説明

放射線検出素子

【課題】外部回路との接続部の配列ピッチを拡大させつつ配線負荷のばらつきを抑えた放射線検出素子を提供する。
【解決手段】検出領域30内に複数の画素20を傾斜させたマトリクス状に配置すると共に、縦方向の2つの画素列毎に信号配線3を配設する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線検出素子に係り、特に、放射線の検出を行う矩形状の検出領域内に各々検出対象とする放射線が照射されることにより発生した電荷を蓄積し、当該蓄積された電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素がマトリクス状に複数配置された放射線検出素子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、TFT(Thin film transistor)アクティブマトリックス基板上にX線感応層を配置し、X線情報を直接デジタルデータに変換できるFPD(flat panel detector)等の放射線検出素子を用いた放射線画像撮影装置が実用化されている。このFPDは、従来のイメージングプレートに比べて、即時に画像を確認でき、動画も確認できるといったメリットがあり、急速に普及が進んでいる。この放射線検出素子は、種々のタイプのものが提案されており、例えば、放射線を直接、半導体層で電荷に変換して蓄積する直接変換方式や、放射線を一度CsI:Tl、GOS(Gd2O2S:Tb)などのシンチレータで光に変換し、変換した光を半導体層で電荷に変換して蓄積する間接変換方式がある。
【0003】
この放射線検出素子は、例えば、複数の走査配線と複数の信号配線とが互いに交差して配設され、当該走査配線及び信号配線の各交差部に対応して画素がマトリクス状に設けられている。この複数の走査配線及び複数の信号配線は、放射線検出素子の周辺部において外部回路(例えば、アンプIC(Integrated Circuit)やゲートIC)に接続される。
【0004】
本出願人は、特許文献1に、放射線検出素子の周辺部において走査配線及び信号配線と外部回路との接続を容易にするため、図6に示すように放射線の検出を行う略矩形状の検出領域30’を含んだ基板に走査配線101’及び信号配線3’を30°から60°の間の角度で斜めに配設して走査配線101’及び信号配線3’と外部回路との接続部の配列ピッチを1/sinθ倍に拡大する技術を開示した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−264273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の技術を用いて、矩形状の検出領域内に走査配線及び信号配線を斜めに配設した場合、検出領域の中央部分と端部部分で走査配線及び信号配線の長さや接続される画素数が大きく異なり、中央部分と端部部分で走査配線及び信号配線の配線負荷のばらつきが大きい、という問題点があった。このように走査配線及び信号配線の配線負荷のばらつきが大きくなると、検出領域内で画質、駆動能力がそろえずらくなる。
【0007】
本発明は上記事実に鑑みてなされたものであり、外部回路との接続部の配列ピッチを拡大させつつ配線負荷のばらつきを抑えた放射線検出素子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明の放射線検出素子は、各々検出対象とする放射線が照射されることにより発生した電荷を蓄積し、当該蓄積された電荷を読み出すためのスイッチ素子を備え、一方向及び当該一方向に対する交差方向に対して辺が延びた矩形状の検出領域内に前記一方向及び前記交差方向に対して傾斜させたマトリクス状に複数配置された画素と、前記画素の前記一方向に対する複数の画素列毎に1本ずつ配設されてそれぞれ当該複数の画素列の各画素に備えられたスイッチ素子に接続され、当該スイッチ素子をスイッチングする制御信号又は蓄積された電荷に応じた電気信号の何れか一方が流れる第1配線と、前記画素の前記交差方向に対する各画素列に1本ずつ配設されてそれぞれ当該画素列の各画素に備えられたスイッチ素子に接続され、前記制御信号又は前記電気信号の他方が流れる第2配線と、を備えている。
【0009】
本発明の放射線検出素子は、一方向及び当該一方向に対する交差方向に対して辺が延びた矩形状の検出領域内に、各々検出対象とする放射線が照射されることにより発生した電荷を蓄積し、当該蓄積された電荷を読み出すためのスイッチ素子を備えた画素が一方向及び交差方向に対して傾斜させたマトリクス状に複数配置されている。
【0010】
