説明

放射線画像撮影装置および放射線画像撮影方法

【課題】衝立を用いて立位で撮影する場合における衝立の傾き、衝立の位置のずれの調整が可能な放射線画像撮影装置および放射線画像撮影方法を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置は、被写体を所定に位置に立たせるための衝立と、衝立に対して被検体が立つ側の反対側に設置された放射線検出器と、放射線検出器を支持する立位スタンドと、衝立に対して放射線検出器の反対側に設置され、放射線検出器に向けて放射線を照射する放射線源と、放射線源を支持する支持台と、衝立の傾きを測定する傾き検出手段と、衝立の傾きを調整する調整手段と、傾き検出手段で得られた衝立の傾き量に基づいて調整手段により衝立の傾きを調整させる制御部とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検者、患者等の被検体を、衝立を用いて立位で撮影する放射線画像撮影装置および放射線画像撮影方法に関し、特に、衝立を用いて立位で撮影する場合における衝立の傾き、衝立の位置のずれの調整が可能な放射線画像撮影装置および放射線画像撮影方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、放射線画像撮影装置は、例えば、医療用の診断画像や工業用の非破壊検査などを含む各種の分野で利用されている。放射線画像撮影装置において、被写体を透過した放射線(X線、α線、β線、γ線、電子線、紫外線等)を検出する放射線検出器としては、放射線を電気信号に変換するフラットパネル型検出器(FPD(Flat Panel Detector))を用いるものがある。
FPDを用いた放射線画像撮影装置では、放射線源から放射線を被写体に照射し、被写体を透過した放射線をFPDで電気信号に変換し、FPDから被写体の画像データに相当する電気信号を読み出して放射線画像を生成する。
【0003】
FPDには、例えば、放射線の入射によってアモルファスセレンなどの光導電膜が発した電子−正孔対(e−hペア)を収集して電化信号として読み出す、いわば放射線を直接的に電気信号に変換する直接方式と、放射線の入射によって発光(蛍光)する蛍光体で形成された蛍光体層(シンチレータ層)を有し、この蛍光体層によって放射線を可視光に変換し、この可視光を光電変換素子で読み出す、いわば放射線を可視光として電気信号に変換する間接方式との、2つの方式がある。
現在、一般的なFPDは、43×43cm程度の大きさしかない。そのため、脊椎の全域(全脊椎)や下肢の全域(全下肢)の放射線画像の撮影等の長尺な領域の放射線画像の撮影を1回の撮影で行うことができない。
【0004】
このようなFPD(フラットパネル型検出器)を用いて、脊椎の全域(全脊椎)や下肢の全域(全下肢)の長尺な領域の放射線画像の撮影を行う従来の放射線画像撮影装置では、長尺撮影行うときに患者と立位スタンドに支持されたFPDの間に安全保護と撮影範囲を踵まで撮影できるように衝立を設置する。その衝立により患者が所定の位置に立位の状態とされて、FPDを上から順に移動させながら撮影し、撮影した複数の画像を繋げて長尺画像に合成している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−240681号公報
【特許文献2】特開2004−0568号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように、衝立を設置してFPDを移動させて長尺撮影して長尺画像を得ている。長尺画像は関心領域の距離を測定する等して診断に利用される。このため、実寸法と画像寸法の誤差が大きいと誤診に繋がる。例えば、放射線室の床が平坦ではなく凸凹している場合、衝立が傾いたり、衝立がFPDに対して所定の位置からずれることがある。このため、衝立を用いて患者を所定の位置に立たせた場合、患者とFPDとの距離がずれたり、FPDに対して患者の体軸が傾くことがある。このようなことから、衝立と立位スタンドの位置精度を上げることが必要である。そこで、例えば、特許文献2のX線撮影装置のように、被写体のブレを検出して、得られた画像を補正するものがある。
しかしながら、長尺撮影をするために衝立を設置した放射線画像撮影装置において、患者を所定の位置に立たせるための衝立と、立位スタンドの位置精度を上げるものがないのが現状である。
【0007】
本発明の目的は、前記従来技術に基づく問題点を解消し、衝立を用いて立位で撮影する場合における衝立の傾き、衝立の位置のずれの調整が可能な放射線画像撮影装置および放射線画像撮影方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の第1の態様は、被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置であって、前記放射線画像を得るための放射線を検出する放射線検出器と、前記放射線検出器に向けて前記放射線を照射する放射線源と、前記放射線検出器に隣接して設けられ、前記放射線検出器に対して所定の位置に前記被写体を配置させるための衝立と、前記衝立と前記放射線源との距離を測定する距離測定手段と、前記衝立の傾きを測定する傾き検出手段と、前記衝立の傾きを調整する調整手段と、前記傾き検出手段で得られた前記衝立の傾きに基づいて前記調整手段により前記衝立の傾きを調整させる制御部とを有することを特徴とする放射線画像撮影装置を提供するものである。
【0009】
前記放射線検出器を前記被写体の長手方向に移動させる検出器移動手段を有し、前記検出器移動手段により前記放射線検出器を前記被写体の長手方向に移動させ、前記放射線源から放射線を前記被写体に照射して前記被写体を前記長手方向に分割して撮影して得られた複数の画像を合成して長尺な放射線画像を作成する画像処理部を有することが好ましい。
