説明

放電灯点灯回路

【課題】両電位側の平滑電圧を簡素な回路構成で検出し、検出した両平滑電圧から演算処理により両電位側の検出電圧及びその差分を得て寿命末期の判定をより正確に行う。
【解決手段】放電灯FLの両端電圧をダイオードD11,D12で正負両電位に整流する。正電位側の整流電圧をコンデンサC12で平滑し、分圧抵抗R14,R15で分圧して出力端P01に出力し、負電位側の整流電圧をコンデンサC14に平滑し、平滑電圧を正電位の電源電圧eiとの間で分圧抵抗R16〜R18で分圧することで正極にして出力端P02に出力する。マイクロコンピュータ12は、入力された出力端P02からの電圧を出力端P01からの電圧の検出電圧の変化範囲と一致するよう換算する。出力端P01の電圧が閾値V1と比較され、出力端P02からの出力であって換算後の電圧が閾値V2と比較され、両電圧の差分が閾値V3と比較され、一方が閾値を超えると寿命末期と判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放電灯の寿命末期を検出する機能を備える放電灯点灯回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1〜4に見られるように、インバータ回路とインバータ回路の出力側に接続された共振回路とを有し、共振回路出力で放電灯を点灯制御する放電灯点灯回路が提案されている。ところで、放電灯として一般的には蛍光灯が使用されるが、蛍光灯の場合、寿命末期などでフィラメントの電子放出物質(エミッタという)のうち、片側のフィラメントだけの電子放出物質が消耗したいわゆる片側エミレスに起因して半波放電の現象が発生することがあり、また両側のフィラメントの電子放出物質が消耗したいわゆる両側エミレスに起因して管電圧が上昇する現象が発生する傾向がある。従って、放電灯の寿命末期などでの前記現象を検出して放電灯点灯回路を保護し、その信頼性をより一層向上させることが望まれる。
【0003】
特許文献1には、その図9に示すように、放電灯への電力供給ラインとグランドとの間に抵抗R1,R2の直列回路を接続するとともに、抵抗R2に直流成分検出用コンデンサC3を並列接続した検出回路と、このコンデンサC3に発生する電圧と基準電圧値とを比較する電圧比較回路2と、この電圧比較回路2の検出出力を受けてインバータ回路の出力を低減させる制御回路3とからなる、ランプ寿命末期検出と回路保護とを図るための技術が記載されている。
【0004】
特許文献2には、その図14に示すように、抵抗R1,R2およびコンデンサC2で構成され、放電灯Laの寿命末期において片側エミレス状態で発生する半波放電を検出するためのランプ電圧直流成分検出回路が設けられると共に、コンデンサC3、ダイオードD1,D2、抵抗R3,R4で構成され、ランプ寿命末期において両側エミレス状態で発生する管電圧の上昇を検出するための管電圧ビーク検出回路が設けられた放電灯点灯装置が提案されている。これら両検出回路の出力は、ダイオードD3,D4を介して合成され、放電灯Laの正常時に発生する電圧を超え、その寿命末期に発生する電圧未満の所定値で、放電灯Laの寿命末期などで発生する現象が起きたか否かの判別を行うようにしている。
【0005】
また、同文献2には、その図1及び図2に示すように、片側エミレスに起因する半波放電で検出される電圧直流成分の合成値と管電圧とを抽出し、OR回路に導いて寿命末期を判定する回路が記載されている。
【0006】
特許文献3には、放電灯の両端に発生する電圧直流成分を検出する直流電圧検出回路と、直流電圧検出回路から所定レベル以上の出力があったとき高周波インバータ回路の発振を停止又は出力を抑制するインバータ回路制御手段とを備え、放電灯の寿命末期を確実に検出する放電灯保護装置が提案されている。
【0007】
特許文献4には、インバータ回路のカップリングコンデンサとチョークコイルの中点に接続され、放電灯に供給する正電位のピーク電圧を検出する正電位ピーク検出回路と、放電灯に供給する負電位のピーク電圧を検出する負電位ピーク検出回路と、検出する正電位及び負電位のピーク電圧に応じて放電灯の寿命末期を検出する寿命末期検出回路が提案されている。具体的には、図1には正負ピーク電位を合成するコンデンサC4が記載され、図4には正負ピーク電位を個別に検出するコンデンサC4A,C4B、一方の極性を反転するためのオペアンプOP1及び両電位差を検出するコンパレータTL3が記載されている。
【特許文献1】特許第3797079号公報
【特許文献2】特許第3941360号公報
【特許文献3】特開2006−228755号公報
