説明

文字入力装置および携帯端末

【課題】ユーザによる位置指定の手順を実施せずに、操作性の高いソフトウェアキーボードの提示を可能とする文字入力装置および携帯端末を提供する。
【解決手段】文字入力装置100は、タッチパネルに表示される文字入力画面の表示イベントを検出した場合に、筐体の傾き情報を取得する傾き検出部107と、傾き情報から文字入力画面の表示方向を判定する表示方向判別部121と、文字入力画面の表示方向および傾き情報から、筐体を保持する手に関する第1の持ち手情報を生成する第1の持ち手判別部120と、文字入力領域情報を記憶するレイアウトテーブル114と、文字入力画面の表示方向および第1の持ち手判別部120で生成された第1の持ち手情報をもとに、レイアウトテーブル114から文字入力領域情報を取得し、文字入力画面に文字入力領域を表示する表示制御部105とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文字入力装置および携帯端末に関し、特に、操作性の高いソフトウェアキーボードを提供可能な文字入力装置および携帯端末に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の携帯端末などでは、ハードウェアキーボードを搭載せずに、タッチパネル液晶にソフトウェアキーボードなどの文字入力機能を表示することで、ユーザによる文字入力を実現する方法がとられている。
【0003】
タッチパネル液晶にソフトウェアキーボードを組み合わせた文字入力の仕組みにおいて、ソフトウェアキーボードの大きさや位置はユーザの文字入力時の操作性に影響するため、適切な大きさ、位置に表示できるような手法が提案されている。
【0004】
従来の手法によれば、例えば、タッチパネル式の液晶ディスプレイを保持した端末において、ユーザによる2箇所のタッチ操作により文字入力領域(ソフトウェアキーボード)のサイズおよび表示位置を算出し、あらかじめ記憶している複数の大きさのソフトウェアキーボードから適切なものを選択し、算出された位置に配置する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−122890号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来技術では、ユーザにより2箇所タッチされた情報を基に、大きさ、位置を算出してソフトウェアキーボードを提示する仕組みとなっているため、ユーザは文字入力をする際に位置・大きさを指定する手順を実施する必要がある。
【0007】
本発明は、上記従来の事情に鑑みてなされたものであって、ソフトウェアキーボードを表示する際に、端末の傾きによって持ち手を推測し、持ち手に応じて入力しやすい領域を提示することにより、ユーザによる位置指定の手順を実施せずに、操作性の高いソフトウェアキーボードの提示を可能とする文字入力装置および携帯端末を提供することを目的としている。
【0008】
さらに、ソフトウェアキーボードを表示するに至るまでの、タッチパネル液晶に対するタッチ入力の履歴をもとに持ち手を判断する仕組みを合わせて提供することで、傾きによる持ち手推測よりも精度の高い持ち手判断を実現し、適切なソフトウェアキーボードの提示を可能とする文字入力装置および携帯端末を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の文字入力装置は、タッチパネルを有し、片手で保持可能な大きさの扁平な筐体を含む文字入力装置であって、前記タッチパネルに表示される文字入力画面の表示イベントを検出した場合に、前記筐体の傾き情報を取得する傾き検出部と、前記傾き情報から前記文字入力画面の表示方向を判定する表示方向判別部と、前記文字入力画面の表示方向および前記傾き情報から、前記筐体を保持する手に関する第1の持ち手情報を生成する第1の持ち手判別部と、前記筐体が右手で保持されて右手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する右手用レイアウト、前記筐体が左手で保持されて左手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する左手用レイアウト、および前記筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される場合に適したキー配置に対応する両手用レイアウトを含む文字入力領域情報を記憶するレイアウトテーブルと、前記文字入力画面の表示方向および前記第1の持ち手判別部で生成された前記第1の持ち手情報をもとに、前記レイアウトテーブルから前記文字入力領域情報を取得し、前記文字入力画面に文字入力領域を表示する表示制御部と、を備えることを特徴とする。
【0010】
上記構成によれば、タッチパネルの文字入力画面に文字入力領域を表示する際に、筐体の傾きによって持ち手を推測し、持ち手に応じて入力しやすい文字入力領域を提示するので、ユーザによる位置指定の手順を実施せずに、操作性の高い文字入力領域を提示することができる。
【0011】
