説明

断層撮影の検査システムおよびその方法

【課題】好都合な歪み補正の計算方法を使用して、試験物体内部の選択された断面平面の断面影像を効果的に生成すること。
【解決手段】断層撮影検査システムが、放射線源、影像平面を画定する複数の線形影像検出器、放射線源と影像検出器の間の固定された位置に試験物体を配置する固定式テーブル、および影像検出器から獲得された試験物体の複数の影像を処理するコンピュータ装置を備える。放射線源および影像検出器は、試験物体の全領域に亘り複数の平行な線形走査を実行して、異なる視角のもとでの試験物体の影像を獲得する。獲得されたデータに基づき、コンピュータ装置が、歪み補正を決定し、試験物体内部の選択された断面の断面影像を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に工業用検査のための影像技術に関し、より具体的には断層撮影の検査(laminography inspection)システムおよびその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
X線断層撮影は、検査用の試験物体内部の選択された平面の断面影像を生成する周知の影像技術である。従来通り、X線断層撮影システムは、X線源、影像平面(image plane)を画定するX線検出器、ならびに、X線源および検出器の間で走査される試験物体を配置するための固定基部を備える。試験物体のX線影像を獲得するためには、通常、試験物体が、検出器を伴うX線源、または固定基部のみのいずれかの協調した移動のサイクルを通して、走査される。1つの走査サイクルの間、X線源、試験物体および検出器の構成は、試験物体のある特定の平面、または「焦点面」と呼ばれる平面のどの点も、常に影像平面内の同じ点に投影され、焦点面外の点はすべて影像平面内の複数の点に投影されるようになっている。その結果、焦点面の影像は鮮鋭になり、試験物体内部の他の平面の影像は、検出器に対する移動を経てぼやけた背景を生成し、その上に焦点面の鮮鋭な影像が重なる。検出器によって獲得された影像に基づき、試験物体内部の選択された断面の断面影像が、獲得された影像の組合せによって再構築される。
【0003】
Bakerらに対して発行された「Automated Laminography System For Inspection of Electronics」という名称の米国特許第4,926,452号、Adamsに対して発行された「Continuous Linear Scan Laminography System And Method」という名称の米国特許第5,583,904号、Fazzioに対して発行された「Electronic Planar Laminography System and Method」という名称の米国特許第6,324,249号、およびThayerに対して発行された「Off−center Tomosynthesis」という名称の米国特許第6,748,046号に記述されているように、効果的な断層撮影システムを発展させるために多くの手法が、探求されてきており、そのすべての開示が本明細書で参照として組み込まれている。
【0004】
1つの公知の手法は、X線源および検出器が固定された試験物体を円形経路(circular path)に沿って走査して、試験物体の影像を獲得する断層撮影システムを補完する。1つの走査サイクル内にて、「進んでは止まる」動きが、円形経路の個別の点で、異なる視角(viewing angles)のもとでの影像を獲得するために実行される。その結果、走査速度は、比較的遅く、得られた影像の数は限定される。さらに、回転式走査サイクルの駆動機構は、かさばり、高価であり、複雑な製造工程が必要である。
【0005】
別の公知の手法では、異なる視角での試験物体の影像を獲得するために単一の平行移動の走査を使用する。この走査機構では、X線源が、試験物体の幅全体をおおうX線の扇形ビームを放射するように、平行にされなければならない。加えて、単一の線形走査経路で獲得された影像データが、十分な数の視角からのものであるように、X線検出器の数を増加する必要がある。この断層撮影システムは、簡単で速い走査サイクルを実行するが、必要な検出器の数が多いので、やはり設備のコストが増加することになる。さらに、X線源を平行にすることが必要なので、断層撮影システムに複雑さを加える。
【0006】
別の公知の手法もまた、試験物体の影像データを獲得するために、大型カメラの使用を指示することがある。走査サイクル中に試験物体は、固定された位置のカメラとX線源の間を移動し、その結果、試験物体の異なる領域が、カメラの異なる視角のもとで同時に結像される。この断層撮影システムは、X線源およびカメラが、各走査サイクルの間、固定されているので、X線源およびカメラを駆動するいくつかの機構を省くことができるが、大型カメラを使用することはやはり高価である。加えて、走査サイクル中の試験物体の移動が、獲得した影像の質に影響を及ぼすことがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
