放射線画像撮影装置
【課題】放射線発生装置との連携がとれない場合にも、オフセットデータの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能な放射線画像撮影装置を提供する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bに接続されている全走査線5またはそのうちの一部の複数の走査線5にオン電圧をゲートドライバ15bから印加させて行う各放射線検出素子7のリセット処理と、各走査線5にオフ電圧を印加させた状態で各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qに対応して増幅回路18から出力されている値をサンプリング回路19でサンプリングしてリークデータdleakとして読み出すリークデータdleakの読み出し処理とを交互に行わせ、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出する。
【解決手段】放射線画像撮影装置1の制御手段22は、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bに接続されている全走査線5またはそのうちの一部の複数の走査線5にオン電圧をゲートドライバ15bから印加させて行う各放射線検出素子7のリセット処理と、各走査線5にオフ電圧を印加させた状態で各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qに対応して増幅回路18から出力されている値をサンプリング回路19でサンプリングしてリークデータdleakとして読み出すリークデータdleakの読み出し処理とを交互に行わせ、読み出したリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線の照射を自ら検出して放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図7等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。そして、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから各走査線5にオン電圧やオフ電圧が印加され、各TFT8のオン/オフ動作が行われて、各放射線検出素子7内への電荷の蓄積や、各放射線検出素子7から各信号線6への電荷の放出等が行われる。
【0005】
従来の放射線画像撮影では、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行いながら、すなわち両者が連携して撮影を行うように構成されていた。なお、以下、このようにして放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行いながら連携して放射線画像撮影を行う方式を、連携方式という。
【0006】
具体的には、連携方式では、通常、放射線画像撮影装置は、図35に示すように、まず、放射線の照射前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させるリセット処理を繰り返し行う。そして、図36に示すように、放射線発生装置は、放射線技師等の操作により放射線を照射する準備が整うと、放射線を照射する前に、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する旨の信号である照射開始信号を送信する。
【0007】
放射線画像撮影装置は、放射線発生装置から照射開始信号を受信すると、その時点で行っている検出部Pの1面分のリセット処理Rmが終了した時点で各放射線検出素子7のリセット処理を停止し、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて電荷蓄積状態に移行する。そして、このように放射線の照射を受ける準備が完了してから、放射線発生装置にインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置は、放射線画像撮影装置からインターロック解除信号を受信すると、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する。
【0008】
そして、放射線画像撮影装置では、図37に示すように、放射線発生装置からの放射線の照射が終了すると、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、画像データDの読み出し処理を行う。
【0009】
なお、図37では、放射線の照射期間が斜線を付して示されている。また、図37では、各放射線検出素子7のリセット処理におけるゲート周期(すなわちある走査線5にオン電圧を印加してから次の走査線5にオン電圧を印加するまでの周期)τが、画像データDの読み出し処理におけるゲート周期τと同じ周期である場合を示したが、画像データDの読み出し処理におけるゲート周期τよりも短い周期になるように設定される場合もある。
【0010】
また、画像データD中に含まれるオフセット分を得るために、図38に示すように、画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスを繰り返して、上記のオフセット分をオフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。すなわち、各放射線検出素子7のリセット処理を行い、放射線が照射されない状態で上記の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加して各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させた後、オフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。
【0011】
しかし、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との製造メーカーが異なっているような場合には、上記のように両者の間で信号等のやり取りを的確に行うことができない場合もある。そして、そのような場合には、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出することが必要となる。なお、以下、このように、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行わず、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出して放射線画像撮影を行う方式を、非連携方式という。
【0012】
放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出する方法としては、例えば特許文献3に記載されているように放射線画像撮影装置にX線センサを設けて、その出力値によって放射線が照射されたか否かを判定するように構成したり、或いは、例えば特許文献4に記載されているように、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると装置内の配線(例えば後述するバイアス線9や結線10等)中を流れる電流が増加することを利用して、放射線画像撮影装置内に電流検出手段を設けて、電流検出手段からの出力を監視することによって放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出するように構成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2009−219538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記のように、放射線画像撮影装置にX線センサや電流検出手段を新たに設けるように構成した場合、例えば、放射線画像撮影装置内にX線センサを配置するためのスペースを設ける必要が生じたり、或いは、電流検出手段で生じたノイズのために、読み出された画像データDのS/N比が悪化する等の新たな問題が生じる。
【0015】
そこで、このような問題が生じることを回避するために、放射線画像撮影装置に新たなセンサや手段を設けずに、既に設けられている読み出し回路17等の各機能部を用いて、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出して放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置の研究が進められている。
【0016】
既設の各機能部を用いて放射線の照射を検出する手法としては、例えば、放射線画像撮影前から、画像データd(上記のように放射線が照射された後に読み出される本画像としての画像データDと区別するために画像データdという。)の読み出し処理を行って、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると読み出される画像データdの値が急激に上昇することを利用して放射線の照射を検出するように構成することが考えられる。
【0017】
この場合、放射線画像撮影前から、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して画像データdの読み出し処理を行い、図39に示すように、例えば走査線5のラインLnにオン電圧を印加した際に読み出された画像データdが例えば予め設定された閾値を越える等して放射線の照射が開始されたことが検出された時点で、ゲートドライバ15bから走査線5の全ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて電荷蓄積状態に移行する。
【0018】
そして、所定時間が経過する等した後に、走査線5の各ラインLn+1〜Lx、L1〜Lnにオン電圧を順次印加して本画像としての画像データD(以下、本画像データDという。)の読み出し処理を行う。
【0019】
そして、連携方式の場合(図38参照)の場合と同様に、非連携方式の場合も本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスを繰り返して、オフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。すなわち、図40に示すように、画像データdの読み出し処理を行い、放射線が照射されない状態で上記の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加して各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させた後、オフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。
【0020】
なお、この場合、図40に示すように、本画像データDの読み出し処理(図39参照)後に画像データdの読み出し処理を行う代わりに、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。本画像データDの読み出し処理(図39参照)後に、画像データdに基づく放射線の照射開始の検出を行う必要がないためである。
【0021】
ところで、図39や図40に示した非連携方式の場合、各走査線5にオン電圧を印加する時間(以下、オン時間という。すなわちゲートドライバ15bから走査線5にオン電圧を印加してから印加した電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間である。)T*を、本画像データDの読み出し処理におけるオン時間Tよりも長くなるように制御すると、画像データdによる放射線の照射開始の検出効率が向上するため、好ましい。
【0022】
また、上記のように、放射線画像撮影装置に放射線が照射されて画像データdの値が上昇するということは、その分だけ、放射線の照射により各放射線検出素子7で発生した有用な電荷が当該各放射線検出素子7から失われてしまうことを意味する。そのため、当該各放射線検出素子7から読み出された本画像データDは、有用なデータの一部が失われてしまっているため、当該各放射線検出素子7が接続されている各走査線5の部分に、いわゆる線欠陥が生じることになる。
【0023】
そのため、放射線画像撮影装置に対して実際に放射線の照射が開始されてから複数の走査線5にオン電圧が印加された後に放射線の照射開始が検出されるような場合、その間にオン電圧が印加された各走査線5に接続されている各放射線検出素子7からも、同様に有用な電荷が失われる。そのため、放射線が実際に照射されてから検出されるまでの間に例えば走査線5のラインLn〜Ln+2にオン電圧が印加された場合、図41に示すように、3本の走査線5の部分に線欠陥が連続して現れる状態になる。
【0024】
このように線欠陥が連続して現れるとその部分の有用なデータが失われてしまうため、これを防止し、或いは線欠陥が連続して生じるとしてもその発生本数を極力抑制するために、例えば図39に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理におけるゲート周期τ*を、本画像データDの読み出し処理におけるゲート周期τよりも長くなるように制御することが好ましい。このように制御すれば、放射線が実際に照射されてから検出されるまでの間にオン電圧が印加される走査線5の本数を減らすことが可能となる。
【0025】
このように、非連携方式において放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出するように構成する場合、放射線の照射開始の検出効率を向上させたり、発生する線欠陥の本数を低減させる等の目的で、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理等におけるオン時間T*やゲート周期τ*を、本画像データDの読み出し処理の際のオン時間Tやゲート周期τよりも長くなるように制御されることが必要となる。
【0026】
しかし、そのため、図40に示したように、少なくともオフセットデータOの読み出し処理の前に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(或いは画像データdの読み出し処理。以下同じ。)に要する時間が、図38に示した連携方式の場合よりも長くなる。また、オフセットデータOの読み出し処理の前にリセット処理を複数回繰り返して行うように構成する場合には、リセット処理に要する時間がさらに長くなる。
【0027】
このように、非連携方式で撮影を行う場合、連携方式の場合よりも、オフセットデータOの読み出し処理を含む処理全体に要する時間が長期化してしまうといった問題がある。
【0028】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線発生装置との連携がとれない非連携方式で撮影を行う場合にも、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて行う前記各放射線検出素子のリセット処理と、前記各走査線にオフ電圧を印加させた状態で前記スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークする電荷に対応して前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングしてリークデータとして読み出すリークデータの読み出し処理とを交互に行わせ、読み出した前記リークデータに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させた状態で前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングして画像データとして読み出す画像データの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記画像データに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバから、ゲートドライバに接続されている全走査線或いはそのうちの一部の複数の走査線にオン電圧を印加させて、画像データの読み出し処理や、リークデータの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子のリセット処理を行わせる。
【0032】
そのため、本画像としての画像データの読み出し処理の後、全走査線或いはその一部の複数の走査線にオン電圧を印加して行う画像データの読み出し処理や各放射線検出素子のリセット処理を1回や2回程度行った後、即座に電荷蓄積状態に移行して、オフセットデータの読み出し処理等を行うことが可能となり、本画像データの読み出し処理を行ってからオフセットデータの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0033】
また、放射線画像撮影前に読み出された画像データやリークデータに基づいて、少なくとも放射線の照射が開始されたことを的確に検出することが可能となる。そのため、放射線発生装置との連携がとれない非連携方式で撮影を行う場合でも、放射線画像撮影装置自体で、放射線の照射を的確に検出して、放射線画像撮影を的確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図である。
【図2】図1の放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。
【図3】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】TFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図12】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図13】放射線画像撮影前に複数の走査線にオン電圧を印加して画像データの読み出し処理を行う場合のタイミングチャートである。
【図14】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と複数の走査線にオン電圧を印加して行う各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行う場合のタイミングチャートである。
【図15】放射線画像撮影前から行われる読み出し処理で読み出される画像データを時系列的にプロットしたグラフである。
【図16】検出用の信号線を指定する場合の構成例の等価回路を表すブロック図である。
【図17】放射線画像撮影装置に照射野が絞られた放射線が照射された場合を表す図である。
【図18】各読み出し回路で読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図19】図13の場合に電荷蓄積状態でリークデータの読み出し処理を繰り返し行うように構成した場合のタイミングチャートである。
【図20】放射線の照射が終了するとリークデータが減少することを示すグラフである。
【図21】図13の本画像データの読み出し処理からオフセットデータの読み出し処理が行われるまでのタイミングチャートである。
【図22】ゲートドライバやゲートICにおける非接続の端子を説明する図である。
【図23】二分した各走査線に交互にオン電圧を印加して放射線画像撮影前の画像データの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図24】パルス信号を2回送信する間に複数の走査線に印加するオン電圧の立上りや立下りをずらして放射線画像撮影前の画像データの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図25】二分した各走査線に交互にオン電圧を印加して放射線画像撮影前のリセット処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図26】複数の走査線に印加するオン電圧の立上りや立下りをずらして放射線画像撮影前のリセット処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図27】図24の例でパルス信号を1回だけ送信して放射線画像撮影前の画像データの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図28】図26の例でパルス信号を1回だけ送信して放射線画像撮影前のリークデータの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図29】単位時間あたりに一定の割合で発生する暗電荷(α)と単位時間あたりの発生割合が減衰するラグ(β)の時間的推移を表すグラフである。
【図30】放射線が照射された後のオフセットデータの読み出し処理でオフセットデータを読み出すタイミング次第でラグによるオフセット分が変わることを説明する図である。
【図31】図39、図40による処理では本画像データの読み出し処理等が開始された走査線の前後で真の画像データに段差が生じることを説明する図である。
【図32】図13、図21による処理では本画像データの読み出し処理等が開始された走査線の前後で真の画像データに段差が生じないことを説明する図である。
【図33】各ゲートICの各端子に印加する電圧を切り替えるタイミングの遅延時間を説明するグラフである。
【図34】図33に示したゲートICを用いると本画像データ(信号値)に波状のプロファイルが現れる場合があることを説明するグラフである。
【図35】連携方式において放射線の照射前に各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合のタイミングチャートである。
【図36】連携方式における照射開始信号の送信、リセット処理の終了および電荷蓄積状態への移行、インターロック解除信号の送信、および放射線の照射のタイミングを表すタイミングチャートである。
【図37】連携方式における各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図38】連携方式の場合に図37に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理が行われることを説明するタイミングチャートである。
【図39】非連携方式において放射線画像撮影前に各走査線にオン電圧を順次印加して各放射線検出素子のリセット処理を行うように構成した場合の本画像データの読み出し処理までのタイミングチャートである。
【図40】非連携方式の場合に図39に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理が行われることを説明するタイミングチャートである。
【図41】線欠陥が連続して現れる状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。また、放射線画像撮影装置がいわゆる可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0037】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。また、図3は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1〜図3に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されている。
【0038】
図1や図2に示すように、本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。なお、筐体2をこのようないわゆるモノコック型として形成する代わりに、例えば、フロント板とバック板とで形成された、いわゆる弁当箱型とすることも可能である。
【0039】
図1に示すように、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、バッテリ状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。
【0040】
また、図2に示すように、放射線画像撮影装置1が例えばコンソール等の図示しない外部装置との情報や信号等の送受信を無線方式で行うための通信手段としてのアンテナ装置41が、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に設けられている。アンテナ装置41は、例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けることが可能である。なお、アンテナ装置41の設置位置は蓋部材2Cに限定されず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置41を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置41は1個に限らず、複数設けることも可能である。
【0041】
図示を省略するが、コネクタ39に例えばケーブル等が接続されることにより、外部装置との情報や信号等の送受信を有線方式で行うように構成することも可能である。この場合、コネクタ39が通信手段として機能する。なお、アンテナ装置41やコネクタ39を介して図示しない放射線発生装置と信号等の送受信を行うことができるように構成することは可能であるが、少なくとも、本実施形態のように、放射線画像撮影装置1を用いて非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、コネクタ39等を介しての放射線発生装置との通信は行わない。
【0042】
図3に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。また、本実施形態では、センサパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材36が設けられている。
【0043】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0044】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0045】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0046】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0047】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(シンチレータ3から照射された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0048】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0049】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0050】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0051】
そして、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0052】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0053】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0054】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0055】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバ15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0056】
なお、各放射線検出素子7からの本画像データDの読み出し処理等の際の、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加等については、後で説明する。
【0057】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と、サンプリング回路としての相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0058】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0059】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0060】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされると、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出すようになっている。
