説明

放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法と放射線撮像装置

【課題】放射線検出器でのライン状異常画像素子を正確に検出する方法を提供する。
【解決手段】放射線検出器の初期画像データに、ライン状異常画像素子のライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行い(ステップS3,S11)、初期画像データと平滑化フィルター処理後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成し(ステップS4,S12)、差分画像データに対してエッジ強調処理を施し(ステップS5,S13)、エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定して、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定する(ステップS6,S14)ので、ライン状異常画像素子をさらに強調して浮かび上がらせたエッジ強調処理後の差分画像データを生成でき、微小な変化しか持たないようなライン状異常画像素子をより精密に検出することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、医療分野や、非破壊検査、RI(Radio Isotope)検査および光学検査などの工業分野や、原子力分野などに用いられる放射線撮像装置の放射線検出器に係り、特に、放射線検出器の二次元配列された画像素子(検出素子)のうちでライン状異常画像素子の検出などを行う技術に関する。
【背景技術】
【0002】
放射線撮像装置の代表的な装置の一つである医用X線透視撮影装置において、近年、放射線検出器として、フラットパネル型X線検出器(または、「二次元X線センサ」ともいい、以下では適宜「FPD」と記載する)を搭載しているものが多い。
【0003】
被検体を透過したX線像が投影されるFPDの検出面には、X線感応型の半導体膜と、二次元マトリクス状に配列される複数個(たとえば、縦1536個×横1536個)の検出素子(画像素子)とを有する。具体的には、検出素子を構成する薄膜トランジスタ(TFT)やキャリア収集電極等がガラス基板上に分離配置され、その上に半導体膜としてのアモルファス・セレン(a-Se)膜を蒸着することで構成される。
【0004】
FPDにX線像が投影されると、像の濃淡に比例した電荷が半導体膜内に発生する。この電荷をキャリア収集電極から電荷情報として所定時間収集して蓄積する。その後、薄膜トランジスタをオン状態に移行させ、蓄積した電荷情報を読み出す。
【0005】
このように検出素子から得られた電荷情報は、検出素子の各列ごとに個別に設けられた増幅器で増幅される。そして、A/D変換器によってデジタル化される。本明細書では、デジタル化された電荷情報を、「X線検出信号」と区別して呼ぶ。これら複数個のX線検出信号をデジタル画像処理することによりX線画像1枚分が生成される。なお、このX線画像を構成する画素は、検出素子と対応関係にある。
【0006】
上述するFPDでの複数個の検出素子の中には、照射されたX線像に応じたX線検出信号を出力することに異常のある検出素子がライン状(縦方向または横方向)に連続して複数個(例えば720個)並ぶライン状異常検出素子(あるいは、ライン状異常画素素子と呼ぶ)が生じることがある。このライン状異常検出素子(ライン状に連続する複数個の検出素子)は、完全に壊れている訳ではないが通常機能を発揮しておらず欠陥素子(欠損素子)であると言える。このライン状異常検出素子は、個々の検出素子の薄膜トランジスタの読み出しに起因するノイズ等の影響により生じていると考えられる。このライン状異常検出素子から得られるX線検出信号に基づいてそのままX線画像を取得すると、ライン状異常検出素子に対応する画素はX線像を正しく表示することができないばかりか、白く浮き出たり、黒くなってしまい、不都合が生じる。
【0007】
このため、デジタル画像処理において、まずライン状異常検出素子を検出し、その検出したライン状異常検出素子から得られるX線検出信号を補正している。具体的には、得られたX線検出信号が正常な範囲内にあるか否かを閾値等を用いて、ライン状異常検出素子を判断する。正常でないと判断したときは、それを出力した検出素子を欠陥素子とみなす。そして、この欠陥素子に隣接する検出素子から得られるX線検出信号を用いて置換処理や、補間処理等の補正を行って復元する。また、欠陥素子とみなした検出素子を記憶しておき、以降のデジタル画像処理においては、記憶された情報を参照しつつX線検出信号の補正を行うようにしている。これにより、X線画像の画質の低下を回避している(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特表2002−538639号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このような構成を有する従来例の場合には、次のような問題がある。
すなわち、従来の手法によれば、欠陥素子から得られるX線検出信号の値(画素値)が、それ以外のいずれの正常な検出素子のX線検出信号の値(画素値)に比して突出した値をとる場合は、欠陥素子のみを抽出し正常な検出素子を抽出しないとする閾値を設定できることから、容易に欠陥素子とみなすことができる。しかし、欠陥素子から得られるX線検出信号が必ずしも突出した値をとるとは限らない。
【0009】
すなわち、欠陥素子のX線検出信号の値(画素値)が、他の正常な検出素子でのX線検出信号の値(画素値)と比較して、微小な変化しか持たないようなライン状欠陥を抽出(検出)することが困難であるという問題がある。
【0010】
例えば、横軸を各検出素子、縦軸をX線検出信号の値(画素値)として、各検出素子の位置に応じて空間的に展開したX線検出信号のプロファイルを示した場合に、欠陥素子のX線検出信号の値(画素値)が、このX線検出信号全体としては見かけ上、正常な範囲内に収まる場合が生じることがある。
【0011】
この場合、従来の手法によっても欠陥素子から得られたX線検出信号を「正常である」と誤って判断してしまい、欠陥素子を正常な検出素子と誤認してしまう。この判断に基づいてX線画像を取得すると画質の低下を回避できない。
【0012】
だからと言って、得られたX線検出信号が正常な範囲内にあるか否かを厳格に判断(正常な検出素子も誤検出してしまうような閾値に設定)すると、却って正常な検出素子を欠陥素子と誤認するおそれが生じ、同様に画質の低下を招く。
【0013】
この発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、放射線検出器でのライン状異常画像素子を正確に検出することができる、放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法と、高品質な放射線画像を取得することができる放射線撮像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
この発明は、このような目的を達成するために、次のような構成をとる。
すなわち、請求項1に記載の発明は、放射線源により照射された放射線を検出する複数の画像素子が二次元配列された放射線検出器におけるライン状異常画像素子を検出する、放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法であって、前記放射線検出器の検出面に放射線を照射したときの当該放射線検出器での検出出力信号に基づいて作成された初期画像データに対して、検出しようとするライン状異常画像素子のライン方向に比べてそのライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成する平滑化処理ステップと、前記初期画像データと前記平滑化フィルター処理後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成する差分処理ステップと、前記差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定する判定処理ステップと、を備えていることを特徴とするものである。
【0015】
