説明

放射線画像検出装置

【課題】撮影条件や固体検出素子の個体差の影響を受けることなく、常に適正な濃度やコントラストを持つ画像が得られる放射線画像検出装置にする。
【解決手段】放射線固体検出器10が画像情報を担持する放射線を検出してアナログの画像信号Sを出力する。A/D変換器11が画像信号Sをデジタル化された画像データD0に変換する。特性決定手段12が、例えば累積ヒストグラム等を利用することにより画像データD0を解析して、適正な濃度或いはコントラストとなるように、規格化処理する規格化処理特性を決定する。規格化処理手段13が、決定された規格化処理特性に基づいて規格化処理して、該規格化処理後の画像データD1を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線画像検出装置に関し、より詳細には、放射線画像検出装置から出力される画像データに基づく放射線画像の品質の改善に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より医療診断を目的とする放射線撮影の医療用放射線撮影において、放射線写真フイルムや、蓄積性蛍光体シートを使用した放射線画像情報読取装置が知られている。
【0003】
また今日、放射線を検出して電気信号に変換する放射線固体検出器(半導体を主要部とするもの)を使用した放射線画像検出装置が提案されている。放射線固体検出器としては、種々のタイプのものが提案されているが、代表的なものとしては、絶縁基板上に夫々が画素に対応する複数個の光電変換素子を2次元状に形成した2次元画像読取装置と、この2次元画像読取装置上に形成された画像情報を担持する放射線が照射されると画像情報を担持する可視光に変換する蛍光体層(シンチレータ)を積層して成るもの(以下、「光変換方式」の放射線固体検出器という)や、絶縁基板上に夫々が画素に対応する複数個の電荷収集電極を2次元状に形成した2次元画像読取装置と、この2次元画像読取装置上に形成された、画像情報を担持する放射線が照射されると前記画像情報を担持する電荷を発生する放射線導電体とを積層して成るもの(以下、「直接変換方式」の放射線固体検出器という)がある。
【0004】
光変換方式の放射線固体検出器としては、例えば特開昭59-211263 号、特開平2-164067号、PCT国際公開番号WO92/06501号、Signal,noise,and read out considerations in the development of amorphous silicon photodiode arrays for radiotherapy and diagnostic x-ray imaging,L.E.Antonuk et.al ,University of Michigan,R.A.Street Xerox,PARC,SPIE Vol.1443 Medical Imaging V;Image Physics(1991) ,p.108-119 等が提案されている。
【0005】
一方、直接変換方式の放射線固体検出器としては、例えば、
(i) 放射線の透過方向の厚さが通常のものより10倍程度厚く設定された放射線固体検出器(MATERIAL PARAMETERS IN THICK HYDROGENATED AMORPHOUS SILICON RADIATION DETECTORS,Lawrence Berkeley Laboratory.University of California,Berkeley.CA 94720 Xerox Parc.Palo Alto.CA 94304)、あるいは(ii)放射線の透過方向に、金属板を介して2つ以上積層された放射線固体検出器(Metal/Amorphous Silicon Multilayer Radiation Detectors,IEE TRANSACTIONS ON NUCLEAR SCIENCE.VOL.36.NO.2.APRIL 1989) 、あるいは(iii) CdTe等を使用した放射線固体検出器(特開平1-216290号)等が提案されている。
【0006】
また、本出願人は、直接変換方式の放射線固体検出器を改良した放射線固体検出器(以下、「改良型直接変換方式」の放射線固体検出器という)を提案している(特願平9-222114号)。
【0007】
この改良型直接変換方式の放射線固体検出器は、記録用の放射線に対して透過性を有する第1の導電体層、該第1の導電体層を透過した記録用の放射線の照射を受けることにより導電性を呈する記録用光導電層、第1の導電体層に帯電される電荷と同極性の電荷に対しては略絶縁体として作用し、かつ、該電荷と逆極性の電荷に対しては略導電体として作用する電荷輸送層、読取用の電磁波の照射を受けることにより導電性を呈する読取用光導電層、読取用の電磁波に対して透過性を有する第2の導電体層を、この順に積層して成るものであって、記録用光導電層と電荷輸送層との界面に、画像情報を担持する潜像電荷を蓄積するものである。
