説明

放熱補助シート

【課題】 CPUなどの電子発熱体の表面又はこの電子発熱体に固定されたヒートシンクの表面に貼着するだけで冷却能力を向上させることが可能な放熱補助シートを提供する。
【解決手段】 薄膜状のシート基材11と、このシート基材11の一方の面に多数の金属線を寄せ集めて形成した放熱手段12とを有する構成とした。放熱手段12を形成する多数の金属線を介して電子発熱体が発した熱を空気中に発散させることが可能となるため、電子発熱体やヒートシンクの冷却能力を向上させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばCPUなどの電子発熱体の表面又はこの電子発熱体に固定されたヒートシンクの表面に貼着するだけで冷却能力を向上させることが可能な放熱補助シートに関する。
【背景技術】
【0002】
最近の電気・電子部品は多機能、高性能化とともに、高集積化、小型、薄型化の傾向にある。それに伴い、CPU、トランジスター、コンデンサーなどの電子発熱体が発生した熱が、それらの本体内に蓄積され、高温度レベルになるため、寿命が短くなり、また誤作動を生じるなど信頼性が低下する。そこで、従来は電子部品にヒートシンクを取り付けることにより、前記CPUなどが発生した熱を大気中に放出するようにしている。
【0003】
前記電子部品にヒートシンクを設けたものとしては、以下に示すような特許文献が存在している。
【特許文献1】特開2003−224237号公報
【特許文献2】特開2002−280780号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ヒートシンクだけの構成で冷却能力(放熱効率)を高めるのには限界があり、さらなる冷却能力の向上が望まれている。
【0005】
一方、電子発熱体を冷却する手段としては、例えば特許文献2に記載されているようなファンからの送風を電子発熱体やヒートシンクに当てて強制的に冷却する空冷方式が一般的である。
【0006】
しかし、それほど発熱量の多くない電子発熱体についてにまでファンを多用することは、機構的に大型・複雑化するとともに製造コストや消費電力の増大を招くという問題がある。
【0007】
本発明は上記従来の課題を解決するためのものであり、ファンなどの強制的な冷却手段を利用した場合はもちろんであるが、利用しない場合にも冷却能力を向上させることに寄与することが可能な放熱補助シートを提供すること目的としている。
【0008】
また本発明は簡単且つ安価な構成で冷却能力を向上させることができるようにした放熱補助シートを提供すること目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シート基材と、このシート基材の一方の面に設けられた放熱手段と、他方の面に設けられた粘着層とを有することを特徴とするものである。
【0010】
本発明の放熱補助シートは、例えば電子発熱体の表面やヒートシンクの表面に貼り付けることにより使用される。本発明では、放熱補助シートが貼り付けられた部分における空気との接触面積が増大され、結果として電子発熱体またはヒートシンクが有する実質的な放熱面積を拡張させることが可能となる。よって、電子発熱体またはヒートシンクの放熱効率(冷却能力)を向上させることに寄与することができる。
例えば、前記放熱手段が、多数の金属線を寄せ集めて形成されている。
【0011】
この場合において、前記金属線は、その一部が前記シート基材上に拘束されており、それ以外の端部が自由端であることが好ましい。
また前記放熱手段がスパイラル形状であるものとすることもできる。
【0012】
上記においては、前記放熱手段が、形状記憶合金または線膨張係数の異なる2以上の金属膜を積層することにより形成することができる。
【0013】
さらに、前記シート基材が、熱伝導率の高い金、銀、銅又はアルミニウムで形成されていることが好ましい。
【0014】
また前記シート基材の他方の面に粘着層が設けられているものとすることが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明では、極めて簡単な構成で冷却能力(放熱効率)の向上に寄与することが可能な放熱補助シートを提供することができる。
【0016】
また極めて簡単な方法、すなわち電子発熱体の表面やヒートシンクの表面などに貼着するだけで、前記電子発熱体が発した熱を空気中に放熱させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
図1は本発明の第1の実施の形態としての放熱補助シートを示す斜視図、図2は図1の放熱補助シートの一部を部分的に拡大して示す拡大断面図である。
【0018】
図1に示す放熱補助シート10Aは、例えば、金、銀、銅又はアルミニウムなど熱伝導率が高い金属製の薄膜状のシート基材11を母材として形成されている。
【0019】
前記シート基材11の上面(表面)には放熱手段12が設けられている。
前記放熱手段12は、極細状の金属線を所定の長さ寸法で切断するとともに、多数の金属線を束状にまとめた状態で前記シート基材11の表面に固定したものである。
【0020】
前記放熱手段12を構成する前記金属線は、例えば金線、銀線、銅線又はアルミニウム線など熱伝導率の高い金属繊維が好ましい。
【0021】