[作用・効果]請求項1に記載の発明によれば、平滑化処理ステップでは、放射線検出器での検出出力信号に基づいて作成された初期画像データに対して、検出しようとするライン状異常画像素子のライン方向に比べてそのライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うので、正方形(n×n)のボックスフィルターによる平滑化フィルター処理に比べて、ライン状異常画像素子を正確にぼかすことができる。つまり、正方形(n×n)のボックスフィルターでは、ライン状異常画像素子をそのライン方向に多く含んだ状態で平滑化処理するため、ライン状異常画像素子を正確にぼかすことができないが、検出しようとするライン状異常画像素子のライン方向に比べてそのライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理では、ライン状異常画像素子をそのライン方向に含むことを低減でき、ライン状異常画像素子をその分正確にぼかした平滑化フィルター処理後の画像データを生成することができる。そして、差分処理ステップでは、初期画像データと前記長状フィルターサイズの平滑化フィルター処理後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成するので、ライン状異常画像素子を正常な画像素子に対してより正確に浮かび上がらせた差分画像データを生成でき、判定処理ステップでは、ライン状異常画像素子を正常な画像素子に対してより正確に浮かび上がらせた差分画像データに対して閾値を設定するので、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定することができ、微小な変化しか持たないようなライン状異常画像素子(ライン状欠陥)を抽出(検出)することができる。そして、このライン状異常画像素子から得られる放射線検出信号を補正することで、高品質な放射線画像を取得することができる。なお、放射線信号の補正とは、いわゆる置換処理や補間処理等の公知の技術を含む。
【0016】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、前記差分画像データに対してエッジ強調処理を施すエッジ強調処理ステップを備え、前記判定処理ステップは、前記エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定することを特徴とするものである。
【0017】
[作用・効果]請求項2に記載の発明によれば、エッジ強調処理ステップでは、差分画像データに対してエッジ強調処理を施しているので、ライン状異常画像素子をさらに強調して浮かび上がらせたエッジ強調処理後の差分画像データを生成でき、判定処理ステップでは、ライン状異常画像素子をさらに強調して浮かび上がらせたエッジ強調処理後の差分画像データに対して閾値を設定するので、微小な変化しか持たないようなライン状異常画像素子(ライン状欠陥)をより精密に抽出(検出)することができる。つまり、エッジ強調処理無しの差分画像データに閾値設定する場合よりも、エッジ強調処理後の差分画像データ閾値設定する方が、ライン状異常画像素子(ライン状欠陥)をより精密に抽出(検出)することができる。そして、このライン状異常画像素子から得られる放射線検出信号を補正することで、高品質な放射線画像を取得することができる。なお、放射線信号の補正とは、いわゆる置換処理や補間処理等の公知の技術を含む。
【0018】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、検出しようとするライン状異常画像素子が縦方向ライン状異常画像素子である場合には、前記平滑化処理ステップは、前記初期画像データに対して横方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、前記判定処理ステップは、前記エッジ強調処理後の差分画像データについての横方向のプロファイルを生成し、前記各プロファイルにおいて縦ライン用閾値以上の画素値を有する画像素子を縦方向ライン状異常画像素子と判定することを特徴とするものである。
【0019】
[作用・効果]請求項3に記載の発明によれば、縦方向ライン状異常画像素子を検出する場合には、平滑化処理ステップでは、初期画像データに対して横方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、エッジ強調処理ステップでは差分画像データに対してエッジ強調処理し、判定処理ステップは、エッジ強調処理後の差分画像データについての横方向のプロファイルを生成し、プロファイルにおいて縦ライン用閾値以上の画素値が連続する縦方向の複数個の画像素子を縦方向ライン状異常画像素子と判定するので、微小な変化しか持たないような縦方向ライン状異常画像素子であっても抽出(検出)することができる。
【0020】
また、請求項4に記載の発明は、請求項2に記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、検出しようとするライン状異常画像素子が横方向ライン状異常画像素子である場合には、前記平滑化処理ステップは、前記初期画像データに対して縦方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、前記判定処理ステップは、前記エッジ強調処理後の差分画像データについての横方向のプロファイルを生成し、前記プロファイルにおいて横ライン用閾値以上の画素値を有する画像素子を横方向ライン状異常画像素子と判定することを特徴とするものである。
【0021】
[作用・効果]請求項4に記載の発明によれば、横方向ライン状異常画像素子を検出する場合には、平滑化処理ステップでは、初期画像データに対して縦方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、エッジ強調処理ステップではその平滑化フィルター処理後の画像データをエッジ強調処理し、判定処理ステップは、エッジ強調処理後の差分画像データについての横方向のプロファイルをそれぞれ生成し、プロファイルにおいて横ライン用閾値以上の画素値を有する画像素子を横方向ライン状異常画像素子と判定するので、微小な変化しか持たないような横方向ライン状異常画像素子であっても抽出(検出)することができる。
【0022】
また、請求項5に記載の発明は、請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、さらに、前記初期画像データを白黒反転処理する白黒反転処理ステップを備え、前記平滑化処理ステップは、前記白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して前記平滑化フィルター処理を行い、前記差分処理ステップは、前記反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、前記判定処理ステップは、前記差分画像データに対して反転画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子を有する画像素子をライン状異常画像素子と判定することを特徴とするものである。
【0023】
[作用・効果]請求項5に記載の発明によれば、白黒反転処理ステップでは、初期画像データを白黒反転処理し、平滑化処理ステップでは、白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して平滑化フィルター処理を行い、差分処理ステップでは、反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、判定処理ステップは、平滑化フィルター処理後の反転画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定するので、初期画像データでの一群の正常な画像素子に比して画素値の低いライン状異常画像素子(つまり、差分処理で画素値がマイナスの値をとるライン状異常画像素子)も抽出することができる。また、このような白黒反転処理ステップを備えているので、差分処理で画素値がマイナスの値をとるライン状異常画像素子をプラスの値として取り扱うことができる。
【0024】
また、請求項6に記載の発明は、請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、さらに、前記エッジ強調処理後の差分画像データでのマイナスの画素値を零またはプラスの値に一定化する一定化処理ステップを備え、前記判定処理ステップは、前記一定化処理したエッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子を有する画像素子をライン状異常画像素子と判定することを特徴とするものである。
【0025】