【0061】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。そして、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0062】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積された後に制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0063】
そして、相関二重サンプリング回路19は、2回目のパルス信号Sp2で電圧値Vfiを保持すると、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記録手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0064】
なお、1回の画像データDの読み出し処理が終了すると、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされ(図10参照)、コンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて、上記と同様に、放電された電荷がオペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す等して、増幅回路18がリセットされる。
【0065】
また、増幅回路18は、必ずしも本実施形態のようにチャージアンプ回路で構成される必要はなく、各走査線5にオン電圧が印加されて各放射線検出素子7から流出した電荷の量に応じた値を出力するものであれば、他の形態の増幅回路を用いることも可能である。
【0066】
さらに、本実施形態では、上記のように、サンプリング回路として、相関二重サンプリング回路19を用いる場合を示したが、この他にも、例えば制御手段22から1回だけ送信されたパルス信号を受信すると、そのタイミングで増幅回路18から出力されている値をサンプリングして、データとして出力するサンプリング回路を用いるように構成することも可能である。なお、この場合、例えば、制御手段22からパルス信号を送信せずに、サンプリング回路が独自のタイミングで自動的にサンプリングを行うようなサンプリング回路を用いることも可能である。
【0067】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記録手段23が接続されている。
【0068】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記録手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ24が接続されている。また、バッテリ24には、図示しない充電装置からバッテリ24に電力を供給してバッテリ24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0069】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0070】
本実施形態では、前述したように、非連携方式、すなわち放射線画像撮影装置1と放射線発生装置(図示省略)との間で信号等のやり取りを行わずに、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行う方式において、放射線画像撮影装置1で行われる本発明特有の処理について説明する。
【0071】
[放射線の照射開始の検出方法について]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1にX線センサ等の新たな機能部を設けずに、装置に既設の各機能部を用いて放射線の照射開始の検出や放射線画像撮影等を行うようになっている。このように、装置に既設の各機能部を用いて放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を検出する方法としては、例えば下記の2つの検出方法を採用することが可能である。以下、上記の本発明特有の処理について説明する前に、その前提となる放射線の照射開始の検出方法について説明する。
【0072】
[検出方法1]
例えば、前述した図39等に示したように、放射線画像撮影前に、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を行って、読み出した画像データdに基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。なお、この場合、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理は、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を検出するための処理であるが、各放射線検出素子7内に残存する暗電荷等の電荷を各放射線検出素子7内から除去する各放射線検出素子7のリセット処理も兼ねている。
【0073】
しかし、本実施形態では、図39等に示したように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するのではなく、後述する図13等に示すように、走査線5の複数のラインにオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理を行うようになっている。この点については後で説明する。
【0074】
検出方法1のように、放射線画像撮影前に画像データdの読み出し処理を行う場合、図10に示したように、ゲートドライバ15bから走査線5にオン電圧を印加する前後に相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1、Sp2を送信し、走査線5にオン電圧を印加した後に増幅回路18から出力されている電圧値Vfiから、走査線5にオン電圧を印加する前に増幅回路18から出力されていた電圧値Vinを減算し、その電圧値の差分Vfi−Vinが画像データdとして読み出される。
【0075】
[検出方法2]
一方、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。リークデータdleakとは、図11に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0076】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図12に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7、8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信してリークデータdleakが読み出される。
【0077】
この場合、画像データdの読み出し処理(図10参照)の場合と異なり、ゲートドライバ15bから各走査線5へのオン電圧の印加は行われないが、制御手段22から相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1が送信された時点からパルス信号Sp2が送信されるまでの間に増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積された、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値が、リークデータdleakとして読み出される。
【0078】
しかし、上記のようにしてリークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うと、各TFT8がオフ状態のままであるため、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になる。そして、各放射線検出素子7内に暗電荷が大量に蓄積されると、その後、放射線画像撮影装置1に放射線が照射され、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷を蓄積できる量、すなわち各放射線検出素子7のダイナミックレンジが狭められてしまう。
【0079】
そのため、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、リークデータdleakの読み出し処理と次のリークデータdleakの読み出し処理との間で、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。すなわち、後述する図14等に示すように、リークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に行うように構成される。
【0080】
そして、本実施形態では、このリークデータdleakの間のリセット処理では、後述する図14等に示すように、走査線5の複数のラインにオン電圧を印加してリセット処理を行うようになっているが、この点については後で説明する。
【0081】
[放射線画像撮影前の処理における各走査線へのオン電圧の印加の仕方について]
次に、非連携方式において放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行う方式における本発明特有の放射線画像撮影前の処理等について説明する。また、以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用についてもあわせて説明する。
【0082】
本実施形態では、上記の検出方法1を採用する場合も、検出方法2を採用する場合も、放射線画像撮影前にゲートドライバ15bから各走査線5にオン電圧を印加する際に、走査線5の複数のラインLにオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理(検出方法1の場合)や各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法2の場合)を行うように構成されている。
【0083】
具体的には、検出方法1の場合には、制御手段22は、例えば図13に示すように、相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1、Sp2を送信する間に、ゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させ、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ各電荷を放出させて画像データdとして読み出す読み出し処理を繰り返し行わせるように構成される。
【0084】
この場合、図11に示した各放射線検出素子7と信号線6と読み出し回路17(図11では増幅回路18が代表して示されている。)との関係から分かるように、各読み出し回路17で読み出される画像データdは、当該読み出し回路17に接続された1本の信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データの合計値に相当する。
【0085】
そして、制御手段22は、後述するように読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出すると、図13に示すように、画像データdの読み出し処理を停止させ、ゲートドライバ15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて各TFT8をオフ状態にして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0086】
そして、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した後、制御手段22は、ゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加させて、本画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0087】
また、検出方法2の場合も、同様にして処理が行われる。すなわち、前述したように、本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理(図12参照。後述する図14では「L」と記載されている。)と各放射線検出素子7のリセット処理(図9参照。後述する図14では「R」と記載されている。)とを交互に繰り返して行う。
【0088】
その際、各放射線検出素子7のリセット処理では、例えば図14に示すように、ゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させ、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ残存する電荷を放出させてリセット処理を行うように構成される。
【0089】
そして、制御手段22は、後述するように読み出されたリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出すると、図14に示すように、リークデータdleakの読み出し処理を停止させ、ゲートドライバ15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて各TFT8をオフ状態にして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0090】
そして、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した後、制御手段22は、ゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加させて、本画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0091】
[放射線の照射開始の検出について]
[原理]
上記の検出方法2の場合も同様であるが、検出方法1のように、放射線画像撮影前に、上記のようにして画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図15に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点(図中の時刻t1参照)で読み出された画像データd(検出方法2の場合はリークデータdleak。以下同じ。)が、それ以前に読み出された画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0092】
そこで、制御手段22で放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを監視するように構成し、例えば図15に示すように、画像データdについて予め閾値dthを設定しておく。そして、読み出された画像データdが閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
【0093】
[検出方法1を採用する場合の注意点]
なお、その際、特に検出方法1では、上記のように、読み出される画像データdは、1本の信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データの合計値になるため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された際に読み出される画像データdは、非常に大きな値になり、読み出しIC16(図7参照)が破損する等の問題が生じる虞れがある。
【0094】
そこで、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、例えば、ゲートドライバ15bから各走査線5を介して各TFT8に印加するオン電圧を、本画像データDの読み出し処理等の際に印加する通常のオン電圧よりも低い値とし、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理に各TFT8を介して各放射線検出素子7から流出する電荷の量を低減させるように構成することが可能である。
【0095】
しかし、このように各TFT8に印加するオン電圧を低い値とすると、上記のように画像データdに基づいて放射線の照射開始を検出する際の検出感度が低下する可能性がある。そこで、このように、各TFT8に印加するオン電圧を低い値とすると検出感度が低下するような場合には、放射線画像撮影装置1を以下のように構成することで、その問題を解消することが可能となる。
【0096】
すなわち、例えば、まず、図16に示すように、前述した各読み出しIC16に接続されている、例えば128本や256本等の各信号線6の中から、各読み出しIC16ごとに1本或いは数本の所定の信号線6を検出用の信号線6αとして指定する。
【0097】
なお、図16では、各読み出しIC16の両端部の各信号線6がそれぞれ読み出しIC16ごとに検出用の信号線6αとして指定された場合が示されている。また、図16では、各放射線検出素子7が走査線方向の2行分しか記載されていないが、他の行の各放射線検出素子7についても同様に構成される。さらに、2行の各放射線検出素子7の行間が図7等に示した場合よりも拡張されているように記載されているが、図を見やすくするための記載であり、実際に拡張することを意味するものではない。また、バイアス線9や読み出しIC16の内部の構成等の記載が省略されている。
【0098】
そして、指定した検出用の信号線6αに接続されている各放射線検出素子7のTFT8には、図16に示したように、例えば元のゲートドライバ15bとは別に設けたゲートドライバ15eから新たに走査線5(Li、Li+1)を延ばして、TFT8のゲート電極8gを接続する。なお、検出用の信号線6α以外の信号線6に接続されている各TFT8のゲート電極8には、元のゲートドライバ15bから延びる走査線5が接続されている。
【0099】
そして、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際には、各ゲートドライバ15b、15eから少なくとも同じ行の各TFT8に対しては同じタイミングでオン電圧を印加するように構成するが、検出用の信号線6αに接続されているTFT8にはゲートドライバ15eから通常の高い値のオン電圧を印加し、他の多数の信号線6に接続されているTFT8には、元のゲートドライバ15bから、上記の通常の高い値のオン電圧よりも低い値のオン電圧を印加するように構成する。
【0100】
このように構成すれば、検出用の信号線6α以外の多数の信号線6を介して読み出しIC16に流れ込む電荷量が小さくなるため、上記のように読み出しIC16に大量の電荷が流れ込んで読み出しIC16が破損されるといった問題が生じることを的確に防止することが可能となる。また、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、少数の検出用の信号線6αを介して読み出しIC16に通常の場合と同様の大きな電荷量の電荷が流れ込むため、読み出される画像データdがある程度大きな値になる。そのため、読み出される画像データdの値が小さくなり過ぎて放射線の照射開始の検出感度が低下することを的確に防止して、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0101】
このように、上記のように構成すれば、読み出しIC16に破損等が生じることを的確に防止しつつ、しかも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0102】
また、上記のように、検出用の信号線6αを各読み出しIC16ごとに設定するように構成すれば、例えば後述する図17に示すように、放射線画像撮影装置1に照射野Fが絞られて照射された場合でも、いずれかの読み出しIC16の検出用の信号線6αが照射野F内に存在するようになり、少なくともそれらの検出用の信号線6αに接続されている読み出しIC16で読み出された画像データdの値が放射線の照射により的確に上昇する。そのため、放射線の照射開始を確実に検出することが可能となる。
【0103】
一方、検出方法1の場合には、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、前述したオン時間(すなわち各走査線5にオン電圧を印加してから印加した電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間)を短くしたり、検出方法2の場合には、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理の際に制御手段22から相関二重サンプリング回路19に送信するパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔を短くするように構成すれば、各放射線検出素子7から流出する電荷の量(画像データdの場合)や、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷の量(リークデータdleakの場合)を低減させることが可能となり、上記の問題を回避することが可能となる。
【0104】
さらに、上記の場合は、各放射線検出素子7から流出したりリークしたりする電荷の量を小さくすることにより上記の問題を回避する方法について説明したが、逆に、読み出しIC16側で、例えば、各増幅回路18のコンデンサ18bの容量を可変にしておき、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際には、コンデンサ18bの容量を、本画像データDの読み出し処理等の際の容量よりも大きな値とするように可変させるように構成することも可能である。
【0105】
このように構成すれば、V=Q/Cの関係から、コンデンサ18bに蓄積される電荷に対するコンデンサ18bの電極間の電位差の反応性を低下させることが可能となる。そのため、コンデンサ18bに大きな電荷が流入しても、電極間の電位差の変化を小さくすることが可能となり、読み出しIC16の破損等を回避することが可能となる。なお、読み出しIC16の入力抵抗を小さくすることによっても同様の効果を得ることができる。
【0106】
その他の方法で、上記のように走査線5の複数のラインにオン電圧が印加されて、増幅回路18のコンデンサ18bに流入する電荷量が大きくなっても、読み出しIC16に悪影響が生じないようにすることも可能であり、読み出しIC16等に悪影響が生じないようにするための処理が適宜行われる。
【0107】
[改良された放射線の照射開始の検出手法について]
ところで、上記の検出方法1を採用する場合も同様であるが、例えば上記の検出方法2を採用して、リークデータdleakの値に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始等を検出するように構成する場合、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7等参照)には、通常、数千本から数万本の信号線6が配線されているため、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの数は、数千個から数万個の数になる。
【0108】
そして、それらの全てのリークデータdleakについて、上記のように閾値を越えたか否かを判断する判断処理を各読み出し処理ごとに行うように構成すると、判断処理が重たい処理になる。そこで、例えば、各読み出し処理ごとに読み出された各読み出し回路17ごとのリークデータdleakの中から最大値を抽出し、そのリークデータdleakの最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することが可能である。
【0109】
このように構成すれば、各読み出し回路17から読み出された各リークデータdleak(検出方法1の場合は画像データd。以下同じ。)の中から最大値を抽出し、その最大値と閾値とを比較すればよくなるため、読み出されたリークデータdleakが閾値を越えたか否かの判断処理を非常に軽くすることが可能となる。
【0110】
[各読み出し回路の読み出し特性を考慮した検出手法]
なお、その際、各読み出し回路17(図7、図8等参照)におけるデータ(画像データdやリークデータdleak)の読み出し特性が、通常、各読み出し回路17ごとに異なるといった問題がある。
【0111】
具体的には、上記の検出方法1を採用した場合も同様であるが、例えば上記の検出方法2を採用した場合、各放射線検出素子7から信号線6にリークする電荷qの合計値(図11参照)が仮に信号線6ごとに同じであったとしても、他の読み出し回路17よりも常に大きな値のリークデータdleakを読み出す読み出し回路17もあれば、他の読み出し回路17よりも常に小さな値のリークデータdleakを読み出す読み出し回路17もある。
【0112】
このような状況において、例えば図17に示すように、放射線画像撮影装置1に対して照射野Fが絞られた状態で放射線が照射され、他の読み出し回路17よりも常に大きな値のリークデータdleakを読み出す特性を有する読み出し回路17に接続されている信号線6aが照射野F外に存在する場合を考える。
【0113】
このような場合、図18に示すように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて、照射野F内に存在する信号線6に接続されている読み出し回路17で読み出されたリークデータdleak(図中のγで示されたデータ参照)が放射線の照射により上昇しても、照射野F外に存在する信号線6aに接続されている、常に大きな値のリークデータdleakを読み出す特性を有する読み出し回路17から読み出されたリークデータdleak(図中のδで示されたデータ参照)を越えない場合が生じ得る。
【0114】
このように、放射線の照射により上昇したリークデータdleak(γ)が、信号線6aが照射野F外にあり放射線の照射によっても上昇しないリークデータdleak(δ)を越えない場合、抽出されるリークデータdleakの最大値は、図中δで示されたリークデータdleakになる。そのため、抽出されたリークデータdleakの最大値が、放射線の照射によっても上昇せず、閾値を越えないため、放射線の照射を検出することができなくなる虞れがある。
【0115】
そこで、このような問題を回避するために、例えば、各読み出し処理ごとに読み出されたリークデータdleakの、各読み出し回路17ごとの移動平均を算出するように構成することが可能である。
【0116】
すなわち、リークデータdleakの読み出し処理を行うごとに、当該読み出し処理の直前の読み出し処理を含む例えば10回分等の所定回数分の過去の各読み出し処理で読み出された各リークデータdleakの平均値(すなわち移動平均)dleak_aveを、各読み出し回路17ごとに算出するように構成する。
【0117】
そして、各読み出し回路17ごとに、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakと、算出した移動平均dleak_aveとの差分Δdleakを算出し、差分Δdleakが、予め差分Δdleakについて設定された閾値を越えた読み出し回路17があれば、その時点で放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことを検出するように構成することが可能である。
【0118】
このように構成すれば、上記のような各読み出し回路17の読み出し特性の影響を受けずに、リークデータdleakが上昇したか否かを的確に検出することが可能となり、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0119】
[さらに改良された放射線の照射開始の検出手法について]
しかし、この場合も、数千本から数万本配列されている各信号線6のそれぞれに設けられた各読み出し回路17から、リークデータdleakの各読み出し処理ごとに数千個から数万個の各リークデータdleakが読み出される。そして、それらの各リークデータdleakについて上記の処理を行うように構成すると、やはり移動平均の算出処理や判断処理が重たくなる。
【0120】
そこで、本実施形態の放射線画像撮影装置1では、読み出しIC16内に例えば128個や256個の読み出し回路17が形成されており、読み出しIC16が複数個設けられて各信号線6を各読み出し回路17に接続するように構成されていることを利用して、リークデータdleakの各読み出し処理ごとに、各読み出し回路17で読み出される各リークデータdleakの合計値を各読み出しIC16ごとに算出するように構成する。
