説明

放電ランプ用給電装置及び放電ランプ点灯装置

【課題】照射処理を行なわず、かつ、放電ランプを点灯維持させる場合に、省電力化の観点から、限りなく点灯電力を低減させることが可能な放電ランプ用給電装置及び該放電ランプ用給電装置を使用した放電ランプ点灯装置を提供する。
【解決手段】定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプ8を点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプ8を点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、エコ点灯モードの放電ランプ温度信号に基づき、放電ランプ8の温度が低いと判断したときは、次のフル点灯モードへの切り換え時に、オーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部16〜19を有することを特徴とする放電ランプ用給電装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電ランプを定電力制御する放電ランプ用給電装置及び放電ランプ点灯装置に関する。特に、放電ランプを定格電力値で点灯させる定常点灯モードと、前記定格電力値の50%より小さい電力値で点灯させるエコ点灯モードと有する放電ランプ用給電装置及び放電ランプ点灯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、放電ランプから放射される紫外光を、処理物である接着剤、インキ、レジストなどに照射して、これらを硬化または乾燥させる用途が存在する(特許文献1)。このような紫外線照射処理では、実際に、照射処理を行なうときは放電ランプを所定の定格電力値で点灯させるが、照射処理を行なわない、いわゆる休止状態においては電力値を低減させて点灯させている。放電ランプは一旦消灯させると、再点灯させて放射を安定させるのに時間を要するからである。この場合、例えば、放射光を遮るシャッターを設けて、放電ランプの放射光が処理に影響しないよう工夫される。このような点灯モードは、一般に「待機点灯モード」と称される。つまり、放電ランプ用給電装置は、放電ランプを定常点灯させる点灯モードと待機点灯させる点灯モードを切り替える機能が必要になる(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭64−75065号公報
【特許文献2】特開昭62−54440号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、待機点灯モードは、定格電力値の70%、低くても50%以上で点灯させるのが通常であった。あまりに低い電力値に設定すると、放電ランプの点灯を維持させることが困難だからである。ところが、昨今では、省電力化の要請がますます強くなり、処理を行なわない場合に、無駄な電力を費やすことに対する問題意識が高まっている。
本発明の目的は、上記の問題点に鑑み、紫外線照射装置において、照射処理を行なわず、かつ、放電ランプを点灯維持させる場合に、省電力化の観点から、限りなく点灯電力を低減させることが可能な放電ランプ用給電装置及び該放電ランプ用給電装置を使用した放電ランプ点灯装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記の課題を解決するために、次のような手段を採用した。
第1の手段は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、前記エコ点灯モードの放電ランプ温度信号に基づき、前記放電ランプの温度が低いと判断したときは、次のフル点灯モードへの切り換え時に、オーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
第2の手段は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モートと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、前記エコ点灯モードにおける放電ランプの点灯経過時間信号に基づき、前記放電ランプの点灯経過時間が所定時間以上経過したと判断したときは、次のフル点灯モードへの切り換え時に、オーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
