説明

放射線画像取得装置

【課題】異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、しかも、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる放射線画像取得装置を提供する。
【解決手段】本発明の放射線画像取得装置1では、表面検出器3および裏面検出器4によって、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得するデュアルエナジー撮像が実現される。ここで、対象物Aと波長変換板6との間には撮像手段が何ら介在していないため、対象物Aを透過した放射線に与える影響が低減され、低エネルギー帯の放射線が好適に検出される。しかも、表面検出器3および裏面検出器4によって集光されるシンチレーション光はそれぞれ法線B,C方向に対して角度θ,θをなす方向に出射されるため、放射線画像Pa,Pbには同様のあおりが生じ、入射面6a側および裏面6b側の画像間における演算が容易になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像取得装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に記載されるように、X線源から発せられて撮像対象物を透過したX線を平板状のシンチレータに照射し、シンチレータで発光した可視光(シンチレーション光)をシンチレータの両面に積層させた固体光検出器により検出し、各固体光検出器から出力された画像信号を重ね合わせて放射線画像を取得する装置が知られている。この装置では、シンチレータにおけるX線の入射面およびその裏面に光検出素子をカップリングさせており、入射面側の光検出素子と裏面側の光検出素子とのそれぞれにおいて可視光を検出することで、可視光の検出効率を高めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−27866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のようにシンチレータの両面でシンチレーション光を検出する装置では、入射面側とその裏面側とで異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、いわゆるデュアルエナジーの画像取得が可能となる。
【0005】
しかしながら、上述した従来の装置では、対象物を透過した放射線は、入射面側の光検出素子を透過してシンチレータに到達するため、比較的低いエネルギー帯の放射線が入射面側の光検出素子に吸収されてしまう。例えば、対象物が軽い原子から形成される場合、対象物を透過した放射線が入射面側の光検出素子によって吸収されることがある。このように、対象物を透過した放射線が入射面側の光検出素子の影響を受けてしまうという問題がある。
【0006】
そこで本発明は、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、しかも、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる放射線画像取得装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る放射線画像取得装置は、放射線を出射する放射線源と、放射線源から出射され、対象物を透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる平板状の波長変換部材と、波長変換部材の放射線の入射面から入射面の法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第1の撮像手段と、波長変換部材の入射面とは反対側の面から反対側の面の法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第2の撮像手段と、を備えることを特徴とする。
【0008】
