説明

放電灯点灯回路

【課題】点灯補助回路のキャパシタの影響で、再点弧しにくくなる。
【解決手段】駆動電圧生成部12は、駆動対象の放電灯4に交流の駆動電圧VLを供給する。点灯補助回路10は、放電灯4の一端P1側に設けられる。点灯補助キャパシタC2、点灯補助抵抗R2およびスイッチSW3は、放電灯4の一端P1と固定電圧端子GNDの間に直列に設けられる。制御回路30は、スイッチSW3の導通状態を制御する。スイッチSW3は、放電灯4の点灯前においてオン状態に、点灯後にオフされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両用灯具(前照灯)として、従来のフィラメントを有するハロゲンランプに代えて、メタルハライドランプ(以下、放電灯と称する)が利用されている。放電灯は、ハロゲンランプに比べて発光効率、長寿命が得られる反面、駆動電圧として数十〜数百Vが必要であるため、12V(もしくは24V)の車載バッテリでは直接駆動することができず、放電灯点灯回路(バラストとも称される)が必要となる。
【0003】
放電灯を点灯する方式は、直流駆動と高周波駆動に分類されるが、直流駆動すると放電のアークが非対称となり、発光プロファイルが不均一となるため、車両用灯具としての利用には適さず、車両用灯具では交流駆動するのが一般的である。放電灯を10kHz以上の高周波で交流駆動すると、放電管内の気流と点灯周波数が共振する現象(音響共鳴などと呼ばれる)が発生し、放電アークが不安定になるという問題が発生する。そこで現在では、直流駆動と高周波交流駆動の双方のデメリットを解消するために、10kHz以下の低周波で駆動する方式(低周波駆動方式)が主流となっている。
【0004】
放電灯点灯回路は、バッテリ電圧を昇圧するDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータの出力電圧を交流変換するHブリッジ回路などのスイッチング回路と、点灯補助回路およびスタータ回路を備えている(たとえば特許文献1参照)。
【0005】
特許文献1の図1に開示されるように、点灯補助回路(テイクオーバー回路とも称される)は、DC/DCコンバータの出力平滑キャパシタと並列に設けられており、直列に接続された点灯補助キャパシタと点灯補助抵抗から構成される。放電灯の点灯開始時においては以下のシーケンスが実行される。
【0006】
1. 電源投入
2. ブレイクダウン
DC/DCコンバータを動作させ、バッテリ電圧を400V程度まで昇圧する。スタータ回路により400Vの電圧をさらに20kV以上に昇圧して、高電圧パルスを発生し、放電灯をブレイクダウンさせて、放電を開始する。
3. アーク成長
ブレイクダウン直後、予めDC/DCコンバータの出力平滑キャパシタおよび点灯補助回路のキャパシタに蓄えられたエネルギーを用いて放電灯に数Aの過電流を供給し、立ち消えを防止しつつグロー放電からアーク放電へと移行させる。
4. ランナップ
アーク放電が開始すると、放電灯の光出力が上昇していく。光出力の立ち上がりは規格で定められており、規格にマッチした光出力(電力)が得られるように、放電灯点灯回路は、放電灯に流れるランプ電流および放電灯に印加されるランプ電圧をモニタし、フィードバックによって、DC/DCコンバータのスイッチング素子のオン・オフのデューティ比を調節する。ランナップ期間において放電灯には、一時的に定格電力より高い過電力が供給される。
5. 定常点灯
その後、放電灯に供給される電力が定格値に安定化され、放電灯の光出力が安定化する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−329777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
点灯補助回路の点灯補助キャパシタはアーク成長時において、放電灯に供給すべきエネルギー(電荷)を蓄えるものであるから、その容量値は大きければ大きいほど、放電灯は点灯しやすくなる。その反面、点灯補助回路の容量値が大きくなると、定常点灯時において、以下の問題をもたらす。
【0009】
すなわち放電灯を交流駆動する際、ランプ電流の向き(極性)は点灯周波数で反転するところ、極性の反転タイミングにおいて放電灯は一瞬消灯する。極性の切り替えのタイミングでは、放電灯と直列に設けられた高圧コイル(スタータ回路の一部)に生ずる逆起電力によって、放電灯に過渡電圧が印加され、極性切り替え後に安定した電流を流すようにしている(以下、再点弧と称する)。
【0010】
しかしながら、点灯補助キャパシタの容量値が大きくなると、再点灯時に高圧コイルが発生した逆起電力が点灯補助キャパシタに吸収されてしまうため、再点弧しにくくなり、放電灯が立ち消えを起こす慮がある。立ち消えを防止するために点灯補助キャパシタの容量値を小さくすると、アーク放電への移行に支障を来すおそれがある。同様に、点灯補助キャパシタの容量値が大きい場合の他、点灯補助抵抗の抵抗値が小さい場合にもかかる問題は発生しうる。さらに上述の問題は、車両用の放電灯点灯回路のみでなく、その他の放電灯点灯回路においても発生しうる。
【0011】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的は、再点弧時の立ち消えを防止可能な放電灯点灯回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のある態様は、放電灯点灯回路に関する。この放電灯点灯回路は、駆動対象の放電灯に交流の駆動電圧を供給する駆動電圧生成部と、放電灯の一端側に設けられた点灯補助回路と、を備える。点灯補助回路は、放電灯の一端と固定電圧端子の間に直列に設けられたキャパシタおよびスイッチ素子および抵抗要素と、スイッチ素子の導通状態を制御する制御部と、を含む。
【0013】
この態様によると、放電灯の点灯前においてはスイッチ素子をオンすることにより、点灯補助回路が有効に機能し、グロー放電からアーク放電への成長を促すことができ、点灯後においては、スイッチ素子をオフすることにより、点灯補助回路のキャパシタおよび抵抗が放電灯の駆動経路から切り離されるため、再点弧時の立ち消えを防止することができる。
「抵抗要素」とは、明示的に設けられた抵抗素子のほか、配線の寄生抵抗成分やスイッチ素子のオン抵抗、キャパシタのシリーズ寄生抵抗などを含む。
【0014】
点灯補助回路は、スイッチ素子と並列に、そのアノードが、前記一端と前記固定電圧端子のうち電位の低い端子側となる向きで配置されたダイオードをさらに含んでもよい。
この態様によると、アーク成長期間における点灯補助回路から放電灯に対する大電流は、ダイオードを介して供給することができるため、最大定格電流の小さなスイッチ素子を用いることができ、低コスト化、小面積化に資することとなる。
