部位に放射線16bを照射すれば、被写体14の撮影部位に対して十分に小さな線量でプレ曝射画像の撮影を行わせることができる。なお、プレ曝射時、1つの放射線源18bから放射線16bを被写体14の撮影部位に照射することで、該プレ曝射での撮影部位に対する曝射線量を最小化することが可能となる。
【0138】
また、被写体14の撮影部位は、撮影可能領域36の中央部分に位置決めされ(図3A及び図3B参照)、プレ曝射時には、該中央部分に対向する放射線出力装置20の中央の放射線源18bから被写体14の撮影部位に向けて放射線16bが照射されるので、該撮影部位が写り込んだプレ曝射画像を確実に取得することができる。
【0139】
さらに、撮影条件設定部152は、オーダ情報、被写体14の状態又は被写体14の撮影手技に応じて、データベース検索部150が検索した最適線量データ及び重み付けデータの内容を変更することで、実際の被写体14の撮影手技に応じた、より正確な本曝射条件を設定することができる。
【0140】
さらにまた、本実施形態では、放射線出力装置20に3つの放射線源18a〜18cが収容されている場合に、本曝射の際には、被写体14の撮影部位に応じて、各放射線源18a〜18cから出力される各放射線16a〜16cについて、下記のような線量の重み付けを行う。
【0141】
図5Bのように、比較的大きな撮影部位(例えば、被写体14の胸部)に対して本曝射を行う際には、両端の放射線源18a、18cから出力される放射線16a、16cの線量が最大の線量となり、一方で、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が小さな線量となるように、各放射線源18a〜18cから出力される各放射線16a〜16cの線量の重み付けを行う。
【0142】
図6Bのように、比較的小さな撮影部位(例えば、被写体14の手)に対して本曝射を行う際には、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が最大の線量となり、一方で、両端の各放射線源18a、18cから出力される各放射線16a、16cの線量が小さな線量となるように、各放射線源18a〜18cから出力される各放射線16a〜16cの線量の重み付けを行う。
【0143】
このような重み付けを行うことにより、電界電子放出型の放射線源18a〜18cを用いて短いSIDで被写体14に対する放射線画像の撮影を行っても、放射線16a〜16cの照射範囲を容易に拡大することができると共に、該被写体14に対して最適な線量(曝射線量)の放射線16a〜16cを照射させることが可能となる。このように、被写体14に応じた最適な線量の放射線16a〜16cを被写体14に照射することができるので、医師26の読影診断に適した放射線画像が得られると共に、被写体14の不用意な被曝を回避することができる。
【0144】
また、図5Bの例では、比較的大きな撮影部位に対する放射線画像の撮影を効率よく行うことが可能となり、一方で、図6Bの例では、比較的小さな撮影部位に対する放射線画像の撮影を効率よく行うことが可能となる。
【0145】
さらに、放射線出力装置20における放射線16a〜16cの出力箇所とは反対側の箇所に、取手28を設けることで、医師26は、一方の手で取手28を把持して、放射線出力装置20を被写体14及び放射線検出装置22に向けながら、表示部126の表示内容を確認したり、他方の手で操作部128を操作したり、あるいは、他方の手で曝射スイッチ130を操作することが可能となる。また、医師26が取手28を把持している最中に放射線16a〜16cが出力された場合でも、医師26への放射線16a〜16cの照射(医師26の被曝)を確実に回避することができる。
【0146】
また、接続端子39と接続端子43との嵌合、及び、接続端子41と接続端子45との嵌合とによって、放射線出力装置20を保持部35、37間で保持させて、放射線出力装置20及び放射線検出装置22を一体状態とすることにより、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の搬送を容易に行うことができる。さらに、接続端子39と接続端子43とが電気的に接続されると共に、接続端子41と接続端子45とが電気的に接続されることで、放射線検出装置22のバッテリ76から放射線出力装置20のバッテリ68を充電することも可能となる。
【0147】
さらにまた、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の一体状態において、線源制御部66がバッテリ68から各放射線源18a〜18cへの電力供給を禁止することにより、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の搬送中での放射線16a〜16cの誤曝射を回避することができる。しかも、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の一体状態において、放射線出力装置20における放射線16a〜16cの出力箇所を、放射線検出装置22の筐体30の側面に向けることで、放射線16a〜16cの誤曝射が仮に発生しても、医師26の被曝を確実に回避することができる。
【0148】
なお、制御装置24と放射線出力装置20及び放射線検出装置22との間は、無線により信号の送受信が行われる。このように、同一のリンク内で放射線出力装置20、放射線検出装置22及び制御装置24が無線を介して接続され、信号を送受信するためのケーブル(USBケーブル)が不要であるため、医師26の作業に支障を来すおそれがない。従って、医師26は、自己の作業を効率よく行うことが可能となる。また、ケーブルを不要としたことにより、放射線撮影システム10の部品点数が削減される。また、本実施形態では、無線通信に代えて、赤外線等を用いた光無線通信で信号の送受信を行ってもよい。
【0149】
さらに、本実施形態では、制御装置24と放射線出力装置20及び放射線検出装置22との間を有線により信号の送受信を行うことも可能である。例えば、制御装置24と放射線出力装置20及び放射線検出装置22との間を図示しないUSBケーブルを介して電気的に接続すれば、制御装置24の電源部140から放射線出力装置20のバッテリ68及び放射線検出装置22のバッテリ76を確実に充電することができる。また、制御装置24から放射線出力装置20及び放射線検出装置22への曝射制御信号及び撮影条件の送信や、放射線検出装置22から制御装置24への放射線画像の送信を確実に行うことができる。従って、有線による接続では、信号の送受信やバッテリ68、76の充電を確実に行うことができる。
【0150】
なお、バッテリ68、76を充電する際には、少なくとも被写体14の撮影枚数に応じた充電量だけバッテリ68、76を充電できればよい。これにより、撮影時に、前記撮影枚数分の撮影を確実に行うことができる。
【0151】
この場合、放射線画像の撮影時を除く時間帯にバッテリ68、76を充電すればよい。これにより、撮影時、及び、撮影後の放射線画像の送信時にはバッテリ68、76が充電されることはないので、撮影中、バッテリ68、76への充電に起因して電荷信号(アナログ信号)にノイズが重畳したり、又は、放射線画像の送信中に前記ノイズが当該放射線画像に重畳することを回避することができる。
【0152】
ここで、充電及びノイズについて、より詳細に説明すると、被写体14を透過した放射線16a〜16cが放射線検出器60により電気信号に変換された後、各画素90に電荷として蓄積される期間(蓄積期間)、各画素90に蓄積された電荷が読み取られる期間(読み取り期間)、及び、読み取られた電荷(アナログ信号)がA/D変換器112でデジタル信号へと変換される期間のうち、いずれかの期間、各期間を組み合わせた期間、又は、全ての期間を含む期間を除く時間帯において、バッテリ68、76を充電できればよい。
【0153】
すなわち、これら3つの期間は、特に画像信号(放射線画像)へのノイズの重畳による影響が顕著だからである。前記蓄積期間及び前記読み取り期間では、その電荷が微小であるためノイズの影響が大きく、また、デジタル信号への変換期間では、A/D変換前はデジタル信号に比べてノイズ耐性の低いアナログ信号であり、さらに当該アナログ信号に重畳したノイズがそのままデジタル信号に変換されて画像データに現れ易いためである。
【0154】
なお、前記蓄積期間の一部には、放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを照射する時間も含まれる。つまり、前記蓄積を開始し、可及的に早いタイミングで照射を開始し、照射を停止した後、直ちに前記読み取り以降の動作が行われるとよく、これら各動作でのタイムラグを可及的に少なくすると、いわゆる暗電流の抑制に好適であり、得られる放射線画像の品質を一層向上させることができる。また、前記読み取り期間とは、TFT98をオンして各増幅器106等を介しA/D変換器112へと信号が流れる期間であり、該読み取り期間と前記デジタル信号への変換期間とは時間軸的には略同時、実際には読み取り期間(の開始)が僅かに早く発生することになる。
【0155】
従って、撮影時、及び、撮影後の放射線画像の送信時でのバッテリ68、76の充電を禁止することで、放射線検出器60での放射線16a〜16cの検出を高品質に行うことができる。
【0156】
