説明

放熱性に優れた塗膜及びその形成方法

【課題】 放熱性に優れると共に、淡彩系を主体とした多くの色彩を得ることが可能である塗膜を提供する。
【解決手段】 カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有する下塗塗料を塗装し、硬化して下塗塗膜層を形成し、次に、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%を含有し、アルミニウム粉を含有しない上塗塗料を該下塗塗膜層の上に塗装し、硬化して塗膜厚が11〜50μmである上塗塗膜層を形成することを特徴とする放熱性に優れた塗膜の形成方法により形成できる、カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有する下塗塗膜層と、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%を含有し、アルミニウム粉を含有しない上塗塗膜層とからなり、上塗塗膜層の塗膜厚が、11〜50μmであることを特徴とする放熱性に優れた塗膜。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放熱性に優れた塗膜、及びその形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、家電製品の進歩に伴い、発熱が問題となっており、パーソナルコンピュータでは、高性能化に伴いCPUからの発熱温度が高くなっている。これの対策としては、空冷ファンを取り付ける方法が一般に適用されていが、小型化をするために、可能であれば空冷ファンを小型のものにし、さらには取り付けなくても冷却効果を有する筐体が望まれている。
熱を制御する塗料組成物として、有機珪素化合物およびその低縮合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物の、シラノール基を含まない高縮合物からなる造膜成分と、該造膜成分100重量部当り100〜300重量部の粒径40μm以下の雲母および50〜200重量部の粒径1μm以下の酸化チタンを含むことを特徴とする熱制御用塗料組成物が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、この塗料を用いた場合、酸化チタンと雲母が必須成分であり、任意の色に着色できない問題点があった。特に、家電分野では色による意匠の付与が不可欠であるため、黒色や光輝性の付与ができないことは大きな欠点であった。
また、放熱性と電磁波吸収性に優れた塗装金属板として、固形分の質量%で、フェライト粉末:20〜80%、カーボンブラック粉末:3〜60%を含有し、残部が樹脂であり、かつ、塗料中のフェライト粉末とカーボンブラック粉末の含有量が、30%≦フェライト粉末(%)+カーボンブラック粉末(%)≦90%であることを特徴とする放熱性と電磁波吸収性に優れた塗料組成物が知られている(例えば、特許文献2参照)。
【0004】
しかしながら、カーボンブラック添加により塗膜が黒色になるために、任意の色に着色できないという欠点があった。
また、上塗塗料にカーボンブラックを用いない方法として、金属板の少なくとも片面に、平均粒径が0.01〜30μmの窒化硼素を3〜70質量%含有する有機被覆層を、1μm以上の厚さで有する放熱性と着色性に優れた塗装金属板が知られている。(例えば、特許文献3参照)しかしながら、この方法では、上塗り層だけで、放熱性の機能をもたせるために、2層構造の塗膜に比べて放熱性が劣るという欠点があった。
【0005】
また、基材表面に外層塗膜と内層塗膜とを備え、内層塗膜が、カーボンブラック、アルミナ、ジルコニア、チタニア、シリカ、ジルコン、マグネシアなどの熱放射率が70%以上の顔料を内層塗膜の乾燥質量に対して0.03〜70質量%含有することを特徴とする熱放射性表面処理材が知られている(例えば、特許文献4参照)。
しかしながら、この方法では、上塗塗膜により、熱放射率が低下してしまうという欠点があった。
【0006】
また、耐疵付き性、耐指紋性に加えて、放熱性に優れた樹脂塗装金属板として、片面または両面が黒色である黒色金属板における黒色側表面の一方または両方に、白色顔料及び/又は光輝顔料を含有する樹脂塗膜が被覆された樹脂塗装金属板であり、該樹脂塗膜の膜厚は0.5〜10μmであり、且つ、該樹脂塗膜に含まれる白色顔料及び/又は光輝顔料の添加量は、合計で1〜25質量%であり、色調がL値で44.0〜60.0であることを満足するものが知られている(例えば、特許文献5参照)。
しかしながら、この方法では、2層目の膜厚を厚くすることができないため、意匠性・多色性を得るために必要な充分な隠蔽性を確保できないという欠点があった。