【特許文献4】特開2007−66700号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜4は、正電位側のランプ電圧直流成分、負電位側のランプ電圧直流成分を検出し、その検出結果から片側エミレスの発生を判断してインバータ回路の発振を制御するもの、あるいは放電灯両端の電圧(管電圧)を検出し、その検出結果からインバータ回路の発振を制御するものである。ところで、放電灯の寿命末期としては、前述したように、両側エミレスが発生する場合もあれば、片側エミレスのみが発生する場合があるため、各電位側の直流成分と管電圧とをそれぞれ検出し、判断することが、より適正なインバータ回路の保護を図る上で望まれる。しかしながら、それぞれの回路を個別に設けるとすると、部品点数の増大に伴う回路の大型化乃至コストアップを招き、好ましくない。
【0009】
また、特許文献2の図1,図2に記載の回路は、正負側の両電圧直流成分を合成しただけの電圧を用いるものであるため、個々のフィラメントに対するエミレス(寿命末期)状態の有無を判定することはできない。
【0010】
さらに、片側エミレスの場合、ランプ電圧直流成分の上昇変化は必ずしも大きく現れないため、寿命末期の判定は容易ではない。特に、ランプ電圧は温度特性を有し、この温度特性は、放電灯の温度として室温を基準にすると、室温から温度が高くなるにつれて低出力となる傾向を示す。従って、管温度が上昇し、高温状態にある場合、寿命末期状態の放電灯であっても正常と誤判定される虞もある。
【0011】
本発明は上記に鑑みてなされたもので、両電位側の平滑電圧を簡素な回路構成で検出し、かつ検出した平滑電圧から演算処理によって両電位側の検出電圧及びその差分を得て寿命末期の判定をより正確に行う放電灯点灯回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1記載の発明は、インバータ回路からの電力供給を受けて点灯される放電灯が寿命末期と判断されたとき前記電力供給を制御する放電灯点灯回路において、放電灯の両端電圧を正負両電位に整流する整流回路と、一方の電位の整流電圧を平滑し、この平滑電圧を分圧抵抗で第1の所定範囲内の電圧に分圧して第1の検出電圧を得る第1の検出回路と、他方の電位の整流電圧を平滑し、この平滑電圧を、該平滑電圧が一端に印加されると共に他端に前記一方の電位と同電位の所定電源電圧が印加される分圧抵抗で、一方の電位側と同電位の第2の設定範囲内の電圧に分圧して第2の検出電圧を得る第2の検出回路と、第1、第2の検出電圧であってA/D変換された第1、第2の検出電圧の一方を他方の検出電圧の変化範囲と一致させる換算を行う換算部を有する演算手段とを備え、前記演算手段は、さらに、該演算手段で得られ、第1、第2の検出電圧のうち換算された後の換算電圧及び第1、第2の検出電圧のうち換算されていない検出電圧の少なくとも一方が各電位側に対して設定された寿命末期に対応する閾値を超えたとき制御信号を出力する第1の比較手段と、前記演算手段で得られ、第1、第2の検出電圧のうち換算された後の換算電圧と第1、第2の検出電圧のうち換算されていない検出電圧との差分を算出し、この差分電圧が管電圧に対して設定された寿命末期に対応する閾値を超えたとき制御信号を出力する第2の比較手段とを備え、第1、第2の比較手段からの制御信号により前記インバータ回路に対して前記電力供給の制御を行わせることを特徴とするものである。
【0013】
本発明によれば、整流回路によって放電灯の両端電圧が正負の両電位に整流される。そして、第1の検出回路によって一方の電位の整流電圧が平滑され、この平滑電圧が分圧抵抗で第1の所定範囲内の電圧に分圧されることで第1の検出電圧が得られる。一方、第2の検出回路によって他方の電位の整流電圧が平滑され、この平滑電圧が、該平滑電圧が一端に印加されると共に他端に前記一方の電位と同電位の所定電源電圧が印加される分圧抵抗で、一方の電位側と同電位の第2の設定範囲内の電圧に分圧されることで第2の検出電圧が得られる。そして、演算手段の換算部によって第1、第2の検出電圧であってA/D変換された第1、第2の検出電圧の一方が他方の検出電圧の変化範囲と一致させるべく換算される。さらに、演算手段は、第1の比較手段、第2の比較手段を有し、この第1の比較手段によって、演算手段で得られ、第1、第2の検出電圧のうち換算された後の換算電圧及び第1、第2の検出電圧のうち換算されていない検出電圧の少なくとも一方が各電位側に対して設定された寿命末期に対応する閾値を超えたとき制御信号が出力される。また、第2の比較手段によって、前記演算手段で得られ、第1、第2の検出電圧のうち換算された後の換算電圧と第1、第2の検出電圧のうち換算されていない検出電圧との差分が算出され、この差分電圧が管電圧に対して設定された寿命末期に対応する閾値を超えたとき制御信号が出力される。そして、第1、第2の比較手段からの制御信号により前記インバータ回路に対して前記電力供給の制御が行われる。
【0014】
