説明

放射線画像検出器

【課題】波長変換層により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する放射線画像検出器において光変換効率の向上を図る。
【解決手段】被写体を透過した放射線が照射される側から、検出器31および波長変換層32をこの順に配置した放射線画像検出器において、波長変換層32を、第1の蛍光体層32aと第2の蛍光体層32bとを積層されたものとし、第1の蛍光体層32aと第2の蛍光体層32bとを、第2の蛍光体層32bに含まれる蛍光体の全平均粒子径が第1の蛍光体層32aに含まれる蛍光体の全平均粒子径よりも大きくなるように形成するとともに、被写体を透過した放射線が照射される側から、第2の蛍光体層32bおよび第1の蛍光体層32aをこの順に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長変換層により変換された光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する放射線画像検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野などにおいて、被写体を透過した放射線の照射により被写体に関する放射線画像を記録する放射線画像検出器が各種提案、実用化されている。
【0003】
上記のような放射線画像検出器として、たとえば、放射線の照射により電荷を発生する半導体を利用した放射線画像検出器が提案されており、そのような放射線画像検出器として、いわゆる光読取方式のものやTFT(thin film transistor、薄膜トランジスタ)、CCD(charge coupled device)、CMOS(complementary metal oxide semiconductor)センサなどを用いる電気読取方式のものが提案されている。
【0004】
また、上記のような放射線画像検出器としては、放射線を半導体層において直接電荷に変換して蓄積する直接変換方式のものや、放射線を蛍光体により一旦光に変換し、その変換した光をフォトダイオードなどによって電荷に変換して蓄積する間接変換方式のものが提案されている。
【0005】
そして、たとえば、特許文献1から特許文献3には、蛍光体層と検出素子が多数配列された検出基板とが積層された間接変換方式の放射線画像検出器が提案されている。
【0006】
一方、特許文献1から特許文献3に記載の放射線画像検出器において、蛍光体層側から放射線を入射した場合、蛍光体層により変換された光が蛍光体層自身によって吸収されて感度の劣化を生じたり、蛍光体層において光が散乱して画像がボケてしまったりしてしまうおそれがある。
【0007】
そこで、特許文献4においては、蛍光体層側からではなく、検出基板側から放射線が入射される放射線画像検出器が提案されている。
【特許文献1】特開2003−215253号公報
【特許文献2】特開2004−239722号公報
【特許文献3】特開2006−258618号公報
【特許文献4】特許第3333278号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、上記のような間接変換方式の放射線画像検出器において高画質な放射線画像を取得するためには、放射線画像検出器に入射される放射線量に対する光の変換効率を上げる必要がある。そのためには高感度な大サイズの粒子の蛍光体を用いたり、蛍光体層の厚さを厚くしたりすることが考えられる。
【0009】
しかしながら、大サイズの粒子を蛍光体層全体に亘って分散させた場合、液物性が変わって液だれをし易くなるという問題がある。また、蛍光体層の厚さを単純に厚くしたのでは、蛍光体の発光の広がりが大きくなり、画像がボケてしまうという問題が生じる。
【0010】
そして、特許文献4に記載の放射線画像検出器のように、検出基板側から放射線が入射される放射線画像検出器においても、上記と同様の問題があり、さらにこのような構造の放射線画像検出器に適応した蛍光体層の構成はこれまでに明らかにされていない。
【0011】
本発明は、上記の事情に鑑み、検出基板側から放射線が入射される間接変換方式の放射線画像検出器において、光変換効率を向上させ、高画質な画像を取得することができる放射線画像検出器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の放射線画像検出器は、放射線の照射を受けてその放射線をより長い波長の光に変換する蛍光体を含む波長変換層と、波長変換層により変換された光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する検出器とを備え、放射線が照射される側から、検出器および波長変換層がこの順に配置された放射線画像検出器であって、波長変換層が、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とが積層されたものであり、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とが、第2の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径が第1の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径よりも大きくなるように形成されたものであり、放射線が照射される側から、第2の蛍光体層および第1の蛍光体層がこの順に配置されていることを特徴とする。