また、放射線画像の撮影時を除く時間帯にバッテリ68、76に供給される電力量は、下記のように予測すればよく、予測した分の電力量をバッテリ68、76に充電することで、(必要枚数分の)放射線画像の撮影を確実に行うことができる。
【0157】
すなわち、バッテリ68、76の充電条件や、今回又は前回の撮影条件(撮影枚数やmAs値等)から、撮影に使用する放射線出力装置20及び放射線検出装置22の消費電力量を算出し、算出した消費電力量に基づいて、今回の撮影で消費されるであろう放射線出力装置20及び放射線検出装置22の各電力量、あるいは、前回の撮影で消費されたであろう放射線出力装置20及び放射線検出装置22の各電力量を予測する。
【0158】
今回の撮影で消費されるであろう各電力量の分だけバッテリ68、76を充電するか、あるいは、前回の撮影で消費されたであろう各電力量の分だけバッテリ68、76を充電することにより、当該今回の撮影を確実に行うことが可能となる。
【0159】
また、複数枚の撮影を行う場合に、撮影の間にバッテリ68、76の充電を行う際には、充電条件、今回の撮影条件(撮影枚数やmAs値等)のうち、既に撮影が終了した分を除く、これから行われる撮影の撮影条件から、放射線出力装置20及び放射線検出装置22の消費電力量を算出し、算出した消費電力量に基づいて、これから行われる撮影で消費される電力量を予測する。
【0160】
この場合でも、これから行われる撮影で消費される分の電力量をバッテリ68、76に充電することで、残りの枚数分の撮影を確実に行うことが可能となる。
【0161】
さらに、本実施形態では、無線通信及び/又は有線通信による信号の送受信について説明したが、被写体14が放射線出力装置20と放射線検出装置22とに接触して、SIDが一層短く設定されている場合、放射線出力装置20と放射線検出装置22との間では、被写体14を介した人体通信により信号の送受信を行ってもよい。また、医師26が放射線出力装置20と制御装置24との双方に接触している場合には、放射線出力装置20と制御装置24との間の信号の送受信を、医師26を介した人体通信で行ってもよい。
【0162】
また、本実施形態において、制御信号生成部154は、放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力と、放射線検出器60における放射線16a〜16cから放射線画像(プレ曝射画像又は本曝射画像)への変換との同期を取るための曝射制御信号を生成し、通信部122は、放射線出力装置20及び放射線検出装置22に前記曝射制御信号を送信するので、放射線画像の撮影時(プレ曝射時又は本曝射時)における放射線源18a〜18cと放射線検出器60との時刻同期を確実に取ることができる。
【0163】
さらに、放射線検出装置22は、筐体の形状を有しているが、少なくとも放射線検出器60の箇所については、可撓性を有するシート状の形状としてもよい。シート状とすることでロール状に巻取可能となるので、放射線検出装置22のコンパクト化を実現することができる。
【0164】
さらに、本実施形態は、光読出方式の放射線検出器を利用して放射線画像を取得する場合にも適用することが可能である。この光読出方式の放射線検出器では、各固体検出素子に放射線が入射すると、その線量に応じた静電潜像が固体検出素子に蓄積記録される。静電潜像を読み取る際には、放射線検出器に読取光を照射し、発生した電流の値を放射線画像として取得する。なお、放射線検出器は、消去光を放射線検出器に照射することで、残存する静電潜像である放射線画像を消去して再使用することができる(特開2000−105297号公報参照)。
【0165】
さらにまた、放射線撮影システム10では、血液やその他の雑菌が付着するおそれを防止するために、例えば、放射線出力装置20及び放射線検出装置22を防水性、密閉性を有する構造とし、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの放射線撮影システム10を繰り返し続けて使用することができる。
【0166】
また、本実施形態は、上述した医療関連の放射線画像の撮影に限定されるものではなく、例えば、各種の非破壊検査における放射線画像の撮影にも適用可能であることは勿論である。
【0167】
[本実施形態の変形例]
次に、本実施形態の変形例(第1〜第8変形例)を図15A〜図25Bを参照しながら説明する。
【0168】
なお、これらの変形例において、図1〜図14と同じ構成要素については、同じ参照数字を付けて説明し、詳細な説明を省略する。
【0169】
[第1変形例]
第1変形例は、図15A及び図15Bに示すように、放射線出力装置20に2つの放射線源18a、18bが収容されている場合を図示したものである。
【0170】
この場合、図15Aに示す胸部の撮影及び図15Bに示す手の撮影では、プレ曝射時には、(1)放射線源18aから被写体14に放射線16aを照射するか、(2)放射線源18bから被写体14に放射線16bを照射するか、(3)各放射線源18a、18bから被写体14に放射線16a、16bをそれぞれ照射する。(1)及び(2)の場合では、得られるプレ曝射画像には撮影部位(胸部、手)の一部しか写り込まないことになるが、該撮影部位の特徴的な箇所が写っていれば、被写体14の他の撮影部位と識別することが可能である。また、(3)の場合には、撮影部位全体がプレ曝射画像に写り込むことになるので、撮影部位の特定が容易になる。
【0171】
一方、本曝射時には、各放射線源18a、18bから被写体14に放射線16a、16bをそれぞれ照射すればよい。本曝射時には、プレ曝射画像に基づいて、各放射線16a、16bの線量の重み付けを行えばよいことは勿論である。
【0172】
このように、2つの放射線源18a、18bしか放射線出力装置20に収容されていない第1変形例の場合であっても、上述したプレ曝射を行ってプレ曝射画像を取得することにより、本実施形態の各効果が得られることは勿論である。
【0173】
上記のように、本実施形態及び第1変形例では、一例として、2つの放射線源18a、18b、又は、3つの放射線源18a〜18cについてのプレ曝射画像の取得や線量の重み付けについて説明したが、放射線源の数が4以上であっても、本実施形態及び第1変形例の考え方を適用すれば、本実施形態及び第1変形例の各効果を容易に得ることができることは勿論である。
【0174】
[第2変形例]
第2変形例は、図16A及び図16Bに示すように、放射線出力装置20の筐体46における放射線16a〜16cの出力箇所とは反対側の箇所に凹部164を形成し、この凹部164に収納式の取手166を配設したものである。この場合、取手166にもタッチセンサ52が内蔵されている。
【0175】
ここで、医師26が放射線出力装置20を持たない状態では、取手166は、図16Aに示すように凹部164に収納されている。一方、医師26が取手166の基端部側を中心として該取手166を回動させると、取手166が凹部164から引き出された状態となるので、医師26は、取手166を把持することが可能となる(図16B参照)。この場合でも、前述した取手28及びタッチセンサ52による効果と同様の効果を得ることができる。また、取手166の収納時には、タッチセンサ52の電極と医師26の手とが接触することがないので、放射線出力装置20が起動した状態で、放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cが誤って出力されることを回避することができる。
【0176】
[第3変形例]
第3変形例は、図17A及び図17Bに示すように、放射線出力装置20の筐体46が、放射線検出装置22と略同じ平面積を有する矩形状とされ、該筐体46内に、例えば、9つの放射線源18a〜18iが内蔵されている。なお、筐体46内に内蔵される放射線源の個数は、9つに限定されることはなく、少なくとも3つあればよい。
【0177】
この場合、放射線源18a〜18iは、照射面32に対して二次元配列されており、前述した放射線源18a〜18cでの照射面32に対する一次元配列(図1、図5A〜図6B、図15A及び図15B参照)とは異なる。
【0178】
また、筐体46の上面には取手28が配設され、該筐体46の一方の側面と他方の側面とには、放射線検出装置22の筐体30の上面の四隅に形成された開口部163と、筐体46の底面に配設されたフック165との係合を解除するためのロック解除ボタン167が配設されている。
【0179】
さらに、筐体30における撮影可能領域36の外側には、筐体46の底面に設けられたピン状の接続端子169、171と嵌合可能なジャックとしての接続端子173、175も配設されている。
【0180】
従って、図17Aに示す状態では、各フック165と各開口部163とが係合すると共に、接続端子169、171と接続端子173、175とがそれぞれ嵌合するので、放射線出力装置20と放射線検出装置22とが一体状態となる。これにより、医師26は、取手28を把持するか、又は、取手28と筐体46の上面との間に手を差し込んだ状態で、一体状態の放射線出力装置20及び放射線検出装置22を容易に搬送することができる。また、この一体状態において、放射線検出装置22のバッテリ76(図7参照)は、接続端子169、171、173、175を介してバッテリ68を充電することも可能となる。
【0181】