【0007】
【特許文献1】特公平6−96682号公報
【特許文献2】特開2004−027064号公報
【特許文献3】特開2005−139535号公報
【特許文献4】特開2002−228085号公報
【特許文献5】特開2005−238769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、放熱性に優れると共に、淡彩系を主体とした多くの色彩を得ることが可能である塗膜を提供することであり、特に、光輝感のある意匠を付与できるプレコート鋼板用の塗膜を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記の課題を解決するべく鋭意研究を重ねた結果、上塗塗膜層をパール顔料を特定量含有させた特定成分にすることが最適であることを見出し、また、下塗塗膜層にカーボンブラックを特定量含有させ、さらに上塗塗膜層の厚みを特定の範囲にすることで、その目的を達し得ることを見出し、これらの知見に基づいて本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有する下塗塗膜層と、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%を含有し、アルミニウム粉を含有しない上塗塗膜層とからなり、上塗塗膜層の塗膜厚が、11〜50μmであることを特徴とする放熱性に優れた塗膜を提供するものである。
また、本発明は、上記塗膜において、パール顔料が、薄板状雲母粉を二酸化チタンでコーティングした顔料である放熱性に優れた塗膜を提供するものである。
【0011】
また、本発明は、上記塗膜において、上塗塗膜層が金属顔料及び金属粉を含有しない放熱性に優れた塗膜を提供するものである。
また、本発明は、上記の塗膜が金属板の表面に形成されていることを特徴とする塗装金属板を提供するものである。
また、本発明は、カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有する下塗塗料を塗装し、硬化して下塗塗膜層を形成し、次に、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%を含有し、アルミニウム粉を含有しない上塗塗料を該下塗塗膜層の上に塗装し、硬化して塗膜厚が11〜50μmである上塗塗膜層を形成することを特徴とする放熱性に優れた塗膜の形成方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明の塗膜により、優れた放熱性を得ることができ、淡彩系を主体とした多くの色彩を得ることができ、特に、プレコート鋼板用の塗膜として好適に利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明における下塗塗膜層には、カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有させる。これにより塗膜の放熱性を向上させることができる。
カーボンブラックとしては、一般に顔料として使用されているものが制限なく使用でき、チャンネル式、ファーネス式等の製造方法が知られている。市販のカーボンブラックとしては、例えば、デグサ社製「FW200」、コロンビアカーボン社製「ラーベン1255」、三菱化学社製「MA100」等が挙げられる。
カーボンブラックの含有量は、塗膜の全固形分に対して、好ましくは2〜15質量%であり、さらに好ましくは3〜12質量%である。カーボンブラックの含有量が1質量%未満では、放熱性の効果が認められず、20質量%を超えた場合では、塗料の揺変性(チキソトロピック性)が高くなり塗装作業性が低下する。
【0014】
下塗塗膜層に含まれる塗料用樹脂は、通常プレコート鋼板用の下塗塗料に用いられる樹脂であればよいが、エポキシ系樹脂、高分子ポリエステル系樹脂が好ましい。これらの樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上用いてもよい。樹脂の含有量は、塗膜の全固形分に対して固形分で通常50〜80質量%が好ましく、60〜75質量%がさらに好ましい。
【0015】
下塗塗膜層には、被覆組成物の耐食性を向上させる目的で、防錆顔料を添加してもよい。防錆顔料としては公知のものが適用でき、例えば、リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛等のリン酸系防錆顔料、モリブデン酸カルシウム、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸バリウム等のモリブデン酸系防錆顔料、酸化バナジウム等のバナジウム系防錆顔料、カルシウムシリケート等のシリケート系顔料、ストロンチウムクロメート、ジンククロメート、カルシウムクロメート、カリウムクロメート、バリウムクロメート等のクロメート系防錆顔料、水分散シリカ、ヒュームドシリカ等の微粒シリカ、フェロシリコン等のフェロアロイを用いることができる。これらは1種単独で用いてもよいし、2種類以上用いてもよい。防錆顔料の含有量は、塗膜の全固形分に対して固形分で通常5〜25質量%が好ましく、15〜20質量%がさらに好ましい。