この場合、前記被写体を長手方向に分割して撮影する際、連続した2つの撮影位置を部分的に重複させており、前記画像処理部は、前記重複部分を一致させて長尺な放射線画像を作成することが好ましい。
【0010】
また、本発明の第2の態様は、前記放射線検出器と、放射線検出器に対して所定の位置に被写体を配置させるための衝立と、前記放射線検出器に向けて放射線を照射する放射線源とを用いて前記被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影方法であって、前記衝立の傾きを測定する工程と、前記衝立の傾きに基づいて前記衝立の傾きを調整する工程と、前記衝立の傾き調整後に、前記被写体の放射線画像を撮影する工程とを有することを特徴とする放射線画像撮影方法を提供するものである。
【0011】
前記被写体の放射線画像を撮影する工程は、前記放射線検出器を前記被写体の長手方向に移動させ、前記放射線源から放射線を前記被写体に照射して前記被写体を前記長手方向に分割して撮影する工程であり、さらに、前記被写体を長手方向に分割して撮影して得られた複数の画像を合成して長尺な放射線画像を作成する工程とを有することが好ましい。
この場合、前記被写体を前記長手方向に分割して撮影する際、連続した2つの撮影位置を部分的に重複させて前記被写体を前記長手方向に分割して撮影し、前記重複部分を一致させて前記長尺な放射線画像を作成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衝立を用いて立位で撮影する場合における衝立の傾き、衝立の位置のずれの調整をすることが可能であるため、台形歪み等がなく、実際の寸法に対して誤差が小さい被写体の画像を得ることができる。このため、複数の画像を合成して得られる被写体の長尺な放射線画像についても、台形歪み等がなく、実際の寸法に対して誤差を小さくすることができる。このようなことから、診断精度を向上させることもできる。
なお、衝立と放射線源との距離を測定することにより拡大率のずれも補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態の放射線画像撮影装置を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施形態の放射線画像撮影装置の衝立部の要部を示す模式的斜視図である。
【図3】本発明の第1の実施形態の放射線画像撮影装置で得られる長尺画像を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施形態の放射線画像撮影装置による長尺画像の撮影方法を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2の実施形態の放射線画像撮影装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影方法を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の放射線画像撮影装置を示す模式図であり、図2は、本発明の第1の実施形態の放射線画像撮影装置の衝立部の要部を示す模式斜視図である。
【0015】
図1に示すように、放射線画像撮影装置10(以下、撮影装置10ともいう)は、撮影部12と、撮影指示部14と、制御部16と、撮影データ処理部18と、画像処理部20と、出力部22と、表示部24とを有する。
【0016】
撮影指示部14は、撮影メニュー、撮影条件および撮影モード等を設定し、被写体Pの撮影を指示するものである。撮影指示部14には、撮影メニュー、撮影条件および撮影モードを設定するための入力キー(図示せず)および撮影の指示手段(図示せず)が設けられている。
撮影の指示手段としては、例えば、2段押し型の撮影ボタンが用いられる。撮影ボタンは、1段目まで押されると(半押しされると)撮影の準備状態となり、2段目まで押されると(全押しされると)撮影が開始される。撮影指示部14は、ディスプレイ表示、または音声出力によって、撮影ボタンが押下されていない状態、1段目まで押下された状態および2段目まで押下された状態を表す撮影情報を出力する。
【0017】
また、撮影装置10には、例えば、撮影モードとして、後述する放射線源44の放射線の強度および照射時間(照射量)等の撮影条件を手動で設定する手動モード、予め放射線の強度、照射時間などの撮影条件が設定されている自動モード、および長尺画像を撮影するための長尺撮影を行う長尺モードの3つの撮影モードが設けられている。
【0018】
前述のように、後述する放射線源44の、通常の放射線検出器62の撮像面62aは、42×42cm程度の大きさである。長尺撮影とは、脊椎の全域(全脊椎)や下肢の全域(全下肢)など、放射線検出器62の撮像面62aよりも大きく長尺な領域の放射線画像を撮影するために、撮影領域を被写体Pの体軸方向(長手方向)に移動して、連続的に複数回の曝射を行う撮影方法である。
例えば、長尺撮影では、撮影領域および放射線検出器62の撮像面62aのサイズから、撮影回数や撮影位置を決定し、決定した撮影位置に応じて、放射線検出器62および放射線の照射野(放射線源44の位置)を体軸方向に移動して、連続的に決定した複数回の曝射(撮影)を行う。長尺撮影では、このようにして得られた1回の曝射による放射線画像を複数合成することにより、全脊椎や全下肢などの長尺な領域の放射線画像を得る。
以下、便宜的に、長尺撮影における1回の曝射による画像(放射線検出器62により得られる1回の放射線画像)を短尺画像、1回の曝射で被写体の全域の撮影を終了する通常の放射線画像の撮影を一般撮影とする。なお、手動モードと自動モードは、一般撮影を行うモードである。
本実施形態においては、長尺画像は、例えば、3回の曝射により得られるものであり、図3に示す長尺画像70のように、3つの短尺画像72〜76で構成される。
【0019】