第3の手段は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、前記エコ点灯モードの放電ランプ温度信号に基づき、前記放電ランプの温度が低いと判断したときには、その時点において強制的にフル点灯モードに切り換えるとともに、放電ランプの放射光を遮光すべき信号を発信することを特徴とする放電ランプ用給電装置である。
第4の手段は、放電ランプと、この放電ランプに電力を供給する給電装置と、前記放電ランプの温度測定手段とを備える放電ランプ点灯装置において、前記給電装置は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる機能を有するとともに、前記給電装置は、前記温度測定手段からの信号に基づき、次のフル点灯モードへの切り換え時にオーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ点灯装置である。
第5の手段は、放電ランプと、この放電ランプに電力を供給する給電装置と、前記放電ランプのエコ点灯モードの点灯経過時間測定手段とを備える放電ランプ点灯装置において、前記給電装置は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる機能を有するとともに、前記給電装置は、前記点灯経過時間測定手段からの信号に基づき、次のフル点灯モードへの切り換え時にオーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ点灯装置である。
第6の手段は、放電ランプと、この放電ランプに電力を供給する給電装置と、前記放電ランプの温度測定手段と、前記放電ランプの放射光を遮光する手段とを備える放電ランプ点灯装置において、前記給電装置は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる機能を有するとともに、前記給電装置は、前記温度測定手段からの信号に基づき、エコ点灯モード状態から強制的にフル点灯モードに切り換えるとともに、前記遮光手段に遮光すべき信号を発信する制御部を有することを特徴とする放電ランプ点灯装置である。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る放電ランプ用給電装置及び放電ランプ点灯装置によれば、エコ点灯モードにおいて、定格電力値の50%より小さい電力値を基準電力値とした定電力制御が行ない、エコ点灯モードの時間が長くなり、放電ランプの温度が低下、または放電ランプのエコ点灯モードの点灯時間が所定時間以上経過した場合は、次のフル点灯モードへの切り換え時においてオーバシュートが生じるよう過入力を供給するか、または、遮光手段を使用して、強制的にフル点灯モードに切り換える。これにより、エコ点灯モード時において放電ランプの温度が低下したとしても、そのことによる、フル点灯モード時への影響を未然に防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】第1の実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
【図4】図1〜図3に示した放電ランプ8の構成の一例を示す図である。
【図5】第1〜第3の実施形態の放電ランプ用給電装置を適用した紫外線照射装置の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の第1の実施形態を図1を用いて説明する。
図1は、本実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
同図に示すように、この放電ランプ用給電装置は、商用電源1から供給された電流は、全波整流回路2とコンデンサC1から構成される整流平滑回路3により整流・平滑される。整流平滑回路3から得られる直流電圧は、スイッチング素子Tr1〜Tr4から構成されるフルブリッジ型スイッチング回路4に供給される。スイッチング回路4の各スイッチング素子Tr1〜Tr4のベースはPWM制御部5の出力に接続されており、PWM制御部5の出力によりスイッチング素子Tr1〜Tr4がオン/オフし、スイッチング回路4から高周波出力を発生する。スイッチング回路4の出力はトランスTにより昇圧されて、ダイオードD1、D2、インダクタンスL1、コンデンサC2から構成される整流平滑回路6により直流電圧に変換される。さらに、抵抗R1、R2、R3、さらに、起動器7を介して、放電ランプ8に供給される。
【0009】