【0013】
ここで、上記「波長変換層」は、放射線を、より長い波長の光に変換するものであるが、近赤外光、可視光および近赤外光に変換するものであることが好ましい。より好ましくは可視光に変換するものである。
【0014】
また、上記本発明の放射線画像検出器においては、第2の蛍光体層を、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層とすることができる。
【0015】
また、第2の蛍光体層を、第1の平均粒子径を有する第1の蛍光体と第1の平均粒子径よりも大きい第2の平均粒子径を有する第2の蛍光体と混合した層とし、第1の蛍光体:第2の蛍光体比を重量比で、2:8〜4:6とすることができる。
【0016】
また、上記第1の蛍光体として平均粒子径が1μm以上5μm未満のものを用い、第2の蛍光体として平均粒子径が5μm以上12μm以下のものを用いることができる。
【0017】
また、第1の蛍光体層を、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層とすることができる。
【0018】
また、第1の蛍光体層を、第3の平均粒子径を有する第3の蛍光体と第3の平均粒子径よりも大きい第4の平均粒子径を有する第4の蛍光体と混合した層とし、第3の蛍光体:第4の蛍光体比を重量比で、8:2〜6:4とすることができる。
【0019】
また、第3の蛍光体として平均粒子径が1μm以上5μm未満のものを用い、第4の蛍光体として平均粒子径が5μm以上12μm未満のものを用いることができる。
【0020】
また、波長変換層を、バインダに蛍光体を分散したものとし、波長変換層におけるバインダ/蛍光体の重量比が、波長変換層の厚さ方向の中央に向かって次第に小さくなるように分布するものを用いることができる。
【0021】
また、波長変換層を、少なくとも第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とを貼り合わせたものとすることができる。
【0022】
また、波長変換層を、少なくとも第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とを加熱圧縮により貼り合わせたものとすることができる。
【0023】
また、波長変換層における蛍光体の空間充填率を63%以上とすることができる。
【0024】
また、蛍光体として、AS:X(ただし、AはY,La,Gd,Luのうちのいずれか、XはEu,Tb,Prのうちのいずれか)で表わされる粒子を用いることができる。また、蛍光体を、共付活剤としてCeまたはSmを含むものとすることができる。
【0025】
ここで、上記「第1の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径」とは、第1の蛍光体層に含まれる全ての蛍光体の粒子径の平均値のことを意味し、「第2の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径」とは、第2の蛍光体層に含まれる全ての蛍光体の粒子径の平均値のことを意味する。そして、上記「粒子径」は、フィッシャー・サブ-シーブ・サイザー(Fisher Sub-Sieve Sizer)で測定した粒子径のことを意味する。
【0026】
また、上記「平均粒子径」とは、フィッシャー・サブ-シーブ・サイザー(Fisher Sub-Sieve Sizer)で測定した粒子径の平均値のことを意味する。
【発明の効果】
【0027】
本発明の放射線画像検出器によれば、波長変換層を、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とを積層したものとし、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とを、第2の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径が第1の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径よりも大きくなるように形成し、放射線が照射される側から、第2の蛍光体層および第1の蛍光体層をこの順に配置するようにしたので、すなわち、放射線が先に入射される第2の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径の方が、放射線が後から入射される第1の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径よりも大きくなるようにしたので、第2の蛍光体層において放射線を光により効率的に変換することができる。