一方、医師26が各ロック解除ボタン167を押して、各フック165と各開口部163との係合状態を解除し、取手28を把持するか、又は、取手28と筐体46の上面との間に手を差し込んだ状態で、放射線検出装置22から放射線出力装置20を離間させると(引き上げると)、接続端子169、171と接続端子173、175との嵌合状態も解除されて、放射線出力装置20と放射線検出装置22との一体状態が解除される。これにより、バッテリ76からバッテリ68への充電も停止して、各放射線源18a〜18iからの放射線の出力が可能な状態に至る。
【0182】
第3変形例では、各放射線源18a〜18iが二次元配列されているので、どのような撮影部位に対する放射線画像の撮影も効率よく行うことができる。また、放射線出力装置20の筐体46の形状を、放射線検出装置22の筐体30と略同じ矩形状とすることで、放射線出力装置20及び放射線検出装置22を一体状態としたときの可搬性を向上させると共に、放射線検出装置22に対する放射線出力装置20の位置決めを容易に行うことが可能となる。
【0183】
さらに、第3変形例においても、本実施形態、第1変形例及び第2変形例の各効果が容易に得られることは勿論である。
【0184】
[第4変形例]
第4変形例では、図18及び図19に示すように、放射線出力装置20に加速度センサ217が内蔵され、一方で、制御装置24の制御処理部124が曝射許可判定部216をさらに有する。
【0185】
ここで、加速度センサ217は、医師26が取手28を把持することにより放射線出力装置20を保持している場合に、該放射線出力装置20の加速度を逐次検出し、その検出信号を通信部64及びアンテナ62を介して無線により制御装置24に送信する。この場合、加速度センサ217により検出される加速度は、医師26が保持している放射線出力装置20のぶれに対応する物理量である。
【0186】
また、曝射許可判定部216は、制御装置24に送信された前記検出信号の示す放射線出力装置20の加速度に基づいて、各放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力(プレ曝射)の許可又は中断を判定する。この場合、曝射許可判定部216は、アンテナ120及び通信部122を介して受信した前記検出信号の示す加速度について、所定の閾値を超えたと判定した場合には、プレ曝射の中断を決定し、プレ曝射の中断を表示部126を通じて医師26に報知する。なお、前記閾値とは、プレ曝射を精度よく行なうことができない程度に放射線出力装置20がぶれたときの加速度の大きさをいう。
【0187】
さらに、曝射許可判定部216は、プレ曝射画像における被写体14の撮影部位のぶれ量を算出することも可能である。曝射許可判定部216は、該ぶれ量が所定の閾値を超えたと判定した場合に、本曝射の中断とプレ曝射に対する再撮影とを報知(指示)させるようにしてもよい。この場合の閾値は、プレ曝射画像に写り込んでいる被写体14の撮影部位を特定する際に、該撮影部位を特定できない程度に前記撮影部位がぶれていたか、放射線16a〜16cの線量の重み付け処理を行う際に、重み付け処理を正確に行うことができない程度に撮影部位がぶれていたことを示すぶれ量をいう。なお、プレ曝射画像中の撮影部位のぶれは、プレ曝射中に放射線出力装置20がぶれていたことに起因して、プレ曝射画像中に撮影部位がぶれて写り込んだことも含まれる。
【0188】
次に、第4変形例について、図20及び図21のフローチャートを参照しながら、具体的に説明する。
【0189】
図20は、プレ曝射後、曝射許可判定部216において、プレ曝射中の放射線出力装置20の加速度、又は、プレ曝射画像に写り込んでいる被写体14の撮影部位のぶれ量に基づいて、本曝射の中断及びプレ曝射に対する再撮影を判定するものである。
【0190】
プレ曝射中、加速度センサ217は、放射線出力装置20の加速度を逐次検出し、検出した前記加速度を示す検出信号を、無線により制御装置24に逐次送信する。曝射許可判定部216は、逐次受信した前記検出信号の示す前記加速度のデータを順次記録する。
【0191】
そして、プレ曝射の完了後のステップS30において、曝射許可判定部216は、記録した前記加速度のデータ中、所定の閾値を超えた加速度のデータが存在するか否かを判定する。また、曝射許可判定部216は、プレ曝射画像中の被写体14の撮影部位のぶれ量を算出し、算出したぶれ量が所定の閾値を超えるか否かも併せて判定する。
【0192】
閾値を超えた加速度のデータを見つけた場合、又は、撮影部位のぶれ量が閾値を超えた場合(ステップS30:YES)、曝射許可判定部216は、プレ曝射中に、プレ曝射画像に影響を与えるような放射線出力装置20のぶれ、又は、被写体14の撮影部位のぶれ(体動)が発生したと判定する。
【0193】
次のステップS31において、曝射許可判定部216は、本曝射の中止を表示部126を通じて医師26に報知する。また、曝射許可判定部216は、表示部126を通じてプレ曝射の再撮影を指示する(ステップS32)。医師26は、表示部126の表示内容を視認することにより、プレ曝射が失敗であったことを把握すると共に、ステップS2(図13参照)に戻り、プレ曝射に対する再撮影の準備に入る。
【0194】
一方、ステップS30において、曝射許可判定部216に記録された加速度のデータ中、閾値を超える加速度のデータが存在しなかった場合、又は、撮影部位のぶれ量が閾値を超えなかった場合(ステップS30:NO)、曝射許可判定部216は、プレ曝射画像に影響を与えるような放射線出力装置20のぶれや、撮影部位の体動が発生しなかったと判定する。この結果、制御装置24では、ステップS9の処理を実行することが可能となり、本曝射に向けての準備を進めることができる。
【0195】
このように、図20のフローチャートでは、プレ曝射中における放射線出力装置20の加速度や、被写体14の撮影部位のぶれが、プレ曝射画像に影響を及ぼす程度のものであれば、本曝射の中断とプレ曝射に対する再撮影とを報知(指示)するので、本曝射画像を確実に取得することが可能となる。
【0196】
図21は、プレ曝射の準備中(放射線16a〜16cの照射前)に、放射線出力装置20のぶれが既に発生している場合に、プレ曝射そのものを延期又は中止し、その後、該ぶれが収まった場合に、プレ曝射を許可するものである。
【0197】
すなわち、図21のフローチャートに示すように、プレ曝射の準備中に、加速度センサ217が放射線出力装置20の加速度を検出して、該加速度を示す検出信号を無線により制御装置24に送信する場合、ステップS40において、曝射許可判定部216は、受信した前記検出信号の示す前記加速度が、所定の閾値を超えるか否かを判定する。
【0198】
前記加速度が前記閾値を超えた場合、曝射許可判定部216は、プレ曝射画像に影響を与えるような放射線出力装置20のぶれが発生したものと判定し(ステップS40:YES)、プレ曝射の延期又は中止を決定する。
【0199】
次のステップS41において、曝射許可判定部216は、プレ曝射の延期又は中止を表示部126を通じて医師26に報知する。
【0200】
なお、ステップS41の報知後も、加速度センサ217は、加速度を逐次検出して、該加速度を示す検出信号を無線により制御装置24に送信し続けている。
【0201】
従って、ステップS42において、曝射許可判定部216は、受信した前記検出信号の示す前記加速度が、所定の閾値を下回ったか否か、すなわち、医師26が保持している放射線出力装置20のぶれが収まったか否かを判定する。前記加速度が前記閾値を下回り、前記ぶれが収まったと判定された場合(ステップS42:YES)、曝射許可判定部216は、プレ曝射の延期又は中止を解除してプレ曝射を許可する旨の通知を表示部126に表示させる(ステップS43)。医師26は、表示部126の表示内容を視認することにより、プレ曝射の許可が下りたことを把握して、ステップS3(図13参照)を実行することが可能となる。
【0202】
なお、ステップS40において、放射線出力装置20のぶれが発生していない場合、曝射許可判定部216は、プレ曝射画像に影響を与えるぶれが発生しないので、プレ曝射を行っても問題はないと判定し(ステップS40:NO)、ステップS43の処理を実行する。
【0203】
図21のフローチャートによれば、プレ曝射画像を確実に取得することができるので、結果的に、本曝射画像の取得を確実に行うことが可能となる。
【0204】
[第5変形例]
上記の説明では、放射線検出器60の構成要素の1つである光電変換層96を、a−Si等の物質にて形成した一例を示したが、本実施形態では、有機光電変換材料を含む光電変換層を用いることも可能である。
【0205】
ここで、第5変形例として、有機光電変換材料を含む光電変換層を用いた放射線検出器の一例を図22及び図23を参照しながら説明する。
【0206】
放射線検出器170は、図22に示すように、絶縁性の基板172上に、信号出力部174、センサ部176及びシンチレータ178が順次積層しており、信号出力部174及びセンサ部176により画素部が構成されている。画素部は、基板172上に複数配列されており、各画素部における信号出力部174とセンサ部176とが重なりを有するように構成されている。
【0207】
すなわち、図22及び図23に示す放射線検出器170は、放射線16a〜16cの照射方向に沿って、シンチレータ178、センサ部176及び信号出力部174が順に配置された裏面読取方式(PSS方式、PSS:Penetration Side Sampling)の放射線検出器である。なお、放射線16a〜16cの照射方向に沿って、信号出力部174、センサ部176及びシンチレータ178が順に配置される表面読取方式(ISS方式、ISS:Irradiation Side Sampling)の放射線検出器については後述する。