撮影装置10では、撮影に先立ち、適正な画像が得られるように衝立の傾きを調整する。このような撮影装置10の撮影方法については後に詳述する。
【0020】
撮影装置10において、長尺モードでは、放射線技師が撮影ボタンを2段目まで押下している状態では、連続的な短尺画像の撮影を継続、すなわち、放射線検出器62および放射線照射野の移動、ならびに所定間隔での曝射を継続し、この2段目までの撮影ボタンの押下が開放、すなわち、撮影指示が解消された時点で、短尺画像の撮影、すなわち長尺撮影を終了する。このような構成を有することにより、例えば、被写体Pが不意に動いてしまったなど、適正な撮影ができないと放射線技師が判断した際に、迅速に、長尺撮影を停止することができる。
しかしながら、本発明は、これに限定はされず、予め、撮影回数や撮影領域の位置/サイズなどを設定入力しておき、撮影開始の指示に応じて、自動的に、所定枚数の短尺画像の撮影を行うようにしてもよい。
【0021】
図1に示す制御部16は、撮影指示部14から供給された撮影の指示信号等に応じて、撮影装置10の各部位の動作を制御する部位である。
制御部16は、例えば、設定された撮影メニュー、撮影条件および撮影モードで撮影が行なわれるように撮影部12を制御する。また、所定のタイミングで、放射線検出器62から前の放射線画像の残像データを読み出すように撮影データ処理部18を制御する。また、制御部16は、撮影された放射線画像データに対して所定の画像処理を行うように、画像処理部20を制御する。
さらには、制御部16は、画像処理部20から出力部22、表示部24に長尺画像等の各種の画像データを出力するとともに、出力部22から長尺画像等の各種の画像のハードコピーを出力させる。また、表示部24に長尺画像等の各種の画像を表示させる。
【0022】
撮影部12は、照射部30と、衝立部32と、放射線検出部34とを有する。
衝立部32は、放射線検出部34に隣接して設けられている。照射部30は、衝立部32を挟んで放射線検出部34に対向して設けられている。すなわち、照射部30は、衝立部32に対して放射線検出部34の反対側に設けられている。
撮影部12において、照射部30の後述する放射線源44と、放射線検出部34の放射線検出器62の撮像面62aとは距離Lに設定されている。
【0023】
照射部30は、放射線を、放射線検出部34の後述する放射線検出器62に向けて照射するものであり、照射部30から放射線が被写体Pに照射されて、衝立部32に立っている被写体Pを透過した放射線が放射線検出部34で検出される。
この照射部30は、ガイドレール42と、放射線源44と、距離測定手段45と、線源移動機構46とを有する。
【0024】
放射線源44は、放射線を被写体P、放射線検出器62に向けて照射するためのものであり、放射線画像撮影装置に利用される通常の放射線源が用いられる。このため、放射線源44は、例えば、X線管球(図示せず)、X線可動絞り(コリメータ)(図示せず)、照射野ランプ(図示せず)およびミラー(図示せず)等を備える。
【0025】
また、放射線源44には、距離測定手段45が設けられている。この距離測定手段45は、後述する衝立部32の衝立50までの距離を測定するものである。この距離測定手段45で得られた距離は、制御部16に出力される。制御部16においては、距離測定手段45と放射線源44の放射位置(X線管球の位置)との距離が予め記憶されているため、放射線源44の放射位置(X線管球の位置)から後述する衝立部32の衝立50までの距離Lが得られる。距離測定手段45には、非接触タイプのものが用いられ、例えば、超音波距離計、レーザ測長器等が用いられる。
なお、衝立50までの距離Lは、放射線源44から放射線検出器62の撮像面62aの距離Lとともに拡大率(=L/L)の算出に用いられる。この拡大率は、制御部16で算出された後、画像処理部20に出力されて画像処理に用いられる。
【0026】
また、放射線源44は、ガイドレール42に支持されている。ガイドレール42は、後述する衝立部32に立っている被写体P(被検者)の体軸方向に対応する、所定の一方向、本実施形態では、床Bに垂直な方向(Y方向)に延在して配置され、この垂直な方向に移動自在に放射線源44を支持するものである。このガイドレール42は基台48により、垂直な方向(Y方向)に立設されている。
【0027】
線源移動機構46は、このガイドレール42に沿って放射線源44を移動させるものである。線源移動機構46により、ガイドレール42に沿って放射線源44を移動させて、その高さHを変え、複数の照射位置にすることができるとともに、所定の放射線源44を所定の高さHに固定することができる。これにより、放射線の照射野を被写体Pの体軸方向に沿って変更することができる。また、線源移動機構46により放射線源44の床Bからの高さHの情報も得ることができる。この高さHの情報は、制御部16に出力される。
なお、線源移動機構46は、特に限定されるものではなく、ラックアンドピニオン等の歯車伝動機構、ねじ伝動機構、ボールねじ伝動機構、プーリ等を用いる巻き掛け伝動機構、エアシリンダやオイルシリンダなどのシリンダを用いる方法等、長尺撮影を行う放射線画像撮影装置に利用される移動手段が、全て利用可能である。
【0028】
衝立部32は、衝立50と、基台52と、傾き検出部(傾き検出手段)54と、駆動部56とを有する。この衝立部32は、放射線源44の光軸C方向における被写体Pの撮影位置を決定するためのものである。
【0029】
衝立50は、放射線検出器62に対して所定の位置に被写体Pを配置させるためのものであり、基台52により、床Bに対して立設される放射線透過性の板状部材である。この衝立50は、衝立50と基台52との接続部αを支点として傾斜することができるが、衝立50は、負荷がかからない状態では、基台52の上面52aに対して垂直に立設している。
この衝立50は、放射線源44、すなわち被写体Pと対面する面50aが、後述する放射線検出器62の撮像面62aと平行となるように調整されるものである。