前記個々の放熱手段12は、金属線の一部である固定部12bが前記シート基材11の表面に対して接着剤など用いて拘束されており、前記固定部12b以外の部分は自由端である。図2に示すものでは、中央の位置に設けられた固定部12bから長手方向に延びる両腕部12a,12aが前記シート基材11の表面からに離れた自由状態にある。なお、前記金属線のその他の構成としては、長手方向の一端が固定部12bとして前記シート基材11上に拘束され、他端が自由端とするものであってもよい。
【0022】
そして、前記シート基材11の表面には、このような多数の金属線からなる放熱手段12が設けられている。この放熱補助シート10Aでは、前記シート基材11が有する実質的な放熱面積(空気との接触面積)が拡張されている。すなわち、前記放熱手段12を構成する金属線一本当たりの冷却能力は微力であるが、このような金属線を多数集めて前記放熱手段12を構成することにより、放熱補助シート10A全体としての放熱面積が増大され、大きな冷却能力を発揮できるようになっている。
【0023】
前記シート基材11の裏面には粘着層13が設けられている。前記粘着層13は例えば感圧接着剤が塗布されることにより形成されており、その表面は剥離紙(図示せず)で被覆されている。したがって、前記シート基材11の裏面から前記剥離紙を剥がすことにより、前記粘着層13を露出させることが可能である。このため、剥離後の前記シート基材11の粘着層13を、例えば電子発熱体の表面、または前記電子発熱体上に固定されたヒートシンクの表面などに押し付けることにより、前記放熱補助シート10Aを前記電子発熱体やヒートシンクの表面に自在に貼り付けることが可能とされている。
【0024】
そして、上記のような放熱補助シート10Aを前記電子発熱体やヒートシンクの表面に貼り付けると、前記電子発熱体が発した熱が、前記放熱補助シート10Aに設けられた前記放熱手段12のそれぞれの両腕部12a,12aを介して空気中に発散することができる。このため、前記放熱補助シート10Aは、前記電子発熱体やヒートシンクの冷却を高めるのに寄与することが可能となっている。
【0025】
そして、このような放熱補助シート10Aを前記電子発熱体やヒートシンクの表面に貼り付けると、前記放熱補助シート10Aを貼り付けない場合に比較して、前記電子発熱体自体又はヒートシンクの冷却能力(放熱効率)を向上させることが可能となる。
【0026】
なお、前記粘着層13は本発明において必須の構成ではない。すなわち、粘着層13を有しない放熱補助シート10Aの場合には、前記粘着層13に代わりに、例えばシリコングリスや放熱シート(熱伝導シート)など良熱伝導材を用いることにより、前記シート基材11の下面と前記電子発熱体の表面またはヒートシンクの表面との間を接着固定する構成であってもよい。
【0027】
図3は放熱手段として形状記憶合金を用いた場合を示す図2同様の拡大断面図である。
上記放熱手段12は形状記憶合金を用いて形成したものであってもよい。この場合、高温時においては図3に実線で示すように前記両腕部12a,12aが互いに接近し合う湾曲形状を記憶させ、常温時には点線で示すように前記両腕部12a,12aが互いに離れる直線形状となるように設定しておくことが好ましい。
【0028】
このように形成しておくと、常温時に直線形状の状態にある前記放熱手段12を、高温時には前記両腕部12a,12aがシート基材11から立ち上がって互いに接近する立上がり姿勢(実線の状態)に変形させることができる。図3に実線で示す立上がり姿勢では、シート基材11から前記放熱手段12の両腕部12a,12aが持ち上がり、この間の隙間を広げることができる。よって、空気との接触面積が増大され、または空気の通り道を確保すること、すなわち風通しを良くすることができる。このため、個々の放熱手段12(金属線)からの放熱量を高めることが可能となる。よって、放熱補助シート10A全体としての冷却能力(放熱効率)を高めることが可能となり、前記放熱補助シート10Aが貼着されたヒートシンク、さらには電子発熱体自体を効率良く冷却することが可能となる。
【0029】
なお、放熱手段12である金属線を構成する前記形状記憶合金としては、例えば公知のTi−Ni合金、Au−Cd合金、Ag−Cd合金、Cu−Au−Zn合金等を用いることができる。あるいは線膨張係数の異なる金属膜を積層して前記金属線を形成したものであってもよい。すなわち、線膨張係数の異なる金属膜からなる金属線を所定の長さ寸法に切断することにより、前記放熱手段12を形成するものであってもよい。この場合、前記線膨張係数は、下部側の金属線の方が上部側の金属線の方よりも大きくしたものが好ましく、このような構成にすると、高温状態に至ったときに下側の金属層の方が上部側の金属層よりも延びるため、上記図3同様に放熱手段12を前記立上がり姿勢にスムーズに変形させることが可能となる。
【0030】
図4は本発明の他の実施の形態としてスパイラル形状の放熱手段を示す放熱補助シートの要部を示す部分断面図であり、Aは常温時の状態、Bは高温時の状態を示している。
【0031】
この実施の形態に示す放熱補助シート10Bでは、前記シート基材11の表面に、スパイラル形状からなる放熱手段12が設けられている点で上記第1の実施の形態と異なっているが、その他の構成は上記同様である。
【0032】
図4Aに示す放熱補助シート10Bでは、シート基材11の表面に、例えば銅などの金属を微細加工することにより形成された多数のスパイラル15が設けられている。
【0033】
この実施の形態においても、個々のスパイラル15を介して空気中に熱を発散することができる。このため、この実施の形態においても、多数のスパイラル15からなる放熱手段12が、放熱補助シート10Bの実質的な放熱面積を拡大することになるため、放熱補助シート10B全体の冷却能力を高めることが可能である。
