説明

文書管理システム、印刷装置、文書管理装置、プログラム

【課題】紙媒体から文書の履歴を把握可能にする。
【解決手段】コピーを行う複合機は、読み取られた第1の紙文書の画像データが印刷され作成される第2の紙文書の紙指紋IDのQRコードを生成するQRコード生成部53と、読み取られた第1の紙文書から検出されたQRコードに対して、復元可能な状態で判読不能にデータ加工処理を行う判読不能化処理部65と、判読不能にデータ加工されたQRコードデータを含む第1の紙文書の画像データに、生成されたQRコードを付加して印刷することで第2の紙文書を作成する印刷実行部55と、を有する。また、検証を行う複合機は、読み取られた第2の紙文書の画像データから検出されたQRコードのうち判読不能にデータ加工されたコードデータを判読可能に復元する判読可能化処理部76と、判読可能にされたQRコードから得られる紙指紋IDに基づき紙指紋に関する情報を取得して、出力する情報出力部73とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、文書管理システム、特に、複写される文書の流通管理に関する。
【背景技術】
【0002】
近年では、文書をコピーして使用することは一般的であるが、コピーの品質向上やセキュリティ上の観点から文書の履歴管理が重要視されてきている。例えば、文書の不正コピーを防止するために、紙指紋を利用する手法がある。例えば、文書の画像データを印刷しようとする紙媒体の紙指紋を取得し、その紙指紋及び紙媒体IDを管理サーバに登録すると共に、紙媒体IDを、例えばQRコード等にコード化して文書の画像データと共に紙媒体に印刷する。なお、紙指紋は、紙媒体の繊維質材料の絡み具合のランダム性を用いて紙媒体を識別することができる(例えば、特許文献1,2)。そして、その紙媒体をコピー使用するときに、紙媒体そのものを撮像して取得した紙指紋を、紙媒体のQRコードに基づき管理サーバから取得した紙指紋と照合する。このように、文書がコピーされるときに紙媒体の検証を行うことで、コピーにより作成される文書の履歴管理と、文書の不正コピーの防止等を行うことができる。
【0003】
なお、従来から紙媒体に情報を埋め込んで紙媒体の有効性判断や不正コピーによる情報漏洩防止を図るための技術として、例えば特許文献2〜4がある。
【0004】
【特許文献1】特開2006−18525号公報
【特許文献2】特開2000−001031号公報
【特許文献3】特開2006−072707号公報
【特許文献4】特開平07−254038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来においては、何度かコピーされて作成された文書の履歴を確認するためには、文書の履歴を管理するサーバに問い合わせて確認をしなければならなかった。つまり、紙文書を入手した場合に、その紙文書の履歴をその紙面上で確認することができなかった。
【0006】
本発明は、紙媒体から文書の履歴を把握可能にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のような目的を達成するために、本発明に係る文書管理システムは、第1の紙文書を読み取る第1の読取手段と、前記第1の読取手段により読み取られた第1の紙文書の画像データが印刷されることで作成される第2の紙文書の用紙表面を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋の特定情報をエンコードしてコードデータを生成する生成処理手段と、読み取られた第1の紙文書の画像データを解析することによって第1の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段により検出されたコードデータに対して、復元可能な状態で判読不能にデータ加工処理を行う判読不能化処理手段と、前記判読不能化処理手段により判読不能にデータ加工されたコードデータを含む第1の紙文書の画像データに、前記生成手段により生成されたコードデータを付加して印刷することで第2の紙文書を作成する印刷手段と、前記印刷手段により作成された第2の紙文書を読み取る第2の読取手段と、読み取られた第2の紙文書の画像データを解析することによって第2の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する第2の検出手段と、前記第2の検出手段により検出されたコードデータのうち判読不能にデータ加工されたコードデータを判読可能に復元する判読可能化処理手段と、判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋に関する情報を出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【0008】
また、紙指紋登録情報を記憶する記憶手段と、前記撮像手段により撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋に関連する情報を紙指紋登録情報として前記記憶手段へ登録する登録手段と、判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋登録情報を前記記憶手段から取得する取得手段とを有し、前記出力手段は、前記取得手段により取得された情報を出力することを特徴とする。
【0009】
また、前記判読不能化処理手段によるデータ加工処理及び前記判読可能化処理手段による復元処理に共通して用いる画像データを保持し、あるいは共通して用いる方法を指定する手段を有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係る印刷装置は、第1の紙文書の画像データが印刷されることで作成される第2の紙文書の用紙表面を撮像する撮像手段と、前記撮像手段により撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋の特定情報をエンコードしてコードデータを生成する生成処理手段と、読み取られた第1の紙文書の画像データを解析することによって第1の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する第1の検出手段と、前記第1の検出手段により検出されたコードデータに対して、復元可能な状態で判読不能にデータ加工処理を行う判読不能化処理手段と、前記判読不能化処理手段により判読不能にデータ加工されたコードデータを含む第1の紙文書の画像データに、前記生成手段により生成されたコードデータを付加して印刷することで第2の紙文書を作成する印刷手段とを有することを特徴とする。
【0011】
また、前記判読不能化処理手段は、コードデータにマスク画像データを合成するデータ加工処理を行うことを特徴とする。
【0012】