【0030】
基台52は、上面52aに衝立50が設けられるとともに、被写体Pが載る台として機能するものである。また、基台52の下部にタイヤ53が設けられており、これにより、衝立部32を移動させることができる。また、例えば、衝立部32の位置決めをするための位置決め部材58が床Bに設けられている。この位置決め部材58に基台52を当接させることにより、衝立部32を所定の位置に設置することができる。
また、位置決め部材58により、衝立50と放射線検出器62の撮像面62aとの距離ΔLを概ね所定の距離にすることができる。
【0031】
傾き検出部54は、衝立50の傾きθを検出するものであり、例えば、衝立50の上部に設けられている。衝立50の傾きθとは、衝立50の上端部の水平方向の移動量により生じる角度のことである。例えば、衝立50が放射線検出器62側に移動している場合を正の角度とし、逆に、衝立50が放射線源44側に移動している場合を負の角度とする。
なお、衝立50の傾き検出部54は、衝立50の傾きθを検出することができれば、特に限定されるものではなく、例えば、傾斜センサ、重力センサが用いられる。
また、本実施形態において、衝立50の傾きθの許容範囲は、例えば、衝立50の上端部の水平方向の移動量が1200mmに対して8mmである。すなわち、許容される傾きθはθ=tan−1(8/1200)である。
【0032】
駆動部56は、衝立50が傾いていた場合、この衝立50の傾きを調整するためのものであり、例えば、衝立50の下部に設けられている。この駆動部56は、図2に示すように、基台52の表面52a上の各端に設けられた扇型のフレーム56aと、各フレーム56aの円弧の端部と衝立50とが接する位置に設けられたアクチュエータ56bとを有するものである。このアクチュエータ56bは、例えば、部材が突出または後退することにより衝立50を水平方向に移動させるものである。
アクチュエータ56bとしては、衝立50を水平方向に移動させることができれば、その構成は、特に限定されるものではない。
【0033】
本実施形態においては、傾き検出部54を用いて衝立50の傾き計測し、この傾きθが制御部16に出力される。制御部16において、衝立50の傾きθが許容範囲内にあるが判定される。制御部16において、許容範囲を超えると判定された場合、制御部16により、衝立50の傾きθが許容範囲内となるアクチュエータ56bの部材の突出量または後退量が求められる。この突出量または後退量は、衝立50の傾きθから、衝立50の水平方向の移動量を求めることにより得られる。そして、求められた突出量または後退量で部材を移動させる信号を制御部16で作成し、この信号をアクチュエータ56bに出力して、アクチュエータ56bの部材を突出または後退させる。これにより、衝立50の傾きθを許容範囲にすることができる。
【0034】
放射線検出部34は、被写体Pを通過した放射線を検出し、放射線画像を得るためのものであり、立位スタンド60と、放射線検出器62と、検出器移動機構(検出器移動手段)64とを有する。
【0035】
放射線検出器62は、例えば、FPDにより構成される。この放射線検出器62は、被写体Pを透過した放射線を検出して電気信号(放射線画像データ)に変換して、被写体Pが撮影された放射線画像のデータ(アナログデータ)を出力する公知の放射線(画像)の検出器である。放射線検出器62は、放射線を電荷に直接変換する直接方式のFPD、または放射線を一旦光に変換し、変換された光をさらに電気信号に変換する間接方式のFPDのいずれも利用可能である。
【0036】
ここで、直接方式のFPDは、アモルファスセレン等の光導電膜、キャパシタ、スイッチ素子としてのTFT等によって構成される。直接方式のFPDは、例えば、X線等の放射線が入射されると、光導電膜から電子−正孔対(e−hペア)が発せられる。その電子−正孔対はキャパシタに蓄積され、キャパシタに蓄積された電荷が、TFTを介して電気信号として読み出される。
【0037】
一方、間接方式のFPDは、蛍光体で形成されたシンチレータ層、フォトダイオード、キャパシタ、TFT等によって構成される。シンチレータ層は、例えば、「CsI:Tl」等の放射線の入射によって発光(蛍光)する蛍光体で形成される。間接方式のFPDは、放射線の入射によるシンチレータ層の発光を、フォトダイオードで光電変換して、キャパシタに蓄積し、キャパシタに蓄積された電荷が、TFTを介して電気信号として読み出される。
【0038】
立位スタンド60は、放射線検出器62を床Bに対して垂直な方向、すなわち、放射線源44の移動方向と同じY方向に移動自在に支持するものである。この立位スタンド60は、例えば、放射線源44を支持するガイドレール42と同じく垂直な方向(Y方向)に延在するガイドレール(図示せず)、およびこのガイドレールに、Y方向に移動自在に係合して放射線検出器62を固定する係合部材(図示せず)等を備えるものである。
【0039】
検出器移動機構64は、放射線検出器62を、放射線源44と同じくY方向に移動させるとともに、放射線検出器62を複数の撮影位置に位置決めし、停止させることができるものである。
検出器移動機構64は、特に限定されるものではなく、線源移動機構46と同様に、ラックアンドピニオン等の歯車伝動機構、ねじ伝動機構、ボールねじ伝動機構、プーリ等を用いる巻き掛け伝動機構、エアシリンダやオイルシリンダなどのシリンダを用いる方法等、長尺撮影を行う放射線画像撮影装置に利用される移動手段が、全て利用可能である。
【0040】
これにより、撮影装置10は、放射線源44および放射線検出器62を被写体Pの体軸方向に連続的または間欠的に移動することができ、長尺モードにおける撮影(長尺撮影)等ができる。放射線検出器62の複数の撮影位置と、放射線源44の複数の照射位置とは、それぞれ1対1に対応することが好ましい。