このように、第2の検出回路によって、所定電源電圧を用いることで第1の検出回路と同電位の検出信号として得られるので、両電極側の電圧直流成分を検出して分圧する回路の2系統が必要となる従来技術に比して部品点数が軽減される。また、両電位側の平滑電圧から得られる検出電圧及びその差分と閾値とをそれぞれ比較することで、寿命末期がより正確に検出される。
【0015】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の放電灯点灯回路において、前記一方の電位は正電位であり、前記換算部は、前記第2の検出電圧を前記第1の設定範囲内の電圧に換算することを特徴とする。この構成によれば、演算手段を通常使用態様である正電位で使用することが可能となり、回路設計が容易となる。
【0016】
請求項3記載の発明は、請求項2記載の放電灯点灯回路において、前記演算手段を駆動するための、所定レベルの電圧を生成する直流電源を有し、前記第2の検出回路の前記所定電源電圧は、前記直流電源の電圧であることを特徴とする。この構成によれば、演算手段の駆動のための電源を分圧のための電源と兼用することでできるので、回路構成が容易となる。
【0017】
請求項4記載の発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯回路において、前記各閾値を変更する調整部を備えていることを特徴とする。この構成によれば、放電灯の点灯条件などに対応した閾値への設定が可能となる。
【0018】
請求項5記載の発明は、請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯回路において、前記放電灯近傍の温度を検出する温度センサを備え、前記演算手段は、検出温度に応じて前記各閾値を補正する補正手段を有することを特徴とする。この構成によれば、点灯の継続や放電灯の使用環境温度に対応した適切な閾値に補正されるので、放電灯の温度特性による影響が抑制される。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、両電位側の電圧直流成分を検出して分圧する回路の2系統が必要となる従来技術に比して部品点数が軽減される。また、両電位側の平滑電圧から得られる検出電圧及びその差分と閾値とをそれぞれ比較することで、寿命末期がより正確に検出される。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、演算手段を通常使用態様である正電位で使用することが可能となり、回路設計を容易化できる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、演算手段の駆動のための電源を分圧のための電源と兼用することでできるので、回路構成を容易化できる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、放電灯の点灯条件などに対応した閾値への設定が可能となる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、点灯の継続や放電灯の使用環境温度に対応した適切な閾値に補正するため、放電灯の温度特性による影響を抑制できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図1は、本発明に係る放電灯点灯回路の一実施形態を示す全体ブロック図である。放電灯点灯回路1は、本実施形態においては商用交流電源ACがコンセントなどを介して接続されることによって駆動される。ダイオードブリッジDBは、商用交流電源ACを全波整流するものである。ダイオードブリッジDBの出力側には、昇圧チョッパ回路10が接続されている。昇圧チョッパ回路10は、チョークコイルLc、スイッチング素子Q1、整流ダイオードD1及び平滑コンデンサC1からなり、平滑コンデンサC1の一端に所定電圧、ここでは360Vを生成するものである。スイッチング素子駆動回路11はスイッチング素子Q1のベースに接続され、スイッチング素子Q1の駆動を制御するものある。
【0025】
マイクロコンピュータ(演算手段)12は、各回路部に対して信号の入出力を行うものである。マイクロコンピュータ12は、例えばスイッチング素子駆動回路11へ制御信号を出力し、平滑コンデンサC1が所定電圧に充電されるようにスイッチング素子Q1をオン、オフ駆動させる。交流入力検出回路13は、商用交流電源ACラインと接地との間に接続され、商用交流電源ACの接続状態を検出し、検出結果をマイクロコンピュータ12に出力する。チョークコイル出力検出回路14は、チョークコイルLcの二次側に接続され、ダイオードブリッジDBからチョークコイルLcへ電力が供給されているか否かを検出するもので、検出結果をマイクロコンピュータ12に出力する。制御回路用電源回路15は、昇圧チョッパ回路10で生成される電圧を用いて、マイクロコンピュータ12や後述するハーフブリッジ駆動回路16、寿命末期検出回路18等の電源電圧(14Vおよび5V)を生成するものである。