【0008】
なお、この改良型直接変換方式の放射線固体検出器において潜像電荷を読み出す方式としては、第2の導電体層(読取側電極)を平板状のものとし、この読取側電極にレーザ等のスポット状の読取光を走査して潜像電荷を検出する方式と、読取側電極をクシ歯状のもの(ストライプ状電極)とし、ストライプ状電極の長手方向と略直角な方向に延びたライン光源を該ストライプ状電極の長手方向に走査して潜像電荷を検出する方式がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、放射線固体検出器を使用した放射線画像検出装置において、放射線固体検出器から出力された画像データに基づいて可視画像を表示する場合、該放射線固体検出器を構成する光電変換素子,電荷収集素子等を主要部とする固体検出素子から出力される画像信号のレベルが、撮影条件や放射線固体検出器の個体差によって異なったものとなるので、固体検出素子から出力された画像信号をデジタル化した画像データそのものを出力し、該画像データに基づいて可視画像化すると、画像の濃度やコントラストが必ずしも適正なものとならず、品質の悪い放射線画像が再生されてしまうことがある。
【0010】
また、固体検出素子が蓄積し得る潜像電荷の量には限界があり、従来の放射線写真フイルムや蓄積性蛍光体シートを使用した装置に比べて、信号の飽和レベルが低くダイナミックレンジが狭いという問題があり、撮影の常用的範囲内でも飽和した画素が存在する場合が多く、従来の放射線写真フイルム等を使用した装置よりも放射線画像の品質が劣るという問題がある。
【0011】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、放射線画像検出装置から出力される画像データに基づく画像の画質を改善することのできる放射線画像検出装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による放射線画像検出装置は、画像情報を担持する放射線を検出して画像信号に変換する固体検出素子が2次元状に多数配列されてなる検出手段と、
画像信号をデジタル化された画像データに変換するA/D変換器と、
画像データを解析して、規格化処理する規格化処理特性を決定する特性決定手段と、
決定された規格化処理特性に基づいて、画像データを規格化処理する規格化処理手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
ここで、「規格化処理」とは、検出手段により検出された画像信号に基づく画像の濃度或いはコントラストが適正となるように、検出手段により検出された画像信号を当該放射線画像検出装置の後段に接続される画像再生装置等の適正入力信号範囲に対応させる信号処理である。具体的には、例えば、検出手段により検出された画像信号のうち、所望画像情報範囲の最大信号レベルおよび最小信号レベルが、夫々可視出力画像における適正濃度範囲の最大値および最小値に対応するように、検出手段により検出された画像信号を画像再生装置等の入力用画像信号に変換する処理である。
【0014】
本発明による放射線画像検出装置においては、画像情報中の所望画像情報部分を担持する画像データの範囲である所望画像データ範囲を決定するデータ範囲決定手段をさらに備えたものとするとともに、特性決定手段を、該データ範囲決手段により決定された所望画像データ範囲内の画像データを解析して、規格化処理特性を決定するものとするのが望ましい。
【0015】
ここで所望画像データ範囲を決定するに際しては、所望画像情報部分を担持する画像データの範囲を決定することができる限り、どのような方法を用いてもよい。例えば、特開昭61−39039号、同61−170178号、同63−259538号などに記載されているように、照射野内の画像情報を所望画像情報部分とするものとし、スネークスアルゴリズムなどの動的輪郭抽出処理、ハフ変換などを利用した輪郭抽出処理、照射野の輪郭上にあると考えられる複数の輪郭点を求めてこれらの輪郭点に沿った線で囲まれる領域を照射野と認識する方法など公知の種々の照射野認識処理を適用した照射野領域検出手段を設け、検出された照射野内のデータを所望画像データ範囲とするようにしてもよい。或いは特開平4−11242号に記載されているように、被写体像のみを所望画像情報部分とするものとし、この被写体像の辺縁部を検出する手段を設け、検出された該辺縁部内のデータを所望画像データ範囲とするようにしてもよい。或いは特開平1−50171号などに記載されているように、被写体像の内、例えば頸椎部と軟部などを所望画像情報部分とするものとし、該頸椎部と軟部などを検出する手段を設け、検出された結果に基づいて所望画像データ範囲を決定するようにしてもよい。
【0016】