【0015】
制御部は、放電灯に流れるランプ電流が所定のしきい値電流より低いときスイッチ素子をオンし、ランプ電流がしきい値電流より高いときスイッチ素子をオフしてもよい。
この態様によれば、ランプ電流を監視することにより、放電灯の点灯の有無を検出し、スイッチ素子を適切に制御できる。
【0016】
制御部は、放電灯の一端に印加されるランプ電圧が所定のしきい値電圧より高いときスイッチ素子をオンし、ランプ電圧がしきい値電圧より低いときスイッチ素子をオフしてもよい。
この態様によれば、ランプ電圧を監視することにより、放電灯の点灯の有無を検出し、スイッチ素子を適切に制御できる。
【0017】
制御部は、放電灯の駆動開始から所定時間の経過前にスイッチ素子をオンし、所定時間の経過後にスイッチ素子をオフしてもよい。
放電灯の光出力の時間波形は規格で定められているため、時間を監視することにより、放電灯の点灯の有無を推定し、スイッチ素子を適切に制御できる。
【0018】
ある態様において、駆動電圧生成部は、放電灯の一端に第1駆動電圧を供給する第1DC/DCコンバータと、放電灯の他端に第2駆動電圧を供給する第2DC/DCコンバータと、放電灯の一端側に設けられ、オン状態において、放電灯の一端と固定電圧端子の間を電気的に導通させる第1スイッチと、放電灯の他端側に設けられ、オン状態において、放電灯の他端と固定電圧端子の間を電気的に導通させる第2スイッチと、を含んでもよい。第1DC/DCコンバータと第2DC/DCコンバータは、所定の周期で相補的にアクティブ状態、非アクティブ状態を繰り返し、第1スイッチは第2DC/DCコンバータがアクティブのときオン、第2スイッチは第1DC/DCコンバータがアクティブのときオンしてもよい。
この態様では、第1DC/DCコンバータと第2コンバータそれぞれの出力電圧は、所定の点灯周期で相補的にハイレベル(昇圧電圧)と接地電圧(0V)を繰り返す。したがって点灯補助回路のキャパシタが常時接続されていると、DC/DCコンバータの出力平滑キャパシタに加えて点灯補助回路のキャパシタが、周期ごとに充放電を繰り返すため、点灯補助回路のキャパシタの劣化が早められ、あるいはDC/DCコンバータの出力電圧の遷移に遅延が生じ、放電灯が立ち消えし易くなる。かかる回路トポロジーにおいて、点灯補助回路にスイッチ素子を設けることにより、キャパシタの劣化を抑制し、あるいは立ち消えを防止することができる。また大容量である点灯補助回路のキャパシタが点灯周期ごとに大電流で充放電を繰り返すことから、充放電経路の抵抗成分により大きな電力損失(発熱)が生じるところ、この態様によれば、電力損失を低減できる。
【0019】
ある態様において駆動電圧生成部は、放電灯の一端に第1駆動電圧を供給する第1DC/DCコンバータと、放電灯の他端に第2駆動電圧を供給する第2DC/DCコンバータと、放電灯の一端側に設けられ、オン状態において放電灯の一端と固定電圧端子の間を電気的に導通させる第1スイッチと、放電灯の他端側に設けられ、オン状態において放電灯の他端と固定電圧端子の間を電気的に導通させる第2スイッチと、第1スイッチがオンのとき放電灯に流れる電流の経路上と、第2スイッチがオンのとき放電灯に流れる電流の経路上と、に設けられた少なくともひとつの電流検出抵抗と、を含んでもよい。第1DC/DCコンバータと第2DC/DCコンバータは、所定の周波数で相補的にアクティブ状態、非アクティブ状態を繰り返し、第1スイッチは第2DC/DCコンバータがアクティブのときオン、第2スイッチは第1DC/DCコンバータがアクティブのときオンするとともに、第1DC/DCコンバータおよび第2DC/DCコンバータは、少なくともひとつの電流検出抵抗の電圧降下にもとづいて制御されてもよい。少なくともひとつの電流検出抵抗はいずれも、第1スイッチおよびダイオードが形成するループに含まれない箇所に配置される。
【0020】
この態様によれば、第2DC/DCコンバータの地絡時に、電流検出抵抗に対して、点灯補助キャパシタからの電流が流れないため、第2DC/DCコンバータの地絡を確実に検出できる。
【0021】
第1スイッチの固定電圧端子側の端子と第2スイッチの固定電圧端子側の端子は共通に接続されてもよい。電流検出抵抗は、第1スイッチと第2スイッチの共通に接続された端子と固定電圧端子の間に設けられてもよい。ダイオードのアノードは、第1スイッチと電流検出抵抗の接続経路に接続されてもよい。
【0022】
電流検出抵抗は、第1スイッチの固定電圧端子側の端子と、第2スイッチの固定電圧端子側の端子との間に設けられてもよい。ダイオードのアノードは、第1スイッチと電流検出抵抗の接続経路に接続されてもよい。
【0023】
少なくともひとつの電流検出抵抗は、2つであってもよい。第1の電流検出抵抗は、第1スイッチと前記固定電圧端子の間に設けられてもよい。第2の電流検出抵抗は、第2スイッチと固定電圧端子の間に設けられてもよい。ダイオードのアノードは、第1スイッチと第1の電流検出抵抗の接続経路に接続されてもよい。
【発明の効果】
【0024】
本発明のある態様によれば、放電灯の再点弧時の立ち消えを防止でき、加えて、または、電力損失を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】第1の実施の形態に係る車両用灯具の構成を示す回路図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、放電灯点灯回路の動作状態を示すタイムチャートである。
【図3】図3(a)、(b)は、変形例に係る点灯補助回路の構成を示す回路図である。
【図4】第1の変形例に係る放電灯点灯回路の構成を示す回路図である。
【図5】図5(a)、(b)は、第2、第3の変形例に係る放電灯点灯回路の構成の一部を示す回路図である。
【図6】第2の実施の形態に係る車両用灯具の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適な実施の形態をもとに図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、電気的な接続状態に影響を及ぼさない他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
(第1の実施の形態)
図1は、第1の実施の形態に係る車両用灯具2の構成を示す回路図である。車両用灯具2は、メタルハライドランプである放電灯4と、それを駆動する放電灯点灯回路100、および車載バッテリ(以下、単にバッテリと称する)6、電源スイッチ8を備える。
【0029】
バッテリ6は、12V(もしくは24V)の直流電圧Vbatを発生する。電源スイッチ8は放電灯4の点灯のオン、オフを制御するために設けられたリレースイッチであり、バッテリ6と直列に設けられる。
【0030】
