説明

放射線撮影装置

【課題】煩雑な製造工程を必要とする反射層を設けることなく、シンチレータで発生する光の利用効率を高めつつ残像を消去できる放射線撮影装置を提供する。
【解決手段】シンチレータ71と光源95からの光を導光する導光板61との間に、シンチレータ71により変換された光の少なくとも一部を反射し、光源95からの光の少なくとも一部を透過するハーフミラー104を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線撮影装置に係り、特に、放射線源から射出されて被検者を透過した放射線により示される放射線画像の撮影を行う放射線撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin Film Transistor)アクティブマトリクス基板上に放射線感応層を配置し、X線などの放射線を直接デジタルデータに変換できるFPD(Flat Panel Detector)等の放射線検出器が実用化されており、この放射線検出器を用いて、照射された放射線により表わされる放射線画像を撮影する放射線撮影装置が実用化されている。この放射線検出器を用いた放射線撮影装置は、従来のX線フィルムやイメージングプレートを用いた放射線撮影装置に比べて、即時に画像を確認でき、連続的に放射線画像の撮影を行う透視撮影(動画撮影)も行うことができるといったメリットがある。
【0003】
この種の放射線検出器は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、フォトダイオードなどのセンサ部が形成されたTFTアクティブマトリクス基板とCsI:Tl、GOS(GdS:Tb)などのシンチレータとを積層し、放射線をシンチレータで光に変換し、変換した光をTFTアクティブマトリクス基板のセンサ部で電荷に変換して蓄積する間接変換方式等がある。放射線撮影装置では、放射線検出器に蓄積された電荷を電気信号として読み出し、読み出した電気信号をアンプで増幅した後にA/D(アナログ/デジタル)変換部でデジタルデータに変換している。
【0004】
ところで、間接変換方式の放射線検出器は、フォトダイオードなどのセンサ部としてa−Si(アモルファスシリコン)などの半導体が一般的に使われているが、半導体の不純物準位に電荷が一旦トラップされ、トラップされた電荷が放出されることによって残像を生じる場合がある。
【0005】
そこで、特許文献1には、シンチレータのTFTアクティブマトリクス基板とは反対側の面に反射層を設けてシンチレータで発生した光を反射層で反射させると共に、当該反射層に多数のホールを形成し、シンチレータの反射層が設けられた面に対して光を照射することにより、反射層の多数のホール及びシンチレータを介してTFTアクティブマトリクス基板の各センサ部の不純物電位を撮影前に埋める技術が提案されている。これにより、シンチレータで発生する光の利用効率を高めつつ残像を消去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2010−525359号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1の技術では、反射層にホールを形成する処理が必要であり、製造工程が煩雑になる。
【0008】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、反射層にホールを形成するという煩雑な製造工程を行うことなく、シンチレータで発生する光の利用効率を高めつつ残像を消去できる放射線撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の放射線撮影装置は、照射された放射線を光に変換する平板状の変換層と、前記変換層の一方の面側に配置され、当該変換層により変換された光を検出する光検出基板と、前記変換層の他方の面に対して光を照射する照射手段と、前記変換層と前記光照射手段との間の、前記光検出基板により光が検出される検出領域に対応する領域一面に設けられ、前記変換層により変換された光の少なくとも一部を反射し、前記光照射手段により照射された光の少なくとも一部を透過するハーフミラーと、を備えている。
【0010】
請求項1によれば、照射された放射線を光に変換する平板状の変換層の一方の面側に、当該変換層により変換された光を検出する光検出基板が配置されており、変換層の他方の面に対して照射手段により光が照射される。
【0011】
そして、変換層と光照射手段との間の、光検出基板により光が検出される検出領域に対応する領域一面に、変換層により変換された光の少なくとも一部を反射し、光照射手段により照射された光の少なくとも一部を透過するハーフミラーが設けられている。
【0012】
このように、請求項1に記載の発明によれば、変換層と光照射手段との間に、変換層により変換された光の少なくとも一部を反射し、光照射手段により照射された光の少なくとも一部を透過するハーフミラーを設けているので、反射層にホールを形成するという煩雑な製造工程を行うことなく、シンチレータ(変換層)で発生する光の利用効率を高めつつ残像を消去できる。
なお、変換層により変換された光の少なくとも一部を反射するとは、変換層により変換された光のピーク波長における反射率が10%であることを意味し、ここでの反射率の測定方法は入射角0°からの光に対する反射率を指している。また、光照射部により照射された光の少なくとも一部を透過するとは、照射された光のピーク波長における透過率が10%以上であることを意味し、ここでの透過率の測定方法は入射角0°からの光に対する透過率を指している。また、変換層により変換された光の反射率および光照射部により照射された光の透過率は高い方が好ましく。より好ましくは50%以上、更に好ましくは、70%以上である。
【0013】
なお、本発明は、請求項2記載の発明のように、前記変換層が、非柱状結晶領域と前記非柱状結晶領域と連続する柱状結晶領域が積層されて形成され、前記柱状結晶領域側が前記光検出基板と対向するように設けられてもよい。
【0014】
また、本発明は、請求項3記載の発明のように、前記光検出基板が、筐体の撮影対象物を透過した放射線が照射される撮影面が設けられた天板部分の前記放射線が入射する面の反対側の面に取り付けられることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、請求項4記載の発明のように、前記変換層により変換された光と前記光照射手段から照射される光の波長域が異なり、前記ハーフミラーが、前記光照射手段から照射される第1波長域の光の透過率よりも前記変換層により変換された第2波長域の光の反射率が高くなるように膜厚が定められてもよい。
【0016】
また、本発明は、請求項5記載の発明のように、前記変換層と前記照射手段との間に空気層を設けてもよい。
【0017】
また、本発明は、請求項6記載の発明のように、前記照射手段が、光源と、前記変換層の他方の面に対向して配置され、前記光源で発生した光を前記光検出基板へ導光する導光板と、を含んで構成されてもよい。
【0018】