【0026】
ハーフブリッジ駆動回路16は、マイクロコンピュータ12からの制御信号に基づいて交互にハイ、ローとなる駆動パルスをインバータ回路17に出力するものである。インバータ回路17は、直列接続されたスイッチング素子Q2,Q3と、その出力(負荷)側に共振回路を構成するための誘導リアクトルL1、コンデンサC2,C3を備えている。この共振回路のコンデンサC3に並列に、放電灯FLが着脱可能に接続されている。なお、コンデンサC2は直流カット用である。スイッチング素子Q2,Q3は、ハーフブリッジ駆動回路16からの互いに逆位相の駆動パルスが入力されることで交互にオン、オフを繰り返す。従って、放電灯FLは、スイッチング素子Q2,Q3のオン、オフ動作及び共振動作により、所定電源(本実施例では360V)からの電力が高周波電力に変換されて供給され、両フィラメントが予熱された後、始動して点灯する。
【0027】
寿命末期検出回路18は、放電灯FLの両端に接続されたもので、後述する回路構成を有し、検出した電圧をマイクロコンピュータ12に出力する。マイクロコンピュータ12は、寿命末期検出回路18からの検出電圧に基づいて、後述する換算乃至演算処理を行って放電灯FLの寿命末期の判定及び制御を行うものである。
【0028】
電源電圧検出回路19は、昇圧チョッパ回路10で生成される電圧のレベルを検出するものである。マイクロコンピュータ12は、電源電圧検出回路19の検出結果に基づき、昇圧チョッパ回路10で生成された電圧のレベルが安定するようにスイッチング素子駆動回路11を介してスイッチング素子Q1のオンオフのタイミングを制御する。なお、リモコン受光回路20は、図外の例えば携帯型操作部(リモコン)から赤外線変調して送信された指示信号を受光するものである。マイクロコンピュータ12は、リモコン受光回路20での受光信号に応じて点灯/消灯制御や調光制御を行う。
【0029】
図2は、寿命末期検出回路18の回路構成の一例を示す回路図である。寿命末期検出回路18は、インバータ回路17を構成するコンデンサC3の高圧側からフィラメント間の電圧(管電圧)を入力するようにしている。この入力路には、接地との間に直列接続された分圧抵抗R11,R12,R13が備えられており、抵抗R12とR13の中点A0から管電圧を取り込んでいる。中点A0には互いに逆向きのダイオードD11,D12が接続されている。すなわち、ダイオードD11は中点A0に対して順方向であり、ダイオードD12は中点A0に対して逆方向に向けられて接続されている。
【0030】
ダイオードD11のカソード側は、正電位のピーク値に応じた平滑電圧を検出するための回路であり、ダイオードD12のアノード側は負電位のピーク値に応じた平滑電圧を検出するための回路である。正電位のピーク値に応じた平滑電圧の検出回路は、ダイオードD11と、ダイオードD11のカソードと接地間にそれぞれ並列に接続されるツェナーダイオードZD11、コンデンサC12で構成されると共に、直列の分圧抵抗R14,R15、分圧抵抗R15の両端に接続されたコンデンサC13を有し、かつ分圧抵抗R14とR15との中点がマイクロコンピュータ12への出力端Po1とされている。
【0031】
一方、負電位のピーク値に応じた平滑電圧の検出回路は、ダイオードD12と、ダイオードD12のアノードと接地間にそれぞれ並列に接続されるツェナーダイオードZD12、コンデンサC14とを備えると共に、ダイオードD12のアノードと所定電圧を有する電源eiとの間に介設された直列の分圧抵抗R16,R17,R18を有する。また、分圧抵抗R16とR17の中点と接地との間に接続されたコンデンサC15を有し、この分圧抵抗R16とR17との中点がマイクロコンピュータ12への出力端Po2とされている。
【0032】
ここで、寿命末期検出回路18の作用を説明する。但し、電源eiの電圧は5V、ツェナーダイオードZD11,ZD12のツェナー電圧は10V(ボルト)とし、また分圧抵抗R11,R12,R13の分圧比は、放電灯FLが寿命末期にあるときダイオードD11,D12への取り込み電圧が少なくとも10V以下の所定レベルとなるように設定されている。さらに、分圧抵抗R14とR15とは等しい抵抗値を有し、また、分圧抵抗R16,R17,R18はいずれも等しい抵抗値を有するものとする。
【0033】
先ず、正電位側の作用を説明する。所定レベルに分圧された管電圧は、ダイオードD11で正電位側が半波整流され、ツェナーダイオードZD11で10V以下に制限されてコンデンサC12で充電されることで、正電位のピーク値に応じた平滑電圧が得られる。コンデンサC12の平滑電圧は、電圧分圧抵抗R15で1/2に分圧されて、出力端Po1からマイクロコンピュータ12に入力される。
