説明

放射線硬化性粘着シート

【課題】放射線照射前の被着体に対する粘着シートの良好な初期接着と、放射線照射後の粘着シートの良好な剛性との両者を実現することが可能な、放射線硬化性粘着シートを提供する。
【解決手段】放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体、および、放射線照射によって前記(メタ)アクリル共重合体との結合を形成することが可能な可塑剤、を含んでなる、放射線硬化性粘着シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線硬化性粘着シート、ならびに積層体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
移動式携帯端末、コンピューターディスプレイなどの電子機器の画像表示モジュールにおいて、およびタッチパネルなどの光学部材においては、表面保護層としてガラスまたはプラスチックフィルムが積層されていることが多い。これらの表面保護層は、画像表示部分の外側余白またはタッチパネルの有効動作領域の外側に枠状のテープまたは接着剤を適用することによって、画像表示モジュールまたはタッチパネルに固定されている。その結果、画像表示部分またはタッチパネルの有効動作領域と表面保護層との間には空隙が形成される。
【0003】
近年、画像表示モジュールまたはタッチパネルと表面保護層との間の空隙を、表面保護層、タッチパネル、および画像表示モジュールの表示表面との屈折率の差が空気よりも少ない透明物質(すなわち、ガラスまたは樹脂と近い屈折率を有する透明物質)で置換して、透過性を向上させ、画像の鮮明度を改善する方法が広く用いられるようになっている。例示的な透明物質として、粘着剤、接着剤、シリコーンゲルなどが挙げられる。接着剤を使用した場合、所定の領域のみに塗布するのが困難であり、または、塗布に高価な設備を要する。加えて、硬化反応時の収縮により応力が発生し、これによる剥がれや被着体の歪みが問題となることがあるシリコーンゲルは接着力が低いために長期信頼性に問題がある。これに対し、粘着剤(例えば粘着(PSA)シート)は、事前に所定の形状に加工して貼り合わせることが可能であり、また、十分な接着力を有しかつ貼り直しが可能であるため、表面保護層を画像表示モジュールまたはタッチパネルに貼り合わせるのに有効である。
【0004】
画像表示モジュール、光学部材、表面保護層などの被着体の表面は平坦でないことがある。表面保護層の表面、特に粘着シートと接触する表面には、装飾または光遮蔽を目的とした印刷が施されることが多い。いくつかの例では、印刷された部分により、3次元表面トポグラフィー、例えば高さが10μm以上の段差が表面保護層の表面に生じる。粘着シートを用いて画像表示モジュールまたはタッチパネルを表面保護層と貼り合せる場合、例えば、粘着シートの3次元表面トポグラフィーへの追従性が不十分であって、3次元表面トポグラフィーの上またはその近傍に空隙が生じるという問題がある。その上、例えば液晶ディスプレイのように歪みに対して敏感な被着体では、粘着剤の変形から生じる応力による歪みから色ムラが発生するおそれがある。これらの問題を回避するために、粘着シートの厚さを通常3次元表面トポグラフィーの高さの約10倍程度とする必要があった。応力緩和性の悪い粘着剤を用いると、その厚さを3次元表面トポグラフィーの高さの10倍以上にしても貼り合わせの品質要求を満たさない場合がある。
【0005】
特許文献1には、画像表示装置における表面保護層またはタッチパネルと画像表示ユニットの表示面とを貼付する、または表面保護層とタッチパネルとを貼付する透明粘着シートであって、所定の(メタ)アクリル酸アルキルエステル、所定の極性モノマー、および所定の(メタ)アクリル酸エステルまたは所定の親水性モノマー、を含むモノマーの共重合体を含む透明粘着シートが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−163591号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
我々は、紫外線架橋性部位を有するアクリル共重合体を含む紫外線架橋性粘着シートを既に発明した。このような粘着シートは、紫外線架橋よりも前の段階で熱および/または圧力を適用することによって、段差またはバンプなどの3次元表面トポグラフィーの高さとほぼ同じ厚み(例えば20〜30μm)である場合にも、該3次元表面トポグラフィーに良好に追従するという利点を有する。そしてこの利点は、例えば画像表示モジュールまたは光学部材の用途における優れた接着適性(すなわち、段差、バンプなどの部分における空隙などの欠陥の低減)、および内部応力を緩和した貼り合わせ(すなわち、被着体および粘着シートに過度な応力が加わらない条件での貼り合わせ)による色むら防止、などに寄与する。
【0008】
ところで、いくつかの用途、典型的にはポリエステル、ポリカーボネートなどのプラスチック樹脂で形成された厚みが薄い(例えば約100〜300μm)表面保護層を有する画像表示モジュールおよび光学部材の用途においては、十分な強度、典型的にはスタイラスまたは指に対する十分な、耐打痕性を実現するために、硬い粘着剤が要求される。上記発明によれば、放射線である紫外線の照射により、架橋後の粘着シートを相当程度の硬さを有して形成できる。
【0009】
しかし、被着体に対する粘着シートの初期接着の更なる向上、および硬化後の粘着シートの硬さの更なる増大を実現できる粘着シートに対する要求が存在する。
本発明は、放射線照射前においては良好な流動性および被着体に対する良好な初期接着を伴うホットメルト特性を実現し、かつ放射線照射後においては良好な硬さを実現する、放射線硬化性粘着シートを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本開示の一実施態様は、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体、および、放射線照射によって該(メタ)アクリル共重合体との結合を形成することが可能な可塑剤、を含んでなる、放射線硬化性粘着シートを提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、放射線照射前においては良好な流動性および被着体に対する良好な初期接着を伴うホットメルト特性を実現し、かつ放射線照射後においては良好な硬さを実現する、放射線硬化性粘着シートが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示による放射線硬化性粘着シートを含む積層体としての画像表示装置の一実施態様の断面図を示す。
【図2】本開示による放射線硬化性粘着シートを含む積層体としてのタッチパネルユニットの一実施態様の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の代表的な実施態様を、例示の目的でより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されない。すなわち、本開示の記載は、本発明の全ての実施態様および本発明に関する全ての利点を開示したものとみなしてはならない。
【0014】
本開示で使用する用語「放射線反応性部位」とは、放射線照射により活性化され、他の部位と反応することが可能な部位を意味する。「放射線」は電離放射線および非電離放射線を包含する。また、「紫外線架橋性部位」とは、紫外線照射により活性化され、他の部位との間で架橋を形成することが可能な部位を意味する。
【0015】
「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」または「メタクリル」を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート」または「メタクリレート」を意味する。「多官能(メタ)アクリレート」とは、分子中に官能基を2つ以上有するアクリレートまたはメタクリレートを意味する。
【0016】
「可塑剤」とは、対象物にこれを添加しない場合と比べて該対象物の柔軟性および流動性の少なくとも1つを向上させる作用を有する物質を意味する。なお柔軟性の向上の指標の一例は貯蔵弾性率の低減であり、流動性の向上の指標の一例はメルトフローレートの増加である。
【0017】
「貯蔵弾性率」とは、−40℃〜200℃の温度範囲において、5℃/分の昇温速度および1Hzの剪断モードで粘弾性測定を行ったときの、指定した温度における貯蔵弾性率を意味する。
【0018】
「親水性モノマー」とは、水との親和性が良好であり、具体的には、20℃の水100グラムに対して5グラム以上溶解するモノマーを意味する。
【0019】
<放射線硬化性粘着シート>
本開示の一実施態様は、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体、および、放射線照射によって該(メタ)アクリル共重合体との結合を形成することが可能な可塑剤、を含んでなる、放射線硬化性粘着シート(以下、単に「粘着シート」ともいう)を提供する。
【0020】
本開示の一実施態様に係る放射線硬化性粘着シートは、放射線照射前においては良好な流動性および被着体に対する良好な初期接着を伴うホットメルト特性を有し、また、放射線照射後においては高い硬さ(特に高い貯蔵弾性率)(これは例えばスタイラスに対する優れた耐打痕性を実現するために要求される)を有する。
【0021】
放射線硬化性粘着シートを硬化させるために使用できる放射線としては、紫外線、可視光線、電子線などが挙げられる。典型的な実施態様において、放射線硬化性粘着シートは、紫外線照射によって架橋を形成する粘着シート(以下、紫外線架橋性粘着シートともいう)である。放射線反応性部位は、上記定義したとおり、放射線照射により活性化されて他の部位と反応できる部位である。「他の部位」は、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体および可塑剤が有する。