【0028】
そして、さらに第2の蛍光体層により変換されずに第2の蛍光体層を透過した放射線を第1の蛍光体層により受けて光に変換することができ、さらに光変換効率を向上させることができる。また、第1の蛍光体層は、蛍光体の全平均粒子径が第2の蛍光体層よりも小さいので、光が散乱されてから次に散乱されるまでの平均距離である散乱長が短くなるので、第2の蛍光体層により変換された光を検出器側へ反射する反射層としても機能することができ、より光変換効率を向上させることができる。
【0029】
また、上記本発明の放射線画像検出器において、第2の蛍光体層を、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層とした場合には、大サイズの粒子の蛍光体と小サイズの粒子の蛍光体とを混合し、大サイズの蛍光体の粒子の比率を多くすることによって蛍光体の空間充填率を向上させることができ、さらに光変換効率を向上させることができる。
【0030】
また、第1の蛍光体層を、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層とした場合には、大サイズの粒子の蛍光体と小サイズの粒子の蛍光体とを混合し、小サイズの蛍光体の粒子の比率を多くすることによって上述した反射層として機能を向上させることができるとともに、大サイズの粒子の蛍光体によって光変換効率も向上することができる。
【0031】
また、波長変換層を、バインダに蛍光体を分散したものとし、波長変換層におけるバインダ/蛍光体の重量比が、波長変換層の厚さ方向の中央に向かって次第に小さくなるように分布するものを用いるようにした場合には、波長変換層の中央部分におけるバインダの比率を小さくすることができるので、光子の波長変換層内における散乱による広がりを抑え、その結果画像のボケを低減することができる。
【0032】
また、波長変換層を、少なくとも第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とを貼り合わせるようにした場合には、上述した波長変換層におけるバインダ/蛍光体の重量比を簡易な製造方法で実現することができる。その理由については後で詳述する。
【0033】
また、波長変換層を、少なくとも第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とを加熱圧縮により貼り合わせるようにした場合には、圧縮により波長変換層における蛍光体の空間充填率をさらに向上させることができ、光変換効率をさらに向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の放射線画像検出器の一実施形態を用いた放射線画像撮影装置について説明する。図1は、本放射線画像撮影装置の概略構成図である。
【0035】
本放射線画像撮影装置は、被写体2に向けて放射線を射出する放射線源1と、被写体2を透過した放射線が照射され、その放射線に担持された被写体2の放射線画像を表す画像信号を出力する放射線画像検出器3と、放射線画像検出器3から出力された画像信号に所定の信号処理を施す信号処理部4と、信号処理部4において信号処理の施された画像信号に基づいて放射線画像を再生する再生部5とを備えている。
【0036】
図2は、本放射線画像撮影装置における放射線画像検出器3の構成を示す断面図である。
【0037】
放射線画像検出器3は、図2に示すように、被写体を透過した放射線の照射を受けてその放射線を可視光に変換する波長変換層32と、波長変換層32により変換された可視光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する固体検出器31と、波長変換層32を支持する支持体33とを備えている。
【0038】
そして、放射線画像検出器3は、放射線源1側から、固体検出器31、波長変換層32および支持体33がこの順に配置されたものであり、固体検出器31側から放射線の照射を受けるものである。
【0039】