【0121】
なお、この場合、各読み出しIC16ごとに各リークデータdleakの合計値を算出するように構成する代わりに、各リークデータdleakの平均値を算出するように構成することも可能である。また、各読み出しIC16ごとに、各リークデータdleakの合計値や平均値を算出する代わりに、各リークデータdleakの中央値(medianや中間値等ともいう。)を算出するように構成することも可能である。以下の説明においても同様である。
【0122】
そして、上記と同様に、各リークデータdleakの合計値の移動平均を読み出しIC16ごとに算出し、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakの読み出しIC16ごとの合計値と、算出した合計値の移動平均との差分を算出する。そして、差分が、当該差分について予め設定された閾値を越えた読み出しIC16があれば、その時点で放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことを検出するように構成することが可能である。
【0123】
このように構成すれば、読み出しIC16の個数は数個から数十個であるため、上記の移動平均の算出や差分の算出、差分と閾値との比較等の処理を、当該数個から数十個の読み出しIC16について行えばよくなるため、読み出されたリークデータdleakが閾値を越えたか否かの判断処理を軽くすることが可能となる。
【0124】
また、上記のようにして、リークデータdleakの各読み出し処理ごとに算出した読み出しIC16ごとの上記の差分の中から最大値を抽出し、その最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することも可能である。この場合、上記の差分は読み出しIC16ごとに同程度の値になるため、図18に示したような問題は生じない。
【0125】
このように構成すれば、各読み出しIC16ごとのリークデータdleak(検出方法1の場合は画像データd)の合計値(或いは平均値や中央値等)の最大値と閾値とを比較すればよくなるため、読み出されたリークデータdleakが閾値を越えたか否かの判断処理を非常に軽くすることが可能となる。
【0126】
[放射線の照射終了の検出について]
一方、図13や図14に示したように、放射線の照射が開始されたことを検出した後、画像データdの読み出し処理(検出方法1の場合。図13参照)や、各放射線検出素子7のリセット処理およびリークデータdleakの読み出し処理(検出方法2の場合。図14参照)を停止して電荷蓄積状態に移行する。
【0127】
そして、前述したように、本実施形態では、この電荷蓄積状態では、ゲートドライバ15bから各走査線5にオフ電圧を印加した状態を維持したまま、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、ゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加させて本画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0128】
しかし、このように構成する代わりに、例えば図19に示すように、電荷蓄積状態において各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成するように構成することも可能である。このように構成すれば、以下で説明するように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の終了を検出することが可能となる。
【0129】
すなわち、放射線の照射開始検出後、電荷蓄積状態でリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成すると、非連携方式の場合、電荷蓄積状態では既に放射線の照射が開始されているため、図20に示すように、読み出されるリークデータdleakは大きな値になっている。そして、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了すると、リークデータdleakは元の小さな値に戻る。
【0130】
そのため、例えば予め閾値dleak_thを設定しておき、リークデータdleakが閾値dleak_th以下の値になった時点(図中の時刻t2参照)で放射線の照射が終了したと判断するように構成することが可能である。
【0131】
なお、この場合の閾値dleak_thは、上記の検出方法2で放射線の照射開始を検出する際の閾値と同じ値であってもよく、別の値として設定することも可能である。また、図20では、時刻t2で放射線の照射の終了を検出した後もリークデータdleakの読み出し処理を続行する場合が示されているが、実際には、下記のように、放射線の照射の終了を検出するとリークデータdleakの読み出し処理は停止される。
【0132】
そして、このように、放射線の照射が終了したことを検出するように構成すれば、図19に示したように、リークデータdleakが閾値dleak_th以下の値になる等して放射線の照射が終了したことが検出された時点(図19中の「A」参照。図20の時刻t2に対応する。)で、各走査線5へのオン電圧の順次の印加を開始して本画像データDの読み出し処理を開始するように構成することができる。
【0133】
このように構成すれば、図19に示したように、放射線の照射の終了を検出した後、すぐに本画像データDの読み出し処理を開始することが可能となり、本画像データDの読み出し処理以降の処理を早期に行うことが可能となるといった利点がある。
【0134】
なお、図19では、図13に示した検出方法1において電荷蓄積状態でリークデータdleakの読み出し処理を行う場合を示したが、図14に示した検出方法2においても同様に、図示を省略するが、電荷蓄積状態において各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、リークデータdleakの読み出し処理を続行して、放射線の照射が終了したことを検出するように構成することも可能である。
【0135】
[複数の走査線にオン電圧を印加することの効果]
図13や図14に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理(検出方法1)や各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法2)において、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから、走査線5の複数のラインLにオン電圧を印加するように構成することで、非連携方式においても、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となるといった優れた効果を得ることが可能となる。
【0136】
すなわち、図39や図40に示した連携方式の場合と同様に、本実施形態における非連携方式の場合にも、本画像データD中に含まれるオフセット分を得るために、図21に示すように、本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理が行われる。なお、図21中に示されている実効蓄積時間Tについては後で説明する。
【0137】
つまり、検出方法1を採用する場合には、図21に示すように、本画像データDの読み出し処理後に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して、画像データdの読み出し処理(或いは読み出し動作を行わずに図21に示すように各放射線検出素子7のリセット処理を行ってもよい。)を1回または2回程度行う。そして、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加して各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させた後、オフセットデータOの読み出し処理を行う。なお、この場合、電荷蓄積状態では放射線画像撮影装置1に放射線は照射されない。
【0138】
また、検出方法2を採用する場合には、図示を省略するが、本画像データDの読み出し処理後に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理と、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理(なお、この場合は読み出し動作を行わなくてもよい。)を1セットまたは2セット程度行う。そして、検出方法1を採用した場合と同様に、電荷蓄積状態を経た後、オフセットデータOの読み出し処理を行う。
【0139】
このように、本実施形態では、本画像データDの読み出し処理の後に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して行う画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を1回や2回程度行った後、すぐに電荷蓄積状態に移行して、オフセットデータOの読み出し処理を行うことが可能となる。
【0140】
図40に示した非連携方式の場合には、本画像データDの読み出し処理を行った後、走査線5の各ラインごとにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理等を行ったため、各放射線検出素子7のリセット処理等に要する時間が長くなり、本画像データDの読み出し処理を行ってからオフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間が長くなった。
【0141】
それに対し、図21に示したように、本実施形態では、同じ非連携方式の場合であっても、検出方法1や検出方法2を採用することによって、本画像データDの読み出し処理の後の各放射線検出素子7のリセット処理等に要する時間が非常に短くなる。そのため、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0142】
また、図38に示した連携方式の場合のように、本画像データDの読み出し処理を行った後で走査線5の各ラインL1〜Lxごとにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理等を行う場合と比較しても、図21に示した本実施形態の非連携方式の場合の方が、本画像データDの読み出し処理の後の各放射線検出素子7のリセット処理等に要する時間が非常に短くなり、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0143】
さらに、前述したように、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態においてリークデータdleakの読み出し処理を行って放射線の照射終了を検出するように構成すれば、電荷蓄積状態に要する時間が短くなる。そのため、オフセットデータOの読み出し処理前の電荷蓄積状態に要する時間も同様に短くなるため、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間をさらに短縮することが可能となる。
【0144】
なお、この場合、オフセットデータOの読み出し処理前の電荷蓄積状態では、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加するように構成すればよく、オフセットデータOの読み出し処理前の電荷蓄積状態では、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態の場合のようにリークデータdleakの読み出し処理を行う必要はない。
【0145】
また、本画像データDの読み出し処理とオフセットデータOの読み出し処理の間に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して行う画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理は、基本的に、本画像データDの読み出し処理で読み出し切れなかった本画像データDの一部がオフセットデータOに含まれる形で読み出されることを防止するために行われる処理である。
【0146】
そして、この場合、上記のように、1回や2回程度(或いは1セットや2セット程度)、画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を行えば、読み残しの本画像データD(正確にはそれに対応する電荷)は、各放射線検出素子7から十分に除去される。
【0147】
従って、本画像データDの読み出し処理とオフセットデータOの読み出し処理の間に行われる画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理の回数は、各放射線検出素子7や読み出し効率或いはリセット効率等を考慮して、上記のように、予め1回や2回程度の少ない回数に設定される。
【0148】
[放射線画像撮影前の処理におけるオン電圧の印加の仕方の変形例について]
ところで、図13や図14、図21では、放射線画像撮影前や、本画像データDの読み出し処理とオフセットデータOの読み出し処理との間に行われる画像データdの読み出し処理や、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理を、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させるようにして行う場合について説明した。
【0149】
この場合、例えば図22に示すように、ゲートドライバ15bや、それを構成するゲートIC15cに、走査線5が接続されていない非接続の端子pが存在する場合には、ゲートドライバ15bの、非接続の端子pを含む全ての端子にオン電圧を一斉に印加して、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させるよう構成してもよく、また、ゲートドライバ15bの、各走査線5が接続されている端子にのみオン電圧を一斉に印加し、非接続の端子pにはオン電圧を印加しないようにして、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させるよう構成してもよい。
【0150】
また、放射線画像撮影前等に行われる画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理は、上記のように、複数の走査線5にオン電圧を印加して行うことが必要であるが、必ずしも走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を印加して行う必要はない。
【0151】
具体的には、例えば、図7に示した走査線5の各ラインL1〜Lxを図中上下方向に二分し、図23に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lmへのオン電圧の印加と、走査線5の各ラインLm+1〜Lxへのオン電圧の印加とを交互に繰り返すように構成することも可能である。
【0152】
また、必ずしも走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉にすなわち同時に印加して行う必要はない。具体的には、例えば、図24に示すように、制御手段22から相関二重サンプリング19に1回目のパルス信号Sp1を送信してから2回目のパルス信号Sp2を送信するまでの間に、ゲートドライバ15bから走査線5の複数のラインLに、オン電圧を、その立上りや立下りのタイミングをずらして印加させるように構成することも可能である。
【0153】
その際、例えば図24に示したように、オン電圧の立上りや立下りを順次ずらして印加するように構成することも可能であり、或いは、図示を省略するが、オン電圧の立上りや立下りを、所定の順番でずらし、或いはランダムにずらして印加するように構成することも可能である。しかし、このオン電圧の立上りや立下りをずらして各走査線5にオン電圧を印加する処理は、図24に示したように、制御手段22から相関二重サンプリング19に1回目のパルス信号Sp1を送信してから2回目のパルス信号Sp2を送信するまでの間に行われることが必要である。
【0154】
なお、図24や後述する図26〜図28では、パルス信号Sp1、Sp2が、図13等に示したパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔よりも大きな送信間隔で送信されるように表されているが、これは図を見易くするための表現であり、実際に送信間隔を大きくすることを意味するものではない。
【0155】
また、図23や図24では、図13等に示した検出方法1を採用して放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理を繰り返し行う場合について示したが、図14等に示した検出方法2を採用し、各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを交互に行わせる場合には、図25に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lmへのオン電圧の印加と、走査線5の各ラインLm+1〜Lxへのオン電圧の印加とを交互に繰り返すように構成したり、或いは図26に示すように、ゲートドライバ15bから走査線5の複数のラインLに、オン電圧の立上りや立下りのタイミングをずらしてオン電圧を印加させるように構成することが可能である。なお、図25では、各放射線検出素子7のリセット処理が「R」、リークデータdleakの読み出し処理が「L」と記載されている。
【0156】
さらに、前述したように、サンプリング回路として、例えば制御手段22から1回だけ送信されたパルス信号Spを受信したタイミングで増幅回路18から出力されている値をサンプリングするサンプリング回路を用いて、例えば図24に示した、検出方法1を採用して放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理を行う場合には、図27に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cをオン状態とし、コンデンサ18bに電荷を蓄積可能な状態で、ゲートドライバ15から、全ての走査線5、または全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、読み出し処理を行わせた後、制御手段22からパルス信号Spを1回送信して、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値をサンプリング回路でサンプリングさせて画像データdとして読み出すように構成することができる。
【0157】
また、このようなサンプリング回路を用いて、例えば図26に示した、検出方法2を採用して、各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを交互に行わせる場合には、図28に示すように、ゲートドライバ15から、全ての走査線5、または全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、各放射線検出素子7のリセット処理を行わせた後、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cをオフ状態とし、コンデンサ18bに電荷を蓄積可能な状態として、例えば所定時間が経過した後に、制御手段22からパルス信号Spを1回送信して、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値をサンプリング回路でサンプリングさせてリークデータdleakとして読み出すように構成することができる。
【0158】
また、前述したように、サンプリング回路が独自のタイミングで自動的にサンプリングを行うように構成されている場合には、例えば図27や図28に示した、制御手段22からパルス信号Spを送信するタイミングで、制御手段22からパルス信号Spを送信せずに、サンプリング回路が独自のタイミングで自動的にサンプリングを行うように構成することができる。なお、図23や図25に示した場合も同様である。
【0159】
また、前述したように、オフセットデータOの読み出し処理では、本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスが繰り返されるように構成される。そのため、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理において、図23や図25に示したように例えば二分された各走査線5に交互にオン電圧を印加したり、図24や図26〜図28に示したようにオン電圧の立上りや立下りをずらして各走査線5にオン電圧を印加するように構成した場合には、本画像データDの読み出し処理後に、それと同じように各走査線5にオン電圧を印加して各放射線検出素子7のリセット処理等が行われる。
【0160】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている全ての走査線5、或いはゲートドライバ15bに接続されている全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、画像データdの読み出し処理や、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるように構成した。
【0161】
そして、例えばサンプリング回路として相関二重サンプリング回路19を用いる場合には、放射線画像撮影前に、制御手段22から相関二重サンプリング回路19に1回目のパルス信号Sp1を送信してから2回目のパルス信号Sp2を送信するまでの間に、ゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている全ての走査線5、或いは全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、画像データdの読み出し処理や、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるように構成した。
【0162】
そのため、本画像データDの読み出し処理の後、全走査線5或いはその一部の複数の走査線5にオン電圧を印加して行う画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を1回や2回程度行った後で、即座に電荷蓄積状態に移行して、オフセットデータOの読み出し処理を行うことが可能となり、本画像データDの読み出し処理を行ってからオフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0163】
また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、放射線画像撮影前に読み出された画像データdやリークデータdleakに基づいて、少なくとも放射線の照射が開始されたことを的確に検出することが可能となる。そのため、放射線発生装置との連携がとれない非連携方式で撮影を行う場合でも、放射線画像撮影装置1自体で、放射線の照射を的確に検出して、放射線画像撮影を的確に行うことが可能となる。
【0164】
[走査線の最初のラインから順に本画像データDの読み出し処理を行うことの効果]
なお、本実施形態では、図13や図14に示したように、制御手段22は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1からオン電圧の印加を開始させて、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させて、本画像データDの読み出し処理を行うように構成されている。このように構成することで、以下のような効果が得られる。
【0165】
上記のオフセットデータOの読み出し処理で読み出されるオフセットデータOは、前述したように、本画像データD中に含まれるオフセット分に相当するデータであり、通常の場合、このオフセット分は、主に、放射線検出素子7自体の熱による熱励起等により発生する、いわゆる暗電荷に起因するものであると考えられる。
【0166】
しかし、本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置1に強い放射線が照射されたような場合、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷による、いわゆるラグ(lag)が発生することが分かっている。そして、このラグは、放射線画像撮影装置1に通常の線量の放射線が照射された場合にも発生するが、さほど大きな値にはならず、無視することが可能である場合も多いが、強い放射線が照射されたような場合には問題になる場合がある。
【0167】
上記の暗電荷は、例えば各放射線検出素子のリセット処理や画像データdの読み出し処理を繰り返すことにより、各放射線検出素子7内から比較的容易に除去される。しかし、上記のラグは、リセット処理を繰り返し行っても容易には消えないことが分かっている。
【0168】
このようにラグが容易に消えない理由は、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電子や正孔の一部が、一種の準安定なエネルギーレベル(metastable state)に遷移して、放射線検出素子内での移動性を失った状態が比較的長時間保たれるためと考えられている。そして、強い放射線が照射されるほど、より多くの電子や正孔がこの準安定なエネルギーレベルに遷移する。
【0169】
そして、この準安定なエネルギー状態の電子や正孔は、いつまでも準安定なエネルギーレベルにあるわけではなく、熱エネルギーによって、ある確率で少しずつこの準安定なエネルギーよりも高いと考えられるエネルギーレベルの伝導帯に遷移して移動性が復活する。しかし、その割合が必ずしも大きくないため、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返し行っても容易に消えないと考えられている。なお、このラグの発生や持続のメカニズムについては、いまだ不明な点も多い。
【0170】
このように、放射線の照射により各放射線検出素子7でラグが発生すると、放射線画像撮影後に行われる取得処理で取得されるオフセットデータOには、上記のような暗電荷に起因する通常のオフセット分(以下Odarkという。)だけでなく、ラグによるオフセット分(以下Olagという。)も含まれることになる。
【0171】
通常、放射線画像撮影後の画像処理では、各放射線検出素子7ごとに、
D*=D−O …(1)
の演算処理が行われて、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用なデータである真の画像データD*が算出され、この真の画像データD*に基づいて最終的な放射線画像が生成される。
【0172】
しかし、上記のように、オフセットデータOにラグによるオフセット分Olagが含まれることにより、以下のような問題が生じる。
【0173】
まず、暗電荷に起因するオフセット分Odarkと、ラグによるオフセット分Olagの発生状況を見た場合、暗電荷は、各放射線検出素子7内で常時発生しており、図29のαに示すように、単位時間あたりに一定の割合で発生していると考えられる。それに対して、ラグは、図29のβに示すように、放射線の照射時から発生し、単位時間あたりの発生割合(すなわち上記の準安定なエネルギーレベルからより高いエネルギーレベルの伝導帯への遷移率)が、放射線の照射開始からの経過時間tに対して減衰していくと考えられている。
【0174】
そして、暗電荷もラグも、ともに、走査線5にオフ電圧が印加されTFT8がオフ状態とされている間に、各放射線検出素子7内に蓄積される。そして、その蓄積分が、それぞれ暗電荷に起因するオフセット分Odarkやラグによるオフセット分Olagとして読み出される。そのため、暗電荷に起因するオフセット分Odarkや、ラグによるオフセット分Olagは、図29のαやβにそれぞれ示した単位時間あたりの発生割合を、各TFT8がオフ状態とされていた時間で積分した値として得られる。
【0175】
すなわち、図21の例で言えば、図中Tで表されるように、オフセットデータOの読み出し処理前の各放射線検出素子7のリセット処理等における最後のリセット処理等で走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経た後、オフセットデータOの読み出し処理で当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間T(以下、実効蓄積時間Tという。)の間に、各放射線検出素子7内に蓄積された暗電荷やラグが、オフセットデータOの読み出し処理で読み出されるオフセットデータOに含まれる暗電荷に起因するオフセット分Odarkやラグによるオフセット分Olagになる。