また、前記判読不能化処理手段は、コードデータを、コードデータを構成する色以外の色で塗りつぶすデータ加工処理を行うことを特徴とする。
【0013】
また、前記判読不能化処理手段は、コードデータに、コードデータの描画単位よりも小さい描画単位のドットを付加するデータ加工処理を行うことを特徴とする。
【0014】
また、前記判読不能化処理手段は、コードデータを鏡像反転させるデータ加工処理を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明に係る文書管理装置は、前述した印刷装置を用いて印刷された紙文書を読み取る読取手段と、読み取られた紙文書の画像データを解析することによって紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する検出手段と、前記検出手段により検出されたコードデータのうち判読不能にデータ加工されたコードデータを判読可能に復元する判読可能化処理手段と、判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋に関する情報を出力する出力手段とを有することを特徴とする。
【0016】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、第1の紙文書の画像データが印刷されることで作成される第2の紙文書の用紙表面を撮像させ、撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋の特定情報をエンコードしてコードデータを生成させ、読み取られた第1の紙文書の画像データを解析することによって第1の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出させ、検出されたコードデータに対して、復元可能な状態で判読不能にデータ加工処理を行わせ、判読不能にデータ加工されたコードデータを含む第1の紙文書の画像データに、生成されたコードデータを付加して印刷することで第2の紙文書を作成させることを特徴とする。
【0017】
本発明に係るプログラムは、コンピュータに、上記プログラムが実施されることで印刷された紙文書を読み取らせ、読み取られた紙文書の画像データを解析することによって紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出させ、検出されたコードデータのうち判読不能にデータ加工されたコードデータを判読可能に復元させ、判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋に関する情報を出力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、紙文書をコピーして新たな紙文書を作成する際に、コピー元となる紙文書に付加された紙指紋特定情報のコードデータを削除せずに判読不能に加工し、そして、新たにコピーされた手元にある紙文書を検証する際には、判読不能としたコードデータを判読可能なコードデータに復元するようにしたので、文書に関する履歴を手元にある紙文書から得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、図面に基づいて、本発明の好適な実施の形態について説明する。
【0020】
図1は、本発明に係る文書管理システムの一実施の形態を示したブロック構成図である。図1には、ネットワークスキャナ1、ネットワークプリンタ2、複合機3、クライアントPC4、DBMSサーバ5及び加工情報管理サーバ6がネットワーク7に接続されたシステム構成が示されている。クライアントPC4は、ユーザが文書の印刷をネットワークスキャナ1や複合機3に指示するパーソナルコンピュータである。ネットワークスキャナ1がスキャナ機能を、ネットワークプリンタ2が印刷機能を、それぞれ有するネットワーク機器であるのに対し、複合機3は、少なくともスキャナ機能及び印刷機能を有する多機能複写機である。DBMSサーバ5は、DBMS(DataBase Management System)が搭載されたサーバコンピュータであり、紙指紋に関する情報を保持管理する。詳細は後述するように、本実施の形態では、紙文書に埋め込まれたQRコードを復元可能にかつ判読不能にするデータ加工を施すが、加工情報管理サーバ6は、本システムにおいてQRコードのデータ加工に共通して使用するマスク画像等のデータを保持管理する。
【0021】
なお、ネットワークスキャナ1、ネットワークプリンタ2、複合機3及びクライアントPC4は、ネットワーク7にそれぞれ複数台接続可能であるが、それぞれ同様の機能を有していればよいため、図1には、それぞれ1台ずつ図示した。
【0022】
図2は、本実施の形態における文書管理システムに含まれるコンピュータのハードウェア構成図である。各構成要素の性能や容量は使用目的に応じて異なってくるが、本実施の形態においては、クライアントPC4、DBMSサーバ5及び加工情報管理サーバ6がこの構成に該当する。コンピュータは、図2に示したようにCPU11、ROM12、RAM13、ハードディスクドライブ(HDD)14を接続したHDDコントローラ15、入力手段として設けられたマウス16とキーボード17、及び表示装置として設けられたディスプレイ18をそれぞれ接続する入出力コントローラ19、通信手段として設けられたネットワークコントローラ20を内部バス21に接続して構成される。
【0023】
図3は、本実施の形態における複合機3のハードウェア構成図である。複合機3は、上記の通りコピー機能、スキャナ機能等各種機能を搭載した画像形成装置の一形態であり、コンピュータを内蔵した装置である。図3において、CPU31は、ROM39に格納されたプログラムにしたがってスキャナ34やプリンタエンジン36等本装置に搭載された各種機構の動作制御を行う。アドレスデータバス32は、CPU31の制御対象となる各種機構と接続してデータの通信を行う。操作パネル33は、ユーザからの指示の受け付け、情報の表示を行う。スキャナ34は、ユーザがセットした原稿を読み取り、電子データとしてHDD(Hard Disk Drive)35等に蓄積する。HDD35は、スキャナ34を使用して読み取った電子文書などを格納する。プリンタエンジン36は、CPU31で実行される制御プログラムからの指示に従い出力用紙上に画像を印字する。ネットワークインタフェース(I/F)37は、ネットワークを接続し、DBMSサーバ5へ紙指紋登録情報の送信や加工情報管理サーバ6からの加工情報の受信等に利用される。ランダムアクセスメモリ(RAM)38は、プログラム実行時のワークメモリや電子データ送受信時の通信バッファとして利用される。リードオンリメモリ(ROM)39は、本装置の制御等各種プログラムが格納されている。各種プログラムが実行されることで後述する各構成要素が所定の処理機能を発揮する。外部メディアインタフェース(I/F)40は、USBメモリ、フラッシュメモリ等の外部メモリ機器とのインタフェースである。