放電灯点灯回路100は、平滑化されたバッテリ電圧Vbatを昇圧し、交流変換して放電灯4へと供給する。以下、放電灯点灯回路100の詳細な構成を説明する。
【0031】
放電灯点灯回路100は、第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2、点灯補助回路10、スタータ回路20、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2、電流検出抵抗R1、制御回路30、入力キャパシタC1を備える。
【0032】
入力キャパシタC1は、バッテリ6と並列に設けられ、バッテリ電圧Vbatを平滑化する。より具体的には、入力キャパシタC1は第1トランスT1、第2トランスT2の近傍に設けられており、第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2のスイッチング動作に対する電圧平滑化の機能を果たす。
【0033】
制御回路30は、放電灯点灯回路100全体を制御する機能IC(Integrated Circuit)であり、放電灯点灯回路100の動作シーケンスを制御するとともに、放電灯4に供給する電力を調節する。制御回路30は、以下のシーケンスを実行することにより放電灯4を点灯させ、その光出力を安定化させる。
1. 電源投入
2. ブレイクダウン
3. アーク成長
4. ランナップ
5. 定常点灯
各シーケンスの詳細は後述する。
【0034】
第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2、第1スイッチSW1、第2スイッチSW2および制御回路30は、放電灯4に対する駆動電圧(ランプ電圧ともいう)VLを生成する駆動電圧生成部12を形成する。駆動電圧生成部12は、上述のランナップ期間および定常点灯期間において、放電灯4の両端間に第1周波数(点灯周波数)f1の交流の駆動電圧VLを供給する。第1周波数f1は10kHz以下、具体的には250Hz〜750Hz程度に設定される。点灯周波数f1の逆数を点灯周期T1(=1/f1)という。
【0035】
第1DC/DCコンバータCONV1は、絶縁型のスイッチングレギュレータであり、第1スイッチング素子M1、第1トランスT1、第1整流ダイオードD1、第1出力キャパシタCo1を含む。第1DC/DCコンバータCONV1のトポロジーは一般的なものであるため簡潔に説明する。
【0036】
第1トランスT1の1次コイルL1と第1スイッチング素子M1は、入力キャパシタC1と並列に、第1DC/DCコンバータCONV1の入力端子Pinと接地端子(GND)間に直列に設けられている。たとえば第1スイッチング素子M1はNチャンネルMOSFETで構成される。第1トランスT1の2次コイルL2の一端は接地されており、その他端は第1整流ダイオードD1のアノードと接続される。第1出力キャパシタCo1は第1整流ダイオードD1のカソードと接地端子間に設けられる。
【0037】
第1スイッチング素子M1の制御端子(ゲート)には、上述の第1周波数f1より高い第2周波数f2の第1制御パルス信号S1が印加される。たとえば第2周波数f2は400kHzである。第1スイッチング素子M1は、第1制御パルス信号S1がハイレベルのときオン、ローレベルのときオフする。後述するように、制御回路30は、放電灯4の電気的状態にもとづいてフィードバックによって第1制御パルス信号S1のハイレベルとローレベルのデューティ比を調節する。
【0038】
第1DC/DCコンバータCONV1は、アクティブ状態と非アクティブ状態が切り換え可能であり、アクティブ状態において、放電灯4の一端P1に第1駆動電圧(以下、出力電圧とも称する)Vo1を供給する。
【0039】
第2DC/DCコンバータCONV2は、第1DC/DCコンバータCONV1と同様の回路トポロジーを有している。すなわち、第1整流ダイオードD1と第2整流ダイオードD2、第1出力キャパシタCo1と第2出力キャパシタCo2、第1トランスT1と第2トランスT2、第1スイッチング素子M1と第2スイッチング素子M2は対応している。第2スイッチング素子M2のオン、オフは、放電灯4の電気的状態にもとづいたフィードバックによって、制御回路30が生成する第2制御パルス信号S2によって制御される。
【0040】
第2DC/DCコンバータCONV2も、アクティブ状態と非アクティブ状態が切り換え可能であり、アクティブ状態において、放電灯4の他端P2に第2駆動電圧(以下、第2出力電圧とも称する)Vo2を供給する。
【0041】
第1スイッチSW1は、放電灯4の一端P1側に設けられ、オン状態において、放電灯4の一端P1と固定電圧端子(接地端子)の間を電気的に導通させる。第2スイッチSW2は、放電灯4の他端P2側に設けられ、オン状態において、放電灯4の他端P2と接地端子の間を電気的に導通させる。第1スイッチSW1および第2スイッチSW2にはIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)もしくはMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)が好適であるが、その他の代替デバイスを用いても構わない。第1スイッチSW1、第2スイッチSW2それぞれのオン、オフ状態は、制御回路30からの制御信号S3、S4に応じて制御される。
【0042】
第1DC/DCコンバータCONV1と第2DC/DCコンバータCONV2は、所定の周期T1(つまり第1周波数f1)で相補的にアクティブ状態と非アクティブ状態を繰り返す。つまり第1DC/DCコンバータCONV1がアクティブな期間と、第2DC/DCコンバータCONV2がアクティブな期間はそれぞれ、点灯周期T1の半周期となる。以下、第1DC/DCコンバータCONV1がアクティブな状態を第1状態φ1、第2DC/DCコンバータCONV2がアクティブな状態を第2状態φ2と称する。第1スイッチSW1は第2DC/DCコンバータCONV2がアクティブのとき、つまり第2状態φ2においてオンし、第2スイッチSW2は第1DC/DCコンバータCONV1がアクティブのとき、つまり第1状態φ1においてオンする。
【0043】
第1状態φ1においては、放電灯4の一端P1に第1駆動電圧Vo1が、他端P2に接地電圧(0V)が印加され、その結果、放電灯4には、駆動電圧VL(≒Vo1)が第1極性にて印加される。第2状態φ2においては、放電灯4の他端P2に第2出力電圧Vo2が、一端P1に接地電圧が印加され、その結果、放電灯4には、駆動電圧VL(≒Vo2)が第1極性と反対の第2極性にて印加される。
【0044】
ランナップ期間および定常点灯期間において、制御回路30は、第1状態φ1と第2状態φ2を所定の点灯周期T1にて交互に繰り返す。その結果、放電灯4には、交流の駆動電圧VLが供給される。