【0022】
本開示の放射線硬化性粘着シートは、例えば液状接着剤と比べて取り扱いが容易である。また、本開示の放射線硬化性粘着シートは、放射線照射によって接着力が高められる設計となっているので、所望の用途における使用時に、放射線照射前の所望の段階で、仮止め、再位置合せなどを行うことが容易である。そのため、例えば大型の被着体(例えば大型液晶モジュール)への表面保護層の貼り合わせのような用途で有利に使用できる。
【0023】
本開示の放射線硬化性粘着シートは、放射線照射前の段階で良好な流動性を有する。よって、通常の作業温度で該粘着シートを被着体に貼り合わせた後、加熱および/または加圧により、該粘着シートを被着体(例えば表面保護層)の表面にある段差、隆起などの3次元表面トポグラフィーに追従させることができる。その後、放射線照射により粘着シートの凝集力が高まり、その結果、硬化後の粘着シートが高い硬さ(特に高い貯蔵弾性率)を有するため、信頼性の高い接着と高い強度(特に高い耐打痕性)との実現が可能となる。
【0024】
以下、放射線硬化性粘着シートが含む各々の成分についてさらに説明する。
【0025】
[放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体]
本開示の一実施態様に係る放射線硬化性粘着シートは、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体(以下、単に(メタ)アクリル共重合体ともいう)を含む。(メタ)アクリル共重合体において、ある放射線反応性部位と、これと反応することになる「他の部位」とは同一分子内または異なる分子内に存在できる。
【0026】
放射線反応性部位は、典型的には光架橋性部位であり、より典型的には紫外線架橋性部位である。放射線反応性部位は、典型的には、(メタ)アクリル共重合体の側鎖中に存在する。
【0027】
放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体は、2種以上のモノマーを含むモノマー成分の重合生成物である。該共重合体の典型例は、該2種以上のモノマーの少なくとも1種が放射線反応性部位を有する(メタ)アクリルモノマーであるもの、および、(メタ)アクリル共重合体に放射線反応部位を有するモノマーを付加させたものである。
【0028】
放射線反応性部位を有する(メタ)アクリルモノマー、例えば放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル酸エステルの量は、モノマー成分の合計質量を基準として、一般に約0.1質量%以上、約0.2質量%以上、または約0.3質量%以上である。放射線反応性部位を有する(メタ)アクリルモノマーの量を、モノマー成分の合計質量を基準として約0.1質量%以上とすることで、放射線照射によって形成される硬化後の粘着シートの被着体に対する接着力を高めて、信頼性の高い接着を達成することができる。硬化後の粘着シートを硬くするという効果は、モノマー成分の合計質量を基準としたときの放射線反応性部位を有する(メタ)アクリルモノマーの量が多いほど顕著である。
【0029】
放射線反応性部位として作用する構造としては種々の構造を採用可能である。好ましい実施態様において、放射線反応性部位はエチレン性不飽和構造を有する。エチレン性不飽和構造は典型的には(メタ)アクリル共重合体の側鎖中に存在する。エチレン性不飽和構造を有する(メタ)アクリル共重合体は、紫外線照射によって容易に架橋できる点で有利である。また、エチレン性不飽和構造を有する(メタ)アクリル共重合体を、可視光線および紫外線によって励起されることが可能な光開始剤とともに用いる実施態様は、該(メタ)アクリル共重合体を紫外線照射によってのみでなく可視光線照射によっても架橋できる点で有利である。
【0030】
上記エチレン性不飽和構造としては、(メタ)アクリロイル基を含む構造、ビニル基を含む構造などが挙げられる。(メタ)アクリロイル基を含む構造は反応性および共重合性の点で有利である。
【0031】
エチレン性不飽和構造を有する(メタ)アクリル共重合体として、例えば側鎖中に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体は、典型的には、側鎖中に反応性基を有する(メタ)アクリル共重合体を反応性(メタ)アクリレートと反応させることによって得ることができる。側鎖中に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル共重合体は、典型的には2段階の反応によって得る。第1段階では、側鎖中に反応性基を有する(メタ)アクリル重合体を合成する。第2段階では、合成されたポリマーを反応性(メタ)アクリレートと反応させる。
【0032】
側鎖中に反応性基を有する(メタ)アクリル重合体と反応性(メタ)アクリレートとは、種々の組合せが可能である。組合せの一例は、側鎖中に反応性基として水酸基を有する(メタ)アクリル重合体と、反応性基としてイソシアネート基を有する(メタ)アクリレートとの組合せである。
【0033】
側鎖中に水酸基を有する(メタ)アクリル重合体は、これらに限定されるものではないが、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、および4−ヒドロキシブチルアクリレートからなる群から選択される1種以上のモノマーを含む(メタ)アクリレートモノマーの共重合によって得ることができる。
【0034】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリレートの具体例としては、これらに限定されるものではないが、2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、および1,1−ビス(アクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネートが挙げられる。
【0035】
放射線反応性部位が紫外線架橋性部位である場合の好ましい例を挙げる。紫外線架橋性部位としては、例えば、紫外線照射により励起されて、同一分子内、または別の(メタ)アクリル共重合体分子、さらに可塑剤分子から水素ラジカルを引き抜くことが可能な構造を採用することができる。そのような構造としては、例えば、ベンゾフェノン構造、ベンジル構造、o−ベンゾイル安息香酸エステル構造、チオキサントン構造、3−ケトクマリン構造、2−エチルアントラキノン構造、カンファーキノン構造などが挙げられる。上記構造のいずれも、紫外線照射により励起することができ、その励起状態において(メタ)アクリル共重合体分子および可塑剤分子から水素ラジカルを引き抜くことができる。このようにして(メタ)アクリル共重合体および可塑剤にラジカルが生成し、生成したラジカル同士の結合による架橋構造の形成、酸素分子との反応によるパーオキシドラジカルの生成および生成したパーオキシドラジカルを介した架橋構造の形成、生成したラジカルによる別の水素ラジカルの引き抜きなど、様々な反応が系中で起こる。最終的に、(メタ)アクリル共重合体は、(メタ)アクリル共重合体および可塑剤との架橋構造を形成する。
【0036】
別の好ましい実施態様において、放射線反応性部位はベンゾフェノン構造を有する。この実施態様は透明性、反応性などの点で有利である。ベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリル共重合体はまた単独で紫外線照射により硬化する能力を有するという利点を有する。ベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリル共重合体を得るために使用できるモノマーの例は、ベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリル酸エステルであり、例えば、4−アクリロイルオキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−アクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−メトキシベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、4−メタクリロイルオキシエトキシ−4’−ブロモベンゾフェノン、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0037】
モノマー成分は、上述したような放射線反応性部位を有するモノマーに加え、(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含むことができる。好ましい実施態様においては、粘着シートに好適な粘弾性を与えて被着体に対する濡れ性を良好にする観点から、モノマー成分は、アルキル基の炭素数が2〜26である(メタ)アクリル酸アルキルエステルを含む。そのような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとして、例えば、アルキル基の炭素数が2〜26の非第三級アルキルアルコールの(メタ)アクリレート、およびこれらの混合物などが挙げられる。具体的には、以下に限定されないが、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタクリレート、n−オクチルアクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、イソアミルアクリレート、イソオクチルアクリレート、イソノニルアクリレート、デシルアクリレート、イソデシルアクリレート、イソデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、トリデシルアクリレート、トリデシルメタクリレート、テトラデシルアクリレート、テトラデシルメタクリレート、ヘキサデシルアクリレート、ヘキサデシルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート、イソステアリルアクリレート、イソステアリルメタクリレート、エイコサニルアクリレート、エイコサニルメタクリレート、ヘキサコサニルアクリレート、ヘキサコサニルメタクリレート、2−メチルブチルアクリレート、4−メチル−2−ペンチルアクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、およびこれらの混合物などが好適に使用される。