本発明に係る放射線画像取得装置によれば、第1の撮像手段および第2の撮像手段によって、波長変換部材の放射線の入射面とその反対側の面とから出射されるシンチレーション光がそれぞれ集光され、撮像される。これにより、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得するデュアルエナジー撮像が実現される。ここで、第1の撮像手段は、入射面から出射されるシンチレーション光を集光するため、波長変換部材から離間した位置に配置される。よって、対象物と波長変換部材との間に撮像手段が介在しない構成とすることができ、撮像手段が対象物を透過した放射線に影響を与えてしまうような事態を回避できる。従って、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる。さらには、第1の撮像手段によって集光されるシンチレーション光は入射面の法線方向に対して傾斜した方向に出射され、第2の撮像手段によって集光されるシンチレーション光は反対側の面の法線方向に対して傾斜した方向に出射されるため、いずれの撮像手段によって撮像される放射線画像にも同様のあおりが生じる。よって、入射面側および反対側の面側の画像間における補正などの演算が容易になる。
【0009】
また、第1の撮像手段および第2の撮像手段のそれぞれは、波長変換部材から出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部と、集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部と、を有すると好適である。この場合、波長変換部材の入射面および反対側の面の各面に焦点が合うように集光することで、エネルギー分別が良好で、明るい放射線画像を取得することができる。
【0010】
ここで、第1の撮像手段および第2の撮像手段は、波長変換部材に対して面対称に配置されると好適である。この場合、第1の撮像手段によって撮像される放射線画像と、第2の撮像手段によって撮像される放射線画像とでは、等しいあおりが生じることとなる。よって、入射面側および反対側の面側の画像間における演算では、画像を反転させて補正するといった演算を要することがなく、より一層演算が容易になる。
【0011】
また、第1の撮像手段によって集光されるシンチレーション光の入射面の法線方向に対する傾斜角度と、第2の撮像手段によって集光されるシンチレーション光の反対側の面の法線方向に対する傾斜角度と、は互いに異なっており、第1の撮像手段によって撮像された画像および第2の撮像手段によって撮像された画像のうち少なくとも一方を補正する補正手段を更に備えると好適である。この場合、第1の撮像手段によって撮像される放射線画像と、第2の撮像手段によって撮像される放射線画像とでは、互いに異なるあおりが生じることとなる。ここで、補正手段によって、少なくとも一方の画像のあおりを補正して両画像のあおり具合を一致させることにより、高精度のデュアルエナジー撮像が実現される。
【0012】
また、対象物は半導体デバイスであり、上記放射線画像取得装置は、当該半導体デバイスを検査対象とする半導体故障検査装置に適用されると好適である。この場合、検査対象となる半導体デバイスを透過した放射線が撮像部(画像取得用の撮像素子)によりカットされることがないため、半導体デバイスの故障などを精度良く検出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得することができ、かつ、対象物を透過した放射線に与える影響を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図2】図1の放射線画像取得装置における投影像の説明図である。
【図3】図1の放射線画像取得装置における画像のあおりの説明図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図5】図4の放射線画像取得装置における投影像のあおりの説明図である。
【図6】本発明の第3実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。
【図7】本発明の変形例である放射線画像取得装置における画像のあおりの説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明を省略する。また、各図面は説明用のために作成されたものであり、説明の対象部位を特に強調するように描かれている。そのため、図面における各部材の寸法比率は、必ずしも実際のものとは一致しない。
【0016】
図1に示すように、放射線画像取得装置1は、半導体デバイス等の電子部品や食料品等といった対象物Aの放射線画像を取得するための装置である。放射線画像取得装置1は、対象物Aに向けて白色X線等の放射線を出射する放射線源2と、放射線源2から出射されて対象物Aを透過した放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる波長変換板6と、波長変換板6の放射線の入射面6aから出射されるシンチレーション光を集光して撮像する表面観察用光検出器3と、入射面6aとは反対側の面である裏面6bから出射されるシンチレーション光を集光して撮像する裏面観察用光検出器4と、を備えている。これらの放射線源2、波長変換板6、表面観察用光検出器3、及び裏面観察用光検出器4は、図示しない筐体に収容され、筐体内で固定される。