また、本発明の文字入力装置において、前記傾き検出部は、前記筐体の傾きを検出する加速度センサを有し、前記第1の持ち手判別部は、前記筐体の右上端が左上端より上にある場合に、前記筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態にあると判定し、前記筐体の左上端が右上端より上にある場合に、前記筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態にあると判定し、前記筐体の左上端と右上端がほぼ水平の場合に、前記筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される状態にあると判定することを特徴とする。
【0012】
上記構成によれば、加速度センサにより自動的に筐体の傾きを検出して持ち手を推測し、持ち手に応じて入力しやすい文字入力領域を表示するので、文字入力をする際のユーザの負担を軽減することができる。
【0013】
また、本発明の文字入力装置は、前記タッチパネルへのタッチ入力履歴を取得する入力履歴管理部と、前記タッチ入力履歴から前記筐体を保持する手に関する第2の持ち手情報を生成する第2の持ち手判別部とを備え、前記表示制御部は、前記第2の持ち手情報を参照して前記文字入力領域を表示することを特徴とする。
【0014】
上記構成によれば、文字入力領域を表示するに至るまでのタッチパネルに対する入力履歴に基づく持ち手判別を組み合わせることにより、傾きによる持ち手判別だけの場合よりも精度の高い持ち手判断を実現し、適切な文字入力領域を提示することができる。
【0015】
また、本発明の文字入力装置において、前記タッチ入力履歴は、スクロール履歴を含み、前記第2の持ち手判別部は、前記スクロール履歴が前記タッチパネルの右下を中心とした弧を描く場合に、前記筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態にあると判定し、前記スクロール履歴が前記タッチパネルの左下を中心とした弧を描く場合に、前記筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態にあると判定し、前記スクロール履歴が弧を描かない場合に、前記筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される状態にあると判定することを特徴とする。
【0016】
上記構成によれば、筐体を片手で保持しその手の親指でスクロール操作を行なうと、入力の軌跡が親指付け根を軸にした弧を描くので、スクロール履歴に基づき持ち手を正確に判断することができる。
【0017】
また、本発明の文字入力装置において、前記第1の持ち手判別部により、前記筐体が右手または左手で保持されて右手または左手で入力される状態にあると判定され、前記第2の持ち手判別部により、前記筐体が左手または右手で保持されて左手または右手で入力される状態にあると判定された場合に、前記表示制御部は、前記文字入力領域を前記両手用レイアウトで表示することを特徴とする。
【0018】
上記構成によれば、第1の持ち手判別部と第2の持ち手判別部の判定が食い違う場合に文字入力領域を両手用レイアウトで表示するので、ユーザに与える不都合を軽減することができる。
【0019】
また、本発明の文字入力装置は、前記タッチパネルへの文字入力中に横に引いた線の入力を検出するタッチイベント検出部と、前記横に引いた線の入力の内容に基づいて、前記レイアウトテーブルを更新するレイアウト更新部と、を備えることを特徴とする。
【0020】
上記構成によれば、文字入力中はタッチやフリックによる入力がメインになるため、横に引いた線の入力を文字入力と別のイベントとして把握し、横に引いた線に基づいて文字表示領域を確定することができる。
【0021】
また、本発明の文字入力装置において、前記タッチイベント検出部は、前記横に引いた線の左限界、右限界および上限界を検出し、前記レイアウト更新部は、前記左限界、右限界および上限界、並びに前記タッチパネルの下端で囲まれる領域を前記文字入力領域とするようにレイアウトを更新することを特徴とする。
【0022】
上記構成によれば、横に引いた線の入力の届く範囲は手のサイズに応じて変わるため、文字表示領域のサイズや位置をユーザ毎の特徴に合わせてカスタマイズすることができる。
【0023】
また、本発明の携帯端末は、上記文字入力装置を備えることを特徴とする。
【0024】
上記構成によれば、筐体の傾きによって持ち手を推測し、持ち手に応じて入力しやすい文字入力領域を提示するので、操作性の高い文字入力領域を有する携帯端末を提供することができる。
【発明の効果】
【0025】
以上説明したように、本発明にかかる文字入力装置および携帯端末によれば、ソフトウェアキーボードを表示する際に、端末の傾きによって持ち手を推測し、持ち手に応じて入力しやすい領域を提示することにより、ユーザによる位置指定の手順を実施せずに、操作性の高いソフトウェアキーボードを提示することができる。
【0026】