【0038】
アルキル基の炭素数が2〜26である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量は、モノマー成分の合計質量を基準として、一般に約60質量%以上、約70質量%以上、または約80質量%以上であり、約95質量%以下、約92質量%以下、または約90質量%以下である。アルキル基の炭素数が2〜26である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量を、モノマー成分の合計質量を基準として約95質量%以下とすることにより、粘着シートの接着力を良好に確保することができ、約60質量%以上とすることにより、粘着シートの弾性率を適切な範囲として、被着体に対する粘着シートの濡れ性を良好なものとすることができる。
【0039】
モノマー成分には、粘着シートの特性を損なわない範囲で、上記したモノマーに加えて他のモノマーが含まれていてもよい。例えば、上記以外の(メタ)アクリル系モノマー、および、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、スチレンなどのビニルモノマーが挙げられる。
【0040】
モノマー成分には、親水性モノマーが含まれてもよい。親水性モノマーを用いることにより、粘着シートの接着力を向上させる、および/または粘着シートに親水性を付与することができる。親水性が付与された粘着シートを、例えば画像表示装置に使用した場合、粘着シートは画像表示装置内部の水蒸気を吸収できるため、そのような水蒸気が結露することによる白化を抑制できる。このことは、表面保護層が透湿性の低い材料である場合、および/または粘着シートを用いた画像表示装置などが高温多湿環境下で使用される場合に特に有利である。
【0041】
そのような親水性モノマーとして、例えば、カルボン酸、スルホン酸などの酸性基を有するエチレン性不飽和モノマー、ビニルアミド、N−ビニルラクタム、(メタ)アクリルアミド、およびこれらの混合物などが挙げられる。具体的には、以下に限定されないが、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、スチレンスルホン酸、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロニトリル、およびこれらの混合物などが挙げられる。
【0042】
(メタ)アクリル共重合体の弾性率を調整して、被着体に対する濡れ性を確保するという観点から、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル;オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基およびこれらの複数の組合せが連結した基を含む(メタ)アクリレート;アルコール残基中にカルボニル基を有する(メタ)アクリレート;ならびにこれらの混合物などを、親水性モノマーとして使用することもできる。
【0043】
また、アミノ基などの塩基性基を有する親水性モノマーを使用することもできる。塩基性を有する親水性モノマーを含むモノマーから得られる(メタ)アクリル共重合体を、酸性基を有する親水性モノマーを含むモノマーから得られる(メタ)アクリル共重合体とブレンドすることにより、塗工溶液の粘度を増加させることにより塗布厚を増やすこと、接着力をコントロールすること、などが可能となる。具体的として、以下に限定されないが、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールなどが挙げられる。
【0044】
上記親水性モノマーは、1種または複数種組み合わせて使用することができる。親水性モノマーを使用する場合、親水性モノマーの量は、上述した白化をより効果的に抑制すると共に、高い柔軟性および接着力を得るという観点から、モノマー成分の合計質量を基準として、一般に約5質量%以上、約40質量%以下、または約10質量%以上、約30質量%以下である。
【0045】
放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体は、上記モノマー成分を重合開始剤の存在下で重合することにより形成することができる。例えば放射線反応性部位がエチレン性不飽和構造を有する場合は、側鎖中に反応性基を有する(メタ)アクリル共重合体と反応性(メタ)アクリレートとを反応させることによって、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体を形成することができる。重合方法としては、特に制限はなく、上記モノマー成分を、通常のラジカル重合法、例えば、溶液重合、乳化重合、懸濁重合または塊状重合などにより重合すればよい。重合時に放射線反応性部位が反応しないように、一般には熱重合開始剤によるラジカル重合が使用される。熱重合開始剤の例として、過酸化ベンゾイル、過安息香酸t−ブチル、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、ジアセチルパーオキシドなどの有機過酸化物、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]などのアゾ系化合物などが挙げられる。
【0046】
放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体の重量平均分子量は、一般に、約30,000以上、約50,000以上、または約100,000以上であり、約1,000,000以下、約500,000以下、約300,000以下である。本開示における重量平均分子量の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法によるポリスチレン換算に基づく。
【0047】
放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体のガラス転移温度Tgは、一般に約40℃以下、または約20℃以下、または約0℃以下である。本開示におけるガラス転移温度の値は、動的粘弾性測定に基づく。
【0048】
[可塑剤]
本開示の一実施態様に係る放射線硬化性粘着シートは、放射線照射によって、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体との結合を形成することが可能な可塑剤を含む。このような可塑剤を含む放射線硬化性粘着シートは、放射線照射前においては高い初期接着および良好な流動性を伴うホットメルト特性を有し、かつ放射線照射後においては高い硬さ(特に貯蔵弾性率)を有する。より典型的には、本開示の一実施態様に係る放射線硬化性粘着シートは、放射線照射前においては、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体を単独で用いて形成された粘着シートと比べて改善されたホットメルト特性を有し、かつ放射線照射後においては放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体を単独で用いて形成された粘着シートと比べて高い硬さを有する。
【0049】
放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体との結合を形成することが可能な構造としては、エチレン性不飽和構造を例示できる。可塑剤は、典型的には、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体との結合を形成することが可能な構造を分子内に2つ以上有する。
【0050】