【0017】
波長変換板6は、平板状の波長変換部材であり、例えばGd2O2S:Tb、Gd2O2S:Pr、CsI:Tl、CdWO4、CaWO4、Gd2SiO5:Ce、Lu0.4Gd1.6SiO5、Bi4Ge3O12、Lu2SiO5:Ce、Y2SiO5、YAlO3:Ce、Y2O2S:Tb、YTaO4:Tm等のシンチレータである。波長変換板6の厚さは数μm〜数mmの範囲で検出する放射線のエネルギー帯によって適切な値に設定されている。
【0018】
表面観察用光検出器3(以下、「表面検出器3」と称する)は、波長変換板6に投影された対象物Aの投影像(放射線透過像)を波長変換板6の入射面6a側から撮像する間接変換方式の撮像手段である。表面検出器3は、波長変換板6の入射面6aから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部3aと、集光レンズ部3aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部3bと、を有するレンズカップリング型の検出器である。集光レンズ部3aは、表面検出器視野13のシンチレーション光を集光する。撮像部3bとしては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等が用いられる。
【0019】
裏面観察用光検出器4(以下、「裏面検出器4」と称する)は、波長変換板6に投影された対象物Aの投影像(放射線透過像)を波長変換板6の裏面6b側から撮像する間接変換方式の撮像手段である。裏面検出器4は、波長変換板6の裏面6bから出射されるシンチレーション光を集光する集光レンズ部4aと、集光レンズ部4aにより集光されたシンチレーション光を撮像する撮像部4bと、を有するレンズカップリング型の検出器であり、上記の表面検出器3と同様の構成を有している。集光レンズ部4aは、裏面検出器視野14のシンチレーション光を集光する。撮像部4bとしては、例えばCMOSセンサ、CCDセンサ等が用いられる。
【0020】
さらに、放射線画像取得装置1は、表面検出器3および裏面検出器4における撮像タイミングを制御するタイミング制御部7と、表面検出器3および裏面検出器4から出力された画像信号を入力し、入力した各画像信号に基づいて画像処理等の所定の処理を実行する画像処理装置8と、画像処理装置8から出力された画像信号を入力し、放射線画像を表示する表示装置9とを備えている。タイミング制御部7および画像処理装置8は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、及び入出力インターフェイス等を有するコンピュータから構成される。表示装置9としては、公知のディスプレイが用いられる。なお、タイミング制御部7および画像処理装置8は、単一のコンピュータにより実行されるプログラムとして構成してもよいし、個別に設けられるユニットとして構成してもよい。
【0021】
続いて、上記した放射線源2、波長変換板6、表面検出器3、及び裏面検出器4の位置関係について説明する。図1に示すように、放射線源2は、放射線の光軸Xが波長変換板6の入射面6aの法線Bに一致するように配置されている。すなわち、放射線源2は、対象物Aおよび入射面6aに対峙すると共に、入射面6aの法線B上に配置されている。ここで、放射線の光軸Xとは、放射線源2の放射線出射点と波長変換板6の入射面6a上の任意の点γとを結ぶ直線である。本実施形態では、任意の点γが入射面6aの中心点となるように設定されており、この場合、比較的ムラなく放射線が照射される。また、法線Bとは、入射面6a上の任意の点αから延びる入射面6aに対して垂直な直線である。本実施形態では、任意の点αが入射面6aの中心点となるように設定されており、放射線の光軸Xと法線Bとは一致している。もちろん、任意の点γおよび任意の点αは入射面6aの中心点である必要はない。
【0022】
表面検出器3は、波長変換板6の入射面6aから出射されたシンチレーション光を撮像可能なように、内蔵する集光レンズ部3aの光軸Fが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように配置されている。すなわち、表面検出器3は、入射面6aに対峙すると共に、入射面6aの法線Bから外れた位置に配置されている。この集光レンズ部3aは、入射面6aに焦点を合わせ、入射面6aから法線Bに対して角度θをなす方向(傾斜した方向)に出射されたシンチレーション光を撮像部3bに向けて集光する。このような集光レンズ部3aとして、シフトレンズやチルトレンズを用いることもできる。