また、ソフトウェアキーボードを表示するに至るまでの、タッチパネル液晶に対するタッチ入力の履歴をもとに持ち手を判断する仕組みを組み合わせることにより、傾きによる持ち手推測だけの場合よりも精度の高い持ち手判断を実現し、適切なソフトウェアキーボードを提示することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態にかかる文字入力装置100の概略構成を説明するためのブロック図。
【図2】本発明の実施の形態において筐体の傾きによる持ち手判別方法を説明するためのフローチャート。
【図3】傾きによる持ち手判別部120において行われる傾きによる持ち手判別を説明するための図。
【図4】傾きによる持ち手判別部120において行われる判別方法を説明するための図。
【図5】端末が縦向きの場合に、持ち方に応じて最適なキー配置を提供する方法を説明するための図。
【図6】端末が横向きの場合に、持ち方に応じて最適なキー配置を提供する方法を説明するための図。
【図7】本発明の実施の形態において入力履歴による持ち手判別方法を説明するためのフローチャート。
【図8】入力履歴による持ち手判別を説明するための図。
【図9】傾きによる持ち手判別に加えて、入力履歴による持ち手判別を加えることで精度を向上させる方法を示す図。
【図10】文字入力領域の表示位置をカスタマイズする手順を説明するためのフローチャート。
【図11】筐体が縦向きの場合に、指による横に引いた線の入力を実施し、文字入力領域レイアウトを更新する方法を説明するための図。
【図12】筐体が横向きの場合に、指による横に引いた線の入力を実施し、文字入力領域レイアウトを更新する方法を説明するための図。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態にかかる文字入力装置、携帯端末について図面を参照して詳細に説明する。
【0029】
図1は、本発明の実施の形態にかかる文字入力装置100の概略構成を説明するためのブロック図である。本実施の形態の文字入力装置100は、片手で保持可能な大きさの扁平な筐体を有するとともに、液晶パネル102とタッチセンサ103(以下タッチパネルと呼ぶ)を含むディスプレイ101と、液晶パネル102に文字入力領域を設定する文字入力領域表示制御部106を含む表示制御部105と、タッチパネルへの文字入力中に横に引いた線の入力を検出するタッチイベント検出部104と、タッチパネルに表示される文字入力画面の表示イベントを検出した場合に、地磁気センサ108および加速度センサ109により筐体の傾き情報を取得する傾き情報生成部110を含む傾き検出部107と、タッチイベント検出部104および傾き検出部107からの情報に基づき文字入力領域を管理する文字入力領域管理部111とを備える。
【0030】
文字入力領域管理部111は、傾き情報生成部110で生成される筐体の傾き情報に基づいてタッチパネルにおける文字入力画面の表示方向を判定する表示方向判別部121と、文字入力画面の表示方向および傾き情報から、筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態にあるか、筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態にあるか、または筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される状態にあるかを判別する傾きによる持ち手判別部120と、タッチパネルへのタッチ入力履歴を記憶する入力履歴119を管理する入力履歴管理部118と、タッチ入力履歴から筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態にあるか、筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態にあるか、または筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される状態にあるかを判別する入力履歴による持ち手判別部117とを有する持ち手判別部116を備える。
【0031】
また、文字入力領域管理部111は、筐体が右手で保持されて右手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する右手用レイアウト、筐体が左手で保持されて左手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する左手用レイアウト、および筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される場合に適したキー配置に対応する両手用レイアウトを含む文字入力領域情報を記憶するレイアウトテーブル114と、タッチイベント検出部104から供給される横に引いた線の入力の内容に基づいて、レイアウトテーブル114を更新するレイアウト更新部115と、タッチパネルにおける文字入力画面の表示方向、傾きによる持ち手判別情報、および入力履歴による持ち手判別情報に基づいて、レイアウトテーブル114に格納されている文字入力領域のレイアウトを選択するレイアウト選択部113とを有するレイアウト管理部112を備える。