好ましい実施態様において、可塑剤は、多官能(メタ)アクリレートを含む。多官能(メタ)アクリレートは、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体との結合を形成する能力および該(メタ)アクリル共重合体との混和性の観点で有利である。多官能(メタ)アクリレートの例としては、ポリエチレングリコールジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジアクリレート、1,10−デカンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメチロールジアクリレート、エトキシ化2−メチル−1,3−プロパンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、2−ヒドロキシ−3−アクリロイルオキシプロピルアクリレート、プロポキシ化エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、1,9−ノナンジオールジアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどの2官能アクリレート;エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、1,9−ノナンジオールジメタクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジメタクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリシクロデカンジメチロールジメタクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジメタクリレート、グリセリンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレートなどの2官能メタクリレート;エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレートなどの3官能アクリレート;トリメチロールプロパントリメタクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリメタクリレートなどの3官能メタクリレート;エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、プロポキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの4個以上のアクリロイル基を有するアクリレート、および2個以上のアクリルイル基を有するウレタンアクリレート、多分岐型アクリレート(例えば、大阪有機化学工業(株)製のSTAR−501)などが挙げられる。
【0051】
好ましい実施態様において、可塑剤は環状構造を含む。環状構造を含む可塑剤は、硬化収縮が少ない傾向があり、硬化した粘着シートの内部応力をより小さくできる点で有利である。また、環状構造を含む可塑剤は、Tgが高い傾向にあり、硬化後の弾性率を上げられる点でも有利である。環状構造を含む可塑剤の例としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、エトキシ化ビスフェノールAジアクリレート、エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレートなどが挙げられる。光学的観点から特に好ましい例は、環状構造の中でも脂環式部分を含むトリシクロデカンジメタノールジアクリレート、およびトリシクロデカンジメタノールジメタクリレートである。
【0052】
可塑剤は、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体と良好な混和性を有することが好ましい。具体的には、該(メタ)アクリル共重合体と可塑剤との混合物が相分離しないことが好ましい。良好な混和性を得るために好適な可塑剤の例は、前述の多官能(メタ)アクリレートなどである。放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体と可塑剤とが良好な混和性を有する場合、放射線硬化性粘着シートは従来の粘着シートにおける問題を良好に改善できる。具体的には、放射線反応部位を有さない熱可塑性ベースポリマーと低分子量の架橋性成分との混合物からなる従来の架橋性ホットメルト粘着剤から形成される粘着シートにおいて、ブリードアウト、またはシート内での微視的もしくは巨視的な相分離が生じることにより、粘着シートの透明性が低下するという問題が、本開示の特定の実施態様に係る放射線硬化性粘着シートによって良好に改善できる。この場合、放射線硬化性粘着シートは、特に高い透明性を有するという更なる利点を有する。高い透明性は、優れた光学特性が要求される用途、例えば画像表示装置、タッチパネルなどの用途において特に有用である。
【0053】
放射線硬化性粘着シートにおける可塑剤の量は、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体100質量部に対して、フロー性改善および接着性改善の観点から、好ましくは約1質量部以上、または約5質量部以上であり、形状安定性の観点から、好ましくは約20質量部以下、または約10質量部以下である。
【0054】
[その他の成分]
本開示の一実施態様に係る放射線硬化性粘着シートは、上述した、放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体および可塑剤に加え、任意成分を含んでもよい。任意成分としては、フィラー、酸化防止剤などが挙げられる。
【0055】
一実施態様においては、例えば、放射線反応性部位がエチレン性不飽和構造を有する(メタ)アクリル共重合体を含む放射線硬化性粘着シートのように、放射線硬化のために光開始剤を粘着シート中に含有させ、紫外線、可視光線、電子線などの放射線を該粘着シートに照射することによって硬化が行われる。
【0056】
光開始剤の例として、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、ビスアシルフォスフィンオキシド、アシルホスフィンオキシド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキシド、2,6−ジメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ベンゾイルジエトキシホスフィンオキシド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ベンゾインアルキルエーテル(例えば、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、n−ブチルベンゾインエーテルなど)、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルジクロロアセトフェノン、ベンジル、ベンゾイル、アセトフェノン、ベンゾフェノン、チオキサントン類(2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン、)、ジベンゾスベロン、4,4’−ジクロロベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4’−ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ(tert−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、ベンザルアセトン、ビアセチル、α,α−ジクロロ−4−フェノキシアセトフェノン、テトラメチルチウラムジスルフィド、α,α’−アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルパーオキシド、3,3’−ジメチル−4−メトキシベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、アシロキシムエステル、塩素化アセトフェノン、ヒドロキシアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、4’−イソプロピル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、フェニルグリオキシル酸メチル、o−ベンゾイル安息香酸メチル、p−ジメチルアミノ安息香酸メチル、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,5,4’,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾ−ル、10−ブチル−2−クロロアクリドン、カンファーキノン、3−ケトクマリン、アントラキノン類(例えば、アントラキノン、2−エチルアントラキノン、α−クロロアントラキノン、2−tert−ブチルアントラキノンなど)、アセナフセン、4,4’−ジメトキシベンジル、4,4’−ジクロロベンジルなどが挙げられる。光開始剤の市販の例としては、BASF社のイルガキュア、ダロキュア、ベルシコール社のベルシキュアの商標名で販売されているものが挙げられる。
【0057】
これらの化合物は、単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。また、光開始剤と、増感剤とを併用してもよい。光開始剤の使用量は、一般に、(メタ)アクリル共重合体100質量部を基準として、約0.01質量部以上、約1質量部以下である。
【0058】
一方、別の実施態様においては、例えば、放射線反応性部位がベンゾフェノン構造を有する(メタ)アクリル共重合体を含む紫外線架橋性粘着シートのように、(メタ)アクリル共重合体が放射線照射により単独で硬化する能力を有する。この場合、光開始剤の使用は任意である。
【0059】
放射線照射前の粘着シートの貯蔵弾性率は、30℃、1Hzにおいて、好ましくは約1.0×104Pa以上、または約5.0×104Pa以上であり、好ましくは約1.0×106Pa以下である。30℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約1.0×104Pa以上である場合、粘着シートは優れた凝集力を有し、加工性、取り扱い性、形状維持性などが良好に発現される。また、30℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約1.0×106Pa以下である場合、粘着シートの貼り付けに必要な初期粘着性(すなわちタック)が良好に発現される。
【0060】