【0034】
図3は、コンデンサC12の電圧(横軸)と出力端Po1の電圧(縦軸)との関係を示す図である。分圧抵抗R14,R15によって1/2に分圧されるため、図3に示すように、コンデンサC12の平滑電圧が0Vの時、出力端Po1の電圧も0Vであり、コンデンサC12の平滑電圧が最大の10Vの時、出力端Po1の電圧は5Vとなり、その間は、図中実線で示すようにリニアに変化することが判る。従って、マイクロコンピュータ12では、電圧変化が0〜5Vであることを考慮して、フィラメントの高圧側にエミレスが生じて寿命末期となり、半波放電となって正電位側に偏った電圧波形になる結果、寿命末期と判断するための閾値V1(図5参照)を予め設定して、出力端Po1からの入力電圧と比較すればよい。
【0035】
次に、負電位側の作用を説明する。所定レベルに分圧された管電圧は、ダイオードD12で負電位側が半波整流され、ツェナーダイオードZD12で−10V以上に制限されてコンデンサC14で充電されることで、負電位のピーク値に応じた平滑電圧が得られる。コンデンサC14の平滑電圧は、電源eiの+5Vとの間で、分圧抵抗R16,R17,R18で分圧される。ここでは、分圧抵抗R16,R17,R18の抵抗値が等しいので、出力端Po2には、以下の範囲の電圧が得られる。
【0036】
図4は、コンデンサC14から換算値を得る関係を示す図で、図4(a)はコンデンサC14の電圧(横軸)と出力端Po2の電圧(縦軸)との関係を示し、図4(b)はコンデンサC14の電圧の絶対値(横軸)と換算値(縦軸)との関係を示している。コンデンサC14に発生する平滑電圧0〜−10Vの内、最小電圧である−10Vがかかった場合、出力端子Po2には、+5Vと−10Vとを2/3(つまり、1対2)に分圧した電圧、すなわち0Vが出力される。また、コンデンサC14に最大電圧である0Vがかかった場合、出力端Po2には、+5Vと0Vとを2/3に分圧した電圧、すなわち+3.33Vが出力される。その間は、図4(a)中の実線で示すようにリニアに変化することが判る。
【0037】
なお、図4(a)に示す実線の勾配は、図3に示す正電位側の直線とは勾配も方向も異なることから、このままでは、正電位側と同じ物差しで負電位側を扱うことができない。そこで、マイクロコンピュータ12は、出力端Po2からの入力電圧を3/2倍する演算を実行して、図4(a)中、破線で示す特性線を得、図3の勾配と一致するようにしている。さらに、勾配の向きを逆にして両者を一致させるべく(図4(b)参照)、5Vから減算するようにしている。
【0038】
すなわち、換算値は、5V−Po2電圧*(3/2)の計算により得られる。従って、マイクロコンピュータ12では、コンデンサC14に発生する平滑電圧が0〜−10Vに対応して換算値が0〜+5Vとなるので、正電位に置き換えて処理、すなわちフィラメントの低圧側にエミレスが生じて寿命末期となり、半波放電となって負電位側に偏った電圧波形になる結果、寿命末期と判断するための閾値V2(図5参照)を、高圧側のエミレスに対する寿命末期と同極に設定することが可能となり、その分、回路構成も簡易となる。また、図4(b)の換算直線はマイクロコンピュータ12で換算して算出することが可能であるが、演算結果を予めLUT(ルックアップテーブル)等の記憶部、換算部として記憶しておいて、これを参照する方が、ソフトウエアの負担低減や処理速度上から好ましい。
【0039】
図5〜図8は、管電圧、正電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po1電圧、負電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po2電圧、Po2換算値、及びPo1電圧とPo2換算値(電圧)との差分電圧の関係を示す図で、図5は、放電灯FLが正常の場合、図6は、放電灯FLが高圧側エミレスによる寿命末期である場合、図7は、放電灯FLが低圧側エミレスによる寿命末期である場合、図8は、放電灯FLが両側エミレスによる寿命末期である場合の関係図である。
【0040】
図5では、正電位側の出力端Po1の電圧は閾値V1未満であり、負電位側の出力端Po2の電圧を前記演算式で換算した換算値(図5中、Po2換算値)は閾値V2未満であり、かつ、出力端Po1電圧と出力端Po2換算値との差分は閾値V3未満であるから、放電灯FLが正常であることが判る。
【0041】
図6では、正電位側の出力端Po1の電圧は閾値V1を超えており、一方、負電位側の出力端Po2の電圧を前記演算式で換算した換算値(図6中、Po2換算値)は閾値V2未満であり、かつ、出力端Po1電圧と出力端Po2換算値との差分は閾値V3を超えているから、これにより放電灯FLが高圧側エミレスによる寿命末期にあることが判る。
【0042】