図3は固体検出器31の構成を示す平面図である。固体検出器31は、図3に示すように、X−Y方向に2次元状に多数配列されたフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37と、X方向に並ぶフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37の行毎に設けられ、その行の各TFTスイッチ37に入力される走査信号が印加される走査線31bと、Y方向に並ぶフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37の列毎に設けられ、その列の各フォトダイオード部36によって検出された画素信号が流れ出すデータ線31cとを備えている。
【0040】
走査線31bとデータ線31cとは直交するように設けられ、走査線31bとデータ線31cの交差点に対応してフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37が設けられている。
【0041】
そして、各走査線31bの一端には各走査線31bに走査信号を出力するゲートドライバ40が接続され、各データ線31cの一端には各信号線に流れ出した画素信号を検出する積分アンプ50が接続されている。なお、図1および図2においては、ゲートドライバ40および積分アンプ50を図示省略している。
【0042】
図4は、固体検出器31における各フォトダイオード部36およびTFTスイッチ37の概略構成を示す図である。フォトダイオード部36は、波長変換層32により変換された可視光を光電変換するものである。TFTスイッチ37は、フォトダイオード部36において光電変換された電荷信号を画素信号として読み出すためのものである。
【0043】
図4に示すようにフォトダイオード部36およびTFTスイッチ37は、無アルカリガラス等からなる絶縁性の基板31d上に設けられている。そして、フォトダイオード部36は、波長変換層32により変換された可視光を透過する透明電極36aと、フォトダイオードとして機能する半導体層36bと、下部電極36cとから構成されている。半導体層36bとしては、たとえばPIN構造を利用することができる。なお、フォトダイオード部としてMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造を用いてもよい。また、下部電極36cは、後述するTFTスイッチ37のドレイン電極37bに接続されるものである。また、図4においては、フォトダイオード部36とTFTスイッチ37とを並べて配置しているが、重ねて配置してフォトダイオードの面積を大きく取ることが好ましい。
【0044】
また、TFTスイッチ37は、ゲート電極37aと、ドレイン電極37bと、ソース電極37cと、半導体層37dと、ゲート絶縁膜37eとから構成されている。ゲート電極37aは走査線31bに接続されるものであり、ドレイン電極37bは、上述したとおりフォトダイオード部36の下部電極36cに接続されるものであり、ソース電極37cはデータ線31cに接続されるものである。また、半導体層37dはTFTスイッチ37のチャネル部であり、ゲート電圧によってON−OFFされるデータ線31cとドレイン電極37bとを結ぶ電流の通路である。
【0045】
波長変換層32は、図2に示すように、第1の蛍光体層32aと、第2の蛍光体層32bとを積層したものである。そして、第1の蛍光体層32aと第2の蛍光体層32bはともに放射線を可視光に変換する蛍光体を含むものであるが、第2の蛍光体層32bに含まれる蛍光体の全平均粒子径が第1の蛍光体層32aに含まれる蛍光体の全平均粒子径よりも大きくなるように形成されたものである。そして、図2に示すように、被写体2を透過した放射線が照射される側から、第2の蛍光体層32bおよび第1の蛍光体層32aがこの順に配置されている。
【0046】
なお、ここで第1の蛍光体層32aに含まれる蛍光体の全平均粒子径とは、第1の蛍光体層32aに含まれる全ての蛍光体の粒子径の平均値のことを意味し、第2の蛍光体層32bに含まれる蛍光体の全平均粒子径とは、第2の蛍光体層32bに含まれる全ての蛍光体の粒子径の平均値のことを意味する。そして、第1の蛍光体層32aに含まれる蛍光体の粒子径と第2の蛍光体層32bに含まれる蛍光体の粒子径とは、フィッシャー・サブ-シーブ・サイザー(Fisher Sub-Sieve Sizer)で測定した粒子径のことを意味する。
【0047】
そして、より具体的には、第1の蛍光体層32aの蛍光体として、たとえば、平均粒子径が1μm〜5μmの蛍光体を用い、第2の蛍光体層32bの蛍光体として、たとえば、平均粒子径が5μm〜12μmの蛍光体を用いるようにすればよい。
【0048】
なお、ここで平均粒子径とは、フィッシャー・サブ-シーブ・サイザー(Fisher Sub-Sieve Sizer)で測定した粒子径の平均値のことを意味する。
【0049】