また、放射線照射前の粘着シートの貯蔵弾性率は、80℃、1Hzにおいて、好ましくは約5.0×104Pa以下である。80℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約5.0×104Pa以下である場合、貼り付け時に加熱された粘着シートが、所定の時間内(例えば数秒〜数分)に、被着体の3次元表面トポグラフィーに追従して、それらの近傍に空隙が形成されないように流動できるという利点が得られる。
【0061】
さらに、放射線照射後の粘着シートの貯蔵弾性率は、30℃、1Hzにおいて、約2.0×106Pa以上、または約2.5×106Pa以上とすることもできる。30℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約2.0×106Pa以上である場合、放射線照射後の粘着シートが高い硬さを有し、例えば比較的軟質なプラスチック樹脂で形成された厚みが薄い(例えば約75〜300μm)表面保護層を有する画像表示モジュールおよび光学部材の用途において、スタイラス等に対する優れた耐打痕性を有するという利点が得られる。
【0062】
さらに、放射線照射後の粘着シートの貯蔵弾性率は、130℃、1Hzにおいて、好ましくは約1.0×103Pa以上、または約1.0×104Pa以上である。130℃、1Hzにおいて、貯蔵弾性率が約1.0×103Pa以上である場合、放射線照射後の粘着シートが流動することを抑制して、長期信頼性が良好な接着を実現することができる。特に、放射線照射後の粘着シートの貯蔵弾性率が130℃、1Hzにおいて約1.0×104Pa以上である場合、放射線照射後の粘着シートが有する硬さによって、良好な接着が実現される。
【0063】
粘着シートの貯蔵弾性率は、粘着シートに含まれる(メタ)アクリル共重合体を構成するモノマーの種類、分子量および配合比、(メタ)アクリル共重合体の重合度、可塑剤の種類および配合比などを適宜変更することによって調整することができる。例えば、酸性基を有するエチレン性不飽和モノマーを用いると貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。また、例えば、アルキル基の炭素数が2〜26である(メタ)アクリル酸アルキルエステルの量、アルキル基の炭素数が4以下の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステルの量、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基およびこれらの複数の組合せが連結した基を含む(メタ)アクリレートの量、またはアルコール残基中にカルボニル基を有する(メタ)アクリレートの量を多くすると貯蔵弾性率が低くなる傾向がある。また、(メタ)アクリル共重合体の重合度を高くすると、貯蔵弾性率が高くなる傾向がある。
【0064】
粘着シートの厚さは、用途に応じて適宜決定することができ、例えば、約5μm〜約1mmとすることができる。粘着シートの厚さを決定する基準の一つとして、被着体の表面にある3次元表面トポグラフィーの高さが挙げられる。本開示の一実施態様に係る粘着シートによれば、空隙、むらなどの欠陥を抑制しつつ、粘着シートの厚さを3次元表面トポグラフィーの高さと同等程度に薄くできる。被着体が実質的に平面である一実施態様において、被着体表面の3次元表面トポグラフィーの高さを、被着体に適用された粘着シートの広がり平面に対して垂直方向(すなわち粘着シートの厚さ方向)に沿って決定した場合、粘着シートの厚さを3次元表面トポグラフィーの最大高さの約0.8倍以上、約1倍以上、または約1.2倍以上、約5倍以下、約3倍以下、または約2倍以下とすることができる。このような厚さとすることにより、被着体を含む積層体の厚みを薄く抑えることができ、例えば、画像表示装置の小型化・薄型化、あるいはタッチパネルの感度向上が達成できる。一実施態様において、30μm程度の高さの3次元表面トポグラフィーを有する被着体に対して、該3次元表面トポグラフィーとほぼ同じ厚さの放射線硬化性粘着シートを適用できる。
【0065】
粘着シートは、溶液キャスト、押出加工など従来知られた方法を使用して、(メタ)アクリル共重合体および可塑剤のみから、または(メタ)アクリル共重合体、可塑剤および任意成分の混合物から形成できる。また、粘着シートはその片面または両面に、シリコーン処理したポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルムなどの剥離フィルムを備えていてもよい。
【0066】
本開示の一実施態様に係る放射線硬化性粘着シートは、例えば画像表示モジュールおよび光学部材の種々の用途において好適に用いられる。有望な用途の一例は、インク段差を有して薄いポリエステルで形成されている表面保護層と、タッチパネルとの貼り合わせである。
【0067】
本開示の別の実施態様は、基材と、上述の放射線硬化性粘着シートとを含む、積層体である。基材の例は例えば表面保護層、画像表示モジュール、タッチパネルである。このような積層体は例えば画像表示モジュール、光学部材などの種々の用途において製品の一部を構成する部材として使用できる。このような積層体は、典型的には、放射線硬化性粘着シートを基材に隣接させて配置する工程と、放射線硬化性粘着シートを加熱および/または加圧する工程と、放射線硬化性粘着シートに放射線を照射する工程と、を含む方法によって製造することができる。
【0068】
本開示の別の実施態様は、第1の基材と、第2の基材と、第1の基材と第2の基材の間に配置された、上述の放射線硬化性粘着シートと、を含む積層体であって、第1の基材の少なくとも一方の表面が放射線硬化性粘着シートと接触している、積層体である。積層体の構成は種々可能である。例えば、第1の基材が表面保護層であり、第2の基材が画像表示モジュールまたはタッチパネルであることができる。
【0069】
本開示は、第1の基材および第2の基材の少なくとも一方が、粘着シートに対する被着表面において段差、隆起などの3次元表面トポグラフィーを有しているときに特に有効である。
【0070】
本開示はまた、第1の基材および第2の基材の少なくとも一方が、歪みに対して敏感であるとき、特に有効である。なお本開示において、歪みに対して敏感とは、歪みにより性能低下が起こりやすいことを表しており、例えば液晶ディスプレイでの歪みによる色ムラの発生しやすさなどを示している。歪みに対して敏感な基材は、特に、該基材に生じる局所的な応力によって光学的な歪みを生じやすい基材である。歪みに対して敏感な基材の例は、液晶ディスプレイ、アクティブマトリクス有機発光ダイオードディスプレイ(AMOLED)、および、3Dテレビジョンなどの3次元画像表示に用いる3Dレンズ、などである。
【0071】
本実施態様の積層体は、典型的には、放射線硬化性粘着シートを第1の基材の少なくとも一方の表面側に隣接させて配置する工程と、第2の基材を放射線硬化性粘着シートに隣接させて配置する工程と、放射線硬化性粘着シートを加熱および/または加圧する工程と、放射線硬化性粘着シートに放射線を照射する工程と、を含む方法によって製造することができる。これらの工程の順序は上述の記載順に限定されない。すなわち、例えば、第1の基材と第2の基材とで粘着シートを挟み、その後粘着シートを加熱および/または加圧する方法、第1の基材に隣接させて配置した粘着シートを加熱および/または加圧し、その後第2の基材を粘着シートに隣接させて配置する方法、などを採用できる。
【0072】
本開示の別の実施態様は、第1の基材と、第2の基材と、該第1の基材と該第2の基材の間に配置された、上述の放射線硬化性粘着シートと、を含む積層体の製造方法であって、
該第1の基材および該第2の基材の少なくとも一方が、その主面の1つの少なくとも一部に亘る3次元表面トポグラフィーを有し、
該放射線硬化性粘着シートを該第1の基材の少なくとも一方の表面側に隣接させて配置する工程と、
該第2の基材を該放射線硬化性粘着シートに隣接させて配置する工程と、
該放射線硬化性粘着シートを加熱および/または加圧して該3次元表面トポグラフィーに追従させる工程と、
該放射線硬化性粘着シートに放射線を照射する工程と、
を含む、方法である。
【0073】
本実施態様の方法においては、加熱および/または加圧によって粘着シートが基材の3次元表面トポグラフィーに接触してこれに追従するように、粘着シートを基材に隣接させて配置する。上記方法によれば、3次元表面トポグラフィーの近傍は粘着シートで満たされることができ、3次元表面トポグラフィーの近傍での空隙の発生が抑制される。より詳しくは、粘着シートが有する良好な流動性によって、3次元表面トポグラフィーを有する基材表面に粘着シートの内部応力を緩和させて、しかも良好な濡れ性で積層できる。上記方法が適用される積層体の構成の例としては、これらに限定されるものではないが、例えば第1の基材が段差、隆起などの3次元表面トポグラフィーを有する表面保護層であり、第2の基材が、このような3次元表面トポグラフィーを有するかまたは有さない画像表示モジュールまたはタッチパネルである構成が挙げられる。
上記方法において、工程順は上述の記載順に限定されない。
【0074】
すなわち、一例では、第1の基材と第2の基材とで粘着シートを挟んだ後に、粘着シートを加熱および/または加圧する。この例は、第1の基材および第2の基材の一方が被着表面に3次元表面トポグラフィーを有する場合に加え、第1の基材および第2の基材の両者が被着表面に3次元表面トポグラフィーを有する場合にも、3次元表面トポグラフィーの近傍での空隙の発生を防止して良好な接着を実現できるという利点を有する。第1の基材および第2の基材の両者が3次元表面トポグラフィーを有する構成の例としては、例えば、第1の基材が表面保護層であり、第2の基材が、画像表示モジュールに取り付けられた偏光板(該偏光板の上に粘着シートを適用する)である構成が挙げられる。
【0075】