【0024】
図4は、本実施の形態における印刷機能を実行する印刷機能処理部と、コピー機能を実行するコピー機能処理部とのブロック構成図である。印刷機能処理部50は、一般にクライアントPC4などから送られてくる印刷指示に応じて該当する文書データの印刷を実行する。コピー機能処理部60は、一般にコピー指示に応じて紙文書をスキャナで読み取って画像データを生成し、その生成した画像データの印刷を実行する。印刷機能処理部50及びコピー機能処理部60は、電子文書データを紙媒体に印字出力する機能を有する点で共通しているが、印刷機能処理部50は、前述したネットワークプリンタ2又は複合機3で実現される。また、コピー機能処理部60は、ネットワークスキャナ1又は複合機3で読み取った画像データをネットワークプリンタ2又は複合機3で印刷することで実現可能であるが、本実施の形態では、説明の便宜のためにコピー機能処理部60をスキャナ機能及び印刷機能の双方を有する複合機3で実現することを想定して説明する。
【0025】
印刷機能処理部50は、印刷要求受付部51、撮像部52、QRコード生成部53、合成部54及び印刷実行部55を有している。印刷要求受付部51は、クライアントPC4から送られてくる印刷対象の文書データを含む印刷要求を受け付ける。前述した構成図では図示しなかったが、ネットワークプリンタ2及び複合機3の用紙トレイの搬出口近傍には、撮像手段として例えばCCDカメラが取り付けられており、これから印刷されるために用紙トレイから搬出される紙媒体の表面が撮像される。撮像部52は、この撮像手段により実現される。QRコード生成部53は、これから印刷しようとする紙媒体に埋め込むためのQRコードを生成する。QRコード生成部53には、登録情報収集部56、情報登録部57及びコード化処理部58が含まれている。登録情報収集部56は、紙指紋に関連する情報として収集する。情報登録部57は、登録情報収集部56により収集された紙指紋に関連する情報を紙指紋登録情報としてDBMSサーバ5へ送信して保持管理させる。また、DBMSサーバ5が紙指紋登録情報の新規登録に応じて作成した紙指紋の識別情報(以下、「紙指紋ID」)を受信する。コード化処理部58は、DBMSサーバ5から送られてきた紙指紋IDをエンコードしてQRコードを生成する。なお、本実施の形態では、紙媒体に埋め込むコードデータとして二次元コードであるQRコードを採用し、また、紙指紋IDをエンコードしてQRコードを生成する。このように、本実施の形態においてQRコードという場合、紙指紋IDをエンコードして生成したQRコードのことを指す。合成部54は、印刷対象の画像データにQRコード生成部53により生成されたQRコードを合成する。印刷実行部55は、QRコードが付加された画像データの印刷を実行する。このように、印刷対象の電子文書の画像データが紙媒体に印刷されることで作成された紙媒体を、本実施の形態では「紙文書」と称することにしている。
【0026】
一方、コピー機能処理部60は、読取部61と、コピー処理部62と、前述したQRコード生成部53、合成部54及び印刷実行部55を有している。読取部61は、スキャナ34と連動して紙文書を読み取る。コピー機能処理部60は、コピー指示に応じて紙文書をスキャナ34で読み取って形成された画像データの印刷を実行するが、コピー処理部62はその主要部を成す。コピー処理部62には、QRコード検出部63、照合処理部64及び判読不能化処理部65が含まれている。QRコード検出部63は、読取対象とする紙文書が印刷機能処理部50により作成されたQRコード付きの紙文書の場合、紙文書上に印刷されたQRコードを検出する。照合処理部64は、読取部61により取得された画像データから得られる紙指紋と、QRコード検出部63により検出されたQRコードに基づきDBMSサーバ5から得られる紙指紋とを照合する。照合処理部64には、QRコード復号部66及び紙指紋取得部67が含まれている。QRコード復号部66は、QRコードをデコードすることでコード化された紙指紋IDを復号する。紙指紋取得部67は、紙指紋IDを送信して問い合わせることで、DBMSサーバ5から紙指紋IDに対応する紙指紋の画像データを取得する。判読不能化処理部65は、QRコード検出部63により検出された検出されたQRコードに対してデータ加工処理を行うことで、そのQRコードを復元可能な状態で、かつ判読不能にする。このデータ加工処理については、追って詳述する。
【0027】
図5は、本実施の形態における検証機能を実行する検証機能処理部のブロック構成図である。検証機能処理部70は、紙文書の正当性を検証するための機能処理を実施するものであることから、前述したQRコード付きの紙文書を処理対象としている。検証機能処理部70は、読取部71、検証処理部72及び情報出力部73を有している。読取部71は、スキャナ34と連動して紙文書を読み取る。検証処理部72は、検証機能処理部70の主要部を成し、QRコード検出部74は、読取部71から送られてくる画像データの中から紙指紋IDがコード化されて紙文書に埋め込まれたQRコードを検出する。QRコード検出部74、照合処理部75、判読可能化処理部76及び情報取得部77が含まれている。照合処理部75は、読取部71により取得された画像データから得られる紙指紋と、QRコード検出部74により検出されたQRコードに基づきDBMSサーバ5から得られる紙指紋とを照合する。照合処理部75には、QRコード復号部78及び紙指紋取得部79が含まれている。QRコード復号部78は、QRコードをデコードすることでコード化された紙指紋IDを復号する。紙指紋取得部79は、紙指紋IDを送信して問い合わせることで、DBMSサーバ5から紙指紋IDに対応する紙指紋の画像データを取得する。判読可能化処理部76は、QRコード検出部74により検出されたQRコードのうち、判読不能化処理部65により判読不能にデータ加工されたQRコードを判読可能に復元する。情報取得部77は、紙指紋に関する情報をDBMSサーバ5から取得する。情報出力部73は、検証処理において取得された紙指紋に関する情報を出力する。
【0028】
前述した構成要素51〜55,61,62,71〜73は、いずれかの機器1〜4を構成するコンピュータ又は搭載されるコンピュータと、コンピュータに搭載されたCPUで動作するプログラムとの協調動作により実現される。また、本実施の形態で用いるプログラムは、通信手段により提供することはもちろん、CD−ROM等の記録媒体に格納して提供することも可能である。
【0029】
以下の説明する本実施の形態の動作の説明では、特に断らない限り、主に複合機3を用いて印刷、コピー及び検証の各処理を行う場合を例にするが、例えば、読取部61,71としてネットワークスキャナ1を、QRコード生成部53、コピー処理部62及び検証処理部72として複合機3若しくは他のコンピュータ、合成部54、印刷実行部55及び情報出力部73としてネットワークプリンタ2をそれぞれ用いるなど、複数の機器を組み合わせても実行することは可能である。