[作用・効果]請求項6に記載の発明によれば、一定化処理ステップでは、エッジ強調処理後の差分画像データでのマイナスの画素値を零またはプラスの値に一定化し、判定処理ステップでは、その一定化処理したエッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定するので、エッジ強調処理で画素値がマイナスの値をとる画像素子をプラスの値として取り扱うことができる。
【0026】
また、請求項7に記載の発明は、放射線源により照射された放射線を検出する複数の画像素子が二次元配列された放射線検出器を備えている放射線撮像装置において、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法で検出された、当該装置で用いられる前記放射線検出器のライン状異常画像素子の位置情報データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたライン状異常画像素子の位置情報データを用いて、前記放射線検出器のライン状異常画像素子の放射線検出信号を補正する補正処理手段とを備えていることを特徴とするものである。
【0027】
[作用・効果]請求項7に記載の発明によれば、放射線源により照射された放射線を検出する複数の画像素子が二次元配列された放射線検出器を備えている放射線撮像装置において、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法で検出された、当該装置で用いられる放射線検出器のライン状異常画像素子の位置情報データを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されたライン状異常画像素子の位置情報データを用いて、放射線検出器のライン状異常画像素子の放射線検出信号を補正する補正処理手段とを備えているので、放射線検出器のライン状異常画像素子の放射線検出信号の補正を好適に行うことができる。
【発明の効果】
【0028】
この発明に係る放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法によれば、平滑化処理ステップでは、放射線検出器での検出出力信号に基づいて作成された初期画像データに対して、検出しようとするライン状異常画像素子のライン方向に比べてそのライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うので、正方形(n×n)のボックスフィルターによる平滑化フィルター処理に比べて、ライン状異常画像素子を正確にぼかすことができる。つまり、正方形(n×n)のボックスフィルターでは、ライン状異常画像素子をそのライン方向に多く含んだ状態で平滑化処理するため、ライン状異常画像素子を正確にぼかすことができないが、検出しようとするライン状異常画像素子のそのライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理では、ライン状異常画像素子をそのライン方向に含むことを低減でき、ライン状異常画像素子をその分正確にぼかした平滑化フィルター処理後の画像データを生成することができる。そして、差分処理ステップでは、初期画像データと前記長状フィルターサイズの平滑化フィルター処理後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成するので、ライン状異常画像素子を正常な画像素子に対してより正確に浮かび上がらせた差分画像データを生成でき、判定処理ステップでは、ライン状異常画像素子を正常な画像素子に対してより正確に浮かび上がらせた差分画像データに対して閾値を設定するので、その閾値以上の画素値を有する画像素子をライン状異常画像素子と判定することができ、微小な変化しか持たないようなライン状異常画像素子(ライン状欠陥)を抽出(検出)することができる。そして、このライン状異常画像素子から得られる放射線検出信号を補正することで、高品質な放射線画像を取得することができる。
【0029】
また、この発明に係る放射線撮像装置によれば、請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法で検出された、当該装置で用いられる放射線検出器のライン状異常画像素子の位置情報データを記憶する記憶手段と、この記憶手段に記憶されたライン状異常画像素子の位置情報データを用いて、放射線検出器のライン状異常画像素子の放射線検出信号を補正する補正処理手段とを備えているので、放射線検出器のライン状異常画像素子の放射線検出信号の補正を好適に行うことができる。
【実施例1】
【0030】
以下、図面を参照してこの発明の実施例1を説明する。
図1は、実施例1に係るX線透視撮像装置の全体構成を示すブロック図である。本実施例では、放射線撮像装置として医療用のX線透視撮像装置を例にとって説明する。
【0031】
X線透視撮像装置の撮像部1は、被写体である被検体Mを載置する天板2と、被検体Mに向けてX線を照射するX線管3と、複数個の検出素子(画像素子)により、被検体Mを透過したX線を検出するフラットパネル型X線検出器(以下、適宜「FPD」という)4とを備えている。
【0032】
なお、上述したX線管3は、この発明における放射線源に相当する。上述したFPD4は、この発明における放射線検出器に相当する。
【0033】
X線透視撮像装置は、他に天板2やX線管3やFPD4を移動させる移動制御部5と、X線管3の管電圧や管電流を制御するX線管制御部6と、FPD4の電荷情報を読み出し制御するFPD制御部7と各検出素子から読み出された電荷情報をデジタル化してX線検出信号に変換するA/D変換器9と、X線検出信号からX線画像を取得するデジタル画像処理部10とを備えている。
【0034】
デジタル画像処理部10は、さらに、A/D変換器9の出力側に接続されてX線検出信号を記憶する信号記憶部11と、この信号記憶部11に記憶されるX線検出信号からライン状異常検出素子を抽出するライン状異常検出素子抽出部13と、このライン状異常検出素子抽出部13で抽出されたライン状異常検出素子の位置情報を記憶する欠陥情報記憶部17と、A/D変換器9の出力側に接続されて、欠陥情報を参照しつつX線検出信号を補正・復元する補正部21と、X線検出信号(欠陥素子から得られたX線検出信号については補正後のX線検出信号)に基づきX線画像を生成する画像生成部23とを備えている。
【0035】
X線管3とFPD4とは、被検体Mを挟んで対向配置される。移動制御部5は、この状態が保たれるようにX線管3とFPD4とを水平移動させたり、回転移動させる。X線管3は、X線管制御部6の制御に基づいて被検体Mに所定線量のX線を照射する。図1では、照射されるX線を1点鎖線で模式的に示している。
【0036】
図2はFPD4の要部の垂直断面図であり、図3はFPD4の要部の平面図である。図示するようにX線の入射側から順に、印加電極31とX線感応型の半導体膜33とキャリア収集電極35とアクティブマトリクス基板37とが積層されている。キャリア収集電極35は、平面視二次元マトリクス状に分離形成されている。
【0037】
アクティブマトリクス基板37には、キャリア収集電極35ごとに電荷情報を蓄積するコンデンサCaと、この電荷情報を取り出すスイッチ素子である薄膜トランジスタ(Thin Film Transistors)Trとが分離形成されている。キャリア収集電極35及びコンデンサCaは、薄膜トランジスタTrのソースSに接続されている。また、各行の薄膜トランジスタTrのゲートに共通接続されるゲートバスライン41と、各列の薄膜トランジスタTrのドレインに共通接続されるデータバスライン43とがそれぞれ複数本、形成されている。
【0038】
アクティブマトリクス基板37から引き出された各データバスライン43は、それぞれ別個の増幅器47に接続される。増幅器47の出力側は、A/D変換器9に集約される。
【0039】
印加電極31にバイアス電圧を印加した状態でFPD4にX線が入射すると、半導体膜33において電荷が発生し、この電荷は各キャリア収集電極35を介してコンデンサCaに蓄積される。ゲートバスライン41は、ゲートドライバ45からの走査信号を送信し、薄膜トランジスタTrのゲートに与える。これによって、オン状態に移行した薄膜トランジスタTrを経由して、コンデンサCaに蓄積された電荷情報がデータバスライン43に読み出される。なお、FPD制御部7は、この電荷情報の読み出し動作制御をX線の照射に対応して行う。また、電荷情報を収集・蓄積している時間(薄膜トランジスタTrがオフ状態になっている時間に相当)を、「蓄積時間」という。
【0040】