この例においては、最初に、粘着シートを第1の基材の少なくとも一方の表面に隣接させて配置し、第2の基材を粘着シートに隣接させて配置する。このとき、粘着シートに3次元表面トポグラフィーが向くようにして、第1の基材と第2の基材とで粘着シートを挟む。次に、粘着シートを加熱および/または加圧して、粘着シートを3次元表面トポグラフィーに追従させる。その後、第1の基材側および/または第2の基材側から、これらの基材を通して粘着シートに放射線を照射することにより、粘着シートを硬化させる。このようにして、第1の基材および/または第2の基材の3次元表面トポグラフィーに粘着シートを追従させることにより、該3次元表面トポグラフィーの近傍に空隙を形成することなく、第1の基材と第2の基材とを接着することができる。
【0076】
上記例では、第1の基材および第2の基材の少なくとも一方が、それらを通して粘着シートの硬化に必要な放射線を照射できるように、少なくとも部分的に透明である。例えば第1の基材および第2の基材の一方が3次元表面トポグラフィーを有し、かつ3次元表面トポグラフィーの部分が放射線を透過しない場合、3次元表面トポグラフィーを有する基材側から放射線を照射すると、その3次元表面トポグラフィー部分の直下には放射線が照射されないが、照射された部分で発生したラジカルの移動などにより非照射部分においても粘着シートの硬化がある程度進行する。このような場合、3次元表面トポグラフィーを有さない方の基材がタッチパネルなどのような透明基材であれば、3次元表面トポグラフィーを有さない方の基材の側から放射線を照射することにより、3次元表面トポグラフィーの部分に対応する粘着シートの部分にも放射線を照射することができ、より均一に粘着シートを硬化させることができる。
【0077】
本開示の別の実施態様は、第1の基材と、第2の基材と、上述の放射線硬化性粘着シートと、を含む積層体の製造方法であって、
該第1の基材および該第2の基材の少なくとも一方が歪みに対して敏感であり、
該放射線硬化性粘着シートを該第1の基材の少なくとも一方の表面側に隣接させて配置する工程と、
該第2の基材を該放射線硬化性粘着シートに隣接させて配置する工程と、
該放射線硬化性粘着シートを加熱および/または加圧する工程と、
該放射線硬化性粘着シートに放射線を照射する工程と、
を含む、方法である。歪みに対して敏感な基材の例は前述した通りである。
【0078】
本実施態様において、工程の順序は上述の記載順に限定されない。例えば、一例では、第1の基材と第2の基材とで粘着シートを挟んだ後に、粘着シートを加熱および/または加圧する。別の例では、粘着シートを、歪みに対して敏感であるかまたは歪みに対して敏感でない第1の基材に隣接させて配置した後、粘着シートの開放面を加熱および/または加圧し、さらにその後、歪みに対して敏感である第2の基材を粘着シートに隣接させて配置する。本開示の粘着シートは、放射線照射前において良好な流動性および柔軟性を有する。よって、歪みに対して敏感な基材に対する接着において、基材に対する過度の応力の作用が防止され、内部応力を緩和した接着が可能になるという利点が得られる。特に、加熱および/または加圧後の粘着シートに歪みに対して敏感な基材を適用する場合において上記利点は顕著である。
本実施態様におけるそれぞれの工程の詳細は、3次元表面トポグラフィーを有する基材を用いる実施態様について上述したのと同様の手順で実施できる。
【0079】
本開示における粘着シートの加熱および/または加圧の工程において、加熱および/または加圧は、対流式オーブン、ホットプレート、ヒートプレス、ヒートラミネーター、オートクレーブなどを用いて行うことができる。粘着シートの流動を促進して、より効率的に粘着シートを基材の形状に追従させるために、ヒートラミネーター、ヒートプレス、オートクレーブなどを用いて、加熱と同時に加圧を行うことが好ましい。オートクレーブを用いた加圧は、粘着シートの脱泡に特に有利である。粘着シートの加熱温度は、粘着シートが軟化または流動して基材の形状に十分に追従する温度であればよく、一般に約30℃以上、約40℃以上、または約60℃以上とすることができ、約150℃以下、約120℃以下、または約100℃以下とすることができる。粘着シートを加圧する場合、与える圧力は、一般に約0.05MPa以上、または約0.1MPa以上、約2MPa以下、または約1MPa以下とすることができる。
【0080】
粘着シートに放射線を照射する工程において、放射線としては、紫外線、可視光線、電子線などを用いることができる。紫外線を用いる場合には、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、無電極ランプ、LEDなどを光源として用いる、一般的な紫外線照射装置、例えばベルトコンベア式の紫外線照射装置を用いて照射を行うことができる。この場合、紫外線照射量は、一般に、約1000mJ/cm2〜約5000mJ/cm2である。
【0081】
例示を目的として、第1の基材が3次元表面トポグラフィーとして段差を表面に有する表面保護層であり、第2の基材が画像表示モジュールまたはタッチパネルである実施態様について、図1および2を参照しながら説明する。
【0082】
表面保護層は、画像表示モジュールまたはタッチパネルの最表面に配置されて、これらを外部から保護する。表面保護層は、画像表示モジュールまたはタッチパネルの保護材料として従来から使用されているものであれば特に制限はなく、例えば、ポリメチルメタクリレート(PMMA)などのアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネート樹脂フィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂フィルム、またはガラス板であることができる。フィルムまたはガラス板の厚さは、以下に限定されないが、一般に約0.1mm〜約5mmである。
【0083】
表面保護層の、画像表示モジュールの観測者側またはタッチパネルの使用者側には、耐磨耗性、耐擦傷性、防汚性、反射防止性、帯電防止性などの機能・特性を付与するための層を設けることができる。耐磨耗性および耐擦傷性を付与するための層は、ハードコートを形成可能な硬化性樹脂組成物を塗布し、硬化させることで形成できる。例えば、アルキルトリアルコキシシランを主成分とするシラン混合物の部分縮合反応物とコロイダルシリカからなる塗料を塗布し、次いでこれを加熱硬化することで硬化被膜を形成することにより、または多官能アクリレートを主成分とした塗料を塗布し、塗膜に紫外線照射することにより、硬化被膜を形成することができる。また、防汚性を確保するためには、有機ケイ素化合物やフッ素系化合物を含む樹脂層を形成することができる。さらに、帯電防止性を得るためには、界面活性剤や導電性微粒子を含む樹脂層を形成することができる。このような機能・特性を付与するための層は、表面保護層の透明性を阻害しないものが望ましく、また、機能を発揮できる範囲でできるだけ薄い方がよい。機能・特性を付与する層は、以下に限定されないが、一般に約0.05μm〜約10μmである。
【0084】
ここで説明する実施態様では、表面保護層の、粘着シートと隣接する表面の一部の領域上に、印刷層、蒸着層などの追加の層が付与されて、表面保護層の当該表面に段差を形成している。印刷層または蒸着層は、例えば、画像表示モジュールの外周縁部に枠状に形成されて、その部分を見えなくする光遮蔽層として機能する。そのような光遮蔽層として用いる印刷層または蒸着層の厚さは、光遮蔽効果の高い黒色であれば約10μm〜約20μm以下であり、白色など光を透過しやすい色であれば約40μm〜約50μmとするのが一般的である。
【0085】
画像表示モジュールとして、以下に限定されないが、反射型またはバックライト型の液晶表示ユニット、プラズマディスプレイユニット、エレクトロルミネセンス(EL)ディスプレイ、電子ペーパーなどの画像表示モジュールなどが挙げられる。画像表示モジュールの表示面には、追加の層(一層であっても多層であってもよい)、例えば、偏光板(凹凸形状表面を有している場合もある)を設けることができる。また、後述するようなタッチパネルが、画像表示モジュールの表示面に存在していてもよい。
【0086】
タッチパネルとは、透明で薄膜形状のデバイスであり、使用者が指やペン(スタイラス)でタッチパネル上のある位置を触れるか押圧したときに、その位置を検出し特定することができる。また、複数のポイントを同時に触れて、対象の移動、回転、画像のズームなどの動きを直感的に入力することができる。位置検出方式として、タッチパネルに加わる圧力により動作する抵抗膜方式、指先とタッチパネルとの間での静電容量変化を検出する静電容量方式などが一般的である。タッチパネルは、CRTディスプレイや液晶ディスプレイなどの画像表示装置の上に搭載され、ATM、PC(パソコン)、携帯電話、PDAなどの携帯端末において使用されている。
【0087】
図1は、放射線硬化性粘着シートを含む積層体としての画像表示装置の一実施態様の断面図を示す。画像表示装置10は、画像表示モジュール1の表示面上に、粘着シート3および表面保護層4がこの順序で積層された構造を有している。表面保護層4は、連続層5、および連続層5の下面(粘着シート3側)の一部領域に設けられた光遮蔽層6から構成され、表面に段差が形成されている。なお、光遮蔽層6は硬化性樹脂組成物の塗布溶液に、着色剤を混入させた液を、スクリーン印刷などの適切な方法で連続層5の所定の領域に塗布し、紫外線照射などの適切な硬化方法で硬化させることで形成される。粘着シート3は、表面保護層4の段差を有する表面に貼付されている。粘着シート3は、放射線照射前の加熱および/または加圧により、光遮蔽層6によって生じた段差に十分に追従しているため、段差近傍に空隙はない。また、粘着シートの内部残留応力が緩和されているため、画像表示装置における表示ムラを防止することができる。画像表示装置10は、例えば、表面保護層4および粘着シート3からなる積層体2を画像表示モジュール1の表示面に貼り合せることで得られる。