また、蛍光体の材料としては、たとえば、GOS(GdS:Tb)粒子を用いることができ、この粒子を樹脂などのバインダに分散したものを用いて第1の蛍光体層32aと第2の蛍光体層32bとを形成することができる。なお、第1の蛍光体層32aの蛍光体の材料と第2の蛍光体の材料とは、同じものを利用してもよいし、互いに異なる材料の蛍光体を用いるようにしてもよい。この場合、たとえば、GOS(GdS:Tb)粒子とLOS(LuS:Tb)粒子とを用いることができる。また、蛍光体としては、AS:X(ただし、AはY,La,Gd,Luのうちのいずれか、XはEu,Tb,Prのうちのいずれか)で表わされる粒子を用いることができる。また、蛍光体として、AS:Xに共付活剤としてCeまたはSmを含めたものを利用することができる。また、混晶系の蛍光体を用いるようにしてもよい。
【0050】
また、第2の蛍光体層32bを、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層から形成するようにしてもよい。具体的には、たとえば、平均が1μm〜5μmの第1の蛍光体と平均粒子径が5μm〜12μmの第2の蛍光体との両方を混合して樹脂に分散させたものを用いて第2の蛍光体層32bを形成するようにしてもよい。また、このとき、第1の蛍光体:第2の蛍光体比は重量比で2:8〜4:6となるようにすることが望ましい。なお、第1の蛍光体の材料と第2の蛍光体の材料は同じものを用いてもよいし、互いに異なる材料を用いるようにしてもよい。具体的には、GOS(GdS:Tb)粒子とLOS(LuS:Tb)粒子とを用いることができる。
【0051】
なお、第1の蛍光体:第2の蛍光体比は、たとえば、粒子サイズ分布を測定し、ピークの数だけ対数正規分布を有するサイズ種があると仮定してフィッティングし、その結果から導出することができる。
【0052】
また、第1の蛍光体層32aを、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層から形成するようにしてもよい。具体的には、たとえば、平均が1μm〜5μmの第3の蛍光体と平均粒子径が5μm〜12μmの第4の蛍光体との両方を混合して樹脂に分散させたものを用いて第1の蛍光体層32aを形成するようにしてもよい。また、このとき、第3の蛍光体:第4の蛍光体比は重量比で8:2〜6:4となるようにすることが望ましい。なお、第3の蛍光体の材料と第4の蛍光体の材料は同じものを用いてもよいし、互いに異なる材料を用いるようにしてもよい。具体的には、GOS(GdS:Tb)粒子とLOS(LuS:Tb)粒子とを用いることができる。
【0053】
また、第3の蛍光体:第4の蛍光体比の求め方は、上述したとおりである。
【0054】
また、波長変換層32は、波長変換層32におけるバインダ/蛍光体の重量比が、波長変換層32の厚さ方向の中央に向かって次第に小さくなるように分布するように形成することが望ましい。
【0055】
また、波長変換層32における蛍光体の空間充填率が63%以上となるようにすることが望ましい。なお、蛍光体の空間充填率は、以下のようにして求めることができる。まず、波長変換層の一部を切り出して体積を測定する。さらに、溶剤等を用いてその波長変換層から抽出した蛍光体の重量を測定し、その蛍光体の密度から蛍光体の体積を計算する。上記それぞれの体積比が蛍光体の空間充填率として表わされる。なお、蛍光体の組成が不明の場合、組成分析を行い、構成元素と結晶構造から密度を計算する。
【0056】
なお、波長変換層32の形成方法については、後述する実施例において詳細に説明する。
【0057】
また、本実施形態の放射線画像検出器については、上記のように波長変換層を第1の蛍光体層32aと第2の蛍光体層32bとから構成するようにしたが、その他の蛍光体層などをさらに波長変換層内に積層するようにしてもよい。
【0058】
支持体33は、その上に波長変換層32が形成され、その波長変換層32を支持するものである。そして、波長変換層32を支持体33上に形成したものが固体検出器31に貼り付けられることになる。支持体の材料としては、たとえば、厚さ200μmのポリエチレンテレフタレートを利用することができる。
【0059】
次に、本実施形態の放射線画像検出器を用いた放射線画像撮影装置の作用について説明する。
【0060】
まず、放射線源1から放射線が被写体2に向けて照射される。そして、被写体2を透過して被写体の放射線画像を担持した放射線が放射線画像検出器3の固体検出器31側から照射される。
【0061】
そして、放射線画像検出器3に照射された放射線は、固体検出器31を透過し、波長変換層32に照射される。放射線の照射を受けた波長変換層32は、その放射線を可視光に変換する。
【0062】
ここで、本実施形態の放射線画像検出器3においては、上述したように被写体2を透過した放射線が照射される側から、第2の蛍光体層32bおよび第1の蛍光体層32aをこの順に配置している。そして、放射線が先に入射される第2の蛍光体層32bに含まれる蛍光体の全平均粒子径の方が、放射線が後から入射される第1の蛍光体層32aに含まれる蛍光体の全平均粒子径よりも大きくなるようにしたので、第2の蛍光体層32bにおいて放射線を可視光により効率的に変換することができる。