各データバスライン43を通じて読み出される電荷情報はそれぞれ増幅器47で増幅される。その後、A/D変換器9にてデジタル化され、X線検出信号を得る。
【0041】
このように、1組のキャリア収集電極35とコンデンサCaと薄膜トランジスタTrとは、電荷情報を出力する1個の検出素子dを構成する。
【0042】
したがって、FPD4の検出面には、図3に示すように、多数個の検出素子dが二次元マトリクス状に配列されていると見ることができる。例えば、縦50cm×横50cm程の広さの検出面に縦2880個×横2880個の検出素子dが配列されている。なお、各検出素子dは、生成されるX線画像を構成する各画素と対応関係にある。以下の説明では、FPD4の検出面には検出素子dがn行×m列で、(n×m)個配置されているものとし、また、各検出素子dは、二次元座標(i、j)による位置情報で識別されるものとする(iは1以上n以下の整数、jは1以上m以下の整数)。
【0043】
信号記憶部11は、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)に代表される記憶媒体により構成され、各検出素子dについてのX線検出信号を少なくとも1フレーム分以上記憶する容量を有する。
【0044】
ここで、ライン状異常検出素子抽出部13の構成について図4を用いて説明する。図4は、ライン状異常検出素子抽出部13の構成を示すブロック図である。
【0045】
ライン状異常検出素子抽出部13は、図4に示すように、FPD4の縦方向(列方向)のライン状異常検出素子を抽出する縦ライン欠損抽出処理部14と、FPD4の横方向(行方向)のライン状異常検出素子を抽出する横ライン欠損抽出処理部15とを備えている。次に、縦ライン欠損抽出処理部14と横ライン欠損抽出処理部15との構成を以下に順番に説明する。
【0046】
まず、縦ライン欠損抽出処理部14は、図4に示すように、信号記憶部11から読み出したFPD4の1フレーム分の各検出素子dのX線検出信号に対して、例えば、緩やかな変動、傾斜(勾配)を除去するトレンド処理した初期画像データを生成して記憶する前処理部51を備えている。なお、これらのX線検出信号についての一様な勾配等がなければトレンド処理をしなくてもよい。
【0047】
縦ライン欠損抽出処理部14は、図4に示すように、前処理部51から読み出した初期画像データに対して、FPD4での検出しようとする縦方向(列方向)ライン状異常画像素子のライン方向(縦方向)に比べてそのライン方向(縦方向)に直交する方向(横方向:行方向)に長いフィルターサイズ(例えば、縦1×横33の横長フィルターサイズ)の平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成する平滑化処理部としての横方向メディアン処理部52を備えている。
【0048】
さらに、縦ライン欠損抽出処理部14は、図4に示すように、初期画像データと、横方向メディアン処理部52で平滑化フィルター処理した後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成する差分処理部としての画像減算処理部53と、差分画像データに対してエッジ強調処理(例えば、3×3のラプラシアン処理)を施すエッジ強調処理部54と、エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子を縦方向(列方向)ライン状異常画像素子と判定する判定処理部としての縦ライン欠損判定処理部55と、を備えている。
【0049】
縦ライン欠損判定処理部55で抽出された縦方向(列方向)ライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がプラス方向に微小に変化するもの(プラス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その縦方向(列方向)ライン状異常画像素子の位置情報は、欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0050】
さらに、縦ライン欠損抽出処理部14は、図4に示すように、前処理部51から読み出した初期画像データを白黒反転処理する白黒反転処理部56を備えている。そして、横方向メディアン処理部52は、白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して、前述の横長フィルターサイズの平滑化フィルター処理を行い、画像減算処理部53は、反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、エッジ強調処理部54は、この差分画像データに対してエッジ強調処理を施し、縦ライン欠損判定処理部55は、エッジ強調処理された平滑化フィルター処理後の反転画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子を縦方向(列方向)ライン状異常画像素子と判定する。つまり、この判定されたライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がマイナス方向に微小に変化するもの(マイナス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その縦方向(列方向)ライン状異常画像素子の位置情報も、欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0051】
次に、横ライン欠損抽出処理部15は、図4に示すように、信号記憶部11から読み出したFPD4の1フレーム分の各検出素子dのX線検出信号に対して、例えば、緩やかな変動、傾斜(勾配)を除去するトレンド処理した初期画像データを生成して記憶する前処理部61を備えている。なお、これらのX線検出信号についての一様な勾配等がなければトレンド処理をしなくてもよい。
【0052】
横ライン欠損抽出処理部15は、図4に示すように、前処理部61から読み出した初期画像データに対して、FPD4での検出しようとする横方向(行方向)ライン状異常画像素子のライン方向(横方向)に比べてそのライン方向(横方向)に直交する方向(縦方向:列方向)に長いフィルターサイズ(例えば、縦33×横1の縦長フィルターサイズ)の平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成する平滑化処理部としての縦方向メディアン処理部62を備えている。
【0053】
さらに、横ライン欠損抽出処理部15は、図4に示すように、初期画像データと、縦方向メディアン処理部62で平滑化フィルター処理した後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成する差分処理部としての画像減算処理部63と、差分画像データに対してエッジ強調処理(例えば、3×3のラプラシアン処理)を施すエッジ強調処理部64と、エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子を横方向(行方向)ライン状異常画像素子と判定する判定処理部としての横ライン欠損判定処理部65と、を備えている。
【0054】
横ライン欠損判定処理部65で抽出された横方向(行方向)ライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がプラス方向に微小に変化するもの(プラス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その横方向(行方向)ライン状異常画像素子の位置情報は、欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0055】
また、横ライン欠損抽出処理部15は、図4に示すように、前処理部61から読み出した初期画像データを白黒反転処理する白黒反転処理部66を備えている。そして、縦方向メディアン処理部62は、白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して、前述の縦長フィルターサイズの平滑化フィルター処理を行い、画像減算処理部63は、反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、エッジ強調処理部64は、この差分画像データに対してエッジ強調処理を施し、横ライン欠損判定処理部65は、エッジ強調処理された平滑化フィルター処理後の反転画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続する横方向(行方向)ライン状の複数個の画像素子を横方向(行方向)ライン状異常画像素子と判定する。つまり、この判定されたライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がマイナス方向に微小に変化するもの(マイナス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その横方向(行方向)ライン状異常画像素子の位置情報も、欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0056】