【0032】
図2は、本発明の実施の形態において筐体の傾きによる持ち手判別方法を説明するためのフローチャートである。傾き検出部107は、タッチパネルに表示される文字入力画面の表示イベントを検出した場合に(ステップS201)、地磁気センサ108および加速度センサ109から筐体の傾き情報を取得する(ステップS202)。
【0033】
次に、表示方向判別部121は、筐体の傾き情報からタッチパネルに表示する文字入力画面の表示方向を判定する(ステップS203)。そして、傾きによる持ち手判別部120は、文字入力画面の表示方向および傾き情報から、筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態にあるか、筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態にあるか、または筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される状態にあるかを判別する(ステップS204)。
【0034】
次に、表示制御部105は、文字入力画面の表示方向および傾きによる持ち手判別部120で生成される持ち手情報をもとに、レイアウトテーブル114から文字入力領域情報を取得し(ステップS205)、タッチパネルの文字入力画面に文字入力領域を表示する(ステップS206)。
【0035】
レイアウトテーブル114には、文字入力領域情報として、筐体が右手で保持されて右手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する右手用レイアウト(パターン1)、筐体が左手で保持されて左手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する左手用レイアウト(パターン2)、および筐体が右手/左手で保持されて左手/右手で入力される場合に適したキー配置に対応する両手用レイアウト(パターン3)が記憶されている。
【0036】
図3は、傾きによる持ち手判別部120において行われる傾きによる持ち手判別を説明するための図であり、図3(a)は筐体301が右手302で保持されて右手親指で入力される場合、図3(b)は筐体304が左手305で保持されて左手親指で入力される場合を示す。
【0037】
傾きによる判別基準の背景は、個人のくせや操作時の環境に依存するが、端末301を右手302で持った場合は端末301の右上端が左上端より上になり、端末304を左手305で持った場合は端末304の左上端が右上端より上になり、一方の手で端末を持って他方の手で入力する場合は、端末の上端が水平方向を保つことが多いという事実である。なお、片手持ちの場合は傾かないことはあるが、上記と逆向きに傾くことはあまり無い。
【0038】
この場合、傾きによる持ち手判別に必要な情報は、(1)端末が左右どちらに傾いているかに関する情報、(2)画面の表示方向の情報であるが、(1)は加速度センサ109により端末の傾きを検出することによって判断可能であり、(2)は端末の傾きに既存アルゴリズムを適用することよって判断可能である。
【0039】
図4は、傾きによる持ち手判別部120において行われる判別方法を説明するための図である。図4(a)は、XY平面を水平面とし、Z軸を垂直方向とする3次元空間に携帯端末401が縦方向に保持された場合を示し、端末401の左上端が座標A(X,Y,Z)であり、端末401の右上端が座標B(X,Y,Z)であるとする。この場合、Z>Zであれば、筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態であり、Z<Zであれば、筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態であり、Z≒Zであれば、一方の手で端末を持って他方の手で入力する状態であると判別する。
【0040】
図4(b)は、3次元空間に携帯端末403が横方向に保持された場合を示し、端末403の左上端が座標C(X,Y,Z)であり、端末403の右上端が座標D(X,Y,Z)であるとする。この場合、Z>Zであれば、筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態であり、Z<Zであれば、筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態であり、Z≒Zであれば、一方の手で端末を持って他方の手で入力する状態であると判別する。
【0041】
また、端末の傾きは、加速度センサ109により検出される加速度の向きによっても判断される。すなわち、持ち手が右手の場合には、加速度センサ109により検出される加速度の向き(例えば、端末の表示面に小さなボールを置いた場合にボールが転がる方向)が、端末筐体の右上端から左下端へ向かう方向に検出される(つまり、端末の表示面の傾きも、ボールが端末筐体の右上端から左下端へ向かう方向に転がるように傾いている)。一方、持ち手が左手の場合には、加速度センサ109により検出される加速度の向き(=ボールが転がる方向)が、端末筐体の左上端から右下端へ向かう方向に検出される。したがって、加速度の向きを検出することにより持ち手を判別することができる。