図7では、正電位側の出力端Po1の電圧は閾値V1未満であり、一方、負電位側の出力端Po2の電圧を前記演算式で換算した換算値(図7中、Po2換算値)は閾値V2を超えており、かつ、出力端Po1電圧と出力端Po2換算値との差分は閾値V3を超えているから、これにより放電灯FLが低圧側エミレスによる寿命末期にあることが判る。
【0043】
図8では、正電位側の出力端Po1の電圧は閾値V1を超えており、負電位側の出力端Po2の電圧を前記演算式で換算した換算値(図5中、Po2換算値)は閾値V2を超えており、かつ、出力端Po1電圧と出力端Po2換算値との差分は閾値V3未満であるから、放電灯FLが両側エミレスによる寿命末期にあることが判る。
【0044】
図9は、マイクロコンピュータ12の寿命末期の判定に関する部分の機能ブロック図である。マイクロコンピュータ(演算手段)12は、ROM121、RAM122と接続されている。ROM121は、寿命末期判定処理プログラム、図4(b)に示す換算データをLUTとして記憶しているものである。RAM122は、処理途中のデータを一時的に記憶するものである。
【0045】
マイクロコンピュータ12は、機能実行部として、各電位側検出電圧比較部123、差分比較部124、判定部125、閾値変更設定部126及び閾値補正部127を備えている。各電位側検出電圧比較部123は、出力端Po1からの入力値と予め設定された片側(高圧側)エミレスに対する寿命末期と判断し得る閾値V1との大小を比較するものである。また、各電位側検出電圧比較部123は、出力端Po2からの入力値がROM121内のLUTで図4(b)に示すように換算された値と予め設定された片側エミレス(低圧側)に対する寿命末期と判断し得る閾値V2との大小を比較するものである。
【0046】
差分比較部124は、出力端Po1からの入力値と出力端Po2からの入力値であって、図4(b)に示すように換算された値との差分の絶対値を算出し、この絶対値と差分に対する寿命末期と判断し得る閾値V3との大小を比較するものである。出力端Po2からの入力値を図4(b)に示すように換算したことで、出力端Po1からの入力値と直接差分を求めることができるようにしている。また、差分の絶対値としたのは、片側エミレスが高圧側、低圧側のいずれのフィラメント側で生じても、両者間の比較結果には差が出ないからである。さらに、差分の比較のみでは、正電位側の平滑電圧、負電位側の平滑電圧の双方が増大した場合には、差分は大きくならないが、正電位、負電位双方のへ威圧電圧が大きくなるということは、程度の差こそあれ、両側エミレスが生じている可能性が高い。差分比較部124のみでは、両側エミレスを効果的に検出できない場合がある。そこで、各電位側検出電圧比較部123でそれぞれの片側エミレスを検出することで、片側エミレス、両側エミレスの双方を効果的に検出できるようにしている。
【0047】
判定部125は、差分比較部124による比較結果が、閾値V3を超えている場合に寿命末期と判定するものである。また、この判定部125は、各電位側検出電圧比較部123により、出力端Po1からの入力値が閾値V1を超えている場合、あるいは出力端Po2からの入力値であって換算後の値が閾値V2を超えている場合に寿命末期と判定するものである。
【0048】
ここで、マイクロコンピュータ12によって実行される寿命末期判定処理について、図10を用いて説明する。図10のフローチャートは、放電灯FLが点灯されることによりスタートされる。出力端Po1及びP02から検出電圧が入力され(図略のA/D変換回路でデジタル値に変換された後)、まず、出力端P02からの入力値が、ROM121内のLUTを用いて、図4(b)に示す直線のように換算される(ステップS1)。次いで、出力端P01からの入力値と出力端P02からの入力値であってLUTで換算された値との差分の絶対値が算出され、さらにこの差分の絶対値と閾値V3との大小比較が行われる(ステップS3)。この比較の結果、差分の絶対値が閾値V3を超えているか否かの判定が行われる(ステップS5)。差分の絶対値が閾値V3を超えている場合には、寿命末期と判定され、寿命末期に対するインバータ制御の指示が行われる(ステップS7)。寿命末期に対するインバータ制御の指示は、マイクロコンピュータ12によってインバータ回路17に対して出力電力を抑制する制御を行うものである。具体的には、ハーフブリッジ駆動回路16に対して、オンデューティの小さい制御パルスをスイッチング素子Q2,Q3のゲートに出力するようにし、あるいはインバータ回路17の動作を停止させる。
【0049】