欠陥情報記憶部17は、RAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disk Drive)に代表される記憶媒体により構成される。そして、ライン状異常検出素子抽出部13で抽出された縦方向(列方向)および横方向(行方向)ライン状異常画像素子の位置情報等である欠陥情報を記憶する。欠陥情報とは、ライン状異常画像素子を識別する二次元座標(i、j)による位置情報等である。
【0057】
なお、上述した欠陥情報記憶部17はこの発明における記憶手段に相当し、上述した補正部21はこの発明における補正処理手段に相当する。
【0058】
補正部21は、メディアンフィルタ等で構成されている。そして、欠陥情報記憶部17に記憶された欠陥情報(縦方向(列方向)および横方向(行方向)ライン状異常画像素子の位置情報)を参照して、これが出力したX線検出信号を、その欠陥素子に隣接する正常な検出素子dから得られるX線検出信号の中央値に置換する。
【0059】
なお、補正部21は、メディアンフィルタ等で構成されてX線検出信号を置換処理するように構成されているが、これに限らず、欠陥素子に隣接する正常な検出素子dから得られるX線検出信号により補間処理(例えば、スプライン補間、ラグランジェ補間、SINC関数)等、公知の補正手法を採用してもよい。
【0060】
次に、実施例1に係るFPD4のライン状異常画像素子の検出方法について、図面を用いて説明する。図5は、実施例1に係るFPD4のライン状異常画像素子を検出する処理を示すフローチャートである。図6は、各種の縦ライン状異常画像素子を作るための補正データを示す図である。図7(a)は各検出素子の位置に応じて空間的に展開した初期画像データ、図7(b)はそれを平滑化フィルター処理した画像データ、図7(c)は差分データ、図7(d)はエッジ強調後の差分データのそれぞれプロファイルを模式的に示した図である。図8(a)はマイナス値のライン欠損を有する場合の初期画像データ、図8(b)は図8(a)の初期画像データを白黒反転処理したデータ、図8(c)はそれを平滑化フィルター処理した画像データ、図8(d)は、エッジ強調後の差分データのそれぞれプロファイルを模式的に示した図である。
【0061】
ここでは、X線透視撮像装置の補正データとして、図6に示すような各種の縦ライン状異常画像素子のデータを予め作成しておくことにする。つまり、このFPD4の画像サイズ(検出面サイズ)は2880〔ピクセル:pix 〕×2880〔ピクセル:pix 〕であり、画素値が「+4」、「+5」、「+6」、「+7」、「+10」、「+30」の6種類の縦方向ラインを20〔ピクセル:pix 〕間隔で横並び配置したものを略24組横並びしたもの(以下、適宜に、第1補正データと呼ぶ)を作成する。具体的には、このラインはFPD4の上端から下端まで延びたものであり、「+4」〜「+10」については24本、「+30」については23本としている。また、画素値が「−4」、「−5」、「−6」、「−7」、「−10」、「−30」の6種類の縦方向ラインを20〔ピクセル:pix 〕間隔で横並び配置したものを略24組横並びしたもの(以下、適宜に、第2補正データと呼ぶ)も別途作成しておく。
【0062】
これと同様に、各種の横ライン状異常画像素子のデータも、X線透視撮像装置の補正データとして予め作成しておくことにする。つまり、画素値が「+4」、「+5」、「+6」、「+7」、「+10」、「+30」の6種類の横方向ラインを20〔ピクセル:pix 〕間隔で縦並び配置したものを略24組縦並びしたもの(以下、適宜に、第3補正データと呼ぶ)を作成する。具体的には、このラインはFPD4の左端から右端まで延びたものであり、「+4」〜「+10」については24本、「+30」については23本としている。また、画素値が「−4」、「−5」、「−6」、「−7」、「−10」、「−30」の6種類の横方向ラインを20〔ピクセル:pix 〕間隔で縦並び配置したものを略24組縦並びしたもの(以下、適宜に、第4補正データと呼ぶ)も別途作成しておく。
【0063】
<ステップS1> FPD4にX線照射し、初期画像データを得る
図5に示すように、X線透視撮像装置の補正機能をONした状態で、0.03mR(ミリレントゲン)相当(画素値にして100程度)の一様照射画像を撮影する。つまり、この補正機能をONした状態で撮影することにより、画像中には前述の図6に示す各種のラインが含まれることになる。
【0064】
具体的には、このFPD4は、その装置自体としては縦方向(列方向)および横方向(行方向)ライン状異常画像素子を有しないものであり、例えば縦ラインの補正データ(第1補正データ)を用いた補正機能がONされることで、図6に示す各種の縦ライン状異常画像素子の補正データ(第1補正データ)を足し込んだ初期画像データが得られ(図7(a)参照)、横ラインの補正データ(第3補正データ)を用いた補正機能がONされることで、図示省略の各種の横ライン状異常画像素子の補正データ(第3補正データ)を足し込んだ初期画像データが得られる。なお、この初期画像データに対して、必要に応じてトレンド処理を施しても良いことは前述した通りである。
【0065】
<ステップS2> 縦ライン状欠損抽出?
図5に示すように、縦ライン状異常画像素子を抽出する場合には、ステップS3に進み、横ライン状異常画像素子を抽出する場合には、ステップS11に進む。
【0066】
<ステップS3> 横方向メディアン処理
横方向メディアン処理部52は、図6に示す各種の縦ライン状異常画像素子の補正データ(第1補正データ)を足し込んだ初期画像データに対して、FPD4での検出しようとする縦方向(列方向)ライン状異常画像素子のライン方向(縦方向)に比べてそのライン方向(縦方向)に直交する方向(横方向:行方向)に長いフィルターサイズ(例えば、縦1×横33の横長フィルターサイズ)の平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成する(図7(b)参照)。図7(b)に示すように、かかる平滑化処理により、各種の縦ライン状異常画像素子の画素値が例えば「0」となっている。
【0067】
<ステップS4> 画像減算処理
画像減算処理部53は、ステップS1での第1補正データを足し込んだ初期画像データと、ステップS3での横方向メディアン処理部52で平滑化フィルター処理した後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成する(図7(c)参照)。この平滑化フィルター処理により、縦方向(列方向)ライン状異常画像素子をある程度浮かび上がらせることができる。
【0068】
<ステップS5> エッジ強調処理
エッジ強調処理部54は、ステップS4での差分画像データに対してエッジ強調処理(例えば、3×3のラプラシアン処理)を施す。このエッジ強調処理により、縦方向(列方向)ライン状異常画像素子をより浮かび上がらせることができる(図7(d)参照)。
【0069】
<ステップS6> 縦ライン欠損判定処理
縦ライン欠損判定処理部55は、ステップS5でのエッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子を縦方向(列方向)ライン状異常画像素子と判定する(図7(d)参照)。
【0070】
<ステップS7> 縦ライン欠損情報を記憶する
欠陥情報記憶部17は、縦方向(列方向)ライン状異常画像素子と判定された検出素子dを識別する位置情報等を欠陥情報として記憶する。つまり、ステップS6で抽出された縦方向(列方向)ライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がプラス方向に微小に変化するもの(プラス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その縦方向(列方向)ライン状異常画像素子の位置情報は、ステップS7で欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0071】
<ステップS8> 白黒反転処理したか?