【0042】
図5は、端末が縦向きの場合に、持ち方に応じて最適なキー配置を提供する方法を説明するための図である。図5(a)は端末501を左手502で保持し左手親指で入力する状態と判定した場合の文字入力領域503の位置(パターン2)を示し、図5(b)は端末504を右手505で保持し右手親指で入力する状態と判定した場合の文字入力領域506の位置(パターン1)を示す。
【0043】
この場合、片手入力時の親指の付け根部分には入力領域を割り当てない。また、ひとつのキーあたりの領域サイズを均等にしてもよいが、親指からの距離に応じてひとつのキーあたりの領域サイズを変動させてもよい。
【0044】
図5(c)は、端末507を一方の手508で保持し他方の手509で入力する状態と判定した場合の文字入力領域510の位置(パターン3)を示す。この場合は文字入力領域510が表示画面の中央に配置され、ひとつのキーあたりの入力領域サイズは均等である。
【0045】
図6は、端末が横向きの場合に、持ち方に応じて最適なキー配置を提供する方法を説明するための図である。図6(a)は端末601を左手602で保持し左手親指で入力する状態と判定した場合の文字入力領域603の位置を示し(パターン2)、図6(b)は端末605を右手606で保持し右手親指で入力する状態と判定した場合の文字入力領域607の位置(パターン1)を示す。
【0046】
端末が横向きの場合は、親指の付け根部分に入力領域を割り当てないとともに、親指が届かない部分に文字入力領域を割り当てない。
【0047】
図6(c)は、端末609を一方の手610で保持し他方の手611で入力する状態と判定した場合の文字入力領域612の位置(パターン3)を示す。この場合は文字入力領域612が表示画面の中央に配置され、ひとつのキーあたりの入力領域サイズが均等である。
【0048】
図7は、本発明の実施の形態において入力履歴による持ち手判別方法を説明するためのフローチャートである。入力履歴管理部118は、タッチパネルへのスクロール履歴を含むタッチ入力履歴をタッチイベント検出部104から取得し(ステップS701)、入力履歴データベース119に格納する。入力履歴による持ち手判別部117は、入力履歴データベース119に格納されたタッチ入力履歴から持ち手を判定する(ステップS702)。
【0049】
次に、表示制御部105は、文字入力画面の表示方向および入力履歴による持ち手判別部117で生成される持ち手情報をもとに、レイアウトテーブル114から文字入力領域情報を取得し(ステップS703)、タッチパネルの文字入力画面に文字入力領域を表示する(ステップS704)。
【0050】
図8は、入力履歴による持ち手判別を説明するための図であり、図8(a)は筐体801が右手802で保持されて右手親指で入力する場合、図8(b)は筐体806が左手807で保持されて左手親指で入力する場合を示す。
【0051】
入力履歴による判別基準の背景は、個人のくせや操作時の環境に依存するが、スクロール等の操作を実施した際に、入力の軌跡804,805,809,810が親指付け根803,808を軸にして弧を描くという事実である。この傾向はスクロール軌跡の長さが長いほど顕著に表れる。
【0052】
すなわち筐体801を右手802で持った場合、スクロール操作が筐体801の右上から左下方向にそれ、筐体806を左手807で持った場合、スクロール操作が筐体806の左上から右下方向にそれる。なお、一方の手で筐体を保持して他方の手で入力する場合は、親指の付け根に束縛されないためこの傾向が発生しにくい。
【0053】
この判別のために必要な情報は、ユーザのスクロール入力の情報であり、複数の履歴があると判定の精度が増す。
【0054】
この判別の実現方法は、スクロール入力の情報を端末履歴として保持しておき、スクロール履歴が右上から左下、又は左下から右上の入力情報が多い場合に右手入力と判定し、スクロール履歴が左上から右下、又は右下から左上の入力情報が多い場合に左手入力と判定する。なお、判定が混在している場合は、軌跡が長いものを優先して判断する。一方、持ち手の判別がつかない場合は、一方の手で筐体を保持して他方の手で入力する状態(両手入力)と判別する。
【0055】
図9は、傾きによる持ち手判別に加えて、入力履歴による持ち手判別を加えることで精度を向上させる方法を示す。筐体の傾きおよび入力履歴の2つの判別基準によって得られた持ち手情報を基に、同図のような判断を実施し、持ち手を判別する。
【0056】
すなわち、傾きによる判別とタッチパネル入力履歴による判別が一致する場合は、一致する持ち手を推定する。また、一方の判別が成立し、他方の判別が両手すなわち片手で筐体を保持して他方の手で入力する場合、判別不可または情報なしの場合は、一方の判別に従って持ち手を推定する。また、両方の判別が逆の場合は、片手で筐体を保持して他方の手で入力する状態であると推定する。
【0057】