【0023】
上記のようにして、表面検出器3は、放射線源2の光軸Xから外して配置されている。すなわち、表面検出器3は、放射線源2からの放射線の出射領域(放射線束12が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源2からの放射線による表面検出器3の被曝が防止され、表面検出器3の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。
【0024】
裏面検出器4は、波長変換板6の裏面6bから出射されたシンチレーション光を撮像可能なように、内蔵する集光レンズ部4aの光軸Gが裏面6bの法線Cに対して所定の角度θをなすように配置されている。すなわち、裏面検出器4は、裏面6bに対峙すると共に、裏面6bの法線Cから外れた位置に配置されている。ここで、法線Cとは、裏面6b上の任意の点βから延び、裏面6bに対して垂直な直線である。特に、本実施形態では、任意の点βが裏面6bの中心点に設定されており、入射面6a上の任意の点αと裏面6b上の任意の点βは同一直線上に位置し、この直線は法線Bと法線Cに一致する。集光レンズ部4aは、裏面6b上に焦点を合わせ、裏面6bから法線C方向に対して角度θをなす方向(傾斜した方向)に出射されたシンチレーション光を撮像部4bに向けて集光する。
【0025】
ここで、放射線画像取得装置1にあっては、角度θと角度θとは互いに等しくなっている。また、放射線源2の光軸X、表面検出器3の光軸F、及び裏面検出器4の光軸Gは、同一平面上に位置しており、表面検出器3の光軸Fと裏面検出器4の光軸Gとは法線B,Cを基準として同じ側に位置している。また、波長変換板6の入射面6aから表面検出器3までの光路長と、波長変換板6の裏面6bから裏面検出器4までの光路長とは、等しいことが好ましい。また、表面検出器3および裏面検出器4は、波長変換板6に対して面対称に配置されることが好ましい。
【0026】
続いて、上記の構成を有する放射線画像取得装置1の動作について説明する。まず、表面検出器3および裏面検出器4による撮像が同時に行われるよう、タイミング制御部7による制御が行われる。タイミング制御部7の撮像タイミング制御により、対象物Aの放射線透過像を異なるエネルギー帯で画像化することができる。詳述すると、表面検出器3によって比較的低いエネルギー帯の放射線透過像が画像化され、また、裏面検出器4によって比較的高いエネルギー帯の放射線透過像が画像化される。これにより、デュアルエナジー撮像が実現される。なお、放射線画像取得装置1では、表面検出器3と裏面検出器4との撮像タイミングをそれぞれ異なるように制御することが可能である。また、表面検出器3と裏面検出器4とのそれぞれにおける露光時間や撮影枚数が異なるように制御してもよい。
【0027】
表面検出器3および裏面検出器4の機能に関し、換言すると、表面検出器3によって、比較的入射面6a側で変換された蛍光(シンチレーション光)が検出される。入射面6a側で変換された蛍光の検出は、蛍光のボケが少なく、また、蛍光の輝度が高いといった特長を有する。これは、表面観察においては、波長変換板6の内部における拡散や自己吸収の影響を低減できるためである。一方、裏面検出器4では、波長変換板6の比較的裏面6b側で変換された蛍光が検出される。この場合も、波長変換板6の内部における拡散や自己吸収の影響を低減できる。
【0028】
次に、表面検出器3および裏面検出器4のそれぞれによって、表裏両面の放射線画像に対応する画像信号が画像処理装置8に出力される。表面検出器3および裏面検出器4のそれぞれから出力された画像信号が画像処理装置8に入力されると、画像処理装置8によって、入力した画像信号に基づいて差分演算や加算演算といった画像間演算などの所定の処理が実行され、画像処理後の画像信号が表示装置9に出力される。そして、画像処理装置8から出力された画像処理後の画像信号が表示装置9に入力されると、表示装置9によって、入力した画像処理後の画像信号に応じた放射線画像が表示される。
【0029】
図2(a)は、放射線画像取得装置1における放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す斜視図、図2(b)は、放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す正面図、図2(c)は、波長変換板6に投影される対象物Aの投影像Dを示す平面図である。図2では、理解を容易にするために、対象物Aが立方体形状である場合について示している。図2(a)に示すように、放射線源2が入射面6aの法線B上に配置され、放射線の光軸Xが入射面6aの法線Bに一致していると、図2(c)に示すように、入射面6a上への投影像Dにはあおり(パース)が生じない。