また、短尺画像の最大撮影回数は、特に限定されるものではなく、3回でもそれ以上でもよい。短尺画像の撮影方向は、上方から、順次、行うものに限定はされず、下方から上方に向かって、順次撮影を行うようにしてもよい。
さらに、各短尺画像の撮影位置は、固定的であってもよく、または任意に変更可能であってもよく、いずれかを選択可能であってもよい。
【0041】
前述のように長尺モードでは、放射線検出器62および放射線の照射野を被写体Pの体軸方向に移動して、連続的に、決定した複数回の曝射(撮影)を行う。
本実施形態の撮影装置10において、長尺モードでは、例えば、3段階の各撮影位置で行う。このため、各撮影位置に順次、停止するように、検出器移動機構64によって放射線検出器62の位置を上方から下方に断続的に移動すると共に、線源移動機構46によって、放射線源44を、放射線検出器62に同期して断続的に移動する。この断続的な放射線検出器62と放射線源44の移動の停止時に、各撮影位置で被写体を曝射することにより、短尺画像を撮影する。
【0042】
すなわち、撮影装置10においては、最初の撮影位置の上端部から、3回目の撮影位置の下端部までの長さの長尺な放射線画像が撮影可能であり、放射線画像を撮影する放射線技師は、被写体Pの撮影領域に応じて、撮影位置および短尺画像の撮影回数(曝射回数)を、任意に選択および決定することにより、脊椎の全域(全脊椎)や下肢の全域(全下肢)等の各種の長尺な放射線画像を撮影することができる。このようにして、撮影した各短尺画像を、後述する画像処理部20で合成することにより全脊椎や全下肢などの長尺な放射線画像を得る。
なお、各撮影位置は、例えば、連続した2つの撮影位置を部分的に重複させる。すなわち、1回前に撮影された画像と次に撮影する画像の撮影領域を重複させる。この重複領域を、画像を合成する際の繋ぎ代として利用することができる。
【0043】
撮影データ処理部18は、制御部16からの指示に応じて、撮影部12の放射線検出器62)から読み出した出力信号(放射線画像の画像データ)に対して、A/D(アナログ/デジタル)変換、log変換等の処理を施して、放射線画像のデジタル画像データに変換するものである。撮影データ処理部18は、データ処理後の放射線画像のデジタル画像データを画像処理部20に出力する。
【0044】
画像処理部20は、撮影データ処理部18から取得したデータ処理後のデジタル画像データに対して、画像補正、画像合成等の画像処理を行い、画像処理後の放射線画像データをモニタ表示用、プリント出力用のデータに変換し、出力部22、表示部24に出力するものである。
画像処理部20は、コンピュータ上で動作するプログラム(ソフトウェア)もしくは専用のハードウェア、または両方を組み合わせて構成される。
【0045】
画像処理部20は、撮影モードが長尺モードである場合に、供給された、複数の短尺画像(短尺のデジタル画像データ)を合成して、被写体Pの長尺の放射線画像(放射線画像データ)を生成するものである。
また、画像処理部20は、制御部16で算出された拡大率(=L/L)を用いて、拡大率のずれを補正するものであり、デジタル画像データにおけるサイズを実寸法に画像補正する。なお、拡大率を用いた画像補正においては、画像補正することなく、例えば、2点の関心領域間の寸法について拡大率を補正した数値だけを、出力または表示してよい。この場合、撮影画像のデジタル画像データでの値と一緒に出力また表示してもよい。
【0046】
なお、画像処理部20は、さらにキャリブレーションに応じて行なわれる画素欠陥補正、オフセット補正(暗補正)、ゲイン補正(シェーディング補正)、階調補正、濃度補正等の各種の放射線画像撮影装置で行なわれている画像処理が全て実施可能である。
また、画像処理部20においては、撮影モードが一般撮影に対応するモードで、画像合成を行う必要がない場合には、放射線画像のデジタル画像データを、合成処理をすること以外は上述の画像処理をして、その後、モニタ表示用のデータ、プリント出力用のデータに変換して出力部22、表示部24に出力することができる。
【0047】
なお、画像処理部20における長尺画像を得るための短尺画像の合成方法は、特に限定されるものではなく、公知の画像合成方法が全て利用可能である。
例えば、撮影装置10において、各短尺画像を撮影した際における放射線検出器62の位置、すなわち撮影位置(その座標位置)は、当然、既知であるので、短尺画像を撮影した際における放射線検出器62の座標位置から、各短尺画像の重複部を利用して画像を接続/合成する方法が例示される。また、これ以外にも、各重複部の画像特徴量を算出して、画像特徴量が一致している部分を画像のエッジ部として設定し、このエッジ部で、画像を接続して画像を合成する方法も利用可能である。
画像処理部20においては、複数の部分画像の画像データを合成する際に行う、連続して撮影された隣接する2つの部分画像の重なり合う重複部分が一致するように、両方の部分画像のデジタル画像データをデジタル画像処理、例えば、濃度や階調が一致するように階調補正や濃度補正して、重複部分が一致する部分画像の画像データを得、これらを1つの長尺画像に合成することができる。
【0048】
出力部22は、画像処理部20から出力された短尺(部分)画像または長尺(全体)画像のプリント出力用のデータを用いてハードコピーとして出力するものである。また、出力部22は、画像処理部20から出力された部分画像または全体画像の画像データをネットワークまたは記憶媒体に出力するためのものであってもよい。
【0049】
表示部24は、画像処理部20から出力された短尺(部分)画像または長尺(全体)画像のモニタ表示用のデータを用いて、短尺(部分)画像または長尺(全体)画像を表示するものである。
なお、表示部24は、撮影動作において必要となるGUI等による選択、指示等を表示するものであってもよく、例えば、放射線画像や撮影回数の情報などを画面に表示してもよいことはもちろんである。
【0050】