【0030】
次に、本実施の形態における動作について説明する。まず、本実施の形態において用いる紙文書を新たに作成するときの処理について、図6に示したフローチャートを用いて説明する。
【0031】
クライアントPC4のユーザが所定の印刷指示操作を行うことで、印刷対象となる文書データは、印刷指示先として指定されたネットワークプリンタ2又は複合機3へ送信される。ここでは、複合機3が指定されたとすると、複合機3における印刷要求受付部51は、クライアントPC4から送られてくる印刷対象となる文書の画像データを受信する(ステップ110)。そして、以下の印刷処理を実行する(ステップ120)。この印刷処理について、図7に示したフローチャートを用いて説明する。
【0032】
文書データが印刷されることになる紙媒体は、用紙トレイから複合機3内部の搬送路に排出されることになるが、撮像部52は、この紙媒体の表面を撮像する(ステップ121)。撮像部52から送られてくる撮像データを受け付けると、QRコード生成部53における登録情報収集部56は、撮像データから紙媒体の繊維パターン、すなわち紙指紋を抽出し、更に印刷日時情報、印刷要求情報から特定できる印刷要求元ユーザ及び/又はクライアントPC4の識別情報、印刷する装置、この場合は複合機3の識別情報等を紙指紋に関連する情報として収集する(ステップ122)。そして、情報登録部57は、登録情報収集部56により収集された紙指紋に関連する情報を紙指紋登録情報としてDBMSサーバ5へ送信して登録させる(ステップ123)。この紙指紋登録情報の新規登録に応じてDBMSサーバ5から紙指紋IDが返信されてくるので、QRコード生成部53は、この紙指紋IDを取得すると(ステップ124)、エンコードしてQRコードを生成する(ステップ125)。なお、紙指紋は上述したように紙媒体の繊維パターンであり、紙を構成する繊維質材料の絡み具合のランダム性に起因して紙の透明度がランダムに変化する。紙の透過光あるいは反射光を読み込むことにより、紙の表面に沿って分布するランダム性を有する特徴を画像データとして取り込む。画像データを取り込むスキャナとしては、例えば400dpiの解像度を有するスキャナを用いることができる。紙の中の予め設定された領域(例えば、32×32ビット)を8ビットグレースケールの階調で読み込む。図15に、読み込んだ紙指紋の画像データの一例を示す。
【0033】
合成部54は、生成されたQRコードを受け取ると、印刷要求受付部51が受け付けた文書の画像データに、そのQRコードを合成して実際に印刷する画像データを生成する(ステップ126)。そして、印刷実行部55は、紙指紋が取得された紙媒体に、QRコードが付加された画像データを印字出力する(ステップ127)。なお、紙媒体に対する印字位置は、原則、紙媒体の右上などに存在する余白部分を利用するが、余白部分がない場合などは、用紙の裏面や、QRコードが認識できるように画像データの一部分に重ねて印刷するようにしてもよい。
【0034】
本実施の形態では、このようにして印刷を実行するが、前述したように、紙文書には、当該紙媒体の紙指紋を識別する紙指紋IDのQRコードが所定の位置に埋め込まれる。
【0035】
続いて、以上の印刷処理により印刷された紙文書が複合機3を利用してコピーされる場合の処理について図8に示したフローチャートを用いて説明する。
【0036】
ユーザがスキャナ34の原稿台に紙文書をセットして、所定のコピー指示操作を行うと、読取部61がその紙文書を読み取る。これにより、紙文書の画像データが取得されると(ステップ131)、コピー処理部62におけるQRコード検出部63は、その画像データの中からQRコードを検出する(ステップ132)。なお、QRコードの検出方法は、JIS規格書「二次元コードシンボル−QRコード−基本仕様書(JIS X 0510)」第65,66頁に記載されている方法を用いる。
【0037】
ここで、正常に読み取った画像データの中からQRコードが検出されなかったという場合というのは、コピー対象とされた紙文書が前述した印刷処理にて作成されておらず、履歴管理の対象となっていないものであると考えることができる。従って、このような場合には(ステップ133でN)、このコピー対象の紙文書を、今後、本実施の形態における管理下とするために、コピーにより作成される紙文書を、前述した印刷処理に従って作成する(ステップ141)。つまり、コピーされる紙文書に当該紙媒体の紙指紋IDのQRコードを埋め込むようにする。
【0038】
画像データの中から紙指紋IDを表すQRコードが検出された場合(ステップ133でY)、次の手順にて照合を行う。すなわち、まず、QRコード復号部66は、検出されたQRコードの復号処理を行う(ステップ134)。ここで、復号が失敗した場合には(ステップ135でN)、QRコードの復号が失敗したことをユーザに通知し(ステップ142)、エラーとして終了する。通知方法は、操作パネル33への表示等所望の方法にて行う。QRコードの復号が成功した場合(ステップ135でY)、紙指紋取得部67は、復号により得た紙指紋IDをキー情報としてDBMSサーバ5へ送信して当該紙指紋IDにより識別される紙指紋の画像データを取得する(ステップ136)。一方、照合処理部64は、読取部61による読取処理により得られた画像データの所定位置から繊維パターンデータ、すなわち紙指紋の画像データを抽出する(ステップ137)。照合処理部64は、このようにして得た各紙指紋の画像データの照合を行う(ステップ138)。なお、照合方法は、例えば特許文献1に記載された方法を利用できる。具体的には、下記指紋IDにより識別される紙指紋の画像データを基準データとし、読み取った紙指紋の画像データを第1の照合データとする。また、第1の照合データ取得時に対して位置を若干ずらすと共に向きを若干回転させて読み取った紙指紋の画像データを第2の照合データとし、さらに異なる紙から読み取った紙指紋の画像データを第3の照合データとして、基準データと各照合データとの相関値を演算する。次に、第1〜第3の照合データのそれぞれに対する相関値の分布具合を表す特徴として、相関値の最大値のノーマライズド・スコアを演算する。ノーマライズドスコア=(相関値の最大値−相関値の平均値)/(相関値の標準偏差)である。紙指紋が正しい場合、第1の照合データのノーマライズドスコアは非常に高い値となり、第3の照合データのノーマライズドスコアは非常に低い値となり、第2の照合データのノーマライズドスコアはその間の値になる。そこで、ノーマライズドスコアの閾値を適当に設定し、演算して得られたノーマライズドスコアの値を閾値と比較することで、紙指紋が一致するか否かを判定することができる。ここで、照合に失敗した場合(ステップ139でN)、読み取られた紙文書は、本実施の形態における文書管理システムに対応していない複写機でコピーされたか、あるいは別の手段によりQRコードだけを別の紙文書に写し取るなどの不正な手段を講じて作成された紙文書であると判断できるので、読み取られた紙文書は、不正な手段で生成された可能性があることをユーザに通知し(ステップ143)、エラーとして終了する。紙指紋の照合が成功した場合(ステップ139でY)、続いて、判読不能化処理部65は、読取部61により読み取られた画像データに含まれるQRコードに対して復元可能な状態で潰す処理を行う(ステップ140)。この処理を施すと、QRコードは、検出可能であるもののコードデータの判読を一時的に不能な状態になる。この処理の詳細については、追って説明する。その後、前述した印刷処理が実施されることで紙文書のコピーが作成される(ステップ141)。印刷処理では、前述したように印刷されようとする紙媒体の紙指紋を識別するため紙指紋IDがDBMSサーバ5により付与され、その紙指紋IDをエンコードして作成されたQRコードが文書の画像データに埋め込まれる。