抵抗R1、R2によりランプ電圧として検出されランプ電圧検出信号が電圧検知部9に入力し、抵抗R3によりランプ電流として検出されランプ電流検出信号が電流検知部10に入力する。電圧検知部9の出力信号と電流検知部10の出力信号は、電力測定部11に入力されてランプ電力が算出される。電力測定回路11で算出されたランプ電力信号は比較器12の一方の端子に入力する。また、フル点灯モード基準電力発生部13からの基準電力信号と、エコ点灯モード基準電力発生部14からの基準電力信号のうち、切り換え部15で選択された信号が比較器12の他方の端子に入力する。比較器12の出力はPWM制御部5に入力される。
【0010】
照射装置制御部16からは、放電ランプ8がフル点灯するか、またはエコ点灯するかの信号が切り換え部15に入力する。切り換え部15はこの信号を受けてフル点灯モードまたはエコ点灯モードのいずれかを選択する。同時に、照射装置制御部16からは遮光手段17にも信号が送信される。遮光手段17は、図5に示すように、シャッター駆動機構171とシャッター172より構成される。エコ点灯モードでは、放電ランプ8が照射物あるいは照射位置に対して光を照射しないように、シャッター駆動機構17が動作し、シャッター171が光路中に挿入される。一方、フル点灯モードではシャッター171を開いて照射処理が行なわれる。
【0011】
本発明では、エコ点灯モードは、定格電力値の50%より小さい電力値で放電ランプが点灯される。数値例をあげると、定格ランプ電力(フル点灯モード時のランプ電力)が250Wの場合、エコ点灯モードでは100Wのランプ電力が設定される。従って、従来の放電ランプは再点灯の観点から「待機点灯」という表現を用いていたのに対し、本発明では、省電力化の観点から、従来技術よりも低い電力にて放電ランプを点灯させるものであり、究極の省電力モードという点で「エコ点灯」と称する。
【0012】
以下に、図1に示した放電ランプ用給電装置の動作について説明する。
まず、照射装置制御部16からの指令により切り換え部15がフル点灯モード基準電力発生部13側に切り換えられて、フル点灯モードが選択された場合、電力測定部11で算出されたランプ電力信号に基づき、ランプ電力が一定値になるように、いわゆる定電力制御が行なわれる。具体的には、電力測定部11の出力信号とフル点灯モード基準電力発生部13の出力信号が、比較器12にて比較され、その差異に応じて、PWM制御部5は各スイッチング素子Tr1〜Tr4のオン時間とオフ時間の比率(デューティ比)を制御する。例えば、ランプ電力信号がフル点灯モード基準電力発生部13の出力信号より大きい場合は、PWM制御部5は、ランプ電力が設定値よりも高いと判断して、ランプ電力が小さくなるように、すなわち、各スイッチング素子Tr1〜Tr4のオフ時間がオン時間に比べて長くなるよう調整する。このようにして、放電ランプ8のランプ電力は、常に、基準電力値に一致するよう制御される。
【0013】
また、照射装置制御部16からの指令により切り換え部15がエコ点灯モード基準電力発生部14側に切り換えられて、エコ点灯モードが選択された場合も、上記定電力制御の動作は同様である。すなわち、エコ点灯モード基準電力発生部14の基準電力値がエコ点灯モード用の基準電力値として上記と同様の制御が行なわれる。
【0014】
一方、例えば、放電ランプ8に装着されたサーミスタなどの温度センサーからなる温度測定手段18の出力は、温度制御部19に入力するように構成され、エコ点灯モードにおける放電ランプ8の温度が測定される。本発明は、究極のエコ点灯を目指すものであるので、エコ点灯モードでは定格電力値の50%より小さい値(前述の数値例では40%)が設定される。しかし、エコ点灯モードが長時間継続されると、放電ランプ8の温度は低下してしまい、フル点灯モードに切り換えても直ちに所望の光出力が得られなくなる。
【0015】
そのため、放電ランプ8が所定の基準温度を下回ったときは、温度制御部19はフル点灯モード基準電力発生部13に信号を送り、フル点灯モード基準電力発生部13からフル点灯モードの基準電力値を、次のフル点灯モードへの切り換え初期だけ、定格電力よりも高くなるように設定変更する。例えば、上述の例では、フル点灯モードの基準電力値は定格電力である250Wであるが、次のフル点灯モードへの切り換え初期のみ基準電力値を300Wに設定する。これにより、エコ点灯モードからフル点灯モードに切り換えたときに、通常よりも大きなオーバシュートを発生し、いわば放電ランプ8に対しては過入力の状態を形成することができる。この過入力により、ランプの温度が低下しても、フル点灯モードへの切り換え直後から所望の光出力を得ることができる。より具体的には、放電ランプ8の温度が低下した状態で、フル点灯モードに切り換えても、整流平滑回路6からの出力電圧の立ち上がり特性が緩慢に上昇し、即時に、所定の立ち上がり特性のよい出力電圧が得られない。そのため、放電ランプ8の温度を測定し、放電ランプ8の温度が低下している場合は、整流平滑回路6の出力電圧の立ち上がり初期において、通常より大きなオーバシュートした電圧を印加する。