本発明による放射線画像検出装置の特性決定手段は、固体検出素子の飽和特性を考慮して、規格化処理特性を決定するものであることが望ましい。
【0017】
ここで「固体検出素子の飽和特性を考慮して」とは、飽和している画素の全体に占める割合、或いは画像上の位置情報等、固体検出素子の飽和に関する情報に基づいて、という意味である。
【0018】
本発明による放射線画像検出装置の規格化処理手段は、ビット数を削減する処理を含むものであることが望ましい。
【0019】
また本発明による放射線画像検出装置は、規格化処理された画像データを記憶するメモリを備えたものとしてもよい。
【0020】
本発明による放射線画像検出装置は、規格化処理された画像データに基づく画像を表示する画像表示手段と、
規格化処理特性を変更する変更手段とを備えたものであるのが望ましい。
【0021】
また本発明による放射線画像検出装置は、画像表示手段により画像が表示された後、所定時間内に規格化処理特性が変更されないときには、表示されている画像の画像データを自動的に出力する画像データ出力手段を備えたものであればより望ましい。
【0022】
さらに本発明による放射線画像検出装置は、規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性である場合に、その旨の警告を発する警告手段を備えたものとすれば一層望ましい。
【0023】
さらにまた、本発明による放射線画像検出装置は、画像情報が撮影により得られたものであり、
規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性である場合に、複数の所定の特性のいずれかの特性にするために、撮影条件を修正するための修正情報を出力する修正情報出力手段を備えたもの、或いは、複数の所定の特性のいずれかの特性に基づいて撮影条件を変更する撮影条件変更手段を備えたものとすればより一層望ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明による放射線画像検出装置によれば、検出手段から出力された画像信号をデジタル化した画像データを解析して、適正な規格化処理特性を決定した後、該決定した規格化処理特性に基づいて規格化処理するようにしたので、撮影条件や放射線固体検出器の影響を受けることなく、常に適正な規格化処理特性に基づいて規格化処理することができるので、画像の濃度やコントラストが常に適正なものとなり、惹いては品質の良い放射線画像を再生することができる。
【0025】
また、画像情報中の所望画像情報部分を担持する画像データの範囲である所望画像データ範囲を決定するデータ範囲決定手段をさらに備えたものとし、該データ範囲決手段により決定された所望画像データ範囲内の画像データを解析して、規格化処理特性を決定するようにすれば、画像情報として有効な領域の画像データのみに基づいて、より適正な規格化処理特性を決定することができるようになる。
【0026】
また、固体検出素子の飽和特性を考慮して、規格化処理特性を決定するようにすれば、固体検出素子の飽和特性の影響を受けることなく規格化処理特性を決定することができる。
【0027】
また、ビット数を削減する処理と併せて規格化処理を行うようにすれば、当該放射線画像検出装置に接続される画像再生装置が扱うデータ量を少なくすることができるから、画像再生装置の回路規模を小さくすることができ、該画像再生装置をコンパクトなものにすることができる。
【0028】
また規格化処理された画像データを一旦記憶するメモリを備えたものとすれば、必要なときにメモリから画像データを読み出して画像再生することができる。
【0029】
また規格化処理された画像データに基づく画像を表示する画像表示手段と、規格化処理特性を変更する特性変更手段を備えたものとすれば、表示画像を見ながら規格化処理特性を決定することができるから、該表示画像が適正でない場合には、規格化処理特性を修正して適正に規格化処理することができる。
【0030】
また画像表示後所定時間内に規格化処理特性が変更されないときには、表示画像の画像データを自動的に出力する画像データ出力手段を備えたものとすれば、規格化処理が適当であれば、適正に規格化処理された画像データを自動的に他の外部装置に出力することができ、操作者は表示画像が適当でないときのみ規格化処理特性を決定し直せばよくなる。
【0031】
さらに規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性(例えば許容できない規格化処理特性)である場合に、その旨の警告を発する警告手段を備えたものとすれば、許容できない規格化処理特性である旨を操作者に警告できるから、許容できない規格化処理特性に基づいて規格化処理された画像データが出力されるのを防止することができる。
【0032】