【0030】
図3(a)は、放射線画像取得装置1において入射面6a上に投影された投影像Dを示す平面図、図3(b)は、表面検出器3、裏面検出器4、及び波長変換板6の位置関係を示す斜視図、図3(c)は、表面検出器3によって取得されて画像処理装置8に入力される表面側画像Paを示す図、図3(d)は、裏面検出器4によって取得されて画像処理装置8に入力される裏面側画像Pbを示す図である。
【0031】
ここでは、投影像Dの一部が特徴部d(図3の例では、対象物Aの側面に対応する着色された部分)になっている場合について説明する。図3(b)に示すように、表面検出器3の光軸Gおよび裏面検出器4の光軸Fが法線B,Cに対して等しい角度θ,θをなしていると、図3(c),(d)に示すように、表面側画像Pa,Pbには同様のあおり(パース)が生じることとなる。すなわち、表面側画像Paに含まれる表面側波長変換板画像20a、表面側対象物画像Ha、及び表面側特徴部画像haは、裏面側画像Pbに含まれる裏面側波長変換板画像20b、裏面側対象物画像Hb、及び裏面側特徴部画像hbと略等しい位置、大きさ、及び形状になっている。また、表面側画像Paおよび裏面側画像Pbでは、特徴部dが他の部分に比して縮小されたようなあおりが生じており、対象物Aに関してあおりの生じる向きも一致している。そして、これらは互いに反転された像になっている。
【0032】
この場合、画像処理装置8による画像間演算では、表面側画像Paおよび裏面側画像Pbのあおり補正を行うことなく表裏両面の画像Pa,Pbがマッチングされる。なお、画像処理装置8による画像間演算において、表面側画像Paおよび裏面側画像Pbの両方のあおりを補正し、あおりの無い表面側画像および裏面側画像を得ることもできる。この場合、あおりの補正量は、表面側画像Paおよび裏面側画像Pbで等しくなる。
【0033】
以上説明した本実施形態の放射線画像取得装置1によれば、表面検出器3および裏面検出器4によって、波長変換板6の入射面6aと裏面6bとから出射されるシンチレーション光がそれぞれ集光され、撮像され、異なるエネルギー帯の放射線画像を取得するデュアルエナジー撮像が実現される。ここで、表面検出器3は、波長変換板6から離間した位置に配置されており、対象物Aと波長変換板6との間には検出器が何ら介在していない。よって、撮像手段が対象物Aを透過した放射線に影響を与えてしまうような事態が回避される。従って、対象物Aを透過した放射線に与える影響が低減され、低エネルギー帯の放射線が好適に検出される。換言すれば、放射線透過像に検出器の影が映り込まないため、ノイズ成分の発生が抑制されると共に、検出器による放射線の減衰も生じないため、信号成分の減少が抑制される。その結果として、デュアルエナジー撮像における低エネルギー帯と高エネルギー帯との差を大きくでき、高度なエネルギー分解能が発揮され、高コントラスト化を図ることができる。この利点は、対象物Aがシリコンもしくはシリコンより軽い原子から形成される場合、特に顕著に発揮される。すなわち、対象物Aが軽い原子から形成される場合であっても、対象物Aを透過した低エネルギー帯の放射線が吸収されたり減衰したりすることなくシンチレーション光に変換され、この光が表面検出器3によって撮像されるため、低エネルギー帯の放射線画像を精度良く取得することができる。さらにまた、一回の撮像で低エネルギー画像と高エネルギー画像を同時に取得でき、同時性の確保、被爆量の低減、及び画素ずれ(ミスレジストレーション)の解消が図られる。また、1枚の波長変換板6でもデュアルエナジー化が実現される。しかも、表面検出器3によって集光されるシンチレーション光は入射面6aの法線B方向に対して角度θをなす方向に出射され、裏面検出器4によって集光されるシンチレーション光は裏面6bの法線C方向に対して角度θをなす方向に出射されるため、放射線画像Pa,Pbには同様のあおりが生じ、これによって入射面6a側および裏面6b側の画像間における演算が容易になっている。さらには、表面検出器3や裏面検出器4を法線B,C上に配置する場合に比して、装置全体のコンパクト化が図られている。
【0034】
また、放射線として白色X線を用いる場合でも、白色X線の一回の撮像で低エネルギー画像と高エネルギー画像を同時に取得でき、同時性の確保、被爆量の低減、及び画素ずれ(ミスレジストレーション)の解消が図られる。