【0016】
なお、フル点灯モードへの切り換え初期に設定される基準電力値は、放電ランプの温度低下に従い異なる値に設定させてもよい。例えば、放電ランプ8が低いと判断する設定温度がT1℃の場合、温度測定手段18がこのT1℃を検知したら、フル点灯モードの基準電力値を300Wに設定し、さらに、放電ランプ8の温度がT2℃まで低下したら、フル点灯モードの基準電力値をさらに320Wに変更する。このような基準電力値は、切り換え初期の一時的なものであって、切り換え初期に放電ランプ8に対して過入力を供給するためのものであるから、その後は、所定の基準電力値(250W)に戻すようにする。
【0017】
次に、本発明の第2の実施形態を図2を用いて説明する。
図2は、本実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
本実施形態の放電ランプ用給電装置は、図1に示した温度測定手段18に代えて、時間測定手段20を用いて、次のフル点灯モードへの切り換え初期の初期の過入力の制御を行う点で相違する。なお、その他の構成は、図1に示した同符号の構成に対応し、また、基本的動作も同じであるので、詳細な説明は省略する。
本実施形態の放電ランプ用給電装置では、時間測定手段20がエコ点灯モードの時間を測定し、放電ランプ8の所定の基準時間を経過したとき、時間制御部21はフル点灯モード基準電力発生部13に信号を送り、フル点灯モード基準電力発生部13は、フル点灯モードの基準電力値を、次のフル点灯モードへの切り換え初期だけ高くなるように設定変更する。例えば、上述の例では、フル点灯モードの基準電力値は250Wであるが、切り換え初期のみ基準電力値を300Wに設定する。これにより、エコ点灯モードからフル点灯モードに切り換えたときに、通常よりも大きなオーバシュートした電圧が印加され、いわば放電ランプ8に対しては過入力の状態を形成することができる。この過入力により、切り換え直後から所望の光出力を得ることができる。
【0018】
本実施形態において、時間測定手段20を用いる理由は、エコ点灯モードの継続時間と放電ランプの温度低下の相関関係が予め分っているので、エコ点灯時間を測定することによって、放電ランプ8の温度を推定することができるからである。更に、放電ランプ8の温度が、フル点灯モードへの移行が困難なレベルまで低下した場合は、すなわち、エコ点灯モードの継続時間があまりにも長い場合は、放電ランプ8を強制的に消灯にさせるようにしてもよい。エコ点灯モードの基準電力値は、電力値だけでなく設定時間も考慮される。前述の例では、100Wの基準電力値を設定する時間である。
【0019】
次に、本発明の第3の実施形態を図3を用いて説明する。
図3は、本実施形態に係る放電ランプ用給電装置の構成を示す図である。
本実施形態の放電ランプ用給電装置は、図1に示した温度制御部19の制御信号をフル点灯モード基準電力発生部13に入力させているのに対して、温度制御部19の制御信号を照射装置制御部16に入力させてフル点灯モードの放電ランプ8の温度を上昇させようとするものである。なお、その他の構成は、図1に示した同符号の構成に対応し、また、基本的動作も同じであるので、詳細な説明は省略する。
本実施形態の放電ランプ用給電装置は、エコ点灯モードにおいて、温度測定手段18によって測定された温度が温度制御部19において、放電ランプ8の温度が低いと判断した場合は、照射装置制御部16は、遮光手段17におけるシャッター172を閉じた状態のまま、切り換え部15を切り換えて、エコ点灯モードから強制的にフル点灯モードに移行させる。フル点灯モードに移行させることによって、放電ランプ8の温度を上昇させるためである。この状態で、照射装置制御部16からフル点灯モードへの切り替えが指示された場合は、照射装置制御部16は、遮光手段17の遮光駆動機構171に信号を送りシャッター172を開く。一方、照射装置制御部16からフル点灯モードへの切り替えが指示されることなく、すなわち、照射処理の休止状態が継続している場合は、照射装置制御部16は、温度制御部19から放電ランプ8が基準温度を超えたことを確認した場合は、再び、切り換え部15を切り換えて、エコ点灯モードに戻す。省電力化のためである。
【0020】
本実施形態の放電ランプ用給電装置は、第1及び第2の放電ランプ用給電装置に比べて、省電力化の観点で劣るかもしれないが、第1及び第2の放電ランプ用給電装置のように、過入力点灯をさせるものではないため放電ランプ8にダメージを与えることがない点で優れている。なお、第1の実施形態の放電ランプ用給電装置と第3の放電ランプ用給電装置とを併用することも可能である。すなわち、エコ点灯モード時において放電ランプ8が基準温度を超えて低下した場合に、まず、次のフル点灯モードにおける立ち上がり時に過入力点灯することを試みる。しかし、過入力点灯だけでは所望の光出力が得られないほど放電ランプ8がさらに温度低下した場合は、遮光手段17も働かせて、直ちにフル点灯モードに切り換えるものである。