【0208】
シンチレータ178は、センサ部176上に透明絶縁膜180を介して形成されており、上方(基板172と反対側)から入射してくる放射線16a〜16c(図1、図4B〜図7、図15A、図15B及び図16B参照)を光に変換して発光する蛍光体を成膜したものである。このようなシンチレータ178を設けることで、被写体14を透過した放射線16a〜16cを吸収して発光することができる。
【0209】
シンチレータ178が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器170によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
【0210】
シンチレータ178に用いる蛍光体としては、具体的には、放射線16a〜16cとしてX線を用いて撮像する場合、ヨウ化セシウム(CsI)を含むものが好ましく、X線照射時の発光スペクトルが420nm〜700nmにあるCsI(Tl)(タリウムが添加されたヨウ化セシウム)を用いることが特に好ましい。なお、CsI(Tl)の可視光域における発光ピーク波長は565nmである。また、蛍光体としては、CsI(Tl)に限定されることはなく、CsI(Na)(ナトリウム賦活ヨウ化セシウム)、GOS(GdS:Tb)等の材料を用いてもよい。
【0211】
センサ部176は、上部電極182、下部電極184、及び該上下の電極182、184間に配置された光電変換膜186を有し、光電変換膜186は、シンチレータ178が発する光を吸収して電荷が発生する有機光電変換材料により構成されている。
【0212】
上部電極182は、シンチレータ178により生じた光を光電変換膜186に入射させる必要があるため、少なくともシンチレータ178の発光波長に対して透明な導電性材料で構成することが好ましく、具体的には、可視光に対する透過率が高く、抵抗値が小さい透明導電性酸化物(Transparent Conducting Oxide(TCO))を用いることが好ましい。なお、上部電極182としてAu等の金属薄膜を用いることもできるが、透過率を90%以上得ようとすると抵抗値が増大しやすいため、TCOの方が好ましい。例えば、ITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)、AZO(Aluminium doped Zinc Oxide)、FTO(Fluorine doped Tin Oxide)、SnO、TiO、ZnO等を好ましく用いることができ、プロセス簡易性、低抵抗性、透明性の観点からはITOが最も好ましい。なお、上部電極182は、全画素部で共通の一枚構成としてもよく、画素部毎に分割してもよい。
【0213】
光電変換膜186は、可視光を吸収して電荷を発生する材料から構成すればよく、前述したアモルファスシリコン(a−Si)や有機光電変換材料(OPC)等を用いることができる。
【0214】
光電変換膜186をアモルファスシリコンで構成した場合、シンチレータ178から放出された可視光を広い波長域にわたって吸収するように構成することができる。但し、アモルファスシリコンからなる光電変換膜186の形成には蒸着を行う必要があり、基板172が合成樹脂製である場合、基板172の耐熱性も考慮する必要がある。
【0215】
一方、光電変換膜186を有機光電変換材料を含む材料で構成した場合、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ178による発光以外の電磁波が光電変換膜186に吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線16a〜16cが光電変換膜186で吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0216】
また、有機光電変換材料からなる光電変換膜186は、インクジェットヘッド等の液滴吐出ヘッドを用いて、有機光電変換材料を被形成体上に付着させることにより形成することができるので、該被形成体に対する耐熱性は要求されない。
【0217】
光電変換膜186を構成する有機光電変換材料は、シンチレータ178で発光した光を最も効率良く吸収するために、その吸収ピーク波長が、シンチレータ178の発光ピーク波長と近いほど好ましい。有機光電変換材料の吸収ピーク波長とシンチレータ178の発光ピーク波長とが一致することが理想的であるが、双方の差が小さければシンチレータ178から発された光を十分に吸収することが可能である。具体的には、有機光電変換材料の吸収ピーク波長と、シンチレータ178の放射線16a〜16cに対する発光ピーク波長との差が、10nm以内であることが好ましく、5nm以内であることがより好ましい。
【0218】
このような条件を満たすことが可能な有機光電変換材料としては、例えば、キナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えば、キナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ178の材料としてCsI(Tl)を用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜186で発生する電荷量を略最大にすることができる。
【0219】
次に、上述の放射線検出器170に適用可能な光電変換膜186について具体的に説明する。
【0220】
放射線検出器170における電磁波吸収/光電変換部位は、1対の電極182、184と、該電極182、184間に挟まれた光電変換膜186を含む有機層により構成することができる。この有機層は、より具体的には、電磁波を吸収する部位、光電変換部位、電子輸送部位、正孔輸送部位、電子ブロッキング部位、正孔ブロッキング部位、結晶化防止部位、電極、及び、層間接触改良部位等の積み重ね又は混合により形成することができる。
【0221】
上記有機層は、有機p型化合物又は有機n型化合物を含有することが好ましい。
【0222】
有機p型半導体(化合物)は、主に正孔輸送性有機化合物に代表されるドナー性有機半導体(化合物)であり、電子を供与しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物をいう。従って、ドナー性有機化合物としては、電子供与性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0223】
有機n型半導体(化合物)は、主に電子輸送性有機化合物に代表されるアクセプター性有機半導体(化合物)であり、電子を受容しやすい性質がある有機化合物をいう。さらに詳しくは、2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物をいう。従って、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であれば、いずれの有機化合物も使用可能である。
【0224】
この有機p型半導体及び有機n型半導体として適用可能な材料、及び、光電変換膜186の構成については、特開2009−032854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0225】
各画素部を構成するセンサ部176は、少なくとも下部電極184、光電変換膜186及び上部電極182を含んでいればよいが、暗電流の増加を抑制するため、電子ブロッキング膜188及び正孔ブロッキング膜190の少なくともいずれかを設けることが好ましく、両方を設けることがより好ましい。
【0226】
電子ブロッキング膜188は、下部電極184と光電変換膜186との間に設けることができ、下部電極184と上部電極182との間にバイアス電圧を印加したときに、下部電極184から光電変換膜186に電子が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0227】
また、電子ブロッキング膜188には、電子供与性有機材料を用いることができる。
【0228】
実際に電子ブロッキング膜188に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜186の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上電子親和力(Ea)が大きく、且つ、隣接する光電変換膜186の材料のイオン化ポテンシャル(Ip)と同等のIp、又は、それより小さいIpを持つものが好ましい。この電子供与性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−032854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0229】
電子ブロッキング膜188の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、センサ部176の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0230】
正孔ブロッキング膜190は、光電変換膜186と上部電極182との間に設けることができ、下部電極184と上部電極182との間にバイアス電圧を印加したときに、上部電極182から光電変換膜186に正孔が注入されて暗電流が増加してしまうのを抑制することができる。