起こり得る別の技術的問題は、試験物体内の歪みの発生である。試験物体内の歪みが、想定された位置に対して実際に偏った、問題の断面の位置に生じることがある。その結果、実際に再構築された断層撮影の断面影像が、選択された断面平面を表わすのではなく、所望の断面平面からの別の1つのオフセットを表わすことがある。この問題を解決するために、米国特許第5,678,209号は、動作の歪み補正(warp compensation)方法を記述しており、その開示は、本明細書で参照することにより組み込まれている。この公知の歪み補正技術には、試験物体の歪みを決定するために、試験物体の取り込まれた影像データに対して比較される、試験物体の所定のコンピュータ援用設計(CAD)データを使用することが必要である。計算された歪みに基づき、次いで、選択された断面の断面影像を再構築するために適用される影像シフトが、決定される。実際上、選択された特徴がしばしば正確なCAD位置に配置されないか、または試験物体のCADデータが全く入手できないので、この技術の適用は不正確である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
したがって、少なくとも従来技術の前述の問題を克服することができる改良された断層撮影システムが必要である。
【発明の効果】
【0009】
本出願は、好都合な歪み補正の計算方法を使用して、試験物体内部の選択された断面平面の断面影像を効果的に生成することができる断層撮影システムおよびその方法を記述する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
一実施形態では、断層撮影検査システムが、放射線源、影像平面を画定する複数の線形影像検出器、放射線源と影像検出器の間の固定された位置に試験物体を配置するための固定式テーブル、および影像検出器から獲得された試験物体の複数の影像を処理するコンピュータ装置を備える。放射線源および影像検出器は、試験物体の全領域にまたがる平行な線形走査経路(parallel linear scanning passes)からなる走査サイクルを実行する。それによって、試験物体の影像は、コンピュータ装置によって処理するために、異なる視角のもとで獲得される。コンピュータ装置は、適切にシフトされ、スケールされ(shifted and scaled)ている獲得された影像を組み合わせて、試験物体内部の選択された断面の断面影像を生成する。
【0011】
いくつかの実施形態によれば、コンピュータ装置が、試験物体の得られた影像を組み合わせるために、シフト係数およびスケール係数(the shift and scale factors)の計算に適用される歪み補正を決定するように構成されてもよい。歪み補正は、立体画像方法(stereo imaging method)で計算されてもよい。
【0012】
本発明によるシステムおよび方法の1つの利点は、費用効果が高く、試験物体のCADデータを必要としない好都合な歪み補正の計算方法を可能にすることである。
【0013】
前述のものは要約であり、特許請求の範囲を限定するように解釈されるべきではない。本明細書で開示された動作および機構は、多数の方法で実施することができ、そのような変形形態および修正形態は、本発明およびその広い態様から離れずに、なされることができる。他の態様、発明の特徴、および発明の利点は、請求項によってのみ定義されるので、以下の非制限的な詳細な説明で記述される。
【0014】
本願は、好都合な歪み補正の計算方法を使用して、費用効果が高く、試験物体内部の選択された断面平面の断面影像を効果的に生成することができる断層影像検査システムおよびその方法を説明する。
【0015】
以下の記述では、「放射線源」はX線撮影に使用される電磁気の放射を放射するように構成されているエネルギー源を意味し、X線源、ガンマ線源などを含むが、それらに限定されることはない。さらに「影像検出器」は、試験物体が、放射線源から試験物体を貫通して進む放射線を受けるとき、試験物体の影像信号を生成するように構成されている装置を意味し、X線検出器、ガンマ線検出器などを含むが、それらに限定されることはない。
【0016】
図1Aおよび図1Bは、本発明の一実施形態による断層撮影検査システムを示す概略図である。検査システム100が、X線源102、試験中の物体106を配置するための固定式テーブル104、線形X線検出器108、およびコンピュータ装置110を備える。X線源102は固定式テーブル104の上方に配置され、円錐形X線ビームを照射することができ、そのX線ビームは、物体106を貫通して進み、X線源102の反対側の物体106の下部に位置する検出器108に突き当たる。線形検出器108のそれぞれが、物体106を貫通して通過したX線のパターンを、分析のために、コンピュータ装置110に伝送される影像信号に変える。
【0017】