【0176】
暗電荷に起因するオフセット分Odarkやラグによるオフセット分Olagがこのようにして発生するため、例えば図39に示したように、放射線の照射が開始されたことが検出された際或いはその直前にオン電圧が印加されていた走査線5(図39の場合は走査線5のラインLn)の次の走査線5(図39の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始して本画像データDの読み出し処理を行うように構成すると、以下のような問題が生じる。
【0177】
図39に示したようにして本画像データDの読み出し処理を行った後、図40に示したように、本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスが繰り返されて、オフセットデータOの読み出し処理が行われる。
【0178】
この場合、図30に示すように、例えば走査線5のラインLnと走査線5のラインLn+1とを比べると、オフセットデータOの読み出し処理前の最後の各放射線検出素子7のリセット処理でオフ電圧が印加されてから、オフセットデータOの読み出し処理で印加されたオン電圧がオフ電圧に切り替えるまでのタイミングが、走査線5のラインLn+1の場合の方が走査線5のラインLnの場合よりも早くなる。
【0179】
そのため、その間に、上記の単位時間あたりの発生割合が積分されて算出されるラグによるオフセット分Olagは、図30に示すように、走査線5のラインLn+1の場合の方が、走査線5のラインLnの場合よりも大きな値になる。なお、図30では、各走査線5にオン電圧が印加されるタイミングがそれぞれ矢印で示されている。また、図29や図30では、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データD*の図示が省略されている。真の画像データD*は、通常、暗電荷やラグに比べて格段に大きな値になる。
【0180】
仮に放射線画像撮影装置1に被写体が介在しない状態で、放射線を一様に照射した場合、本画像データDは、各走査線5すなわち各放射線検出素子7で同じ値になる。そして、読み出されるオフセットデータOも、本来、各走査線5で同じになるはずであるが、上記のように、各走査線5で前記タイミングが異なるため、放射線が一様に照射されているにもかかわらず、放射線の照射が検出された走査線5のラインLnで最小で、かつ、その次の走査線5のラインLn+1すなわち本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理が開始される走査線5のラインLn+1で最大になる。
【0181】
そのため、上記(1)式に従って本画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出すると、算出される真の画像データD*は、図31に示すように、走査線5の最初のラインL1からラインLnに向けて次第に大きくなっていき、その次の走査線5のラインLn+1(すなわち本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理が開始された走査線5)で値が急激に小さくなって真の画像データD*に段差が生じた後、走査線5の最終ラインLxに向けて大きくなっていく状態になる。
【0182】
なお、図31および後述する図32では、真の画像データD*の走査線5ごとの違いが非常に強調して表現されている。また、上記のように、各走査線5で実効蓄積時間Tが異なるため、オフセットデータO中に含まれる暗電荷に起因ずるオフセット分Odarkも走査線5ごとに異なる値になる.
【0183】
しかし、各走査線5ごとに見た場合、本画像データDの読み出し処理における実効蓄積時間TとオフセットデータOの読み出し処理における実効蓄積時間Tが同じであるため、本画像データD中に含まれる暗電荷に起因ずるオフセット分OdarkとオフセットデータO中に含まれる暗電荷に起因ずるオフセット分Odarkとが同じ値になる。そのため、暗電荷に起因ずるオフセット分Odarkについては、上記(1)式の減算処理で相殺される。
【0184】
このように、図39や図40に示した本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理の手法を採用すると、上記のように、算出される真の画像データD*に段差が生じるという問題が生じる。
【0185】
しかも、図39等に示した手法では、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5(ラインLn)は撮影ごとに異なる走査線5になる。そして、その次の走査線5(ラインLn+1)から読み出し処理が開始されるため、画像データDやオフセットデータOの読み出し処理が開始される走査線5も撮影ごとに変わる。そのため、放射線画像上で段差が生じる位置、すなわち走査線5のラインLnとラインLn+1の位置が、撮影ごとに変わるという問題もある。
【0186】
また、このように真の画像データD*に段差が生じると、例えば真の画像データD*に基づいて生成される放射線画像を医療における診断用等に用いるような場合、この段差の部分に病変部が撮影されていて病変部か否かを判断しづらくなったり、或いは、段差を病変部と誤診してしまう虞れがある。また、この真の画像データD*の段差を画像処理等で修正する場合に、処理の仕方によっては、段差の部分に撮影された病変部の情報が失われる虞れもある。
【0187】
それに対し、本実施形態では、上記のように、本画像データDの読み出し処理(図13、図14等参照)や、それと同じ処理シーケンスで行われるオフセットデータOの読み出し処理(図21参照)では、走査線5の最初のラインL1からオン電圧の印加を開始し、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理を行わせる。
【0188】
そのため、図示を省略するが、図30から類推して分かるように、オフセットデータO中のラグによるオフセット分Olagは、走査線5の最初のラインL1で最大で、走査線5の最終ラインLxに向かうに従って小さくなり、走査線5の最終ラインLxで最小になる。そのため、オフセットデータO自体も同様の傾向になる。
【0189】
従って、上記(1)式に従って本画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出すると、算出される真の画像データD*は、図32に示すように、走査線5の最初のラインL1で最も小さく、走査線5の最終ラインLxに向かうに従って大きくなり、走査線5の最終ラインLxで最も大きくなり、真の画像データD*に段差が現れない状態になる。
【0190】
このように、本実施形態のように、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理で、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行うように構成することで、真の画像データD*に段差が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0191】
なお、前述したラグの単位時間の発生割合や、上記の実効蓄積時間T、放射線が照射されてから読み出し処理でオン電圧が印加されるまでの時間等に基づいて、オフセットデータO中に含まれるラグによるオフセット分Olagを算出するように構成することも可能である。この場合、読み出したオフセットデータOから、算出したラグによるオフセット分Olagを減算して、暗電荷に起因するオフセット分Odarkを算出し、それを本画像データDから減算して真の画像データD*を算出するように構成することが可能である。
【0192】
また、本実施形態では、上記のように、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理において、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行うように構成する場合を示したが、例えば、走査線5の最終ラインLxからオン電圧の印加を開始し、走査線5のラインLx、Lx-1、…、L2、L1の順にオン電圧を順次印加するように構成しても同様の効果を得ることができる。
【0193】
すなわち、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理において、検出部P(図7等参照)における最端部の走査線5(すなわち走査線5の最初のラインL1または最終ラインLx)からオン電圧の印加を開始させて、各走査線5にオン電圧を順次印加させて読み出し処理を行わせるように構成すれば、同様の効果を得ることが可能となる。
【0194】
[有用なデータが一部失われることに対する処理]
ところで、例えば図13等に示したように、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理を行う上記の検出方法1の場合、前述したように、放射線の照射開始時にオン電圧が印加されると、各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用なデータの一部が失われてしまう。
【0195】
そのため、その後の本画像データDの読み出し処理で各放射線検出素子7から読み出される本画像データDは、それぞれ有用のデータの一部が失われた本画像データDになる。これは、上記の検出方法2の場合も同様である。
【0196】
すなわち、リークデータdleakの読み出し処理(図14中のL参照)中に放射線の照射が開始された場合には本画像データDにはほとんど影響はないが、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加して行われる各放射線検出素子7のリセット処理(図14中のR参照)の最中に放射線の照射が開始されると、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用なデータの一部が各放射線検出素子7内から失われてしまい、その後の本画像データDの読み出し処理で各放射線検出素子7から読み出される本画像データDが、それぞれ有用のデータの一部が失われた本画像データDになる。
【0197】
このような場合に、有用なデータの一部が失われたデータであるという理由で前述したように本画像データDを無効とするように構成すると、各放射線検出素子7から読み出された全ての本画像データDを無効としなければならなくなり、放射線画像撮影を行った意味がなくなる。そのため、本実施形態では、本画像データDを無効にしないようになっている。
【0198】
上記の場合、各放射線検出素子7から読み出された全ての本画像データDについて、それぞれ一定の割合で一部のデータが失われたと考えることが可能である。そのため、全ての本画像データDが、データが失われずに読み出された場合に比べて、読み出される各本画像データDが全体的に一定の割合で小さくなるだけであり、実際上は、後述する図33や図34に示すような場合を除いて、問題を生じない。
【0199】
従って、図13や図14等に示したように、放射線画像撮影前の処理で、ゲートドライバ15bから複数の各走査線5にオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合には、読み出された各本画像データDを、そのまま本画像データDとしてそれぞれ採用することが可能である。
【0200】
また、必要があれば、例えば、読み出された各本画像データDに、それぞれ1より大きい所定の定数を乗算して各本画像データDを一定の割合で増加させるように構成して、読み出された各本画像データDを、データが失われずに読み出された場合の各本画像データDに復元するように構成することも可能である。
【0201】
ところで、走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC15c(図6、図22参照)では、制御手段22から信号を受信すると、各走査線5が接続されている各端子に一斉にオン電圧を印加したり、各端子に印加していたオン電圧を一斉にオフ電圧に切り替える等して、各走査線5に印加する電圧をオン電圧やオフ電圧に一斉に切り替えるように構成されているものがある。
【0202】
そして、各端子に印加する電圧がオフ電圧からオン電圧に、或いはオン電圧からオフ電圧に同時に切り替えられる際に、IC内に大きな電流が流れてICが損傷したり破壊されたりすることを防止するために、ゲートIC15cの中には、例えば図33に示すように、信号を受信した際に、各端子に印加する電圧を切り替えるタイミングが僅かずつ遅延するように構成されているものがある。
【0203】
図33では、各端子に印加されていたオン電圧を一斉にオフ電圧に切り替える信号を受信した場合の各端子ごとの遅延時間の例が示されており、遅延時間が0[ns]の端子がゲートIC15cの中央の端子に相当し、遅延時間が極大値(図33の場合は300[ns])の端子がゲートIC15cの末端の端子に相当する。そして、図33や後述する図34では、ゲートドライバ15bが5個のゲートIC15cで構成されている場合が示されており、グラフの横軸は走査線5のライン番号(すなわちゲートドライバ15bの端子番号)である。
【0204】
このように、各ゲートIC15cの各端子でオン電圧からオフ電圧に切り替わるタイミングが遅延すると、例えば図13に示した検出方法1を使用した例では、放射線の照射開始を検出した最後の画像データdの読み出し処理で、各走査線5に印加されていたオン電圧がオフ電圧に切り替わるタイミングがずれる。
【0205】
そして、より早期にオフ電圧に切り替わる端子(すなわち遅延時間が短い端子)に接続された走査線5では、各TFT8がより早期にオフ状態に切り替わり、各放射線検出素子7内に、放射線の照射により発生した有用な電荷がより多く蓄積される。
【0206】
また、より遅くにオフ電圧に切り替わる端子(すなわち遅延時間が長い端子)に接続された走査線5では、各TFT8がより遅くにオフ状態に切り替わるため、オフ状態に切り替わるまでの間に、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷がより多く信号線6に流出してしまい、各放射線検出素子7内に蓄積される電荷の量が減る。
【0207】
そのため、図34に示すように、上記のような電圧の切り替えに関する遅延時間に応じて、放射線の照射後に読み出される信号値すなわち本画像データDに、いわゆる波状のプロファイルが現れるという問題が生じる場合がある。この傾向は、図14に示した検出方法2を採用した場合においても同様である。
【0208】
このような本画像データD上のばらつきは、上記の遅延時間のばらつきが小さいほど小さくなる。そこで、このような本画像データD上のばらつきを解消する1つの方法として、上記のような各端子ごとの遅延時間のばらつきがない、或いは許容できる範囲内で遅延時間のばらつきが小さいゲートIC15cを用いることが挙げられる。
【0209】
また、例えば、ゲートIC15cの各端子に印加する電圧を切り替える信号を、ゲートIC15cではなく、別の制御回路で受信するように構成し、当該制御回路からゲートIC15cの各端子に同時に信号をそれぞれ送信するように構成する等して、ゲートIC15cから各走査線5に印加する電圧を各端子で同時に切り替えるように構成することも可能である。
【0210】
さらに、上記のようにして読み出された各本画像データDを、後の画像処理で修復するように構成することも可能である。この場合、例えば、各ゲートIC15cの各端子ごと(すなわち各走査線5ごと)の遅延時間t(a)を予め求めておく。なお、t(a)のaは、各走査線5のライン番号を表す。
【0211】
また、例えば、放射線画像撮影装置1を、図19に示したように電荷蓄積状態に移行した後もリークデータdleakの読み出し処理を繰り返すように構成する等して、放射線の照射終了を検出するように構成する。そして、制御手段22で、放射線の照射開始を検出してから照射終了を検出するまでの時間を計測するように構成する。なお、以下、この時間を放射線の照射時間tという。
【0212】
上記のように、ゲートIC15cでの遅延時間により、電荷の欠損を生じた本画像データD、すなわち図34に示したように遅延時間のためにばらつきが生じてしまった本画像データDを本画像データD(a)というものとすると、本来読み出されるべき本画像データDと、電荷が欠損した本画像データD(a)との比は、下記(2)式に示すように、放射線の照射時間tと、放射線の照射時間tから遅延時間t(a)を差し引いた時間との比に等しい。
D:D(a)=t:(t−t(a)) …(2)
【0213】
そのため、本来読み出されるべき本画像データDは、実際に読み出された電荷欠損を生じた本画像データD(a)と、遅延時間t(a)と、照射時間tとに基づいて、
D=D(a)・t/(t−t(a)) …(3)
を演算することにより算出することができる。
【0214】
このように、上記のようなゲートIC15cにおける遅延時間t(a)の影響は、放射線画像撮影後に放射線画像撮影装置1や外部装置であるコンソール(図示省略)等で行われる画像処理によって修復することも可能である。
【0215】
なお、図24に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理(図13参照)や各放射線検出素子7のリセット処理(図14参照)を行う際に、ゲートドライバ15bから各走査線5に印加するオン電圧の立上りや立下りを、所定の順番でずらしたりランダムにずらすように構成する場合にも、ゲートドライバ15bやゲートIC15cの各端子でのオン電圧の立上りや立下りを上記の遅延時間t(a)と同じように予め求めておき、上記と同様にして、画像処理で本画像データDを修復するように構成することが可能である。
【0216】
また、図23に示したように、走査線5の各ラインL1〜Lxを2分し、走査線5の各ラインL1〜Lmへのオン電圧の印加と、走査線5の各ラインLm+1〜Lxへのオン電圧の印加とを交互に繰り返すように構成する場合にも、上記のように、遅延時間t(a)のばらつきがない、或いは十分に小さいゲートIC15cを用いたり、別の制御回路を設けたり、或いは、後の画像処理で本画像データDを修復するように構成することが可能である。
【0217】
しかし、図23の場合には、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5は、全走査線5の半分である。そのため、例えば、走査線5の各ラインL1〜Lmにオン電圧が印加された際に放射線の照射開始が検出された場合には、走査線5の当該各ラインL1〜Lmに接続されている各放射線検出素子7では本画像データDに欠損が生じるが、走査線5の他の各ラインLm+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、本画像データDに欠損は生じない。逆の場合も同様である。
【0218】
そのため、図23に示したように、走査線5の各ラインL1〜Lxを2分したり、各走査線5を複数の範囲に分割して各範囲ごとにそれぞれオン電圧とオフ電圧との切り替えを行うように構成する場合等には、欠損を生じている本画像データDがいずれの走査線5に接続されている放射線検出素子7であるかを的確に判断するように構成して、当該放射線検出素子7から読み出された本画像データDについてだけ修復を行うように構成することが必要である。
【符号の説明】
【0219】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
15b ゲートドライバ
17 読み出し回路
18 増幅回路
18a オペアンプ
18b コンデンサ
18c 電荷リセット用スイッチ
19 相関二重サンプリング回路(サンプリング回路)
22 制御手段
D 本画像データ(本画像としての画像データ)
d 画像データ
dleak リークデータ
L1、Lx 最端部の走査線
O オフセットデータ
P 検出部
q 電荷
r 領域
Sp1、Sp2 パルス信号
Vin、Vfi 電圧値(値)
Vfi−Vin 差分
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像撮影装置に係り、特に、放射線の照射を自ら検出して放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
照射されたX線等の放射線の線量に応じて検出素子で電荷を発生させて電気信号に変換するいわゆる直接型の放射線画像撮影装置や、照射された放射線をシンチレータ等で可視光等の他の波長の電磁波に変換した後、変換され照射された電磁波のエネルギーに応じてフォトダイオード等の光電変換素子で電荷を発生させて電気信号(すなわち画像データ)に変換するいわゆる間接型の放射線画像撮影装置が種々開発されている。なお、本発明では、直接型の放射線画像撮影装置における検出素子や、間接型の放射線画像撮影装置における光電変換素子を、あわせて放射線検出素子という。
【0003】
このタイプの放射線画像撮影装置はFPD(Flat Panel Detector)として知られており、従来は支持台(或いはブッキー装置)と一体的に形成されていたが(例えば特許文献1参照)、近年、放射線検出素子等をハウジングに収納し、持ち運び可能とした可搬型の放射線画像撮影装置が開発され、実用化されている(例えば特許文献2、3参照)。
【0004】
このような放射線画像撮影装置では、例えば後述する図7等に示すように、通常、複数の放射線検出素子7が、検出部P上に二次元状(マトリクス状)に配列され、各放射線検出素子7にそれぞれ薄膜トランジスタ(Thin Film Transistor。以下、TFTという。)8で形成されたスイッチ手段が接続されて構成される。そして、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから各走査線5にオン電圧やオフ電圧が印加され、各TFT8のオン/オフ動作が行われて、各放射線検出素子7内への電荷の蓄積や、各放射線検出素子7から各信号線6への電荷の放出等が行われる。
【0005】
従来の放射線画像撮影では、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行いながら、すなわち両者が連携して撮影を行うように構成されていた。なお、以下、このようにして放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行いながら連携して放射線画像撮影を行う方式を、連携方式という。
【0006】
具体的には、連携方式では、通常、放射線画像撮影装置は、図35に示すように、まず、放射線の照射前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、各放射線検出素子7内に残存する電荷を放出させるリセット処理を繰り返し行う。そして、図36に示すように、放射線発生装置は、放射線技師等の操作により放射線を照射する準備が整うと、放射線を照射する前に、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する旨の信号である照射開始信号を送信する。
【0007】
放射線画像撮影装置は、放射線発生装置から照射開始信号を受信すると、その時点で行っている検出部Pの1面分のリセット処理Rmが終了した時点で各放射線検出素子7のリセット処理を停止し、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて電荷蓄積状態に移行する。そして、このように放射線の照射を受ける準備が完了してから、放射線発生装置にインターロック解除信号を送信する。放射線発生装置は、放射線画像撮影装置からインターロック解除信号を受信すると、放射線画像撮影装置に対して放射線を照射する。
【0008】
そして、放射線画像撮影装置では、図37に示すように、放射線発生装置からの放射線の照射が終了すると、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、画像データDの読み出し処理を行う。
【0009】
なお、図37では、放射線の照射期間が斜線を付して示されている。また、図37では、各放射線検出素子7のリセット処理におけるゲート周期(すなわちある走査線5にオン電圧を印加してから次の走査線5にオン電圧を印加するまでの周期)τが、画像データDの読み出し処理におけるゲート周期τと同じ周期である場合を示したが、画像データDの読み出し処理におけるゲート周期τよりも短い周期になるように設定される場合もある。
【0010】
また、画像データD中に含まれるオフセット分を得るために、図38に示すように、画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスを繰り返して、上記のオフセット分をオフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。すなわち、各放射線検出素子7のリセット処理を行い、放射線が照射されない状態で上記の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加して各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させた後、オフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。
【0011】
しかし、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との製造メーカーが異なっているような場合には、上記のように両者の間で信号等のやり取りを的確に行うことができない場合もある。そして、そのような場合には、放射線画像撮影装置自体で放射線が照射されたことを検出することが必要となる。なお、以下、このように、放射線画像撮影装置と放射線発生装置との間で信号や情報等のやり取りを行わず、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出して放射線画像撮影を行う方式を、非連携方式という。
【0012】
放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出する方法としては、例えば特許文献3に記載されているように放射線画像撮影装置にX線センサを設けて、その出力値によって放射線が照射されたか否かを判定するように構成したり、或いは、例えば特許文献4に記載されているように、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると装置内の配線(例えば後述するバイアス線9や結線10等)中を流れる電流が増加することを利用して、放射線画像撮影装置内に電流検出手段を設けて、電流検出手段からの出力を監視することによって放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出するように構成することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開平9−73144号公報
【特許文献2】特開2006−058124号公報
【特許文献3】特開平6−342099号公報
【特許文献4】特開2009−219538号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、上記のように、放射線画像撮影装置にX線センサや電流検出手段を新たに設けるように構成した場合、例えば、放射線画像撮影装置内にX線センサを配置するためのスペースを設ける必要が生じたり、或いは、電流検出手段で生じたノイズのために、読み出された画像データDのS/N比が悪化する等の新たな問題が生じる。
【0015】
そこで、このような問題が生じることを回避するために、放射線画像撮影装置に新たなセンサや手段を設けずに、既に設けられている読み出し回路17等の各機能部を用いて、放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出して放射線画像撮影を行うことが可能な放射線画像撮影装置の研究が進められている。
【0016】
既設の各機能部を用いて放射線の照射を検出する手法としては、例えば、放射線画像撮影前から、画像データd(上記のように放射線が照射された後に読み出される本画像としての画像データDと区別するために画像データdという。)の読み出し処理を行って、放射線画像撮影装置に放射線が照射されると読み出される画像データdの値が急激に上昇することを利用して放射線の照射を検出するように構成することが考えられる。
【0017】