さらにまた、規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性(例えば許容できない規格化処理特性)である場合に、複数の所定の特性のいずれかの特性にするために、撮影条件を修正するための修正情報を出力する修正情報出力手段を備えたものとすれば、許容できない規格化処理特性である場合、すなわち適正な規格化処理特性を決定することができない場合であっても、操作者は修正情報を参照しながら撮影条件を変えて再度撮影し直すことができるから、適正な規格化処理特性を決定して、適正に規格化処理することができる。
【0033】
また、これと同様の場合に、複数の所定の特性のいずれかの特性に基づいて撮影条件を変更する撮影条件変更手段を備えたものとすれば、撮影条件を自動的に変えて再度撮影し直すことができるから、操作者の手を煩わせることなく適正な規格化処理特性を決定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。図1は本発明の実施の形態による放射線画像検出装置の構成を示すブロック図である。
【0035】
図1に示すように、この放射線画像検出装置1は、撮影により得られた画像情報を担持する放射線を検出して画像信号に変換する固体検出素子(不図示)が2次元状に多数配列されてなる検出手段(放射線固体検出器)10と、放射線固体検出器10から出力された画像信号Sをデジタル化された画像データD0に変換するA/D変換器11と、画像データD0を解析して、規格化処理する規格化処理特性を決定する特性決定手段12と、決定された規格化処理特性に基づいて、画像データD0を規格化処理して画像データD1を出力する規格化処理手段13とを備えている。なお、図中点線で示すデータ範囲決定手段14をさらに備えた構成としてもよい。規格化処理手段13から出力された画像データD1は、不図示の放射線画像再生装置に入力され、所定の画像処理が施された後、CRT等の画像表示装置上に可視画像として表示される。
【0036】
放射線固体検出器10としては、上述した光変換方式の放射線固体検出器,直接変換方式の放射線固体検出器或いは改良型直接変換方式の放射線固体検出器の何れを使用してもよい。
【0037】
以下上記構成の放射線画像検出装置1の作用について説明する。最初に、図1に点線で示すデータ範囲決定手段14が設けられていないものとして説明する。
【0038】
放射線固体検出器10により検出された画像情報を担持する画像信号SがA/D変換器11に入力され、16ビットのデジタル画像データD0に変換される。画像データD0は特性決定手段12に入力され、後述する方法に従って、規格化処理手段13で規格化処理する際の規格化処理特性が決定される。
【0039】
図2は規格化処理特性の決定方法を説明する図である。以下この図2を参照して特性決定手段12および規格化処理手段13の作用について説明する。
【0040】
特性決定手段12は、先ず画像データD0の累積ヒストグラムを求める。図2(A)は、特性決定手段12が求めた累積ヒストグラムの例を示す図であり、ここではaとbで示す2種類の累積ヒストグラムの例を示している。ここで、累積ヒストグラムとは、1枚の放射線画像を成す全画像データについて、データ値を横軸に、そのデータ値の出現率(頻度)を縦軸にして表した図である。
【0041】
ここで、例えば、ある撮影条件の下に撮影された画像を担持する画像データD0に基づいて求めた累積ヒストグラムが図中aで示すものであって、画像データD0のうち、所望画像情報範囲の最小値および最大値が夫々図で示すMIN0およびMAX0であるとする。このときの所望画像情報範囲SPAN0 はMIN0〜MAX0の範囲である。
【0042】
また、上記撮影条件とは異なる撮影条件の下に撮影された画像を担持する画像データD0に基づいて累積ヒストグラムを求めた場合には、累積ヒストグラムが図中bで示すものであって、画像データD0のうち、所望画像情報範囲の最小値および最大値が夫々図で示すMIN1およびMAX1であるとする。ここで、「上記撮影条件とは異なる撮影条件」の例としては、例えば放射線量が違う場合や被写体が異なる場合等がある。
【0043】
特性決定手段12は、このようなaまたはbで示す累積ヒストグラムとなる16ビットの画像データD0を、表示画像の濃度或いはコントラストが適正(以下代表的に「適正濃度」という)となるように、規格化処理手段13に画像データの変換を行わせるものであって、具体的には、上記所望画像情報範囲の最小値MIN0,MIN1および最大値MAX0,MAX1が、12ビットの画像データD1であって、夫々最小値MIN0およびMIN1が最小値MIN2に対応し,最大値MAX0およびMAX1が最大値MAX2に対応するように変換させるものである。図2(B)は、このようにして、所望画像情報範囲MIN0〜MAX0およびMIN1〜MAX1の16ビットの画像データを、MIN0,MIN1がMIN2に対応し、MAX0,MAX1がMAX2に対応するように、適正濃度範囲MIN2〜MAX2の12ビットの画像データD1に変換した累積ヒストグラムを表す図である。なお、本例では、16ビットの画像データD0を規格化処理において12ビットの画像データD1に変換するようにし、規格化処理がビット数削減処理を含むものとしているが、これに限らず、16ビットの画像データD0を16ビットの画像データD1に変換する、ビット数削減処理を含まない規格化処理としてもよいのは勿論である。さらに、ビット数削減処理を含まない規格化処理とした場合、規格化処理後の画像データD1のビット数を削減する処理をさらに施すようにしてもよい。すなわち、本例では、16ビットの画像データD1を12ビットの画像データにビット削減処理するが如くである。