【0039】
ここで、前述したQRコード検出処理(ステップ132)においてQRコードが検出されなかったときに実施される印刷処理では、QRコードが新たに紙文書に埋め込まれる。つまり、コピーにより作成された紙文書には、判読可能な状態のQRコードがただ1つ存在する。一方、QRコード検出処理においてQRコードが検出された場合においては、検出されるQRコードは、1つ以上である。ここで、コピー対象の紙文書にQRコードが1つのみ検出された場合、コピーにより作成される紙文書には、ステップ140において判読不能にされた既存のQRコードが1つと、ステップ141において新たに埋め込まれた判読可能なQRコードが1つ存在することになる。なお、印刷処理では、QRコードを所定の位置に印刷するので、2つのQRコードは、基本的に紙面上において並んだ状態で印刷される。また、コピー対象の紙文書にQRコードが2つ検出された場合、コピーにより作成される紙文書には、ステップ140において判読不能にされた既存のQRコードが2つと、ステップ141において新たに埋め込まれた判読可能なQRコードが1つ存在することになる。コピー対象の紙文書にQRコードが3つ以上検出された場合も同様である。つまり、コピー対象の紙文書にQRコードがn個(nは自然数)検出された場合、コピーにより作成される紙文書には、ステップ140において判読不能にされたn個のQRコードと、ステップ141において新たに埋め込まれた判読可能な1つのQRコードが並んで存在することになる。結果として、(n+1)個のQRコードが紙面上に存在することになるが、有効なQRコードは常に1個である。
【0040】
本実施の形態では、以上のようにコピーにより有用でなくなるQRコードを紙面上から削除せずに判読不能な状態にして残すようにしたので、紙文書が何回コピーされて作成されたものであるかを一目瞭然に確認することができる。このように潰されたQRコードが紙面上に並んでいることで、この紙文書はきちんと履歴を管理されていることがユーザから一目瞭然で把握することになり、ユーザの不正行為に対する心理的な抑止効果を与えることが可能になる。
【0041】
次に、以上のようにして作成された紙文書の検証処理について図9に示したフローチャートを用いて説明する。
【0042】
ユーザがスキャナ34の原稿台に紙文書をセットして、所定の検証指示操作を行うと、読取部61がその紙文書を読み取る。これにより、紙文書の画像データが取得されると(ステップ151)、検証処理部72におけるQRコード検出部74は、その画像データの中からQRコードを検出する(ステップ152)。なお、紙文書には、複数個のQRコードが印刷されている可能性があるが、この処理で全てのQRコードを検出する。ここで、正常に読み取った画像データの中からQRコードが検出されなかったという場合というのは、コピー対象とされた紙文書が前述した印刷処理にて作成されておらず、履歴管理の対象となっていないものであると考えることができる。従って、このような場合には(ステップ153でN)、読み取った紙文書は、本実施の形態において検証対象とならない紙文書であると判断して、QRコードの検出が失敗したことをユーザに通知し(ステップ161)、エラーとして検証処理を終了する。通知方法は、操作パネル33への表示に留めてもよいが、本実施の形態では、検証処理の結果として検証対象とした紙指紋に関連する情報をユーザに通知するので、この情報の代わりに検出エラーを通知するようにしてもよい。これは、検証処理における後述する他のエラー処理についても同様である。
【0043】
画像データの中から紙指紋IDを表すQRコードが検出された場合(ステップ153でY)、検出されたQRコードの中から1つずつ選択して以下の処理を繰り返し実行する。すなわち、まず、QRコード復号部78は、処理対象として選択されたQRコードの復号処理を行う(ステップ154)。ここで、復号が成功した場合において(ステップ155でY)、更にそのQRコードの復号の成功が2回目以上であった場合には(ステップ156でY)、検証対象の紙文書は、復号可能なQRコードが重複して存在するという異常な紙文書であると判断できるので、QRコード重複エラーであることをユーザに通知し(ステップ166)、エラーとして検証処理を終了する。なお、本実施の形態における検証処理では、成功したQRコードの数をカウントしておくようにしているが、なぜQRコードの復号が成功したのにもかかわらずその成功が2回目以上の場合にエラーとするのかというと、次の理由による。
【0044】
すなわち、コピー処理において紙文書に印刷されるQRコードは、当該紙媒体の紙指紋ID以外のものはつぶして判読不能にすると説明した(図8のステップ140)。従って、QRコード復号処理にて正常に復号できるQRコードは、当該紙媒体の紙指紋IDをコード化して生成したQRコードただ1つのみのはずであり、2つ以上存在する場合はない。従って、QRコード復号処理にて2回以上正常に復号できる場合と言うことは、通常であればあり得ない。
【0045】
一方、QRコード復号処理の成功が1回目であった場合には(ステップ156でN)、紙指紋取得部79は、復号により得た紙指紋IDをキー情報としてDBMSサーバ5へ送信して当該紙指紋IDにより識別される紙指紋の画像データを取得する(ステップ157)。一方、照合処理部75は、読取部71による読取処理により得られた画像データの所定位置から繊維パターンデータ、すなわち紙指紋の画像データを抽出する(ステップ158)。照合処理部75は、このようにして得た各紙指紋の画像データの照合を行う(ステップ159)。なお、照合方法は、例えば特許文献1に記載された方法を利用できる。ここで、紙指紋の照合に失敗した場合(ステップ160でN)、この紙文書に不正が行われた可能性があるので、照合エラー処理として、例えば紙指紋IDをキーとしてDBMSサーバ5から当該紙文書の紙指紋登録情報を取得し、ユーザに提示する(ステップ167)。そして、エラーとして終了する。一方、紙指紋の照合が成功した場合(ステップ160でY)、処理対象のQRコードに対して照合成功という検証結果を得られたので、当該QRコードに対する処理が終了し、次の未検証のQRコードが残っていれば、そのQRコードへ処理対象を移行する(ステップ161でN)。なお、この処理で検証成功という結果が得られた場合でも、後に処理するQRコードにおいてそのQRコードの復号の成功が2回目以上であった場合には、検証処理は、最終的にエラーとして終了することになる(ステップ166)。