【0021】
図4は、図1〜図3に示した放電ランプ8の構成の一例を示す図である。
同図に示すように、放電ランプ8は全体が石英ガラス製の発光部81と封止部82から構成される。発光部81には陰極83Aと陽極83Bが対向配置しており、それぞれ電極軸84A、84Bに保持される。電極軸84A、84Bの根元は封止部82内にそれぞれ埋設される。なお、電極の形態はこれに限定されるものではなく、例えば、同一径のまま1本棒のように延びるものであってもよい。陰極83Aはタングステン(W)からなり、その先端にバリウム(Ba)、トリウム(Th)、ランタン(La)などのエミッタ物質が含まれる。一方、陽極83Bもタングステンから構成される。陽極83Bの電極軸84Bにはゲータとしてタンタルワイヤ85が巻きつけられている。陰極83Aの陽極側先端は電子放射の容易性から円錐形状に形成されているが、陽極83Bの陰極側先端は平面形状に形成されている。
【0022】
発光部81には、発光物質としてキセノンと水銀が封入されている、封入量は、例えば、キセノンガスが静圧で0.1MPa〜2MPaの範囲から選択された量が封入されており、水銀は3〜30mg/cmの範囲から選択された量が封入されている。放電ランプ8に給電装置から電力が供給されると、波長200nm〜650nmの光を放射する。放電ランプ8について、数値例を示すと、発光部81の最大内径は15mm、発光部81の肉厚は2.5mm、発光部81の全長(陰極や陽極の伸びる方向)は30.6mm、陰極83Aの本体径は5mm、陽極83Bの本体径は5mm、電極間距離は2mmである。電極83A、83B、特に陰極83Aは点灯時間の経過とともに先端が磨耗する。構成物質であるタングステンが蒸発するからである。特に、本件の場合は、フル点灯モードとエコ点灯モードでランプ電力値を激しく変化させながら点灯することから電極磨耗は通常のランプよりも激しい。
【0023】
図5は、第1〜第3の実施形態の放電ランプ用給電装置を適用した紫外線照射装置の構成の一例を示す図である。なお、同図において、温度測定手段18は、第2の実施形態の放電ランプ用給電装置において使用されていないので、省略される。
同図に示すように、この紫外線照射装置は、ケーシング22の内部に、光学系23と、光学系23を構成する放電ランプ8を制御する放電ランプ用給電装置本体24が設けられている。光学系23は、ショートアーク型の放電ランプ8と、放電ランプ8から放射される光を反射する楕円反射鏡25を備えている。放電ランプ8のアーク中心が楕円反射鏡25の第1焦点F1に一致するように、放電ランプ8と楕円反射鏡25がケーシング21に固定されている。放電ランプ8の放射光は、楕円反射鏡25によって、楕円反射鏡25の第2焦点F2に集光される。楕円反射鏡25の第2焦点F2には導光ファイバ26を配置し、導光ファイバ26によって、放電ランプ8の放射光を微小域に照射することができる。楕円反射鏡25と導光ファイバ26の間には、図3に示したように、シャッター172が配置される。シャッター172はシャッター駆動機構171により開閉制御されるものであり、「閉じる」の信号が入力されたときは、シャッター172は図示の状態となり、放電ランプ8の放射光は導光ファイバ26には導かれない。一方、シャッター駆動機構2171により「開く」の信号が入力されたときには、シャッター172は矢印aの方向に退避し、放電ランプ8の放射光が導光ファイバ26に導かれる。図1〜図3において説明したように、シャッター駆動機構171は放電ランプ用給電装置本体24と連携しており、放電ランプ8の点灯モードとの関係で開閉制御される。放電ランプ8に装着されたサーミスタなどの温度センサーからなる温度測定手段18の出力は放電ランプ用給電装置本体24に送信される。導光ファイバ26の出射端から出射した放射光は、接着剤、塗料、インク、レジストなどに照射され、これらを硬化あるいは乾燥させることに利用される。
【符号の説明】
【0024】
1 商用電源
2 全波整流回路
3 整流平滑回路
4 スイッチング回路
5 PWM制御部
6 整流平滑回路
7 起動器
8 放電ランプ
81 発光部
82 封止部
83A 陰極
83B 陽極
84A、84B 電極軸
85 タンタルワイヤ
9 電圧検知部
10 電流検知部
11 電力測定部
12 比較器
13 フル点灯モード基準電力発生部