【0035】
また、波長変換板6の入射面6aおよび裏面6bの各面に焦点が合うように、集光レンズ部3aおよび集光レンズ部4aによって集光することで、エネルギー分別が良好で、明るい放射線画像を取得できる。
【0036】
また、表面検出器3と裏面検出器4とが波長変換板6に対して面対称に配置されているため、表面側画像Paと裏面側画像Pbとでは等しいあおりが生じ、しかも対象物Aに関してあおりの生じる向きも一致している。よって、表面側画像Paおよび裏面側画像Pbの画像間における演算では、画像を反転させて補正するといった演算を要することがなく、より一層演算が容易になっている。
【0037】
図4は、第2実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。図4に示す放射線画像取得装置1Aが図1に示した第1実施形態の放射線画像取得装置1と異なる点は、放射線の光軸Xが波長変換板6の入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなすように、放射線源2が配置されている点である。より具体的には、放射線源2は、放射線の光軸Xと集光レンズ部3a,4aの光軸F,Gとが同一平面上に位置するように、且つ法線B,Cを基準として互いに反対側に位置するように配置されている。なお、ここで、任意の点γおよび任意の点αは入射面6aの中心点である必要はなく、同一の点である必要もない。また、図4においては、タイミング制御部7、画像処理装置8、及び表示装置9の図示は省略されている。図6においても、同様に、これらの構成の図示は省略されている。
【0038】
放射線画像取得装置1Aにおいても、表面検出器3は、放射線源2からの放射線の出射領域(放射線束12が存在する領域)から離れるように配置されている。これにより、放射線源2からの放射線による表面検出器3の被曝が防止され、表面検出器3の内部で放射線の直接変換信号が生じてノイズが発生することが防止されている。
【0039】
図5(a)は、放射線画像取得装置1Bにおける放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す斜視図、図5(b)は、放射線源2、対象物A、及び波長変換板6の位置関係を示す正面図、図5(c)は、波長変換板6に投影される対象物Aの投影像Eを示す平面図である。図5では、理解を容易にするために、対象物Aが立方体形状である場合について示している。図5(a)に示すように、放射線源2が入射面6aの法線Bから外れた位置に配置され、放射線の光軸Xが入射面6aの法線Bに対して所定の角度θをなしていると、図5(c)に示すように、入射面6a上への投影像Eにはあおり(パース)が生じることとなる。この投影像Eのあおりは、画像処理装置8によって、必要に応じて補正される。なお図5(a)では、説明の便宜上、放射線源2の本体が光軸Xに対して平行となるよう図示されているが、放射線源2が配置される向きは、装置のレイアウトに応じて適宜設定することができる。
【0040】
放射線画像取得装置1Aによれば、放射線画像取得装置1と同様の作用効果が奏される。
【0041】
図6は、第3実施形態に係る放射線画像取得装置の正面図である。図6に示す放射線画像取得装置1Bが図4に示した第2実施形態の放射線画像取得装置1Aと異なる点は、裏面検出器4が、波長変換板6に対して表面検出器3と面対称に配置されておらず、光軸Fと光軸Gとが法線B,Cを基準として互いに反対側に位置している点である。すなわち、裏面検出器4は、集光レンズ部4aの光軸Gと放射線源2の光軸Xとが法線B,Cを基準として同じ側に位置するように配置されている。
【0042】
放射線画像取得装置1Bでは、表面検出器3によって取得される表面側画像と、裏面検出器4によって取得される裏面側画像とでそれぞれ異なるあおりが生じる。よって、画像処理装置8による画像間演算では、表面側画像および裏面側画像のあおり補正が行われる。
【0043】