【0045】
電流検出抵抗R1は、放電灯4に流れるランプ電流ILの経路上に設けられる。図1の回路では、共通接続された第1スイッチSW1、第2スイッチSW2のエミッタと、接地端子の間に設けられる。第1状態φ1においては、放電灯4に第1極性(図1中の右向き)に流れるランプ電流が流れ、第2状態φ2においては、第2極性(図1中の左向き)に流れるランプ電流が流れる。電流検出抵抗R1には、第1状態φ1、第2状態φ2のそれぞれにおいて、ランプ電流ILに比例した電圧降下(電流検出信号SILと称する)が発生する。電流検出信号SILは、制御回路30へとフィードバックされる。
【0046】
スタータ回路20は、放電灯4をブレイクダウンさせるために設けられ、スタータトランス22およびパルス発生部28を含む。スタータ回路20のパルス発生部28は、スタータトランス22の1次コイル24に対して、振幅が400Vのパルス電圧を印加する。その結果、2次コイル26側には、スタータトランス22の巻線比に応じた高電圧パルス(たとえば20kV)が発生し、放電灯4に印加される。その結果、放電灯4がブレイクダウンし、放電が開始する。
【0047】
点灯補助回路10は、放電灯4をアーク成長させるために設けられる。点灯補助回路10は、点灯補助キャパシタC2、点灯補助抵抗R2、スイッチSW3を含む。
【0048】
点灯補助回路10は、放電灯4の一端P1と接地端子の間に、言い換えれば第1出力キャパシタCo1と並列に設けられる。点灯補助キャパシタC2、点灯補助抵抗R2およびスイッチSW3は、直列に接続されている。点灯補助キャパシタC2、点灯補助抵抗R2、スイッチSW3の順序は特に限定されず、適宜入れ換えてもよい。スイッチSW3としては、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)、バイポーラトランジスタ、IGBTなど、さまざまなトランジスタ素子が利用できる。
【0049】
一例として、点灯補助キャパシタC2は1.8μFであり、点灯補助抵抗R2は180Ωである。なお点灯補助抵抗R2は抵抗素子として設ける必要はなく、その抵抗値によっては、スイッチSW3のオン抵抗で代替することも可能である。スイッチSW3のオン、オフは、制御回路30からの制御信号S5に応じて制御される。スイッチSW3の制御シーケンスは後述する。
【0050】
以上が放電灯点灯回路100の構成である。続いてその動作を、シーケンスに従って説明する。図2(a)〜(d)は、放電灯点灯回路100の動作状態を示すタイムチャートである。図2(a)〜(d)の縦軸および横軸は、理解を容易とするために適宜拡大、縮小したものであり、また示される各波形も、理解の容易のために簡略化されている。図2(a)〜(d)はそれぞれ、ブレイクダウン過程、アーク成長過程、ランナップ過程および定常点灯時の波形を示している。
【0051】
1. 電源投入
ユーザが電源スイッチ8をオンすると、放電灯点灯回路100が起動する。制御回路30は第1DC/DCコンバータCONV1をアクティブ状態、第1スイッチSW1をオフ状態とし、バッテリ電圧Vbatを所定の高電圧(400v)に昇圧して安定化する。具体的に制御回路30は、第1DC/DCコンバータCONV1の出力電圧Vo1が400VとなるようにPWM(Pulse Width Modulation)、PFM(Pulse Frequency Modulation)方式などを利用して第1スイッチング素子M1のデューティ比を調節する。PWM・PFM制御については公知の技術を用いればよい。一例として、PWM制御は、出力電圧Vo1と基準電圧(Vref)の誤差を増幅する誤差増幅器と、三角波やのこぎり波の周期信号を誤差増幅器の出力でスライスして第1制御パルス信号S1を生成するコンパレータによって実現できる。あるいは出力電圧Vo1をA/Dコンバータによってデジタル信号に変換し、マイコン制御によって第1制御パルス信号S1を生成してもよい。つまり第1スイッチング素子M1の制御方式は限定されない。
【0052】
この間、制御回路30はスイッチSW3をオンさせる。その結果、第1DC/DCコンバータCONV1の第1出力キャパシタCo1ならびに点灯補助回路10の点灯補助キャパシタC2が電圧Vo1(≒400V)で充電され、エネルギーが蓄えられる。
【0053】
2. ブレイクダウン
スタータ回路20は、第1DC/DCコンバータCONV1により生成された400Vの電圧Vo1を受ける。パルス発生部28は振幅400Vのパルスをスタータトランス22の1次コイル24に印加する。図2(a)に示すように、このとき2次コイル26の2次コイル26には、20kV以上の高電圧パルスが発生する。その結果、放電灯4の駆動電圧は13〜15kV程度まで上昇してブレイクダウンし、グロー放電が開始する。
【0054】
3. アーク成長
アーク成長の過程では、制御回路30はスイッチSW3のオンを維持しつづける。放電灯4がブレイクダウンすると、第1出力キャパシタCo1および点灯補助キャパシタC2から、放電灯4に対して数A(具体的には10A程度)の大電流が供給される。はじめに第1出力キャパシタCo1から放電灯4に電流が供給され、その後、点灯補助抵抗R2および点灯補助キャパシタC2で形成される時定数に応じて遅れた電流が、点灯補助キャパシタC2から放電灯4に供給される。放電灯4に対する大電流の供給が、第1出力キャパシタCo1から点灯補助回路10へと受け継がれる(take over)ことから、点灯補助回路10はテイクオーバー回路とも称される。この過程を経て、立ち消えを防止しつつグロー放電からアーク放電へと移行させる(図2(b))。
【0055】
4. ランナップ
アーク成長過程が終了してアーク放電が安定すると、制御回路30は、スイッチSW3をオフするとともに、第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2および第1スイッチSW1、第2スイッチSW2を制御して、所定の周期T1にて相補的に第1状態φ1と第2状態φ2を繰り返す。
【0056】
アーク放電の成長にともない、放電灯4の光出力が上昇していく。光出力の立ち上がりは規格で定められており、規格にマッチした光出力(電力)が得られるように、制御回路30は、第1駆動電圧Vo1、第2駆動電圧Vo2、ランプ電流ILを監視し、フィードバックによって、第1スイッチング素子M1、第2スイッチング素子M2のオン・オフのデューティ比を調節する。放電灯点灯回路100は、ランナップ期間において放電灯4の光出力を急速に上昇させるため、一時的に定格電力より高い過電力を供給し、その後、ランプ電圧を85V、ランプ電流ILを0.4Aに安定化して定格電力(35W)に近づけていく。
【0057】