初期画像データを白黒反転処理していなければステップS9に進み、白黒反転処理していればステップS10に進む。次の白黒反転処理は、他の正常な画像素子の画素値を零とした場合に画素値がマイナスとなる各種の縦ライン状異常画像素子についても、プラス側データとして取り扱って処理するためのものであり、ここでは、前述した画素値がマイナスである各種の縦ライン状異常画像素子の補正データ(第2補正データ)を足し込んだ初期画像データ(図8(a)参照)を用いることとする。
【0072】
<ステップS9> 白黒反転処理
白黒反転処理部56は、前述した画素値がマイナスである各種の縦ライン状異常画像素子の補正データ(第2補正データ)を足し込んだ初期画像データを白黒反転処理し(図8(b)参照)、ステップS3に戻る。そして、ステップS3にて、横方向メディアン処理部52は、白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して、前述の横長フィルターサイズの平滑化フィルター処理を行い(図8(c)参照)、ステップS4にて、画像減算処理部53は、反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、ステップS5にて、エッジ強調処理部54は、この差分画像データに対してエッジ強調処理を施し(図8(d)参照)、ステップS6にて、縦ライン欠損判定処理部55は、エッジ強調処理された差分データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子を縦方向(列方向)ライン状異常画像素子と判定する(図8(d)参照)。つまり、この判定されたライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がマイナス方向に微小に変化するもの(マイナス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その縦方向(列方向)ライン状異常画像素子の位置情報も、ステップS7にて欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0073】
<ステップS10> 横ライン状欠損抽出済み?
横方向(行方向)ライン状異常画像素子が抽出されていなければ、ステップS11に進み、横方向(行方向)ライン状異常画像素子が抽出済みであればこの処理を終了する。
【0074】
<ステップS11> 縦方向メディアン処理
縦方向メディアン処理部62は、前述した画素値がプラスである各種の横ライン状異常画像素子の補正データ(第3補正データ)を足し込んだ初期画像データに対して、FPD4での検出しようとする横方向(行方向)ライン状異常画像素子のライン方向(横方向)に比べてそのライン方向(横方向)に直交する方向(縦方向:列方向)に長いフィルターサイズ(例えば、縦33×横1の縦長フィルターサイズ)の平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成する。
【0075】
<ステップS12> 画像減算処理
画像減算処理部63は、第3補正データを足し込んだ初期画像データと、縦方向メディアン処理部62で平滑化フィルター処理した後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成する。この平滑化フィルター処理により、横方向(行方向)ライン状異常画像素子をある程度浮かび上がらせることができる。
【0076】
<ステップS13> エッジ強調処理
エッジ強調処理部64は、差分画像データに対してエッジ強調処理(例えば、3×3のラプラシアン処理)を施す。このエッジ強調処理により、横方向(行方向)ライン状異常画像素子をより浮かび上がらせることができる。
【0077】
<ステップS14> 横ライン欠損判定処理
横ライン欠損判定処理部65は、エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子を横方向(行方向)ライン状異常画像素子と判定する。
【0078】
<ステップS15> 横ライン欠損情報を記憶する
欠陥情報記憶部17は、横方向(行方向)ライン状異常画像素子と判定された検出素子dを識別する位置情報等を欠陥情報として記憶する。つまり、ステップS14で抽出された横方向(行方向)ライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がプラス方向に微小に変化するもの(プラス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その横方向(行方向)ライン状異常画像素子の位置情報は、ステップS15で欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0079】
<ステップS16> 白黒反転処理したか?
初期画像データを白黒反転処理していなければステップS17に進み、白黒反転処理していればステップS18に進む。次の白黒反転処理は、他の正常な画像素子の画素値を零とした場合に画素値がマイナスとなる各種の横ライン状異常画像素子についても、プラス側データとして取り扱って処理するためのものであり、ここでは、前述した画素値がマイナスである各種の横ライン状異常画像素子の補正データ(第4補正データ)を足し込んだ初期画像データを用いることとする。
【0080】
<ステップS17> 白黒反転処理
白黒反転処理部66は、第4補正データを足し込んだ初期画像データを白黒反転処理し、ステップS11に戻る。そして、ステップS11にて、縦方向メディアン処理部62は、白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して、前述の縦長フィルターサイズの平滑化フィルター処理を行い、ステップS12にて、画像減算処理部63は、反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、ステップS13にて、エッジ強調処理部64は、この差分画像データに対してエッジ強調処理を施し、ステップS14にて、横ライン欠損判定処理部65は、エッジ強調処理された平滑化フィルター処理後の反転画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子を横方向(行方向)ライン状異常画像素子と判定する。つまり、この判定されたライン状異常画像素子は、他の正常な画像素子に比べて、その画素値がマイナス方向に微小に変化するもの(マイナス方向に微小に変動幅を持つもの)であり、その横方向(行方向)ライン状異常画像素子の位置情報も、ステップS15にて欠陥情報記憶部17に記憶される。
【0081】
<ステップS18> 縦ライン状欠損抽出済み?
縦方向(列方向)ライン状異常画像素子が抽出されていなければ、ステップS3に戻り、縦方向(列方向)ライン状異常画像素子が抽出済みであればこの処理を終了する。
【0082】
なおここで、前述の第1補正データを足し込んだ初期画像データでの縦ライン欠損抽出結果を図9(a)に示す。図9(a)に示すように、縦ライン欠損について、エッジ強調なしの場合には、画素値が「+4」で14本抽出できており、その抽出率は58%であり、画素値が「+5」で23本抽出できており、その抽出率は96%であり、画素値が「+6」〜「+30」では全て抽出できている。さらに、エッジ強調ありの場合には、画素値が「+4」〜「+30」の全て抽出できており、エッジ強調なしと比べてエッジ強調ありの方がより優れていることがわかる。
【0083】
なお、前述の第2補正データを足し込んだ初期画像データでの縦ライン欠損抽出結果も図9(a)と同様であった。
【0084】
また、前述の第3補正データを足し込んだ初期画像データでの横ライン欠損抽出結果を図9(b)に示す。図9(b)に示すように、横ライン欠損について、エッジ強調なしの場合には、画素値が「+4」〜「+30」では全て抽出不可であるが、エッジ強調ありの場合には、画素値が「+5」で2本抽出できており、その抽出率は8%であり、画素値が「+6」,「+7」で3本抽出できており、その抽出率は13%であり、画素値が「+10」で19本抽出できており、その抽出率は79%であり、画素値が「+30」の全て抽出できており、エッジ強調なしと比べてエッジ強調ありの方がより優れていることがわかる。
【0085】
なお、前述の第4補正データを足し込んだ初期画像データでの縦ライン欠損抽出結果も図9(b)と同様であった。
【0086】
また、縦ラインに比べて横ラインの抽出率が悪いのは、評価画像に横ライン状の低周波ノイズがのっているためであり、ライン画素値が小さい程ノイズに埋もれてしまい、抽出不能となっている。
【0087】
なお、図9(a)に示した縦ライン欠損結果から、今後のFPD4に関しては、エッジ強調ありで縦ライン欠損抽出する場合には、縦ライン欠損判定処理部55での閾値を「4未満」(例えば、「3」)に一律に設定し、今後のFPD4の縦ライン欠損抽出を行うようにしてもよい。また同様に、図9(b)に示した横ライン欠損結果から、今後のFPD4に関しては、エッジ強調ありで横ライン欠損抽出する場合には、横ライン欠損判定処理部65での閾値を「30未満」(例えば、「29」)に一律に設定し、今後のFPD4の横ライン欠損抽出を行うようにしてもよい。