一方、差分の絶対値が閾値V3以下である場合には、放電灯FLが正常動作であるか、あるいは両側エミレス乃至はそれに近い状態が生じているかのいずれかであると考えられる。そこで、出力端P01からの入力値と閾値V1との大小比較、及び出力端P02からの入力値であって換算後の値と閾値V2との大小比較が行われる(ステップS9)。これらの大小比較の結果、いずれか一方の値が閾値V1,V2を超えているか否かの判定が行われる(ステップS11)。いずれか一方の値が閾値V1,V2を超えていると、高圧、低圧のいずれかの側のフィラメントに片側エミレスが生じているとして(あるいは両側エミレスが生じているとして)、寿命末期に対するインバータ制御に移行する(ステップS7)。一方、いずれの値も閾値V1,V2以下である場合には、放電灯FLは正常と判断されて、本フローを終了する。本フローチャートが所定周期で繰り返し実行されることで、異常が生じた場合に迅速かつ効果的に対処可能となる。
【0050】
なお、本発明は、以下の態様が採用可能である。
【0051】
(1)図9に戻り、閾値変更設定部126は、放電灯FLの点灯状態、例えば複数の調光点灯モードを有する点灯回路の場合に、放電灯FLの点灯状態に応じて、操作部31からの操作に応じて閾値をモードに対応して変更するものである。各閾値はROM121に予めモードに対応して記憶されており、閾値変更設定部126によって選択された各閾値が各電位側検出電圧比較部123、差分比較部124のそれぞれの閾値として用いられる。操作部31は例えば点灯回路の筐体の適所に配設され、モード切替ボタン等で設定可能であればよい。
【0052】
(2)図9に示す閾値補正部127は、温度センサ32で検出される放電灯FLの温度に応じて、各電位側検出電圧比較部123、差分比較部124で用いられる各閾値を補正するものである。温度センサ32は放電灯FLの近傍適所に配置されている。図11は、放電灯FLの温度と前記した平滑電圧(検出電圧)との関係を示す特性図である。図11に示すように、平滑電圧は、放電灯FLの温度が室温の辺りでピークを示し、温度が上昇するに従って小さくなる。同様に平滑電圧は、放電灯FLの温度が室温より低くなるに従って小さくなる。従って、閾値を室温辺りの所定温度で設定していると、点灯が継続され、あるいは使用環境によって放電灯FLの温度が室温から離れると、仮にエミレスが生じて寿命末期にあっても、平滑電圧が低い値として検出されるため、正常と誤判断されてしまう可能性がある。そこで、ROM121に、温度と補正値との関係をLUTとして予め記憶しており、検出温度に応じた補正値が元の閾値に加算される態様でもよいし、補正式を用いて算出する態様でもよい。補正は、室温からは離れるに応じて、図11の特性に対応して閾値が小さくなるように設定されればよい。
【0053】
(3)図10のフローチャートでは、差分比較部124の比較処理を、各電位側検出電圧比較部123の処理より先に行ったが、逆でもよい。
【0054】
(4)本実施形態では、負電位側の平滑電圧に対応する出力端P02からの入力値をLUTで図4(b)に示すように換算したが、逆に、出力端P01からの入力値を図4(a)
の実線と同一の物差しとなるように換算してもよい。
【0055】
(5)本実施形態では、電源eiとして+5Vを採用し、高圧側のコンデンサC14の最小検出電圧を−10Vとしたが、これに限定されない、要は、分圧抵抗R16,R17,R18で分圧された結果、コンデンサC14の最小検出電圧の時、出力端P02の電圧が0Vとなるように分圧されればよく、また分圧抵抗はR16,R17,R18の3個に限定されず、抵抗値によっては少なくとも2個であってもよいし、3個以上であってもよい。従って、分圧抵抗R16,R17,R18も等しい抵抗値である必要はない。このようにすることで、従来のように、正負両極側の電圧直流成分の検出回路を併設して設けた場合に分圧抵抗が2系列必要となるが、本実施形態では、一系統で済み、その分、部品点数が低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明に係る放電灯点灯回路の一実施形態を示す全体ブロック図である。
【図2】寿命末期検出回路の回路構成の一例を示す回路図である。
【図3】コンデンサC12の電圧(横軸)と出力端Po1の電圧(縦軸)との関係を示す図である。
【図4】コンデンサC14の電圧(横軸)と出力端Po2の電圧(縦軸)との関係を示す図である。
【図5】管電圧、正電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po1電圧、負電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po2電圧、Po2換算値、及びPo1電圧とPo2換算値(電圧)との差分電圧の関係を示す図で、放電灯FLが正常の場合の関係図である。
【図6】管電圧、正電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po1電圧、負電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po2電圧、Po2換算値、及びPo1電圧とPo2換算値(電圧)との差分電圧の関係を示す図で、放電灯FLが高圧側エミレスによる寿命末期である場合の関係図である。