スイッチSW3の導通状態の制御に着目すると、放電灯4の点灯前にはオン、放電灯の点灯後にはオフされる。制御回路30がスイッチSW3をオンからオフへの切り換え制御を説明する。スイッチSW3の制御は、以下の方式1〜3のいずれかで実行できる。
【0058】
方式1
制御回路30は、放電灯4に流れるランプ電流ILにもとづいてスイッチSW3のオン、オフを制御する。具体的には、ランプ電流ILに応じた電流検出信号SILを、所定のしきい値電流Ith(たとえば0.2A)に対応したしきい値信号と比較し、IL<Ithのとき、つまり放電灯4が消灯していると推定されるとき、スイッチSW3をオンし、IL>Ithのとき、つまり放電灯4が点灯していると推定されるとき、スイッチSW3をオフする。
【0059】
方式2
制御回路30は、放電灯4に供給される駆動電圧Vo1(もしくはVo2)にもとづいてスイッチSW3のオン、オフを制御する。具体的には、駆動電圧Vo1を、所定のしきい値電圧Vth(たとえば250V)と比較し、Vo1>Vthのとき、つまり放電灯4が消灯していると推定されるとき、スイッチSW3をオンし、Vo1<Vthのとき、つまり放電灯4が点灯していると推定されるとき、スイッチSW3をオフする。
【0060】
方式3
放電灯4の駆動開始から放電灯4が点灯するまでの時間は、放電灯4の種類や第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2および点灯補助回路10の特性から、予期することができる。そこで制御回路30は、タイマ制御にもとづいてスイッチSW3のオン、オフを制御する。具体的には、放電灯4の駆動開始(たとえば電源スイッチ8のオンを契機として)からの経過時間を開始し、所定時間の経過前にスイッチSW3をオンし、所定時間の経過後にスイッチSW3をオフする。
【0061】
5. 定常点灯
ランナップ過程を経て、放電灯4に供給される電力が定格値35Wに安定化され、放電灯4の光出力が安定化する(図2(d))。
【0062】
以上が実施の形態に係る放電灯点灯回路100の動作である。この放電灯点灯回路100は、従来の放電灯点灯回路に比べて以下の利点を有する。
【0063】
(1) 従来の回路では、点灯補助キャパシタC2が常時放電灯4の駆動経路と接続されていたため、放電灯4の再点弧の際に2次コイル26によって誘起される逆起電力が点灯補助キャパシタC2に吸収され、再点弧しにくくなっていた。これに対して実施の形態では、点灯補助回路10のスイッチSW3が点灯補助キャパシタC2と直列に設けられており、放電灯4が点灯した後においてはオフされる。つまり、点灯補助キャパシタC2および点灯補助抵抗R2が、第1DC/DCコンバータCONV1の出力端子から、言い換えれば放電灯4の駆動経路から切り離されるため、再点弧に及ぼす影響を排除することができ、放電灯4が立ち消えるのを防止することができる。また放電灯4の両端P1、P2側の電気的状態の対称性を高めることができるため、放電灯4の放電プロファイルの対称性も改善される。
【0064】
(2) また図1の点灯補助回路10においてスイッチSW3を設けない従来の回路構成の場合には、放電灯4を交流点灯する際に、点灯周期ごとに点灯補助キャパシタC2の充放電を繰り返していたため、点灯補助キャパシタC2および点灯補助抵抗R2が発熱し、発熱対策にコストがかかるという問題があった。また従来の回路では充放電を繰り返すことにより点灯補助キャパシタC2の寿命が短くなるおそれがあった。これに対して実施の形態では、放電灯4の交流点灯中は点灯補助キャパシタC2の充放電は行われないため点灯補助キャパシタC2および点灯補助抵抗R2の発熱を実質的にゼロとし、また寿命を延ばすことができる。
【0065】
この利点(2)は、図1に示される2つのDC/DCコンバータを放電灯4の両端に設けたトポロジー(ダブルコンバータ型と称する)特有の効果である。言い換えれば、スイッチSW3を設けることは、ダブルコンバータ型の放電灯点灯回路において非常に有用である。
【0066】
(3) さらに、従来の回路では点灯補助キャパシタC2が放電灯4の点灯動作に及ぼす影響を抑制するために、点灯補助キャパシタC2の容量を小さくする必要があった。これに対して実施の形態では、点灯補助キャパシタC2が放電灯4の点灯動作に影響を及ぼさないため、その容量値は、本来の点灯補助回路10の機能のみを考慮して設計することができるため、従来に比べて大容量なキャパシタを利用することが可能となり、アーク成長を確実に行うことが可能となる。
【0067】
以上が放電灯点灯回路100の動作および効果である。
【0068】
続いて、点灯補助回路10の変形例を説明する。図3(a)、(b)は、変形例に係る点灯補助回路10a、10bの構成を示す回路図である。
【0069】
図3(a)の点灯補助回路10aは、図1の点灯補助回路10に加えて、さらにダイオードD3を備える。ダイオードD3は、スイッチSW3と並列に、そのアノードが、放電灯4の一端P1と接地端子GNDのうち電位の低い端子側となる向きで配置される。図1の放電灯点灯回路100では、接地端子GNDの方が一端P1よりも低電位となることから、ダイオードD3のアノードは接地端子GND側となる。
【0070】
車両用灯具では、電源スイッチ8がオンしてから放電灯4が起動するまで(スタータ回路20のパルス発生)までに30msほどの時間を有する。すなわち、点灯補助キャパシタC2の充電は、スタータ回路20によるブレイクダウンまでに完了すればよいため、充電電流Icは0.1A程度でよいが、点灯補助回路10が放電灯4に供給すべき放電電流Idは数Aと大きい。
【0071】
図1の構成では、この放電電流IdがスイッチSW3を経由するため、放電電流Idに対応したスイッチを用いる必要があり、コストや回路面積の観点から改善の余地がある。図3(a)の点灯補助回路10aによれば、点灯補助キャパシタC2の充電はスイッチSW3を介して行われ、点灯補助キャパシタC2から放電灯4への放電電流Idの供給は主としてダイオードD3を介して行われる。したがってスイッチSW3は、0.1A程度の小さな充電電流Icを考慮すして設計すればよいため、小型化、低コスト化を図ることができる。
【0072】
なお、図3(a)の点灯補助回路10aを用いる場合、アーク成長の期間において、スイッチSW3をオフとしてもよい。
【0073】
図3(b)の点灯補助回路10bは、図3(a)の構成に加えて、放電電流制限抵抗R3をさらに備える。放電電流制限抵抗R3は、ダイオードD3のアノード・カソード間に、スイッチSW3と直列に設けられる。スイッチSW3は、NPN型のバイポーラトランジスタで構成できる。たとえばR2=180Ω、R3=2.2kΩである。バイポーラトランジスタを能動領域で使用すれば、点灯補助抵抗R2をトランジスタのオン抵抗で代用することも可能である。バイポーラトランジスタに変えてMOSFETやIGBTを用いてもよい。
【0074】