放射線画像取得装置1Bによれば、放射線画像取得装置1,1Aと同様にして、対象物Aを透過した放射線に与える影響が低減され、低エネルギー帯の放射線が好適に検出される。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではない。例えば、上記実施形態では、角度θと角度θとが等しい場合について説明したが、図7(b)に示すように、角度θと角度θとが互いに異なっていてもよい。この場合、図7(c),(d)に示すように、表面側画像Paと裏面側画像Pbとにおいてあおりの量が異なるが、画像処理装置8が補正手段として機能し、表面側画像Paおよび裏面側画像Pbの少なくとも一方のあおりが補正されて両画像のあおり量を一致させることにより、高精度のデュアルエナジー撮像が実現される。例えば、図7に示すように、傾斜角度のより大きい表面検出器3によって撮像された表面側画像Paの方が裏面側画像Pbよりもあおり量が大きくなるが、この場合、表面側画像Paを補正して裏面側画像Pbに一致した表面側画像を得ることができる。なお、表面側画像Paおよび裏面側画像Pbの両方のあおりを補正し、あおりの無い表面側画像および裏面側画像を得ることもできる。
【0045】
また、放射線源2、表面検出器3、及び裏面検出器4は、光軸X、光軸F、及び光軸Gが同一平面状に配置される場合に限られず、法線B,C方向の軸線周りにおいて適宜3次元的に配置することができる。
【0046】
また、上記実施形態では、検出器としてレンズカップリング型の検出器を用いたが、集光レンズ部と撮像部とをそれぞれ別体として備えてもよい。
【0047】
また、対象物Aを半導体デバイスとし、その半導体デバイスを検査対象とする半導体故障検査装置として上記実施形態の放射線画像取得装置を適用すると有効である。この場合、検査対象となる半導体デバイスを透過した放射線が撮像部(画像取得用の撮像素子)によりカットされることがないため、半導体デバイスの故障などを精度良く検出することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,1A,1B…放射線画像取得装置、2…放射線源、3…表面観察用光検出器(第1の撮像手段)、3a…集光レンズ部、3b…撮像部、4…裏面観察用光検出器(第2の撮像手段)、4a…集光レンズ部、4b…撮像部、6…波長変換板(波長変換部材)、6a…入射面、6b…裏面(反対側の面)、8…画像処理装置(補正手段)、A…対象物、B…入射面の法線、C…裏面の法線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線を出射する放射線源と、
前記放射線源から出射され、対象物を透過した前記放射線の入射に応じてシンチレーション光を発生させる平板状の波長変換部材と、
前記波長変換部材の前記放射線の入射面から前記入射面の法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第1の撮像手段と、
前記波長変換部材の前記入射面とは反対側の面から前記反対側の面の法線方向に対して傾斜した方向に出射されるシンチレーション光を集光して撮像する第2の撮像手段と、
を備えることを特徴とする放射線画像取得装置。
【請求項2】
前記第1の撮像手段および前記第2の撮像手段のそれぞれは、
前記波長変換部材から出射される前記シンチレーション光を集光する集光レンズ部と、
集光された前記シンチレーション光を撮像する撮像部と、
を有することを特徴とする請求項1記載の放射線画像取得装置。
【請求項3】
前記第1の撮像手段および前記第2の撮像手段は、前記波長変換部材に対して面対称に配置される
ことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線画像取得装置。
【請求項4】
前記第1の撮像手段によって集光されるシンチレーション光の前記入射面の法線方向に対する傾斜角度と、前記第2の撮像手段によって集光されるシンチレーション光の前記反対側の面の法線方向に対する傾斜角度と、は互いに異なっており、
前記第1の撮像手段によって撮像された画像および前記第2の撮像手段によって撮像された画像のうち少なくとも一方を補正する補正手段を更に備える
ことを特徴とする請求項1又は2記載の放射線画像取得装置。
【請求項5】
前記対象物は半導体デバイスであり、
当該半導体デバイスを検査対象とする半導体故障検査装置に適用される
ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線画像取得装置。

【図1】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図3】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154735(P2012−154735A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−13201(P2011−13201)
【出願日】平成23年1月25日(2011.1.25)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】