【図7】管電圧、正電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po1電圧、負電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po2電圧、Po2換算値、及びPo1電圧とPo2換算値(電圧)との差分電圧の関係を示す図で、放電灯FLが低圧側エミレスによる寿命末期である場合の関係図である。
【図8】管電圧、正電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po1電圧、負電位のピーク値に応じた平滑電圧、Po2電圧、Po2換算値、及びPo1電圧とPo2換算値(電圧)との差分電圧の関係を示す図で、放電灯FLが両側エミレスによる寿命末期である場合の関係図である。
【図9】マイクロコンピュータの寿命末期の判定に関する部分の機能ブロック図である。
【図10】マイクロコンピュータによって実行される寿命末期判定処理のフローチャートである。
【図11】放電灯の温度と各電位側の平滑電圧(検出電圧)との関係を示す特性図である。
【符号の説明】
【0057】
1 放電灯点灯回路
12 マイクロコンピュータ
18 寿命末期検出回路
FL 放電灯
R11,R12,R13 分圧抵抗
D11,D12 ダイオード
C12,C14 コンデンサ
R14,R15,R16,R17,R18 分圧抵抗
122 RAM
123 各電位側検出電圧比較部
124 差分比較部
125 判定部
126 閾値変更設定部
127 閾値補正部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
インバータ回路からの電力供給を受けて点灯される放電灯が寿命末期と判断されたとき前記電力供給を制御する放電灯点灯回路において、
放電灯の両端電圧を正負両電位に整流する整流回路と、一方の電位の整流電圧を平滑し、この平滑電圧を分圧抵抗で第1の所定範囲内の電圧に分圧して第1の検出電圧を得る第1の検出回路と、他方の電位の整流電圧を平滑し、この平滑電圧を、該平滑電圧が一端に印加されると共に他端に前記一方の電位と同電位の所定電源電圧が印加される分圧抵抗で、一方の電位側と同電位の第2の設定範囲内の電圧に分圧して第2の検出電圧を得る第2の検出回路と、第1、第2の検出電圧であってA/D変換された第1、第2の検出電圧の一方を他方の検出電圧の変化範囲と一致させる換算を行う換算部を有する演算手段とを備え、
前記演算手段は、さらに、該演算手段で得られ、第1、第2の検出電圧のうち換算された後の換算電圧及び第1、第2の検出電圧のうち換算されていない検出電圧の少なくとも一方が各電位側に対して設定された寿命末期に対応する閾値を超えたとき制御信号を出力する第1の比較手段と、前記演算手段で得られ、第1、第2の検出電圧のうち換算された後の換算電圧と第1、第2の検出電圧のうち換算されていない検出電圧との差分を算出し、この差分電圧が管電圧に対して設定された寿命末期に対応する閾値を超えたとき制御信号を出力する第2の比較手段とを備え、第1、第2の比較手段からの制御信号により前記インバータ回路に対して前記電力供給の制御を行わせることを特徴とする放電灯点灯回路。
【請求項2】
前記一方の電位は正電位であり、前記換算部は、前記第2の検出電圧を前記第1の設定範囲内の電圧に換算することを特徴とする請求項1記載の放電灯点灯回路。
【請求項3】
前記演算手段を駆動するための、所定レベルの電圧を生成する直流電源を有し、前記第2の検出回路の前記所定電源電圧は、前記直流電源の電圧であることを特徴とする請求項2記載の放電灯点灯回路。
【請求項4】
前記各閾値を変更する調整部を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の放電灯点灯回路。
【請求項5】
前記放電灯近傍の温度を検出する温度センサを備え、前記演算手段は、検出温度に応じて前記各閾値を補正する補正手段を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の放電灯点灯回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−33859(P2010−33859A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−194323(P2008−194323)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000001074)クロイ電機株式会社 (49)
【Fターム(参考)】