図3(b)の構成によれば、図3(a)と同様に放電電流Idが主としてダイオードD3側を流れるため、スイッチSW3として小さなバイポーラトランジスタを用いることができる。
【0075】
また図3(b)のようにスイッチSW3としてバイポーラトランジスタを用いた場合、放電灯の起動直後に、放電電流Idがバイポーラトランジスタ(SW3)のエミッタからコレクタに向かって流れようとするため、この電流が大きければスイッチSW3の信頼性を損ねるおそれがある。
【0076】
スイッチSW3の電圧降下をゼロとすると、放電電流制限抵抗R3の電圧降下は、ダイオードD3の順方向電圧Vf(=0.7V)でクランプされることになる。したがって、図3(b)の点灯補助回路10bによれば、スイッチSW3を介して放電灯4に流れる放電電流Ixを(Vf/R3)以下に制限することができる。
【0077】
一般的な放電灯点灯回路100には、放電灯4の両端P1、P2が地絡しているか否かを判定し、地絡発生時には所定の処理(回路のシャットダウンや点灯の一時停止など)を実行する地絡保護機能が備わっている。図3(a)、(b)に示すように、点灯補助回路にスイッチSW3と並列な経路にダイオードD3を設けた場合、点灯補助回路10と反対側の第2DC/DCコンバータCONV2の出力が地絡した場合に、地絡を正確に検出できないという不具合が発生するおそれがある。
【0078】
この不具合を、図1の放電灯点灯回路100と、図3(b)の点灯補助回路10bを組み合わせた回路を例に説明する。
放電灯点灯回路100の電源が投入され、続いてブレイクダウン過程、アーク成長過程に順に遷移していく。アーク成長の過程において、点灯補助キャパシタC2の電荷が、放電灯4へと供給される。はじめオンしていたスイッチSW3は点灯開始とともにオフされる。この時点で、キャパシタC2には、出力電圧Vo1に応じた電荷が残留している。
【0079】
続いて、第1DC/DCコンバータCONV1と第2DC/DCコンバータCONV2が点灯周波数にて交互にアクティブとなる交流点灯が開始される。あるいは、交流点灯の開始前の一定時間(DC期間とも称する)、ウォームアップが行われる場合もある。すなわち第2DC/DCコンバータCONV2が固定的にアクティブ、第1スイッチSW1が固定的にオンとなり直流点灯が行われる。ウォームアップすることにより、放電灯4の両端の電極を均等に暖めることができる。
【0080】
交流点灯の開始直後、あるいはウォームアップ時(DC期間)の極性切りかえにおいて、第1状態φ1から第2状態φ2への遷移が発生する。
【0081】
第1状態φ1から第2状態φ2の遷移の際に、第1スイッチSW1がオフからオンに切りかえられると、点灯補助キャパシタC2の残留電荷が、第1スイッチSW1および電流検出抵抗R1に向かって流れる。具体的には、図3(b)の接地端子GNDから、ダイオードD3、点灯補助抵抗R2、点灯補助キャパシタC2、第1スイッチSW1、電流検出抵抗R1を経て接地端子GNDに戻るという閉ループに電流が流れる。
【0082】
一方、制御回路30は、放電灯4の端子電圧が低く、かつ放電灯4に電流が流れていない状態を地絡と判定する。具体的には、以下の2つの条件の両方を満たしたことで地絡状態と判定する。
条件1 放電灯4の端子P1(P2)の電位が所定のしきい値より低い。
条件2 電流検出抵抗R1に生ずる電圧降下(SIL)がしきい値より小さい。
【0083】
いま、第2DC/DCコンバータCONV2の出力(つまり放電灯4の端子P2)が地絡しているものとする。このとき条件1は満たされる。ところが、上述の閉ループに電流が流れることにより、電流検出抵抗R1には非ゼロの電圧降下が発生するため、点灯補助回路10は条件2が成立しないと判定する。このことは、第2DC/DCコンバータCONV2の地絡を検出することができないことを意味している。地絡検出に不具合が生ずると、放電灯点灯回路100の制御に不整合が生ずるため、好ましくない。
【0084】
以下では、この不具合を解消するための技術を説明する。
上述の地絡検出の不具合を回避するために、電流検出抵抗R1は、第1スイッチSW1およびダイオードD3が形成するループに含まれない箇所に配置される。つまり電流検出抵抗R1はそのループから除外されている。言い換えれば、ダイオードD3のアノード端子の接続先は、ダイオードD3それ自身と第1スイッチSW1を含むループに流れるループ電流が、電流検出抵抗R1に流れ込まない位置に接続される。
【0085】
図4は、第1の変形例に係る放電灯点灯回路100cの構成を示す回路図である。制御回路30は、電流検出抵抗R1に生ずる電圧降下(電流検出信号SIL)にもとづいて第1DC/DCコンバータCONV1、第2DC/DCコンバータCONV2のスイッチングを制御する。さらに制御回路30は、放電灯4の一端P1の電位Vo1と電流検出信号SILにもとづいて、第1DC/DCコンバータCONV1の出力の地絡を検出し、放電灯4の他端P2の電位Vo2と電流検出信号SILにもとづいて、第2DC/DCコンバータCONV2の出力の地絡を検出する。
【0086】
点灯補助回路10cは、図3(c)の点灯補助回路10bと同様の構成要素を有するが、ダイオードD3の接続形態が異なっている。具体的にはダイオードD3のアノードは、第1スイッチSW1と電流検出抵抗R1を結ぶ経路上のノードと接続される。その他の構成は同様である。
【0087】
続いて図4の放電灯点灯回路100cの動作を説明する。第1状態φ1から第2状態φ2に遷移するときに第2DC/DCコンバータCONV2が地絡した状態を想定する。このとき、点灯補助キャパシタC2の残留電荷が第1スイッチSW1に流れ込む。第1スイッチSW1に流れ込んだ電流は、電流検出抵抗R1には流れずに、第2整流ダイオードD2を介して再び点灯補助キャパシタC2へと流れ込む。すなわち、第2整流ダイオードD2、点灯補助抵抗R2、点灯補助キャパシタC2、第1スイッチSW1によってループ経路が形成されており、電流検出抵抗R1はこのループから除外されている。
【0088】
つまり電流検出抵抗R1に電圧降下が発生しないため、制御回路30は上述の地絡判定の条件2を適切に判定でき、第2DC/DCコンバータCONV2が地絡状態にあることを検出することができる。
【0089】
図5(a)、(b)は、第2、第3の変形例に係る放電灯点灯回路100d、100eの構成の一部を示す回路図である。
【0090】
図5(a)の放電灯点灯回路100dには、2個の電流検出抵抗R11、R12が設けられている。第1の電流検出抵抗R11は、第1スイッチSW1と固定電圧端子(接地端子GND)の間に設けられ、第2の電流検出抵抗R12は、第2スイッチSW2と接地端子GNDの間に設けられている。
【0091】