なお、同図のパターン1は、端末を右手で保持し右手親指で入力する状態と判定した場合の文字入力領域の配置(図5(b))であり、パターン2は、端末を左手で保持し左手親指で入力する状態と判定した場合の文字入力領域の配置(図5(a))であり、パターン3は、端末を一方の手で保持し他方の手で入力する状態と判定した場合の文字入力領域の配置(図5(c))である。
【0058】
図10は、文字入力領域の表示位置をカスタマイズする手順を説明するためのフローチャートである。タッチイベント検出部104において文字入力中に横に引いた線の入力発生を検出し(ステップS1001)、レイアウト更新部115が、横に引いた線の入力の内容に基づき該当するレイアウトテーブル114を更新する(ステップS1002)。
【0059】
この手順の背景は、文字入力中はタッチやフリックによる入力がメインになるため、横に引いた線の入力が文字入力とは別のイベントとして把握しやすいという事実である。横に引いた線の入力の届く範囲は、手のサイズなどに応じて変わるため、表示領域のサイズや位置をユーザ毎の特徴に合わせられる。
【0060】
この手順に必要な情報は、タッチパネルの入力イベント情報である。また、この手順の実現方法は、文字入力中に横に引いた線の入力を検知した場合、引いた線の内容を元に文字入力領域のレイアウト(サイズ、位置)情報を更新する。
【0061】
図11は、筐体が縦向きの場合に、指による横に引いた線の入力を実施し、文字入力領域レイアウトを更新する方法を説明するための図であり、図11(a)は筐体1101を右手1102で持った場合の例、図11(b)は、筐体1111を左手1112で持った場合の例、図11(c)は筐体1121を片手1122で持ち、他方の手1123で入力する場合の例を示す。
【0062】
図11(a)では、右手1102の親指で遠い位置から近い位置まで線(横棒)1103を入力する(向きはどちらでもよい)。横棒1103の上下位置は容易に届く範囲でなるべく上が好ましい。親指に近い位置は容易に操作できる範囲でなるべく近くまで入力する。引いた線1103を元に左限界1106、右限界1107および上限界1108を検出し、文字入力領域1110を確定することができる。
【0063】
図11(b)では、左手1112の親指で遠い位置から近い位置まで線(横棒)1113を入力する。引いた線1113を元に左限界1116、右限界1117および上限界1118を検出し、文字入力領域1120を確定することができる。
【0064】
また、図11(c)では、右手1123の人差し指で遠い位置から近い位置まで線(横棒)1124を入力する。引いた線1124を元に左限界1127、右限界1128および上限界1129を検出し、文字入力領域1131を確定することができる。
【0065】
図12は、筐体が横向きの場合に、指による横に引いた線の入力を実施し、文字入力領域レイアウトを更新する方法を説明するための図である。この場合も、親指で遠いところ側から親指の手前まで横棒1202を入力する(向きはどちらでもよい)。線(横棒)1202の上下位置は容易に届く範囲でなるべく上が好ましい。親指の手前は容易に操作できる範囲でなるべく近くまでが好ましい。
【0066】
引いた線1202を元に左限界1205、右限界1206および上限界1207を検出し、文字入力領域1209を確定することができる。なお、文字入力領域1209を上方に配置しすぎると文字入力以外の領域が見えなくなるので好ましくない。また、右限界1206より右の部分は入力に利用しないようにする。
【0067】
以上説明したように、本発明の実施の形態にかかる文字入力装置によれば、文字入力領域を表示する際に、端末の傾きによって持ち手を推測し、持ち手に応じて入力しやすい領域を提示することにより、ユーザによる位置指定の手順を実施せずに、操作性の高い文字入力領域を提示することができる。
【0068】
また、文字入力領域を表示するに至るまでの、タッチパネルに対するタッチ入力の履歴をもとに持ち手を判断する仕組みを組み合わせることにより、傾きによる持ち手推測だけの場合よりも精度の高い持ち手判断を実現し、適切な文字入力領域を提示することができる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明に係る文字入力装置は、操作性の高いソフトウェアキーボードの提供できるという効果を奏し、携帯端末の文字入力装置等として利用可能である。
【符号の説明】
【0070】
100 文字入力装置
101 ディスプレイ
102 液晶パネル
103 タッチセンサ
104 タッチイベント検出部
105 表示制御部
106 文字入力領域表示制御部
107 傾き検出部
108 地磁気センサ
109 加速度センサ
110 傾き情報生成部
111 文字入力領域管理部
112 レイアウト管理部
113 レイアウト選択部
114 レイアウトテーブル
115 レイアウト更新部
116 持ち手判別部
117 入力履歴による持ち手判別部
118 入力履歴管理部
119 入力履歴データベース
120 傾きによる持ち手判別部
121 表示方向判別部
301 筐体