【0034】
なお、前記スパイラル15は、例えばエッチング法またはメッキ法により形成することが可能である。エッチング法では、薄い板状の銅膜からなる前記シート基材11の一部をスパイラル状にエッチングすることによりスパイラル形状を形成することができる。またメッキ法では、剥離層を有する基板の上にスパイラル状に形成されたマスクを設けた状態でメッキ槽に浸すことにより形成することができる。
【0035】
この実施の形態においても、前記螺旋状の変形部15bを、上記同様の形状記憶の性質を示すTi−Ni合金、Au−Cd合金、Ag−Cd合金、Cu−Au−Zn合金等を用いて構成してもよい。
【0036】
放熱補助シート10Bは、このような多数のスパイラル15からなる放熱手段12が前記シート基材11の表面に密集配置されることにより構成されており、このような放熱補助シート10Bは電子発熱体の表面やヒートシンクの表面に貼り付けられる。
【0037】
前記放熱補助シート10Bでは、常温時の形状として図4Aに示すようにスパイラル15がZ方向に縮んだ圧縮状態(平面的なスパイラルでも可)が記憶され、高温時の形状として図4Bに示すようにスパイラル15がZ1方向に立ち上がった膨張状態が記憶されている。したがって、電子発熱体が熱を発する前の常温近傍では、前記スパイラル15は図4Aに示す圧縮状態にある。そして、前記電子発熱体が動作させられ、自らが発する熱により電子発熱体の表面の温度が高くなると、このときの温度の上昇にしたがって前記スパイラル15が図示上方に立ち上がる膨張状態に変形させられる(図4B参照)。
【0038】
このため、温度上昇に応じて、前記シート基材11の表面とスパイラル15の各ターン数ごとの変形部15bとの間に形成される隙間寸法を大きくすることできる。
【0039】
よって、このようなスパイラル15を多数有する前記シート基材11では、全体として空気との接触面積を増大すること、または空気の通り道(流れ道)を確保すること、すなわち風通しを良くすることができる。このため、個々の放熱手段12(スパイラル15)からの放熱量が高まり、よって放熱補助シート10B全体としての冷却能力(放熱効率)を高めることが可能となる。よって、前記放熱補助シート10Bが貼着されたヒートシンク、さらには電子発熱体自体を効率良く冷却することが可能となる。
【0040】
以上のように、本発明では、極めて簡単な構造であるため、放熱補助シートの製造コストを安価なものとすることが可能である。
【0041】
また必ずしも強制的な冷却を行なうファンを用いる必要がなくなるため、この点で電子機器の小型化することができる。さらには放熱補助シートをヒートシンクに用いることにより、これまでよりも小型のヒートシンクでも冷却することが可能となるため、電子機器全体の小型化に寄与することができる。
【0042】
なお、上記実施の形態では、シート基材上に設けられる放熱手段12として、熱導電性の高い金属を線状に形成したもの、またはスパイラル状に形成したものとして説明したが、本発明はこれに限られるものではなく、どのような形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の第1の実施の形態としての放熱補助シートを示す斜視図、
【図2】図1の放熱補助シートの一部を部分的に拡大して示す拡大断面図、
【図3】放熱手段として形状記憶合金を用いた場合を示す図2同様の拡大断面図、
【図4】本発明の他の実施の形態としてスパイラル形状の放熱手段の要部を示す放熱補助シートの部分断面図であり、Aは常温時の状態、Bは高温時の状態、
【符号の説明】
【0044】
10A,10B 放熱補助シート
11 シート基材
12 放熱手段
12a 両腕部
12b 固定部
13 粘着層
15 スパイラル
15b 変形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート基材と、このシート基材の一方の面に設けられた放熱手段とを有することを特徴とする放熱補助シート。
【請求項2】
前記放熱手段が、多数の金属線を寄せ集めて形成されていることを特徴とする請求項1記載の放熱補助シート。
【請求項3】
前記金属線は、その一部が前記シート基材上に拘束されており、それ以外の端部が自由端であることを特徴とする請求項2記載の放熱補助シート。
【請求項4】
前記放熱手段がスパイラル形状であることを特徴とする請求項1記載の放熱補助シート。
【請求項5】
前記放熱手段が、形状記憶合金または線膨張係数の異なる2以上の金属膜を積層することにより形成されていることを特徴とする請求項1または4のいずれか記載の放熱補助シート。
【請求項6】
前記シート基材が、熱伝導率の高い金、銀、銅又はアルミニウムで形成されていることを特徴とする請求項1記載の放熱補助シート。
【請求項7】
前記シート基材の他方の面に粘着層が設けられていることを特徴とする請求項1、3または6のいずれか記載の放熱補助シート。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−324394(P2006−324394A)
【公開日】平成18年11月30日(2006.11.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−145251(P2005−145251)
【出願日】平成17年5月18日(2005.5.18)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】