図1Aを参照すると、より明確な記述の目的で、検査システム100の機構を説明するために任意の座標表示(X,Y,Z)が以下で使用される。固定式テーブル104が、X軸およびY軸に平行な平面に固定されている。X線源102が、Z軸に平行で、固定式テーブル104の平面に垂直である垂直駆動軸に取り付けられている。X線源102は、モータ駆動装置(図示せず)によって、X軸、Y軸、およびZ軸に沿って独立して駆動される。X線源102は、任意の標準の工業用X線チューブを備えることができるが、それに限定されることはない。
【0018】
線形X線検出器108は、X軸に沿って一定の間隔を置いて固定された支持フレーム112上に同一平面に配置され、Y軸に平行に位置する。一実施形態では、3つの線形検出器108を設けることができ、それぞれの検出器は、電荷結合素子に類似した(similar to charge coupled devices)個別のX線感知素子の線形または一次元配列から構成されている。ただし、線形検出器108の数は、設計の必要によって変化することが理解されよう。支持フレーム112は、X軸、Y軸およびZ軸に沿って独立して駆動して、試験物体106およびX線源102に対する検出器108の位置を望ましく設定することができる。X線源102および線形検出器108の相対的な位置は、X線影像を獲得するための所望の焦点面および最適の解像度を設定するために調節することができる。
【0019】
図1Cは、一実施形態による検査システム100により実行される好ましい走査サイクルを示す。1つの走査サイクルでは、X線源102が検出器108と共に同時に移動して、試験物体106を走査する間、試験物体106は固定されている。走査サイクルは、X軸に平行でY軸に関して連続して増加して、試験物体106の全領域に亘って走査する線形走査経路114を備える。1つの走査経路に沿って、試験物体106の走査された部分のX線影像データが、X線源102に対応する3つの異なる視角のもとで、3つの線形検出器108からそれぞれ得られる。一実施形態では、連続する経路間のY軸増分が、隣接する走査経路が部分的に重なるように配置されてもよい。試験物体106の所与の走査される部分のために、視角の数は、走査される部分をカバーする走査経路の数によって増加されてもよい。その結果、異なる視角のより多くのX線影像データが、影像検出器をまったく追加せずに、または高価な走査装置を追加せずに、コンピュータ装置110による分析のために獲得することができる。
【0020】
連続する経路間の増分もまた異なって設定されてもよく、上述の重なり部分は必要的なものではない。加えて、3つの検出器の代わりに、異なる実施形態が、X線源102に対して異なる視角のもとでの3つの線形走査経路を実行する単一の検出器を使用して、3つの視角のもとでの同様の影像を獲得することができる。獲得された影像に基づき、コンピュータ装置110は、試験物体106を検査するための断層撮影影像を生成するように構成されている。
【0021】
図2Aから図2Dは、異なる視角のもとで獲得されたX線影像データの組合せに基づき、試験物体内部の断面PのX線影像を再構築する幾何学上の原理を示す概略図である。より明確な説明のために、以下の注釈が使用される。距離H1が、検出器D1、D2、およびD3が配置されている影像平面DからX線源Sを分離する。検出器D1は、X線源Sに対して左角度位置に配置され、検出器D2は、X線源Sに対して反対側の垂直な位置に配置され、検出器D3は、X線源Sに対して右角度位置に配置される。距離H0は、焦点面FとX線源Sの間の距離を示す。距離hは、問題の物体断面Pと焦点面Fの間の距離を示す。距離Rxは、2つの隣接する検出器を分離し、長さRyは、2つの連続する走査経路の間のY軸増分に対応する。
【0022】
試験物体106が、検査システム100により走査をうけるとき、焦点面Fの外側にある試験物体106内部の断面は、影像平面Dで次々と歪められ、シフトされる異なる影像を形成することになる。その結果、影像平面D内で、焦点面Fの点の影像のみが、鮮鋭に見え、焦点面Fの外側の点はぼやけて見える。試験物体内部の所望の断面Pの影像を再構築するために、異なる視角のもとで獲得されたX線影像データが、適切なシフト係数およびスケール係数と組み合わされて、その結果、X線影像データは、正確に部分的に重なって、問題の断面Pの適切な影像を生成する。これらのシフト係数およびスケール係数は、以下に述べるように、X軸およびY軸に対して決定されることができる。
【0023】
図2Bは、X軸およびZ軸に平行な投影平面に基づき、X方向のスケール係数およびシフト係数の決定を示す。この投影平面の観点から、焦点面Fの1点Oは、影像平面Dの影像点Oiに対応し、点Oの垂直上方の問題の平面Pの点Ohは、影像平面Dの影像点Ohiに対応する。簡単な幾何学上の放射線射影に基づき、影像平面DのOiおよびOhiを分離するシフト係数Lsxは、次のように導くことができる。
【0024】
sx=h×tanθ=hRx/H1
【0025】
さらに、X線源Sが、X方向に線形に走査するとき、試験物体106の断面平面P内部のX方向の線分OhMが、歪みなく影像平面Dに投影することになる。したがって、X方向のスケール係数は1に等しい。
【0026】