14 エコ点灯モード基準電力発生部
15 切り換え部
16 照射装置制御部
17 遮光手段
171 シャッター駆動機構
172 シャッター
18 温度測定手段
19 温度制御部
20 時間測定手段
21 時間制御部
22 ケーシング
23 光学系
24 放電ランプ用給電装置本体
25 楕円反射鏡
26 導光ファイバ
C1 コンデンサ
Tr1〜Tr4 スイッチング素子
T トランス
D1、D2 ダイオード
L1 インダクタンス
C2 コンデンサ
R1、R2、R3 抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モートと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、
前記エコ点灯モードの放電ランプ温度信号に基づき、前記放電ランプの温度が低いと判断したときは、次のフル点灯モードへの切り換え時に、オーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ用給電装置。
【請求項2】
定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モートと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、
前記エコ点灯モードにおける放電ランプの点灯経過時間信号に基づき、前記放電ランプの点灯経過時間が所定時間以上経過したと判断したときは、次のフル点灯モードへの切り換え時に、オーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ用給電装置。
【請求項3】
定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モートと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる放電ランプ用給電装置において、
前記エコ点灯モードの放電ランプ温度信号に基づき、前記放電ランプの温度が低いと判断したときには、その時点において強制的にフル点灯モードに切り換えるとともに、放電ランプの放射光を遮光すべき信号を発信することを特徴とする放電ランプ用給電装置。
【請求項4】
放電ランプと、この放電ランプに電力を供給する給電装置と、前記放電ランプの温度測定手段とを備える放電ランプ点灯装置において、
前記給電装置は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる機能を有するとともに、
前記給電装置は、前記温度測定手段からの信号に基づき、次のフル点灯モードへの切り換え時にオーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項5】
放電ランプと、この放電ランプに電力を供給する給電装置と、前記放電ランプのエコ点灯モードの点灯経過時間測定手段とを備える放電ランプ点灯装置において、
前記給電装置は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる機能を有するとともに、
前記給電装置は、前記点灯経過時間測定手段からの信号に基づき、次のフル点灯モードへの切り換え時にオーバシュートを発生させるよう過入力を供給する制御部を有することを特徴とする放電ランプ点灯装置。
【請求項6】
放電ランプと、この放電ランプに電力を供給する給電装置と、前記放電ランプの温度測定手段と、前記放電ランプの放射光を遮光する手段とを備える放電ランプ点灯装置において、
前記給電装置は、定格電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるフル点灯モードと、定格電力値の50%より小さい電力値に維持されるよう定電力制御によって放電ランプを点灯させるエコ点灯モードを切り換え可能に駆動できる機能を有するとともに、
前記給電装置は、前記温度測定手段からの信号に基づき、エコ点灯モード状態から強制的にフル点灯モードに切り換えるとともに、前記遮光手段に遮光すべき信号を発信する制御部を有することを特徴とする放電ランプ点灯装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−154857(P2011−154857A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−15076(P2010−15076)
【出願日】平成22年1月27日(2010.1.27)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】