【0231】
正孔ブロッキング膜190には、電子受容性有機材料を用いることができる。
【0232】
また、正孔ブロッキング膜190の厚みは、暗電流抑制効果を確実に発揮させると共に、センサ部176の光電変換効率の低下を防ぐため、10nm以上200nm以下が好ましく、さらに好ましくは30nm以上150nm以下、特に好ましくは50nm以上100nm以下である。
【0233】
実際に正孔ブロッキング膜190に用いる材料は、隣接する電極の材料及び隣接する光電変換膜186の材料等に応じて選択すればよく、隣接する電極の材料の仕事関数(Wf)より1.3eV以上イオン化ポテンシャル(Ip)が大きく、且つ、隣接する光電変換膜186の材料の電子親和力(Ea)と同等のEa、又は、それより大きいEaを持つものが好ましい。この電子受容性有機材料として適用可能な材料については、特開2009−032854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0234】
なお、光電変換膜186で発生した電荷のうち、正孔が上部電極182に移動し、電子が下部電極184に移動するようにバイアス電圧を設定する場合には、電子ブロッキング膜188と正孔ブロッキング膜190の位置を逆にすればよい。また、電子ブロッキング膜188及び正孔ブロッキング膜190は、両方設けなくてもよく、いずれかを設けておけば、ある程度の暗電流抑制効果を得ることができる。
【0235】
各画素部の下部電極184下方の基板172の表面には、信号出力部174が形成されている。図23には、信号出力部174(図22参照)の構成が概略的に示されている。
【0236】
信号出力部174は、下部電極184に対応して、該下部電極184に移動した電荷を蓄積するコンデンサ192、コンデンサ192に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力する電界効果型薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor、以下、単に薄膜トランジスタ又はTFTという場合がある。)194が形成されている。コンデンサ192及び薄膜トランジスタ194の形成された領域は、平面視において下部電極184と重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における信号出力部174とセンサ部176とが厚さ方向で重なりを有することとなる。なお、放射線検出器170(画素部)の平面積を最小にするために、コンデンサ192及び薄膜トランジスタ194の形成された領域が下部電極184によって完全に覆われていることが望ましい。
【0237】
コンデンサ192は、基板172と下部電極184との間に設けられた絶縁膜196を貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極184と電気的に接続されている。これにより、下部電極184で捕集された電荷をコンデンサ192に移動させることができる。
【0238】
薄膜トランジスタ194は、図23に示すように、ゲート電極198、ゲート絶縁膜200、及び、活性層(チャネル層)202が積層され、さらに、活性層202上にソース電極204とドレイン電極206とが所定の間隔を開けて形成されている。また、放射線検出器170では、活性層202が、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちのいずれかにより形成することができるが、活性層202を形成可能な材料はこれらに限定されるものではない。
【0239】
活性層202を構成する非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えばIn−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えばIn−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層202を形成可能な非晶質酸化物はこれらに限定されるものではない。
【0240】
また、活性層202を形成可能な有機半導体材料としては、例えば、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報で詳細に説明されているため、説明を省略する。
【0241】
非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブ等のうちのいずれかによって薄膜トランジスタ194の活性層202を形成すれば、X線等の放射線16a〜16cを吸収せず、あるいは、吸収したとしても極めて微量に留まるため、信号出力部174におけるノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0242】
また、活性層202をカーボンナノチューブで形成した場合、薄膜トランジスタ194のスイッチング速度を高速化することができ、また、薄膜トランジスタ194における可視光域の光の吸収度合いを低下させることができる。なお、活性層202をカーボンナノチューブで形成する場合、活性層202にごく微量の金属性不純物が混入しただけで薄膜トランジスタ194の性能が著しく低下するため、遠心分離等により非常に純度の高いカーボンナノチューブを分離・抽出して活性層202の形成に用いる必要がある。
【0243】
また、有機光電変換材料で形成した膜及び有機半導体材料で形成した膜は、いずれも十分な可撓性を有しているので、有機光電変換材料で形成した光電変換膜186と、活性層202を有機半導体材料で形成した薄膜トランジスタ194とを組み合わせた構成であれば、被写体14の体の重みが荷重として加わるTFT基板208の高剛性化は必ずしも必要ではなくなる。
【0244】
ここで、薄膜トランジスタ194の活性層202を構成する非晶質酸化物や、光電変換膜186を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、基板172としては、半導体基板、石英基板及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば持ち運び等に有利となる。
【0245】
また、基板172には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0246】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(Indium Tin Oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドとを積層して基板172を形成してもよい。
【0247】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂とを複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、且つ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60%〜70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3ppm〜7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、且つ、フレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く基板172を形成できる。
【0248】
放射線検出器170は、光電変換膜186を有機光電変換材料により構成しており、光電変換膜186で放射線16a〜16cがほとんど吸収されない。このため、上述のPSS方式の放射線検出器170は、放射線16a〜16cがTFT基板208を透過する場合でも、光電変換膜186による放射線16a〜16cの吸収量が少ないため、放射線16a〜16cに対する感度の低下を抑えることができる。PSS方式では、放射線16a〜16cがTFT基板208を透過してシンチレータ178に到達するが、このように、TFT基板208の光電変換膜186を有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜186での放射線の吸収が殆どなく、放射線16a〜16cの減衰を少なく抑えることができるため、PSS方式に適している。
【0249】
また、薄膜トランジスタ194の活性層202を構成する非晶質酸化物や光電変換膜186を構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。このため、基板172を放射線16a〜16cの吸収が少ないプラスチック樹脂、アラミド、バイオナノファイバで形成することができる。このように形成された基板172は、放射線16a〜16cの吸収量が少ないため、PSS方式により放射線16a〜16cがTFT基板208を透過する場合でも、放射線16a〜16cに対する感度の低下を抑えることができる。
【0250】
第5変形例では、放射線検出器170を下記のように構成してもよい。
【0251】