同様に、図2Cは、Y軸およびZ軸に対して平行な投影平面に基づき、Y方向のシフト係数Lsyの決定を示す。この投影平面の観点から、焦点面Fの点Oは、影像平面Dの影像点Oi’になり、点Oの垂直上方の問題の物体平面Pの点Oh’は、影像平面Dの影像点Ohi’になる。影像平面DでOi’からOhi’を分離するシフト係数Lsyは、次の関係式から決定することができる。
【0027】
sy=h’×tanθ’
【0028】
h’=h×H1/H0およびtanθ’=(Ry+Lsy)/H1なので、シフト係数Lsyは、次のように導くことができる。
【0029】
sy=h×Ry/(H0−h)
【0030】
図2Dは,Y軸およびX軸に平行な投影平面に作成される、Y方向のスケール係数fの決定を示す。問題の物体平面P内の線分Oh’Mは、影像平面Dの歪んだ線分影像Ohi’Miを形成し、スケール係数fは、比率Oh’’Mh/Ohi’Mi=Lh/Liと定義することができると仮定されたい。相似の三角形の法則により、Y方向のスケール係数fは次のように導くことができる。
【0031】
f=(Hi−h’)/Hi=1−h/H0
【0032】
次の表1は、焦点面に対して高さhによって画定された試験物体内部の所望の断面のX線影像を再構築するために計算された、X方向およびY方向の異なるシフト係数およびスケール係数を示す。
【0033】
【表1】

【0034】
シフト係数およびスケール係数を適用することにより、試験物体の組み合わされたX線影像は、適切に部分的に重なって、試験物体内の座標Zの所望の断面の再構築された影像を形成する。
【0035】
他の利点が、本発明によるX線検査システムの構成によって提供されることができることに留意されたい。特にその構成は、好都合なことに、Z軸の歪み補正の計算方法を可能にすることがある。図2Eを参照すると、図示されたZ軸歪み補正の技術は、立体画像方法を使用して、試験物体の歪みを特徴づけるZ関数を作図する。立体画像方法を適用すると、2つの影像I2およびI1が、参照面に対して高さHにある試験物体の特徴W(feature W)を得るために検出器D1およびD2によってそれぞれ獲得することになる。DnおよびDhは、影像I2およびI1のそれぞれの位置を表わし、r(0)は影像解像度(image resolution)であり、特徴Wの実際の高さHは次の公式から導かれる。
【0036】
【数1】

【0037】
試験物体の領域一面で上記の公式を計算することにより、Z関数を走査サイクル中に獲得された影像に基づき作図することができる。作図されたZ関数を用いて、コンピュータ装置が、計算されたシフト係数およびスケール係数での歪み補正を適用することができ、その結果、たとえ断面Pが、試験物体内の歪みの発生により、偏った位置に実際は位置しているとしても、再構築された断層撮影の影像は、正確に試験物体の選択された断面Pを映す。したがって、効果的な歪み補正は、試験物体のCADデータを必要とせずに計算することができる。
【0038】
ここで、本発明の一実施形態による断層撮影検査の方法のステップを説明するために、図1Aから図1Cに関連する図3に言及する。ステップ302では、試験物体106は、検査システム100内に配置される。試験物体が、X線影像を得るために走査される前に、ステップ304で、初期設定がなされて、X線源102、物体106および検出器108の間の相対的位置を調節することにより焦点面、および適切な影像解像度を定義する。次いで、ステップ306では、走査動作が実行され、それにより、円錐形X線ビームを放射するX線源102は、固定された物体106の全領域に亘る平行な線形走査経路に沿って、検出器108と共に同時に移動する。異なる視角のもとでの試験物体106の多数のX線影像が、それにより獲得されて、試験物体106内部の問題の断面Pの断面影像を再構築する。
【0039】
この目的のために、ステップ308では、検査システム100が、焦点面Fに対する所望の断面Pの高さhを入力するよう作業者に要請する。ステップ310では、選択された断面Pの断面影像が生成される前に、コンピュータ装置110が、選択された断面Pの断面影像の再構築に適用される物体の歪み補正を計算することができる。歪み補正の計算は、図2Eに関して上述のように、獲得されたX線影像に基づく試験物体の歪みの指標であるZ関数を作図することにより達成することができる。ステップ312では、入力された高さhおよび計算された歪み補正に基づき、コンピュータ装置110が、選択された断面Pの断面影像を生成するために、適切なシフト係数およびスケール係数を計算し、これらの係数を適用して、獲得されたX線影像を組み合わせる。
【0040】
図示の目的だけに、図4Aから図4Eは、本発明による断層撮影検査方法により得ることができる影像の具体例を示す。図4Aは、概略的に試験物体の構成を示し、その構成は、互いに重なるように位置する2つの平行な平面にそれぞれ配置されているハンダの2つの層410および層420を含む。層410および層420は3×3のハンダの配列を有する。2つの層410および420の間の図示された間隔「g」およびハンダ間のピッチ「p」は任意の単位で表わされる。焦点面Fは、層410および層420から等距離の中間平面に対応するZ座標=0に具体的に設定されている。試験物体は、図4Bから図4Eに関して下記に論じる再構築されたX線影像から明らかであるいくつかの欠陥412、418,424,428,および429を有する。