【0016】
また、下塗塗膜層には、素地を隠蔽する目的で、通常プレコート鋼板の下塗塗料に用いられる酸化チタン、酸化鉄などの有機又は無機の着色顔料を用いてもよい。また、必要に応じて、耐スクラッチ性を付与したり、塗料の流動性を改良したりする目的で、体質顔料を用いてもよい。これらの有機又は無機の着色顔料及び/又は体質顔料の含有量は、塗膜の全固形分に対して通常0.5〜15質量%が好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。
下塗塗膜層の塗膜厚は、1〜30μmが好ましく、より好ましくは3〜20μmである。1μm未満では、プレコート鋼板としての耐食性、加工性などの基本性能と共に、充分な放熱性が得られず、30μmを超えた場合は、塗装作業性が低下する。
【0017】
本発明における上塗塗膜層には、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%含有させる。これにより塗膜の放熱性を著しく向上させることができる。パール顔料の含有量は、塗膜の全固形分に対して好ましい2〜35質量%であり、さらに好ましくは、5〜30質量%である。パール顔料の含有量が1質量%未満では、放熱性に充分な効果が認められず、40質量%を超えた場合では、プレコート鋼板として厳しい加工をする場合に、塗膜が剥離する可能性が生じる。
【0018】
パール顔料は、特に限定するものではなく、例えば、天然雲母または人工雲母に二酸化チタンがコーティングされたものが挙げられる。パール顔料の具体的な例としては、イリオジン(商品名、メルクジャパン(株)製)などの市販されているものが挙げられる。パール顔料は、1種単独でも、2種類以上の混合状態でも使用することができる。
【0019】
従来、放熱性被覆を得るために、カーボンブラック等の黒色顔料を上塗塗料に用いていたため、色調が限定されていたが、本発明では、パール顔料を使用することにより、色調の制限が殆どなく、ニーズに応じた色調を容易に得ることができる。また、従来は、メタリック調の意匠を付与するために、光輝材料としてアルミニウム粉を使用していたため、著しく放熱性が低下していたが、パール顔料を使用することにより、放熱性とメタリック調の意匠の付与との両立が可能になる。
【0020】
すなわち、本発明の上塗塗膜層には、アルミニウム粉を含有しないことが、放熱性の低下を避ける目的で必要である。
また、本発明の上塗塗膜層には、アルミニウム粉以外の金属顔料や金属粉も含有させないことが、放熱性の低下を避ける目的で好ましい。
なお、パーソナルコンピュータ等の筐体として、塗装鋼板に導電性を付与するための金属顔料や金属粉が必要な場合には、塗装鋼板の表面に本発明により形成された塗膜を用い、塗装鋼板の裏面に金属顔料や金属粉等を含有する塗料を用いればよい。
【0021】
上塗塗膜層に含有される塗料用樹脂は、通常プレコート鋼板用の上塗塗料に用いられる樹脂であればよく、高分子ポリエステル系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、フッ素系樹脂、あるいは、これらを変性した樹脂などの樹脂成分が挙げられる。また、樹脂成分は、樹脂成分に含有される水酸基等の官能基と架橋反応する、ブチル化メラミン、メチル化メラミン、ブチルメチル混合メラミン、尿素樹脂、イソシアネート等の架橋剤と共に用いることができる。これらの樹脂、架橋剤は、それぞれ1種単独で用いてもよいし、2種類以上用いてもよい。樹脂の含有量は、塗膜の全固形分に対して固形分で通常40〜90質量%が好ましく、50〜85質量%がさらに好ましい。
【0022】
上塗塗膜層には、意匠性の目的で、着色顔料や染料を用いることができる。着色顔料は、特に限定するものではなく、無機系、有機系、両者の複合系に関わらず公知のものを使用することができる。具体的な例としては、酸化チタン、赤色酸化鉄(弁柄)、黄色酸化鉄、シアニンブルー、シアニングリーン、ピラゾロンオレンジ、アゾ系顔料、紺青、縮合多環系顔料等があり、必要に応じてカーボンブラックを用いてもよい。染料としては、インジゴイド染料、硫化染料、フタロシアニン染料、ジフェニルメタン染料、ニトロ染料、アクリジン染料等の染料が挙げられる。顔料又は染料の濃度は特に限定されず、必要な色や隠蔽力に基づいて選ぶことができる。