302 右手
303 文字入力領域
305 左手
804,805 入力軌跡
803 親指付け根
1106 左限界
1107 右限界
1108 上限界

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タッチパネルを有し、片手で保持可能な大きさの扁平な筐体を含む文字入力装置であって、
前記タッチパネルに表示される文字入力画面の表示イベントを検出した場合に、前記筐体の傾き情報を取得する傾き検出部と、
前記傾き情報から前記文字入力画面の表示方向を判定する表示方向判別部と、
前記文字入力画面の表示方向および前記傾き情報から、前記筐体を保持する手に関する第1の持ち手情報を生成する第1の持ち手判別部と、
前記筐体が右手で保持されて右手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する右手用レイアウト、前記筐体が左手で保持されて左手親指で入力される場合に適したキー配置に対応する左手用レイアウト、および前記筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される場合に適したキー配置に対応する両手用レイアウトを含む文字入力領域情報を記憶するレイアウトテーブルと、
前記文字入力画面の表示方向および前記第1の持ち手判別部で生成された前記第1の持ち手情報をもとに、前記レイアウトテーブルから前記文字入力領域情報を取得し、前記文字入力画面に文字入力領域を表示する表示制御部と、を備える文字入力装置。
【請求項2】
請求項1記載の文字入力装置であって、
前記傾き検出部は、前記筐体の傾きを検出する加速度センサを有し、
前記第1の持ち手判別部は、前記筐体の右上端が左上端より上にある場合に、前記筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態にあると判定し、
前記筐体の左上端が右上端より上にある場合に、前記筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態にあると判定し、
前記筐体の左上端と右上端がほぼ水平の場合に、前記筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される状態にあると判定することを特徴とする文字入力装置。
【請求項3】
請求項1記載の文字入力装置であって、
前記タッチパネルへのタッチ入力履歴を取得する入力履歴管理部と、
前記タッチ入力履歴から前記筐体を保持する手に関する第2の持ち手情報を生成する第2の持ち手判別部とを備え、
前記表示制御部は、前記第2の持ち手情報を参照して前記文字入力領域を表示することを特徴とする文字入力装置。
【請求項4】
請求項3記載の文字入力装置であって、
前記タッチ入力履歴は、スクロール履歴を含み、
前記第2の持ち手判別部は、前記スクロール履歴が前記タッチパネルの右下を中心とした弧を描く場合に、前記筐体が右手で保持されて右手親指で入力される状態にあると判定し、
前記スクロール履歴が前記タッチパネルの左下を中心とした弧を描く場合に、前記筐体が左手で保持されて左手親指で入力される状態にあると判定し、
前記スクロール履歴が弧を描かない場合に、前記筐体が右手または左手で保持されて左手または右手で入力される状態にあると判定することを特徴とする文字入力装置。
【請求項5】
請求項4記載の文字入力装置であって、
前記第1の持ち手判別部により、前記筐体が右手または左手で保持されて右手または左手で入力される状態にあると判定され、
前記第2の持ち手判別部により、前記筐体が左手または右手で保持されて左手または右手で入力される状態にあると判定された場合に、
前記表示制御部は、前記文字入力領域を前記両手用レイアウトで表示することを特徴とする文字入力装置。
【請求項6】
請求項1記載の文字入力装置であって、
前記タッチパネルへの文字入力中に横に引いた線の入力を検出するタッチイベント検出部と、
前記横に引いた線の入力の内容に基づいて、前記レイアウトテーブルを更新するレイアウト更新部と、を備えることを特徴とする文字入力装置。
【請求項7】
請求項6記載の文字入力装置であって、
前記タッチイベント検出部は、前記横に引いた線の左限界、右限界および上限界を検出し、
前記レイアウト更新部は、前記左限界、右限界および上限界、並びに前記タッチパネルの下端で囲まれる領域を前記文字入力領域とするようにレイアウトを更新することを特徴とする文字入力装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の文字入力装置を備えることを特徴とする携帯端末。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−256153(P2012−256153A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128119(P2011−128119)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】