【0063】
そして、さらに第2の蛍光体層32bにより変換されずに第2の蛍光体層32bを透過した放射線を第1の蛍光体層32aにより受けて可視光に変換することができる。また、第1の蛍光体層32aは、蛍光体の全平均粒子径が第2の蛍光体層32bよりも小さいので、すなわち光が散乱されてから次に散乱されるまでの平均距離である散乱長が短くなるので、第2の蛍光体層32bにより変換された可視光を固体検出器31側へ反射する反射層としても機能することができる。
【0064】
そして、波長変換層32の第1の蛍光体層32aおよび第2の蛍光体層32bにより変換された可視光は固体検出器31に照射され、固体検出器31の各フォトダイオード部36に入射される。そして、フォトダイオード部36に入射された可視光はフォトダイオード部36の半導体層36bに照射され、半導体層36bおいて電荷が発生する。
【0065】
そして、画像読出時には、X方向に並ぶTFTスイッチ37の行に接続された各走査線31bがゲートドライバ40によりY方向について順次選択され、ゲートドライバ40からその選択された走査線31bに対して各TFTスイッチ37をONするためのON信号が順次出力される。
【0066】
そして、走査線31bにON信号が流されるとその走査線31bに接続された各TFTスイッチ37のゲート電極37aにゲート電圧が印加され、TFTスイッチ37のドレイン電極37b−ソース電極37c間が半導体層37dを介して導通し、TFTスイッチ37がON状態となる。
【0067】
そして、これによりフォトダイオード部36において発生した電荷信号がTFTスイッチ37を介して読み出され、データ線31cに流れ出す。そして、各データ線31cに流れ出した電荷信号は各データ線31cに接続された積分アンプ50により画像信号として検出され、走査線31bの選択毎に積分アンプ50から画像信号が出力される。
【0068】
そして、放射線画像検出器3から出力された画像信号は信号処理部4に出力され、信号処理部4において所定の信号処理が施された後、その処理済画像信号が再生部5に出力される。
【0069】
そして、再生部5において、処理済画像信号に基づいて、たとえば被写体2の放射線画像がモニタ上に再生表示されたり、所定の記録媒体に放射線画像が再生記録されたりする。
【0070】
以下、上述した実施形態の放射線画像検出器の実施例を説明する。
【実施例1】
【0071】
1)第1の蛍光体層および第2の蛍光体層の形成
ポリウレタンエラストマー(パンデックス(登録商標)T−5265HM、大日本インキ化学工業社製)およびエポキシ樹脂(jER#1001、油化シェルエポキシ社製)の混合物14.5重量%を、メチルエチルケトン(MEK)85.5重量%に溶解し、十分に攪拌して結合剤(バインダ)溶液を作成した。
【0072】
そして、この結合剤溶液と平均粒子径2.1μmのGdS:Tb蛍光体粒子とを固形成分として20:80の重量%比で混合し、プロペラミキサで分散処理して蛍光体塗布液を調製した。
【0073】
そして、この蛍光体塗布液をドクターブレードを用いて、シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚み:190μm)の表面に、430mmの巾で塗布し乾燥した後、仮支持体から剥離して、第1の蛍光体層(厚み:300μm)を得た。
【0074】
また、上記結合剤と平均粒子径6.3μmのGdS:Tb蛍光体粒子とを固形成分として20:80の重量%比で混合し、プロペラミキサで分散処理して蛍光体塗布液を調製した。
【0075】
そして、この蛍光体塗布液をドクターブレードを用いて、シリコーン系離型剤が塗布されたポリエチレンテレフタレートシート(仮支持体、厚み:190μm)の表面に、300mmの巾で塗布し乾燥した後、仮支持体から剥離して、第2の蛍光体層(厚み:300μm)を得た。
【0076】
ここで、上記のように第1および第2の蛍光体層を仮支持体上に塗布して形成した場合、塗膜内で比重の大きい蛍光体は沈降して下部に、バインダ分子は逆に上部に移動する。乾燥によりそれがさらに促進されるため、蛍光体層における結合剤(バインダ)の重量の分布は、図5に示すように、下側(仮支持体)から上側に向かって次第に多くなる分布となった。
【0077】
2)支持体の形成
下記組成の材料をMEKに加え、混合分散して粘度0.02〜0.05Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液をポリエチレンテレフタレート(PET)シート(支持体、厚み:188μm、ヘイズ度:約27、ルミラー(登録商標)S−10、東レ社製)の表面に、ドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、導電層(層厚:2μm)を形成した。