【0088】
このように、実施例1に係る放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法、つまり、X線管3により照射されたX線を検出する複数の検出素子d(画像素子)が二次元配列されたFPD4(放射線検出器)におけるライン状異常画像素子を検出する、放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法によれば、FPD4の検出面に放射線を照射したときの当該FPD4での検出出力信号に基づいて作成された初期画像データに対して、検出しようとするライン状異常画像素子のライン方向に比べてそのライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成する平滑化処理ステップ(ステップS3,S11)と、初期画像データと平滑化フィルター処理後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成する差分処理ステップ(ステップS4,S12)と、差分画像データに対してエッジ強調処理を施すエッジ強調処理ステップ(ステップS5,S13)と、エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子をライン状異常画像素子と判定する判定処理ステップ(ステップS6,S14)と、を備えている。したがって、エッジ強調処理ステップでは、差分画像データに対してエッジ強調処理を施しているので、ライン状異常画像素子をさらに強調して浮かび上がらせたエッジ強調処理後の差分画像データを生成でき、判定処理ステップでは、ライン状異常画像素子をさらに強調して浮かび上がらせたエッジ強調処理後の差分画像データに対して閾値を設定するので、微小な変化しか持たないようなライン状異常画像素子(ライン状欠陥)をより精密に抽出(検出)することができる。つまり、エッジ強調処理無しの差分画像データに閾値設定する場合よりも、エッジ強調処理後の差分画像データ閾値設定する方が、ライン状異常画像素子(ライン状欠陥)をより精密に抽出(検出)することができる。そして、このライン状異常画像素子から得られる放射線検出信号を補正することで、高品質な放射線画像を取得することができる。
【0089】
また、縦方向ライン状異常画像素子を検出する場合には、平滑化処理ステップでは、初期画像データに対して横方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、エッジ強調処理ステップではその平滑化フィルター処理後の画像データをエッジ強調処理し、判定処理ステップは、エッジ強調処理後の差分画像データについての横方向のプロファイルを生成し、プロファイルにおいて縦ライン用閾値以上の画素値を有する画像素子を縦方向ライン状異常画像素子と判定するので、微小な変化しか持たないような縦方向ライン状異常画像素子であっても抽出(検出)することができる。
【0090】
また、横方向ライン状異常画像素子を検出する場合には、平滑化処理ステップでは、初期画像データに対して縦方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、エッジ強調処理ステップではその平滑化フィルター処理後の画像データをエッジ強調処理し、判定処理ステップは、エッジ強調処理後の差分画像データについての縦方向のプロファイルを生成し、プロファイルにおいて横ライン用閾値以上の画素値を有する画像素子を横方向ライン状異常画像素子と判定するので、微小な変化しか持たないような横方向ライン状異常画像素子であっても抽出(検出)することができる。
【0091】
また、白黒反転処理ステップ(ステップS9,S17)では、初期画像データを白黒反転処理し、平滑化処理ステップでは、白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して平滑化フィルター処理を行い、差分処理ステップでは、反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、判定処理ステップは、平滑化フィルター処理後の反転画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子をライン状異常画像素子と判定するので、初期画像データでの一群の正常な画像素子に比して画素値の低いライン状異常画像素子(つまり、差分処理で画素値がマイナスの値をとるライン状異常画像素子)も抽出することができる。
【0092】
このように、実施例1に係るX線透視撮像装置によれば、X線源3により照射されたX線を検出する複数の検出素子(画像素子)が二次元配列されたFPD4(放射線検出器)を備え、前述したライン状異常画像素子の検出方法で検出された、当該装置で用いられる放射線検出器のライン状異常画像素子の位置情報データを記憶する欠陥情報記憶部17と、この欠陥情報記憶部17に記憶されたライン状異常画像素子の位置情報データを用いて、FPD4のライン状異常画像素子の放射線検出信号を補正する補正部21とを備えているので、FPD4のライン状異常画像素子の放射線検出信号の補正を好適に行うことができる。
【0093】
なお、上記実施例では、X線透視撮像装置の補正データとして、図6に示すような各種の縦ライン状異常画像素子のデータを予め作成しておき、その補正データを足し込んだ初期画像データを取得するようにしているが、そのような補正データを用いることなく実際のFPD4で一様照射画像を撮影した初期画像データについての縦ラインおよび横ライン状異常画像素子の抽出ができることは言うまでもない。
【0094】
この発明は、上記実施形態に限られることはなく、下記のように変形実施することができる。
【0095】
(1)上述した実施例では、エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定して縦方向(列方向)および横方向(行方向)ライン状異常画像素子を抽出(検出)しており、ライン状異常画像素子の抽出精度を高めているが、エッジ強調を施さない差分画像データに対して所定の閾値を設定して縦方向(列方向)および横方向(行方向)ライン状異常画像素子を抽出(検出)するようにしてもよい。この場合は、エッジ強調処理する場合に比べてライン状異常画像素子の抽出精度が劣るが、初期画像データに対して正方形(n×n)のボックスフィルターによる平滑化フィルター処理した正方形ボックスフィルター処理後の画像データと初期画像データとの差分をとった差分画像データに対して閾値設定する場合と比べて、ライン状異常画像素子の抽出精度は高い。
【0096】
(2)上述した実施例では、図1に示すように、縦ライン欠損抽出処理部14と横ライン欠損抽出処理部15とを備え、縦方向(列方向)および横方向(行方向)ライン状異常画像素子を抽出(検出)しているが、縦方向(列方向)ライン状異常画像素子の抽出のみでよい場合には縦ライン欠損抽出処理部14のみを備えるようにしてもよいし、横方向(行方向)ライン状異常画像素子の抽出のみでよい場合には横ライン欠損抽出処理部15のみを備えるようにしてもよい。
【0097】
(3)上述した実施例装置では、図1に示すように、ライン状異常検出素子抽出部を備えているが、図10に示すように、ライン状異常検出素子抽出部を備えず、前述したライン状異常画像素子の検出方法で検出された、当該装置で用いられる放射線検出器のライン状異常画像素子の位置情報データが欠陥情報記憶部17に入力記憶されるような構成であってもよい。
【0098】
(4)上述した実施例では、放射線検出手段としてFPD4を例に採って説明したが、検出面に複数個の検出素子を有する放射線検出器であれば、この発明を適用することができる。
【0099】
(5)上述した実施例において、図11に示すように、エッジ強調処理後の差分画像データでのマイナスの画素値を零またはプラスの値に一定化する一定化処理部57,67(一定化処理ステップ)を備え、縦ライン欠損判定処理部55および横ライン欠損判定処理部65(判定処理ステップ)は、一定化処理したエッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定するようにしてもよい。
【0100】
この場合には、一定化処理部57,67では、エッジ強調処理後の差分画像データでのマイナスの画素値を零またはプラスの値に一定化し、縦ライン欠損判定処理部55および横ライン欠損判定処理部65では、その一定化処理したエッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定するので、エッジ強調処理で画素値がマイナスの値をとる画像素子をプラスの値として取り扱うことができる。
【0101】