【0044】
図2(B)から明らかなように、特性決定手段12により決定された規格化特性に基づいて規格化処理を行えば、16ビットの画像データD0の所望画像情報範囲が異なっても、12ビットの画像データD1としては、常に適正濃度範囲MIN2〜MAX2の画像データとなる。
【0045】
ここで、画像データD0の所望画像情報範囲が異なっても、常に適正濃度範囲MIN2〜MAX2となる12ビットの画像データD1に変換するに際しては、例えば、図2(C)にa,bで示す直線のように、所定の変換関数に基づいて入力データである16ビットの画像データD0を出力である12ビットの画像データD1に変換すればよい。所定の変換関数としては、本例では、
D1a =D0a ×Gaina +Offseta
D1b =D0b ×Gainb +Offsetb
で表すことができる。ここで、D1a は直線aを表す式であり、D1b は直線bを表す式である。
【0046】
特性決定手段12は、求めた累積ヒストグラムに対応する変換関数を規格化処理特性として決定し、この変換関数に基づいて、規格化処理手段13に画像データの変換を行わせる。これにより、画像データD0の所望画像情報範囲が異なっても、常に適正濃度範囲MIN2〜MAX2となる12ビットの画像データD1が規格化処理手段13から出力される。したがって、この規格化処理後の画像データD1に基づいて画像表示すれば、画像の濃度やコントラストが適正なものとなり、放射線画像の品質の劣化という問題が解消される。
【0047】
適正濃度範囲MIN2〜MAX2となる12ビットの画像データD1に変換するに際しては、上述のように、直線(1次関数)で表される変換関数を使用するものに限定されるものではなく、例えば3次関数等の高次の関数で表される変換関数を使用してもよい。
【0048】
また、想定される複数の累積ヒストグラムと、この累積ヒストグラムの夫々に対応するルックアップテーブルLUTを用意しておき、想定される累積ヒストグラムの中から、求めた累積ヒストグラムに近いものに対応するLUTを規格化処理特性として決定し、該LUTに基づいて、規格化処理手段13に画像データの変換を行わせるようにしてもよい。
【0049】
また、固体検出素子の飽和特性、例えば飽和レベルが低いという点を考慮して、飽和している画素の全体に占める割合、或いは画像上の位置情報等、固体検出素子の飽和に関する情報に基づいて、規格化処理特性を決定するとよい。例えば、飽和している画素の全体に占める割合を求めるには、上述の累積ヒストグラムを利用して、飽和レベル(例えば、画像データD0がFFFF近傍)のものが全体に占める割合を求めればよい。また、画像上の位置情報は、飽和レベルを呈する画素の画素位置から求めればよい。
【0050】
また、固体検出素子の出力信号が飽和しているか否かを検出するには、例えば以下のようにして行えばよい。先ず、画像データD0を縮小する。この縮小された画像データに基づいて、上述の場合と同様に、累積ヒストグラムを求める。縮小された画像データの量子化範囲の最小値および最大値に対応する頻度の縮小画像の画素数に対する比率が所定の閾値以上の場合、画像の一部が飽和していると判断する。例えば、固体検出素子の出力信号が飽和している場合、画像データの高信号値側が飽和するため、縮小された10ビットの画像データに基づいて求めた累積ヒストグラムは、図3に示すように、画像データの最大値MAX3(本例ではデータ値3FF)近傍にピークを呈するものとなる。このピーク値が所定の閾値以上の場合、画像の一部が飽和していると判断する。
【0051】
そして、画像の一部が飽和していると判断したときには、上述のように、画像情報範囲MIN3〜MAX3が適正濃度範囲MIN2〜MAX2となるように規格化処理を行うというのではなく、MAX3に想定されるヒストグラム幅CW(定数)を足したMAX3’を用いて、画像情報範囲MIN3〜MAX3’が適正濃度範囲MIN2〜MAX2と対応するような規格化処理特性を決定し、規格化処理を行うようにする。
【0052】
またこれに限らず、一旦上述した通常の方法により規格化処理特性を決定し、飽和している画素数の割合に応じて、濃度或いはコントラストを調整するような規格化処理特性を決定してもよい。具体的には、高濃度側が飽和していれば、濃度およびコントラストを下げることができる規格化処理特性とすればよい。また、この場合の調整の程度は、飽和の程度に応じて設定するとよい。