【0078】
導電剤:SnO(Sbドープ)針状微粒子(長軸:0.2〜2μm、短軸:0.01
〜0.02μm、FS−10P、石原産業社製)のMEK分散体(固形分30
重量%) 500g
樹脂:飽和ポリエステル樹脂(バイロン300、東洋紡社製) 60g
硬化剤:ポリイソシアネート(タケネートD140N[固形分75%]、三井武田ケミ
カル社製) 6.6g
下記組成の材料をMEK/酢酸ブチル混合溶媒に加え、混合分散して粘度2〜3Pa・sの塗布液を調製した。この塗布液を導電層の表面にドクターブレードを用いて塗布し乾燥して、光反射層(層厚:約70μm)を形成した。
【0079】
光反射性物質:高純度アルミナ微粒子(平均粒子径:0.4μm、UA−5105、
昭和電工社製)500g
結合剤:軟質アクリル樹脂(クリスコート(登録商標)P−1018GS[20%トルエン溶液]、大日本インキ化学工業(株)製)112g
着色剤:群青(SM−03S、第一化成工業(株)製)2.5g
カップリング剤:γ-アミノプロピルトリエトキシシラン(KBE903、信越化学社製)5g
3)波長変換層の形成
支持体上の反射層の面に、1)で作製した第1の蛍光体層をその上側(塗布形成時の仮支持体側とは反対側)が反射層に接するようにして重ね、さらに、その第1の蛍光体層上に1)で作製した第2の蛍光体層をその下側(塗布形成時の仮支持体側)が第1の蛍光体層に接するようにして重ね、これをカレンダー機を用いて総荷重2300kg、上側ロール45℃、下側ロール45℃、送り速度0.3m/分にて加熱圧縮した。これにより、第1の蛍光体層および第2の蛍光体層は支持体上の反射層に完全に融着した。
【0080】
ここで、上記のように支持体上に第1および第2の蛍光体層を重ね合わせて波長変換層を形成した場合、波長変換層における結合剤の重量の分布は、図6に示すように、波長変換層32の厚さ方向の中央に向かって次第に小さくなる分布となった。すなわち、波長変換層32におけるバインダ/蛍光体の重量比の分布が、波長変換層32の厚さ方向の中央に向かって次第に小さくなる分布となった。
【0081】
なお、本実施例においては、上記のように第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とを貼り合わせるようにしたが、これに限らず、製造工程における製造時間の短縮のため、2層の蛍光体層を同時重層塗布により形成するようにしてもよい。
【0082】
4)放射線画像検出器の形成
上記支持体上の波長変換層の表面に両面接着テープ(接着層;厚み25μm、日東電工(株)製CS9621)を貼った後、ラミネート機を用いて固体検出器の表面に、両面接着テープを介して波長変換層を貼り合わせることで放射線画像検出器を作成した。
【0083】
なお、上記実施形態および実施例においては、電気読取方式の固体検出器を用いた放射線画像検出器について説明したが、本発明の放射線画像検出器は光読取方式の固体検出器を用いるようにしてもよい。光読取方式の固体検出器としては、具体的には、たとえば、波長変換層に変換された可視光を透過する第1の電極層、第1の電極層を透過した可視光の照射を受けることにより電荷を発生する記録用光導電層、記録用光導電層において発生した電荷のうち一方の極性の電荷に対しては絶縁体として作用し、且つ他方の極性の電荷に対しては導電体として作用する電荷輸送層、読取光の照射を受けることにより電荷を発生する読取用光導電層、および読取光を透過する透明線状電極と読取光を遮光する遮光線状電極とからなる第2の電極層をこの順に積層してなるものを用いることができる。そして、上記放射線画像検出器の第1の電極層の上に、上述した波長変換層を、第2の蛍光体層が第1の電極層側に配置されるように設けるようにすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】本発明の放射線画像検出器の実施形態を用いた放射線画像撮影装置の概略構成図
【図2】本発明の放射線画像検出器の一実施形態の概略構成を示す断面図
【図3】固体検出器の平面図を示す図
【図4】固体検出器におけるフォトダイオード部およびTFTスイッチの構成を示す図
【図5】蛍光体層におけるバインダの重量の分布の一例を示す模式図
【図6】波長変換層におけるバインダの重量の分布の一例を示す模式図
【符号の説明】
【0085】
1 放射線源
2 被写体
3 放射線画像検出器
4 信号処理部
5 再生部
31 固体検出器
31b 走査線
31c データ線
31d 基板
32 波長変換層
32a 第1の蛍光体層
32b 第2の蛍光体層
33 支持体
36 フォトダイオード部
36a 透明電極
36b 半導体層