(1)有機光電変換材料の光電変換膜186を含みセンサ部176を構成し、CMOSセンサを用いて信号出力部174を構成してもよい。この場合、センサ部176のみが有機系材料からなるので、CMOSセンサを含む信号出力部174は可撓性を有しなくてもよい。なお、有機光電変換材料を含み構成されるセンサ部176と、CMOSセンサとについては、特開2009−212377号公報に記載されているため、その詳細な説明は省略する。
【0252】
(2)有機光電変換材料の光電変換膜186を含みセンサ部176を構成すると共に、有機材料からなる薄膜トランジスタ(TFT)194を備えたCMOS回路によって可撓性を有する信号出力部174を実現してもよい。この場合、CMOS回路で用いられるp型有機半導体の材料としてペンタセンを採用すると共に、n型有機半導体の材料としてフッ化銅フタロシアニン(F16CuPc)を採用すればよい。これにより、より小さな曲げ半径にすることが可能な可撓性を有するTFT基板208を実現することができる。また、このようにTFT基板208を構成することにより、ゲート絶縁膜200を大幅に薄くすることができ、駆動電圧を低下させることも可能となる。さらに、ゲート絶縁膜200、半導体、各電極を室温又は100℃以下で作製することができる。さらにまた、可撓性を有する基板172上にCMOS回路を直接作製することもできる。しかも、有機材料からなる薄膜トランジスタ194は、スケーリング則に沿った製造プロセスにより微細化することが可能となる。なお、基板172は、薄厚のポリイミド基板上にポリイミド前駆体をスピンコート法で塗布して加熱すれば、ポリイミド前駆体がポリイミドに変化するので、凹凸のない平坦な基板を実現することができる。
【0253】
(3)ミクロンオーダの複数のデバイスブロックを基板上の指定位置に配置する自己整合配置技術(Fluidic Self−Assembly法)を適用して、結晶Siからなるセンサ部176及び信号出力部174を、樹脂基板からなる基板172上に配置してもよい。この場合、ミクロンオーダの微小デバイスブロックとしてのセンサ部176及び信号出力部174を他の基板に予め作製した後に該基板から切り離し、液体中で、センサ部176及び信号出力部174をターゲット基板としての基板172上に散布して統計的に配置する。基板172には、デバイスブロックに適合させるための加工が予め施されており、デバイスブロックを選択的に基板172に配置することができる。従って、最適な材料で作られた最適なデバイスブロック(センサ部176及び信号出力部174)を最適な基板(基板172)上に集積化させることができ、結晶でない基板172(樹脂基板)にセンサ部176及び信号出力部174を集積化することが可能となる。
【0254】
[第6変形例]
次に、第6変形例として、CsI(Tl)のシンチレータ500を含むISS方式の放射線検出器300の一例を図24A及び図24Bを参照しながら説明する。
【0255】
この放射線検出器300は、放射線16a〜16cが照射される照射面32に対して(放射線16a〜16cの照射方向に沿って)、信号出力部174及びセンサ部176を含むTFT基板208と略同じ機能を奏する放射線検出部502と、CsI(Tl)のシンチレータ500とを順に配置したISS方式の放射線検出器である。
【0256】
シンチレータ500は、放射線16a〜16cが入射される照射面32側がより強く発光する。この場合、放射線検出部502とシンチレータ500とが接近した状態で配置されているため、ISS方式は、PSS方式と比較して、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高く、且つ、放射線検出部502での可視光の受光量も増大する。従って、ISS方式は、PSS方式よりも、放射線検出器300(放射線検出装置22)の感度を向上させることができる。
【0257】
図24Bは、一例として、蒸着基板504にCsIを含む材料を蒸着させることにより、柱状結晶領域を含むシンチレータ500を形成した場合を図示している。
【0258】
具体的に、図24Bのシンチレータ500では、放射線16a〜16cが入射される照射面32側(放射線検出部502側)に柱状結晶500aからなる柱状結晶領域が形成され、該照射面32側の反対側に非柱状結晶500bからなる非柱状結晶領域が形成された構成となっている。なお、蒸着基板504としては、耐熱性の高い材料が望ましく、例えば、低コストという観点からアルミニウム(Al)が好適である。また、シンチレータ500は、柱状結晶500aの平均径が該柱状結晶500aの長手方向に沿っておよそ均一とされている。
【0259】
上記のように、シンチレータ500は、柱状結晶領域(柱状結晶500a)及び非柱状結晶領域(非柱状結晶500b)で形成された構成であると共に、高効率の発光が得られる柱状結晶500aからなる柱状結晶領域が放射線検出部502側に配置されている。そのため、シンチレータ500で発生された可視光は、柱状結晶500a内を進行して放射線検出部502へ射出される。この結果、放射線検出部502側へ射出される可視光の拡散が抑制され、放射線検出装置22によって検出される放射線画像のボケが抑制される。また、シンチレータ500の深部(非柱状結晶領域)に到達した可視光も、非柱状結晶500bによって放射線検出部502側へ反射するので、放射線検出部502に入射される可視光の光量(シンチレータ500で発光された可視光の検出効率)を向上させることもできる。
【0260】
なお、シンチレータ500の照射面32側に位置する柱状結晶領域の厚みをt1とし、シンチレータ500の蒸着基板504側に位置する非柱状結晶領域の厚みをt2とすれば、t1とt2との間では、0.01≦(t2/t1)≦0.25の関係を満足することが望ましい。
【0261】
このように、柱状結晶領域の厚みt1と非柱状結晶領域の厚みt2とが上記の関係を満たすことで、発光効率が高く且つ可視光の拡散を防止する領域(柱状結晶領域)と、可視光を反射する領域(非柱状結晶領域)とのシンチレータ500の厚み方向に沿った比率が好適な範囲となり、シンチレータ500の発光効率、該シンチレータ500で発光された可視光の検出効率、及び、放射線画像の解像度が向上する。
【0262】
なお、非柱状結晶領域の厚みt2が厚すぎると発光効率の低い領域が増え、放射線検出装置22の感度の低下につながることから、(t2/t1)は0.02以上且つ0.1以下の範囲であることがより好ましい。
【0263】
また、上記の説明では、柱状結晶領域と非柱状結晶領域とが連続的に形成された構成のシンチレータ500について説明したが、例えば、上記の非柱状結晶領域に代えて、Al等から成る光反射層を設けて、柱状結晶領域のみ形成された構成としてもよいし、他の構成であってもよい。
【0264】
放射線検出部502は、シンチレータ500の光射出側(柱状結晶500a)から射出された可視光を検出するものであり、図24Aの側面視では、放射線16a〜16cの照射方向に沿って、照射面32に対して、絶縁性基板508、TFT層510及び光電変換部512が順に積層されている。TFT層510の底面には、光電変換部512を覆うように平坦化層514が形成されている。
【0265】
また、放射線検出部502は、フォトダイオード(PD:Photo Diode)等からなる光電変換部512、蓄積容量516及び薄膜トランジスタ(TFT)518を備えた画素部520を、絶縁性基板508上に平面視でマトリクス状に複数形成した、TFTアクティブマトリクス基板(以下、TFT基板ともいう。)として構成される。
【0266】
さらに、光電変換部512は、シンチレータ500側の下部電極512aと、TFT層510側の上部電極512bとの間に、光電変換膜512cを配置して構成される。
【0267】
さらにまた、TFT層510のTFT518では、ゲート電極、ゲート絶縁膜及び活性層(チャネル層)が積層され、さらに、活性層上にソース電極とドレイン電極とが所定の間隔を隔てて形成されている。
【0268】
また、TFT基板としての放射線検出部502のうち、放射線16a〜16cの到来方向の反対側(シンチレータ500側)には、放射線検出部502を平坦にするための平坦化層514が形成されている。
【0269】
ここで、第6変形例の放射線検出器300と、第5変形例の放射線検出器170とを対比すると、下記のように、放射線検出器300の各構成要素は、放射線検出器170の各構成要素にそれぞれ対応している。
【0270】
先ず、絶縁性基板508は、基板172に対応している。但し、絶縁性基板508は、光透過性を有し且つ放射線16a〜16cの吸収が少ないものであればよい。
【0271】
絶縁性基板508としてガラス基板を用いた場合、放射線検出部502(TFT基板)全体としての厚みは、例えば、0.7mm程度になるが、第6変形例では、放射線検出装置22の薄型化を考慮し、絶縁性基板508として、光透過性を有する合成樹脂からなる薄型の基板を用いている。これにより、放射線検出部502全体としての厚みを、例えば、0.1mm程度に薄型化できると共に、放射線検出部502に可撓性を持たせることができる。また、放射線検出部502に可撓性を持たせることで、放射線検出装置22の耐衝撃性が向上し、放射線検出装置22に衝撃が加わった場合にも破損し難くなる。また、プラスチック樹脂や、アラミド、バイオナノファイバ等は、いずれも放射線16a〜16cの吸収が少なく、絶縁性基板508をこれらの材料で形成した場合、絶縁性基板508による放射線16a〜16cの吸収量も少なくなるため、ISS方式により放射線検出部502を放射線16a〜16cが透過する構成であっても、放射線16a〜16cに対する感度の低下を抑えることができる。