【0088】
図2は、放射線硬化性粘着シートを含む積層体としてのタッチパネルユニットの一実施態様の断面図である。タッチパネルユニット20は、タッチパネル7の上に、粘着シート3および表面保護層4がこの順序で積層された構造を有している。粘着シート3および表面保護層4がこの順序で積層された積層体2の構造は、図1に記載されているものと同様である。粘着シート3は、放射線照射前の加熱および/または加圧により、光遮蔽層6によって生じた段差に十分に追従しているため、段差近傍に空隙はない。タッチパネルユニット20は、例えば、表面保護層4および粘着シート3からなる積層体2をタッチパネル7に貼り合せることで得られる。また、タッチパネル7の下側に、表示面を上側に有する画像表示モジュール(不図示)を、直接または別の粘着シートを介して取り付けることもできる。
【0089】
本開示のさらに別の実施態様によれば、上記画像表示モジュールを含む電子装置が提供される。そのような電子装置として、以下に限られないが、携帯電話、携帯情報端末(PDA)、携帯ゲーム機、電子読書端末、カーナビゲーションシステム、携帯音楽プレーヤー、時計、テレビジョン(TV)、ビデオカメラ、ビデオプレーヤー、デジタルカメラ、グローバル・ポジショニング・システム(GPS)装置、パーソナルコンピュータ(PC)などが挙げられる。
【実施例】
【0090】
以下、例を挙げて本発明をさらに説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0091】
<粘着シートの作製>
[モノマーおよび開始剤の略称]
2−EHA:2−エチルヘキシルアクリレート
ISTA:イソステアリルアクリレート(大阪有機化学工業(株)より入手可能)
AA:アクリル酸
AEBP:4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノン
DCP−A:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート
DCP−M:トリシクロデカンジメタノールジメタクリレート
SR−399:ジペンタエリスリトールペンタアクリレート(Sartomer Companyより入手可能)
V−65:熱開始剤(2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬(株)より入手可能)
MOI:2−イソシアネートエチルメタクリレート(昭和電工(株)から入手可能)
TPO:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド
EtOAc:酢酸エチル
MEK:メチルエチルケトン
【0092】
[作製手順]
作製例1
粘着シート(PSAシート−1)は以下のように作製した。
まず、放射線反応性部位として紫外線架橋性部位を有するアクリル酸エステルを含有するモノマーのアクリル共重合体を合成した。紫外線架橋性部位を有するアクリル酸エステルとして、4−アクリロイルオキシエトキシベンゾフェノンを用いた。
【0093】
2−EHA/ISTA/AA/AEBP=37.5/50.0/12.5/0.95(質量部)の混合物を準備し、これを酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合溶媒(EtOAc/MEK=20質量%/80質量%)で希釈して、モノマー濃度を45質量%にした。さらに、開始剤としてV−65を、モノマー成分基準での比率0.2質量%で添加した。そして系を10分間窒素パージした。続いて、50℃の恒温槽で24時間反応を進行させた結果、透明な粘稠溶液を得た。得られたアクリル共重合体(ポリマー1)の重量平均分子量は、210,000であった(ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法によるポリスチレン換算に基づく。)。
【0094】
次いで、得られたポリマー溶液中にDCP−Aを添加した。ポリマー固形分/DCP−Aの混合比を95/5(質量比)に調整した。
【0095】
次いで、得られた溶液を、厚み50μmの剥離フィルム(東レフィルム加工(株)製 Cerapeel MIB(T)の重剥離面)上に、ナイフコーターのギャップを220μmに調整してコートし、100℃のオーブンで8分間乾燥させた。乾燥後の粘着剤の厚みは50μmであった。続いて、この粘着剤表面に、38μm厚の剥離フィルム(帝人デュポンフィルム(株)より、Purex(登録商標)A−31として入手可能)をラミネートして、粘着シート(転写型粘着テープ)(PSAシート−1)を得た。
【0096】
作製例2
転写型粘着テープ(PSAシート−2)は、ポリマー固形分/DCP−Aの混合比を90/10(質量比)に調整した以外はPSAシート−1と同様にして作製した。
【0097】
作製例3
転写型粘着テープ(PSAシート−3)は、ポリマー固形分/DCP−Aの混合比を85/15(質量比)に調整した以外はPSAシート−1と同様にして作製した。
【0098】
作製例4
接着剤転写テープ(PSAシート−4)は、ポリマー固形分/DCP−Mを混合比90/10(質量比)で用いた以外はPSAシート−1と同様にして作製した。
【0099】
作製例5
PSAシート−5は以下のように作製した。
【0100】
まず、アクリル酸エステルを含有するアクリル共重合体を合成した。2−EHA/ISTA/AA=37.5/50.0/12.5(質量部)を準備し、酢酸エチル/メチルエチルケトン(EtOAc/MEK=20質量%/80質量%)混合溶媒で希釈して、モノマー濃度を45質量%にした。さらに、開始剤としてV−65を、モノマー成分基準での比率0.2質量%で添加した。そして系を10分間窒素パージした。続いて、50℃の恒温槽で24時間反応を進行させた結果、透明な粘稠溶液を得た。得られたアクリル共重合体(ポリマー2)の重量平均分子量は、270,000であった。
次に、メタクリロイル基をポリマー構造中に導入するために、得られたポリマー溶液中にMOIを添加した。MOIのイソシアネートの反応を、23℃で24時間のエージングにおいて進行させた。ポリマー固形分/MOIの混合比は、100/0.5(質量%/質量%)に調整した。次いで、メタクリロイル基を有するアクリル共重合体(ポリマー3)の溶液を得た。
【0101】
次に、DCP−AおよびTPOを、得られたポリマー溶液中に添加した。ポリマー固形分/DCP−A/TPOの混合比は、95/5/0.5(質量比)に調整した。
【0102】
次いで、得られた溶液を、厚み50μmの剥離フィルム(東レフィルム加工(株)製 Cerapeel MIB(T)の重剥離面)上に、ナイフコーターのギャップを220μmに調整してコートし、100℃のオーブンで8分間乾燥させた。乾燥後の粘着剤の厚みは50μmであった。続いて、この粘着剤表面に、38μm厚の剥離フィルム(帝人デュポンフィルム(株)より、Purex(登録商標)A−31として入手可能)をラミネートして、粘着シート(転写型粘着テープ)(PSAシート−5)を得た。
【0103】
比較作製例1
接着剤転写テープ(PSAシート−6)は、ポリマー1溶液を他のものと混合することなく直接コートした以外はPSAシート−1と同様にして作製した。
【0104】
比較作製例2
接着剤転写テープ(PSAシート−7)は、ポリマー3溶液に、ポリマー固形分/TPO混合比が100/0.5(質量比)となるようにTPOを添加し、これをPSAシート−1と同様の手順にてコートして作製した。
【0105】
比較作製例3
接着剤転写テープ(PSAシート−8)は、ポリマー2溶液に、ポリマー固形分/DCP-A/TPO混合比が95/5/0.5(質量比)となるようにDCP−AとTPOとを添加し、これをPSAシート−1と同様の手順にてコートして作製した。
【0106】
<性能評価>
[剥離強度(接着試験)(例1〜5、比較例1、2)]
接着試験サンプルを以下のように作製した。
【0107】
粘着シートから剥離シートを剥離し、露出した粘着剤を、陽極酸化アルミニウムテープ(幅30mm)上に適用した。アルミニウムテープの厚みは135μmであった。次いで、残りの剥離フィルムを剥離し、露出した粘着剤を50μm厚の非処理ポリエステル(PET)フィルム(Lumirror T60として、東レ(株)から入手可能)上に適用した。ゴムローラー(2000g)を用いることによって、2方向にサンプルをプレスし、室温で30分間置いた。
【0108】
サンプルのPET側を、ダブルコートテープを用いてSUS板上に固定した。接着強度を、アルミニウムテープで支持された粘着剤をPETから剥離することによって、剥離速度300mm/分での90°剥離として測定した。結果を表1に纏める。
【0109】
【表1】

【0110】
表1から分かるように、アクリル共重合体とともにDCP−AまたはDCP−Mを用いて作製された粘着シートの剥離強度は、アクリル共重合体のみを用いて作製された粘着シートのものよりも高くなった。
【0111】
(紫外線照射条件)
粘着シートに対して、剥離フィルムを介して、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300(H−バルブ,120W/cm,15mpm×15pass)により紫外線を照射した。UV POWER PUCK(登録商標)II(EIT社)によって測定される総UVエネルギーは、UV−A(320〜390nm)について1940mJ/cm2、およびUV−B(280〜320nm)について74mJ/cm2であった。
【0112】
[紫外線照射前後の粘着シートの流動性/追従性、および貯蔵弾性率(動的機械分析)(例6〜10および比較例3,4)]