また、請求項6記載の発明は、請求項7記載の発明のように、前記変換層が、光透過性を有する光透過性基板上に形成され、前記変換層側が前記光検出基板と対向するように前記光検出基板に張り合わされ、前記光透過性基板が前記導光板として機能してもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項8記載の発明のように、前記照射手段を、前記変換層の他方の面に対向して配置され、前記変換層に対応して発光部が設けられた発光パネルとしてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、反射層にホールを形成するという煩雑な製造工程を行うことなく、シンチレータで発生する光の利用効率を高めつつ残像を消去できる、という効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る電子カセッテの内部構成を示す透過斜視図である。
【図2】実施の形態に係る放射線検出器及び放射線検出部の構成を模式的に示した断面図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出器の薄膜トランジスタ及びコンデンサの構成を示した断面図である。
【図4】実施の形態に係るTFT基板の構成を示す平面図である。
【図5】第1の実施の形態に係る電子カセッテ内部の構成を模式的に示した側面図である。
【図6】放射線検出器への放射線の表面読取方式と裏面読取方式を説明するための断面側面図である。
【図7】実施の形態に係る電子カセッテの電気系の要部構成を示すブロック図である。
【図8】放射線画像撮影時における電子カセッテの配置を示す概略図である。
【図9】第2の実施の形態に係る電子カセッテ内部の構成を模式的に示した側面図である。
【図10】第3の実施の形態に係る電子カセッテ内部の構成を模式的に示した側面図である。
【図11】他の形態に係る電子カセッテ内部の構成を模式的に示した側面図である。
【図12】他の形態に係る電子カセッテ内部の構成を模式的に示した側面図である。
【図13】CsI(Tl)の発光波長の分布と波長域A、Bの範囲の一例を示すグラフである。
【図14】放射線検出器の柱状結晶及びセンサ部部分を拡大した概略拡大図である。
【図15】緑色光と赤色光が共にハーフミラー層で反射する場合の緑色光と赤色光の透過経路を示した断面図である。
【図16】緑色光がハーフミラー層で反射し、赤色光がハーフミラー層を透過する場合の緑色光と赤色光の透過経路を示した断面図である。
【図17】CsI(Tl)の発光波長の分布と波長域C、D、Eの範囲の一例を示すグラフである。
【図18】コールドミラーによる分光透過率の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、ここでは、本発明を、可搬型の放射線撮影装置(以下「電子カセッテ」ともいう。)に適用した場合の形態例について説明する。
【0023】
[第1の実施の形態]
図1には、本実施の形態に係る電子カセッテ10の構成が示されている。
【0024】
同図に示すように、電子カセッテ10は、放射線Xを透過させる材料からなる筐体54を備えており、防水性、密閉性を有する構造とされている。電子カセッテ10は、手術室等で使用されるとき、血液やその他の雑菌が付着するおそれがある。そこで、電子カセッテ10を防水性、密閉性を有する構造として、必要に応じて殺菌洗浄することにより、1つの電子カセッテ10を繰り返し続けて使用することができる。
【0025】
筐体54の内部には、撮影の際に被検者を透過した放射線Xが照射される筐体54の照射面56側から順に、被検者を透過した放射線Xによる放射線画像を撮影する放射線検出器60、放射線検出器60の残像を消去するための光を放射線検出器60へ導くための導光板61が配設されている。
【0026】
また、筐体54の内部の一端側には、マイクロコンピュータを含む電子回路及び充電可能で、かつ着脱可能なバッテリ96Aを収容するケース31が配置されている。放射線検出器60、及び電子回路は、ケース31に配置されたバッテリ96Aから供給される電力によって作動する。ケース31内部に収容された各種回路が放射線Xの照射に伴って損傷することを回避するため、ケース31の撮影面56側には鉛板等を配設しておくことが望ましい。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ10は、撮影面56の形状が長方形とされた直方体とされており、その長手方向一端部にケース31が配置されている。
【0027】
また、筐体54の外壁の所定位置には、‘レディ状態’,‘データ送信中’といった動作モード、バッテリ96Aの残容量の状態等の電子カセッテ10の動作状態を示す表示を行う表示部56Aが設けられている。なお、本実施の形態に係る電子カセッテ10では、表示部56Aとして、発光ダイオードを適用しているが、これに限らず、発光ダイオード以外の発光素子や、液晶ディスプレイ、有機EL(エレクトロルミネッセンス)ディスプレイ等の他の表示手段としてもよい。
【0028】
図2には、本実施形態に係る放射線検出器60の構成を模式的に示した断面図が示されている。
【0029】
放射線検出器60は、絶縁性基板64に薄膜トランジスタ(TFT:Thin Film Transistor、以下「TFT」という)70、及び蓄積容量68が形成されたTFTアクティブマトリクス基板(以下、「TFT基板」という)66を備えている。
【0030】
このTFT基板66上には、入射される放射線を光に変換するシンチレータ71が配置される。
【0031】
シンチレータ71としては、例えば、CsI:Tl、GOS(GdO2:Tb)を用いることができる。なお、シンチレータ71は、これらの材料に限られるものではない。シンチレータ71が発する光の波長域は、可視光域(波長360nm〜830nm)であることが好ましく、この放射線検出器60によってモノクロ撮像を可能とするためには、緑色の波長域を含んでいることがより好ましい。
なお、本実施の形態で「波長域」とは、ピーク波長強度の半値全幅(FWHM:Full Width at Half Maximum)の波長をいう。光源95から照射される光の波長域(第1波長域)は700nm〜1200nmの光、より好ましくは、900nm〜1000nmの光であることが好ましい。シンチレータ71にGdO2:Tbもしくは、CsI:Tl等を用いる場合、シンチレータ71により変換された光の波長域(第2波長域)は、400nm〜700nmであることが好ましい。
【0032】
ここで、本実施の形態では、シンチレータ71を、例えば、CsI:Tl等の柱状結晶としている。シンチレータ71は、蒸着基板73にCsI:Tl等の材料を蒸着することによって形成されており、蒸着基板73側に非柱状結晶領域71Aが形成され、先端側(TFT基板66側)に柱状結晶から成る柱状結晶領域71Bが形成されている。このシンチレータ71には、非柱状結晶領域71A及び柱状結晶領域71Bを封止する封止部102が形成されている。
【0033】