本実施形態の撮影装置10においては、衝立50の傾きθを所定の許容範囲内にすることにより、例えば、放射線室の床Bが平らでなく凸凹していて衝立50が傾いてしまう場合でも、その傾きを許容範囲にすることができ、衝立50、すなわち、被写体Pと放射線検出器62の撮像面62aとの距離を略一定にすることができる。しかも、拡大率のずれも補正することができる。これにより、台形歪み等がなく、実際の寸法に対して誤差が小さい被写体Pの短尺画像を得ることができる。このため、複数の短尺画像を合成して最終的に得られる長尺画像についても、被写体Pとの形状の誤差が小さく、実際の寸法に対して、誤差が小さい被写体Pの長尺画像を得ることができる。これにより、診断精度を向上させることができる。
撮影装置10において、例えば、3回撮影して1つの長尺画像を得る場合、図3に示すように長尺合成画像70は3つの短尺画像72〜76で構成される。このとき、長尺合成画像70において3つの短尺画像72〜76に跨る関心領域Aと関心領域Aとの距離Dについて、実際の距離との誤差を±5mmにすることができる。
【0051】
以下、図4に示すフローチャートを参照して、撮影装置10における長尺撮影方法について説明する。本実施形態においては、3回撮影を行い、脊椎の全域(全脊椎)を撮影して、長尺画像を作成する場合を例にして説明する。
【0052】
まず、被写体Pである患者について、身長、体重等の身体的特徴、撮影部位、撮影条件等の患者情報を得る(ステップS10)。
この場合、放射線技師によって、患者情報に基づいて、撮影指示部14を介して、撮影装置10に撮影メニュー(全下肢の撮影、全脊椎の撮影など)および撮影モードの設定が行なわれる。この場合、撮影モードとして、長尺モードが設定される。さらに、撮影指示部14を用いて、長尺撮影の撮影開始位置(最初の撮影位置)が設定される。また、曝射時間、放射線強度等の撮影条件が入力される。このようにして、撮影が準備される。
なお、必要に応じて、撮影指示部14により、長尺モードにおいて、撮影条件を装置が自動設定(あるいは予め設定)する自動長尺モード、または放射線技師が撮影条件を入力/設定できる手動長尺モードを設定するようにしてもよい。
【0053】
次に、衝立部32を移動させて、基台52を位置決め部材58に当接させて放射線検出部34の放射線検出器62の撮像面62a前方の所定の位置に衝立50を配置する(ステップS12)。
【0054】
次に、照射部30の放射線源44を操作位置に移動させる(ステップS14)。この場合、オートポジション機能により、機器に対して予め設定した位置、例えば、長尺撮影の撮影開始位置(最初の撮影位置)に放射線源44を移動させてもよい。
【0055】
次に、衝立50の傾きθを傾き検出部54を用いて計測し、衝立50の傾きθを制御部16に出力する(ステップS16)。
そして、制御部16において、この傾きθの値が、所定の許容範囲内あるか否か判定される(ステップS18)。ステップS18において、傾きθの値が許容範囲内であれば、距離測定手段45により、放射線源44の放射位置(X線管球の位置)から衝立50までの距離Lを測定する(ステップS20)。
【0056】
一方、ステップS18において、傾きθの値が許容範囲を超える場合、制御部16で、衝立50の傾きθが許容範囲内となるような駆動部56のアクチュエータ56bの部材の突出量または後退量が求められる。そして、求められた突出量または後退量で部材を移動させる信号を制御部16で作成し、この信号をアクチュエータ56bに出力して、アクチュエータ56bの部材を突出または後退させる。
【0057】
次に、再度、衝立50の傾きθを求める(ステップS16)。そして、制御部16において、この傾きθの値が所定の許容範囲内あるか否か判定され(ステップS18)、傾きθの値が許容範囲内であれば、距離測定手段45により衝立50までの距離Lが測定される(ステップS20)。
【0058】
衝立50の傾きθの値が許容範囲を超える場合には、再度、制御部16で、衝立50の傾きθが許容範囲内となるように、駆動部56のアクチュエータ56bの部材の突出量または後退量が求められる。そして、求められた突出量または後退量で、アクチュエータ56bの部材を移動させる信号を制御部16で作成し、この信号をアクチュエータ56bに出力して、アクチュエータ56bの部材を突出または後退させる。衝立50の傾きθの値が許容範囲内になるまで、上述のステップS16、ステップS18を繰り返し行う。
【0059】
以上のように、衝立50を傾きがない状態とし、衝立50迄の距離Lを測定した後、被写体Pである患者を招き入れ、基台52に放射線源44に顔を向けて、すなわち、衝立50の面50aに背中を向けて立たせ、被写体Pの撮影位置を決める(ステップS22)。
【0060】
次に、ステップS10で取得された患者情報に基づいて、撮影を行う(ステップS24)。この場合、1回撮影した後は、例えば、放射線源44と放射線検出器62とを同期させて、頭部から下肢に向かって、所定の位置に移動させ、合計3回撮影する。撮影される毎に、放射線検出器62から撮影データ処理部18に画像データが出力され、撮影データ処理部18において、デジタル画像データに変換され、画像処理部20に出力される。
【0061】
以下、本実施形態における3回撮影の撮影について詳細に説明する。
まず、1回目の撮影の際に、撮影指示部14の撮影ボタンが1段目まで押下されると、撮影部12は制御部16の制御下の下で撮影の準備状態となる。
続いて、撮影ボタンが2段目まで押下されると、1回目の撮影が行なわれ、撮影部12において、放射線源44から所定強度の放射線が所定時間だけ照射される。照射された放射線は被写体Pを透過して放射線検出器62に入射し、被写体Pを透過した放射線が電気信号(放射線画像)に変換される。
なお、長尺モードでは、撮影(曝射)のタイミング、撮影の回数を、撮影を行う放射線技師が知見できるように、各撮影(曝射)の際毎に音声やモニタ表示で、その旨を出力する。