紫外線照射前および紫外線照射後の粘着シートの相対的な流動性/追従性、および、貯蔵弾性率を評価するために、粘着シートの動的機械分析(DMA)を、動的粘弾性測定装置、ARES(TAインスツルメンツ社製)を用いて実施した。測定には、紫外線照射前および紫外線照射後のそれぞれの粘着シートを、約3mm厚となるように積層し、8mmφの抜き刃で打ち抜いて作製した試験片を用いた。測定は剪断モード(1Hz)で、昇温速度5℃/分にて、温度範囲−40℃〜200℃で実施した、貯蔵弾性率(G’)の結果を表2に纏める。
【0113】
【表2】

【0114】
表2に示す結果から分かるように、紫外線照射前では、PSAシート−6およびPSAシート−7の貯蔵弾性率は、PSAシート−1〜PSAシート−5(ポリマー/DCP−AまたはDCP−Mの混合系)よりも相対的に高い。一方、紫外線照射後では、PSAシート−6およびPSAシート−7の貯蔵弾性率が、PSAシート−1〜PSAシート−5よりも相対的に低い。従って、混合系は、紫外線照射前の良好な流動性と、紫外線照射後の十分な硬さとの両者を実現できる。
【0115】
[耐打痕性(例11〜13および比較例5,6)]
まず、積層体を以下のように作製した。
【0116】
例11
PSAシート−3の剥離フィルムを取り外し、PSAシート−3を188μm厚のPET(ESTER FILM E5101として、東洋紡績(株)より入手可能)に適用した。次に、他の剥離フィルムを取り外し、PSAシート−3をガラス板に適用し、積層体(PET/粘着シート/ガラス)を作製した。
【0117】
次に、紫外線照射を、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300(H−バルブ,120W/cm)によって、積層体のPET側から行った。PETフィルムを透過した総UVエネルギーは、UV−A(320〜390nm)について3885mJ/cm2、およびUV−B(280〜320nm)について140mJ/cm2であった。目視での変形観察を以下のように行った。
【0118】
ポリアセタール製スタイラス(曲率半径R=0.8mm)を積層体のPET側に垂直に接触させた。500gの重りをスタイラスの上に5秒間重ねた。スタイラスを離した直後(数秒以内)に、PET表面の変形の跡を肉眼で観察し、跡のサイズを評価した。結果を表3に纏める。
【0119】
例12
積層体の作製および積層体の評価を、PSAシート−3に代えてPSAシート−4を用いた以外は例11に従って行った。結果を表3に示す。
【0120】
例13
積層体の作製および積層体の評価を、PSAシート−3に代えてPSAシート−5を用いた以外は例11に従って行った。結果を表3に示す。
【0121】
比較例5
積層体の作製および積層体の評価を、PSAシート−3に代えてPSAシート−6を用いた以外は例11に従って行った。結果を表3に示す。
【0122】
比較例6
積層体の作製および積層体の評価を、PSAシート−3に代えてPSAシート−7を用いた以外は例11に従って行った。結果を表3に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
表3に示す結果から分かるように、PSAシート−6およびPSAシート−7(ポリマーのみ)の跡のサイズは、PSAシート−1〜PSAシート−5(ポリマー/DCP−AまたはDCP−Mの混合系)よりも相対的に大きい。従って、混合系は、良好な耐打痕性を実現できる。
【0125】
[保持力(例14および比較例7)]
まず、積層体を以下のように作製した。
例14
PSAシート−5を25mm×25mmにカットし、一方の剥離フィルムを外してから、30mm×60mm×2mm厚のガラス板に適用した。次に、もう一方の剥離フィルムを取り外し、30mm×60mm×2mm厚のガラス板に適用し、積層体(ガラス/粘着シート/ガラス)を作製した。
【0126】
次にオートクレーブによって60℃、0.5MPaにて30分間の処理を実施した。オートクレーブから取り出し後、フュージョンUVシステムズ・ジャパン(株)製の紫外線照射装置F−300(H−バルブ,120W/cm)によって、一方のガラス面側から紫外線照射を行った。ガラスを透過した総UVエネルギーは、UV−A(320〜390nm)について1908mJ/cm2、およびUV−B(280〜320nm)について20mJ/cm2であった。
【0127】
次に冶具を用いてガラス面が床面に垂直となるよう80℃オーブン中に宙づりにし、ガラス面に対して水平に200gの荷重がかかるように、一方のガラス板に分銅を適用した。オーブン投入時のガラス端部の位置を開始点として、1時間後のガラスの移動距離を測定した。結果を表4に示す。
【0128】
比較例7
積層体の作製および積層体の評価を、PSAシート−5に代えてPSAシート−8を用いた以外は例14に従って行った。結果を表4に示す。
【0129】
【表4】

【0130】
表4に示す結果から分かるように、PSAシート−5はPSAシート−8よりも、保持力が高い。PSAシート−5は放射線反応部位を有しているため可塑剤であるDCP−Aとの共重合が可能であるが、PSAシート−8は該部位を有していないためDCP−Aとの共重合ができない。PSAシート−5では可塑剤も含めた強固な架橋が実現されるため相対的に高い保持力が実現できる。
【符号の説明】
【0131】
10 画像表示装置
20 タッチパネルユニット
1 画像表示モジュール
2 積層体
3 粘着シート
4 表面保護層
5 連続層
6 光遮蔽層
7 タッチパネル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線反応性部位を有する(メタ)アクリル共重合体、および、放射線照射によって前記(メタ)アクリル共重合体との結合を形成することが可能な可塑剤、を含んでなる、放射線硬化性粘着シート。
【請求項2】
前記放射線反応性部位が、エチレン性不飽和構造を有する、請求項1に記載の放射線硬化性粘着シート。
【請求項3】
前記放射線反応性部位が、ベンゾフェノン構造を有する、請求項1または2に記載の放射線硬化性粘着シート。
【請求項4】
前記可塑剤が、多官能(メタ)アクリレートを含む、請求項1〜3のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着シート。
【請求項5】
前記可塑剤が、脂環式部分を含む、請求項1〜4のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着シート。
【請求項6】
放射線照射前の粘着シートの貯蔵弾性率が、30℃、1Hzにおいて、1.0×104Pa以上、1.0×106Pa以下、かつ80℃、1Hzにおいて、5.0×104Pa以下であり、
さらに、放射線照射後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、1.0×103Pa以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着シート。
【請求項7】
放射線照射後の粘着シートの貯蔵弾性率が、130℃、1Hzにおいて、1.0×104Pa以上である、請求項6に記載の放射線硬化性粘着シート。
【請求項8】
基材と、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着シートとを含む、積層体。
【請求項9】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置された、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着シートと、を含む積層体であって、前記第1の基材の少なくとも一方の表面が前記放射線硬化性粘着シートと接触している、積層体。
【請求項10】
前記第1の基材が表面保護層であり、前記第2の基材が画像表示モジュールまたはタッチパネルである、請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
第1の基材と、第2の基材と、前記第1の基材と前記第2の基材の間に配置された、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着シートと、を含む積層体の製造方法であって、
前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方が、その主面の一方の少なくとも一部に亘る3次元表面トポグラフィーを有し、
前記放射線硬化性粘着シートを前記第1の基材の少なくとも一方の表面側に隣接させて配置する工程と、
前記第2の基材を前記放射線硬化性粘着シートに隣接させて配置する工程と、
前記放射線硬化性粘着シートを加熱および/または加圧して前記3次元表面トポグラフィーに追従させる工程と、
前記放射線硬化性粘着シートに放射線を照射する工程と、
を含む、方法。
【請求項12】
第1の基材と、第2の基材と、請求項1〜7のいずれか1項に記載の放射線硬化性粘着シートと、を含む積層体の製造方法であって、
前記第1の基材および前記第2の基材の少なくとも一方が歪みに対して敏感であり、
前記放射線硬化性粘着シートを前記第1の基材の少なくとも一方の表面側に隣接させて配置する工程と、
前記第2の基材を前記放射線硬化性粘着シートに隣接させて配置する工程と、
前記放射線硬化性粘着シートを加熱および/または加圧する工程と、
前記放射線硬化性粘着シートに放射線を照射する工程と、
を含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−40256(P2013−40256A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−176853(P2011−176853)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】