電流検出抵抗R11に生ずる電圧降下が、第2状態φ2において放電灯4に流れる電流を示す電流検出信号SIL1として制御回路30(不図示)にフィードバックされる。同様に、電流検出抵抗R12に生ずる電圧降下が、第1状態φ1において放電灯4に流れる電流を示す電流検出信号SIL2として制御回路30(不図示)にフィードバックされる。
【0092】
図5(a)の点灯補助回路10dに着目すると、2つの電流検出抵抗R11、R12はいずれも、ダイオードD3および第1スイッチSW1が形成するループに含まれない位置に設けられる。具体的には、ダイオードD3のカソードは、第1スイッチSW1と電流検出抵抗R11の接続経路上のノードと接続されている。
【0093】
図5(a)の構成においても、第1スイッチSW1、ダイオードD3、点灯補助抵抗R2、点灯補助キャパシタC2のループに電流が流れても、電流検出抵抗R11に電圧降下は生じない。したがって第2DC/DCコンバータCONV2の地絡を好適に検出することができる。
【0094】
図5(b)の放電灯点灯回路100eにおいて、電流検出抵抗R1は、第1スイッチSW1の固定電圧端子(接地端子)側の端子と、第2スイッチSW2の接地端子側の端子との間に設けられている。電流検出抵抗R1の第1スイッチSW1側の端子は接地されている。
【0095】
図5(b)においても、電流検出抵抗R1は、ダイオードD3および第1スイッチSW1が形成するループに含まれない位置に設けられる。具体的には、ダイオードD3のカソードは、第1スイッチSW1と電流検出抵抗R1の接続経路上のノードと接続されている。
【0096】
なお図5(b)において、第1スイッチSW1と電流検出抵抗R1の接続経路上のノードは、すなわち接地端子GNDである。つまり図5(b)の点灯補助回路10eの場合、図3(b)の点灯補助回路10bと実質的に同じ構成となっている。
【0097】
図5(b)の放電灯点灯回路100eによっても、第2DC/DCコンバータCONV2の地絡を検出できる。
【0098】
なお、地絡検出が上述のそれと異なるアプローチによってなされる場合、あるいは地絡検出の不具合がシステム全体に悪影響を及ぼさない場合には、図3(a)、(b)の点灯補助回路10a、10bをそのまま用いることが可能であることはいうまでもない。
【0099】
(第2の実施の形態)
第1の実施の形態では、放電灯4の両端に設けられた2つのDC/DCコンバータを交互に動作させて、交流点灯する技術を説明した。第2の実施の形態では、単一のDC/DCコンバータと、スイッチング回路(Hブリッジ回路)を用いて交流点灯する。
【0100】
図6は、第2の実施の形態に係る車両用灯具2aの構成を示す回路図である。図1と共通の構成の説明は省略し、異なる点のみを説明する。
【0101】
放電灯点灯回路100aは、DC/DCコンバータCONV4、点灯補助回路10、スタータ回路20、Hブリッジ回路40、入力回路42を含む。
【0102】
入力回路42は、入力インダクタL6、入力キャパシタC1、C6、抵抗R6、入力スイッチM6を含む。入力キャパシタC6は、バッテリ6と並列に設けられ、バッテリ電圧Vbatを平滑化する。
入力インダクタL6は、バッテリ6とDC/DCコンバータCONV4の入力端子Pinの間に、電源スイッチ8と直列に設けられる。入力キャパシタC6および入力スイッチM6は、入力端子Pinと接地端子GND間に直列に設けられる。抵抗R6は、入力スイッチM6のゲートと、入力キャパシタC1の一端の間に設けられる。入力回路42は、DC/DCコンバータCONV4に発生するノイズが、バッテリ6側に漏れるのを遮断する。また入力スイッチM6および抵抗R6は、回路保護のために設けられており、バッテリ6が逆極性で接続された際に、電流を遮断する機能を有する。
【0103】
DC/DCコンバータCONV4は、バッテリ電圧Vbatを昇圧する。DC/DCコンバータCONV4は、トランスT4、整流ダイオードD4、出力キャパシタCo4、スイッチング素子M4を含む。トランスT4の1次コイルL4の一端と、2次コイルL5の一端は、スイッチング素子M4(MOSFET)のドレインと共通に接続されている。スイッチング素子M4がスイッチングすることにより、バッテリ電圧Vbatが昇圧される。スイッチング素子M4のオン、オフのデューティ比の制御は、第1の実施の形態と同様である。昇圧された出力電圧Voは、後段のHブリッジ回路40に供給される。
【0104】
Hブリッジ回路40は、IGBTのハイサイドスイッチQ1、Q3とローサイドスイッチQ2、Q4を含む。スイッチQ1、Q4のペアがオンする第1状態φ1と、スイッチQ2、Q3のペアがオンする第2状態φ2を交互に繰り返すことにより、放電灯4に対して交流の駆動電圧が供給される。つまり、DC/DCコンバータCONV4およびHブリッジ回路40が、駆動電圧生成部12として機能する。
【0105】
点灯補助回路10およびスタータ回路20は、第1の実施の形態と同様である。点灯補助回路10は、図1もしくは図3(a)、(b)のいずれかの構成を有する。
【0106】
図6の放電灯点灯回路100aは、以下の利点を有する。
(4) 点灯補助回路10のスイッチSW3は、放電灯4が点灯した後においてはオフされ、点灯中は点灯補助キャパシタC2が放電灯4の駆動経路から切り離される。したがって、第1の実施の形態の同様に、再点弧時に2次コイル26に生ずる逆起電力が点灯補助キャパシタC2に吸収されないため、放電灯4が立ち消えるのを防止することができる。
【0107】
(5) 第2の実施の形態においても、第1の実施の形態と同様に、点灯補助キャパシタC2が放電灯4の点灯動作に影響を及ぼさないため、その容量値は、本来の点灯補助回路10の機能のみを考慮して設計することができるため、従来に比べて大容量なキャパシタを利用することが可能となり、アーク成長を確実に行うことが可能となる。
【0108】
以上、実施の形態をもとに本発明を説明した。これらの実施形態は例示であり、各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0109】
第1の実施の形態では、正の駆動電圧Vo1、Vo2を生成して、放電灯4に印加する場合(正極点灯と称する)について説明したが、負の駆動電圧Vo1、Vo2を生成して放電灯4を駆動してもよい(負極点灯と称する)。この場合、図1における第1整流ダイオードD1、第2整流ダイオードD2の向きが反転される。
【0110】
負極点灯する場合においても、図3(a)または(b)の点灯補助回路10a、10bを設けることができる。図3(a)、(b)のダイオードD3は、放電灯4の一端P1と接地端子GNDのうち電位の低い端子側がアノードとなる向きで配置する必要がある。負極点灯する場合、放電灯4の一端P1側が低電位となることから、ダイオードD3はアノードが放電灯4の一端P1側となるように反転する必要がある。
【0111】