【0272】
なお、放射線検出装置22では、絶縁性基板508として合成樹脂製の基板を用いることは必須ではなく、放射線検出装置22の厚さは増大するものの、ガラス基板等の他の材料からなる基板を絶縁性基板508として用いてもよい。
【0273】
画素部520は、信号出力部174に対応し、光電変換部512は、センサ部176に対応する。そのため、画素部520の蓄積容量516は、信号出力部174のコンデンサ192に対応し、TFT518は、薄膜トランジスタ194に対応する。また、光電変換部512の下部電極512aは、センサ部176の上部電極182に対応し、光電変換膜512cは光電変換膜186に対応し、上部電極512bは下部電極184に対応する。
【0274】
つまり、第6変形例に示すISS方式の放射線検出器300の各構成要素は、概ね、第5変形例に示すPSS方式の放射線検出器170の各構成要素とそれぞれ対応している。従って、図22及び図23で説明した放射線検出器170の構成要素の材質を、第6変形例の放射線検出器300での対応する構成要素の材質として適用すれば、図22及び図23で説明した各材質による効果を容易に得られることができることは勿論である。
【0275】
但し、ISS方式は、PSS方式とは異なり、放射線16a〜16cが放射線検出部502を透過してCsI(Tl)のシンチレータ500に到達するため、絶縁性基板508、画素部520及び光電変換部512を含む放射線検出部502は、全体的に、放射線16a〜16cの吸収が少ない材質で構成されることが必要である。
【0276】
従って、第6変形例において、光電変換膜512cを有機光電変換材料で構成した場合、光電変換膜512cで放射線16a〜16cがほとんど吸収されないので、放射線16a〜16cが透過するように放射線検出部502が配置されるISS方式において、放射線検出部502を透過する放射線16a〜16cの減衰を抑制することができ、該放射線16a〜16cに対する感度の低下を抑えることができる。従って、光電変換膜512cを有機光電変換材料で構成することは、特にISS方式において好適である。
【0277】
[第7変形例]
ところで、これまでに説明した本実施形態において、医師26が取手28を把持しながら放射線出力装置20を移動させることによりSIDを設定する際に、該放射線出力装置20が被写体14に接近しすぎると、図25Aに示すように、SID(図25AではSID1の距離)が短くなりすぎて、比較的狭い範囲でしか被写体14に対する撮影を行えない場合がある。また、SIDが短くなりすぎると、照射面32における各放射線16a〜16cの照射範囲が重ならず、被写体14に対する撮影が失敗する可能性もある。
【0278】
そこで、第7変形例では、第4変形例(図18及び図19参照)の構成を利用して、加速度センサ217が検出した放射線出力装置20の加速度に基づき該放射線出力装置20の移動量を算出し、算出した移動量に基づきSIDが適切な距離に設定されたか否かを判定し、SIDが適切な距離に設定された時点で、放射線16a〜16cの照射を許可するか、放射線16a〜16cの照射を開始させる。
【0279】
具体的には、医師26が取手28を把持してSIDを調整しているときに、加速度センサ217は、放射線出力装置20の加速度を逐次検出し、制御処理部124は、加速度センサ217が検出した加速度に基づいて、放射線出力装置20の移動量を算出する。曝射許可判定部216は、制御処理部124で算出された移動量が、被写体14の撮影にとり適切なSID(例えば、図25Bに示すSID2)に応じた移動量に到達した場合、各放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力(本曝射)を許可する。これにより、被写体14に対して比較的広範囲の撮影を行うことが可能となり、被写体14に対する撮影の失敗を回避することができる。
【0280】
なお、第7変形例では、(1)曝射許可判定部216により本曝射の許可があった後に、医師26が曝射スイッチ130を押して各放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力を開始させてもよいし、(2)本曝射の許可の時点でSID2に設定されているため、該許可の時点で自動的に各放射線源18a〜18cからの放射線16a〜16cの出力が開始されてもよい。
【0281】
また、SIDがSID2に到達するまでは、表示部126等により医師26に対して放射線出力装置20の移動を促すように報知し、SID2に到達した時点で、放射線出力装置20の移動停止を促すように報知してもよい。これにより、移動停止の報知内容に従って、医師26が放射線出力装置20の移動を停止させた時点(加速度センサ217で検出される加速度が略0レベルとなった時点)で、曝射許可判定部216は本曝射を許可することができ、この結果、被写体14に対する撮影を直ちに行うことができる。
【0282】
なお、上記の第7変形例の説明では、本曝射を行う場合について説明したが、本実施形態でのプレ曝射を行う場合に適用しても同様の効果が得られることは勿論である。
【0283】
[第8変形例]
ところで、被写体14に対する撮影では、該被写体14の撮影部位の中心位置と撮影可能領域36の中心位置とが略一致し、且つ、該撮影部位が撮影可能領域36に納まるように前記撮影部位をポジショニングするため、関心領域(ROI)が撮影可能領域36の中央に位置する場合が多い。そのため、実際の撮影では、放射線出力装置20における中央の放射線源18bからの放射線16bの線量を大きくし、且つ、両端の放射線源18a、18cからの放射線16a、16cの線量は、放射線16bを補う程度の小さな線量にして、被写体14に対する撮影が行われることが多くなる。
【0284】
つまり、実際の撮影において、制御処理部124は、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が最大の線量となり、両端の各放射線源18a、18cから出力される放射線16a、16cの線量が前記最大の線量を補う程度の小さな線量となるように、各線量の重み付けを行い、この重み付けに従って各放射線源18a〜18cから放射線16a〜16cを一斉に照射させるか、又は、順次照射させる。
【0285】
このような重み付けに従って、各放射線源18a〜18cを駆動し続けると、中央の放射線源18bばかりが劣化することになる。従って、放射線出力装置20の寿命管理の観点からすれば、各放射線源18a〜18cからの累積の照射線量(累積曝射線量)がそれぞれ同じようになるように線量管理を行うことにより、各放射線源18a〜18cを含む放射線出力装置20の長寿命化を実現できることが望ましい。
【0286】
そこで、第8変形例では、例えば、本実施形態での図14のステップS11又はステップS17において、データベース検索部150が検索した最適線量データに応じた各放射線16a〜16cの線量のデータ(重み付けが行われた線量のデータ)をデータベース134に記憶し、記憶した各線量のデータを各放射線源18a〜18cの線量管理及び寿命管理に役立てるようにしてもよい。
【0287】
これにより、各放射線源18a〜18cから出力される放射線16a〜16cの累積曝射線量について、放射線16bの累積曝射線量が放射線16a、16cの累積曝射線量よりも突出するような場合には、放射線源18bが放射線源18a、18cよりも速く劣化する可能性がある。そこで、制御処理部124は、各累積曝射線量の比較に基づいて、例えば、SIDが大きくなるような撮影に対しては、両端の各放射線源18a、18cから出力される放射線16a、16cの線量が最大の線量となり、中央の放射線源18bから出力される放射線16bの線量が該最大の線量を補う程度の小さな線量となるように、各線量の重み付けを変更する。
【0288】
このように、各累積曝射線量を判断材料として、各放射線源18a〜18cから出力される放射線16a〜16cの線量の重み付けを変更することにより、放射線源18bのみの劣化を回避して、各放射線源18a〜18cを含む放射線出力装置20の長寿命化を実現することができる。
【0289】
なお、本発明は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0290】
10…放射線撮影システム
14…被写体
16a〜16c…放射線
18a〜18i…放射線源
20…放射線出力装置
22…放射線検出装置
24…制御装置
26…医師
28、166…取手
52…タッチセンサ
60、170、300…放射線検出器
66…線源制御部
74…カセッテ制御部
124…制御処理部
132…オーダ情報記憶部
134…データベース
136…撮影条件記憶部
150…データベース検索部
152…撮影条件設定部
154…制御信号生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体に放射線を照射可能な放射線源を少なくとも2つ収容する放射線出力装置と、前記被写体を透過した放射線を検出して放射線画像に変換する放射線検出装置と、前記放射線出力装置及び前記放射線検出装置を制御する制御装置とを備え、
前記少なくとも2つの放射線源のうち、少なくとも一方の放射線源から前記被写体に放射線を照射するプレ曝射が行われた場合に、前記放射線検出装置は、前記被写体を透過した前記放射線を検出することにより、前記プレ曝射での放射線画像であるプレ曝射画像を取得し、