【0053】
さらにまた、図1に点線で示すように、画像情報中の所望画像情報部分を担持する画像データの範囲である所望画像データ範囲を決定するデータ範囲決定手段14をさらに設けた構成とし、特性決定手段12により、例えば上述のようにして求められた累積ヒストグラムの内、データ範囲決定手段14により検出された所望画像データ範囲(例えば照射野領域内など)に対応する部分のみの画像データに基づいて、規格化処理特性を決定するようにしてもよい。そうすれば、画像情報として有効な領域の画像データのみに基づいて、より適正な規格化処理特性を決定することができるので、より適正な規格化処理を行うことができるようになる。
【0054】
このデータ範囲決定手段14としては、上述したように、例えば特開昭61−39039号、同61−170178号、同63−259538号などに記載されているような、公知の種々の照射野認識処理を適用した照射野領域検出手段を備え、検出された照射野内のデータを所望画像データ範囲とする手段としてもよい。或いは特開平4−11242号に記載されているような、被写体像の辺縁部を検出する手段を備え、検出された該辺縁部内のデータを所望画像データ範囲とする手段としてもよい。或いは特開平1−50171号などに記載されているような、被写体像の内の例えば頸椎部と軟部などを検出する手段を備え、検出された結果に基づいて所望画像データ範囲を決定する手段としてもよい。
【0055】
次に、上述した放射線画像検出装置1に、規格化処理が施された画像データD1を記憶するメモリ22を追加した態様の放射線画像検出装置について説明する。この態様の放射線画像検出装置はカッセテタイプの放射線画像検出装置として好適である。図4は放射線画像検出装置用カセッテ20のブロック図であり、図5はこの放射線画像検出装置用カセッテ20を用いて被写体の放射線画像を検出するカセッテ20の配置を示す配置図である。
【0056】
図4および図5に示すように、この放射線画像検出装置用カセッテ20は、放射線固体検出器10,A/D変換器11,特性決定手段12,規格化処理手段13および規格化処理手段13から出力された規格化処理後の画像データD1を記憶する画像メモリ22を、函体21の内部に収容するものである。函体21の外縁の一部には、画像メモリ22に接続され、画像メモリ22に記憶された画像データD1を外部の放射線画像再生装置(不図示)に出力する接続端子24が設けられている。画像メモリ22としては、1画像分の記憶容量を有するものであってもよいし、複数画像分の記憶容量を有するものであってもよい。また、画像メモリ22には不図示のメモリ用の電源から電源供給されるようになっている。
【0057】
この放射線画像検出装置用カセッテ20は、接続端子24を介して不図示の外部の放射線画像再生装置と接続され、画像メモリ22以外のものに該放射線画像再生装置側から電源が供給される。また、図4に示すように、放射線源30から発せられ被写体31を透過して被写体31の透過放射線情報を担持する放射線Rが、内部に収容された放射線固体検出器10に入射する位置に配置される。
【0058】
放射線画像撮影時においては、図4に示すように、放射線源30より発せられた放射線Rを被写体31に照射する。被写体31の放射線画像情報を担持する放射線Rは、放射線画像検出装置用カセッテ20の天板21aを通過し、放射線固体検出器10に入射する。放射線固体検出器10に入射した放射線Rは、放射線固体検出器10を構成する固体検出素子により信号電荷に変換され、放射線画像を担持する画像信号Sとして出力され、上述したように規格化処理が施された画像データD1として出力され、画像メモリ22に記憶される。画像メモリ22に画像データD1を記憶するに際しては、操作者が不図示のスイッチ等で指示したときに記憶するようにしてもよいし、撮影と連動して、例えば規格化処理が終了したら自動的に記憶するようにしてもよい。
【0059】
撮影終了後、外部の放射線画像再生装置は、必要なときに画像メモリ22に記憶された規格化処理後の画像データD1を読み出して、この画像データD1に対して画像処理等の信号処理を施した後、可視像として被写体31の放射線画像を再生する。
【0060】
このように本発明によるメモリを備えた放射線画像検出装置用カセッテによれば、必要なときにメモリから画像データを読み出して画像再生することができる。また、接続端子を介して外部の放射線画像再生装置と接続するようにすれば、放射線画像検出装置を常時、外部の放射線画像再生装置とケーブルによって接続しておく必要がないため、放射線画像検出装置をカセッテに収容して自在に持ち運ぶことができるとともに、撮影時のポジショニングなどの自由度を高めることができる。
【0061】