【0023】
また、上塗塗膜層には、炭酸カルシウム、タルク、石膏、クレー等の体質顔料、有機架橋微粒子、無機微粒子等も必要に応じて含有させることができる。体質顔料、有機架橋微粒子、無機微粒子等の含有量は、塗膜の全固形分に対して通常0〜20質量%が好ましく、0〜15質量%がさらに好ましい。
【0024】
また、上塗塗膜層には、必要に応じて、表面平滑剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系光安定剤、粘度調整剤、硬化触媒、顔料分散剤、顔料沈降防止剤、色別れ防止剤等の添加剤を含有させることができる。
本発明の上塗塗膜層の塗膜厚は、11〜50μmが好ましく、より好ましくは12〜40μmであり、さらに好ましくは13〜30μmである。11μm未満では、充分な放熱性が得られず、50μmを超えた場合は、経済性の点から無駄でもあり、また、プレコート鋼板としての加工性が不十分である。
【0025】
本発明の塗膜を施す素材は、金属が好ましく、好ましくは金属板であり、より好ましくはプレコート用金属板である。金属板の種類は特に限定するものではないが、ステンレス鋼板、めっき鋼板、アルミニウム合金板が適している。ステンレス鋼板としては、フェライト系ステンレス鋼板、マルテンサイト系ステンレス鋼板、オーステナイト系ステンレス鋼板等が挙げられる。アルミニウム合金板としては、JIS 1000番系(純Al系)、JIS 2000番系(Al−Cu系)、JIS 3000番系(Al−Mn系)、JIS 4000番系(Al−Si系)、JIS 5000番系(Al−Mg系)、JIS 6000番系(Al−Mg−Si系)、JIS 7000番系(Al−Zn系)等が挙げられる。特に好適な金属板は、コストと性能のバランスの取れためっき鋼板である。めっき鋼板としては、亜鉛めっき鋼板、亜鉛−鉄合金めっき鋼板、亜鉛−ニッケル合金めっき鋼板、亜鉛−クロム合金めっき鋼板、亜鉛−アルミ合金めっき鋼板、アルミめっき鋼板、亜鉛-アルミ−マグネシウム合金めっき鋼板、亜鉛−アルミ−マグネシウム−シリコン合金めっき鋼板、アルミ−シリコン合金めっき鋼板、亜鉛めっきステンレス鋼板、アルミめっきステンレス鋼板等が挙げられる。
【0026】
本発明に用いる金属板の塗装前処理としては、水洗、湯洗、酸洗、アルカリ脱脂、研削、研磨等があり、必要に応じて、これらを1種単独もしくは2種以上を組み合わせて行うとよい。塗装前処理の条件は、適宜選択すればよい。金属板の上には、必要に応じて化成処理を施してもよい。化成処理は、塗装と下地金属板の密着性をより強固なものとするためと、耐食性の向上を目的として処理される。化成処理としては、公知の技術が使用でき、例えば、リン酸亜鉛処理、クロメート処理、シランカップリング処理、複合酸化被膜処理、ノンクロメート処理、タンニン酸系処理、チタニア系処理、ジルコニア系処理、これらの混合処理等が挙げられる。
【0027】
本発明の放熱性に優れた塗膜は、種々の方法で形成できるが、カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有する下塗塗料を塗装し、硬化して下塗塗膜層を形成し、次に、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%を含有し、アルミニウム粉を含有しない上塗塗料を該下塗塗膜層の上に塗装し、硬化して塗膜厚が11〜50μmである上塗塗膜層を形成する塗膜の形成方法により、形成することが好ましい。
【0028】
下塗塗料には、上記の下塗塗膜層に含有される成分が含有されておればよく、また、その他に、希釈剤として、有機溶剤が含有されていてもよい。
上塗塗料には、上記の上塗塗膜層に含有される成分が含有されておればよく、また、その他に、希釈剤として、有機溶剤が含有されていてもよい。
【0029】
有機溶剤としては、通常塗料に使用される種々の有機溶剤が適用でき、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、芳香族ナフサ等の芳香族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン、エチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサンノン、イソホロン等のケトン系溶剤、n−ブタノール、iso−ブタノール等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸3−メトキシブチル、アジピン酸ビス(2−エチルヘキシル)等のエステル系溶剤、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、1,3,5−トリオキサン等のエーテル系溶剤、アセトニトリル、バレロニトリル、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド等の含窒素系溶剤が挙げられる。有機溶剤は、1種単独であっても、あるいは2種以上の複数溶剤の混合溶剤であっても差し支えない。また、有機溶剤の塗料中の含有量は、30〜80質量%が好ましく、40〜65質量%がより好ましい。