この場合、放射線画像撮影前から、ゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して画像データdの読み出し処理を行い、図39に示すように、例えば走査線5のラインLnにオン電圧を印加した際に読み出された画像データdが例えば予め設定された閾値を越える等して放射線の照射が開始されたことが検出された時点で、ゲートドライバ15bから走査線5の全ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて電荷蓄積状態に移行する。
【0018】
そして、所定時間が経過する等した後に、走査線5の各ラインLn+1〜Lx、L1〜Lnにオン電圧を順次印加して本画像としての画像データD(以下、本画像データDという。)の読み出し処理を行う。
【0019】
そして、連携方式の場合(図38参照)の場合と同様に、非連携方式の場合も本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスを繰り返して、オフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。すなわち、図40に示すように、画像データdの読み出し処理を行い、放射線が照射されない状態で上記の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加して各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させた後、オフセットデータOとして読み出す読み出し処理を行う。
【0020】
なお、この場合、図40に示すように、本画像データDの読み出し処理(図39参照)後に画像データdの読み出し処理を行う代わりに、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成することも可能である。本画像データDの読み出し処理(図39参照)後に、画像データdに基づく放射線の照射開始の検出を行う必要がないためである。
【0021】
ところで、図39や図40に示した非連携方式の場合、各走査線5にオン電圧を印加する時間(以下、オン時間という。すなわちゲートドライバ15bから走査線5にオン電圧を印加してから印加した電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間である。)T*を、本画像データDの読み出し処理におけるオン時間Tよりも長くなるように制御すると、画像データdによる放射線の照射開始の検出効率が向上するため、好ましい。
【0022】
また、上記のように、放射線画像撮影装置に放射線が照射されて画像データdの値が上昇するということは、その分だけ、放射線の照射により各放射線検出素子7で発生した有用な電荷が当該各放射線検出素子7から失われてしまうことを意味する。そのため、当該各放射線検出素子7から読み出された本画像データDは、有用なデータの一部が失われてしまっているため、当該各放射線検出素子7が接続されている各走査線5の部分に、いわゆる線欠陥が生じることになる。
【0023】
そのため、放射線画像撮影装置に対して実際に放射線の照射が開始されてから複数の走査線5にオン電圧が印加された後に放射線の照射開始が検出されるような場合、その間にオン電圧が印加された各走査線5に接続されている各放射線検出素子7からも、同様に有用な電荷が失われる。そのため、放射線が実際に照射されてから検出されるまでの間に例えば走査線5のラインLn〜Ln+2にオン電圧が印加された場合、図41に示すように、3本の走査線5の部分に線欠陥が連続して現れる状態になる。
【0024】
このように線欠陥が連続して現れるとその部分の有用なデータが失われてしまうため、これを防止し、或いは線欠陥が連続して生じるとしてもその発生本数を極力抑制するために、例えば図39に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理におけるゲート周期τ*を、本画像データDの読み出し処理におけるゲート周期τよりも長くなるように制御することが好ましい。このように制御すれば、放射線が実際に照射されてから検出されるまでの間にオン電圧が印加される走査線5の本数を減らすことが可能となる。
【0025】
このように、非連携方式において放射線画像撮影装置自体で放射線の照射を検出するように構成する場合、放射線の照射開始の検出効率を向上させたり、発生する線欠陥の本数を低減させる等の目的で、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理等におけるオン時間T*やゲート周期τ*を、本画像データDの読み出し処理の際のオン時間Tやゲート周期τよりも長くなるように制御されることが必要となる。
【0026】
しかし、そのため、図40に示したように、少なくともオフセットデータOの読み出し処理の前に行われる各放射線検出素子7のリセット処理(或いは画像データdの読み出し処理。以下同じ。)に要する時間が、図38に示した連携方式の場合よりも長くなる。また、オフセットデータOの読み出し処理の前にリセット処理を複数回繰り返して行うように構成する場合には、リセット処理に要する時間がさらに長くなる。
【0027】
このように、非連携方式で撮影を行う場合、連携方式の場合よりも、オフセットデータOの読み出し処理を含む処理全体に要する時間が長期化してしまうといった問題がある。
【0028】
本発明は、上記の問題点を鑑みてなされたものであり、放射線発生装置との連携がとれない非連携方式で撮影を行う場合にも、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能な放射線画像撮影装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0029】
前記の問題を解決するために、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて行う前記各放射線検出素子のリセット処理と、前記各走査線にオフ電圧を印加させた状態で前記スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークする電荷に対応して前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングしてリークデータとして読み出すリークデータの読み出し処理とを交互に行わせ、読み出した前記リークデータに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする。
【0030】
また、本発明の放射線画像撮影装置は、
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させた状態で前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングして画像データとして読み出す画像データの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記画像データに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0031】
本発明のような方式の放射線画像撮影装置によれば、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバから、ゲートドライバに接続されている全走査線或いはそのうちの一部の複数の走査線にオン電圧を印加させて、画像データの読み出し処理や、リークデータの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子のリセット処理を行わせる。
【0032】
そのため、本画像としての画像データの読み出し処理の後、全走査線或いはその一部の複数の走査線にオン電圧を印加して行う画像データの読み出し処理や各放射線検出素子のリセット処理を1回や2回程度行った後、即座に電荷蓄積状態に移行して、オフセットデータの読み出し処理等を行うことが可能となり、本画像データの読み出し処理を行ってからオフセットデータの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0033】
また、放射線画像撮影前に読み出された画像データやリークデータに基づいて、少なくとも放射線の照射が開始されたことを的確に検出することが可能となる。そのため、放射線発生装置との連携がとれない非連携方式で撮影を行う場合でも、放射線画像撮影装置自体で、放射線の照射を的確に検出して、放射線画像撮影を的確に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図である。
【図2】図1の放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。
【図3】図1におけるX−X線に沿う断面図である。
【図4】放射線画像撮影装置の基板の構成を示す平面図である。
【図5】図4の基板上の小領域に形成された放射線検出素子とTFT等の構成を示す拡大図である。
【図6】COFやPCB基板等が取り付けられた基板を説明する側面図である。
【図7】放射線画像撮影装置の等価回路を表すブロック図である。
【図8】検出部を構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【図9】各放射線検出素子のリセット処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図10】画像データの読み出し処理における電荷リセット用スイッチ、パルス信号、TFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図11】TFTを介して各放射線検出素子からリークした各電荷がリークデータとして読み出されることを説明する図である。
【図12】リークデータの読み出し処理における電荷リセット用スイッチやTFTのオン/オフのタイミングを表すタイミングチャートである。
【図13】放射線画像撮影前に複数の走査線にオン電圧を印加して画像データの読み出し処理を行う場合のタイミングチャートである。
【図14】放射線画像撮影前にリークデータの読み出し処理と複数の走査線にオン電圧を印加して行う各放射線検出素子のリセット処理とを交互に行う場合のタイミングチャートである。
【図15】放射線画像撮影前から行われる読み出し処理で読み出される画像データを時系列的にプロットしたグラフである。
【図16】検出用の信号線を指定する場合の構成例の等価回路を表すブロック図である。
【図17】放射線画像撮影装置に照射野が絞られた放射線が照射された場合を表す図である。
【図18】各読み出し回路で読み出されるリークデータの時間的推移の例を表すグラフである。
【図19】図13の場合に電荷蓄積状態でリークデータの読み出し処理を繰り返し行うように構成した場合のタイミングチャートである。
【図20】放射線の照射が終了するとリークデータが減少することを示すグラフである。
【図21】図13の本画像データの読み出し処理からオフセットデータの読み出し処理が行われるまでのタイミングチャートである。
【図22】ゲートドライバやゲートICにおける非接続の端子を説明する図である。
【図23】二分した各走査線に交互にオン電圧を印加して放射線画像撮影前の画像データの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図24】パルス信号を2回送信する間に複数の走査線に印加するオン電圧の立上りや立下りをずらして放射線画像撮影前の画像データの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図25】二分した各走査線に交互にオン電圧を印加して放射線画像撮影前のリセット処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図26】複数の走査線に印加するオン電圧の立上りや立下りをずらして放射線画像撮影前のリセット処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図27】図24の例でパルス信号を1回だけ送信して放射線画像撮影前の画像データの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図28】図26の例でパルス信号を1回だけ送信して放射線画像撮影前のリークデータの読み出し処理を行うように構成した場合の例を表すタイミングチャートである。
【図29】単位時間あたりに一定の割合で発生する暗電荷(α)と単位時間あたりの発生割合が減衰するラグ(β)の時間的推移を表すグラフである。
【図30】放射線が照射された後のオフセットデータの読み出し処理でオフセットデータを読み出すタイミング次第でラグによるオフセット分が変わることを説明する図である。
【図31】図39、図40による処理では本画像データの読み出し処理等が開始された走査線の前後で真の画像データに段差が生じることを説明する図である。
【図32】図13、図21による処理では本画像データの読み出し処理等が開始された走査線の前後で真の画像データに段差が生じないことを説明する図である。
【図33】各ゲートICの各端子に印加する電圧を切り替えるタイミングの遅延時間を説明するグラフである。
【図34】図33に示したゲートICを用いると本画像データ(信号値)に波状のプロファイルが現れる場合があることを説明するグラフである。
【図35】連携方式において放射線の照射前に各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合のタイミングチャートである。
【図36】連携方式における照射開始信号の送信、リセット処理の終了および電荷蓄積状態への移行、インターロック解除信号の送信、および放射線の照射のタイミングを表すタイミングチャートである。
【図37】連携方式における各走査線にオン電圧を順次印加するタイミングを表すタイミングチャートである。
【図38】連携方式の場合に図37に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理が行われることを説明するタイミングチャートである。
【図39】非連携方式において放射線画像撮影前に各走査線にオン電圧を順次印加して各放射線検出素子のリセット処理を行うように構成した場合の本画像データの読み出し処理までのタイミングチャートである。
【図40】非連携方式の場合に図39に示した一連の処理と同じ処理シーケンスを繰り返してオフセットデータの読み出し処理が行われることを説明するタイミングチャートである。
【図41】線欠陥が連続して現れる状態を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明に係る放射線画像撮影装置の実施の形態について、図面を参照して説明する。
【0036】
なお、以下では、放射線画像撮影装置として、シンチレータ等を備え、放射された放射線を可視光等の他の波長の電磁波に変換して電気信号を得るいわゆる間接型の放射線画像撮影装置について説明するが、本発明は、シンチレータ等を介さずに放射線を放射線検出素子で直接検出する、いわゆる直接型の放射線画像撮影装置に対しても適用することができる。また、放射線画像撮影装置がいわゆる可搬型である場合について説明するが、支持台等と一体的に形成された、いわゆる専用機型の放射線画像撮影装置に対しても適用される。
【0037】
図1は、本実施形態に係る放射線画像撮影装置の外観斜視図であり、図2は、放射線画像撮影装置を反対側から見た外観斜視図である。また、図3は、図1のX−X線に沿う断面図である。放射線画像撮影装置1は、図1〜図3に示すように、筐体状のハウジング2内にシンチレータ3や基板4等で構成されるセンサパネルSPが収納されている。
【0038】
図1や図2に示すように、本実施形態では、筐体2のうち、放射線入射面Rを有する中空の角筒状のハウジング本体部2Aは、放射線を透過するカーボン板やプラスチック等の材料で形成されており、ハウジング本体部2Aの両側の開口部を蓋部材2B、2Cで閉塞することで筐体2が形成されている。なお、筐体2をこのようないわゆるモノコック型として形成する代わりに、例えば、フロント板とバック板とで形成された、いわゆる弁当箱型とすることも可能である。
【0039】
図1に示すように、筐体2の一方側の蓋部材2Bには、電源スイッチ37や切替スイッチ38、コネクタ39、バッテリ状態や放射線画像撮影装置1の稼働状態等を表示するLED等で構成されたインジケータ40等が配置されている。
【0040】
また、図2に示すように、放射線画像撮影装置1が例えばコンソール等の図示しない外部装置との情報や信号等の送受信を無線方式で行うための通信手段としてのアンテナ装置41が、例えば筐体2の反対側の蓋部材2C等に設けられている。アンテナ装置41は、例えば蓋部材2Cに埋め込む等して設けることが可能である。なお、アンテナ装置41の設置位置は蓋部材2Cに限定されず、放射線画像撮影装置1の任意の位置にアンテナ装置41を設置することが可能である。また、設置するアンテナ装置41は1個に限らず、複数設けることも可能である。
【0041】
図示を省略するが、コネクタ39に例えばケーブル等が接続されることにより、外部装置との情報や信号等の送受信を有線方式で行うように構成することも可能である。この場合、コネクタ39が通信手段として機能する。なお、アンテナ装置41やコネクタ39を介して図示しない放射線発生装置と信号等の送受信を行うことができるように構成することは可能であるが、少なくとも、本実施形態のように、放射線画像撮影装置1を用いて非連携方式で放射線画像撮影を行う場合には、コネクタ39等を介しての放射線発生装置との通信は行わない。
【0042】
図3に示すように、筐体2の内部には、基板4の下方側に図示しない鉛の薄板等を介して基台31が配置され、基台31には、電子部品32等が配設されたPCB基板33や緩衝部材34等が取り付けられている。また、基板4やシンチレータ3の放射線入射面Rには、それらを保護するためのガラス基板35が配設されている。また、本実施形態では、センサパネルSPと筐体2の側面との間に、それらがぶつかり合うことを防止するための緩衝材36が設けられている。
【0043】
シンチレータ3は、基板4の後述する検出部Pに対向する位置に設けられるようになっている。本実施形態では、シンチレータ3は、例えば、蛍光体を主成分とし、放射線の入射を受けると300〜800nmの波長の電磁波、すなわち可視光を中心とした電磁波に変換して出力するものが用いられる。
【0044】
基板4は、本実施形態では、ガラス基板で構成されており、図4に示すように、基板4のシンチレータ3に対向する側の面4a上には、複数の走査線5と複数の信号線6とが互いに交差するように配設されている。基板4の面4a上の複数の走査線5と複数の信号線6により区画された各小領域rには、放射線検出素子7がそれぞれ設けられている。
【0045】
このように、走査線5と信号線6で区画された各小領域rに二次元状に配列された複数の放射線検出素子7が設けられた領域r全体、すなわち図4に一点鎖線で示される領域が検出部Pとされている。
【0046】
本実施形態では、放射線検出素子7としてフォトダイオードが用いられているが、この他にも例えばフォトトランジスタ等を用いることも可能である。各放射線検出素子7は、図4の拡大図である図5に示すように、スイッチ手段であるTFT8のソース電極8sに接続されている。また、TFT8のドレイン電極8dは信号線6に接続されている。
【0047】
放射線検出素子7は、放射線画像撮影装置1の筐体2の放射線入射面Rから放射線が入射し、シンチレータ3で放射線から変換された可視光等の電磁波が照射されると、その内部で電子正孔対を発生させる。放射線検出素子7は、このようにして、照射された放射線(シンチレータ3から照射された電磁波)を電荷に変換するようになっている。
【0048】
そして、TFT8は、後述する走査駆動手段15から走査線5を介してゲート電極8gにオン電圧が印加されるとオン状態となり、ソース電極8sやドレイン電極8dを介して放射線検出素子7内に蓄積されている電荷を信号線6に放出させるようになっている。また、TFT8は、接続された走査線5を介してゲート電極8gにオフ電圧が印加されるとオフ状態となり、放射線検出素子7から信号線6への電荷の放出を停止して、放射線検出素子7内に電荷を蓄積させるようになっている。
【0049】
本実施形態では、図5に示すように、それぞれ列状に配置された複数の放射線検出素子7に1本のバイアス線9が接続されており、図4に示すように、各バイアス線9はそれぞれ信号線6に平行に配設されている。また、各バイアス線9は、基板4の検出部Pの外側の位置で結線10に結束されている。
【0050】
本実施形態では、図4に示すように、各走査線5や各信号線6、バイアス線9の結線10は、それぞれ基板4の端縁部付近に設けられた入出力端子(パッドともいう。)11に接続されている。各入出力端子11には、図6に示すように、後述する走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC15c等のチップがフィルム上に組み込まれたCOF(Chip On Film)12が異方性導電接着フィルム(Anisotropic Conductive Film)や異方性導電ペースト(Anisotropic Conductive Paste)等の異方性導電性接着材料13を介して接続されている。
【0051】
そして、COF12は、基板4の裏面4b側に引き回され、裏面4b側で前述したPCB基板33に接続されるようになっている。このようにして、放射線画像撮影装置1のセンサパネルSPが形成されている。なお、図6では、電子部品32等の図示が省略されている。
【0052】
ここで、放射線画像撮影装置1の回路構成について説明する。図7は本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の等価回路を表すブロック図であり、図8は検出部Pを構成する1画素分についての等価回路を表すブロック図である。
【0053】
前述したように、基板4の検出部Pの各放射線検出素子7は、その第2電極7bにそれぞれバイアス線9が接続されており、各バイアス線9は結線10に結束されてバイアス電源14に接続されている。バイアス電源14は、結線10および各バイアス線9を介して各放射線検出素子7の第2電極7bにそれぞれバイアス電圧を印加するようになっている。また、バイアス電源14は、後述する制御手段22に接続されており、制御手段22により、バイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧が制御されるようになっている。
【0054】
図7や図8に示すように、本実施形態では、バイアス電源14からは、放射線検出素子7の第2電極7bにバイアス線9を介してバイアス電圧として放射線検出素子7の第1電極7a側にかかる電圧以下の電圧(すなわちいわゆる逆バイアス電圧)が印加されるようになっている。
【0055】
走査駆動手段15は、配線15dを介してゲートドライバ15bにオン電圧とオフ電圧を供給する電源回路15aと、走査線5の各ラインL1〜Lxに印加する電圧をオン電圧とオフ電圧の間で切り替えて各TFT8のオン状態とオフ状態とを切り替えるゲートドライバ15bとを備えている。本実施形態では、ゲートドライバ15bは、複数の前述したゲートIC15c(図6参照)が並設されて構成されている。
【0056】
なお、各放射線検出素子7からの本画像データDの読み出し処理等の際の、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxへのオン電圧の印加等については、後で説明する。
【0057】
図7や図8に示すように、各信号線6は、読み出しIC16内に形成された各読み出し回路17にそれぞれ接続されている。読み出し回路17は、増幅回路18と、サンプリング回路としての相関二重サンプリング回路19等で構成されている。読み出しIC16内には、さらに、アナログマルチプレクサ21と、A/D変換器20とが設けられている。なお、図7や図8中では、相関二重サンプリング回路19はCDSと表記されている。また、図8中では、アナログマルチプレクサ21は省略されている。
【0058】
本実施形態では、増幅回路18は、オペアンプ18aと、オペアンプ18aにそれぞれ並列にコンデンサ18bおよび電荷リセット用スイッチ18cが接続され、オペアンプ18a等に電力を供給する電源供給部18dを備えたチャージアンプ回路で構成されている。増幅回路18のオペアンプ18aの入力側の反転入力端子には信号線6が接続されており、増幅回路18の入力側の非反転入力端子には基準電位V0が印加されるようになっている。なお、基準電位V0は適宜の値に設定され、本実施形態では、例えば0[V]が印加されるようになっている。
【0059】
また、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cは、制御手段22に接続されており、制御手段22によりオン/オフが制御されるようになっている。また、オペアンプ18aと相関二重サンプリング回路19との間には、電荷リセット用スイッチ18cと連動して開閉するスイッチ18eが設けられており、スイッチ18eは、電荷リセット用スイッチ18cがオン/オフ動作と連動してオフ/オン動作するようになっている。
【0060】
放射線画像撮影装置1で、各放射線検出素子7内に残存する電荷を除去するための各放射線検出素子7のリセット処理を行う際には、図9に示すように、電荷リセット用スイッチ18cがオン状態(およびスイッチ18eがオフ状態)とされた状態で、各TFT8がオン状態とされると、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出され、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cを通過して、オペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出すようになっている。
【0061】
一方、各放射線検出素子7からの画像データDの読み出し処理の際には、図10に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオフ状態(およびスイッチ18eがオン状態)とされた状態で、オン状態とされた各TFT8を介して各放射線検出素子7から電荷が信号線6に放出されると、電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積される。そして、増幅回路18では、コンデンサ18bに蓄積された電荷量に応じた電圧値がオペアンプ18aの出力側から出力されるようになっており、増幅回路18により、各放射線検出素子7から流出した電荷が電荷電圧変換されるようになっている。
【0062】
そして、増幅回路18の出力側に設けられた相関二重サンプリング回路(CDS)19は、各放射線検出素子7から電荷が流出する前に制御手段22からパルス信号Sp1(図10参照)が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vinを保持し、上記のように各放射線検出素子7から流出した電荷が増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積された後に制御手段22からパルス信号Sp2が送信されると、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値Vfiを保持する。
【0063】
そして、相関二重サンプリング回路19は、2回目のパルス信号Sp2で電圧値Vfiを保持すると、電圧値の差分Vfi−Vinを算出し、算出した差分Vfi−Vinをアナログ値の画像データDとして下流側に出力するようになっている。そして、相関二重サンプリング回路19から出力された各放射線検出素子7の画像データDは、アナログマルチプレクサ21を介して順次A/D変換器20に送信され、A/D変換器20で順次デジタル値の画像データDに変換されて記録手段23に出力されて順次保存されるようになっている。
【0064】
なお、1回の画像データDの読み出し処理が終了すると、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cがオン状態とされ(図10参照)、コンデンサ18bに蓄積された電荷が放電されて、上記と同様に、放電された電荷がオペアンプ18aの出力端子側からオペアンプ18a内を通り、非反転入力端子から出てアースされたり、電源供給部18dに流れ出す等して、増幅回路18がリセットされる。
【0065】
また、増幅回路18は、必ずしも本実施形態のようにチャージアンプ回路で構成される必要はなく、各走査線5にオン電圧が印加されて各放射線検出素子7から流出した電荷の量に応じた値を出力するものであれば、他の形態の増幅回路を用いることも可能である。
【0066】