(6)上述した実施例では、縦方向(列方向)ライン状異常画像素子の抽出のために、横方向メディアン処理部52では横方向(行方向)に長いフィルターサイズ(例えば、縦1×横33の横長フィルターサイズ)の横長メディアンフィルター処理を行い、横方向(行方向)ライン状異常画像素子の抽出のために、縦方向メディアン処理部62では縦方向(列方向)に長いフィルターサイズ(例えば、縦33×横1の縦長フィルターサイズ)の縦長メディアンフィルター処理を行っているが、長状の移動平均処理などを行うようにしてもよい。
【0102】
(7)上述した実施例では、医用のX線透視撮像装置であったが、これに限られない。すなわち、X線以外の放射線を用いる装置にも適用することができ、また、非破壊検査、RI(Radio Isotope)検査、および光学検査などの工業分野や、原子力分野などに用いられる放射線撮像装置にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】実施例1に係るX線透視撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図2】FPDの要部の垂直断面図である。
【図3】FPDの要部の平面図である。
【図4】実施例1のライン状異常検出素子抽出部の構成を示すブロック図である。
【図5】実施例1に係るFPDのライン状異常画像素子を検出する処理を示すフローチャートである。
【図6】各種の縦ライン状異常画像素子を作るための補正データを示す図である。
【図7】(a)は各検出素子の位置に応じて空間的に展開した初期画像データ、(b)はそれを平滑化フィルター処理した画像データ、(c)は差分データ、(d)はエッジ強調後の差分データのそれぞれプロファイルを模式的に示した図である。
【図8】(a)はマイナス値のライン欠損を有する場合の初期画像データ、(b)は(a)の初期画像データを白黒反転処理したデータ、(c)はそれを平滑化フィルター処理した画像データ、(d)は、エッジ強調後の差分データのそれぞれプロファイルを模式的に示した図である。
【図9】(a)は縦ライン欠損抽出結果、(b)は横ライン欠損抽出結果を示す図である。
【図10】変形例のX線透視撮像装置の全体構成を示すブロック図である。
【図11】変形例のライン状異常検出素子抽出部の構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0104】
3 …X線管(放射線源)
4 …FPD(放射線検出器)
13 …ライン状異常検出素子抽出部
14 …縦ライン欠損抽出処理部
15 …横ライン欠損抽出処理部
17 …欠陥情報記憶部(記憶手段)
21 …補正部(補正処理手段)
52 …横方向メディアン処理部(平滑化処理部)
53 …画像減算処理部(差分処理部)
54 …エッジ強調処理部
55 …縦ライン欠損判定処理部(判定処理部)
56 …白黒反転処理部
62 …縦方向メディアン処理部(平滑化処理部)
63 …画像減算処理部(差分処理部)
64 …エッジ強調処理部
65 …横ライン欠損判定処理部(判定処理部)
66 …白黒反転処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源により照射された放射線を検出する複数の画像素子が二次元配列された放射線検出器におけるライン状異常画像素子を検出する、放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法であって、
前記放射線検出器の検出面に放射線を照射したときの当該放射線検出器での検出出力信号に基づいて作成された初期画像データに対して、検出しようとするライン状異常画像素子のライン方向に比べてそのライン方向に直交する方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成する平滑化処理ステップと、
前記初期画像データと前記平滑化フィルター処理後の画像データとの差分をとった差分画像データを生成する差分処理ステップと、
前記差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定する判定処理ステップと、
を備えていることを特徴とする放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、
前記差分画像データに対してエッジ強調処理を施すエッジ強調処理ステップを備え、
前記判定処理ステップは、前記エッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値の画像素子が連続するライン状の複数個の画像素子をライン状異常画像素子と判定する
ことを特徴とする放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法。
【請求項3】
請求項2に記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、
検出しようとするライン状異常画像素子が縦方向ライン状異常画像素子である場合には、前記平滑化処理ステップは、前記初期画像データに対して横方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、
前記判定処理ステップは、前記エッジ強調処理後の差分画像データについての横方向のプロファイルを生成し、前記プロファイルにおいて縦ライン用閾値以上の画素値を有する画像素子を縦方向ライン状異常画像素子と判定する
ことを特徴とする放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法。
【請求項4】
請求項2に記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、
検出しようとするライン状異常画像素子が横方向ライン状異常画像素子である場合には、前記平滑化処理ステップは、前記初期画像データに対して縦方向に長いフィルターサイズの平滑化フィルター処理を行うことで平滑化フィルター処理後の画像データを生成し、
前記判定処理ステップは、前記エッジ強調処理後の差分画像データについての縦方向のプロファイルを生成し、前記プロファイルにおいて横ライン用閾値以上の画素値を有する画像素子を横方向ライン状異常画像素子と判定する
ことを特徴とする放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法。
【請求項5】
請求項1から請求項4のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、
さらに、前記初期画像データを白黒反転処理する白黒反転処理ステップを備え、
前記平滑化処理ステップは、前記白黒反転処理された初期画像データである反転後初期画像データに対して前記平滑化フィルター処理を行い、
前記差分処理ステップは、前記反転後初期画像データと、その反転後初期画像データを平滑化フィルター処理した平滑化フィルター処理後の反転画像データとの差分をとり、
前記判定処理ステップは、前記差分処理後のデータに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子をライン状異常画像素子と判定する
ことを特徴とする放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法において、
さらに、前記エッジ強調処理後の差分画像データでのマイナスの画素値を零またはプラスの値に一定化する一定化処理ステップを備え、
前記判定処理ステップは、前記一定化処理したエッジ強調処理後の差分画像データに対して所定の閾値を設定することで、その閾値以上の画素値を有する画像素子をライン状異常画像素子と判定する
ことを特徴とする放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法。
【請求項7】
放射線源により照射された放射線を検出する複数の画像素子が二次元配列された放射線検出器を備えている放射線撮像装置において、
請求項1から請求項6のいずれか一つに記載の放射線検出器のライン状異常画像素子の検出方法で検出された、当該装置で用いられる前記放射線検出器のライン状異常画像素子の位置情報データを記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶されたライン状異常画像素子の位置情報データを用いて、前記放射線検出器のライン状異常画像素子の放射線検出信号を補正する補正処理手段と、
を備えていることを特徴とする放射線撮像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−153942(P2009−153942A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−338769(P2007−338769)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)
【Fターム(参考)】