そして、本発明では、画素の一方向に対する複数の画素列毎に1本ずつ第1配線が配設され、第1配線がそれぞれ当該複数の画素列の各画素に備えられたスイッチ素子に接続されて当該スイッチ素子をスイッチングする制御信号又は蓄積された電荷に応じた電気信号の何れか一方が流れ、画素の交差方向に対する各画素列に1本ずつ第2配線が配設され、第2配線がそれぞれ当該画素列の各画素に備えられたスイッチ素子に接続されて制御信号又は電気信号の他方が流れる。
【0011】
このように、本発明によれば、検出領域内に複数の画素を傾斜させたマトリクス状に配置すると共に、一方向の複数の画素列毎に第1配線を配設しているので、第1配線と外部回路との接続部の配列ピッチを拡大する。
【0012】
また、本発明によれば、検出領域の一方向に沿って第1配線を配設し、検出領域の交差方向に沿って第2配線を配設しているので、検出領域の中央部分と端部部分で第1配線及び第2配線の長さが略同一となり、接続される画素数の差も小さくなるため、第1配線及び第2配線の配線負荷のばらつきを小さく抑えることができる。
【0013】
なお、請求項1記載の発明は、請求項2に記載の発明のように、前記第1配線が、前記一方向に対する2つの画素列毎に1本ずつそれぞれ配設され、当該2つの画素列の間を前記画素を迂回するように設けられてもよい。
【0014】
また、請求項1又は請求項2記載の発明は、請求項3に記載の発明のように、前記画素が、前記一方向及び前記交差方向に対して30°〜60°傾斜させたマトリクス状に配置されてもよい。
【0015】
特に、請求項3記載の発明は、請求項4に記載の発明のように、前記画素が、前記一方向及び前記交差方向に対して45°傾斜させたマトリクス状に配置されることが好ましい。
【0016】
また、請求項1〜請求項4記載の発明は、請求項5に記載の発明のように、前記第2配線が、前記検出領域を挟んで前記交差方向の両側に設けられた複数の外部回路の何れかと前記交差方向の一方及び他方の何れかで各々接続されてもよい。
【0017】
特に、請求項5記載の発明は、請求項6に記載の発明のように、前記第2配線が、1本ずつ交互に前記交差方向の一方及び他方の前記外部回路に接続されてもよい。
【0018】
また、請求項5記載の発明は、請求項7に記載の発明のように、前記第2配線が、複数本ずつ交互に前記交差方向の一方及び他方の前記外部回路に接続されてもよい。
【0019】
また、本発明は、請求項8に記載の発明のように、前記第1配線が、前記一方向の一方で外部回路に各々接続されることが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
このように、本発明によれば、外部回路との接続部の配列ピッチを拡大させつつ配線負荷のばらつきが抑えられる、という優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】実施の形態に係る放射線画像撮影装置の全体構成を示す構成図である。
【図2】実施の形態に係る放射線検出素子の構成を示す平面図である。
【図3】実施の形態に係る放射線検出素子の線断面図である。
【図4】他の形態に係る放射線検出素子の構成を示す構成図である。
【図5】他の形態に係る放射線検出素子の構成を示す構成図である。
【図6】従来の放射線検出素子の構成を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では、放射線を直接電荷に変換する直接変換方式の放射線検出素子10に本発明を適用した場合について説明する。
【0023】
図1には、第1の実施の形態に係る放射線検出素子10を用いた放射線画像撮影装置100の全体構成が示されている。
【0024】
同図に示すように、本実施の形態に係る放射線画像撮影装置100は、直接変換方式の放射線検出素子10を備えている。
【0025】
放射線検出素子10は、一方向(図1の横方向)及び当該一方向に対する交差方向(図1の縦方向)に対して辺が延びた矩形状の検出領域30が設けられており、当該検出領域30に照射された放射線の検出を行う。この検出領域30内には、一方向及び交差方向に対して傾斜させたマトリクス状に画素20が複数配置されており、本実施の形態では、画素20を、一方向及び交差方向に対して45°傾斜させてマトリクス状に配置している。これにより、本実施の形態に係る放射線検出素子10では、一方向の画素列毎に画素20が1/2画素幅分(半ピッチ)ずつ一方向にずれて配置されている。
【0026】
各画素20は、照射された放射線を受けて電荷を発生するセンサ部103と、センサ部103で発生した電荷を蓄積する電荷蓄積容量5と、電荷蓄積容量5に蓄積された電荷を読み出すためのTFTスイッチ4と、を含んで構成されている。
【0027】