【0046】
続いて、QRコード復号部78は、新たに処理対象として選択されたQRコードの復号処理を行う(ステップ154)。この復号処理において復号が成功した場合については説明したとおりであるが、仮に成功した場合には、復号処理の成功が2回目に相当するので、当該紙文書の検証は、失敗という結果にて終了する。
【0047】
復号が失敗した場合(ステップ155でN)、判読可能化処理部76は、処理対象のQRコードに対して復元処理を行う(ステップ162)。つまり、QRコードが検出されたにもかかわらず復号に失敗したということは、そのQRコードは、判読不能化処理部65により判読不能にデータ加工されたQRコードに該当すると判断できる。従って、判読可能化処理部76は、判読不能化処理部65がしたデータ加工を取り消すような復元処理を行うことで、当該QRコードを判読可能な状態に戻す。なお、判読不能化処理部65により施されたデータ加工を取り消す復元処理を実施するためには、判読可能化処理部76は、そのデータ加工の内容を認識していなければならない。本実施の形態では、このデータ加工に用いた情報等を加工情報管理サーバ6から取得するようにした。判読不能化処理部65によるQRコードの潰し処理及び判読可能化処理部76による復元処理については、追ってまとめて説明する。なお、この復元処理では、QRコードを判読可能な状態、すなわち復号可能な状態に戻すが、さらに復号処理も合わせて行うものとする。つまり、復元処理には、復元処理に続けて復号処理を行うものとする。
【0048】
ステップ162における復元処理が成功した場合には(ステップ163でY)、QRコードから紙指紋IDが取得できるので、情報取得部77は、その紙指紋IDを送信して問い合わせることで、DBMSサーバ5から紙指紋IDに対応する紙指紋登録情報を取得する(ステップ164)。
【0049】
このようにして、処理対象として選択されたQRコードに対する処理が終了し、次の未検証のQRコードが残っていれば、そのQRコードへ処理対象を移行する(ステップ161でN)。
【0050】
一方、復元処理が失敗した場合には(ステップ163でN)、QRコードの復元が失敗したことをユーザに通知し(ステップ165)、エラーとして終了する。
【0051】
以上のようにして、紙文書に埋め込まれた全てのQRコードに対して検証処理が実施されると、情報出力部73は、その検証結果データを、操作パネル33や検証処理要求時に操作パネル33などから入力指定された出力先へ送る。出力先としては、例えばプリンタエンジン36若しくはネットワークプリンタ2、あるいはクライアントPC4などがあり、検証結果データは、各出力先において印字出力、ディスプレイ18への表示、あるいはHDD14へ保存されたりする。
【0052】
ここで、図8のステップ140におけるQRコードの潰し処理及び図9のステップ162におけるQRコード復元処理について詳述する。本実施の形態では、4つの判読不能化処理を例示する。
【0053】
図10は、第1の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。QRコード80を一時的に復元不可能な状態にするには、白黒二値で生成されたマスクパターン81の画像データを予め用意し、QRコード80の画像データに排他的論理和でマスク合成する。この際、マスクパターン81は、図11に示すようにQRコード80の位置検出パターン83と重ならないようにマスク可能範囲84に設定する。このようなマスクパターン81の画像データをQRコード80の画像データに排他的論理和合成すると、マスク合成されたQRコード画像は、位置検出パターン83がそのまま残っているので検出可能である。しかしながら、QRコード82のコード部分はマスクがかかっているので復号不可能である。判読不能化処理部65は、以上の処理をデータ加工処理として実施する。
【0054】
マスク合成されたQRコード82の画像データに同一のマスク画像を排他的論理和で合成すると、元のQRコード80の画像データを得ることが可能である。このとき、マスク合成されたQRコード82の画像データとマスクパターン81の画像データの位置を完全に一致させる必要があるが、この位置合わせの際には、位置検出パターン83の位置情報を用いることで実現可能である。判読可能化処理部76は、以上の処理を復元処理として実施する。
【0055】
マスクパターン81の画像データ(以下、単に「マスク画像」)に関する情報は、機密情報として扱われ、加工情報管理サーバ6にて保持管理される。判読不能化処理部65と判読可能化処理部76は、同一のマスクパターン81を使用しなければならないが、それぞれが処理を実施する際に加工情報管理サーバ6からマスク画像を取得することになる。なお、マスクパターン81は、例えば判読不能化/可能化処理を実施する装置の機種毎に変更したり、コピーされた回数や使われる部門毎に変更したりするなど、複数のマスクパターン81を準備して、使い分けるようにしてもよい。なお、この場合は、QRコードとマスクパターンとを対応付けして情報管理をする必要がある。
【0056】
図12は、第2の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。この処理では、QRコード80の白領域を白か黒以外の色で塗りつぶすことにした。この塗りつぶされた状態のQRコード85を復号可能な状態に復元するには、一般的な画像処理技術である限定色化を行い、白と黒だけの画像を取得することで元のQRコード80の画像データを得ることができる。塗りつぶす色は、グレースケールに変換して二値化した際に黒と判定されるような、濃い色が望ましい。薄い色の場合だと、グレースケールに変換して二値化した際に色情報が消えてQRコード画像が普通に取得できてしまう。
【0057】
なお、図12では、位置検出パターンも塗りつぶしている例を示した。本来であれば、図11のマスク可能範囲84のみを塗りつぶすようにする必要があり、そのようにすべきである。ただ、色による塗り潰しの場合、図9のステップ152におけるQRコード検出処理を実施する前に紙文書画像データ全体に限定色化を行えば、QRコードを検出できるので、図12では、QRコード全体を塗り潰した場合を図示した。
【0058】