封止部102は、大気中の水分に対してバリア性を有する材料が用いられ、材料として、熱CVD法、プラズマCVD法等の気相重合で得られる有機膜が用いられる。有機膜としては、ポリパラキシリレン製樹脂の熱CVD法によって形成された気相重合膜、または含フッ素化合物不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜不飽和炭化水素モノマーのプラズマ重合膜が用いられる。また有機膜と無機膜の積層構造を用いることも出来、無機膜の材料としては、例えば、窒化珪素(SiNx)膜、酸化珪素(SiOx)膜、酸窒化珪素(SiOxNy)膜、Al等が好適である。
【0034】
シンチレータ71は、柱状結晶領域71B側がTFT基板66と対向するように配置され、TFT基板66に接着されている。
【0035】
絶縁性基板64としては、放射線の吸収が少ないものであれば何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板、光透過性の樹脂基板を用いることができる。なお、絶縁性基板64は、これらの材料に限られるものではない。
【0036】
TFT基板66には、シンチレータ71によって変換された光が入射されることにより電荷を発生するセンサ部72が形成されている。本実施形態に係るTFT基板66では、TFT70とセンサ部72を別な層で重なるように形成している。これにより、センサ部72でのシンチレータ71からの光の受光面積を大きくすることができる。また、TFT基板66には、TFT基板66上を平坦化するための平坦化層67が形成されている。また、TFT基板66とシンチレータ71との間であって、平坦化層67上には、シンチレータ71をTFT基板66に接着するための接着層69が形成されている。
【0037】
センサ部72は、上部電極72A、下部電極72B、及び該上下の電極間に配置された光電変換膜72Cを有している。
【0038】
上部電極72A、及び下部電極72BはITO(酸化インジウムスズ)やIZO(酸化亜鉛インジウム)などの光透過性の高い材料を用いて形成しており、光透過性を有する。
【0039】
光電変換膜72Cは、シンチレータ71から発せられた光を吸収し、吸収した光に応じた電荷を発生する。光電変換膜72Cは、光が照射されることにより電荷を発生する材料により形成すればよく、例えば、アモルファスシリコンや有機光電変換材料などにより形成することができる。アモルファスシリコンを含む光電変換膜72Cであれば、幅広い吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光を吸収することができる。有機光電変換材料を含む光電変換膜72Cであれば、可視域にシャープな吸収スペクトルを持ち、シンチレータ71による発光以外の電磁波が光電変換膜72Cに吸収されることがほとんどなく、X線等の放射線が光電変換膜72Cで吸収されることによって発生するノイズを効果的に抑制することができる。
【0040】
有機光電変換材料としては、例えば、キナクリドン系有機化合物及びフタロシアニン系有機化合物が挙げられる。例えば、キナクリドンの可視域における吸収ピーク波長は560nmであるため、有機光電変換材料としてキナクリドンを用い、シンチレータ71の材料としてCsI:Tlを用いれば、上記ピーク波長の差を5nm以内にすることが可能となり、光電変換膜72Cで発生する電荷量をほぼ最大にすることができる。この光電変換膜72Cとして適用可能な有機光電変換材料については、特開2009−32854号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。なお、光電変換膜72Cは、さらにフラーレン若しくはカーボンナノチューブを含有させて形成してもよい。
【0041】
図3には、本実施の形態に係るTFT基板66に形成されたTFT70及び蓄積容量68の構成が概略的に示されている。
【0042】
絶縁性基板64上には、下部電極72Bに対応して、下部電極72Bに移動した電荷を蓄積する蓄積容量68と、蓄積容量68に蓄積された電荷を電気信号に変換して出力するTFT70が形成されている。蓄積容量68及びTFT70の形成された領域は、平面視において下部電極72Bと重なる部分を有しており、このような構成とすることで、各画素部における蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72とが厚さ方向で重なりを有することとなり、少なく面積で蓄積容量68及びTFT70とセンサ部72を配置できる。
【0043】
蓄積容量68は、絶縁性基板64と下部電極72Bとの間に設けられた絶縁膜65Aを貫通して形成された導電性材料の配線を介して対応する下部電極72Bと電気的に接続されている。これにより、下部電極72Bで捕集された電荷を蓄積容量68に移動させることができる。
【0044】
TFT70は、ゲート電極70A、ゲート絶縁膜65B、及び活性層(チャネル層)70Bが積層され、さらに、活性層70B上にソース電極70Cとドレイン電極70Dが所定の間隔を開けて形成されている。活性層70Bは、例えば、アモルファスシリコンや非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブなどにより形成することができる。なお、活性層70Bを構成する材料は、これらに限定されるものではない。
【0045】
活性層70Bを構成する非晶質酸化物としては、In、Ga及びZnのうちの少なくとも1つを含む酸化物(例えば、In−O系)が好ましく、In、Ga及びZnのうちの少なくとも2つを含む酸化物(例えば、In−Zn−O系、In−Ga−O系、Ga−Zn−O系)がより好ましく、In、Ga及びZnを含む酸化物が特に好ましい。In−Ga−Zn−O系非晶質酸化物としては、結晶状態における組成がInGaO(ZnO)m(mは6未満の自然数)で表される非晶質酸化物が好ましく、特に、InGaZnOがより好ましい。なお、活性層70Bを構成可能な非晶質酸化物は、これらに限定されるものではない。
【0046】
活性層70Bを構成可能な有機半導体材料としては、フタロシアニン化合物や、ペンタセン、バナジルフタロシアニン等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。なお、フタロシアニン化合物の構成については、特開2009−212389号公報において詳細に説明されているため説明を省略する。
【0047】
TFT70の活性層70Bを非晶質酸化物や有機半導体材料、カーボンナノチューブで形成したものとすれば、X線等の放射線を吸収せず、あるいは吸収したとしても極めて微量に留まるため、ノイズの発生を効果的に抑制することができる。
【0048】
また、活性層70Bをカーボンナノチューブで形成した場合、TFT70のスイッチング速度を高速化することができ、また、可視光域での光の吸収度合の低いTFT70を形成できる。なお、カーボンナノチューブで活性層70Bを形成する場合、活性層70Bに極微量の金属性不純物が混入するだけで、TFT70の性能は著しく低下するため、遠心分離などにより極めて高純度のカーボンナノチューブを分離・抽出して形成する必要がある。
【0049】