また、放射線検出素子10には、画素20の交差方向(図1の横方向、以下「走査配線方向」ともいう。)に対する各画素列に1本ずつそれぞれ走査配線101が配設されている。走査配線101は、それぞれ走査配線方向の画素列の各画素20に備えられたTFTスイッチ4に接続され、各TFTスイッチ4をスイッチングする制御信号が流れる。
【0028】
また、放射線検出素子10には、画素20の一方向(図1の縦方向、以下「信号配線方向」ともいう。)に対する2つの画素列毎に1本ずつ当該2つの画素列の間を画素20を迂回するように蛇行して信号配線3が配設されている。信号配線3は、それぞれ2の画素列の各画素20のTFTスイッチ4に接続され、TFTスイッチ4のスイッチング状態に応じて電荷蓄積容量5に蓄積された電荷が流れる。
【0029】
本実施の形態に係る放射線検出素子10は、信号配線方向の一端側に各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する複数のアンプIC105が設けられている。各信号配線3は、予め定められた第1本数(例えば256本)毎にアンプIC105に接続されている。また、本実施の形態に係る放射線検出素子10は、検出領域30を挟んで信号配線方向の両側に各走査配線101にTFTスイッチ4をON/OFFするための制御信号を出力する複数のゲートIC104A、104Bが設けられている。各走査配線101は、一方及び他方の端部が1本ずつ交互にゲートIC104A、104Bに接続されており、また、予め定められた第2本数(例えば256本)毎に別のゲートIC104A、104Bに接続されている。なお、図1では、アンプIC105、ゲートIC104A、104Bをそれぞれ1つずつに省略して図示している。
【0030】
アンプIC105は、各信号配線3毎に、入力される電気信号を増幅する増幅回路を内蔵している。アンプIC105では、各信号配線3より入力される電気信号を増幅回路により増幅して検出することにより、画像を構成する各画素の情報として、各電荷蓄積容量5に蓄積された電荷量を検出する。
【0031】
このアンプIC105及びゲートIC104A、104Bには、アンプIC105において検出された電気信号に対してノイズ除去などの所定の処理を施すとともに、アンプIC105に対して信号検出のタイミングを示す制御信号を出力し、ゲートIC104A、104Bに対してスキャン信号の出力のタイミングを示す制御信号を出力する信号処理装置106が接続されている。
【0032】
図2には、本実施形態に係る放射線検出素子10の構造を示す平面図が示されており、図3には、図2のA−A線断面図が示されている。
【0033】
図3に示すように、放射線検出素子10は、絶縁性の基板1上に、走査配線101(図2参照。)、蓄積容量下部電極14、及びゲート電極2が形成されている。走査配線101は、画素20の走査配線方向(図2の横方向)に対する各画素列に1本ずつ、画素列の間を画素20を迂回するように蛇行して配設されており、上側の画素列の各画素20に形成されたゲート電極2に接続されると共に、下側の画素列の各画素20に形成された蓄積容量下部電極14に接続されている。この走査配線101、蓄積容量下部電極14、及びゲート電極2が形成された配線層(以下、この配線層を「第1信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜を用いて形成されているが、これらに限定されるものではない。
【0034】
この第1信号配線層上には、一面に絶縁膜15Aが形成されており、ゲート電極2上に位置する部位がTFTスイッチ4におけるゲート絶縁膜として作用する。この絶縁膜15Aは、例えば、SiN等からなっており、例えば、CVD(Chemical Vapor Deposition)成膜により形成される。
【0035】
絶縁膜15A上のゲート電極2上には、半導体活性層8が島状に形成されている。この半導体活性層8は、TFTスイッチ4のチャネル部であり、例えば、アモルファスシリコン膜からなる。
【0036】
これらの上層には、ソース電極9、及びドレイン電極13が形成されている。このソース電極9及びドレイン電極13が形成された配線層には、ソース電極9、ドレイン電極13とともに、信号配線3(図2参照。)が形成され、また、絶縁膜15A上の蓄積容量下部電極14に対応する位置に蓄積容量上部電極16が形成されている。ドレイン電極13は蓄積容量上部電極16に接続されている。信号配線3は、画素20の信号配線方向(図2の縦方向)に対する2つの画素列毎に1本ずつそれぞれ、当該2つの画素列の間を画素20を迂回するように蛇行して配設されており、2つの画素列の各画素20に形成されたソース電極9に接続されている。ソース電極9、ドレイン電極13、信号配線3、及び蓄積容量上部電極16が形成された配線層(以下、この配線層を「第2信号配線層」ともいう。)は、Al若しくはCu、又はAl若しくはCuを主体とした積層膜が用いて形成されるが、これらに限定されるものではない。このソース電極9及びドレイン電極13と半導体活性層8との間には不純物添加アモルファスシリコン等による不純物添加半導体層(不図示)が形成されている。これらによりスイッチング用のTFTスイッチ4が構成される。なお、TFTスイッチ4は後述する下部電極11により収集、蓄積される電荷の極性によってソース電極9とドレイン電極13が逆となる。