【0041】
図4Bおよび図4Cは、ハンダ層410の断面用に再構築されたX線影像を示し、そのハンダ層断面は、焦点面Fに対してZ座標=15の平面に対応する。図4Bでは、図示されたX線影像402が、計算されたシフト係数Lsx=7.5およびLsy=35,294を使用する獲得されたX線影像の組合せから得られる。スケール係数は適用されないので、再構築されたX線影像402は、Y方向に歪んで見える。図4Cは、X線影像データの同じ組合せに、Y方向のスケールの歪みを正確に修正する、Y方向のスケール係数f=0.85/2の適用を加えて得られる再構築されたX線影像404を示す。図4Bおよび図4Cに関連する図4Aを参照すると、再構築されたX線影像402および404は、ハンダ412とハンダ414の間を連結するハンダ・ブリッジ欠陥418、およびハンダ412内部の空隙欠陥416の存在を示す。
【0042】
図4Dおよび図4Eは、ハンダ層420の断面の再構築されたX線影像を示し、ハンダ層420は、焦点面Fに対してZ座標=−15の平面に対応する。同様に、図4Dの図示されたX線影像406が、計算されたシフト係数Lsx=−7.5およびLsy=−26,087を使用する獲得されたX線影像の組合せから得られ、図4EのX線影像408は、X線影像の同じ組合せに、スケール係数f=1.15/2の適用を加えて得られて、Y方向のスケールの歪みを修正する。再構築されたX線影像406および408は、ハンダ426と連結するハンダ・ブリッジ欠陥428、およびハンダ422内部の空隙欠陥424の存在を正確に示す。
【0043】
上述のように、本発明の原理による方法およびシステムは、影像検出器によって獲得された影像に基づき、試験物体内部の問題の断面の断面影像を効果的に再構築することができる。影像の獲得は、影像検出器を加えずに、視角の数を効果的に増加させる平行な線形走査経路のサイクルにより達成される。
【0044】
本発明による実現を詳細な実施形態の文中で説明してきた。これらの実施形態は、例示的であり、本発明の範囲を限定するものではない。多くの変形形態、修正形態、追加形態、および改良形態が可能である。したがって、複数の例が、本明細書で1つの例として記述される構成要素のために提供されることができる。具体的構成の中で個別の構成要素としてもたらされた構造および機能性は、組み合わされた構造または構成要素として実施されてもよい。これらの変形形態、修正形態、追加形態、および改良形態、ならびに他の変形形態、修正形態、追加形態、および改良形態は、後述の請求項で定義されるように発明の範囲内であることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1A】本発明の一実施形態による断層撮影検査システムの概略斜視図である。
【図1B】本発明の一実施形態による断層撮影検査システムの側面図である。
【図1C】本発明の一実施形態による断層撮影検査システム内部で実行される走査の動作を示す概略図である。
【図2A】本発明による試験物体内部の断面のX線影像を再構築する原理を示す概略図である。
【図2B】本発明による試験物体内部の断面のX線影像を再構築する原理を示す概略図である。
【図2C】本発明による試験物体内部の断面のX線影像を再構築する原理を示す概略図である。
【図2D】本発明による試験物体内部の断面のX線影像を再構築する原理を示す概略図である。
【図2E】本発明による歪み補正の決定を示す。
【図3】本発明の一実施形態による断層撮影検査システム内部で実行される方法のステップのフローチャートである。
【図4A】本発明による断層撮影検査方法で得ることができるX線影像の具体例を示す。
【図4B】本発明による断層撮影検査方法で得ることができるX線影像の具体例を示す。
【図4C】本発明による断層撮影検査方法で得ることができるX線影像の具体例を示す。
【図4D】本発明による断層撮影検査方法で得ることができるX線影像の具体例を示す。
【図4E】本発明による断層撮影検査方法で得ることができるX線影像の具体例を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線源と、
影像平面を画定する複数の線形影像検出器と、
前記放射線源と前記影像検出器の間の固定された位置に試験物体を配置する場所と、
前記影像検出器から獲得された前記試験物体の複数の影像を処理するコンピュータ装置と
を備え、
前記放射線源および前記影像検出器が、前記試験物体の全領域にまたがる平行な線形走査経路のサイクルにより前記試験物体を走査して、異なる視角のもとでの前記試験物体の影像を獲得するように構成されている、断層撮影検査システム。
【請求項2】