ここで、TFT70の活性層70Bを構成する非晶質酸化物、有機半導体材料、カーボンナノチューブや、光電変換膜72Cを構成する有機光電変換材料は、いずれも低温での成膜が可能である。従って、絶縁性基板64としては、石英基板、及びガラス基板等の耐熱性の高い基板に限定されず、プラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。具体的には、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリアリレート、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の可撓性基板を用いることができる。このようなプラスチック製の可撓性基板を用いれば、軽量化を図ることもでき、例えば、持ち運び等に有利となる。なお、絶縁性基板64には、絶縁性を確保するための絶縁層、水分や酸素の透過を防止するためのガスバリア層、平坦性あるいは電極等との密着性を向上するためのアンダーコート層等を設けてもよい。
【0050】
アラミドは、200度以上の高温プロセスを適用できるために、透明電極材料を高温硬化させて低抵抗化でき、また、ハンダのリフロー工程を含むドライバICの自動実装にも対応できる。また、アラミドは、ITO(indium tin oxide)やガラス基板と熱膨張係数が近いため、製造後の反りが少なく、割れにくい。また、アラミドは、ガラス基板等と比べて薄く基板を形成できる。なお、超薄型ガラス基板とアラミドを積層して絶縁性基板64を形成してもよい。
【0051】
バイオナノファイバは、バクテリア(酢酸菌、Acetobacter Xylinum)が産出するセルロースミクロフィブリル束(バクテリアセルロース)と透明樹脂との複合したものである。セルロースミクロフィブリル束は、幅50nmと可視光波長に対して1/10のサイズで、かつ、高強度、高弾性、低熱膨である。バクテリアセルロースにアクリル樹脂、エポキシ樹脂等の透明樹脂を含浸・硬化させることで、繊維を60−70%も含有しながら、波長500nmで約90%の光透過率を示すバイオナノファイバが得られる。バイオナノファイバは、シリコン結晶に匹敵する低い熱膨張係数(3−7ppm)を有し、鋼鉄並の強度(460MPa)、高弾性(30GPa)で、かつフレキシブルであることから、ガラス基板等と比べて薄く絶縁性基板64を形成できる。
【0052】
図4には、本実施の形態に係るTFT基板66の構成を示す平面図が示されている。
【0053】
TFT基板66には、上述のセンサ部72、蓄積容量68、TFT70と、を含んで構成される画素74が一定方向(図4の行方向)及び一定方向に対する交差方向(図4の列方向)に2次元状に複数設けられている。
【0054】
また、TFT基板66には、一定方向(行方向)に延設され各TFT70をオン・オフさせるための複数本のゲート配線76と、交差方向(列方向)に延設されオン状態のTFT70を介して電荷を読み出すための複数本のデータ配線78が設けられている。
【0055】
放射線検出器60は、平板状で平面視において外縁に4辺を有する四辺形状をしている。具体的には矩形状に形成されている。
【0056】
本実施形態に係る放射線検出器60は、図2に示すように、このようなTFT基板66の表面にシンチレータ71が貼り付けられて形成される。
【0057】
図5には、第1の実施形態に係る電子カセッテ10内部の構成を模式的に示す側面図が示されている。なお、図5では、TFT基板66の画素74が2次元状に複数設けられた撮影領域66Aを識別しやすくするため、撮影領域66Aを層として示している。
【0058】
電子カセッテ10内部には、筐体54の撮影対象物を透過した放射線が照射される撮影面56が設けられた天板部分の放射線Xが入射する面の反対側の面にTFT基板66側が対向するように放射線検出器60が配置されている。
【0059】
ここで、放射線検出器60は、図6に示すように、シンチレータ71が形成された側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の裏面側に設けられたTFT基板66により放射線画像を読み取る、いわゆる裏面読取方式(所謂PSS(Penetration Side Sampling)方式)とされた場合、シンチレータ71の同図上面側(TFT基板66の反対側)でより強く発光し、TFT基板66側から放射線が照射されて、当該放射線の入射面の表面側に設けられたTFT基板66により放射線画像を読み取る、いわゆる表面読取方式(所謂ISS(Irradiation Side Sampling)方式)とされた場合、TFT基板66を透過した放射線がシンチレータ71に入射してシンチレータ71のTFT基板66側がより強く発光する。TFT基板66に設けられた各センサ部72には、シンチレータ71で発生した光により電荷が発生する。このため、放射線検出器60は、表面読取方式とされた場合の方が裏面読取方式とされた場合よりもTFT基板66に対するシンチレータ71の発光位置が近いため、撮影によって得られる放射線画像の分解能が高い。
【0060】
本実施の形態では、電子カセッテ10内部に、撮影面56から入射する放射線Xに対して表面読取方式となるように放射線検出器60が配置されている。
【0061】
ところで、このような間接変換方式の放射線検出器60では、TFT基板66の各センサ部72の光電変換膜72Cにおいて、不純物準位に電荷が一旦トラップされ、トラップされた電荷が放出されることによって残像を生じる場合がある。
【0062】
そこで、放射線検出器60に残像を消去する光を照射するため、本実施の形態では、シンチレータ71の蒸着基板73を光透過性を有する光透過性基板としている。この蒸着基板73としては、光透過性を有し且つ蒸着時の熱に対する耐熱性があれば何れでもよく、例えば、ガラス基板、透明セラミック基板等を用いることができる。なお、蒸着基板73は、これらの材料に限られるものではない。
【0063】
この蒸着基板73の1つの側面には、光源95が配置されており、蒸着基板73には、光源95からの光が入射する。本実施の形態では、蒸着基板73を光透過性基板として導光板61として機能させており、蒸着基板73により光源95からの光をTFT基板66の撮影領域66Aの各画素74に導光する。
【0064】
ところで、蒸着基板73を透明基板とした場合、シンチレータ71で発生した光が蒸着基板73を透過してしまい、光の利用効率が低下する。
【0065】
そこで、本実施の形態では、蒸着基板73上に、シンチレータ71で発生した波長帯域の光を主に反射し、光源95で発生し、蒸着基板73により導光される波長帯域の光を主に透過するハーフミラー層104を撮影領域66Aよりも大きいサイズで形成し、そのハーフミラー層104を保護するために光透過性を有する保護層106を形成した上にシンチレータ71を形成している。このハーフミラー層104としては、例えば、Ag、Al、NiAl等の金属を使用することができる。また、膜厚としては、2nm以上、100nm以下の金属層を使用することができる。なお、光源95から照射される波長域の光の透過率よりもシンチレータ71により変換された波長域の光の反射率が高くなるように材料及び膜厚を適宜選択している。例えば、シンチレータ71としては、ピーク発光波長が565nmのCsI:Tlを使用し、光源95としては、ピーク発光波長が950nmの赤外発光LEDを用い、ハーフミラー層104をAlを用いて、膜厚10nmとすることでシンチレータ71により変換された波長域の光の反射率50%、光源95から照射される波長域の光の透過率50%を実現できる。また、膜厚5nmで、シンチレータ71により変換された波長域の光の反射率70%、光源95から照射される波長域の光の透過率30%を実現できる。