【0037】
これら第2信号配線層を覆い、基板1上の画素が設けられた領域のほぼ全面(ほぼ全領域)には、TFT保護膜層15Bが形成されている。このTFT保護膜層15Bは、例えば、SiN等からなっており、例えば、CVD成膜により形成される。
【0038】
このTFT保護膜層15B上には、塗布型の層間絶縁膜12が形成されている。この層間絶縁膜12は、低誘電率(比誘電率ε=2〜4)の感光性の有機材料(例えば、ポジ型感光性アクリル系樹脂:メタクリル酸とグリシジルメタクリレートとの共重合体からなるベースポリマーに、ナフトキノンジアジド系ポジ型感光剤を混合した材料など)により1〜4μmの膜厚で形成されている。
【0039】
本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12によって層間絶縁膜12上層と下層に配置される金属間の容量を低く抑えている。また、一般的にこのような材料は平坦化膜としての機能も有しており、下層の段差が平坦化される効果も有する。本実施の形態に係る放射線検出素子10では、この層間絶縁膜12及びTFT保護膜層15Bの蓄積容量上部電極16と対向する位置にコンタクトホール17が形成されている。
【0040】
層間絶縁膜12上には、各画素20毎に、各々コンタクトホール17を埋めつつ、画素領域を覆うようにセンサ部103の下部電極11が形成されおり、この下部電極11は、非晶質透明導電酸化膜(ITO)からなり、コンタクトホール17を介して蓄積容量上部電極16と接続されている。よって、下部電極11とTFTスイッチ4とは蓄積容量上部電極16を介して電気的に接続されている。
【0041】
下部電極11上の基板1上の画素20が設けられた画素領域のほぼ全面には、半導体層6が一様に形成されている。この半導体層6は、X線などの放射線が照射されることにより、内部に電荷(電子−正孔)を発生するものである。つまり、半導体層6は導電性を有し、X線による画像情報を電荷情報に変換するためのものである。また、半導体層6は、例えば、セレンを主成分とする非晶質のa−Se(アモルファスセレン)からなる。ここで、主成分とは、50%以上の含有率を有するということである。
【0042】
この半導体層6上には、上部電極7が形成されている。この上部電極7は、図示しないバイアス電源に接続されており、バイアス電源からバイアス電圧が供給されている。
【0043】
次に、上記構造の放射線画像撮影装置100の動作原理について説明する。
【0044】
上部電極7と蓄積容量下部電極14との間にバイアス電圧を印加した状態で、半導体層6にX線が照射されると、半導体層6内に電荷(電子−正孔対)が発生する。
【0045】
半導体層6と電荷蓄積容量5とは電気的に直列に接続された構造となっている。このため、半導体層6内に発生した電子は+(プラス)電極側に、正孔は−(マイナス)電極側に移動する。画像検出時には、ゲートIC104A、104Bから全ての走査配線101に対してOFF信号(0V)が出力されて、TFTスイッチ4のゲート電極2に負バイアスが印加される。これにより、各TFTスイッチ4がOFF状態に保持されている。この結果、半導体層6内に発生した電子は下部電極11により収集されて電荷蓄積容量5に蓄積される。
【0046】
画像読出時には、ゲートIC104A、104Bから交互に各走査配線101に対して1本ずつ順にON信号が出力されて、TFTスイッチ4のゲート電極2に走査配線101を介して順次ON信号(+10〜20V)が印加される。これにより、走査配線方向の各画素列の各画素20のTFTスイッチ4が1列ずつ順次ONされ、1列ずつ各画素20の電荷蓄積容量5に蓄積された電荷量に応じた電気信号が信号配線3に流れ出す。なお、本実施の形態では、各走査配線101を上側の画素列の各画素20に形成されたゲート電極2に接続すると共に、下側の画素列の各画素20に形成された蓄積容量下部電極14に接続しているため、ゲートIC104A、104Bから各走査配線101に対して信号配線方向の下側順にON信号を出力させる。これにより、走査配線方向のn列目の画素列の走査配線101に対してON信号を出力して電荷を読み出す際に、n+1列目の画素列の走査配線101に対してOFF信号が出力されているため、電荷蓄積容量5の蓄積容量下部電極14の電位を一定に維持できる。
【0047】