36c 下部電極
37 TFTスイッチ
37a ゲート電極
37b ドレイン電極
37c ソース電極
37d 半導体層
40 ゲートドライバ
50 積分アンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線の照射を受けて該放射線をより長い波長の光に変換する蛍光体を含む波長変換層と、該波長変換層により変換された光を検出して放射線画像を表す画像信号に変換する検出器とを備え、前記放射線が照射される側から、前記検出器および前記波長変換層がこの順に配置された放射線画像検出器であって、
前記波長変換層が、第1の蛍光体層と第2の蛍光体層とが積層されたものであり、
前記第1の蛍光体層と前記第2の蛍光体層とが、前記第2の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径が第1の蛍光体層に含まれる蛍光体の全平均粒子径よりも大きくなるように形成されたものであり、
前記放射線が照射される側から、前記第2の蛍光体層および前記第1の蛍光体層がこの順に配置されていることを特徴とする放射線画像検出器。
【請求項2】
前記第2の蛍光体層が、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層であることを特徴とする請求項1記載の放射線画像検出器。
【請求項3】
前記第2の蛍光体層が、第1の平均粒子径を有する第1の蛍光体と前記第1の平均粒子径よりも大きい第2の平均粒子径を有する第2の蛍光体と混合した層であって、
前記第1の蛍光体:前記第2の蛍光体比が重量比で、2:8〜4:6であることを特徴とする請求項2記載の放射線画像検出器。
【請求項4】
前記第1の平均粒子径が1μm以上5μm未満であり、前記第2の平均粒子径が5μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項3記載の放射線画像検出器。
【請求項5】
前記第1の蛍光体層が、平均粒子径が互いに異なる蛍光体を混合した層であることを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放射線画像検出器。
【請求項6】
前記第1の蛍光体層が、第3の平均粒子径を有する第3の蛍光体と前記第3の平均粒子径よりも大きい第4の平均粒子径を有する第4の蛍光体と混合した層であって、
前記第3の蛍光体:前記第4の蛍光体比が重量比で、8:2〜6:4であることを特徴とする請求項5記載の放射線画像検出器。
【請求項7】
前記第3の平均粒子径が1μm以上5μm未満であり、前記第4の平均粒子径が5μm以上12μm以下であることを特徴とする請求項6記載の放射線画像検出器。
【請求項8】
前記波長変換層が、バインダに前記蛍光体を分散したものであり、
前記波長変換層における前記バインダ/前記蛍光体の重量比が、前記波長変換層の厚さ方向の中央に向かって次第に小さくなるように分布していることを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の放射線画像検出器。
【請求項9】
前記波長変換層が、少なくとも前記第1の蛍光体層と前記第2の蛍光体層とを貼り合わせたものであることを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の放射線画像検出器。
【請求項10】
前記波長変換層が、少なくとも前記第1の蛍光体層と前記第2の蛍光体層とを加熱圧縮により貼り合わせたものであることを特徴とする請求項9記載の放射線画像検出器。
【請求項11】
前記波長変換層における前記蛍光体の空間充填率が63%以上であることを特徴とする請求項1から10いずれか1項記載の放射線画像検出器。
【請求項12】
前記蛍光体が、AS:X(ただし、AはY,La,Gd,Luのうちのいずれか、XはEu,Tb,Prのうちのいずれか)で表わされる粒子であることを特徴とする請求項1から11いずれか1項記載の放射線画像検出器。
【請求項13】
前記蛍光体が、共付活剤としてCeまたはSmを含むものであることを特徴とする請求項12記載の放射線画像検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−112733(P2010−112733A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−283211(P2008−283211)
【出願日】平成20年11月4日(2008.11.4)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【復代理人】
【識別番号】100128451
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 隆一
【Fターム(参考)】