また、シンチレータ71により変換された光の反射率および光源95により照射された光の透過率は高い方が好ましく。より好ましくは50%以上、更に好ましくは、70%以上である。
なお、本実施の形態における反射率及び透過率は、汎用の分光光度計を用いて測定することができ、例えば、日立分光光度U-4100を使用して測定することができる。
また、保護層106としては、例えば、封止部102と同様に熱CVD法、プラズマCVD法等の気相重合で得られる有機膜が用いられる。
【0066】
図7には、第1の実施の形態に係る電子カセッテ10の電気系の要部構成を示すブロック図が示されている。
【0067】
放射線検出器60は、上述したように、センサ部72、蓄積容量68、TFT70を備えた画素74がマトリクス状に多数個配置されており、電子カセッテ10への放射線Xの照射に伴ってセンサ部72で発生した電荷は、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積される。これにより、電子カセッテ10に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器60に保持される。
【0068】
また、放射線検出器60の個々のゲート配線76はゲート線ドライバ80に接続されており、個々のデータ配線78は信号処理部82に接続されている。個々の画素74の蓄積容量68に電荷が蓄積されると、個々の画素74のTFT70は、ゲート線ドライバ80からゲート配線76を介して供給される信号により行単位で順にオンされ、TFT70がオンされた画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は、アナログの電気信号としてデータ配線78を伝送されて信号処理部82に入力される。従って、個々の画素74の蓄積容量68に蓄積されている電荷は行単位で順に読み出される。
【0069】
信号処理部82は、個々のデータ配線78毎に設けられた増幅器及びサンプルホールド回路を備えており、個々のデータ配線78を伝送された電気信号は増幅器で増幅された後にサンプルホールド回路に保持される。また、サンプルホールド回路の出力側にはマルチプレクサ、A/D(アナログ/デジタル)変換器が順に接続されており、個々のサンプルホールド回路に保持された電気信号はマルチプレクサに順に(シリアルに)入力され、A/D変換器によってデジタルデータへ変換される。
【0070】
信号処理部82には画像メモリ90が接続されており、信号処理部82のA/D変換器から出力されたデジタルデータは画像メモリ90に順に記憶される。画像メモリ90は複数フレーム分の画像データを記憶可能な記憶容量を有しており、放射線画像の撮影が行われる毎に、放射線検出器60の各画素74のデジタルデータが画像データとして画像メモリ90に順次記憶される。
【0071】
画像メモリ90は電子カセッテ10全体の動作を制御するカセッテ制御部92と接続されている。カセッテ制御部92はマイクロコンピュータを含んで構成されており、CPU(中央処理装置)92A、ROM(Read Only Memory)及びRAM(Random Access Memory)を含むメモリ92B、HDD(ハードディスク・ドライブ)やフラッシュメモリ等からなる不揮発性の記憶部92Cを備えている。
【0072】
カセッテ制御部92には、光源95が接続されている。カセッテ制御部92は光源95の発光を制御することができる。
【0073】
また、カセッテ制御部92には無線通信部94が接続されている。本実施の形態に係る無線通信部94は、IEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11a/b/g/n等に代表される無線LAN(Local Area Network)規格に対応しており、無線通信による外部機器との間での各種情報の伝送を制御する。カセッテ制御部92は、無線通信部94を介して外部装置と無線通信が可能とされており、コンソールなどの制御装置との間で各種情報の送受信が可能とされている。
【0074】
また、電子カセッテ10には電源部96が設けられており、上述した各種回路や各素子(ゲート線ドライバ80、信号処理部82、画像メモリ90、無線通信部94、カセッテ制御部92、光源95等)は、電源部96から供給された電力によって作動する。電源部96は、電子カセッテ10の可搬性を損なわないように、前述したバッテリ(二次電池)96Aを内蔵しており、充電されたバッテリ96Aから各種回路や各素子へ電力を供給する。なお、図7では、電源部96と各種回路や各素子を接続する配線の図示を省略している。
【0075】
次に、本実施の形態に係る電子カセッテ10の作用を説明する。
【0076】
放射線画像を撮影する際、電子カセッテ10は、図8に示すように、放射線Xを発生させる放射線源としての放射線発生部12と間隔を空けて配置される。このときの放射線発生部12と電子カセッテ10との間は、被検者としての患者14が位置するための撮影位置とされており、放射線画像の撮影が指示されると、放射線発生部12は予め与えられた撮影条件等に応じた放射線量の放射線Xを射出する。放射線発生部12から射出された放射線Xは、撮影位置に位置している患者14を透過することで画像情報を担持した後に電子カセッテ10に照射される。
【0077】
放射線検出器60では、放射線Xの照射に伴ってシンチレータ71が発光する。
【0078】
ここで、本実施の形態では、シンチレータ71を柱状結晶により形成している。シンチレータ71で発生した光は、柱状結晶領域71Bの柱状結晶の間隙に案内されてTFT基板66側へ射出される。このように、柱状結晶の間隙でシンチレータ71で光を案内してTFT基板66側へ導くことにより、光の拡散を抑制されるため、放射線検出器60によって検出される放射線画像のボケを抑制できる。また、シンチレータ71の深部(非柱状結晶領域71A)に到達した光も、非柱状結晶領域71AでTFT基板66側へ一部反射されるため、TFT基板66に入射される光の光量が向上する。さらに、非柱状結晶領域71Aを透過した光も蒸着基板73と蒸着基板73の間に設けられたハーフミラー層104によりTFT基板66側へ反射されるため、TFT基板66に入射される光の光量が向上する。
【0079】
放射線検出器60では、シンチレータ71で発生した光により各画素74のセンサ部72に電荷が発生し、発生した電荷が蓄積容量68に蓄積される。これにより、電子カセッテ10に照射された放射線Xに担持されていた画像情報は電荷情報へ変換されて放射線検出器60に保持される。
【0080】
放射線Xが照射されると、電子カセッテ10のカセッテ制御部92は、ゲート線ドライバ80を制御してゲート線ドライバ80から1ラインずつ順に各ゲート配線76にオン信号を出力させ、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンさせる。
【0081】