図13は、第3の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。この処理では、QRコード80の描画単位(QRコードを構成する小さい正方形)よりも小さい描画単位のドットを付加するようにした。つまり、ドットを含む画像データ86を合成するようにした。このドットが付加されたQRコード87を復元するには、一般的な画像処理である孤立点除去処理を行えば元のQRコード80の画像データを得ることができる。つまり、判読可能化処理部76は、復元処理として孤立点除去処理を行うことになる。また、孤立点除去処理を行っても、白黒エッジ部分等に多少小さい描画単位が残る場合がある。換言すると、直線に多少の凹凸が形成される場合がある。しかしながら、QRコード80の復号処理がエラーとなるような大きな影響を与えないので問題はない。
【0059】
なお、図13においても、図12と同様に、原則、位置検出パターン部分にはドットを付加すべきでないかもしれないが、QRコード検出処理を実施する前に紙文書画像データ全体に対して孤立点除去処理を行えば、QRコードを検出可能である。
【0060】
図14は、第4の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。この処理では、QRコード80を鏡像反転するようにした。QRコード80は、3つの位置検出パターンがあれば検出可能であるので、鏡像反転してもQRコードとして検出可能であるが、鏡像反転したQRコード88は、元のQRコード80と内容が反転しているため復号は不可能である。
【0061】
以上の判読不能化/可能化処理に用いるマスク画像等の画像データを保持し、また鏡像反転という方法を指定するための情報は、加工情報管理サーバ6に保持管理させることによって、本システム内のどの機器で紙文書が作成され、また検証されようとも、対応可能になる。もちろん、紙文書の作成、検証する機器が特定され、また、単一のマスク画像等しか用いないというのが前提ならば、加工情報管理サーバ6を用いることなくマスク画像等を各機器に保持させるように構成してもよい。
【0062】
本実施の形態によれば、紙文書をコピーして新たな紙文書を作成する際に、コピー元となる紙文書に付加された紙指紋IDのQRコードを削除せずに判読不能に加工し、そして、新たにコピーされた手元にある紙文書を検証する際には、判読不能としたQRコードを判読可能なQRコードに復元するようにしたので、履歴管理サーバにアクセスしなくても文書に関する履歴、具体的には紙指紋IDを手元にある紙文書から得ることができる。もちろん、QRコードに含まれていないデータは、DBMSサーバ5から取得することも可能である。
【0063】
また、複数の潰されたQRコードが紙文書に並んでいることで、ユーザに対して履歴管理が徹底されている文書であることをアピールすることができ、不正利用に対する心理的抑止効果を持つことができる。
【0064】
また、複数のQRコードを紙文書に並べても、当該紙文書と直接関連していないQRコードは潰されているので、照合対象の紙指紋IDの特定が容易である。
【0065】
なお、本実施の形態では、紙指紋IDをエンコードしてQRコードを作成するようにしたが、紙指紋に関する情報として紙指紋の画像データそのものをエンコードしてQRコードを作成するなど紙指紋ID以外の情報をQRコード化してもよい。また、本実施の形態では、印刷用紙に付加するデータコードの例として一般に使用されるQRコードを用いて説明したが、QRコード以外のコードを用いるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明に係る文書管理システムの一実施の形態を示したブロック構成図である。
【図2】本実施の形態における文書管理システムに含まれるコンピュータのハードウェア構成図である。
【図3】本実施の形態における複合機のハードウェア構成図である。
【図4】本実施の形態における印刷機能を実行する印刷機能処理部と、コピー機能を実行するコピー機能処理部とのブロック構成図である。
【図5】本実施の形態における検証機能を実行する検証機能処理部のブロック構成図である。
【図6】本実施の形態において紙文書を新たに作成するときの処理を示したフローチャートである。
【図7】本実施の形態における印刷処理を示したフローチャートである。
【図8】本実施の形態におけるコピー処理を示したフローチャートである。
【図9】本実施の形態における紙文書の検証処理を示したフローチャートである。
【図10】本実施の形態における第1の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。
【図11】本実施の形態において用いるQRコードの構成を示した図である。
【図12】本実施の形態における第2の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。
【図13】本実施の形態における第3の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。
【図14】本実施の形態における第4の判読不能化/判読可能化処理を説明するための図である。
【図15】紙指紋の画像データを示す図である。
【符号の説明】
【0067】
1 ネットワークスキャナ、2 ネットワークプリンタ、3 複合機、4 クライアントPC、5 DBMSサーバ、6 加工情報管理サーバ、7 ネットワーク、11,31 CPU、12,39 ROM、13,38 RAM、14,35 ハードディスクドライブ(HDD)、15 HDDコントローラ、16 マウス、17 キーボード、18 ディスプレイ、19 入出力コントローラ、20 ネットワークコントローラ、21 内部バス、32 アドレスデータバス、33 操作パネル、34 スキャナ、36 プリンタエンジン、37 ネットワークインタフェース(I/F)、40 外部メディアインタフェース(I/F)、50 印刷機能処理部、51 印刷要求受付部、52 撮像部、53 QRコード生成部、54 合成部、55 印刷実行部、56 登録情報収集部、57 情報登録部、58 コード化処理部、60 コピー機能処理部、61,71 読取部、62 コピー処理部、63,74 QRコード検出部、64,75 照合処理部、65 判読不能化処理部、66 QRコード復号部、67,79 紙指紋取得部、70 検証機能処理部、72 検証処理部、73 情報出力部、76 判読可能化処理部、77 情報取得部、78 QRコード復号部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の紙文書を読み取る第1の読取手段と、
前記第1の読取手段により読み取られた第1の紙文書の画像データが印刷されることで作成される第2の紙文書の用紙表面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋の特定情報をエンコードしてコードデータを生成する生成処理手段と、