アンプIC105は、各信号配線3に流れた電気信号に基づいて各センサ部103の電荷蓄積容量5に蓄積された電荷量を画像を構成する画素の情報として検出する。これにより、放射線検出素子10に照射されたX線により示される画像を示す画像情報を得ることができる。
【0048】
ここで、本実施の形態に係る放射線検出素子10では、画素20のマトリクス配列を45°傾斜させる共に、信号配線方向の2つの画素列毎に信号配線3を配設している。これにより、マトリクス配列における画素20の画素間隔をPPとした場合、放射線検出素子10の周辺部におけるアンプIC105との接続部での信号配線3の配列ピッチが画素間隔PPの1/sin45°(=√2)倍、すなわち1.41倍に拡大されて1.41PPとなるため、信号配線3とアンプIC105との接続が容易になる。
【0049】
一方、走査配線101は、1.41PPの間隔毎に2本設ける必要があるが、走査配線方向の両側にゲートIC104A、104Bを設けて各走査配線101を交互にゲートIC104A、104Bに接続している。これにより、放射線検出素子10の周辺部におけるゲートIC104A、104Bとの接続部での走査配線101の配列ピッチが1.41PPとなるため、走査配線101とゲートIC104A、104Bとの接続が容易になる。
【0050】
また、本実施の形態によれば、検出領域30の一方向及び交差方向の辺に沿って信号配線3及び走査配線101を配設しているため、検出領域30の中央部分と端部部分で走査配線101及び信号配線3の長さの差や接続される画素20の数の差を小さく抑えることができるため、中央部分と端部部分で走査配線101及び信号配線3の配線負荷のばらつきを小さく抑えることができる。
【0051】
また、本実施の形態に係る放射線検出素子10では、走査配線方向の両側にゲートIC104A、104Bを設け、信号配線方向の一方側にアンプIC105を設けて信号配線方向の他方側に外部回路を接続していない。放射線検出素子10は、このように一辺に外部回路を設けずに撮影を行うことができるため、外部回路を設けていない一辺側において検出領域30を基板1の端部に近づけることができる。マンモグラフィー用途では、検出領域30が基板1の端部の近いほど乳房の付け根に近い部分まで撮影できるため、本実施の形態に係る放射線検出素子10の外部回路を設けていない一辺側を乳房側として用いることにより乳房の付け根に近い部分まで撮影できる。
【0052】
なお、上記実施の形態に係る放射線検出素子10は、1列おきに行方向の画素列の画素20の位置が1/2画素幅分だけ行方向にずれているため、行方向にずらした各画素列の画素20のデータが正常な位置から1/2画素幅分だけずれた位置でのデータとなるが、例えば、信号処理装置106において補間等の画像処理を行うことにより正常な位置でのデータを生成できる。このような画像処理として、例えば、特開2000−244733号公報が挙げられる。
【0053】
なお、上記実施の形態では、画素20のマトリクス配列を45°傾斜させた場合について説明したが、傾斜させる角度θは、45°に限らず、角度θは30°から60°の間の角度であれば何度でもよい。傾斜させる角度θを30°から60°の間の角度とすることにより、放射線検出素子10の周辺部における外部回路との接続部での信号配線3の配列ピッチを2倍〜約1.15倍に拡大することができるため、外部回路との接続を容易にすることが可能となる。
【0054】
また、上記実施の形態では、画素20の一方向(図1の縦方向)に対する2つの画素列毎に1本ずつ信号配線3を配設し、一方向の一端側に各信号配線3に流れ出した電気信号を検出する複数のアンプIC105を設け、画素20の交差方向(図1の横方向)に対する各画素列に1本ずつ走査配線101を配設し、交差方向の両側にゲートIC104A、104Bを設けて各走査配線101を1本ずつ交互にゲートIC104A、104Bに接続した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、信号配線3と走査配線101との構成を逆にして、図4に示すように、画素20の交差方向(図4の横方向)に対する各画素列に1本ずつ信号配線3を配設し、それぞれ画素列の各画素20に備えられたTFTスイッチ4のソース電極9に接続してTFTスイッチ4のスイッチング状態に応じて電荷蓄積容量5に蓄積された電荷が流れるようにすると共に、交差方向の両側にアンプIC105A、IC105Bを設けて各信号配線3を1本ずつ交互にアンプIC105A、IC105Bに接続し、また、画素20の一方向(図4の縦方向)に対する2つの画素列毎に1本ずつ走査配線101を配設し、それぞれ当該2つの画素列の各画素20に備えられたTFTスイッチ4のゲート2に接続すると共に、一方向の一端側にゲートIC104を設けて各走査配線101を接続して、一方向の2つの画素列ずつ画像の読み出しを行うものとてもよい。