前記コンピュータ装置が、異なる視角のもとで獲得された影像を組み合わせて、前記試験物体内部の選択された断面の断面影像を生成するように構成された、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記試験物体内部の選択された断面が、前記影像平面と平行である、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記コンピュータ装置が、前記獲得された影像を組み合わせるために使用されるシフト係数およびスケール係数を計算して、前記試験物体内部の選択された断面の断面影像を生成するように構成されている、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記シフト係数および前記スケール係数が、前記影像平面に平行な2つの座標軸に対して決定されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記シフト係数および前記スケール係数が、前記試験物体内の選択された断面の焦点面に対する高さ、前記放射線源と前記影像平面の間の距離、前記放射線源と前記焦点面の間の距離、2つの検出器の間の距離、および2つの連続する走査経路の間の長さの増分を含む複数のパラメータによって決定される、請求項4に記載のシステム。
【請求項7】
前記線形走査経路に平行な座標軸に対する少なくとも1つのスケール係数が、1に等しい、請求項5に記載のシステム。
【請求項8】
前記コンピュータ装置が、前記シフト係数および前記スケール係数の計算に適用される歪み補正を決定するように構成されている、請求項4に記載のシステム。
【請求項9】
前記歪み補正が、立体画像方法で獲得された影像を計算することによって決定される、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記放射線源が、前記検出器に突き当たるように、前記試験物体を貫通して進む円錐形のX線ビームを放射するように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記放射線源および前記影像検出器が、独立して駆動される、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
前記影像検出器が、前記固定式テーブルに対して前記放射線源の反対側に垂直に配置された少なくとも1つの中心の線形検出器、および前記放射線源に対して傾斜した視角に配置された2つの側面の線形検出器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
異なる視角のもとでの試験物体の複数の影像データを獲得するように、固定された位置にある試験物体の全領域に亘る複数の平行な線形走査経路を実行するステップと、
前記試験物体内部の選択された断面の断面影像を再構築するように、前記影像データを組み合わせるステップと
を含む、断層撮影の検査方法。
【請求項14】
前記試験物体内部の前記選択された断面が、影像平面に平行であり、その影像平面から前記影像データが獲得される、請求項13に記載の方法
【請求項15】
前記影像データを組み合わせるステップが、前記獲得された影像を組み合わせるために使用されるシフト係数およびスケール係数を計算するステップを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記シフト係数および前記スケール係数が、前記影像平面に平行な2つの座標軸に対して決定される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記線形走査経路に平行な座標軸に対する少なくとも1つのスケール係数が、1に等しい、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記シフト係数および前記スケール係数を計算するために使用される歪み補正を決定するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記歪み補正が、立体画像方法により獲得された影像データを計算するステップにより決定される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
固定された位置にある試験物体の全領域に亘る複数の平行な線形走査経路を実行するステップが、前記試験物体の全領域に亘る平行な線形走査経路のサイクルの中で、放射線源および影像検出器を同時に移動させるステップを含む、請求項13に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図2E】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図4E】
image rotate


【公開番号】特開2008−298762(P2008−298762A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−205520(P2007−205520)
【出願日】平成19年8月7日(2007.8.7)
【出願人】(507266831)徳律科技股▲分▼有限公司 (3)
【Fターム(参考)】