放射線検出器60は、各ゲート配線76に接続された各TFT70を1ラインずつ順にオンされると、1ラインずつ順に各蓄積容量68に蓄積された電荷が電気信号として各データ配線78に流れ出す。各データ配線78に流れ出した電気信号は信号処理部82でデジタルの画像データに変換されて、画像メモリ90に記憶される。
【0082】
カセッテ制御部92は、撮影終了後、画像メモリ90に記憶された画像情報を無線通信によりコンソールへ送信する。
【0083】
ところで、放射線検出器60は、各センサ部72の光電変換膜72Cにおいて、不純物準位に電荷が一旦トラップされ、トラップされた電荷が放出されることによって残像を生じる場合がある。そこで、カセッテ制御部92は、撮影を行う際に、光源95を発光させて蒸着基板73を介してTFT基板66に光を照射して放射線検出器60の各画素74のセンサ部72の不純物電位を撮影前に埋めておく光キャリブレーションを行う。この光源95で発生した光は、蒸着基板73を介して放射線検出器60に導光され、ハーフミラー層104を透過してシンチレータ71へ入射し、シンチレータ71を介してTFT基板66に照射される。
【0084】
このように、本実施の形態では、蒸着基板73と導光板61として機能する蒸着基板73の間にハーフミラー層104を設けたことにより、シンチレータ71で発生した光をハーフミラー層104でTFT基板66側へ反射させることができるため、TFT基板66に入射される光の光量が向上する。また、本実施の形態では、蒸着基板73と蒸着基板73の間にハーフミラー層104を設けたことにより、シンチレータ71側から照射された光キャリブレーションの光をハーフミラー層104で透過させてTFT基板66に照射させることができるため、残像を消去できる。
【0085】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態について説明する。
【0086】
第2の実施の形態に係る電子カセッテ10の構成、TFT基板66の構成は、上記第1の実施の形態(図1〜図4、図7参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0087】
図9には、第2の実施形態に係る電子カセッテ10内部の構成を模式的に示す側面図が示されている。なお、第1の実施の形態(図5)と同一部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0088】
本実施の形態では、保護層106を形成した蒸着基板73にシンチレータ71及び封止部102を形成し、保護層106で蒸着基板73からシンチレータ71を剥離することにより、蒸着基板73を設けずにシンチレータ71のみをTFT基板66に貼付けている。なお、蒸着基板73からの保護層106での剥離は、TFT基板66に貼付ける前でもよく、TFT基板66に貼付けた後でもよい。
【0089】
この放射線検出器60のシンチレータ71側には平板状の導光板61が配置されている。なお、本実施の形態では、シンチレータ71と導光板61との間に間隔が空くように導光板61を配置しており、シンチレータ71と導光板61との間に空気層が設けられるようにしているが、空気層を設けずにシンチレータ71と導光板61を接触配置するようにしてもよい。このようにシンチレータ71と導光板61との間に空気層を設けることにより反射率が向上する。
導光板61の放射線検出器60側の面には、撮影領域66Aよりも大きいサイズでハーフミラー層104が形成されている。
【0090】
本実施の形態に係る放射線検出器60も、放射線Xの照射に伴ってシンチレータ71が発光する。シンチレータ71で発生した光は、一部、非柱状結晶領域71Aを透過するが蒸着基板73と導光板61の間に設けられたハーフミラー層104によりTFT基板66側へ反射されるため、TFT基板66に入射される光の光量が向上する。
【0091】
また、本実施の形態では、光源95を発光させて光キャリブレーションを行う場合でも、シンチレータ71側から照射された光キャリブレーションの光をハーフミラー層104で透過させてTFT基板66に照射させることができるため、残像を消去できる。
【0092】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態について説明する。
【0093】
第3の実施の形態に係る電子カセッテ10は、放射線検出器60と導光板61の位置が逆転している以外、上記第1の実施の形態(図1参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。また、TFT基板66の構成は、上記第1の実施の形態(図2〜図4、図7参照)と同一であるので、ここでの説明は省略する。
【0094】
図10には、第3の実施形態に係る電子カセッテ10内部の構成を模式的に示す側面図が示されている。なお、第1の実施の形態(図5)と同一部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0095】
本実施の形態に係る放射線検出器60は、光透過性を有する下地層108を形成したTFT基板66にCsI:Tl等の材料を蒸着することによってTFT基板66上にシンチレータ71が形成されている。TFT基板66上のシンチレータ71はTFT基板66側に非柱状結晶領域71Aが形成され、先端側に柱状結晶から成る柱状結晶領域71Bが形成されている。
【0096】
放射線検出器60は、このシンチレータ71上にハーフミラー層104が形成されており、ハーフミラー層104を覆うように表面一面を光透過性を有する保護層106が形成されている。
【0097】
電子カセッテ10内部には、シンチレータ71側が筐体54の撮影面56側と対向するように放射線検出器60が配置されている。すなわち、本実施の形態では、電子カセッテ10内部に、撮影面56から入射する放射線Xに対して裏面読取方式となるように放射線検出器60が配置されている。
【0098】
筐体54の撮影面56と放射線検出器60の間には平板状の導光板61が配置されている。
【0099】
本実施の形態に係る放射線検出器60も、放射線Xの照射に伴ってシンチレータ71が発光する。シンチレータ71で発生した光は、柱状結晶領域71Bの柱状結晶の間隙に案内されて導光板61側へ導かれるがシンチレータ71上に形成されたハーフミラー層104によりTFT基板66側へ反射されるため、TFT基板66に入射される光の光量が向上する。
【0100】
また、本実施の形態では、光源95を発光させて光キャリブレーションを行う場合でも、シンチレータ71側から照射された光キャリブレーションの光をハーフミラー層104で透過させてTFT基板66に照射させることができるため、残像を消去できる。
【0101】
以上、本発明を第1〜第3の実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記各実施の形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記各実施の形態に多様な変更または改良を加えることができ、当該変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0102】