【0055】
また、上記実施の形態では、各走査配線101を1本ずつ交互にゲートIC104A、104Bに接続した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、図5に示すように、複数本ずつ(図5では2本ずつ)交互にゲートIC104A、104Bに接続してもよい。このように、複数本ずつゲートIC104Aに接続することにより、1つのゲートICで特定の範囲の読み出しを行うことができ、読み出し範囲をブロックに分けることができる。
【0056】
また、上記実施の形態では、直接変換方式の放射線検出素子10に適用した場合について説明したが、間接変換方式の放射線検出素子10について適用してもよい。
【0057】
また、上記実施の形態では、検出対象とする放射線としてX線を検出することにより画像を検出する放射線画像撮影装置100に本発明を適用した場合について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば、検出対象とする放射線は可視光や紫外線、赤外線等いずれであってもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、放射線検出素子10は各画素20に電荷蓄積容量5を備えた場合について説明したが、例えば、下部電極11が電荷を十分に蓄積できる容量を有する場合、各画素20に電荷蓄積容量5が形成されない場合もある。
【0059】
その他、上記実施の形態で説明した放射線画像撮影装置100の構成、及び放射線検出素子10の構成は一例であり、本発明の主旨を逸脱しない範囲内において適宜変更可能であることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
3 信号配線(第1配線)
4 TFTスイッチ(スイッチ素子)
10 放射線検出素子
20 画素
30 検出領域
101 走査配線(第2配線)
104、104A、104B ゲートIC(外部回路)
105、105A、105B アンプIC(外部回路)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々検出対象とする放射線が照射されることにより発生した電荷を蓄積し、当該蓄積された電荷を読み出すためのスイッチ素子を備え、一方向及び当該一方向に対する交差方向に対して辺が延びた矩形状の検出領域内に前記一方向及び前記交差方向に対して傾斜させたマトリクス状に複数配置された画素と、
前記画素の前記一方向に対する複数の画素列毎に1本ずつ配設されてそれぞれ当該複数の画素列の各画素に備えられたスイッチ素子に接続され、当該スイッチ素子をスイッチングする制御信号又は蓄積された電荷に応じた電気信号の何れか一方が流れる第1配線と、
前記画素の前記交差方向に対する各画素列に1本ずつ配設されてそれぞれ当該画素列の各画素に備えられたスイッチ素子に接続され、前記制御信号又は前記電気信号の他方が流れる第2配線と、
を備えた放射線検出素子。
【請求項2】
前記第1配線は、前記一方向に対する2つの画素列毎に1本ずつそれぞれ配設され、当該2つの画素列の間を前記画素を迂回するように設けられた
請求項1記載の放射線検出素子。
【請求項3】
前記画素は、前記一方向及び前記交差方向に対して30°〜60°傾斜させたマトリクス状に配置された
請求項1又は請求項2記載の放射線検出素子。
【請求項4】
前記画素は、前記一方向及び前記交差方向に対して45°傾斜させたマトリクス状に配置された
請求項3記載の放射線検出素子。
【請求項5】
前記第2配線は、前記検出領域を挟んで前記交差方向の両側に設けられた複数の外部回路の何れかと前記交差方向の一方及び他方の何れかで各々接続された
請求項1〜請求項4の何れか1項記載の放射線検出素子。
【請求項6】
前記第2配線は、1本ずつ交互に前記交差方向の一方及び他方の前記外部回路に接続された
請求項5記載の放射線検出素子。
【請求項7】
前記第2配線は、複数本ずつ交互に前記交差方向の一方及び他方の前記外部回路に接続された
請求項5記載の放射線検出素子。
【請求項8】
前記第1配線は、前記一方向の一方で外部回路に各々接続された
請求項1〜請求項7の何れか1項記載の放射線検出素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−146587(P2011−146587A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7063(P2010−7063)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】