また、接続端子24を設けることなく、画像メモリ22からの画像データD1を無線データに変換して外部の放射線画像再生装置に送信する送信処理回路を設けるようにするとともに、放射線画像再生装置が、この送信された無線データを受信して画像処理等の信号処理を施すものとすれば、上述の放射線画像検出装置用カセッテ20と同様の効果を有する他、該カセッテ20と外部の放射線画像再生装置との間で画像データD1をインターフェースする接続ケーブルも不要となる。
【0062】
さらに、複数画像分の記憶容量を有する画像メモリを採用すれば、1画像を検出する毎に外部の放射線画像再生装置に画像データを出力する必要がなく、複数の画像を検出し記憶した後に放射線画像再生装置に接続して、これら複数の画像に対応する夫々の画像データを画像メモリから一括して放射線画像再生装置に出力すればよく、撮影から画像再生までの全体として、処理時間の短縮を図ることができる。
【0063】
さらにまた、カセッテ20のサイズを、従来の放射線写真フィルムを利用した装置やに用いられるカセッテと略同一のサイズにすることにより、従来の装置にそのまま放射線検出器を用いることもできる。
【0064】
次に、本発明の他の実施の形態による放射線画像検出装置について説明する。図6はこの放射線画像検出装置2のブロック図である。この放射線画像検出装置2は、上述の放射線画像検出装置1に対して、規格化処理後の画像データD1に基づく画像を表示する画像表示手段41,規格化処理特性を変更する変更手段42,画像表示手段41により画像が表示された後、所定時間内に規格化処理特性が変更されないときには、表示されている画像の画像データ、すなわちそのときの画像データD1を自動的に出力する画像データ出力手段43,規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性である場合に、その旨の警告を発する警告手段44,規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性である場合に、この複数の所定の特性のいずれかの特性にするために、撮影条件を修正する修正情報を出力する修正情報出力手段45,規格化処理特性に基づいて撮影条件を変更する撮影条件変更手段46を更に備えたものである。画像表示手段41としては、液晶や有機EL等のフラットパネルディスプレイを使用するとよい。なお、この例では、上述の放射線画像検出装置1に対して、各種手段を更に備えるようにしたものであるが、上述したカセッテタイプのものに各種手段を更に備えるようにしてもよい。また、図1に点線で示したように、データ範囲決定手段14をさらに備えた構成としてもよい。
【0065】
以下上記構成の放射線画像検出装置2の作用について説明する。
【0066】
上述の放射線画像検出装置1と同様にして規格化処理が行われ、該規格化処理後の画像データD1に基づく画像が画像表示手段41に表示される。画像表示手段41に表示された画像が適正でない場合には、特性決定手段12が決定した規格化処理特性が適当でなかった可能性が強いので、変更手段42により特性決定手段12に規格化処理特性を再度決定させる。なお、最初に決定した規格化処理特性とは異なる特性を決定させるのは勿論である。一方、画像表示手段41により画像が表示された後、所定時間内に規格化処理特性が変更されないときには、画像データ出力手段43が表示されている画像の画像データD1を該放射線画像検出装置2に接続されている他の装置、例えば画像表示装置,ファイリング装置,プリンタ等に自動的に出力する。これにより、規格化処理が適当でなければ規格化処理をやり直すことができ、また規格化処理が適当であれば、自動的に他の外部装置に適正な規格化処理がされた画像データを自動的に出力することができるから、操作者は画像表示手段41に表示された画像が適当でないときのみ、変更手段42により規格化処理特性を決定し直せばよく、該放射線画像検出装置2の利用範囲が拡大する。
【0067】
また、特性決定手段12が決定した規格化処理特性が、予め想定された複数の所定の特性以外の特性である場合には、警告手段44がその旨の警告を発する。また、このときには、この複数の所定の特性のいずれかの特性にするために、修正情報出力手段45が撮影条件を修正する修正情報を出力する。操作者は、この修正情報に基づいて、撮影条件を変更すればよい。このようにすれば、適正な規格化処理特性を決定することができない場合であっても、撮影条件を変えて再度撮影し直すことにより、適正な規格化処理特性を決定することができるようになる。
【0068】
また、操作者が修正情報出力手段45から出力された修正情報に基づいて撮影条件を変更するというのではなく、複数の所定の特性のいずれかの特性となるように、撮影条件変更手段46により撮影装置の撮影条件を直接制御するようにしてもよい。撮影条件変更手段46により撮影装置の撮影条件を直接制御すれば、適正な規格化処理特性を決定することができない場合に、操作者の手を煩わせることなく、撮影条件を自動的に変えて再度撮影し直すことにより、適正な規格化処理特性を決定することができるので、該放射線画像検出装置2の利用範囲が一層拡大する。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施の形態による放射線画像検出装置の構成を示すブロック図