また、上記の実施の形態は、クレーム(請求項)にかかる発明を限定するものではなく、また実施の形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。前述した実施の形態には種々の段階の発明が含まれており、開示される複数の構成要件における適宜の組み合わせにより種々の発明を抽出できる。実施の形態に示される全構成要件から幾つかの構成要件が削除されても、効果が得られる限りにおいて、この幾つかの構成要件が削除された構成が発明として抽出され得る。
【0103】
例えば、上記各実施の形態では、可搬型の放射線撮影装置である電子カセッテ10に本発明を適応した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、据置型の放射線撮影装置に適用してもよい。
【0104】
また、上記各実施の形態では、撮影を行う際に、光源95を発光させて導光板61を介してTFT基板66の各画素74に照射する場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、発光ダイオードや有機EL素子などの発光素子を放射線検出器60のシンチレータ71側に対向して配置し、発光素子からセンサ部72が感度を有する波長域の光を直接照射するようにしてもよい。
【0105】
図11及び図12には、導光板61及び光源95の代わりに、放射線検出器60のシンチレータ71側に、発光部122が設けられた発光パネル120を配置し、発光部122から光を直接照射するようにした場合が示されている。
【0106】
ところで、有機EL素子は放射線をほとんど吸収しない。このため、この光キャリブレーションのために光を照射する発光部122を、例えば、有機EL素子により構成した場合、図12に示すように、発光パネル120を放射線検出器60の放射線の入射側に配置し、発光パネル120を透過した放射線が放射線検出器60に入射する場合でも有機EL素子による放射線の吸収量が少ないため、放射線に対する感度の低下を抑えることができる。
【0107】
また、表面読取方式では、放射線がTFT基板66を透過してシンチレータ71に到達するが、TFT基板66の光電変換膜72Cを有機光電変換材料により構成した場合、光電変換膜72Cでの放射線の吸収が殆どなく放射線の減衰を少なく抑えることができる。
【0108】
放射線検出器60は、光電変換膜72Cを有機光電変換材料により形成する場合、低温で光電変換膜72Cの成膜が可能であるため、絶縁性基板64としてプラスチック等の可撓性基板、アラミド、バイオナノファイバを用いることもできる。これにより、放射線検出器60を、耐荷重性を有しつつ薄く形成できる。これにより、図5に示すように、筐体54の撮影対象物を透過した放射線が照射される撮影面56が設けられた天板部分の放射線が入射する面の反対側の面に放射線検出器60が取り付けられた場合、筐体54の撮影面56が設けられた天板部分と放射線検出器60との距離を小さく抑えることができる。また、放射線検出器60に耐荷重性を持たせることができるため、放射線検出器60が天板部分からの荷重に耐えられる。
【0109】
また、ハーフミラー層104は、特定の波長域の光を主に反射し、特定の波長域以外の光を主に透過するように形成してもよい。
【0110】
図13には、CsI(Tl)の発光波長の分布を示すグラフが示されている。
【0111】
CsI(Tl)の発光波長のピークは、565nmであるが青色領域から赤外光領域まで様々な波長の光が発生する。
【0112】
また、シンチレータ71は、CsI(Tl)の柱状結晶とした場合、放射線が照射されることにより各柱状結晶内で光が発生する。図14に示すように、柱状結晶252内で発生した光は、柱状結晶252の外部との界面254に入射する入射角度θが、全反射される臨界角(例えば、34°)を超えた場合、柱状結晶252内に全反射し、臨界角以内の場合、一部が外部へ透過する。このため、図14に示すように、柱状結晶252Aを透過した光が隣接する柱状結晶252Bに入射する場合がある。この透過する光は、界面254で屈折が発生して進行方向が変化する。柱状結晶252Aで発生し、外部へ透過する光の界面254へ入射する角度1と界面254から出射する角度2、透過した光が隣接する柱状結晶252Bの界面254から出射する角度3には、角度1>角度2<角度3の関係がある。また、屈折による進行方向の角度1に対する角度3の角度の変化は、波長の短い光ほど大きく、波長の長い光ほど小さい。柱状結晶252Bへ透過した光は、波長が長いものほど屈折による角度変化が小さいため、柱状結晶254Bの界面254で全反射せずに再度透過してしまう確率が高い。なお、図14では、柱状結晶252の充填率を高く(例えば、80%)した場合を示しており、柱状結晶252間の間隔Tを短いため、柱状結晶252間の光の経路を波長に関わらず同一と見なしている。
【0113】
このため、図15に示すように、柱状結晶252内で発生した緑色光と赤色光が共にハーフミラー層104で反射した場合、緑色光と赤色光は、それぞれ界面254へ入射する角度が臨界角以下となるまで柱状結晶252を透過し、界面254へ入射する角度が臨界角以下となると柱状結晶252内で全反射されるが、赤色光の方が緑色光よりも、屈折による進行方向の角度の変化が小さいため、離れた位置まで到達する。このため、赤色光の方が緑色光よりも、他の画素74のセンサ部72に光が入射する現象が発生しやすい。
【0114】
そこで、例えば、図13に示すように、ハーフミラー層104が、赤色光や赤外光などの離れた置まで到達しやすい長い波長域Aの光(例えば、620nm以上の光)を主に透過し、ピーク波長を含み、波長域Aよりも短い波長域Bの光を主に反射するものとした場合、図16に示すように、シンチレータ71で発生した光のうち、赤色光や赤外光などの長い波長域Aの光がハーフミラー層104を透過してしまうため、MTF特性を向上させることができる。また、導光板61及び光源95、又は発光部122から、光キャリブレーションのための光として、赤色光などハーフミラー層104が透過する光を照射させることにより、放射線検出器60の各画素74のセンサ部72の光キャリブレーションを行うこともできる。
【0115】
また、ハーフミラー層104は、図17に示すように、ピーク波長を含み、紫外光以下及び赤色光以上の波長域を除いた所定範囲(例えば、450nm〜620nm)の波長域Cの光を主に反射し、波長域Cよりも波長が大きい赤色光以上の波長域Dの光、及び波長域Cよりも波長が小さい紫外光以下の波長域Eの光を主に透過するように形成してもよい。これにより、赤色光や赤外光などの長い波長域Dの光がハーフミラー層104を透過してしまうため、MTF特性を向上させることができる。また、CsI(Tl)は青色よりも短い波長域の光が照射されることにより発光する。このため、シンチレータ71をCsI(Tl)の柱状結晶とし、導光板61及び光源95、又は発光部122から、光キャリブレーションのための光として、青色よりも短い波長域の光(例えば、紫外線)を照射するものとした場合、ハーフミラー層104を青色よりも短い波長域の光が透過するため、シンチレータ71を発光させることができる。