さらに、本実施形態では、上記のように、サンプリング回路として、相関二重サンプリング回路19を用いる場合を示したが、この他にも、例えば制御手段22から1回だけ送信されたパルス信号を受信すると、そのタイミングで増幅回路18から出力されている値をサンプリングして、データとして出力するサンプリング回路を用いるように構成することも可能である。なお、この場合、例えば、制御手段22からパルス信号を送信せずに、サンプリング回路が独自のタイミングで自動的にサンプリングを行うようなサンプリング回路を用いることも可能である。
【0067】
制御手段22は、図示しないCPU(Central Processing Unit)やROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、入出力インターフェース等がバスに接続されたコンピュータや、FPGA(Field Programmable Gate Array)等により構成されている。専用の制御回路で構成されていてもよい。そして、制御手段22は、放射線画像撮影装置1の各部材の動作等を制御するようになっている。また、図7等に示すように、制御手段22には、DRAM(Dynamic RAM)等で構成される記録手段23が接続されている。
【0068】
また、本実施形態では、制御手段22には、前述したアンテナ装置41が接続されており、さらに、検出部Pや走査駆動手段15、読み出し回路17、記録手段23、バイアス電源14等の各部材に電力を供給するためのバッテリ24が接続されている。また、バッテリ24には、図示しない充電装置からバッテリ24に電力を供給してバッテリ24を充電する際の接続端子25が取り付けられている。
【0069】
前述したように、制御手段22は、バイアス電源14を制御してバイアス電源14から各放射線検出素子7に印加するバイアス電圧を設定したり可変させたりするなど、放射線画像撮影装置1の各機能部の動作を制御するようになっている。
【0070】
本実施形態では、前述したように、非連携方式、すなわち放射線画像撮影装置1と放射線発生装置(図示省略)との間で信号等のやり取りを行わずに、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行う方式において、放射線画像撮影装置1で行われる本発明特有の処理について説明する。
【0071】
[放射線の照射開始の検出方法について]
本実施形態では、放射線画像撮影装置1にX線センサ等の新たな機能部を設けずに、装置に既設の各機能部を用いて放射線の照射開始の検出や放射線画像撮影等を行うようになっている。このように、装置に既設の各機能部を用いて放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を検出する方法としては、例えば下記の2つの検出方法を採用することが可能である。以下、上記の本発明特有の処理について説明する前に、その前提となる放射線の照射開始の検出方法について説明する。
【0072】
[検出方法1]
例えば、前述した図39等に示したように、放射線画像撮影前に、各放射線検出素子7からの画像データdの読み出し処理を行って、読み出した画像データdに基づいて放射線の照射開始を検出するように構成することが可能である。なお、この場合、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理は、放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射を検出するための処理であるが、各放射線検出素子7内に残存する暗電荷等の電荷を各放射線検出素子7内から除去する各放射線検出素子7のリセット処理も兼ねている。
【0073】
しかし、本実施形態では、図39等に示したように、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加するのではなく、後述する図13等に示すように、走査線5の複数のラインにオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理を行うようになっている。この点については後で説明する。
【0074】
検出方法1のように、放射線画像撮影前に画像データdの読み出し処理を行う場合、図10に示したように、ゲートドライバ15bから走査線5にオン電圧を印加する前後に相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1、Sp2を送信し、走査線5にオン電圧を印加した後に増幅回路18から出力されている電圧値Vfiから、走査線5にオン電圧を印加する前に増幅回路18から出力されていた電圧値Vinを減算し、その電圧値の差分Vfi−Vinが画像データdとして読み出される。
【0075】
[検出方法2]
一方、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成することも可能である。リークデータdleakとは、図11に示すように、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、オフ状態になっている各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値に相当するデータである。
【0076】
そして、リークデータdleakの読み出し処理では、図12に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lxにオフ電圧を印加して各TFT8をオフ状態とした状態で、制御手段22から各読み出し回路17の相関二重サンプリング回路19(図7、8のCDS参照)にパルス信号Sp1、Sp2を送信してリークデータdleakが読み出される。
【0077】
この場合、画像データdの読み出し処理(図10参照)の場合と異なり、ゲートドライバ15bから各走査線5へのオン電圧の印加は行われないが、制御手段22から相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1が送信された時点からパルス信号Sp2が送信されるまでの間に増幅回路18のコンデンサ18bに蓄積された、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷qの信号線6ごとの合計値が、リークデータdleakとして読み出される。
【0078】
しかし、上記のようにしてリークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うと、各TFT8がオフ状態のままであるため、各放射線検出素子7内で発生した暗電荷が各放射線検出素子7内に蓄積され続ける状態になる。そして、各放射線検出素子7内に暗電荷が大量に蓄積されると、その後、放射線画像撮影装置1に放射線が照射され、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷を蓄積できる量、すなわち各放射線検出素子7のダイナミックレンジが狭められてしまう。
【0079】
そのため、放射線画像撮影前にリークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成する場合には、リークデータdleakの読み出し処理と次のリークデータdleakの読み出し処理との間で、各放射線検出素子7のリセット処理を行うように構成される。すなわち、後述する図14等に示すように、リークデータdleakの読み出し処理と各放射線検出素子7のリセット処理とを交互に行うように構成される。
【0080】
そして、本実施形態では、このリークデータdleakの間のリセット処理では、後述する図14等に示すように、走査線5の複数のラインにオン電圧を印加してリセット処理を行うようになっているが、この点については後で説明する。
【0081】
[放射線画像撮影前の処理における各走査線へのオン電圧の印加の仕方について]
次に、非連携方式において放射線画像撮影装置1自体で放射線の照射開始を検出して放射線画像撮影を行う方式における本発明特有の放射線画像撮影前の処理等について説明する。また、以下、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1の作用についてもあわせて説明する。
【0082】
本実施形態では、上記の検出方法1を採用する場合も、検出方法2を採用する場合も、放射線画像撮影前にゲートドライバ15bから各走査線5にオン電圧を印加する際に、走査線5の複数のラインLにオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理(検出方法1の場合)や各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法2の場合)を行うように構成されている。
【0083】
具体的には、検出方法1の場合には、制御手段22は、例えば図13に示すように、相関二重サンプリング回路19にパルス信号Sp1、Sp2を送信する間に、ゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させ、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ各電荷を放出させて画像データdとして読み出す読み出し処理を繰り返し行わせるように構成される。
【0084】
この場合、図11に示した各放射線検出素子7と信号線6と読み出し回路17(図11では増幅回路18が代表して示されている。)との関係から分かるように、各読み出し回路17で読み出される画像データdは、当該読み出し回路17に接続された1本の信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データの合計値に相当する。
【0085】
そして、制御手段22は、後述するように読み出された画像データdに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出すると、図13に示すように、画像データdの読み出し処理を停止させ、ゲートドライバ15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて各TFT8をオフ状態にして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0086】
そして、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した後、制御手段22は、ゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加させて、本画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0087】
また、検出方法2の場合も、同様にして処理が行われる。すなわち、前述したように、本実施形態では、制御手段22は、放射線画像撮影前に、リークデータdleakの読み出し処理(図12参照。後述する図14では「L」と記載されている。)と各放射線検出素子7のリセット処理(図9参照。後述する図14では「R」と記載されている。)とを交互に繰り返して行う。
【0088】
その際、各放射線検出素子7のリセット処理では、例えば図14に示すように、ゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させ、走査線5の各ラインL1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7からそれぞれ残存する電荷を放出させてリセット処理を行うように構成される。
【0089】
そして、制御手段22は、後述するように読み出されたリークデータdleakに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出すると、図14に示すように、リークデータdleakの読み出し処理を停止させ、ゲートドライバ15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオフ電圧を印加させて各TFT8をオフ状態にして、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷を各放射線検出素子7内に蓄積させる電荷蓄積状態に移行させる。
【0090】
そして、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した後、制御手段22は、ゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加させて、本画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0091】
[放射線の照射開始の検出について]
[原理]
上記の検出方法2の場合も同様であるが、検出方法1のように、放射線画像撮影前に、上記のようにして画像データdの読み出し処理を行うように構成した場合、図15に示すように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が開始されると、その時点(図中の時刻t1参照)で読み出された画像データd(検出方法2の場合はリークデータdleak。以下同じ。)が、それ以前に読み出された画像データdよりも格段に大きな値になる。
【0092】
そこで、制御手段22で放射線画像撮影前の読み出し処理で読み出された画像データdを監視するように構成し、例えば図15に示すように、画像データdについて予め閾値dthを設定しておく。そして、読み出された画像データdが閾値dthを越えた時点で、放射線の照射が開始されたことを検出するように構成することが可能である。
【0093】
[検出方法1を採用する場合の注意点]
なお、その際、特に検出方法1では、上記のように、読み出される画像データdは、1本の信号線6に接続されている各放射線検出素子7から読み出された画像データの合計値になるため、放射線画像撮影装置1に放射線が照射された際に読み出される画像データdは、非常に大きな値になり、読み出しIC16(図7参照)が破損する等の問題が生じる虞れがある。
【0094】
そこで、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、例えば、ゲートドライバ15bから各走査線5を介して各TFT8に印加するオン電圧を、本画像データDの読み出し処理等の際に印加する通常のオン電圧よりも低い値とし、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理に各TFT8を介して各放射線検出素子7から流出する電荷の量を低減させるように構成することが可能である。
【0095】
しかし、このように各TFT8に印加するオン電圧を低い値とすると、上記のように画像データdに基づいて放射線の照射開始を検出する際の検出感度が低下する可能性がある。そこで、このように、各TFT8に印加するオン電圧を低い値とすると検出感度が低下するような場合には、放射線画像撮影装置1を以下のように構成することで、その問題を解消することが可能となる。
【0096】
すなわち、例えば、まず、図16に示すように、前述した各読み出しIC16に接続されている、例えば128本や256本等の各信号線6の中から、各読み出しIC16ごとに1本或いは数本の所定の信号線6を検出用の信号線6αとして指定する。
【0097】
なお、図16では、各読み出しIC16の両端部の各信号線6がそれぞれ読み出しIC16ごとに検出用の信号線6αとして指定された場合が示されている。また、図16では、各放射線検出素子7が走査線方向の2行分しか記載されていないが、他の行の各放射線検出素子7についても同様に構成される。さらに、2行の各放射線検出素子7の行間が図7等に示した場合よりも拡張されているように記載されているが、図を見やすくするための記載であり、実際に拡張することを意味するものではない。また、バイアス線9や読み出しIC16の内部の構成等の記載が省略されている。
【0098】
そして、指定した検出用の信号線6αに接続されている各放射線検出素子7のTFT8には、図16に示したように、例えば元のゲートドライバ15bとは別に設けたゲートドライバ15eから新たに走査線5(Li、Li+1)を延ばして、TFT8のゲート電極8gを接続する。なお、検出用の信号線6α以外の信号線6に接続されている各TFT8のゲート電極8には、元のゲートドライバ15bから延びる走査線5が接続されている。
【0099】
そして、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際には、各ゲートドライバ15b、15eから少なくとも同じ行の各TFT8に対しては同じタイミングでオン電圧を印加するように構成するが、検出用の信号線6αに接続されているTFT8にはゲートドライバ15eから通常の高い値のオン電圧を印加し、他の多数の信号線6に接続されているTFT8には、元のゲートドライバ15bから、上記の通常の高い値のオン電圧よりも低い値のオン電圧を印加するように構成する。
【0100】
このように構成すれば、検出用の信号線6α以外の多数の信号線6を介して読み出しIC16に流れ込む電荷量が小さくなるため、上記のように読み出しIC16に大量の電荷が流れ込んで読み出しIC16が破損されるといった問題が生じることを的確に防止することが可能となる。また、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されると、少数の検出用の信号線6αを介して読み出しIC16に通常の場合と同様の大きな電荷量の電荷が流れ込むため、読み出される画像データdがある程度大きな値になる。そのため、読み出される画像データdの値が小さくなり過ぎて放射線の照射開始の検出感度が低下することを的確に防止して、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0101】
このように、上記のように構成すれば、読み出しIC16に破損等が生じることを的確に防止しつつ、しかも、放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0102】
また、上記のように、検出用の信号線6αを各読み出しIC16ごとに設定するように構成すれば、例えば後述する図17に示すように、放射線画像撮影装置1に照射野Fが絞られて照射された場合でも、いずれかの読み出しIC16の検出用の信号線6αが照射野F内に存在するようになり、少なくともそれらの検出用の信号線6αに接続されている読み出しIC16で読み出された画像データdの値が放射線の照射により的確に上昇する。そのため、放射線の照射開始を確実に検出することが可能となる。
【0103】
一方、検出方法1の場合には、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際に、前述したオン時間(すなわち各走査線5にオン電圧を印加してから印加した電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間)を短くしたり、検出方法2の場合には、放射線画像撮影前のリークデータdleakの読み出し処理の際に制御手段22から相関二重サンプリング回路19に送信するパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔を短くするように構成すれば、各放射線検出素子7から流出する電荷の量(画像データdの場合)や、各TFT8を介して各放射線検出素子7からリークする電荷の量(リークデータdleakの場合)を低減させることが可能となり、上記の問題を回避することが可能となる。
【0104】
さらに、上記の場合は、各放射線検出素子7から流出したりリークしたりする電荷の量を小さくすることにより上記の問題を回避する方法について説明したが、逆に、読み出しIC16側で、例えば、各増幅回路18のコンデンサ18bの容量を可変にしておき、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理の際には、コンデンサ18bの容量を、本画像データDの読み出し処理等の際の容量よりも大きな値とするように可変させるように構成することも可能である。
【0105】
このように構成すれば、V=Q/Cの関係から、コンデンサ18bに蓄積される電荷に対するコンデンサ18bの電極間の電位差の反応性を低下させることが可能となる。そのため、コンデンサ18bに大きな電荷が流入しても、電極間の電位差の変化を小さくすることが可能となり、読み出しIC16の破損等を回避することが可能となる。なお、読み出しIC16の入力抵抗を小さくすることによっても同様の効果を得ることができる。
【0106】
その他の方法で、上記のように走査線5の複数のラインにオン電圧が印加されて、増幅回路18のコンデンサ18bに流入する電荷量が大きくなっても、読み出しIC16に悪影響が生じないようにすることも可能であり、読み出しIC16等に悪影響が生じないようにするための処理が適宜行われる。
【0107】
[改良された放射線の照射開始の検出手法について]
ところで、上記の検出方法1を採用する場合も同様であるが、例えば上記の検出方法2を採用して、リークデータdleakの値に基づいて放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始等を検出するように構成する場合、放射線画像撮影装置1の検出部P(図4や図7等参照)には、通常、数千本から数万本の信号線6が配線されているため、1回のリークデータdleakの読み出し処理で読み出されるリークデータdleakの数は、数千個から数万個の数になる。
【0108】
そして、それらの全てのリークデータdleakについて、上記のように閾値を越えたか否かを判断する判断処理を各読み出し処理ごとに行うように構成すると、判断処理が重たい処理になる。そこで、例えば、各読み出し処理ごとに読み出された各読み出し回路17ごとのリークデータdleakの中から最大値を抽出し、そのリークデータdleakの最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することが可能である。
【0109】
このように構成すれば、各読み出し回路17から読み出された各リークデータdleak(検出方法1の場合は画像データd。以下同じ。)の中から最大値を抽出し、その最大値と閾値とを比較すればよくなるため、読み出されたリークデータdleakが閾値を越えたか否かの判断処理を非常に軽くすることが可能となる。
【0110】
[各読み出し回路の読み出し特性を考慮した検出手法]
なお、その際、各読み出し回路17(図7、図8等参照)におけるデータ(画像データdやリークデータdleak)の読み出し特性が、通常、各読み出し回路17ごとに異なるといった問題がある。
【0111】
具体的には、上記の検出方法1を採用した場合も同様であるが、例えば上記の検出方法2を採用した場合、各放射線検出素子7から信号線6にリークする電荷qの合計値(図11参照)が仮に信号線6ごとに同じであったとしても、他の読み出し回路17よりも常に大きな値のリークデータdleakを読み出す読み出し回路17もあれば、他の読み出し回路17よりも常に小さな値のリークデータdleakを読み出す読み出し回路17もある。
【0112】
このような状況において、例えば図17に示すように、放射線画像撮影装置1に対して照射野Fが絞られた状態で放射線が照射され、他の読み出し回路17よりも常に大きな値のリークデータdleakを読み出す特性を有する読み出し回路17に接続されている信号線6aが照射野F外に存在する場合を考える。
【0113】
このような場合、図18に示すように、放射線画像撮影装置1に放射線が照射されて、照射野F内に存在する信号線6に接続されている読み出し回路17で読み出されたリークデータdleak(図中のγで示されたデータ参照)が放射線の照射により上昇しても、照射野F外に存在する信号線6aに接続されている、常に大きな値のリークデータdleakを読み出す特性を有する読み出し回路17から読み出されたリークデータdleak(図中のδで示されたデータ参照)を越えない場合が生じ得る。
【0114】
このように、放射線の照射により上昇したリークデータdleak(γ)が、信号線6aが照射野F外にあり放射線の照射によっても上昇しないリークデータdleak(δ)を越えない場合、抽出されるリークデータdleakの最大値は、図中δで示されたリークデータdleakになる。そのため、抽出されたリークデータdleakの最大値が、放射線の照射によっても上昇せず、閾値を越えないため、放射線の照射を検出することができなくなる虞れがある。
【0115】
そこで、このような問題を回避するために、例えば、各読み出し処理ごとに読み出されたリークデータdleakの、各読み出し回路17ごとの移動平均を算出するように構成することが可能である。
【0116】
すなわち、リークデータdleakの読み出し処理を行うごとに、当該読み出し処理の直前の読み出し処理を含む例えば10回分等の所定回数分の過去の各読み出し処理で読み出された各リークデータdleakの平均値(すなわち移動平均)dleak_aveを、各読み出し回路17ごとに算出するように構成する。
【0117】
そして、各読み出し回路17ごとに、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakと、算出した移動平均dleak_aveとの差分Δdleakを算出し、差分Δdleakが、予め差分Δdleakについて設定された閾値を越えた読み出し回路17があれば、その時点で放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことを検出するように構成することが可能である。
【0118】
このように構成すれば、上記のような各読み出し回路17の読み出し特性の影響を受けずに、リークデータdleakが上昇したか否かを的確に検出することが可能となり、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射開始を的確に検出することが可能となる。
【0119】
[さらに改良された放射線の照射開始の検出手法について]
しかし、この場合も、数千本から数万本配列されている各信号線6のそれぞれに設けられた各読み出し回路17から、リークデータdleakの各読み出し処理ごとに数千個から数万個の各リークデータdleakが読み出される。そして、それらの各リークデータdleakについて上記の処理を行うように構成すると、やはり移動平均の算出処理や判断処理が重たくなる。
【0120】
そこで、本実施形態の放射線画像撮影装置1では、読み出しIC16内に例えば128個や256個の読み出し回路17が形成されており、読み出しIC16が複数個設けられて各信号線6を各読み出し回路17に接続するように構成されていることを利用して、リークデータdleakの各読み出し処理ごとに、各読み出し回路17で読み出される各リークデータdleakの合計値を各読み出しIC16ごとに算出するように構成する。
【0121】
なお、この場合、各読み出しIC16ごとに各リークデータdleakの合計値を算出するように構成する代わりに、各リークデータdleakの平均値を算出するように構成することも可能である。また、各読み出しIC16ごとに、各リークデータdleakの合計値や平均値を算出する代わりに、各リークデータdleakの中央値(medianや中間値等ともいう。)を算出するように構成することも可能である。以下の説明においても同様である。
【0122】
そして、上記と同様に、各リークデータdleakの合計値の移動平均を読み出しIC16ごとに算出し、今回の読み出し処理で読み出されたリークデータdleakの読み出しIC16ごとの合計値と、算出した合計値の移動平均との差分を算出する。そして、差分が、当該差分について予め設定された閾値を越えた読み出しIC16があれば、その時点で放射線画像撮影装置1に放射線が照射されたことを検出するように構成することが可能である。
【0123】
このように構成すれば、読み出しIC16の個数は数個から数十個であるため、上記の移動平均の算出や差分の算出、差分と閾値との比較等の処理を、当該数個から数十個の読み出しIC16について行えばよくなるため、読み出されたリークデータdleakが閾値を越えたか否かの判断処理を軽くすることが可能となる。
【0124】
また、上記のようにして、リークデータdleakの各読み出し処理ごとに算出した読み出しIC16ごとの上記の差分の中から最大値を抽出し、その最大値が閾値を越えたか否かを判断するように構成することも可能である。この場合、上記の差分は読み出しIC16ごとに同程度の値になるため、図18に示したような問題は生じない。
【0125】
このように構成すれば、各読み出しIC16ごとのリークデータdleak(検出方法1の場合は画像データd)の合計値(或いは平均値や中央値等)の最大値と閾値とを比較すればよくなるため、読み出されたリークデータdleakが閾値を越えたか否かの判断処理を非常に軽くすることが可能となる。
【0126】
[放射線の照射終了の検出について]