【図2】規格化処理特性の決定方法を説明する図;累積ヒストグラムの例を示す図(A),適正濃度範囲に変換した累積ヒストグラムを表す図(B),変換関数の例を示す図(C)
【図3】飽和した画素がある場合の累積ヒストグラムの例を示す図
【図4】本発明の実施の形態による放射線画像検出装置用カセッテのブロック図
【図5】放射線画像検出装置用カセッテを用いて被写体の放射線画像を検出する際のカセッテの配置を示す配置図
【図6】本発明の他の実施の形態による放射線画像検出装置の構成を示すブロック図
【符号の説明】
【0070】
1,2 放射線画像検出装置
20 放射線画像検出装置用カセッテ
10 放射線固体検出器
11 A/D変換器
12 特性決定手段
13 規格化処理手段
14 データ範囲決定手段
22 画像メモリ
41 画像表示手段
42 変更手段
43 画像データ出力手段
44 警告手段
45 修正情報出力手段
46 撮影条件変更手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報を担持する放射線を検出して画像信号に変換する固体検出素子が2次元状に多数配列されてなる検出手段と、
前記画像信号をデジタル化された画像データに変換するA/D変換器と、
前記画像データを解析して、規格化処理する規格化処理特性を決定する特性決定手段と、
決定された前記規格化処理特性に基づいて、前記画像データを規格化処理する規格化処理手段とを備えたことを特徴とする放射線画像検出装置。
【請求項2】
前記画像情報中の所望画像情報部分を担持する画像データの範囲である所望画像データ範囲を決定するデータ範囲決定手段をさらに備え、
前記特性決定手段が、該データ範囲決手段により決定された前記所望画像データ範囲内の画像データを解析して、前記規格化処理特性を決定するものであることを特徴とする請求項1記載の放射線画像検出装置。
【請求項3】
前記特性決定手段が、前記固体検出素子の飽和特性を考慮して、前記規格化処理特性を決定するものであることを特徴とする請求項1または2記載の放射線画像検出装置。
【請求項4】
前記規格化処理手段が、ビット数を削減する処理を含むものであることを特徴とする請求項1から3いずれか1項記載の放射線画像検出装置。
【請求項5】
規格化処理された前記画像データを記憶するメモリを備えたことを特徴とする請求項1から4いずれか1項記載の放射線画像検出装置。
【請求項6】
規格化処理された前記画像データに基づく画像を表示する画像表示手段と、
前記規格化処理特性を変更する変更手段とを備えたことを特徴とする請求項1から5いずれか1項記載の放射線画像検出装置。
【請求項7】
前記画像表示手段により画像が表示された後、所定時間内に前記規格化処理特性が変更されないときには、表示されている画像の画像データを自動的に出力する画像データ出力手段を備えたことを特徴とする請求項1から6いずれか1項記載の放射線画像検出装置。
【請求項8】
前記規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性である場合に、その旨の警告を発する警告手段を備えたことを特徴とする請求項1から7いずれか1項記載の放射線画像検出装置。
【請求項9】
前記画像情報が撮影により得られたものであり、
前記規格化処理特性が複数の所定の特性以外の特性である場合に、前記複数の所定の特性のいずれかの特性にするために、撮影条件を修正する修正情報を出力する修正情報出力手段を備えたことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の放射線画像検出装置。
【請求項10】
前記画像情報が撮影により得られたものであり、
前記複数の所定の特性のいずれかの特性に基づいて撮影条件を変更する撮影条件変更手段を備えたことを特徴とする請求項1から8いずれか1項記載の放射線画像検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−173486(P2008−173486A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23948(P2008−23948)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【分割の表示】特願平11−218277の分割
【原出願日】平成11年8月2日(1999.8.2)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】