【0030】
本発明に用いる下塗塗料および上塗塗料は、通常プレコート鋼板に用いられる方法で塗装することができる。例えば、バーコーター、ロールコーター、オーバーフローカーテンコーター、スリットカーテンコーター、ローラーカーテンコーター、Tダイ、複層カーテンコーター等が挙げられる。
【0031】
本発明に用いる下塗塗料および上塗塗料を硬化させて塗膜を得る工程における硬化方法は、熱風加熱、高周波誘導加熱等の加熱乾燥や、場合によっては、電子線、紫外線の照射による硬化等があり、使用する塗料に適した方式を選択すればよい。
本発明の塗膜は、少なくとも金属板の片面に形成すればよい。
また、本発明の塗膜は、金属板の表面に下塗塗膜を形成させ、その下塗塗膜層の上に、上塗塗膜層を形成させる2層を標準仕様として設定しているが、片面に2層以上塗装するときは、下塗塗膜層の下に1層、同じ下塗塗膜層または異なる下塗塗膜層を入れてもよいし、また、上塗塗膜層の上に、さらにもう1層同じ上塗塗膜層を形成させてもよい。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
【0033】
(下塗塗料の製造)
<製造例1:下塗塗料A−1の製造>
容器に、ポリエステル樹脂バイロン290(商品名、東洋紡績(株)製)をソルベッソ150(商品名、エクソン化学(株)製;芳香族溶剤)とシクロヘキサノンとの混合比が50/50の溶剤にて40質量%に溶解した溶液60質量部、酸化チタン3質量部、カーボンブラック2.5質量部、K−ホワイト105(商品名、テイカ(株)製;白色防錆顔料)6.5質量部、ソルベッソ150の11質量部、シクロヘキサノン11質量部を仕込んで、サンドミルにて粒度が20μm以下になるように分散し、次に、サイメル303(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製;メラミン樹脂、固形分100質量%)4質量部、キャタリスト602(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製;酸触媒)1質量部、表面調整剤1質量部を少量ずつ攪拌しながら均一になるように加えて、下塗塗料A−1を得た。
【0034】
<製造例2〜3>
製造例1と同様の方法で、表1に示した配合にて、下塗塗料A−2〜A−3を作製した。
【0035】
(上塗塗料の製造)
<製造例4:上塗塗料B−1の製造>
容器に、ポリエステル樹脂バイロン240(商品名、東洋紡績(株)製)をソルベッソ150(商品名、エクソン化学(株)製;芳香族溶剤)とシクロヘキサノンとの混合比が50/50の溶剤にて40質量%に溶解した溶液75質量部を仕込み、その中に、別の容器にイリオジン103WNT(商品名、メルクジャパン(株)製;パール顔料)6質量部をソルベッソ150の7.5質量部、シクロヘキサノン7.5質量部にてウェットさせたペーストを少量ずつ攪拌しながら均一になるように加えた。次に、サイメル303(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製;メラミン樹脂、固形分100質量%)2質量部、キャタリスト602(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製;酸触媒)1質量部、表面調整剤1質量部を少量ずつ攪拌しながら均一になるように加えて、上塗塗料B−1を得た。
【0036】
<製造例5>
容器に、ポリエステル樹脂バイロン240(商品名、東洋紡績(株)製)をソルベッソ150(商品名、エクソン化学(株)製;芳香族溶剤)とシクロヘキサノンとの混合比が50/50の溶剤にて40質量%に溶解した溶液50質量部、酸化チタン3.8質量部、弁柄0.2質量部、ソルベッソ150の2.5質量部、シクロヘキサノン2.5質量部を仕込んで、サンドミルにて粒度が10μm以下になるように分散し、その中に、別の容器にイリオジン103WNT(商品名、メルクジャパン(株)製;パール顔料)2質量部をソルベッソ150の5質量部、シクロヘキサノン5質量部にてウェットさせたペーストを少量ずつ攪拌しながら均一になるように加えた。次に、上述のバイロン240の40質量%溶液25質量部、サイメル303(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製;メラミン樹脂、固形分100質量%)2質量部、キャタリスト602(商品名、日本サイテックインダストリーズ社製;酸触媒)1質量部、表面調整剤1質量部を少量ずつ攪拌しながら均一になるように加えて、上塗塗料B−2を得た。