また、ハーフミラー層104を金属やプラスチックの誘電多層膜として構成することにより、コールドミラーとして構成することで、ハーフミラー層104のシンチレータ71からの発光に対する反射率を大きくし、光キャリブレーションのための光の透過率を高める構成をとることもできる。コールドミラーは、図18に示すように、可視光の波長域の光を反射し、赤外光の波長域の光を透過する機能を有している。図18のグラフは、透過率を示しているが、反射率は、反射率=100%−透過率である。なお、コールドミラーとして、ガラス上にゲルマニウム(Ge)層、フッ化マグネシウム(MGF)層、硫化亜鉛(ZnS)層、フッ化マグネシウム(MGF)層、硫化亜鉛(ZnS)層の多層反射膜とした場合、例えば、特開平8−292320号公報の図8に示されているように、波長がほぼ750nm以上の赤外線をコールドミラーを透過させ、それ以下の波長域の光をコールドミラーで反射することができる。
【0116】
ここで、図5に示すように、電子カセッテ10内に放射線検出器60を表面読取方式で配置した場合、放射線検出器60ではTFT基板66を透過した放射線がシンチレータ71に入射する。TFT基板66を構成する絶縁性基板64として光透過性を有する基板を用い、TFT基板66側の面に光キャリブレーションのための発光部122を配置するものとした場合、放射線により発光部122が劣化する。また、発光部122を有機EL素子とした場合、放射線により発光部122で意図しない発光が発生し、好ましくない。このため、放射線検出器60を表面読取方式で配置した場合、シンチレータ71側の面に光キャリブレーションのための発光部122を配置し、発光部122からの光をシンチレータ71を透過させて各画素74のセンサ部72に照射する。
【0117】
ところで、CsIの柱状結晶は、光を透過するが、柱状結晶領域で徐々に減衰する。このため、柱状結晶領域を透過させて各画素74のセンサ部72に光キャリブレーションのための光を照射するには、光量を多くする必要がある。そこで、導光板61及び光源95、又は発光部122から、光キャリブレーションのための光として、例えば、紫外線を照射してシンチレータ71を発光させることにより、シンチレータ71で発生した光で各画素74のセンサ部72の光キャリブレーションを行わせることもできる。
【0118】
ところで、CsIは、温度変化により感度が変化し、例えば、1度温度の上昇により約0.3%感度が低下する。また、CsIは、連続して撮影が行われて累積被曝量の増加と共に感度が低下し、放射線が照射されない状態で維持されると低下した感度が回復する。このため、CsIの感度を正確に予測することが難しい。そこで、CsIの変動が大きいと予測される場合(例えば、静止画撮影から動画撮影に切り替える場合、累積照射量が日によって異なる場合、数日使用していない電子カセッテ10を使用する場合など)や、CsIの感度を正確に把握する必要がある場合(例えば、エネルギーサブトラクション処理を行うために低線量で低コントラスト画像の撮影を行う場合、過去画像との正確に比較するために感度の変化を把握する必要がある場合など)、導光板61及び光源95、又は発光部122から、一定量の紫外光を照射してシンチレータ71を発光させ、放射線検出器60の各画素74に蓄積された電荷を読み出すことにより、蓄積された電荷量からCsIの感度を把握することができる。
【0119】
また、上記各実施の形態では、放射線としてX線を検出することにより放射線画像を撮影する放射線撮影装置に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、検出対象とする放射線は、X線の他、ガンマ線、粒子線等いずれであってもよい。
【0120】
その他、上記各実施の形態で説明した構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において、不要な部分を削除したり、新たな部分を追加したり、接続状態等を変更したりすることができることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0121】
10 電子カセッテ(放射線撮影装置)
60 放射線検出器
61 導光板(照射手段)
66 TFT基板(光検出基板)
71 シンチレータ(変換層)
71B 柱状結晶領域
71A 非柱状結晶領域
72 センサ部
73 蒸着基板
95 光源(照射手段)
104 ハーフミラー層
120 発光パネル(照射手段)
122 発光部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照射された放射線を光に変換する平板状の変換層と、
前記変換層の一方の面側に配置され、当該変換層により変換された光を検出する光検出基板と、
前記変換層の他方の面に対して光を照射する照射手段と、
前記変換層と前記光照射手段との間の、前記光検出基板により光が検出される検出領域に対応する領域一面に設けられ、前記変換層により変換された光の少なくとも一部を反射し、前記光照射手段により照射された光の少なくとも一部を透過するハーフミラーと、
を備えた放射線撮影装置。
【請求項2】
前記変換層は、非柱状結晶領域と前記非柱状結晶領域と連続する柱状結晶領域が積層されて形成され、前記柱状結晶領域側が前記光検出基板と対向するように設けられた
請求項1記載の放射線撮影装置。
【請求項3】
前記光検出基板は、筐体の撮影対象物を透過した放射線が照射される撮影面が設けられた天板部分の前記放射線が入射する面の反対側の面に取り付けられた
請求項1又は請求項2記載の放射線撮影装置。
【請求項4】
前記変換層により変換された光と前記光照射手段から照射される光は、波長域が異なり、
前記ハーフミラーは、前記光照射手段から照射される第1波長域の光の透過率よりも前記変換層により変換された第2波長域の光の反射率が高くなるように膜厚が定められた
請求項1〜請求項3の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項5】
前記変換層と前記照射手段との間に空気層が設けられた
請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項6】
前記照射手段は、
光源と、
前記変換層の他方の面に対向して配置され、前記光源で発生した光を前記光検出基板へ導光する導光板と、
を含んで構成された請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線撮影装置。
【請求項7】
前記変換層は、光透過性を有する光透過性基板上に形成され、前記変換層側が前記光検出基板と対向するように前記光検出基板に張り合わされ、
前記光透過性基板が前記導光板として機能する
請求項6記載の放射線撮影装置。
【請求項8】
前記照射手段は、前記変換層の他方の面に対向して配置され、前記変換層に対応して発光部が設けられた発光パネルとした
請求項1〜請求項5の何れか1項記載の放射線撮影装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2012−141291(P2012−141291A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−264053(P2011−264053)
【出願日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】