読み取られた第1の紙文書の画像データを解析することによって第1の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段により検出されたコードデータに対して、復元可能な状態で判読不能にデータ加工処理を行う判読不能化処理手段と、
前記判読不能化処理手段により判読不能にデータ加工されたコードデータを含む第1の紙文書の画像データに、前記生成手段により生成されたコードデータを付加して印刷することで第2の紙文書を作成する印刷手段と、
前記印刷手段により作成された第2の紙文書を読み取る第2の読取手段と、
読み取られた第2の紙文書の画像データを解析することによって第2の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する第2の検出手段と、
前記第2の検出手段により検出されたコードデータのうち判読不能にデータ加工されたコードデータを判読可能に復元する判読可能化処理手段と、
判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋に関する情報を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする文書管理システム。
【請求項2】
請求項1記載の文書管理システムにおいて、
紙指紋登録情報を記憶する記憶手段と、
前記撮像手段により撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋に関連する情報を紙指紋登録情報として前記記憶手段へ登録する登録手段と、
判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋登録情報を前記記憶手段から取得する取得手段と、
を有し、
前記出力手段は、前記取得手段により取得された情報を出力することを特徴とする文書管理システム。
【請求項3】
請求項1記載の文書管理システムにおいて、
前記判読不能化処理手段によるデータ加工処理及び前記判読可能化処理手段による復元処理に共通して用いる画像データを保持し、あるいは共通して用いる方法を指定する手段を有することを特徴とする文書管理システム。
【請求項4】
第1の紙文書の画像データが印刷されることで作成される第2の紙文書の用紙表面を撮像する撮像手段と、
前記撮像手段により撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋の特定情報をエンコードしてコードデータを生成する生成処理手段と、
読み取られた第1の紙文書の画像データを解析することによって第1の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する第1の検出手段と、
前記第1の検出手段により検出されたコードデータに対して、復元可能な状態で判読不能にデータ加工処理を行う判読不能化処理手段と、
前記判読不能化処理手段により判読不能にデータ加工されたコードデータを含む第1の紙文書の画像データに、前記生成手段により生成されたコードデータを付加して印刷することで第2の紙文書を作成する印刷手段と、
を有することを特徴とする印刷装置。
【請求項5】
請求項4記載の印刷装置において、
前記判読不能化処理手段は、コードデータにマスク画像データを合成するデータ加工処理を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項6】
請求項4記載の印刷装置において、
前記判読不能化処理手段は、コードデータを、コードデータを構成する色以外の色で塗りつぶすデータ加工処理を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項7】
請求項4記載の印刷装置において、
前記判読不能化処理手段は、コードデータに、コードデータの描画単位よりも小さい描画単位のドットを付加するデータ加工処理を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項8】
請求項4記載の印刷装置において、
前記判読不能化処理手段は、コードデータを鏡像反転させるデータ加工処理を行うことを特徴とする印刷装置。
【請求項9】
請求項4記載の印刷装置を用いて印刷された紙文書を読み取る読取手段と、
読み取られた紙文書の画像データを解析することによって紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出する検出手段と、
前記検出手段により検出されたコードデータのうち判読不能にデータ加工されたコードデータを判読可能に復元する判読可能化処理手段と、
判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋に関する情報を出力する出力手段と、
を有することを特徴とする文書管理装置。
【請求項10】
コンピュータに、
第1の紙文書の画像データが印刷されることで作成される第2の紙文書の用紙表面を撮像させ、
撮像された用紙表面の撮像データから得られる紙指紋の特定情報をエンコードしてコードデータを生成させ、
読み取られた第1の紙文書の画像データを解析することによって第1の紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出させ、
検出されたコードデータに対して、復元可能な状態で判読不能にデータ加工処理を行わせ、
判読不能にデータ加工されたコードデータを含む第1の紙文書の画像データに、生成されたコードデータを付加して印刷することで第2の紙文書を作成させる、
ことを特徴とするプログラム。
【請求項11】
コンピュータに、
請求項10記載のプログラムが実施されることで印刷された紙文書を読み取らせ、
読み取られた紙文書の画像データを解析することによって紙文書に印刷された紙指紋特定情報のコードデータを検出させ、
検出されたコードデータのうち判読不能にデータ加工されたコードデータを判読可能に復元させ、
判読可能にされたコードデータから得られる紙指紋特定情報に基づき紙指紋に関する情報を出力させる、
ことを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図14】
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【図15】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−153784(P2008−153784A)
【公開日】平成20年7月3日(2008.7.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−337463(P2006−337463)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】