【0037】
<製造例6〜8>
製造例4または5と同様の方法で、表2に示した配合にて、上塗塗料B−3〜B−5を作製した。
【0038】
(実施例1)
アルカリ脱脂処理及びクロメート処理を施された板厚0.4mmの電気亜鉛めっき鋼板(亜鉛めっき付着量20g/m)に下塗塗料A−1をバーコーターで乾燥塗膜厚が10μmになるように塗布し、熱風加熱炉で、最高到達板温が(PMT)230℃になるように260℃で60秒の条件で焼き付けを行い、硬化させた。次に、上塗塗料B−1をバーコーターで乾燥塗膜厚が15μmになるように塗布し、熱風加熱炉で、最高到達板温が(PMT)230℃になるように260℃で60秒の条件で焼き付けを行い、硬化させて、試験板を作製し、これを試験に供した。評価結果を表3に示した。
【0039】
(実施例2〜5、比較例1〜8)
実施例1の同様の方法にて、試験板を作製し、試験に供した。実施例2〜5の評価結果を表3に示し、比較例1〜8の評価結果を表4に示した。
【0040】
<試験評価方法>
以下に、作製した塗装金属板の評価方法を説明する。
着色性
着色顔料による着色が容易であるかどうかを評価する。評価は、上塗塗料の製造例5に記載した方法で、酸化チタン及び弁柄の顔料をシアニンブルーに置き換えて、シアニンブルーのみで分散した青色塗料を作製した。この塗料を上塗塗料B−1〜B−7に外割で0.2質量%添加して、青色に着色するかどうかを目視で評価した。評価は、下記の基準で行った。
○:青色が容易に視認できる。
△:青色は容易ではないが、一応視認できる。
×:青色が視認できない。
【0041】
放熱性
放熱性の評価は、放射率の測定により行う。放射率は、一定量の熱をサンプルに照射した場合のサンプルの温度上昇を測定するもので、D&S AERD 熱放射率計(京都電子社製)により、測定した。放熱性の評価は、次の基準で行った。
○:熱放射率が0.85以上。
△:熱放射率が0.7〜0.85未満。
×:熱放射率が0.7未満。
【0042】
加工性
20℃の室温にて、幅5cmに切断した試験片について、試験片と同一の塗板を1枚内側に挟み、塗膜を外側にして180°密着曲げを行った。評価は10倍ルーぺで先端部を観察し、以下の基準で評価した。
○:クラックなし。
△:クラックが20%未満。
×:クラックが20%以上。
【0043】
【表1】

表中の*番号は、以下のものを示す。
*1:ミキレベリングMKコンク(共栄社化学(株)製)
【0044】

【表2】

表中の*番号は、以下のものを示す。
*1:ミキレベリングMKコンク(共栄社化学(株)製)
*2:アルミニウム粉(65質量%、東洋アルミニウム(株)製)
【0045】
【表3】

【0046】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有する下塗塗膜層と、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%を含有し、アルミニウム粉を含有しない上塗塗膜層とからなり、上塗塗膜層の塗膜厚が、11〜50μmであることを特徴とする放熱性に優れた塗膜。
【請求項2】
パール顔料が、薄板状雲母粉を二酸化チタンでコーティングした顔料である請求項1に記載の放熱性に優れた塗膜。
【請求項3】
上塗塗膜層が金属顔料及び金属粉を含有しない請求項1又は2に記載の放熱性に優れた塗膜。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の塗膜が金属板の表面に形成されていることを特徴とする塗装金属板。
【請求項5】
カーボンブラックを塗膜の全固形分に対して1〜20質量%含有する下塗塗料を塗装し、硬化して下塗塗膜層を形成し、次に、パール顔料を塗膜の全固形分に対して1〜40質量%を含有し、アルミニウム粉を含有しない上塗塗料を該下塗塗膜層の上に塗装し、硬化して塗膜厚が11〜50μmである上塗塗膜層を形成することを特徴とする放熱性に優れた塗膜の形成方法。

【公開番号】特開2008−119561(P2008−119561A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−303110(P2006−303110)
【出願日】平成18年11月8日(2006.11.8)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】