前記制御装置は、前記プレ曝射画像に基づいて前記少なくとも2つの放射線源から出力される各放射線の線量の重み付けを行い、前記重み付けに従って前記少なくとも2つの放射線源から前記被写体に前記各放射線を照射する本曝射を行うように前記放射線出力装置を制御すると共に、前記被写体を透過した前記各放射線を検出して前記本曝射での放射線画像である本曝射画像を取得するように前記放射線検出装置を制御する
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項2】
請求項1記載のシステムにおいて、
前記制御装置は、
前記各放射線源から出力される放射線の線量の重み付けを示す重み付けデータを格納するデータベースと、
前記プレ曝射画像の示す前記被写体の撮影部位を特定し、特定した前記撮影部位に対応する重み付けデータを前記データベースから検索するデータベース検索部と、
前記撮影部位と、前記データベース検索部が検索した重み付けデータとに基づいて、前記本曝射において前記撮影部位に放射線を照射させるための本曝射条件を設定する撮影条件設定部と、
前記本曝射条件に従って前記放射線出力装置及び前記放射線検出装置を制御する制御処理部と、
を有する
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項3】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記データベースには、複数の撮影部位及び該各撮影部位の厚みにそれぞれ応じた最適な線量を示す最適線量データがさらに格納され、
前記データベース検索部は、前記プレ曝射画像の示す前記被写体の撮影部位を特定した後に、前記データベース中、特定した前記撮影部位及び該撮影部位の厚みに一致する撮影部位及び厚みの最適線量データと、特定した前記撮影部位に一致する撮影部位の重み付けデータとを検索し、
前記撮影条件設定部は、前記被写体の撮影部位及び該撮影部位の厚みと、前記データベース検索部が検索した最適線量データ及び重み付けデータとに基づいて、前記本曝射条件を設定する
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項4】
請求項3記載のシステムにおいて、
前記最適線量データは、前記複数の撮影部位、該各撮影部位の厚み、及び、前記放射線検出装置に対する前記各撮影部位の向きと該各撮影部位に対する放射線の照射方向とを示す撮影手技に対応付けられて前記データベースに格納され、
前記重み付けデータは、前記複数の撮影部位及び該各撮影部位に応じた撮影手技に対応付けられて前記データベースに格納され、
前記データベース検索部は、前記データベース中、特定した前記被写体の撮影部位、該撮影部位の厚み及び撮影手技に一致する撮影部位、厚み及び撮影手技の最適線量データと、特定した前記被写体の撮影部位及び撮影手技に一致する撮影部位及び撮影手技の重み付けデータとを検索し、
前記撮影条件設定部は、前記被写体の撮影部位、該撮影部位の厚み及び撮影手技と、前記データベース検索部が検索した最適線量データ及び重み付けデータとに基づいて、前記本曝射条件を設定する
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項5】
請求項4記載のシステムにおいて、
前記データベースには、前記複数の撮影部位の放射線画像を示すオブジェクトデータがさらに格納され、
前記データベース検索部は、前記プレ曝射画像に対応するオブジェクトデータを検索し、検索したオブジェクトデータの示す撮影部位を前記被写体の撮影部位として特定する
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項6】
請求項5記載のシステムにおいて、
前記撮影条件設定部は、前記被写体に対する放射線画像の撮影を要求するためのオーダ情報に基づいて前記プレ曝射で前記被写体に放射線を照射させるためのプレ曝射条件を設定し、
前記制御処理部は、前記プレ曝射条件に従って前記プレ曝射を行うように前記放射線出力装置を制御すると共に、前記プレ曝射画像を取得するように前記放射線検出装置を制御する
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項7】
請求項6記載のシステムにおいて、
前記撮影条件設定部は、前記データベース検索部が検索した最適線量データ及び重み付けデータを、前記オーダ情報、前記被写体又は該被写体の撮影手技に応じて変更可能である
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項8】
請求項2記載のシステムにおいて、
前記データベース検索部は、前記プレ曝射画像の示す前記被写体の撮影部位を特定した後に、特定した前記撮影部位に応じた最適な線量を算出すると共に、特定した前記撮影部位に一致する撮影部位の重み付けデータを前記データベースから検索し、前記撮影部位を示す情報と、前記最適な線量を示す最適線量データと、前記重み付けデータとを前記撮影条件設定部に出力し、
前記撮影条件設定部は、前記撮影部位を示す情報、前記最適線量データ及び前記重み付けデータに基づいて、前記本曝射条件を設定する
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記放射線出力装置に3つの放射線源が収容されている場合に、前記制御装置は、前記プレ曝射画像に基づいて、中央の放射線源から出力される放射線の線量が最大の線量になると共に、両端の放射線源から出力される放射線の線量が小さな線量となるような重み付けを行うか、あるいは、前記両端の放射線源から出力される放射線の線量が最大の線量になると共に、前記中央の放射線源から出力される放射線の線量が小さな線量となるような重み付けを行う
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項10】
請求項9記載のシステムにおいて、
前記制御装置は、前記プレ曝射画像の示す前記被写体の撮影部位が手である場合には、前記中央の放射線源から出力される放射線の線量が最大の線量になると共に、前記両端の放射線源から出力される放射線の線量が小さな線量となるような重み付けを行い、一方で、前記プレ曝射画像の示す前記被写体の撮影部位が胸部である場合には、前記両端の放射線源から出力される放射線の線量が最大の線量になると共に、前記中央の放射線源から出力される放射線の線量が小さな線量となるような重み付けを行う
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項11】
請求項9又は10記載のシステムにおいて、
前記プレ曝射では、前記中央の放射線源から前記被写体に放射線が照射される
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記放射線出力装置は、前記本曝射の際、前記少なくとも2つの放射線源から前記被写体に放射線を一斉に照射させるか、又は、順次照射させる
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記放射線出力装置と前記放射線検出装置とを対向させた場合に、前記放射線出力装置内では、前記放射線が照射される前記放射線検出装置の照射面に対して、少なくとも2つの放射線源が一次元配列されているか、又は、少なくとも3つの放射線源が二次元配列されている
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記放射線出力装置及び前記放射線検出装置は、可搬型の装置であり、
前記制御装置は、可搬型の携帯端末、又は、医療機関に設けられたコンソールである
ことを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載のシステムにおいて、
前記放射線出力装置における前記各放射線の出力箇所とは反対側の箇所には、取手が設けられ、
前記取手には、該取手が把持されたことを示す検出信号を出力可能な把持状態検出センサが設けられ、
前記放射線出力装置は、前記把持状態検出センサから前記検出信号が出力されたときに、前記少なくとも2つの放射線源からの放射線の出力を許可することを特徴とする放射線撮影システム。
【請求項16】
放射線源が放射線出力装置に少なくとも2つ収容されている場合に、前記少なくとも2つの放射線源のうち、少なくとも一方の放射線源から被写体に放射線を照射するプレ曝射を行い、
前記被写体を透過した前記放射線を放射線検出装置で検出することにより、前記プレ曝射での放射線画像であるプレ曝射画像を取得し、
前記プレ曝射画像に基づいて前記少なくとも2つの放射線源から出力される各放射線の線量の重み付けを行い、前記重み付けに従って前記少なくとも2つの放射線源から前記被写体に前記各放射線を照射する本曝射を行い、
前記被写体を透過した前記各放射線を前記放射線検出装置で検出することにより、前記本曝射での放射線画像である本曝射画像を取得する
ことを特徴とする放射線撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−66064(P2012−66064A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−179097(P2011−179097)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】