一方、図13や図14に示したように、放射線の照射が開始されたことを検出した後、画像データdの読み出し処理(検出方法1の場合。図13参照)や、各放射線検出素子7のリセット処理およびリークデータdleakの読み出し処理(検出方法2の場合。図14参照)を停止して電荷蓄積状態に移行する。
【0127】
そして、前述したように、本実施形態では、この電荷蓄積状態では、ゲートドライバ15bから各走査線5にオフ電圧を印加した状態を維持したまま、放射線の照射開始を検出してから所定時間が経過した時点で、ゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加させて本画像データDの読み出し処理を行うようになっている。
【0128】
しかし、このように構成する代わりに、例えば図19に示すように、電荷蓄積状態において各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、リークデータdleakの読み出し処理を繰り返し行うように構成するように構成することも可能である。このように構成すれば、以下で説明するように、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射の終了を検出することが可能となる。
【0129】
すなわち、放射線の照射開始検出後、電荷蓄積状態でリークデータdleakの読み出し処理を行うように構成すると、非連携方式の場合、電荷蓄積状態では既に放射線の照射が開始されているため、図20に示すように、読み出されるリークデータdleakは大きな値になっている。そして、放射線画像撮影装置1に対する放射線の照射が終了すると、リークデータdleakは元の小さな値に戻る。
【0130】
そのため、例えば予め閾値dleak_thを設定しておき、リークデータdleakが閾値dleak_th以下の値になった時点(図中の時刻t2参照)で放射線の照射が終了したと判断するように構成することが可能である。
【0131】
なお、この場合の閾値dleak_thは、上記の検出方法2で放射線の照射開始を検出する際の閾値と同じ値であってもよく、別の値として設定することも可能である。また、図20では、時刻t2で放射線の照射の終了を検出した後もリークデータdleakの読み出し処理を続行する場合が示されているが、実際には、下記のように、放射線の照射の終了を検出するとリークデータdleakの読み出し処理は停止される。
【0132】
そして、このように、放射線の照射が終了したことを検出するように構成すれば、図19に示したように、リークデータdleakが閾値dleak_th以下の値になる等して放射線の照射が終了したことが検出された時点(図19中の「A」参照。図20の時刻t2に対応する。)で、各走査線5へのオン電圧の順次の印加を開始して本画像データDの読み出し処理を開始するように構成することができる。
【0133】
このように構成すれば、図19に示したように、放射線の照射の終了を検出した後、すぐに本画像データDの読み出し処理を開始することが可能となり、本画像データDの読み出し処理以降の処理を早期に行うことが可能となるといった利点がある。
【0134】
なお、図19では、図13に示した検出方法1において電荷蓄積状態でリークデータdleakの読み出し処理を行う場合を示したが、図14に示した検出方法2においても同様に、図示を省略するが、電荷蓄積状態において各走査線5にオフ電圧を印加した状態で、リークデータdleakの読み出し処理を続行して、放射線の照射が終了したことを検出するように構成することも可能である。
【0135】
[複数の走査線にオン電圧を印加することの効果]
図13や図14に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理(検出方法1)や各放射線検出素子7のリセット処理(検出方法2)において、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから、走査線5の複数のラインLにオン電圧を印加するように構成することで、非連携方式においても、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となるといった優れた効果を得ることが可能となる。
【0136】
すなわち、図39や図40に示した連携方式の場合と同様に、本実施形態における非連携方式の場合にも、本画像データD中に含まれるオフセット分を得るために、図21に示すように、本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスを繰り返してオフセットデータOの読み出し処理が行われる。なお、図21中に示されている実効蓄積時間Tについては後で説明する。
【0137】
つまり、検出方法1を採用する場合には、図21に示すように、本画像データDの読み出し処理後に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して、画像データdの読み出し処理(或いは読み出し動作を行わずに図21に示すように各放射線検出素子7のリセット処理を行ってもよい。)を1回または2回程度行う。そして、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加して各放射線検出素子7内に暗電荷を蓄積させた後、オフセットデータOの読み出し処理を行う。なお、この場合、電荷蓄積状態では放射線画像撮影装置1に放射線は照射されない。
【0138】
また、検出方法2を採用する場合には、図示を省略するが、本画像データDの読み出し処理後に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して行う各放射線検出素子7のリセット処理と、各走査線5にオフ電圧を印加した状態で行うリークデータdleakの読み出し処理(なお、この場合は読み出し動作を行わなくてもよい。)を1セットまたは2セット程度行う。そして、検出方法1を採用した場合と同様に、電荷蓄積状態を経た後、オフセットデータOの読み出し処理を行う。
【0139】
このように、本実施形態では、本画像データDの読み出し処理の後に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して行う画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を1回や2回程度行った後、すぐに電荷蓄積状態に移行して、オフセットデータOの読み出し処理を行うことが可能となる。
【0140】
図40に示した非連携方式の場合には、本画像データDの読み出し処理を行った後、走査線5の各ラインごとにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理等を行ったため、各放射線検出素子7のリセット処理等に要する時間が長くなり、本画像データDの読み出し処理を行ってからオフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間が長くなった。
【0141】
それに対し、図21に示したように、本実施形態では、同じ非連携方式の場合であっても、検出方法1や検出方法2を採用することによって、本画像データDの読み出し処理の後の各放射線検出素子7のリセット処理等に要する時間が非常に短くなる。そのため、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0142】
また、図38に示した連携方式の場合のように、本画像データDの読み出し処理を行った後で走査線5の各ラインL1〜Lxごとにオン電圧を順次印加して各放射線検出素子7のリセット処理等を行う場合と比較しても、図21に示した本実施形態の非連携方式の場合の方が、本画像データDの読み出し処理の後の各放射線検出素子7のリセット処理等に要する時間が非常に短くなり、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0143】
さらに、前述したように、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態においてリークデータdleakの読み出し処理を行って放射線の照射終了を検出するように構成すれば、電荷蓄積状態に要する時間が短くなる。そのため、オフセットデータOの読み出し処理前の電荷蓄積状態に要する時間も同様に短くなるため、オフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間をさらに短縮することが可能となる。
【0144】
なお、この場合、オフセットデータOの読み出し処理前の電荷蓄積状態では、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態と同じ時間だけ各走査線5にオフ電圧を印加するように構成すればよく、オフセットデータOの読み出し処理前の電荷蓄積状態では、本画像データDの読み出し処理前の電荷蓄積状態の場合のようにリークデータdleakの読み出し処理を行う必要はない。
【0145】
また、本画像データDの読み出し処理とオフセットデータOの読み出し処理の間に、走査線5の全てのラインL1〜Lxに一斉にオン電圧を印加して行う画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理は、基本的に、本画像データDの読み出し処理で読み出し切れなかった本画像データDの一部がオフセットデータOに含まれる形で読み出されることを防止するために行われる処理である。
【0146】
そして、この場合、上記のように、1回や2回程度(或いは1セットや2セット程度)、画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を行えば、読み残しの本画像データD(正確にはそれに対応する電荷)は、各放射線検出素子7から十分に除去される。
【0147】
従って、本画像データDの読み出し処理とオフセットデータOの読み出し処理の間に行われる画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理の回数は、各放射線検出素子7や読み出し効率或いはリセット効率等を考慮して、上記のように、予め1回や2回程度の少ない回数に設定される。
【0148】
[放射線画像撮影前の処理におけるオン電圧の印加の仕方の変形例について]
ところで、図13や図14、図21では、放射線画像撮影前や、本画像データDの読み出し処理とオフセットデータOの読み出し処理との間に行われる画像データdの読み出し処理や、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理を、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させるようにして行う場合について説明した。
【0149】
この場合、例えば図22に示すように、ゲートドライバ15bや、それを構成するゲートIC15cに、走査線5が接続されていない非接続の端子pが存在する場合には、ゲートドライバ15bの、非接続の端子pを含む全ての端子にオン電圧を一斉に印加して、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させるよう構成してもよく、また、ゲートドライバ15bの、各走査線5が接続されている端子にのみオン電圧を一斉に印加し、非接続の端子pにはオン電圧を印加しないようにして、走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉に印加させるよう構成してもよい。
【0150】
また、放射線画像撮影前等に行われる画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理は、上記のように、複数の走査線5にオン電圧を印加して行うことが必要であるが、必ずしも走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を印加して行う必要はない。
【0151】
具体的には、例えば、図7に示した走査線5の各ラインL1〜Lxを図中上下方向に二分し、図23に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lmへのオン電圧の印加と、走査線5の各ラインLm+1〜Lxへのオン電圧の印加とを交互に繰り返すように構成することも可能である。
【0152】
また、必ずしも走査線5の全てのラインL1〜Lxにオン電圧を一斉にすなわち同時に印加して行う必要はない。具体的には、例えば、図24に示すように、制御手段22から相関二重サンプリング19に1回目のパルス信号Sp1を送信してから2回目のパルス信号Sp2を送信するまでの間に、ゲートドライバ15bから走査線5の複数のラインLに、オン電圧を、その立上りや立下りのタイミングをずらして印加させるように構成することも可能である。
【0153】
その際、例えば図24に示したように、オン電圧の立上りや立下りを順次ずらして印加するように構成することも可能であり、或いは、図示を省略するが、オン電圧の立上りや立下りを、所定の順番でずらし、或いはランダムにずらして印加するように構成することも可能である。しかし、このオン電圧の立上りや立下りをずらして各走査線5にオン電圧を印加する処理は、図24に示したように、制御手段22から相関二重サンプリング19に1回目のパルス信号Sp1を送信してから2回目のパルス信号Sp2を送信するまでの間に行われることが必要である。
【0154】
なお、図24や後述する図26〜図28では、パルス信号Sp1、Sp2が、図13等に示したパルス信号Sp1、Sp2の送信間隔よりも大きな送信間隔で送信されるように表されているが、これは図を見易くするための表現であり、実際に送信間隔を大きくすることを意味するものではない。
【0155】
また、図23や図24では、図13等に示した検出方法1を採用して放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理を繰り返し行う場合について示したが、図14等に示した検出方法2を採用し、各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを交互に行わせる場合には、図25に示すように、走査線5の各ラインL1〜Lmへのオン電圧の印加と、走査線5の各ラインLm+1〜Lxへのオン電圧の印加とを交互に繰り返すように構成したり、或いは図26に示すように、ゲートドライバ15bから走査線5の複数のラインLに、オン電圧の立上りや立下りのタイミングをずらしてオン電圧を印加させるように構成することが可能である。なお、図25では、各放射線検出素子7のリセット処理が「R」、リークデータdleakの読み出し処理が「L」と記載されている。
【0156】
さらに、前述したように、サンプリング回路として、例えば制御手段22から1回だけ送信されたパルス信号Spを受信したタイミングで増幅回路18から出力されている値をサンプリングするサンプリング回路を用いて、例えば図24に示した、検出方法1を採用して放射線画像撮影前に画像データの読み出し処理を行う場合には、図27に示すように、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cをオン状態とし、コンデンサ18bに電荷を蓄積可能な状態で、ゲートドライバ15から、全ての走査線5、または全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、読み出し処理を行わせた後、制御手段22からパルス信号Spを1回送信して、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値をサンプリング回路でサンプリングさせて画像データdとして読み出すように構成することができる。
【0157】
また、このようなサンプリング回路を用いて、例えば図26に示した、検出方法2を採用して、各放射線検出素子7のリセット処理とリークデータdleakの読み出し処理とを交互に行わせる場合には、図28に示すように、ゲートドライバ15から、全ての走査線5、または全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、各放射線検出素子7のリセット処理を行わせた後、増幅回路18の電荷リセット用スイッチ18cをオフ状態とし、コンデンサ18bに電荷を蓄積可能な状態として、例えば所定時間が経過した後に、制御手段22からパルス信号Spを1回送信して、その時点で増幅回路18から出力されている電圧値をサンプリング回路でサンプリングさせてリークデータdleakとして読み出すように構成することができる。
【0158】
また、前述したように、サンプリング回路が独自のタイミングで自動的にサンプリングを行うように構成されている場合には、例えば図27や図28に示した、制御手段22からパルス信号Spを送信するタイミングで、制御手段22からパルス信号Spを送信せずに、サンプリング回路が独自のタイミングで自動的にサンプリングを行うように構成することができる。なお、図23や図25に示した場合も同様である。
【0159】
また、前述したように、オフセットデータOの読み出し処理では、本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスが繰り返されるように構成される。そのため、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理において、図23や図25に示したように例えば二分された各走査線5に交互にオン電圧を印加したり、図24や図26〜図28に示したようにオン電圧の立上りや立下りをずらして各走査線5にオン電圧を印加するように構成した場合には、本画像データDの読み出し処理後に、それと同じように各走査線5にオン電圧を印加して各放射線検出素子7のリセット処理等が行われる。
【0160】
以上のように、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1によれば、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている全ての走査線5、或いはゲートドライバ15bに接続されている全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、画像データdの読み出し処理や、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるように構成した。
【0161】
そして、例えばサンプリング回路として相関二重サンプリング回路19を用いる場合には、放射線画像撮影前に、制御手段22から相関二重サンプリング回路19に1回目のパルス信号Sp1を送信してから2回目のパルス信号Sp2を送信するまでの間に、ゲートドライバ15bから、ゲートドライバ15bに接続されている全ての走査線5、或いは全走査線5のうちの一部の複数の走査線5にオン電圧を印加させて、画像データdの読み出し処理や、リークデータdleakの読み出し処理と交互に行われる各放射線検出素子7のリセット処理を行わせるように構成した。
【0162】
そのため、本画像データDの読み出し処理の後、全走査線5或いはその一部の複数の走査線5にオン電圧を印加して行う画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を1回や2回程度行った後で、即座に電荷蓄積状態に移行して、オフセットデータOの読み出し処理を行うことが可能となり、本画像データDの読み出し処理を行ってからオフセットデータOの読み出し処理までの処理全体に要する時間を短縮することが可能となる。
【0163】
また、本実施形態に係る放射線画像撮影装置1では、放射線画像撮影前に読み出された画像データdやリークデータdleakに基づいて、少なくとも放射線の照射が開始されたことを的確に検出することが可能となる。そのため、放射線発生装置との連携がとれない非連携方式で撮影を行う場合でも、放射線画像撮影装置1自体で、放射線の照射を的確に検出して、放射線画像撮影を的確に行うことが可能となる。
【0164】
[走査線の最初のラインから順に本画像データDの読み出し処理を行うことの効果]
なお、本実施形態では、図13や図14に示したように、制御手段22は、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから、走査線5の最初のラインL1からオン電圧の印加を開始させて、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加させて、本画像データDの読み出し処理を行うように構成されている。このように構成することで、以下のような効果が得られる。
【0165】
上記のオフセットデータOの読み出し処理で読み出されるオフセットデータOは、前述したように、本画像データD中に含まれるオフセット分に相当するデータであり、通常の場合、このオフセット分は、主に、放射線検出素子7自体の熱による熱励起等により発生する、いわゆる暗電荷に起因するものであると考えられる。
【0166】
しかし、本発明者らの研究によれば、放射線画像撮影装置1に強い放射線が照射されたような場合、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した電荷による、いわゆるラグ(lag)が発生することが分かっている。そして、このラグは、放射線画像撮影装置1に通常の線量の放射線が照射された場合にも発生するが、さほど大きな値にはならず、無視することが可能である場合も多いが、強い放射線が照射されたような場合には問題になる場合がある。
【0167】
上記の暗電荷は、例えば各放射線検出素子のリセット処理や画像データdの読み出し処理を繰り返すことにより、各放射線検出素子7内から比較的容易に除去される。しかし、上記のラグは、リセット処理を繰り返し行っても容易には消えないことが分かっている。
【0168】
このようにラグが容易に消えない理由は、放射線の照射により放射線検出素子7内で発生した電子や正孔の一部が、一種の準安定なエネルギーレベル(metastable state)に遷移して、放射線検出素子内での移動性を失った状態が比較的長時間保たれるためと考えられている。そして、強い放射線が照射されるほど、より多くの電子や正孔がこの準安定なエネルギーレベルに遷移する。
【0169】
そして、この準安定なエネルギー状態の電子や正孔は、いつまでも準安定なエネルギーレベルにあるわけではなく、熱エネルギーによって、ある確率で少しずつこの準安定なエネルギーよりも高いと考えられるエネルギーレベルの伝導帯に遷移して移動性が復活する。しかし、その割合が必ずしも大きくないため、各放射線検出素子7のリセット処理を繰り返し行っても容易に消えないと考えられている。なお、このラグの発生や持続のメカニズムについては、いまだ不明な点も多い。
【0170】
このように、放射線の照射により各放射線検出素子7でラグが発生すると、放射線画像撮影後に行われる取得処理で取得されるオフセットデータOには、上記のような暗電荷に起因する通常のオフセット分(以下Odarkという。)だけでなく、ラグによるオフセット分(以下Olagという。)も含まれることになる。
【0171】
通常、放射線画像撮影後の画像処理では、各放射線検出素子7ごとに、
D*=D−O …(1)
の演算処理が行われて、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用なデータである真の画像データD*が算出され、この真の画像データD*に基づいて最終的な放射線画像が生成される。
【0172】
しかし、上記のように、オフセットデータOにラグによるオフセット分Olagが含まれることにより、以下のような問題が生じる。
【0173】
まず、暗電荷に起因するオフセット分Odarkと、ラグによるオフセット分Olagの発生状況を見た場合、暗電荷は、各放射線検出素子7内で常時発生しており、図29のαに示すように、単位時間あたりに一定の割合で発生していると考えられる。それに対して、ラグは、図29のβに示すように、放射線の照射時から発生し、単位時間あたりの発生割合(すなわち上記の準安定なエネルギーレベルからより高いエネルギーレベルの伝導帯への遷移率)が、放射線の照射開始からの経過時間tに対して減衰していくと考えられている。
【0174】
そして、暗電荷もラグも、ともに、走査線5にオフ電圧が印加されTFT8がオフ状態とされている間に、各放射線検出素子7内に蓄積される。そして、その蓄積分が、それぞれ暗電荷に起因するオフセット分Odarkやラグによるオフセット分Olagとして読み出される。そのため、暗電荷に起因するオフセット分Odarkや、ラグによるオフセット分Olagは、図29のαやβにそれぞれ示した単位時間あたりの発生割合を、各TFT8がオフ状態とされていた時間で積分した値として得られる。
【0175】
すなわち、図21の例で言えば、図中Tで表されるように、オフセットデータOの読み出し処理前の各放射線検出素子7のリセット処理等における最後のリセット処理等で走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えてから、電荷蓄積状態を経た後、オフセットデータOの読み出し処理で当該走査線5に印加したオン電圧をオフ電圧に切り替えるまでの時間T(以下、実効蓄積時間Tという。)の間に、各放射線検出素子7内に蓄積された暗電荷やラグが、オフセットデータOの読み出し処理で読み出されるオフセットデータOに含まれる暗電荷に起因するオフセット分Odarkやラグによるオフセット分Olagになる。
【0176】
暗電荷に起因するオフセット分Odarkやラグによるオフセット分Olagがこのようにして発生するため、例えば図39に示したように、放射線の照射が開始されたことが検出された際或いはその直前にオン電圧が印加されていた走査線5(図39の場合は走査線5のラインLn)の次の走査線5(図39の場合は走査線5のラインLn+1)からオン電圧の印加を開始して本画像データDの読み出し処理を行うように構成すると、以下のような問題が生じる。
【0177】
図39に示したようにして本画像データDの読み出し処理を行った後、図40に示したように、本画像データDの読み出し処理までの処理シーケンスと同じシーケンスが繰り返されて、オフセットデータOの読み出し処理が行われる。
【0178】
この場合、図30に示すように、例えば走査線5のラインLnと走査線5のラインLn+1とを比べると、オフセットデータOの読み出し処理前の最後の各放射線検出素子7のリセット処理でオフ電圧が印加されてから、オフセットデータOの読み出し処理で印加されたオン電圧がオフ電圧に切り替えるまでのタイミングが、走査線5のラインLn+1の場合の方が走査線5のラインLnの場合よりも早くなる。
【0179】
そのため、その間に、上記の単位時間あたりの発生割合が積分されて算出されるラグによるオフセット分Olagは、図30に示すように、走査線5のラインLn+1の場合の方が、走査線5のラインLnの場合よりも大きな値になる。なお、図30では、各走査線5にオン電圧が印加されるタイミングがそれぞれ矢印で示されている。また、図29や図30では、放射線の照射により発生した電荷に起因する真の画像データD*の図示が省略されている。真の画像データD*は、通常、暗電荷やラグに比べて格段に大きな値になる。
【0180】
仮に放射線画像撮影装置1に被写体が介在しない状態で、放射線を一様に照射した場合、本画像データDは、各走査線5すなわち各放射線検出素子7で同じ値になる。そして、読み出されるオフセットデータOも、本来、各走査線5で同じになるはずであるが、上記のように、各走査線5で前記タイミングが異なるため、放射線が一様に照射されているにもかかわらず、放射線の照射が検出された走査線5のラインLnで最小で、かつ、その次の走査線5のラインLn+1すなわち本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理が開始される走査線5のラインLn+1で最大になる。
【0181】
そのため、上記(1)式に従って本画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出すると、算出される真の画像データD*は、図31に示すように、走査線5の最初のラインL1からラインLnに向けて次第に大きくなっていき、その次の走査線5のラインLn+1(すなわち本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理が開始された走査線5)で値が急激に小さくなって真の画像データD*に段差が生じた後、走査線5の最終ラインLxに向けて大きくなっていく状態になる。
【0182】
なお、図31および後述する図32では、真の画像データD*の走査線5ごとの違いが非常に強調して表現されている。また、上記のように、各走査線5で実効蓄積時間Tが異なるため、オフセットデータO中に含まれる暗電荷に起因ずるオフセット分Odarkも走査線5ごとに異なる値になる.