【0062】
撮影データ処理部18は、所定の蓄積時間経過後に、放射線検出器62から撮影された放射線画像を読み出し、A/D変換等の処理を行ない画像処理部20に供給する。画像処理部20では、撮影データ処理部18から供給された放射線画像を取得し、1回目の撮影で得られた放射線画像を、1回目の撮影位置における第1の短尺画像として記憶する。
なお、画像処理部20において、第1の短尺画像を表示部24に供給し、合成前のプレビュー画像として表示部24に表示してもよい。
表示部24に表示されたプレビュー画像により、放射線技師は撮影画像に不具合、例えば、被写体Pが撮影範囲から動いている等を確認できる。これにより、不具合があり撮影を中止したい場合には撮影を途中で中止できる。
【0063】
1回目の撮影が終わると検出器移動機構64により放射線検出器62が2回目の撮影位置に移動され、これに並行して、線源移動機構46により放射線源44が2回目の撮影位置に移動される。
放射線検出器62と放射線源44が2回目の撮影位置に移動した後、2回目の撮影が開始される。1回目の撮影と同様に、撮影部12において、放射線源44から所定強度の放射線が所定時間だけ照射されて、照射された放射線が被写体Pを透過して放射線検出器62に入射し、被写体Pを透過した放射線が電気信号(放射線画像)に変換される。
【0064】
撮影データ処理部18は、所定の蓄積時間経過後に、放射線検出器62から、撮影位置N=2で撮影された放射線画像を読み出し、A/D変換等の処理を行ない、画像処理部20に供給する。画像処理部20では、撮影データ処理部18から供給された放射線画像(短尺画像)を2回目の撮影位置における第2の短尺画像として、すなわち、2回目の撮影で得られた放射線画像として記録する。
なお、第2の短尺画像も表示部24に供給して、プレビュー画像として表示してもよいのは、第1の短尺画像と同様である。
【0065】
2回目の撮影が終わると、2回目の撮影と同様にして、放射線検出器62と放射線源44が3回目の撮影位置に移動される。
放射線検出器62と放射線源44が3回目の撮影位置に移動された後、3回目の撮影が開始される。2回目の撮影と同様に、撮影部12において、放射線源44から照射され、被写体Pを透過した放射線を放射線検出器62が電気信号(放射線画像)に変換する。撮影データ処理部18は、放射線検出器62から、放射線画像のデータを読み出し、A/D変換等の処理を行ない、画像処理部20に供給する。画像処理部20では、撮影データ処理部18から供給された放射線画像を3回目の撮影位置における第3の短尺画像として、すなわち、3回目の撮影で得られた放射線画像として記録する。
なお、第3の短尺画も表示部24に供給して、プレビュー画像として表示してもよいのは、第1の短尺画像と同様である。
【0066】
次に、3回目の撮影が終了した後、画像処理部20において、撮影された3回分の短尺画像のデジタル画像データに対して拡大率等の画像補正等、上述の画像処理部20での画像処理を行った後、合成して長尺画像のデジタル画像データを得る(ステップS26)。
次に、長尺画像のデジタル画像データを出力部22に出力し、出力部22でハードコピーを作製する(ステップS28)。また、長尺画像のデジタル画像データを表示部24に出力して、表示部24に長尺画像を表示させる(ステップS28)。このようにして、長尺の診断画像を得ることができる。この得られた診断画像が、患者(被写体P)の診断に利用される(ステップS30)。
【0067】
なお、撮影装置10において、長尺撮影ではない一般撮影は、公知の放射線画像撮影装置と同様に行なえばよく、また、長尺撮影と同様に、衝立50の傾きを許容範囲内にして撮影してもよいことはもちろんである。
【0068】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の放射線画像撮影装置を示す模式図である。
なお、本実施形態において、図1に示す第1の実施形態の放射線画像撮影装置10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0069】
図5に示す本実施形態の放射線画像撮影装置10a(以下、撮影装置10aともいう)は、第1の実施形態の放射線画像撮影装置10(図1参照)に比して、衝立部32aの構成が異なり、それ以外の構成は第1の実施形態の放射線画像撮影装置10と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0070】
本実施形態の撮影装置10aの衝立部32aは、第1の実施形態の衝立部32に比して、基台52に設けられたタイヤ53の向きが異なり、タイヤ53の回転軸が衝立50の面50aに対して直交している。また、駆動部80は天井Sに設けられており、この駆動部80に隣接してガイド82が天井Sに設けられている。衝立50は上部に、傾き検出部54が設けられており、衝立50の上部がガイド82に嵌め込まれ、この状態で衝立50は、衝立50の面50aと平行な方向に移動する。
駆動部80は、アクチュエータ80aが設けられている。このアクチュエータ80aは、第1の実施形態のアクチュエータ56bと同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。このアクチュエータ80aも、例えば、部材が突出または後退することにより衝立50を水平方向に移動させることができる。
【0071】