同様に第2の実施の形態においても、図6における整流ダイオードD4の向きを反転し、負極点灯を行ってもよい。この際、図3(a)または(b)の点灯補助回路10a、10bを設ける場合にも、ダイオードD3の向きを反転すればよい。
【0112】
実施の形態では、車両用灯具を例に説明をしたが、本発明の用途はこれに限定されず、点灯補助回路を備える放電灯点灯回路に広く適用できる。
【0113】
実施の形態にもとづき、特定の語句を用いて本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0114】
2…車両用灯具、4…放電灯、10…点灯補助回路、SW3…スイッチ、D3…ダイオード、C2…点灯補助キャパシタ、R2…点灯補助抵抗、100…放電灯点灯回路、CONV1…第1DC/DCコンバータ、CONV2…第2DC/DCコンバータ、SW1…第1スイッチ、SW2…第2スイッチ、20…スタータ回路、30…制御回路、CONV4…DC/DCコンバータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動対象の放電灯に交流の駆動電圧を供給する駆動電圧生成部と、
前記放電灯の一端側に設けられた点灯補助回路と、
を備え、
前記点灯補助回路は、
前記放電灯の前記一端と固定電圧端子の間に直列に設けられたキャパシタおよびスイッチ素子および抵抗要素と、
前記スイッチ素子の導通状態を制御する制御部と、
を含むことを特徴とする放電灯点灯回路。
【請求項2】
前記点灯補助回路は、
前記スイッチ素子と並列な経路上に、そのアノードが前記固定電圧端子側となる向きで配置されたダイオードをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の放電灯点灯回路。
【請求項3】
前記制御部は、
前記放電灯に流れるランプ電流が所定のしきい値電流より低いとき前記スイッチ素子をオンし、前記ランプ電流が前記しきい値電流より高いとき前記スイッチ素子をオフすることを特徴とする請求項1または2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項4】
前記制御部は、
前記放電灯の前記一端に印加されるランプ電圧が所定のしきい値電圧より高いとき前記スイッチ素子をオンし、前記ランプ電圧が前記しきい値電圧より低いとき前記スイッチ素子をオフすることを特徴とする請求項1または2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項5】
前記制御部は、前記放電灯の駆動開始から所定時間の経過前に前記スイッチ素子をオンし、前記所定時間の経過後に前記スイッチ素子をオフすることを特徴とする請求項1または2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項6】
前記駆動電圧生成部は、
前記放電灯の前記一端に第1駆動電圧を供給する第1DC/DCコンバータと、
前記放電灯の他端に第2駆動電圧を供給する第2DC/DCコンバータと、
前記放電灯の前記一端側に設けられ、オン状態において、前記放電灯の前記一端と前記固定電圧端子の間を電気的に導通させる第1スイッチと、
前記放電灯の前記他端側に設けられ、オン状態において、前記放電灯の前記他端と前記固定電圧端子の間を電気的に導通させる第2スイッチと、
を含み、
前記第1DC/DCコンバータと前記第2DC/DCコンバータは、所定の周波数で相補的にアクティブ状態、非アクティブ状態を繰り返し、前記第1スイッチは前記第2DC/DCコンバータがアクティブのときオン、前記第2スイッチは前記第1DC/DCコンバータがアクティブのときオンすることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の放電灯点灯回路。
【請求項7】
前記駆動電圧生成部は、
前記放電灯の前記一端に第1駆動電圧を供給する第1DC/DCコンバータと、
前記放電灯の他端に第2駆動電圧を供給する第2DC/DCコンバータと、
前記放電灯の前記一端側に設けられ、オン状態において、前記放電灯の前記一端と前記固定電圧端子の間を電気的に導通させる第1スイッチと、
前記放電灯の前記他端側に設けられ、オン状態において、前記放電灯の前記他端と前記固定電圧端子の間を電気的に導通させる第2スイッチと、
前記第1スイッチがオンのとき前記放電灯に流れる電流の経路上と、前記第2スイッチがオンのとき前記放電灯に流れる電流の経路上と、に設けられた少なくともひとつの電流検出抵抗と、
を含み、
前記第1DC/DCコンバータと前記第2DC/DCコンバータは、所定の周波数で相補的にアクティブ状態、非アクティブ状態を繰り返し、前記第1スイッチは前記第2DC/DCコンバータがアクティブのときオン、前記第2スイッチは前記第1DC/DCコンバータがアクティブのときオンするとともに、前記第1DC/DCコンバータおよび前記第2DC/DCコンバータは、前記少なくともひとつの電流検出抵抗の電圧降下にもとづいて制御され、
前記少なくともひとつの電流検出抵抗はいずれも、前記第1スイッチおよび前記ダイオードが形成するループに含まれない箇所に配置されることを特徴とする請求項2に記載の放電灯点灯回路。
【請求項8】
前記第1スイッチの前記固定電圧端子側の端子と前記第2スイッチの前記固定電圧端子側の端子は共通に接続され、
前記電流検出抵抗は、前記第1スイッチと前記第2スイッチの共通に接続された端子と前記固定電圧端子の間に設けられ、
前記ダイオードのアノードは、前記第1スイッチと前記電流検出抵抗の接続経路に接続されることを特徴とする請求項7に記載の放電灯点灯回路。
【請求項9】
前記電流検出抵抗は、前記第1スイッチの前記固定電圧端子側の端子と、前記第2スイッチの前記固定電圧端子側の端子との間に設けられ、
前記ダイオードのアノードは、前記第1スイッチと前記電流検出抵抗の接続経路に接続されることを特徴とする請求項7に記載の放電灯点灯回路。
【請求項10】
前記少なくともひとつの電流検出抵抗は、2つであり、
第1の前記電流検出抵抗が、前記第1スイッチと前記固定電圧端子の間に設けられ、
第2の前記電流検出抵抗が、前記第2スイッチと前記固定電圧端子の間に設けられ、
前記ダイオードのアノードは、前記第1スイッチと第1の前記電流検出抵抗の接続経路に接続されることを特徴とする請求項7に記載の放電灯点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−135276(P2010−135276A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−21797(P2009−21797)
【出願日】平成21年2月2日(2009.2.2)
【出願人】(000001133)株式会社小糸製作所 (1,575)
【Fターム(参考)】