【0183】
しかし、各走査線5ごとに見た場合、本画像データDの読み出し処理における実効蓄積時間TとオフセットデータOの読み出し処理における実効蓄積時間Tが同じであるため、本画像データD中に含まれる暗電荷に起因ずるオフセット分OdarkとオフセットデータO中に含まれる暗電荷に起因ずるオフセット分Odarkとが同じ値になる。そのため、暗電荷に起因ずるオフセット分Odarkについては、上記(1)式の減算処理で相殺される。
【0184】
このように、図39や図40に示した本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理の手法を採用すると、上記のように、算出される真の画像データD*に段差が生じるという問題が生じる。
【0185】
しかも、図39等に示した手法では、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5(ラインLn)は撮影ごとに異なる走査線5になる。そして、その次の走査線5(ラインLn+1)から読み出し処理が開始されるため、画像データDやオフセットデータOの読み出し処理が開始される走査線5も撮影ごとに変わる。そのため、放射線画像上で段差が生じる位置、すなわち走査線5のラインLnとラインLn+1の位置が、撮影ごとに変わるという問題もある。
【0186】
また、このように真の画像データD*に段差が生じると、例えば真の画像データD*に基づいて生成される放射線画像を医療における診断用等に用いるような場合、この段差の部分に病変部が撮影されていて病変部か否かを判断しづらくなったり、或いは、段差を病変部と誤診してしまう虞れがある。また、この真の画像データD*の段差を画像処理等で修正する場合に、処理の仕方によっては、段差の部分に撮影された病変部の情報が失われる虞れもある。
【0187】
それに対し、本実施形態では、上記のように、本画像データDの読み出し処理(図13、図14等参照)や、それと同じ処理シーケンスで行われるオフセットデータOの読み出し処理(図21参照)では、走査線5の最初のラインL1からオン電圧の印加を開始し、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を順次印加して、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理を行わせる。
【0188】
そのため、図示を省略するが、図30から類推して分かるように、オフセットデータO中のラグによるオフセット分Olagは、走査線5の最初のラインL1で最大で、走査線5の最終ラインLxに向かうに従って小さくなり、走査線5の最終ラインLxで最小になる。そのため、オフセットデータO自体も同様の傾向になる。
【0189】
従って、上記(1)式に従って本画像データDからオフセットデータOを減算して真の画像データD*を算出すると、算出される真の画像データD*は、図32に示すように、走査線5の最初のラインL1で最も小さく、走査線5の最終ラインLxに向かうに従って大きくなり、走査線5の最終ラインLxで最も大きくなり、真の画像データD*に段差が現れない状態になる。
【0190】
このように、本実施形態のように、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理で、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行うように構成することで、真の画像データD*に段差が生じることを的確に防止することが可能となる。
【0191】
なお、前述したラグの単位時間の発生割合や、上記の実効蓄積時間T、放射線が照射されてから読み出し処理でオン電圧が印加されるまでの時間等に基づいて、オフセットデータO中に含まれるラグによるオフセット分Olagを算出するように構成することも可能である。この場合、読み出したオフセットデータOから、算出したラグによるオフセット分Olagを減算して、暗電荷に起因するオフセット分Odarkを算出し、それを本画像データDから減算して真の画像データD*を算出するように構成することが可能である。
【0192】
また、本実施形態では、上記のように、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理において、走査線5の最初のラインL1から順にオン電圧を順次印加して読み出し処理を行うように構成する場合を示したが、例えば、走査線5の最終ラインLxからオン電圧の印加を開始し、走査線5のラインLx、Lx-1、…、L2、L1の順にオン電圧を順次印加するように構成しても同様の効果を得ることができる。
【0193】
すなわち、本画像データDやオフセットデータOの読み出し処理において、検出部P(図7等参照)における最端部の走査線5(すなわち走査線5の最初のラインL1または最終ラインLx)からオン電圧の印加を開始させて、各走査線5にオン電圧を順次印加させて読み出し処理を行わせるように構成すれば、同様の効果を得ることが可能となる。
【0194】
[有用なデータが一部失われることに対する処理]
ところで、例えば図13等に示したように、放射線画像撮影前に、走査駆動手段15のゲートドライバ15bから走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理を行う上記の検出方法1の場合、前述したように、放射線の照射開始時にオン電圧が印加されると、各走査線5に接続されている各放射線検出素子7から、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用なデータの一部が失われてしまう。
【0195】
そのため、その後の本画像データDの読み出し処理で各放射線検出素子7から読み出される本画像データDは、それぞれ有用のデータの一部が失われた本画像データDになる。これは、上記の検出方法2の場合も同様である。
【0196】
すなわち、リークデータdleakの読み出し処理(図14中のL参照)中に放射線の照射が開始された場合には本画像データDにはほとんど影響はないが、走査線5の各ラインL1〜Lxにオン電圧を印加して行われる各放射線検出素子7のリセット処理(図14中のR参照)の最中に放射線の照射が開始されると、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用なデータの一部が各放射線検出素子7内から失われてしまい、その後の本画像データDの読み出し処理で各放射線検出素子7から読み出される本画像データDが、それぞれ有用のデータの一部が失われた本画像データDになる。
【0197】
このような場合に、有用なデータの一部が失われたデータであるという理由で前述したように本画像データDを無効とするように構成すると、各放射線検出素子7から読み出された全ての本画像データDを無効としなければならなくなり、放射線画像撮影を行った意味がなくなる。そのため、本実施形態では、本画像データDを無効にしないようになっている。
【0198】
上記の場合、各放射線検出素子7から読み出された全ての本画像データDについて、それぞれ一定の割合で一部のデータが失われたと考えることが可能である。そのため、全ての本画像データDが、データが失われずに読み出された場合に比べて、読み出される各本画像データDが全体的に一定の割合で小さくなるだけであり、実際上は、後述する図33や図34に示すような場合を除いて、問題を生じない。
【0199】
従って、図13や図14等に示したように、放射線画像撮影前の処理で、ゲートドライバ15bから複数の各走査線5にオン電圧を印加して画像データdの読み出し処理や各放射線検出素子7のリセット処理を行う場合には、読み出された各本画像データDを、そのまま本画像データDとしてそれぞれ採用することが可能である。
【0200】
また、必要があれば、例えば、読み出された各本画像データDに、それぞれ1より大きい所定の定数を乗算して各本画像データDを一定の割合で増加させるように構成して、読み出された各本画像データDを、データが失われずに読み出された場合の各本画像データDに復元するように構成することも可能である。
【0201】
ところで、走査駆動手段15のゲートドライバ15bを構成するゲートIC15c(図6、図22参照)では、制御手段22から信号を受信すると、各走査線5が接続されている各端子に一斉にオン電圧を印加したり、各端子に印加していたオン電圧を一斉にオフ電圧に切り替える等して、各走査線5に印加する電圧をオン電圧やオフ電圧に一斉に切り替えるように構成されているものがある。
【0202】
そして、各端子に印加する電圧がオフ電圧からオン電圧に、或いはオン電圧からオフ電圧に同時に切り替えられる際に、IC内に大きな電流が流れてICが損傷したり破壊されたりすることを防止するために、ゲートIC15cの中には、例えば図33に示すように、信号を受信した際に、各端子に印加する電圧を切り替えるタイミングが僅かずつ遅延するように構成されているものがある。
【0203】
図33では、各端子に印加されていたオン電圧を一斉にオフ電圧に切り替える信号を受信した場合の各端子ごとの遅延時間の例が示されており、遅延時間が0[ns]の端子がゲートIC15cの中央の端子に相当し、遅延時間が極大値(図33の場合は300[ns])の端子がゲートIC15cの末端の端子に相当する。そして、図33や後述する図34では、ゲートドライバ15bが5個のゲートIC15cで構成されている場合が示されており、グラフの横軸は走査線5のライン番号(すなわちゲートドライバ15bの端子番号)である。
【0204】
このように、各ゲートIC15cの各端子でオン電圧からオフ電圧に切り替わるタイミングが遅延すると、例えば図13に示した検出方法1を使用した例では、放射線の照射開始を検出した最後の画像データdの読み出し処理で、各走査線5に印加されていたオン電圧がオフ電圧に切り替わるタイミングがずれる。
【0205】
そして、より早期にオフ電圧に切り替わる端子(すなわち遅延時間が短い端子)に接続された走査線5では、各TFT8がより早期にオフ状態に切り替わり、各放射線検出素子7内に、放射線の照射により発生した有用な電荷がより多く蓄積される。
【0206】
また、より遅くにオフ電圧に切り替わる端子(すなわち遅延時間が長い端子)に接続された走査線5では、各TFT8がより遅くにオフ状態に切り替わるため、オフ状態に切り替わるまでの間に、放射線の照射により各放射線検出素子7内で発生した有用な電荷がより多く信号線6に流出してしまい、各放射線検出素子7内に蓄積される電荷の量が減る。
【0207】
そのため、図34に示すように、上記のような電圧の切り替えに関する遅延時間に応じて、放射線の照射後に読み出される信号値すなわち本画像データDに、いわゆる波状のプロファイルが現れるという問題が生じる場合がある。この傾向は、図14に示した検出方法2を採用した場合においても同様である。
【0208】
このような本画像データD上のばらつきは、上記の遅延時間のばらつきが小さいほど小さくなる。そこで、このような本画像データD上のばらつきを解消する1つの方法として、上記のような各端子ごとの遅延時間のばらつきがない、或いは許容できる範囲内で遅延時間のばらつきが小さいゲートIC15cを用いることが挙げられる。
【0209】
また、例えば、ゲートIC15cの各端子に印加する電圧を切り替える信号を、ゲートIC15cではなく、別の制御回路で受信するように構成し、当該制御回路からゲートIC15cの各端子に同時に信号をそれぞれ送信するように構成する等して、ゲートIC15cから各走査線5に印加する電圧を各端子で同時に切り替えるように構成することも可能である。
【0210】
さらに、上記のようにして読み出された各本画像データDを、後の画像処理で修復するように構成することも可能である。この場合、例えば、各ゲートIC15cの各端子ごと(すなわち各走査線5ごと)の遅延時間t(a)を予め求めておく。なお、t(a)のaは、各走査線5のライン番号を表す。
【0211】
また、例えば、放射線画像撮影装置1を、図19に示したように電荷蓄積状態に移行した後もリークデータdleakの読み出し処理を繰り返すように構成する等して、放射線の照射終了を検出するように構成する。そして、制御手段22で、放射線の照射開始を検出してから照射終了を検出するまでの時間を計測するように構成する。なお、以下、この時間を放射線の照射時間tという。
【0212】
上記のように、ゲートIC15cでの遅延時間により、電荷の欠損を生じた本画像データD、すなわち図34に示したように遅延時間のためにばらつきが生じてしまった本画像データDを本画像データD(a)というものとすると、本来読み出されるべき本画像データDと、電荷が欠損した本画像データD(a)との比は、下記(2)式に示すように、放射線の照射時間tと、放射線の照射時間tから遅延時間t(a)を差し引いた時間との比に等しい。
D:D(a)=t:(t−t(a)) …(2)
【0213】
そのため、本来読み出されるべき本画像データDは、実際に読み出された電荷欠損を生じた本画像データD(a)と、遅延時間t(a)と、照射時間tとに基づいて、
D=D(a)・t/(t−t(a)) …(3)
を演算することにより算出することができる。
【0214】
このように、上記のようなゲートIC15cにおける遅延時間t(a)の影響は、放射線画像撮影後に放射線画像撮影装置1や外部装置であるコンソール(図示省略)等で行われる画像処理によって修復することも可能である。
【0215】
なお、図24に示したように、放射線画像撮影前の画像データdの読み出し処理(図13参照)や各放射線検出素子7のリセット処理(図14参照)を行う際に、ゲートドライバ15bから各走査線5に印加するオン電圧の立上りや立下りを、所定の順番でずらしたりランダムにずらすように構成する場合にも、ゲートドライバ15bやゲートIC15cの各端子でのオン電圧の立上りや立下りを上記の遅延時間t(a)と同じように予め求めておき、上記と同様にして、画像処理で本画像データDを修復するように構成することが可能である。
【0216】
また、図23に示したように、走査線5の各ラインL1〜Lxを2分し、走査線5の各ラインL1〜Lmへのオン電圧の印加と、走査線5の各ラインLm+1〜Lxへのオン電圧の印加とを交互に繰り返すように構成する場合にも、上記のように、遅延時間t(a)のばらつきがない、或いは十分に小さいゲートIC15cを用いたり、別の制御回路を設けたり、或いは、後の画像処理で本画像データDを修復するように構成することが可能である。
【0217】
しかし、図23の場合には、放射線の照射が開始されたことが検出された時点でオン電圧が印加されていた走査線5は、全走査線5の半分である。そのため、例えば、走査線5の各ラインL1〜Lmにオン電圧が印加された際に放射線の照射開始が検出された場合には、走査線5の当該各ラインL1〜Lmに接続されている各放射線検出素子7では本画像データDに欠損が生じるが、走査線5の他の各ラインLm+1〜Lxに接続されている各放射線検出素子7では、本画像データDに欠損は生じない。逆の場合も同様である。
【0218】
そのため、図23に示したように、走査線5の各ラインL1〜Lxを2分したり、各走査線5を複数の範囲に分割して各範囲ごとにそれぞれオン電圧とオフ電圧との切り替えを行うように構成する場合等には、欠損を生じている本画像データDがいずれの走査線5に接続されている放射線検出素子7であるかを的確に判断するように構成して、当該放射線検出素子7から読み出された本画像データDについてだけ修復を行うように構成することが必要である。
【符号の説明】
【0219】
1 放射線画像撮影装置
5 走査線
6 信号線
7 放射線検出素子
8 TFT(スイッチ手段)
15 走査駆動手段
15b ゲートドライバ
17 読み出し回路
18 増幅回路
18a オペアンプ
18b コンデンサ
18c 電荷リセット用スイッチ
19 相関二重サンプリング回路(サンプリング回路)
22 制御手段
D 本画像データ(本画像としての画像データ)
d 画像データ
dleak リークデータ
L1、Lx 最端部の走査線
O オフセットデータ
P 検出部
q 電荷
r 領域
Sp1、Sp2 パルス信号
Vin、Vfi 電圧値(値)
Vfi−Vin 差分
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて行う前記各放射線検出素子のリセット処理と、前記各走査線にオフ電圧を印加させた状態で前記スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークする電荷に対応して前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングしてリークデータとして読み出すリークデータの読み出し処理とを交互に行わせ、読み出した前記リークデータに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記サンプリング回路は、前記制御手段からパルス信号を2回受信すると、2回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値から、1回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値を減算した差分を前記データとして出力する相関二重サンプリング回路であり、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記リークデータの読み出し処理を行わせる際には、前記各走査線にオフ電圧を印加させた状態で前記相関二重サンプリング回路に前記パルス信号を2回送信して前記スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークする電荷に相当するデータを前記リークデータとして読み出すことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記増幅回路は、オペアンプと、前記オペアンプにそれぞれ並列にコンデンサおよび電荷リセット用スイッチが接続され、前記コンデンサに蓄積された電荷の量に応じた出力値を出力するチャージアンプ回路で構成されており、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせる際には、前記増幅回路の前記電荷リセット用スイッチをオン状態とした状態で、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて前記リセット処理を行わせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせる際には、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線に、オン電圧を一斉に印加させて前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させた後に前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングして画像データとして読み出すようにして行う画像データの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記画像データに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記サンプリング回路は、前記制御手段からパルス信号を2回受信すると、2回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値から、1回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値を減算した差分を前記データとして出力する相関二重サンプリング回路であり、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記画像データの読み出し処理を行わせる際には、前記相関二重サンプリング回路に前記1回目のパルス信号を送信してから前記2回目のパルス信号を送信するまでの間に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させ、オン電圧が印加された前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から電荷をそれぞれ放出させた状態で前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングして前記画像データとして読み出すことを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記増幅回路は、オペアンプと、前記オペアンプにそれぞれ並列にコンデンサおよび電荷リセット用スイッチが接続され、前記コンデンサに蓄積された電荷の量に応じた出力値を出力するチャージアンプ回路で構成されており、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記画像データの読み出し処理を行わせる際には、前記増幅回路の前記電荷リセット用スイッチをオフ状態とし、前記コンデンサに電荷を蓄積可能な状態で、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて前記読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の走査線にオン電圧を印加する際に、当該全走査線または当該一部の複数の走査線に、オン電圧を一斉に印加させて、前記画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段は、放射線の照射が開始されたことを検出すると、前記走査駆動手段から全ての前記走査線にオフ電圧を印加し、前記各スイッチ手段をオフ状態として電荷蓄積状態に移行した後、前記走査駆動手段から、前記検出部における最端部の前記走査線からオン電圧の印加を開始させて、前記各走査線にオン電圧を順次印加して、前記各放射線検出素子から本画像としての画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記各放射線検出素子から本画像としての前記画像データの読み出し処理を行わせた後、前記放射線画像撮影前の前記各放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理または前記各放射線検出素子のリセット処理を所定回数行わせ、その後、放射線が照射されない状態で、前記本画像としての画像データの読み出し処理前の前記電荷蓄積状態と同じ時間だけ前記走査駆動手段から全ての前記走査線にオフ電圧を印加して前記各放射線検出素子内に暗電荷を蓄積させた後、蓄積された暗電荷をオフセットデータとして読み出すオフセットデータの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項9に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項1】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて行う前記各放射線検出素子のリセット処理と、前記各走査線にオフ電圧を印加させた状態で前記スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークする電荷に対応して前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングしてリークデータとして読み出すリークデータの読み出し処理とを交互に行わせ、読み出した前記リークデータに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項2】
前記サンプリング回路は、前記制御手段からパルス信号を2回受信すると、2回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値から、1回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値を減算した差分を前記データとして出力する相関二重サンプリング回路であり、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記リークデータの読み出し処理を行わせる際には、前記各走査線にオフ電圧を印加させた状態で前記相関二重サンプリング回路に前記パルス信号を2回送信して前記スイッチ手段を介して前記各放射線検出素子からリークする電荷に相当するデータを前記リークデータとして読み出すことを特徴とする請求項1に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項3】
前記増幅回路は、オペアンプと、前記オペアンプにそれぞれ並列にコンデンサおよび電荷リセット用スイッチが接続され、前記コンデンサに蓄積された電荷の量に応じた出力値を出力するチャージアンプ回路で構成されており、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせる際には、前記増幅回路の前記電荷リセット用スイッチをオン状態とした状態で、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて前記リセット処理を行わせることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項4】
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせる際には、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線に、オン電圧を一斉に印加させて前記各放射線検出素子のリセット処理を行わせることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項5】
互いに交差するように配設された複数の走査線および複数の信号線と、前記複数の走査線および複数の信号線により区画された各領域に二次元状に配列された複数の放射線検出素子とを備える検出部と、
前記各走査線にオン電圧とオフ電圧とをそれぞれ切り替えて印加するゲートドライバを備える走査駆動手段と、
前記走査線を介してオン電圧が印加されると前記放射線検出素子に蓄積された電荷を前記信号線に放出させるスイッチ手段と、
前記放射線検出素子から前記信号線に放出された前記電荷をデータに変換して読み出す増幅回路およびサンプリング回路を備える読み出し回路と、
少なくとも前記走査駆動手段および前記読み出し回路を制御して前記各放射線検出素子からの前記データの読み出し処理を行わせる制御手段と、
を備え、
前記制御手段は、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させた後に前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングして画像データとして読み出すようにして行う画像データの読み出し処理を繰り返し行わせ、読み出した前記画像データに基づいて放射線の照射が開始されたことを検出することを特徴とする放射線画像撮影装置。
【請求項6】
前記サンプリング回路は、前記制御手段からパルス信号を2回受信すると、2回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値から、1回目のパルス信号を受信した際に前記増幅回路から出力されていた値を減算した差分を前記データとして出力する相関二重サンプリング回路であり、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記画像データの読み出し処理を行わせる際には、前記相関二重サンプリング回路に前記1回目のパルス信号を送信してから前記2回目のパルス信号を送信するまでの間に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させ、オン電圧が印加された前記各走査線に接続されている前記各放射線検出素子から電荷をそれぞれ放出させた状態で前記増幅回路から出力されている値を前記サンプリング回路でサンプリングして前記画像データとして読み出すことを特徴とする請求項5に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項7】
前記増幅回路は、オペアンプと、前記オペアンプにそれぞれ並列にコンデンサおよび電荷リセット用スイッチが接続され、前記コンデンサに蓄積された電荷の量に応じた出力値を出力するチャージアンプ回路で構成されており、
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記画像データの読み出し処理を行わせる際には、前記増幅回路の前記電荷リセット用スイッチをオフ状態とし、前記コンデンサに電荷を蓄積可能な状態で、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の前記走査線にオン電圧を印加させて前記読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項5または請求項6に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項8】
前記制御手段は、放射線画像撮影前に、前記走査駆動手段の前記ゲートドライバから、前記ゲートドライバに接続されている全ての走査線、または前記ゲートドライバに接続されている全ての前記走査線のうちの一部の複数の走査線にオン電圧を印加する際に、当該全走査線または当該一部の複数の走査線に、オン電圧を一斉に印加させて、前記画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項5から請求項7のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項9】
前記制御手段は、放射線の照射が開始されたことを検出すると、前記走査駆動手段から全ての前記走査線にオフ電圧を印加し、前記各スイッチ手段をオフ状態として電荷蓄積状態に移行した後、前記走査駆動手段から、前記検出部における最端部の前記走査線からオン電圧の印加を開始させて、前記各走査線にオン電圧を順次印加して、前記各放射線検出素子から本画像としての画像データの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の放射線画像撮影装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記各放射線検出素子から本画像としての前記画像データの読み出し処理を行わせた後、前記放射線画像撮影前の前記各放射線検出素子からの前記画像データの読み出し処理または前記各放射線検出素子のリセット処理を所定回数行わせ、その後、放射線が照射されない状態で、前記本画像としての画像データの読み出し処理前の前記電荷蓄積状態と同じ時間だけ前記走査駆動手段から全ての前記走査線にオフ電圧を印加して前記各放射線検出素子内に暗電荷を蓄積させた後、蓄積された暗電荷をオフセットデータとして読み出すオフセットデータの読み出し処理を行わせることを特徴とする請求項9に記載の放射線画像撮影装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図31】
【図32】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
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【図8】
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【図16】
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【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図31】
【図32】
【公開番号】特開2012−70201(P2012−70201A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−212984(P2010−212984)
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月24日(2010.9.24)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】
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