本実施形態においても、第1の実施形態の撮影装置10と同様に、傾き検出部54を用いて衝立50の傾きが検出され、この衝立50の傾きθの値が許容範囲内であるか制御部16で判定され、許容範囲内でなければ、駆動部80のアクチュエータ80aにより、傾きθの値を許容範囲内にすることができる。これにより、第1の実施形態の撮影装置10と同様に、例えば、床Bが平らでなく凸凹していて、衝立50が傾いてしまう場合でも、衝立50の傾きθを許容範囲にすることができ、衝立50、すなわち、被写体Pと放射線検出器62の撮像面62aとの距離を略一定にすることができる。しかも、拡大率の補正もできる。これにより、台形歪み等がなく被写体Pとの形状の誤差を小さくするとともに、実際の寸法に対して誤差が小さい被写体Pの短尺画像を得ることができる。このため、複数の短尺画像を合成して最終的に得られる被写体Pの長尺画像についても、被写体Pとの形状の誤差が小さく、実際の寸法に対して、誤差が小さい被写体Pの長尺画像を得ることができる。例えば、図3に示す長尺合成画像70において、複数の短尺画像72〜76に跨る2つの関心領域A、Aの距離Dを、実際の距離との誤差を±5mmにすることができる。
【0072】
なお、上述のいずれの実施形態の撮影装置10、10aにおいても、被写体Pを立たせた状態で撮影する立位撮影用の放射線画像撮影装置について説明したが、これに限定されず、被写体Pを臥位の状態で撮影する放射線画像撮影装置にも適用可能である。
【0073】
さらには、上述のいずれの実施形態の撮影装置10、10aにおいても、放射線源44を被写体Pの体軸方向(Y方向)に移動することにより、長尺撮影における放射線の照射野の変更を行なっているが、本発明は、これに限定はされるものではない。本発明においては、公知の放射線の照射野の変更手段が各種利用可能である。
放射線の照射野の変更手段としては、例えば、放射線源の角度を変更することにより、いわゆる管球の首振りをすることにより、放射線の照射野を変更する方法を用いることができる。また、放射線源として長尺撮影の全領域に放射線(X線)を照射可能なX線管球と、X線管球からの放射線(X線)の照射野を規制するアパーチャとを用い、アパーチャを体軸方向に移動させることにより、放射線の照射野を変更する方法も放射線の照射野の変更手段として利用可能である。
また、X線源を支持し、このX線源を天井走行式の水平駆動部によって水平方向に移動させるとともに、垂直駆動部によって垂直(鉛直)方向に移動させるX線管懸垂機を用いてもよい。この場合、X線源を回転駆動部によって回転駆動できるようにして、X線の照射方向を制御する。
【0074】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の放射線画像撮影装置および放射線画像撮影方法について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0075】
10、10a 放射線画像撮影装置(撮影装置)
12 撮影部
14 撮影指示部
16 制御部
18 撮影データ処理部
20 画像処理部
22 出力部
30 照射部
32、32a 衝立部
34 放射線検出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影装置であって、
前記放射線画像を得るための放射線を検出する放射線検出器と、
前記放射線検出器に向けて前記放射線を照射する放射線源と、
前記放射線検出器に隣接して設けられ、前記放射線検出器に対して所定の位置に前記被写体を配置させるための衝立と、
前記衝立と前記放射線源との距離を測定する距離測定手段と、
前記衝立の傾きを測定する傾き検出手段と、
前記衝立の傾きを調整する調整手段と、
前記傾き検出手段で得られた前記衝立の傾きに基づいて前記調整手段により前記衝立の傾きを調整させる制御部とを有することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記放射線検出器を前記被写体の長手方向に移動させる検出器移動手段を有し、
前記検出器移動手段により前記放射線検出器を前記被写体の長手方向に移動させ、前記放射線源から放射線を前記被写体に照射して前記被写体を前記長手方向に分割して撮影して得られた複数の画像を合成して長尺な放射線画像を作成する画像処理部を有する請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記被写体を長手方向に分割して撮影する際、連続した2つの撮影位置を部分的に重複させており、前記画像処理部は、前記重複部分を一致させて長尺な放射線画像を作成する請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記放射線検出器と、放射線検出器に対して所定の位置に被写体を配置させるための衝立と、前記放射線検出器に向けて放射線を照射する放射線源とを用いて前記被写体の放射線画像を撮影する放射線画像撮影方法であって、
前記衝立の傾きを測定する工程と、
前記衝立の傾きに基づいて前記衝立の傾きを調整する工程と、
前記衝立の傾き調整後に、前記被写体の放射線画像を撮影する工程とを有することを特徴とする放射線画像撮影方法。
【請求項5】
前記被写体の放射線画像を撮影する工程は、前記放射線検出器を前記被写体の長手方向に移動させ、前記放射線源から放射線を前記被写体に照射して前記被写体を前記長手方向に分割して撮影する工程であり、
さらに、前記被写体を長手方向に分割して撮影して得られた複数の画像を合成して長尺な放射線画像を作成する工程とを有する請求項4に記載の放射線画像撮影方法。
【請求項6】
前記被写体を前記長手方向に分割して撮影する際、連続した2つの撮影位置を部分的に重複させて前記被写体を前記長手方向に分割して撮影し、前記重複部分を一致させて前記長尺な放射線画像を作成する請求項5に記載の放射線画像撮影方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−161472(P2012−161472A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−24155(P2011−24155)
【出願日】平成23年2月7日(2011.2.7)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】